説明

エネルギー生産装置

【課題】燃料を別途用意することがなくてもエネルギーを生産できるエネルギー生産装置を提供する。
【解決手段】血液B中の糖分を取り込んでエタノールに変換する発酵器10と、発酵器10からのエタノールと水が供給され、エタノールを濃縮する分離器17と、分離器17で濃縮されたエタノールを水素に改質する改質器20と、生成水素を燃料として発電する燃料電池28とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体の体内に存在する糖分を利用してエネルギーを発生させるエネルギー生産装置に係り、特にその糖分を酵素等の微生物を用いて発酵させてエタノールとし、これを水素に改質して燃料電池で発電して電気エネルギーとするエネルギー生産装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、生ゴミ、有機性廃棄物を微生物を利用して水素ガスやメタンを発生させ、これを燃料電池の燃料ガスとして発電を行うシステムが提案されている(特許文献3,4)。
【0003】
また、特許文献2に示されるように微生物反応により得られる希薄なメタノールを利用して発電することが提案され、また特許文献1には、燃料電池の燃料ガスとして用いる水素を生成する際に、微生物で、COを発生することなく水素を発生させることが提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−87035号公報
【特許文献2】特開2005−19255号公報
【特許文献3】特開2004−181295号公報
【特許文献4】特開2003−135088号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これら従来技術は、発電のための原料は、外部から供給されるものであり、原料の供給を常時行うことができない発電システム、例えば、発電システムを、人体埋め込み式の医療機器に適用する場合には、燃料を貯蔵する貯蔵タンクなどを必要とし、しかも貯蔵タンクには、燃料がなくならないように、常に充填する必要があり、その充填作業が煩雑であり、また使用中は貯蔵タンクごと可搬する不便があり、プロセスが煩雑である。
【0006】
本発明の目的は、燃料を別途準備することがなくエネルギーを生産できるエネルギー生産装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために請求項1の発明は、血液中の糖分を取り込んでエタノールに変換する発酵器と、該発酵器からのエタノールと水が供給され、エタノールを濃縮する分離器と、該分離器で濃縮されたエタノールを水素に改質する改質器と、生成水素を燃料として発電する燃料電池とを備えたエネルギー生産装置である。
【0008】
請求項2の発明は、改質器には、その改質ガス中のCOをCO2 にシフトさせるシフト反応器が接続される請求項1記載のエネルギー生産装置である。
【0009】
請求項3の発明は、シフト反応器には未反応COを選択燃焼するCO除去器が接続され、CO除去器でCOが除去された水素を燃料電池に供給する請求項2記載のエネルギー生産装置である。
【0010】
請求項4の発明は、発酵器は、血液が流れる流路が形成された流路本体と、その流路と接し流路を流れる血液中の糖分を透過させる半透膜と、該半透膜で透過した糖分をエタノールに変換する微生物が固定された微生物固定槽とからなる請求項1〜3いずれかに記載のエネルギー生産装置である。
【0011】
請求項5の発明は、分離器は、発酵器からのエタノールと水とを加熱する加熱プレートと、その加熱プレートで蒸発されたエタノールと水を多段の多孔質膜を通してエタノール蒸気を通過させると共に水蒸気を凝縮分離してエタノールを濃縮する分離ユニットからなる請求項1〜4いずれかに記載のエネルギー生産装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、血液中の糖分を利用して発電するために、燃料を別途準備する必要がなくエネルギーを生産することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下本発明の実施形態を添付図面により説明する。
【0014】
本発明の図1において、10は、血液中の糖分(グルコース)を取り込んでエタノールに変換する発酵器で、血液Bを流す流路11が形成された流路本体12と、流路11と接し、流路11を流れる血液B中の糖分を透過させる半透膜13と、半透膜13で透過した糖分を取り込むべく流路11と対向する流路14が形成され、その流路14の内壁に、エタノールに変換する酵母等の微生物が固定された微生物固定槽15とからなる。
【0015】
微生物固定槽15の流路14には、循環路16が接続され、その循環路16にエタノールの分離器17が接続されると共に、循環ポンプ18が接続される。
【0016】
分離器17では、流路14で生じたエタノールを蒸発或いは抽出し、その蒸発或いは抽出したエタノールがライン19を介して改質器20に送られる。
【0017】
改質器20は、エタノールを水蒸気と触媒の存在下で、水素ガスとCOに変換する。改質ガス21は、シフト反応器22に送られ、COが水蒸気にてH2 とCO2 にされ、そのガス23が、CO除去器24に供給され、シフト反応できなかった未反応COが、供給される空気25中の酸素とCO選択酸化反応によりCO2 にされて除去される。
【0018】
その後、水素ガス26は、固体高分子型燃料電池28の燃料極に供給され、空気極に空気27が供給されて発電が行われる。
【0019】
発酵器10は、図2に示すように、血液Bが流路本体12の血液流路11を流れる間に、血液B中の糖分が半透膜13を透過して流路14に流れる。この流路14は、微生物が下流に流れないようにゲル(例えばアルギン酸カルシウム)14aで固定化されて形成され、そのゲル14aに固定された微生物で糖分が発酵してエタノールに変換される。
【0020】
この発酵により生じたエタノールは、分離器17で、多段蒸留により分離される。
【0021】
図3〜図5は、分離器17の詳細を示したもので、図3は、分離器17の分解斜視図、図4は分離器17の断面図、図5は分離器17でのエタノール濃縮の原理を説明する図である。
【0022】
図3,図4に示すように、後述するCO除去器24で生じた触媒燃焼ガスが通る加熱用流路31が形成された加熱プレート30上に熱交換用プレート32が設けられ、その熱交換用プレート32に、発酵器10の糖分流路14で生じたエタノール+水が流入する流入枠33が設けられ、その流入枠33上に、多孔質膜34と蒸留分離枠35からなる分離ユニット36が多段に積層され、その最上段の分離ユニット36上に上部プレート37が設けられて構成される。
【0023】
流入枠33には、エタノール+水の流入口38と、水+微量エタノールを発酵器10の糖分流路14に戻す流出口39が形成され、上部プレート37には、エタノール蒸気+水蒸気を排出する排出口40が形成される。
【0024】
この分離器17では、加熱プレート30の加熱用流路31に約100℃の触媒燃焼ガスが供給され、流入枠33内に供給されたエタノール+水が加熱され、分離ユニット36で、共沸したエタノール+水の蒸気が、分離ユニット36の多孔質膜34により水蒸気が凝縮され、エタノール蒸気は上方へ、水蒸気は凝縮して重力により下方に移動してエタノールを濃縮するようになっている。
【0025】
すなわち、図5に示すように、各段(図では3段)の温度をT0 ,T1 ,T2 とすると、T2 <T1 <T0 となり、下段の蒸気(温度T0 ,エタノール濃度X0 )は、その上段の温度T1 の多孔質膜34を通過する際に、温度T1 <T0 なので、蒸気中のエタノール蒸気は、矢印41のように上段の濃縮室35aに流入し、水蒸気の一部は、凝縮し、その凝縮水が、重力によって矢印42のように落下する。
【0026】
このようにして、多孔質膜34を矢印41のように通過した蒸気は、エタノール濃度X1(>X0 )となって、さらにその上段の温度T2 の多孔質膜34を通過する際に、さらに濃度が上昇し、最終的にはエタノール濃度50%程度にされる。
【0027】
多孔質膜34は、蒸気が多孔質膜34の孔を通過する間に、沸点の高い水蒸気が凝縮し、エタノール蒸気がそのまま通過できるような孔径にされ、また生じた凝縮水をある程度保持できるようになっている。
【0028】
改質器20は、濃縮されたエタノール蒸気+水蒸気を、改質触媒にてH2 とCOに改質し、その改質ガス23がシフト反応器22に供給され、水蒸気の存在下で、COを、CO2 にシフトすると共にシフト反応によりH2 を副生する。
【0029】
シフト反応器22からのガス23は、CO除去器24に供給され、同時にCO除去器24に空気が供給され、シフト反応できなかった未反応のCOが、CO除去器24内の燃焼触媒によるCO選択酸化反応で、CO2 にされて除去される。
【0030】
このCO選択酸化反応で生じた触媒燃焼ガスは、分離器17の加熱用流路31に供給される。
【0031】
燃料電池28は、固体高分子型で、水素ガス26が燃料極に供給され、空気27が空気極に供給され、水の電気分解と逆の反応で、発電が行われる。
【0032】
発電により生成した電気エネルギーは、例えば、埋め込み型人工心臓のポンプを駆動する電源として利用することができる。
【0033】
図6は、発酵器10の他の実施の形態を示したものである。
【0034】
図2の実施の形態では、流路14の内壁に、エタノールに変換する微生物を固定して微生物固定槽15としたが、本実施の形態では、微生物固定槽15に、血液が流れる流路11と半透膜13を介して対向する流路44を形成し、その流路44内に微生物を固定化したゲル45を充填して構成したものである。
【0035】
本実施の形態においても、半透膜13で、流路11を流れる血液中の糖分が流路44に流れ、微生物を固定化したゲル45により糖分がエタノールに変換される。
【0036】
図7は、発酵器10のさらに他の実施の形態を示したものである。
【0037】
本実施の形態では、微生物固定槽15を微生物を固定した多孔質体またはハニカム体46で形成したものである。
【0038】
本実施の形態においても、半透膜13で、流路11を流れる血液中の糖分がハニカム体46に流れ、微生物によりエタノールに変換される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施の形態を示す図である。
【図2】図1の発酵器の詳細断面図である。
【図3】図1の分離器の分解組立斜視図である。
【図4】図1の分離器の詳細断面図である。
【図5】分離器でのエタノール濃縮の原理を説明する図である。
【図6】本発明における発酵器の他の実施形態を示す詳細断面図である。
【図7】本発明における発酵器のさらに他の実施形態を示す詳細断面図である。
【符号の説明】
【0040】
10 発酵器
17 分離器
20 改質器
28 燃料電池
B 血液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液中の糖分を取り込んでエタノールに変換する発酵器と、該発酵器からのエタノールと水が供給され、エタノールを濃縮する分離器と、該分離器で濃縮されたエタノールを水素に改質する改質器と、生成水素を燃料として発電する燃料電池とを備えたことを特徴とするエネルギー生産装置。
【請求項2】
改質器には、その改質ガス中のCOをCO2 にシフトさせるシフト反応器が接続される請求項1記載のエネルギー生産装置。
【請求項3】
シフト反応器には未反応COを選択燃焼するCO除去器が接続され、CO除去器でCOが除去された水素を燃料電池に供給する請求項2記載のエネルギー生産装置。
【請求項4】
発酵器は、血液が流れる流路が形成された流路本体と、その流路と接し流路を流れる血液中の糖分を透過させる半透膜と、該半透膜で透過した糖分をエタノールに変換する微生物が固定された微生物固定槽とからなる請求項1〜3いずれかに記載のエネルギー生産装置。
【請求項5】
分離器は、発酵器からのエタノールと水とを加熱する加熱プレートと、その加熱プレートで蒸発されたエタノールと水を多段の多孔質膜を通してエタノール蒸気を通過させると共に水蒸気を凝縮分離してエタノールを濃縮する分離ユニットからなる請求項1〜4いずれかに記載のエネルギー生産装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−103183(P2007−103183A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−292157(P2005−292157)
【出願日】平成17年10月5日(2005.10.5)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【Fターム(参考)】