説明

エネルギー分布形成装置及びこれを備えた粒子線照射システム

【課題】粒子線照射システムにおいてSOBP幅の大きな拡大ブラッグカーブを精度良く形成でき製作が容易で製作コストを抑えることが可能なエネルギー分布形成装置を得る。
【解決手段】リッジフィルタ25の仮想平面25a上に、第一エネルギー吸収体である棒状体1と第二エネルギー吸収体である柱状体3を配置した。棒状体1は、その厚さがX方向に段階的に変化する階段部分を有するもので、複数の棒状体1はX方向に所定の間隔X0で互いに平行に配置されている。複数の柱状体3は、X方向及びY方向それぞれにおいて離散的かつ周期的に配置されている。柱状体3は、仮想平面25aの所定エリア内における面積比率が、所定比率よりも設計上小さくなる棒状体1の階段部分に代えて設けられたもので、棒状体1の最大厚さを有する階段部分により形成される粒子線のエネルギー成分よりも、さらに低いエネルギー成分を形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子線に所定のエネルギー分布を形成するためのエネルギー分布形成装置及びこれを備えた粒子線照射システムに関する。
【背景技術】
【0002】
粒子線を用いて主に癌を治療する粒子線照射システムにおいて、その粒子線照射手段には、粒子線に所定のエネルギー分布を形成するためのエネルギー分布形成装置であるリッジフィルタが備えられている。従来のリッジフィルタは、一般に、粒子線照射方向に対してほぼ垂直な平面(以下仮想平面と呼ぶ)上に、エネルギー吸収体である複数の棒状体が周期的に配置されたものを言う(図11参照)。なお、エネルギー吸収体とは、粒子線エネルギーを一部吸収して低エネルギー化し、また、一部の粒子を吸収して粒子線強度を低減化するものである。すなわち、リッジフィルタは、複数の棒状体と、棒状体の配置されていない空間とで構成されたものである。
【0003】
以下では、粒子線照射方向の中心となる方向をZ方向、このZ方向の長さを「厚さ」とし、また、前記Z方向に直交し、且つ互いに直交する2方向をそれぞれX方向、Y方向とする。従来のリッジフィルタは、Y方向に伸びた長さ数センチから数十センチの複数本の棒状体が、X方向に所定の間隔を置いて互いに平行に配置されたもので構成されている。また、各棒状体は、その厚さがX方向に段階的に変化する階段形状になるように設計されているため、粒子線がリッジフィルタを透過する位置のX座標によって透過後の粒子線の運動エネルギーは異なるものとなる。
【0004】
先行例として、特許文献1に、リッジフィルタを構成する複数の棒状体の各々について、その厚さがX方向に段階的に変化し、Y方向には各段がそのまま連続している例が示されている。このようなリッジフィルタによれば、複数の棒状体の配置、階段状棒状体の各段の厚さとそのX方向の幅によりリッジフィルタ透過後の粒子線のエネルギー分布を調整し、被照射部に対して所定の線量分布を形成することができる。また、特許文献2では、各棒状体は、その厚さがX方向には一定でY方向に階段状に変化し、Y方向に所定の長さを有する階段状棒状体である。リッジフィルタは、この階段状棒状体を複数、Y方向に一列に繰り返して配置するとともに、この複数の階段状棒状体からなる列をX方向に所定の間隔で周期的に配置して構成されている。
【特許文献1】特許第3689610号
【特許文献2】特開2000−202048号公報
【0005】
粒子線は、所定幅のエミッタンスを有しているので、リッジフィルタを透過後、粒子線の持つ進行方向の角度分布によって、棒状体を透過しなかった粒子線、及び棒状体の異なる厚さを有する部分を透過してきた粒子線が相互に十分に混ざり合い、被照射部に到達する。また、この混合効果により、被照射部位置の粒子線において所定のエネルギー分布が形成される。このエネルギー分布を有する粒子線の照射により、被照射部の3次元領域にわたり所定の均一な線量分布が形成される。この被照射部内のZ方向における線量分布は、拡大ブラッグカーブ(Spread・Out・Bragg・Peak:SOBP)と呼ばれる。
【0006】
ここで、拡大ブラッグカーブについて図12を用いて説明する。図において、横軸は照射部位の深さ、縦軸は粒子線の照射による照射部位の吸収線量を示す。図中、100で示す曲線は拡大ブラッグカーブ、101はエネルギー吸収体を通る前の、またはリッジフィルタの棒状体の配置されていない部分を透過してきた粒子線によるブラッグカーブであり、照射部位の吸収線量の深さ依存性を示している。また、102、103は、エネルギー吸収体を構成する棒状体の異なる厚さの階段部分をそれぞれ透過してきた粒子線によるブラッグカーブである。
【0007】
図12では、棒状体の異なる厚さの階段部分をそれぞれ透過し、低エネルギー側にシフトした粒子線による多数のブラッグカーブ(図中A)が示されている。棒状体のうち、より厚さの大きい部分を粒子線が透過すると、透過後の粒子線によるブラッグカーブのピーク(ブラッグピークと呼ぶ)の位置はより浅い側にシフトする。すなわち、図12において、最も深い位置にブラッグピークを有するブラッグカーブ102は、棒状体の最小厚さの階段部分を透過したときの粒子線によるブラッグカーブ、2番目に深い位置にブラッグピークを有するブラッグカーブ103は、棒状体の2番目に厚さの小さい階段部分を透過したときの粒子線によるブラッグカーブである。
【0008】
次に、各ブラッグピークの高さについて説明する。ブラッグカーブ101のピーク高さに対して、棒状体を透過してきた粒子線によるブラッグカーブのピークの高さは小さいものになる。これは、粒子線の照射領域内で、棒状体の所定の透過厚に対応した階段部分の面積比率が、透過厚が0の部分すなわち棒状体が配置されていない部分の面積比率に比べて著しく小さいことに起因する。
【0009】
拡大ブラッグカーブ100は、棒状体の異なる厚さの階段部分をそれぞれ透過してきた粒子線及び棒状体が配置されていない部分を透過してきた粒子線によるそれぞれのブラッグカーブを重ね合わせることにより実現する。図示するSOBP幅は、患部のZ方向の広がりに対応して決められる。このSOBP幅の存在により、患部の深さによらず、患部に対して均一に粒子線を照射することが可能となる。
【0010】
拡大ブラッグカーブ100のように平坦なピーク部位を実現するためには、基本的には浅い位置にそのピークを有するブラッグピークの高さは低く、深い位置にそのピークを有するブラッグピークの高さは高くして重ね合わせると良い。これはブラッグカーブがピーク位置よりも浅い位置に一定の高さを有する裾野部を有し、これが重ね合わせの際に重畳されることに起因する。ただし、微調整のための例外はある。図12では、ブラッグカーブ102のピーク高さが、これより浅い位置にピークを有するブラッグカーブ103のピーク高さよりも小さくなっており、これは上記例外に該当する。ブラッグピークの高さをより低くするためには、そのブラッグピークに対応する厚さの棒状体部分の面積比率をより小さくすればよい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このように、リッジフィルタは、SOBP幅が患部の厚さと等しくなるように各階段部分の厚さとそのX方向幅、及び各棒状体の間隔等が設定され、これにより各厚さに対応する部分の面積比率が決定される。一般に、患部(腫瘍)の厚さは12cm以下のものが多いが、それ以上のものもある。通常、腫瘍の厚さが大きくなると患部の最深部の深さは大きくなり、必要なSOBP幅が大きくなるため、リッジフィルタの最大厚さも大きくなる。また、上記の通り、平坦なSOBP分布を形成するためには、各棒状体の厚さが大きい部分ほどX方向の幅を小さくして面積比率を小さくする必要がある。
【0012】
棒状体をアルミニウム製にした従来のリッジフィルタでは、例えばSOBP幅を15cmと設定した場合、リッジフィルタの最大厚さは約7cm、その厚さを有する階段部分のX方向幅は数10μm〜0.1mmとなり、これを実現するためには非常に高い加工精度が要求される。同様に、特許文献1に記載の従来のリッジフィルタを製作する際には、SOBP幅が大きくなるに従ってより高い精度の加工が必要となる。ここで、加工精度が低い場合には、拡大ブラッグカーブのSOBP幅が設計値通りにならない、またはSOBP幅内の線量の均一性が劣化するという問題が発生する。一方、高い精度で加工する場合は、加工装置、加工工程等の点で製作コストが高くなるという問題がある。また、引用文献2に記載のエネルギー分布形成装置においては、複雑な構造体を2次元平面内に大量に配置する必要があるため、リッジフィルタの製作コストが高くなる。
【0013】
本発明は、上記のような問題点を解消するためになされたもので、粒子線照射システムにおいて、SOBP幅の大きな拡大ブラッグカーブを精度良く形成でき、且つ製作が容易で製作コストを抑えることが可能なエネルギー分布形成装置を提供することを目的とする。
【0014】
また、上記エネルギー分布形成装置を備えた高精度な粒子線照射システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係るエネルギー分布形成装置は、粒子線照射方向をZ方向、Z方向に直交し、且つ互いに直交する二方向をそれぞれX方向、Y方向とし、Z方向の長さを厚さとするとき、Z方向に垂直な平面に沿って配置された第一エネルギー吸収体と第二エネルギー吸収体とを備え、第一エネルギー吸収体は、その厚さがX方向に段階的に変化する階段部分を有するとともに、各階段部分の厚さ一定の領域である平坦部が、その厚さを保持したままY方向に伸びた複数の棒状体からなり、複数の棒状体はX方向に所定の間隔X0で互いに平行に配置され、第二エネルギー吸収体は、第一エネルギー吸収体の最大厚さAを有する階段部分による粒子線のエネルギー吸収量よりも大きいエネルギー吸収量となる所定の厚さBを有する複数の構造体からなり、複数の構造体はX方向及びY方向それぞれにおいて離散的かつ周期的に配置され、且つZ方向において第一エネルギー吸収体と重ならない配置となっているものである。
【0016】
また、本発明に係る粒子線照射システムは、粒子線発生手段と、粒子線発生手段から発生した粒子線を加速する粒子線加速手段と、この粒子線加速手段により加速された粒子線を所定の位置に導く粒子線輸送手段と、所定の位置に設置されたエネルギー分布形成装置を含む粒子線照射手段とを備えたものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るエネルギー分布形成装置によれば、SOBP幅の大きな拡大ブラッグカーブを精度良く形成することができ、製作が容易で製作コストを抑えることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
実施の形態1.
以下、本発明の実施の形態1について図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係る粒子線照射システムの粒子線照射手段を示す部分についての粒子線照射の中心軸方向を含む平面での断面図である。また、図2は、本発明の実施の形態1に係る粒子線照射システムに用いられるエネルギー分布形成装置を示す斜視図及び部分拡大断面図である。なお、図中、同一部分または相当部分には同一符号を付している。
【0019】
本実施の形態1に係る粒子線照射システムは、イオン源等の粒子線発生手段(図示せず)と、粒子線発生手段から発生した粒子線を加速する粒子線加速器等の粒子線加速手段(図示せず)と、この粒子線加速手段により加速された粒子線を所定の位置に導く粒子線輸送手段(図示せず)と、前記所定の位置に設置され、エネルギー分布形成装置であるリッジフィルタを含む粒子線照射手段とを備えたものである。
【0020】
本実施の形態1における粒子線照射システムの粒子線照射手段について、図1を用いて説明する。図1において、20は粒子線照射手段であり、21は粒子線輸送手段により導かれ粒子線照射手段20に入射した粒子線ビームである。また、40は粒子線照射システムにより治療を受ける患者であり、治療の際には治療台(図示せず)に固定されている。41は、粒子線照射手段20によって調整された粒子線ビーム21が照射される被照射部である患者40の患部(腫瘍部)、42の矢印は、患部41がZ方向に最も広がった部分の厚さ、すなわち患部の最大厚さを示している。
【0021】
以下、粒子線照射手段20の構成要素について、粒子線ビーム21の通過する順に説明する。22は、通常2台の偏向電磁石で構成され、それぞれの偏向方向が互いに直交するように配置されたワブラ電磁石である。ワブラ電磁石22は、これら2台の偏向電磁石により入射した粒子線ビーム21の偏向角度を制御し、粒子線ビーム21を所定軌道で走査させるものである。23は、ワブラ電磁石22の下流側に配置され、さらに下流側の所定距離をおいた平面上で粒子線ビーム21を散乱させる散乱体である。これらのワブラ電磁石22と散乱体23を含む照射野形成手段は、粒子線ビーム21の照射野をXY方向に拡大させるものである。24は、散乱体23の下流側に配置され、粒子線ビーム21の線量を測定し、線量管理を行う線量モニタである。ただし、線量モニタ24の設置場所は特にこの位置に限定されるものではない。
【0022】
また、25は、ワブラ電磁石22及び散乱体23の下流側に配置され、粒子線ビーム21のエネルギーを一部吸収して低エネルギー化するエネルギー吸収体を備えたリッジフィルタである。リッジフィルタ25は、ワブラ電磁石22と散乱体23によりその照射野がXY方向に拡大された粒子線ビーム21のZ方向のエネルギー幅を大きくし、リッジフィルタ25を透過後の粒子線ビーム21によるブラッグカーブを、そのピーク部で所定のSOBP幅を有する拡大ブラッグカーブとするものである。図1に示すリッジフィルタ25において、1は第一エネルギー吸収体である棒状体、3は第二エネルギー吸収体である構造体、5は棒状体1及び構造体3が固定されたベース板である。なお、図1では、リッジフィルタ25の構成を分かりやすくするために、粒子線21のビーム幅に対して棒状体1及び構造体3の大きさを実際より大きく描いてある。
【0023】
26は、リッジフィルタ25の下流側に配置され、断面形状が略三角形をした二枚の板からなるエネルギー吸収体を備えたレンジシフタである。レンジシフタ26の二枚の板は、両者のZ方向の合計厚が位置によらず一定となるように配置されている。また、両者の合計厚は、Z方向に直交する面内で相対的に、互いに反対方向に平行移動させることにより可変となっている。レンジシフタ26は、粒子線ビーム21の最大ビームエネルギーを調節するものである。
【0024】
また、27は、レンジシフタ26の下流側に配置され、粒子線ビーム21の照射野を所定形状に絞るコリメータである。コリメータ27は、通常、コリメータリーフと呼ばれる金属板を複数枚組み合わせて構成され、その中央部に粒子線ビーム21が通過するリーフ開口部を有している。28は、コリメータ27の下流側に配置され、リッジフィルタ25と同様のエネルギー吸収体で構成されたエネルギーコンペンセータである。エネルギーコンペンセータ28は、照射方向に対応してその厚さを二次元的に変化させることにより、粒子線ビーム21の停止位置を調整するものである。
【0025】
次に、本実施の形態1に係る粒子線照射手段20の動作について説明する。粒子線照射手段20に入射した粒子線ビーム21は、ワブラ電磁石22により所定軌道、例えば円軌道を描くように走査され、患者40の患部41において例えばドーナツ状の照射野を形成する。さらに、散乱体23を通過することによってビームサイズが拡大され、患部41における照射野は例えばドーナツ状から、その範囲内で粒子線強度が平坦な円形になる。ワブラ電磁石22及び散乱体23の半径及び厚さ等は、患部41に応じて適宜選択される。
【0026】
散乱体23を通過した時点では、粒子線ビーム21はそのエネルギー幅が小さいため、患部41内での粒子線停止位置(照射深さ)の広がりも小さく、例えば数mm程度の範囲内に集中している。この状態ではZ方向にそれ以上の広がりを有する患部41に対しては照射できない領域が生じる。そこで、散乱体23を通過後の粒子線ビーム21は、リッジフィルタ25を透過することにより、患部41内での粒子線停止位置がZ方向に広げられ、そのSOBP幅が患部の最大厚さ42と等しくなるように調整される。この調整の際には、レンジシフタ26、コリメータ27及びエネルギーコンペンセータ28を透過することによるエネルギー損失も考慮される。
【0027】
次に、粒子線ビーム21は、レンジシフタ26を透過することにより、患部41の最も深い位置に基づいてその最大ビームエネルギーが調節される。レンジシフタ26を透過後の粒子線ビーム21の照射野は、コリメータ27によって、照射方向からみた患部41の最大領域の形状と同じ形状に整形され、患部41以外の正常領域に粒子線ビーム21が照射されないように調整される。
【0028】
さらに、粒子線ビーム21は、照射方向に応じて厚さが異なるエネルギーコンペンセータ28を透過することにより、Z方向での粒子線停止位置が、各粒子線の発散角に起因する照射方向ごとに患部41の最も深い点を結んで形成される曲面に沿うように調整される。粒子線ビーム21の停止位置すなわち侵入深さを浅くしたい部分は、エネルギーコンペンセータ28の厚さを大きくすればよい。このエネルギーコンペンセータ28により、粒子線ビーム21が患部41を突き抜けて正常組織まで及ぶことを防止している。このようにして調整された粒子線ビーム21は、患者40の体表から入射し、被照射部である患部(腫瘍部)41に照射される。
【0029】
次に、エネルギー分布形成装置であるリッジフィルタ25について、図2を用いて説明する。図2において、25aはZ方向に垂直な仮想平面である。前述のように、リッジフィルタ25は、粒子線ビーム21によるブラッグカーブを、そのピーク部で所定のSOBP幅を有する拡大ブラッグカーブとするための装置であり、SOBP幅は通常、患部の最大厚さ42に設定される。本実施の形態1におけるリッジフィルタ25は、Z方向に垂直な仮想平面25a上に沿って配置された第一エネルギー吸収体と第二エネルギー吸収体を備えたものである。
【0030】
第一エネルギー吸収体は、その厚さがX方向に段階的に変化する階段部分を有するとともに、各階段部分の厚さ一定の領域である平坦部が、その厚さを保持したままY方向に伸びた複数の棒状体1からなる。この第一エネルギー吸収体を構成する複数の棒状体1は、X方向に所定の間隔X0で互いに平行に配置されている。
【0031】
第二エネルギー吸収体は、X方向及びY方向それぞれにおいて離散的かつ周期的に配置された複数の構造体からなる。本実施の形態1では、構造体の形態として、円柱状の柱状体3を用いている。これらの柱状体3と棒状体1は、図2(a)に示すように、同じベース板5に固定されることにより同一平面上に配置され、Z方向において重ならない配置となっている。
【0032】
リッジフィルタ25には、棒状体1の各階段部分、柱状体3、及びこれらが配置されていない部分(以下、これらを「リッジフィルタ25各部」と呼ぶ)がある。棒状体1と柱状体3の構成材料が同じである場合、リッジフィルタ25各部の同一XY平面上の所定エリア内における面積比率は、リッジフィルタ各部の厚さに依存する。通常、この厚さの大きい部分ほど面積比率が小さくなる。
【0033】
本実施の形態1における柱状体3は、棒状体1の最大厚さAを有する階段部分による粒子線のエネルギー吸収量よりも大きいエネルギー吸収量となる所定の厚さBを有している(厚さA、Bについては図6を参照のこと)。また、この所定の厚さBは、第ニエネルギー吸収体の最小厚さである。これにより、柱状体3は、棒状体1の最大厚さAを有する階段部分により形成される粒子線のエネルギー成分よりも、さらに低いエネルギー成分を形成することができる。
【0034】
棒状体1と柱状体3の構成材料が同じである場合、柱状体3の最小厚さBは、棒状体1の最大厚さAよりも大きいものとなる。ただし、柱状体3の構成材料を棒状体1よりも密度の高い材料とすることにより、柱状体3の厚さを小さくすることができる。棒状体1の密度をm1、柱状体3の密度をm2としたとき、柱状体3の最小厚さBは、棒状体1の最大厚さAにm1/m2を乗じて得られる値である最大実効厚よりも大きく設定すればよい。これにより、例えば柱状体3の材料をアルミニウムから銅に変えると、約半分の厚さにすることができる。その結果、柱状体3に入射した粒子線ビーム21が途中で柱状体3の側面から出てしまう確率が小さくなるため、リッジフィルタ25の設計が容易になり、精度の高いリッジフィルタが得られる。
【0035】
棒状体1と柱状体3の材料としては、アルミニウム(Al)または銅(Cu)等を用いることができるが、材料は特に限定されるものではなく、他の金属あるいは合金を用いてもよい。また、ベース板5には、エネルギー吸収効果の小さい、薄いアルミニウム板またはプラスチック板を用いることができる。
【0036】
なお、上述のように、リッジフィルタ25に到達した粒子線21は、既にワブラ電磁石22と散乱体23によってある程度拡大されており、リッジフィルタ25が配置されている仮想平面25a上での粒子線21の照射野サイズに比べて、各棒状体1のX方向の間隔X0は、十分に小さい値(例えば照射野100mmに対してX0は10mm以下)に設定されている。これにより、仮想平面25a上の所定エリア(図示せず)内におけるリッジフィルタ25各部の面積比率は、リッジフィルタ25全体における各部の面積比率とほぼ等しくなる。従って、粒子線21は、リッジフィルタ25全面に配置された、異なる厚さを有する部分をほぼ均等に透過することができる。
【0037】
本実施の形態1における柱状体3は、仮想平面25a上の所定エリア内における面積比率が、所定比率よりも設計上小さくなる棒状体1の階段部分に代えて設けられたものであり、この階段部分により形成される粒子線のエネルギー成分に相当するエネルギー成分を形成する。すなわち、棒状体1において、その幅が小さいために高い加工精度が要求される階段部分を、離散的な構造体である柱状体3に置き換えることで、その加工幅を大きくしたものである。これにより高精度の加工は必要でなくなる。なお、ここでいう所定比率とは、棒状体1の材料強度と棒状体1を製造する際の装置の加工精度によって適宜決定されるものである。
【0038】
第二エネルギー吸収体を構成する構造体の一つの形態である柱状体3は、第一エネルギー吸収体である棒状体1のどの階段部分を柱状体3に置き換えるのかによって、1種類又は複数種類の異なる厚さの柱状体で構成される。図2において、31(31a、31b、31c)は第一の厚さを有する柱状体、32(32a、32b、32c)は第二の厚さを有する柱状体、33(33a、33b、33c)は第三の厚さを有する柱状体である。図2に示す例では、柱状体3は、異なる厚さの3種類の柱状体31、32、33を、Y方向にそれぞれ複数本含んでいる。
【0039】
3種類の柱状体31、32、33は、それぞれの種類ごとに、Y方向に所定の間隔ΔY31、ΔY32、ΔY33で、Y方向に平行な一直線上に配置されている。また、Y方向に周期的に配置された柱状体3a、3b、3cは、X方向において、隣り合う棒状体1の間に配置されている。なお、ΔY31、ΔY32、ΔY33は必ずしも同一値でなくてもよく、その場合はY方向の所定範囲内に配置される3種類の柱状体31、32、33の本数は同一でなくなる。また、3種類の柱状体31、32、33は、必ずしもその全てがY方向と平行な一直線上に配置されていなくてもよく、隣り合う棒状体1の間で、それぞれのX方向の相対位置関係は任意であってよい。このような配置例について、図3(a)(b)に示す。
【0040】
図3は、粒子線照射方向上流側から見たリッジフィルタ25の第二エネルギー吸収体の一部を含む部分の平面図である。厚さの異なる3種類の柱状体31、32、33は、それぞれの種類ごとに、X方向及びY方向に周期的に配置されている。図3(a)では、3種類の柱状体31、32、33がそれぞれ異なるX方向の位置(X座標)において、Y方向にほぼ同じ間隔ΔY31、ΔY32、ΔY33で配置された例を示している。また、図3(b)では、3種類の柱状体31、32、33がそれぞれ異なるX座標において、Y方向にそれぞれ異なる間隔ΔY31、ΔY32、ΔY33で配置された例を示している。
【0041】
次に、第二エネルギー吸収体のY方向の間隔ΔYの算出方法について図4及び図5を用いて説明する。図4は、第二エネルギー吸収体である柱状体3を透過した粒子線による、照射平面上での線量分布の広がりを模式的に示したものである。ここで示す柱状体A〜Dは、柱状体3の中から、同一厚さのもので隣り合っているものをX、Y方向からそれぞれ2個選択したものである。AとB、CとDはそれぞれY方向に沿って、AとD、BとCはそれぞれX方向に沿って配置されているものとする。また、41aは、患部の照射平面を示している。
【0042】
本実施の形態1では、柱状体3の同一厚さを有する部分のY方向の間隔ΔYは、棒状体1のX方向の間隔X0、またはX0より小さい間隔に設定される。なお、図4では、柱状体3のY方向の間隔ΔYはX0と同じ値に設定され、X方向の間隔もX0に設定されている。ここで、棒状体1のX方向の間隔X0は、従来の設計方法により、棒状体1の各階段部分を透過後の粒子線ビーム、及びエネルギー吸収体を透過しないでリッジフィルタ25を通過した粒子線ビームのいずれについても、照射平面41a上で均一な分布が形成されるように決められている。従って、残された検討項目は、柱状体3を透過後、その厚さに対応したエネルギーの粒子線ビームが、照射平面41a上で均一な分布を形成するかどうかということである。以下ではこの点について検討する。
【0043】
リッジフィルタ25に入射する粒子線ビームは所定の発散角を有しているため、リッジフィルタ25の位置でX方向に間隔X0で吸収体を配置した場合、これを透過後の粒子線の線量分布の中心点は、照射平面41aではX0よりも大きな値であるX1の間隔で位置することになる。この時の拡大率をαとすると、X1はα×X0となる。このことはY方向についても同様である。よって、各柱状体A〜Dを粒子線の発散角に従って所定の照射平面41aに投影したときのY方向の間隔をY1、各柱状体A〜Dを透過後の照射平面41aにおける粒子線ビームの中心位置を図4に示すa〜dとすると、ΔYをX0と等しくした場合、Y1はX方向と同じX1となり、abcdを結ぶ線は正方形となる。なお、拡大率αは、設計計算もしくは実測により求めることができる。
【0044】
次に、柱状体3を透過した粒子線ビームの柱状体3からの粒子線の散乱による1/e発散角をθ_1/e、柱状体3が配置された平面と照射平面41aとの距離をLとしたとき、柱状体3を透過した粒子線の1/e発散角(θ_1/e)とLの積である散乱半径R1に対するY1(=X1)の比が1.7または1.7より小さい値を有するように、X0が設定される。なお、粒子線の1/e発散角とは、粒子線照射方向を軸とし、これに直交する面上における粒子数の角度分布をガウス分布として粒子数が1/2.718になる角度である。この1/e発散角は、粒子線の挙動をシミュレーションする設計計算、もしくはリッジフィルタ25各部を透過後の各部の厚さに対応した粒子線分布を実測することにより求めることができる。なお、通常、距離Lに対して各エネルギー吸収体の厚さは十分に小さいので、エネルギー吸収体の厚さの違いによる効果は無視することができる。
【0045】
既に説明した通り、以下の式1が成り立つ。
R1=θ_1/e×L (式1)
照射平面41aにおいて、柱状体A、Bの投影位置a、bの中間点M2における柱状体A、Bを通過した粒子線の寄与、すなわち散乱粒子数の合計T2は、照射平面41aにおける粒子線の散乱半径R1と、照射平面41aにおける配置ピッチX0の投影された長さX1から、式2によって見積もることができる。また、図4では、ΔYはX0と等しいと設定したので、柱状体A、Bの照射平面41aにおける投影間の距離をX1と置くことができる。
T2=2×exp(−(0.5×X1/R1)) (式2)
【0046】
次に、柱状体A、B、C、Dの投影位置a、b、c、dの中間点M4における散乱粒子数の合計T4を求める。ここではΔYはX0と同じ値に設定しているため、柱状体A、B、C、Dの照射平面41aにおける投影は正方形を成す。従って、各柱状体A、B、C、Dそれぞれの投影位置a、b、c、dから中間点M4までの距離は(0.5×1.414×X1)となり、中間点M4における散乱粒子数の合計T4は、式3によって見積もることができる。
T4=4×exp(−(0.5×1.414×X1/R1)) (式3)
【0047】
図5は、上記の式2と式3を、X1/R1の関数としてプロットしたものである。図5において、縦軸は中間点M2とM4における散乱粒子数の合計T2、T4の相対値を示し、横軸はX1/R1を示している。また、縦軸の値が1のとき、それぞれの柱状体A、B、C、Dの投影位置における散乱粒子線数は等しいことを示している。
【0048】
図5に示すように、中間点M2とM4における散乱粒子数の合計T2、T4は、X1/R1とともに変化する。X1/R1=1.665(=2×√ln(2)、以下では約1.7とする)付近では、柱状体A、B、C、Dを通過した粒子線の中間点M4における寄与の合計が、それぞれの柱状体A、B、C、Dの照射平面31aの投影位置における粒子線の寄与と等しくなる。すなわち、照射平面41aにおいて、各柱状体A、B、C、Dからの散乱粒子線の寄与を合成して得られる分布がほぼ平坦になる。厳密には、ガウス分布の広がりの範囲内に含まれるすべての柱状体3からの寄与を合計すると均一度は更に改善される。
【0049】
次に、X1が1.7×R1より小さい(X1/R1<1.7)場合については、図5からは縦軸の値が1よりも大きくなり、均一性が劣化するように思われる。しかし、先に述べたとおり、厳密には、ガウス分布の広がりの範囲内に含まれるすべての柱状体3からの寄与を合計する必要がある。X1が1.7×R1より小さくなる場合は、この他の柱状体3からの寄与が大きくなるため均一性は保たれる。
【0050】
同様に、X、Y方向のうち、片方の間隔を1.7×R1と等しくし、他方の間隔をそれよりも小さくしても均一性は保たれることになる。すなわち、柱状体3のX方向、Y方向の間隔をそれぞれX0、ΔYとし、これを照射平面41a上に投影したときの間隔をそれぞれX1、Y1とすれば、X1、Y1それぞれについて1.7×R1と等しいか、またはそれよりも小さく決定することにより、柱状体3を透過した粒子線の照射平面41a上での均一性は担保される。
【0051】
ところで、吸収体の厚さが大きくなるに従ってその吸収体内での散乱の程度は大きくなり、その結果、1/e発散角も大きくなる。今、棒状体1のX方向の間隔X0は、棒状体1の各階段部分を透過した粒子線が、照射平面41a上で隣り合う棒状体1の対応する階段部分を透過した粒子線と十分に重なり合い均一な分布を構成するように選定されているものとした。棒状体1よりも厚さの大きい柱状体3を透過した粒子線の場合は、そのガウス分布の1/e発散角は棒状体1を透過した粒子線の場合の1/e発散角よりも大きくなるので、柱状体3がX0よりも大きな間隔で配列されていても、柱状体3を透過した粒子線の照射平面41a上での均一性は担保されることになる。
【0052】
従って、柱状体3を間隔X0で配置すれば、X1が約1.7×R1と等しい(X1/R1=1.7)か、それよりも小さくなる(X1/R1<1.7)という条件は担保されているものと考えられる。このことはX、Y方向に共通であり、Y方向については柱状体3の間隔を任意に設定できるので、Y方向の柱状体3の間隔ΔYをX0と等しいか、それよりも小さくすれば照射平面41a上で粒子線の均一性は保たれることになる。
【0053】
以下に、リッジフィルタ25を透過後の粒子線が所定のエネルギー分布となるように、リッジフィルタ25各部の厚さ及び面積比率を決定する際の手順について、ステップ1〜ステップ5に従って説明する。なお、所定のエネルギー分布とは、そのエネルギー分布の粒子線で照射したとき、患部41の最深部から最浅部に至る領域で患部41の吸収線量が均一になるようなエネルギー分布をいう。
【0054】
まず、第1のステップとして、リッジフィルタ25に入射する粒子線のエネルギーと、これに対応するブラッグカーブを決定する。これらは、あらかじめ設計計算、または実測により把握することが可能である。
【0055】
次に、第2のステップとして、リッジフィルタ25透過後の粒子線に対して、必要なSOBP幅を設定する。ここでは、患者40の患部41のZ方向(深さ方向)の広がりを予め計測評価し、最浅部と最深部のそれぞれの深さから必要なSOBP幅、すなわち患部の最大厚さ42を求める(図1参照)。
【0056】
第3のステップでは、必要なSOBP幅を得るための合成用の複数のブラッグカーブg(z)とその割合S(j=1〜m)を決定する。この作業に用いられる複数のブラッグカーブからなるライブラリは、予め記憶装置に記憶されている。このライブラリのブラッグカーブをf(z)(1≦i≦nの整数)とする。ここで、zは患部41の粒子線照射方向に対する深さを表す。このブラッグカーブf(z)は、リッジフィルタ25入射前の粒子線が、共通の面積で厚さtのエネルギー吸収体に入射した時に、この吸収体を透過した粒子線によるブラッグカーブであるとする。これはシミュレーションによる計算、または実測で求めることが可能である。厚さt=Δt×(i−1)とすれば、f(z)は厚さ0の吸収体を透過した粒子線によるブラッグカーブで、iが増えるごとにΔtずつ厚い吸収体を透過した粒子線によるブラッグカーブを表すものとなる。
【0057】
また、第2のステップで求めたSOBP幅の最浅部、最深部それぞれの深さをDmin、Dmaxとすると、ライブラリ中のブラッグカーブからDmin、Dmaxそれぞれの位置にピークを有するブラッグカーブをそれぞれf(z)(i=min、max)とする。なお、minは通常1に等しいので以下ではmin=1とする。ピーク位置の一致するブラッグカーブが存在しなかった場合はシミュレーション計算で補充するか、近隣番号のブラッグカーブの内挿または外挿により補間する。または、近隣番号のブラッグカーブを用い、ピーク位置を単純にシフトさせて近似してもよい。
【0058】
拡大ブラッグカーブF(z)は、Wを荷重係数として以下の式4で表される。
F(z)=W・f(z)+W・f(z)+W・f(z)
+・・・W・f(z)+・・・+Wmax・fmax(z) (式4)
ここで、W(i=1〜max)は、F(z)のSOBP幅に該当するzの範囲内(すなわちDmin≦z≦Dmax)で、F(z)のばらつきが予め設定された値よりも小さくなるように決定される。この作業はコンピュータを利用することにより容易に実施できる。
【0059】
なお、F(z)のばらつきが小さくならない場合は、より細かな吸収体厚の差(Δt’<Δt)に対応したブラッグカーブf’(z)(i=1〜n’(>n))を準備し、f(z)に替えてf’(z)を用いて同様の作業を実行する。このf’(z)はf(z)と同様にシミュレーション計算または実測により求めることができるが、近隣のf(z)の内挿または外挿、またはピーク位置の単純シフト近似により求めることもできる。
【0060】
この作業において、拡大ブラッグカーブの合成に使用するブラッグカーブの数は、リッジフィルタ25に配置するエネルギー吸収体の厚さの種類の数に等しくなるので、合成に使用するブラッグカーブの数は小さい方がよい。従って、Wとf(z)のピーク高さの積が、他に比べてその寄与が小さいものはこれを省いて、SOBP範囲内でのF(z)のばらつきを再計算することもある。このようにして最終的に残ったf(z)、t、及びW(iは不連続となることもある)を連続番号で再付番したものをそれぞれg(z)、H、及びS(j=1〜m;m≦n)とする。なお、図12に示した各ブラッグカーブは、S×g(z)に相当するものである。
【0061】
さらに、第4のステップでは、第3のステップで決定されたブラッグカーブ群g(z)、これらそれぞれに対応する吸収体厚さH、及び荷重係数S(j=1〜m;m≦n)から、リッジフィルタ25を構成する吸収体の厚さHと面積比率Sを選択する。このとき、原則として面積比率の大きいものは棒状体1の形で吸収体とし、面積比率の小さいものはX、Y方向共に離散的な柱状体3とする。なお、面積比率の大小の判断基準は、想定する加工装置の加工精度等を考慮してあらかじめ設定しておく。
【0062】
最後に、第5のステップとして、リッジフィルタ25各部の厚さHと面積比率Sを決定した後、その構成を踏まえてリッジフィルタ25を透過後の粒子線の拡大ブラッグカーブを計算し、所定のSOBP幅が実現されているかどうかを確認する。なお、この時のX、Y方向の配置の周期は、予め計算等で把握できている粒子線の広がり角等から決定することができる。SOBP幅に誤差があった場合、与えられた吸収体条件を修正しながら、繰り返し計算により最終条件を決定する。
【0063】
次に、上記第4のステップにおける具体的な作業について、本実施の形態1におけるリッジフィルタ25を例に挙げて説明する。図6は、本実施の形態1におけるリッジフィルタ25のXZ平面における部分拡大断面図であり、棒状体1は、その厚さがX方向において段階的に変化する7段の階段部分を有している。図において、11は1段目の階段部分、12は2段目の階段部分、・・・、16は6段目の階段部分、17は7段目の階段部分を示している。また、図中、H、X(i=1〜7)は、それぞれi段目の階段部分の厚さと、X方向の幅を示している(図ではi=2、3、7の場合について示している)。さらに、棒状体1と交互に配置された柱状体31、32、33の厚さをそれぞれH31、H32、H33とする(図では柱状体33のみを示している)。
【0064】
本実施の形態1におけるリッジフィルタ25は、厚さゼロの部分と、棒状体1の1〜7段目の階段部分、及び柱状体31、32、33の合計11種類の異なる厚さ部分を有していることから、11本のブラッグカーブに対応して選択されたものである。11本のブラッグカーブのうち、特に荷重係数(面積比率)Sの小さい3本のブラッグカーブに対応する部分を柱状体31、32、33として実現し、その他の7本のブラッグカーブに対応する部分を棒状体1の7段の階段部分11、12・・17として実現している。さらに残り1本のブラッグカーブは、図12に示すようなブラッグカーブ101であり、リッジフィルタ25の厚さゼロの部分に対応するものである。
【0065】
ここで、図2(a)に示すように、粒子線21の照射方向からみて、仮想平面25a上において、周期的に配置されたエネルギー吸収体の一周期分の占める面積はX0×Y0である。この面積(X0×Y0)の中で、棒状体1の厚さHを有するi段目の階段部分の占める面積ΔSは、次の式5で表すことができる(ただしiは1〜6)。
ΔS=(X−Xi+1)×Y0 (式5)
また、厚さHを有する7段目の階段部分17の占める仮想平面25aの面積ΔSは、次の式6で表すことができる。
ΔS=X×Y0 (式6)
さらに、柱状体31、32、33のXY平面での断面形状において、構成物質の詰まった部分の面積をそれぞれΔS31、ΔS32、ΔS33とする。
【0066】
柱状体31、32、33のY方向の間隔をそれぞれΔY31、ΔY32、ΔY33とすると、上記面積(X0×Y0)の中でY方向に配列された柱状体31の占める全面積はΔS31×(Y0/ΔY31)で示され、同様に、Y方向に配列された柱状体32の占める全面積はΔS32×(Y0/ΔY32)、Y方向に配列された柱状体33の占める全面積はΔS33×(Y0/ΔY33)で示される。なお、以下の説明においてはΔY31、ΔY32、ΔY33はすべて等しいΔYとすると、Y方向に沿って一列に配置できる同じ高さの柱状体の本数Nyは、Ny=Y0÷ΔYで求められる。
【0067】
図6に示すように、ベース板5の厚みを除いて考えた場合、リッジフィルタ25には厚さがゼロの部分がある。その部分が占める面積をΔSとすると、リッジフィルタ25の仮想平面25a上において、一周期分の占める面積について次の式7が得られる。
X0×Y0= ΔS
+ΔS+ΔS+ΔS
+ΔS+ΔS+ΔS+ΔS
+Ny×(ΔS31+ΔS32+ΔS33) (式7)
【0068】
式7から、リッジフィルタ25の異なる厚さを有する各部の面積比率は、例えば7段目の階段部分17の場合はΔS/(X0×Y0)であり、柱状体31の場合は(Ny×ΔS31)/(X0×Y0)である。また、前述のように、各ブラッグカーブに対応する厚さを有する各部の占める面積ΔSの面積比率は、11本のブラッグカーブそれぞれの荷重係数率Wと等しいことから、リッジフィルタ25の一周期分において各部の占める面積ΔSをそれぞれ決定することができる。
【0069】
なお、患部の最大厚さ42の範囲に渡って均一なSOBP分布を得るためには、リッジフィルタ25を透過後のビームエネルギーEが最も大きい部分、すなわちリッジフィルタ25の厚さゼロの部分の面積ΔSに対応するブラッグカーブの荷重係数率Wを最大とする必要があり、その面積比率は通常全体の30%程度となる。また、ビームエネルギーEが小さくなる部分、すなわちリッジフィルタ25において厚さが大きい柱状体31、32、33に対応するブラッグカーブの荷重係数率Wは小さいため、柱状体31、32、33の占める面積比率は小さくなり、全体の数パーセント以下となる。
【0070】
以上のように、第4のステップでは、第3のステップで決定された11本のブラッグカーブのそれぞれに対応する厚さHを有する吸収体として、棒状体1の7段の階段部分11、12・・17と柱状体31〜33を選択し、それぞれの面積比率として、第3のステップにおいて拡大ブラッグカーブを合成した際の荷重係数率Wを用いることにより、リッジフィルタ25各部の設計を行うものである。また、第5のステップにおける確認作業で、SOBP幅に誤差があった場合、各階段部分のX方向の幅Xや柱状体31〜33の直径を微調整することにより、SOBP幅を修正することができる。
【0071】
以下に、本実施の形態1におけるリッジフィルタ25において、棒状体1の所定の階段部分を複数の柱状体3に置き換えることによる効果について具体的に説明する。棒状体1の階段部分はY方向に連続しているのに対し、複数の柱状体3はY方向に離散的に配置されることを特徴とする。リッジフィルタ25において均一なSOBP分布を得るためには、前述のように、最小厚さ部分の面積ΔSは最大となり、厚さHが大きくなるに従って面積ΔSは次第に小さくなる。このため、リッジフィルタ25の棒状体1の断面形状は、通常、図6に示すような山形になる。
【0072】
また、必要なSOBP幅が大きい場合には、必要な段数(厚さの種類の数)が増加し、厚さの大きい部分が占める面積が非常に小さくなる。図11に示す従来のリッジフィルタ50のようにエネルギー吸収体が棒状体1のみで構成されている場合、その階段部分のX方向幅ΔX(ΔX=X−Xj+1)は0.1mm以下となることがあり、高い加工精度が要求されていた。
【0073】
そこで、本実施の形態1では、棒状体1のj段目の階段部分の面積ΔSが所定比率より設計上小さくなる場合、または棒状体1の一段として形成した場合にそのX方向幅ΔXが所定値(例えば0.1mm〜1mm)より設計上小さくなる場合に、その階段部分を加工の容易な複数の柱状体3に置き換えるようにしたものである。
【0074】
柱状体3を円柱とした場合、その直径Rの値は、同じ面積を棒状体1の一段の階段部分として形成した場合のX方向幅ΔXに比べ、γ倍大きくなる。γは以下の式8〜12から求められる。
ΔX×Y0=Ny×πR (式8)
柱状体3のY方向の間隔ΔYを、棒状体1のX方向の間隔X0と等しくした場合、Ny=Y0/X0となり、式8は以下の式9のようになる。
【0075】
ΔX×Y0=(Y0/X0)×πR
ΔX=πR/X0 (式9)
R=(X0×ΔX/3.14)1/2 (式10)
γ=R/ΔX
=(X0/3.14/ΔX)1/2 (式11)
ここで、X0=10mm、ΔX=0.1mmと仮定すると、
γ=(10/3.14/0.1)1/2
=5.6 (式12)
【0076】
このように、棒状体1においてX方向幅ΔX=0.1mmの階段部分を柱状体3に置き換えた場合、必要な柱状体3の直径は、ΔXの約5.6倍大きくなる。このため、SOBP幅が大きいリッジフィルタ25を作成する場合、棒状体1のみから構成されるリッジフィルタ50を作成する場合に比べて高い加工精度を要求されることなく、SOBP幅の大きな拡大ブラッグカーブを精度良く形成することができる。
【0077】
なお、柱状体3のXY方向における外形寸法は、通常数mm以下となるため、柱状体3に入射した粒子線21は、柱状体3を完全に透過する前にある確率で柱状体3の側面(周面)から外に出てしまう。このため、実際に柱状体3を透過する粒子線21の割合は、柱状体3のXY平面での面積比率で決まる割合より小さくなる。この割合を例えばモンテカルロコード等を用いて予め計算し、その結果をリッジフィルタ25各部の面積比率を決定する際の計算に反映させることが望ましい。
【0078】
また、棒状体1のXZ方向における断面形状は、通常、略三角形となるが、必ずしも左右対称でなくてもよく、片側にのみ階段構造を有していてもよい。また、図7(a)に示す棒状体1aのように、一方の斜面が7段の階段部分11〜17を有し、他方の斜面が5段の階段部分11、12、14、16、17を有するように設計してもよい。
【0079】
また、柱状体3は、仮想平面25aの所定エリア内における面積比率が所定比率よりも設計上小さくなる棒状体1の階段部分に代えて設けられるが、その階段部分は、最大厚さの階段部分であるとは限らない。例えば、図7(b)に示す棒状体1bのように、下から3段目の階段部分13のX方向幅(ΔX=X−X)が非常に小さく、高い加工精度が要求される場合、この階段部分13を、これと同じエネルギー成分を形成する柱状体3に置き換えることができる。また、本実施の形態1では、柱状体31、32、33のXY平面における断面形状を円形としたが、楕円形、三角形、四角形、長方形等、任意の形状であってよい。
【0080】
さらに、棒状体1と柱状体3を同一平面上に配置せず、Z方向座標を変えて別々の平面上に配置してもよい。具体的には、2枚のベース板5を用い、棒状体1及び柱状体3をそれぞれ異なるベース板5上に形成する。ベース板5を2枚用いることによる粒子線のエネルギー損失や散乱を小さくするために、枠状ベース板5b(図11参照)を用いてもよい。このように、棒状体1と柱状体3とを異なるベース板5に配置することにより、それぞれを複数種類用意し、組み合わせを変えて用いることができるため、汎用性の高いリッジフィルタ25となる。
【0081】
なお、二つの平面上に分離して配置した場合、リッジフィルタ25各部の面積比率は、厳密にはどちらかの平面上に粒子線21の広がりを考慮して投影したもので考えることになる。しかし、この二平面を非常に大きく離さない限り、面積比率の計算上、同一平面上にある場合と同様の取り扱いをしても大きな問題にはならない。従って、上述のように、粒子線21の広がりが吸収体厚さの面積比率に与える影響は無視してよい。
【0082】
以上のように、本実施の形態1によれば、棒状体1のみから構成される従来のリッジフィルタ50(図11)を作成する場合に比べて高い加工精度を要求されることなく、製作が容易で加工時間も短縮され、製作コストを抑えることが可能である。さらに、本実施の形態1によるリッジフィルタ25を含む粒子線照射手段20を備えた粒子線照射システムは、高精度なエネルギー分布を形成することが可能なものとなる。
【0083】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、リッジフィルタ25の第二エネルギー吸収体を構成する柱状体3が円柱であり、厚さの異なる3種類の柱状体31、32、33が、Y方向に所定の間隔を置いて離散的に配置された例について説明した。本実施の形態2では、第二エネルギー吸収体の他の構成例について図8〜10を用いて説明する。なお、図中、同一部分または相当部分には同一符号を付している。
【0084】
本実施の形態2に係る第二エネルギー吸収体は、異なる厚さの複数種類の構造体を一つの構造体として一体的に形成し、これをX方向及びY方向それぞれにおいて離散的かつ周期的に配置したものである。このような構造体の形態として、図8及び図9では、その厚さがY方向に段階的に変化する階段状構造体を示している。また、図10では、階段状構造体に含まれる他の形態として、その厚さがZ方向に直交するすべての方向に段階的に変化するピラミッド状構造体を示している。
【0085】
図8に示すリッジフィルタ250は、第二エネルギー吸収体の第一の厚さを有する部分31d、第二の厚さを有する部分32d、第三の厚さを有する部分33dが、階段状の構造体3dとして一体的にまとめられている。構造体3dは、棒状体1と同じベース板5上に配置されている。
【0086】
図9に示すリッジフィルタ251は、第二エネルギー吸収体の第一の厚さを有する部分31e、第二の厚さを有する部分32e、第三の厚さを有する部分33eが、階段状の構造体3eとして一体的にまとめられる。また、Y方向に並べられた複数の構造体3eはその底面部分で互いに接続され、その両端は枠状ベース板5bに支持されている。なお、このような枠状ベース板5bを用いることにより、粒子線の最大エネルギーを大きくすることができ、また、粒子線の散乱を小さくすることができる。
【0087】
また、図10に示すリッジフィルタ252は、第二エネルギー吸収体の第一の厚さを有する部分31f、第二の厚さを有する部分32f、第三の厚さを有する部分33fを入れ子にしたピラミッド状の構造体3fとして一体的にまとめられている。
【0088】
図8〜図10に示す例では、いずれの場合も第二エネルギー吸収体である構造体3d、3e、3fの配置数を少なくすることが出来るため、配置の手間が省け、また、その設置に際しての安定性も向上する。さらに、図10に示す構造体3fの場合は特に、構造体の側面から漏れ出てしまう粒子線の割合を減らすことができる。そのため、リッジフィルタの設計が容易になる。また、いずれの例でも、構造体3d、3e、3fを構成する材料を、棒状体1を構成する材料よりも密度の高い材料とすることで、構造体3d、3e、3f全体の高さを小さくすることができる。これにより、上記効果のいずれも、さらに改善される。
【0089】
以上のように、本実施の形態2によれば、上記実施の形態1と同様の効果に加え、設置安定性が向上し、リッジフィルタの設計及び製作がさらに容易になる。また、上記実施の形態1及び実施の形態2によるエネルギー分布形成装置を採用した本発明に係る粒子線照射システムによれば、深さ方向に対して広がりのある被照射部(患部)に対して、より均一な線量で粒子線照射を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明に係るエネルギー分布形成装置及びこれを用いた粒子線照射システムは、粒子線がん治療装置として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の実施の形態1に係る粒子線照射システムの粒子線照射手段を示す縦断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係るエネルギー分布形成装置を示す斜視図及び部分拡大断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係るエネルギー分布形成装置における第二エネルギー吸収体の他の配置例を示す平面図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係るエネルギー分布形成装置の第二エネルギー吸収体を透過した粒子線による照射平面上での線量分布の広がりを示す模式図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係るエネルギー分布形成装置の中間点M2とM4における散乱粒子数合計とX1/R1の関係を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係るエネルギー分布形成装置の部分拡大断面図である。
【図7】本発明の実施の形態1に係るエネルギー分布形成装置の他の構成を示す部分拡大断面図である。
【図8】本発明の実施の形態2に係るエネルギー分布形成装置の構成を示す斜視図である。
【図9】本発明の実施の形態2に係るエネルギー分布形成装置の他の構成を示す斜視図である。
【図10】本発明の実施の形態2に係るエネルギー分布形成装置の他の構成を示す斜視図である。
【図11】従来のエネルギー分布形成装置を示す斜視図である。
【図12】拡大ブラッグカーブの合成について説明する図である。
【符号の説明】
【0092】
1、1a、1b 第一エネルギー吸収体(棒状体)、
3、3a、3b、3c 第二エネルギー吸収体(柱状体)、
3d、3e、3f 第二エネルギー吸収体(構造体)、
5 ベース板、5b 枠状ベース板、
20 粒子線照射手段、21 粒子線ビーム、22 ワブラ電磁石、23 散乱体、
24 線量モニタ、25 リッジフィルタ、25a 仮想平面、26 レンジシフタ、
27 コリメータ、28 エネルギーコンペンセータ、
31、31a、31b、31c 第一の厚さを有する柱状体、
31d、31e、31f 第一の厚さを有する部分、
32、32a、32b、32c 第二の厚さを有する柱状体、
32d、32e、32f 第二の厚さを有する部分、
33、33a、33b、33c 第三の厚さを有する柱状体、
33d、33e、33f 第三の厚さを有する部分、
40 患者、41 患部(腫瘍部)、41a 照射平面、42 患部の最大厚さ、
50 従来のリッジフィルタ、
100 拡大ブラッグカーブ、101、102、103 ブラッグカーブ、
250、251、252 リッジフィルタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子線照射方向をZ方向、前記Z方向に直交し、且つ互いに直交する二方向をそれぞれX方向、Y方向とし、前記Z方向の長さを厚さとするとき、
前記Z方向に垂直な平面に沿って配置された第一エネルギー吸収体と第二エネルギー吸収体とを備え、
前記第一エネルギー吸収体は、その厚さが前記X方向に段階的に変化する階段部分を有するとともに、前記各階段部分の厚さ一定の領域である平坦部が、その厚さを保持したまま前記Y方向に伸びた複数の棒状体からなり、前記複数の棒状体は前記X方向に所定の間隔X0で互いに平行に配置され、
前記第二エネルギー吸収体は、前記第一エネルギー吸収体の最大厚さAを有する前記階段部分による粒子線のエネルギー吸収量よりも大きいエネルギー吸収量となる所定の厚さBを有する複数の構造体からなり、前記複数の構造体は前記X方向及び前記Y方向それぞれにおいて離散的かつ周期的に配置され、且つ前記Z方向において前記第一エネルギー吸収体と重ならない配置となっていることを特徴とするエネルギー分布形成装置。
【請求項2】
前記棒状体と前記構造体は同一平面上に配置され、前記構造体は、前記X方向において、隣り合う前記棒状体の間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のエネルギー分布形成装置。
【請求項3】
前記棒状体と前記構造体は異なる平面上に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のエネルギー分布形成装置。
【請求項4】
前記構造体は、前記X方向に前記所定の間隔X0で配置されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のエネルギー分布形成装置。
【請求項5】
前記棒状体の密度をm1、前記構造体の密度をm2とするとき、前記構造体の所定の厚さBは、前記棒状体の最大厚さAにm1/m2を乗じて得られる値である最大実効厚よりも大きいものであることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のエネルギー分布形成装置。
【請求項6】
前記所定の厚さBは、前記構造体の最小厚さであることを特徴とする請求項5に記載のエネルギー分布形成装置。
【請求項7】
前記構造体は、同一厚さの柱状体であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のエネルギー分布形成装置。
【請求項8】
前記構造体は、異なる厚さの複数種類の柱状体を含み、前記複数種類の柱状体がそれぞれの種類ごとに、前記X方向及び前記Y方向に周期的に配置されていることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のエネルギー分布形成装置。
【請求項9】
前記構造体は、その厚さが前記Y方向に段階的に変化する階段状構造体であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のエネルギー分布形成装置。
【請求項10】
前記階段状構造体は、その厚さが前記Z方向に直交するすべての方向に段階的に変化するピラミッド状構造体であることを特徴とする請求項9に記載のエネルギー分布形成装置
【請求項11】
前記棒状体と前記構造体を前記Z方向に垂直な同一平面上に粒子線に沿って投影したとき、前記同一平面上の粒子線照射野を含む所定の範囲における投影された前記構造体の同一厚さを有する部分の面積比率は、前記範囲における投影された前記棒状体の各階段部分の面積比率よりも小さいことを特徴とする請求項7〜請求項10のいずれか1項に記載のエネルギー分布形成装置。
【請求項12】
前記複数の構造体の同一厚さを有する部分は、前記Y方向に前記間隔X0または前記間隔X0より小さい間隔で配置されていることを特徴とする請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載のエネルギー分布形成装置。
【請求項13】
前記複数の構造体の同一厚さを有する部分の前記Y方向の間隔は、前記Y方向の間隔を粒子線の発散角に従って所定の照射平面に投影したときの間隔をY1とし、前記構造体が配置された平面と前記照射平面との距離をLとしたとき、前記構造体を透過した粒子線の1/e発散角(粒子数と粒子線照射方向に直交する面上における粒子数の角度分布をガウス分布として粒子数が1/2.718になる角度)とLの積である散乱半径R1に対する前記Y1の比が、1.7または1.7より小さい値を有するように決定されたものであることを特徴とする請求項12に記載のエネルギー分布形成装置。
【請求項14】
粒子線発生手段と、前記粒子線発生手段から発生した粒子線を加速する粒子線加速手段と、この粒子線加速手段により加速された粒子線を所定の位置に導く粒子線輸送手段と、前記所定の位置に設置された請求項1〜請求項13のいずれか一項に記載のエネルギー分布形成装置を含む粒子線照射手段とを備えた粒子線照射システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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