説明

エッチング方法

【目的】 従来に較べてさらに高い選択比を得ることができ、シリコン層に損傷を与えることなく、目的とする薄膜のエッチングを行うことのできるエッチング方法を提供する。
【構成】 排気機構15で真空排気を実施することにより、処理チャンバ2内を所定の真空度に保持しつつ、上部電極3の多数の細孔から半導体ウエハ5に向けて、Ar供給源7、CHF3 供給源8、CF4 供給源9、CO供給源10a、10bからのガスを供給し、これとともに、高周波電源13から電力を供給してエッチング処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、エッチング方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、半導体デバイスの微細な回路パターンの形成等に用いるドライエッチング方法として、例えば円筒型プラズマエッチング、マイクロ波プラズマエッチング、反応性イオンエッチング(RIE)による方法が知られている。
【0003】このようなエッチング方法の内、反応性イオンエッチング方法では、例えば内部を気密に閉塞可能に構成された処理チャンバ内に、上下に対向する如く上部電極と下部電極とからなる平行平板電極を設け、例えば下部電極上に被処理物(例えば半導体ウエハ)を載置する。そして、処理チャンバ内から真空排気を行うとともに、処理チャンバ内に所定の処理ガス(例えばCHF3 /CF4 /Arの混合ガス)を供給し、該処理チャンバ内を所定圧力(例えば0.5 Torr程度)のエッチングガス雰囲気とする。そして、平行平板電極間に交流電力を供給してプラズマを発生させ、下部電極上に載置された半導体ウエハにこのプラズマ(主としてプラズマ中のイオン)を作用させてエッチング処理を実施する。
【0004】このような従来のエッチング方法では、例えばシリコン製の半導体ウエハ表面に形成されたSiO2 の薄膜にコンタクトホールをエッチング加工する場合、シリコンに対する選択比(SiO2 に対するエッチング速度/Siに対するエッチング速度)を例えば18程度とすることができる。
【0005】ところで、実際のエッチング工程では、SiO2 膜厚の半導体ウエハ面内におけるばらつきがあり、また、半導体ウエハ面内におけるエッチング速度のばらつきがある。このため、確実にコンタクトホールを形成するためには、一定時間オーバーエッチングを行って、ある程度シリコン層をエッチングすることが行われている。この場合SiO2 薄膜にコンタクトホールが形成された後、シリコン層がSiO2 に対して1/18の速度でエッチングされることになる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、近年の半導体素子の高集積化にともない、MOSLSI等の半導体素子ではコンタクトホールの下部に形成されるp−n接合層の深さを浅くする必要性が生じている。このため、上述した従来のエッチング方法では、オーバーエッチングによって、p−n接合層が削られてしまう危険性があり、さらに選択比の高いエッチング方法の開発が望まれていた。
【0007】本発明は、かかる従来の事情に対処してなされたもので、従来に較べてさらに高い選択比を得ることができ、シリコン層に損傷を与えることなく、目的とする薄膜のエッチングを行うことのできるエッチング方法を提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明のエッチング方法は、処理チャンバ内から真空排気を行うとともに、所定の処理ガスを供給し、該処理チャンバ内を所定圧力の処理ガス雰囲気とし、前記処理チャンバ内に設けられた平行平板電極間に交流電力を供給してプラズマを発生させ、前記平行平板電極間に設けられた被処理基板のエッチングを行うエッチング方法において、前記処理ガスは、少なくともフッ化炭素系ガスと、一酸化炭素ガスとを含むガスであることを特徴とする。
【0009】
【作用】本発明のエッチング方法では、処理ガスとして、少なくともフッ化炭素系ガスと、一酸化炭素ガスとを含むガスを用いることにより、従来に較べて選択比を向上させることができる。したがって、オーバーエッチングによってシリコン層に損傷を与えることなく、SiO2 薄膜等の確実なエッチング処理を行うことができる。
【0010】
【実施例】以下、本発明の一実施例を図面を参照して説明する。
【0011】図1に示すように、エッチング装置1には、材質例えばアルマイト処理を施したアルミニウムからなり、内部を気密に閉塞可能に構成された処理チャンバ2が設けられている。この処理チャンバ2は、例えば電気的にアースされており、その内部には、処理チャンバ2の内壁と電気的に絶縁された一対の平行平板電極である上部電極3と下部電極4が対向する如く設けられている。
【0012】この下部電極4は、円板状に形成されており、上面に被処理物である半導体ウエハ5を載置可能に構成されている。また、下部電極4には、図示しない冷媒循環流路が設けられており、冷媒循環機構6から液体ヘリウム等の冷媒を循環させることにより、半導体ウエハ5を冷却することができるよう構成されている。
【0013】一方、上部電極3は円板状に形成されており、半導体ウエハ5に対向するその下面には、ガス供給用の図示しない多数の細孔が設けられている。そして、これらの細孔により、Ar供給源7、CHF3 供給源8、CF4 供給源9、CO供給源10a、10bから供給されるそれぞれのガスを、マスフローコントローラ11で流量制御しつつ、下部電極4上の半導体ウエハ5に向けて噴出させるよう構成されている。なお、このように構成された下部電極4のガス流路は、同心的に区分された内側部12aと外側部12bとから構成されている。そして、内側部12aから、Ar供給源7、CHF3 供給源8、CF4 供給源9、CO供給源10aによる混合ガスを半導体ウエハ5の中心部に供給し、外側部12bからCO供給源10bによるCOガスを半導体ウエハ5の周縁部に供給するよう構成されている。
【0014】なお、このようにCOガスを半導体ウエハ5の周縁部に重点的に供給するように構成されているのは、本発明者等の実験により、COガスを他の処理ガスと同様に均一に供給すると、半導体ウエハ5の中心部と周縁部とでSiO2 のシリコンに対する選択比(SiO2 に対するエッチング速度/Siに対するエッチング速度)が大幅に異なり、半導体ウエハ5の中心部で選択比が向上し、半導体ウエハ5の周縁部ではあまり選択比が向上しないことが確認されたからである。これは、排気位置(下部電極4の周囲)等の関係から半導体ウエハ5の中心部から周縁部に向かってガス流が形成されるためと推測されるが、COガスを半導体ウエハ5の周縁部に重点的に供給することにより、半導体ウエハ5の周縁部での選択比を向上させることができ、半導体ウエハ5の面内における選択比のユニフォーミティを向上させることができる。
【0015】本実施例においては、このように構成された上部電極3は、高周波電源13に接続されており、下部電極4は、接地電位に接続されている。なお、下部電極4に高周波電源13を接続したり、上部電極3および下部電極4双方に高周波電源13を接続して位相のずれた交流電力を印加するようにしても良い。
【0016】また、下部電極4の下側には蛇腹機構14が設けられており、図示しない駆動機構によって上下動し、上部電極3との間隔を変更可能に構成されている。さらに、この下部電極4の下部には、排気機構15に接続された排気配管が接続されており、処理チャンバ2内を所定の真空度に排気することができるよう構成されている。
【0017】上記構成のエッチング装置1を用いて本実施例では、次のようにしてSiO2 薄膜のエッチング処理を行った。
【0018】すなわち、予め冷媒循環機構6によって-10 ℃に冷却した下部電極4上に直径6 インチの半導体ウエハ5を載置し、排気機構15で真空排気を実施することにより、処理チャンバ2内を0.5 Torrの真空度に保持しつつ、上部電極3の図示しない多数の細孔から半導体ウエハ5に向けて処理ガスを供給し、これとともに、高周波電源13から周波数380KHz、800Wの電力を供給した。
【0019】Ar供給源7、CHF3 供給源8、CF4 供給源9からのガス流量は、CHF3 /CF4 /Ar=20/20/1000(SCCM)として固定し、まずCO供給源10a、10bから供給されるCOガスの流量を50SCCM(25SCCM+25SCCM )として、エッチング処理を行った。この時、SiO2 のシリコンに対する選択比(SiO2 に対するエッチング速度/Siに対するエッチング速度)は、20.7であった。
【0020】次に、CO供給源10a、10bから供給されるCOガスの流量を、200SCCM(100SCCM+100SCCM )として、エッチング処理を行った。この時、SiO2 のシリコンに対する選択比(SiO2 に対するエッチング速度/Siに対するエッチング速度)は、29.1であった。
【0021】次に、比較のため、COガスの流量をゼロとし、他は上記と同一条件でエッチング処理を行ったところ、SiO2 のシリコンに対する選択比(SiO2 に対するエッチング速度/Siに対するエッチング速度)は、18.2であった。
【0022】なお上記COガスの流量と選択比との関係を表1に示す。
【0023】
【表1】


このように本実施例では、フッ化炭素系ガスであるCF4 ガスと、フッ化炭化水素系ガスであるCHF3 ガスと、不活性ガスであるArガスとからなる処理ガスにCOガスを添加することにより、従来に較べて選択比を向上させることができた。したがって、オーバーエッチングによってシリコン層に損傷を与えることなく、SiO2 薄膜の確実なエッチング処理を行うことができる。
【0024】なお、フッ化炭素系ガスとしては、CF4 ガスの他に、C3 8 、C2 6 等も使用することができる。また、フッ化炭化水素系ガスとしては、CHF3 ガスの他に、CH2 2 等も使用することができるが、フッ化炭化水素系ガスは使用せずに例えばCF4 ガスとH2 ガスを使用することもできる。また、SiO2 薄膜のエッチングに限らず、SiN薄膜、SiON薄膜等のエッチング、あるいはSi以外のTa2 5 薄膜、TiO2 薄膜、TiN薄膜等のエッチング等にも適用することができる。
【0025】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のエッチング方法によれば、従来に較べてさらに高い選択比を得ることができ、シリコン層に損傷を与えることなく、目的とする薄膜のエッチングを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例のエッチング方法を説明するための図である。
【符号の説明】
1 エッチング装置
2 処理チャンバ
3 上部電極
4 下部電極
5 半導体ウエハ
6 冷媒循環機構
7 Ar供給源
8 CHF3 供給源
9 CF4 供給源
10a、10b CO供給源
11 マスフローコントローラ
12a 内側部
12b 外側部
13 高周波電源
14 蛇腹機構
15 排気機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】 処理チャンバ内から真空排気を行うとともに、所定の処理ガスを供給し、該処理チャンバ内を所定圧力の処理ガス雰囲気とし、前記処理チャンバ内に設けられた平行平板電極間に交流電力を供給してプラズマを発生させ、前記平行平板電極間に設けられた被処理基板のエッチングを行うエッチング方法において、前記処理ガスは、少なくともフッ化炭素系ガスと、一酸化炭素ガスとを含むガスであることを特徴とするエッチング方法。
【請求項2】 請求項1記載のエッチング方法において、前記処理ガスは、さらにフッ化炭化水素系ガスを含むことを特徴とするエッチング方法。
【請求項3】 請求項1〜2記載のエッチング方法において、被処理基板の中心部に較べて、該被処理基板の周縁部に一酸化炭素ガスをより多く供給することを特徴とするエッチング方法。

【図1】
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