説明

エピスルフィドと二硫化炭素の交互共重合によるポリトリチオカーボナートの合成

【課題】炭素と硫黄から容易に合成できる二硫化炭素を原料として、高い重合活性、高い交互性、分子量分布、位置規則性の制御などを実現し得る新規の製造方法を開発するとともに、従来製造することができなかった新規なトリチオカーボナート交互共重合体を提供すること。
【解決手段】求核性試薬およびルイス酸性金属化合物の存在下で、エピスルフィドと二硫化炭素とを重合させるポリトリチオカーボナート交互共重合体の製造方法によって、数1000以上の数平均分子量を有する、下式(1)のポリトリチオカーボナート交互共重合体を製造した。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二硫化炭素とエピスルフィドとの交互共重合反応により得られるポリトリチオカーボナートおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子鎖中に硫黄原子を導入した高分子材料は、高い着色性や高屈折率、特定金属の捕捉などの特徴的な物性を発現することが期待されることから、近年、酸素の代わりに硫黄を導入した高分子化合物の研究が行われている。
【0003】
特開2005−320532号公報には、レンズ用ハードコート材料として、ポリアルキレンオキシドの酸素を硫黄原子に置き換えた構造を有するポリアルキレンスルフィドが記載されている。この材料は、プラスチック基材に対する密着性に優れ、かつ、屈折率の経時的な低下が少ないという利点を有する。
【0004】
また、交互共重合ポリカーボナートの繰り返し単位に含まれる1個ないし2個の酸素を硫黄に置き換えた構造を有するポリチオカーボナートおよびポリジチオカーボナートについて、E. Marianucciらは、屈折率を測定し、その結果を報告している。この論文によると、高分子鎖中に導入された硫黄原子に起因してポリマー材料の屈折率は高くなる(E. Marianucci, et al., Polymer Report, 35(7), 1994, 1564-1566)。
【0005】
このことから、ポリカーボナートの酸素をすべて硫黄に置き換えた構造を有するポリトリチオカーボナートについても、上記化合物とともに新規の光学材料として期待がもたれている。
【0006】
一方、ポリトリチオカーボナートの合成法については、以下の研究例が報告されている。
Sogaらは、エピスルフィドのアニオン性配位重合触媒として知られるジエチル亜鉛やジエチルカドミウムを用いて二硫化炭素とエチレンスルフィドの重合反応を試み、生成するポリマーの収率が著しく低いことを確認した。そこで、Sogaらは水銀触媒を使用してポリマーの収率を改善させた。しかし、この方法では生成ポリマーの交互性が低く、ポリマー主鎖の構造制御は困難であった(K.Soga, et al., Journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry, 14, 677-684(1976))。
【0007】
これに対して、Leungらは、二硫化炭素からトリチオカーボナートイオンを生成させ、エチレンジハライドと反応させてポリトリチオカーボナートを合成した。この方法でも、炭素数2〜3の低級アルキレン鎖を含むポリマー生成物の収率は著しく低い。その原因として、トリチオカーボナートイオンとエチレンジハライドとの反応により、熱力学的に比較的安定な5〜6員環の環状トリチオカーボナートが優先的に生成し、重合反応が進行しにくくなることが挙げられている(L.M.Leung, et al., Journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry, 31, 1799-1806(1993))。
【0008】
【特許文献1】特開2005−320532号
【非特許文献1】E.Marianucci, et al., Polymer Report, 35(7), 1564-1566(1994).
【非特許文献2】K.Soga, et al., Journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry, 14, 677-684(1976).
【非特許文献3】L.M.Leung, et al., Journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry, 31, 1799-1806(1993).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上のとおり、いずれの合成方法もポリトリチオカーボナート重合体の収量は低いことから、より効率的な合成法の開発が望まれる。
一方、二硫化炭素は炭素と硫黄から容易に合成できる化合物であるから、二硫化炭素を出発原料として利用できれば高分子鎖中への硫黄原子の効率的な導入方法となる可能性がある。
【0010】
そこで、本発明では、二硫化炭素を原料として、高い重合活性、高い交互性、位置規則性の制御などを実現し得る新規なポリトリチオカーボナートの製造方法を開発するとともに、従来製造することができなかった新規なトリチオカーボナート交互共重合体を提供することを目的とした。
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、二硫化炭素をエピスルフィドと反応させることによって、高分子構造が規則的に制御されたポリトリチオカーボナート交互共重合体を製造する方法を新たに見出し、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち、本発明は、下記式(1)で表される繰り返し単位を含むポリトリチオカーボナート交互共重合体を提供する。
【0013】
【化1】

【0014】
(式中、R1およびR2は、独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ、カルボキシル、直鎖または分岐鎖のC〜C20アルキル、C〜C20アルケニル若しくはC〜C20アルキニル、C〜C20シクロアルキル、C〜C24アリールまたはC〜C40アリールアルキルであり、あるいは、RおよびR2は、それらが結合する炭素と一緒になって飽和または不飽和のC5〜C10脂環式基を形成してもよく;前記アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキルおよび脂環式基並びに前記アリールアルキルのアルキル部分は、1個以上の二重結合または三重結合を含んでもよく;また、前記アルキル、アルケニルおよびアルキニル並びに前記アリールアルキルのアルキル部分は、ハロゲン原子、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、ニトロ、カルボキシルおよびスルホン酸基の中の1個以上の基で置換されていてもよく;前記シクロアルキル、アリール、アリールアルキルおよび脂環式基に含まれる飽和または不飽和の炭素環は、ハロゲン原子、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、ニトロ、カルボキシル、スルホン酸基、直鎖または分岐鎖のC〜C20アルキル、C〜C20アルケニル若しくはC〜C20アルキニル、C〜C20シクロアルキルからなる群から選ばれる1個以上の置換基で置換されてもよく、あるいは、該炭素環を構成する二個の隣接した炭素に結合する両置換基が該炭素と一緒になって飽和または不飽和のC〜C10脂環式基を形成してもよく;前記アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキルおよび脂環式基は1個以上のヘテロ原子を含んでよく、ここで前記ヘテロ原子は、窒素、酸素、硫黄、リンおよびケイ素の中から選択される1種類以上の原子であり;前記ハロゲンはフッ素,塩素,臭素およびヨウ素の中から選択される1種類以上の原子である;ただし、R1およびR2はともに水素原子であることはない)。
【0015】
本発明の一態様は、共重合体の主鎖にR配置およびS配置の不斉炭素が規則的に配置された、光学活性を有する交互共重合体を提供する。すなわち、本願発明は、上記式(1)においてRが水素原子の場合に、Rが結合する不斉炭素がR配置またはS配置の一方のみをとることを特徴とする光学活性交互共重合体を包含する。また、本願発明は、R、Rが共に水素原子以外の基であって、RがRに比べて嵩高な置換基である場合には、R、Rのそれぞれが結合する炭素が、(R配置、R配置)、(S配置、S配置)、(R配置、S配置)または(S配置、R配置)のいずれかのみをとるような規則的な配置を有する光学活性交互共重合体も包含する。
【0016】
さらに、本発明は、エピスルフィドと二硫化炭素との反応を、求核性試薬の存在下で行うことを特徴とする、ポリトリチオカーボナート交互共重合体を製造する方法を提供する。
【0017】
本発明の一態様は、エピスルフィドと二硫化炭素との反応を、求核性試薬とルイス酸性金属化合物の存在下で行うことを特徴とする、ポリトリチオカーボナート交互共重合体を製造する方法を提供する。
【0018】
本発明の別な一態様は、エピスルフィド三員環を構成する2個の炭素の一方または双方に不斉炭素中心を有するエピスルフィドを使用する場合に、複数存在する該エピスルフィド光学異性体の中から1種類のみ出発原料として使用して二硫化炭素と求核性試薬の存在下で反応させることを特徴とする、光学活性ポリトリチオカーボナート交互共重合体の製造方法を提供する。
【0019】
さらに、本発明の別の一態様は、上記方法により製造されるポリトリチオカーボナート交互共重合体、特に光学活性を有するポリトリチオカーボナート交互共重合体を包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本明細書中、「ポリトリチオカーボナート」の用語は、ポリカーボナートの交互共重合体の繰り返し単位に含まれる3個の酸素を硫黄に置き換えたような構造を有する高分子化合物を意味し、特に上記式(1)で表されるような、炭素数2の炭素鎖部分とトリチオカーボナート部分からなる繰り返し単位を含む交互共重合体をさす。
【0021】
本明細書中、「アルキル」の用語は、直鎖または分岐鎖状の炭化水素から1個の水素を除いた構造として表される置換基を意味する。アルキルの炭素数は、好ましくは1〜20、より好ましくは2〜12、より一層好ましくは1〜6である。
【0022】
本明細書中、「アルケニル」の用語は、末端に不飽和二重結合を有する直鎖または分岐鎖の炭化水素において、当該末端二重結合炭素から水素を除いた構造として表される置換基を意味する。アルケニルの炭素数は、好ましくは2〜20、より好ましくは2〜12、より一層好ましくは2〜6である。
【0023】
本明細書中、「アルキニル」の用語は、末端に不飽和三重結合を有する直鎖または分岐鎖の炭化水素において、当該末端三重結合炭素から水素を除いた構造として表される置換基を意味する。アルキニルの炭素数は、好ましくは2〜20、より好ましくは2〜12、より一層好ましくは2〜6である。
【0024】
本明細書中、「シクロアルキル」の用語は、3員環以上の環状アルキルを意味し、単環式のみならず多環式構造を有するものも包含する。また、環状アルキルは不飽和結合を含んでもよいが、芳香環そのものは意味しない。シクロアルキルの炭素数は、好ましくは4〜20、より好ましくは5〜10である。
【0025】
本明細書中、「アリール」の用語は、少なくとも1個の芳香環を含み、複数の芳香環が存在する場合はそれらが縮合環を形成してもよく、また、アリール中の芳香環はヘテロ原子を含む複素芳香環を含んでもよい。アリールに含まれる炭素数は、好ましくは6〜24、より好ましくは6〜18である。代表的なアリール基には、フェニル、ナフチル、アントラニルなどが挙げられる(ただし、これらに限定されない)。
【0026】
本明細書中、「アリールアルキル」の用語は、少なくとも1個のアリールを置換基として含むアルキル基を意味する。アリールアルキルに含まれる炭素数は、好ましくは7〜40、より好ましくは7〜20、より一層好ましくは7〜15である。
【0027】
本明細書中、「脂環式基」の用語は、単環式の炭素環構造を有する基であり、一部の結合に不飽和結合を含んでもよい。環を構成する炭素の数は、好ましくは5〜10、より好ましくは5〜8である。
【0028】
本明細書中、「ヘテロ原子」の用語は、炭素、水素、ハロゲン、遷移金属以外の元素を意味するが、好ましくは窒素、酸素、硫黄、リンおよびケイ素である。
本発明の共重合体において、ヘテロ原子はその原子価に応じて1個以上の炭素と単結合ないしは多重結合を形成して、置換基RおよびRに包含され得る。
【0029】
例えば、ヘテロ原子が酸素や硫黄の場合には、以下の形態で置換基中に包含され得る。
酸素原子はアルキルまたはアリールアルキルのアルキル鎖中で炭素と結合してエーテル結合形成し、アルコキシ基またはアリールオキシ基を生成することができる。また、酸素はアルキル鎖(環状または非環状のいずれの構造を形成する場合も含まれる)の炭素原子との間でカルボニル(C=O)を形成してもよく、該カルボニルと隣接する酸素または窒素とともにエステル構造またはアミド構造を与えてもよい。ヘテロ原子としてケイ素が含まれる場合にケイ素と炭素の間に存在してシリルオキシ基を生成してもよい。同様に、酸素の代わりにSが存在することによって、チオエーテル、チオニル(C=S)、チオエステルなどの構造が形成され得る。
【0030】
ケイ素は4価をとり1〜4個の炭素と結合し得るほか、フッ素、酸素など炭素以外の原子との結合を形成しながら置換基中に包含され得る。
一方、ハロゲン原子は、RおよびRに含まれ得るアルキル鎖、アリール環の炭素に結合する任意の水素原子と置き換わる形で含まれ得る。
【0031】
本発明のポリトリチオカーボナート交互共重合体は、エピスルフィドと二硫化炭素の共重合により製造することができる。
本発明の製造方法に使用される二硫化炭素は反応試薬であると同時に、溶媒でもある。したがって、本発明の方法では、二硫化炭素以外の有機溶媒を使用することなく反応を実施することができる。
【0032】
反応に使用するエピスルフィドと二硫化炭素のモル比は、典型的には1:0.1〜1:10であるが、好ましくは1:0.5〜1:3.0、より好ましくは1:1.0〜1:2.0である。
【0033】
本発明の製造方法に使用されるエピスルフィドは、通常はモノエピスルフィドであり、好ましくは、下記式(2)で表されるエピスルフィドである。
【0034】
【化2】

【0035】
上記式(2)中、R1およびR2は、独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ、カルボキシル、直鎖または分岐鎖のC〜C20アルキル、C〜C20アルケニル若しくはC〜C20アルキニル、C〜C20シクロアルキル、C〜C24アリールまたはC〜C40アリールアルキルであり、あるいは、RおよびR2は、それらが結合する炭素と一緒になって飽和または不飽和のC5〜C10脂環式基を形成してもよく;前記アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキルおよび脂環式基並びに前記アリールアルキルのアルキル部分は、1個以上の二重結合または三重結合を含んでもよく;また、前記アルキル、アルケニルおよびアルキニル並びに前記アリールアルキルのアルキル部分は、ハロゲン原子、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、ニトロ、カルボキシル、スルホン酸基の中の1個以上の基で置換されていてもよく;前記シクロアルキル、アリール、アリールアルキルおよび脂環式基に含まれる飽和または不飽和の炭素環は、ハロゲン原子、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、ニトロ、カルボキシル、スルホン酸基、直鎖または分岐鎖のC〜C20アルキル、C〜C20アルケニル若しくはC〜C20アルキニル、C〜C20シクロアルキルからなる群から選ばれる1個以上の置換基で置換されてもよく、あるいは、炭素環を構成する二個の隣接した炭素に結合する両置換基が該炭素と一緒になって飽和または不飽和のC〜C10脂環式基を形成してもよく;前記アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキルおよび脂環式基は1個以上のヘテロ原子を含んでよく、ここで前記ヘテロ原子は、窒素、酸素、硫黄、リンおよびケイ素の中から選択される1種類以上の原子であり;前記ハロゲンはフッ素,塩素,臭素およびヨウ素の中から選択される1種類以上の原子である。
【0036】
具体的なエピスルフィド化合物としては、以下に限定されるわけではないが、エチレンスルフィド、プロピレンスルフィド、1−ブテンスルフィド、2−ブテンスルフィド、イソブチレンスルフィド、1−ペンテンスルフィド、2−ペンテンスルフィド、1−へキセンスルフィド、1−オクテンスルフィド、1−ドデセンスルフィド、シクロペンテンスルフィド、シクロへキセンスルフィド、スチレンスルフィド、ビニルシクロへキセンスルフィド、3−フェニルプロピレンスルフィド、3,3,3−トリフルオロプロピレンスルフィド、3−ナフチルプロピレンスルフィド、3−フェノキシプロピレンスルフィド、3−ナフトキシプロピレンスルフィド、ブタジエンモノスルフィド、3−トリメチルシリルオキシプロピレンスルフィドなどが挙げられ、中でもエチレンスルフィド、プロピレンスルフィド、シクロへキセンスルフィドが好ましい。これらの化合物は単独で用いてもよく、2種以上を混合しても用いてもよい。また、エピスルフィドの三員環を構成する炭素が不斉中心である場合に、光学異性体をラセミ混合物として使用しても、光学異性体の一種類のみを単独で使用してもよい。
【0037】
本発明の共重合体の製造方法に利用される重合反応は、求核性試薬の攻撃を受けたエピスルフィドモノマーの開環により活性末端となるチオレートが生成し、二硫化炭素とエピスルフィドとが交互に活性末端に付加を繰り返すという機構で進行すると考えることが可能である。したがって、本発明には求核性の重合開始剤を使用することが望ましい。本発明では、エポキシドの開環に有用であると考えられる慣用のアニオン性求核性試薬を使用することができる。
【0038】
好ましい重合開始剤としては、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、カルボキシレートイオン、アジ化物イオンおよびアルコキシレートイオンなどを対アニオンとして含む、ビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウム塩、テトラアルキルアンモニウム塩、テトラフェニルホスホニウム塩、エチルトリフェニルホスホニウム塩およびメチルトリフェニルホスホニウム塩が挙げられる(ただし、これらに限定されない。)。
【0039】
本発明の共重合体の製造方法に使用可能なルイス酸性金属化合物は触媒として機能する。したがって、該金属化合物が存在しない場合でも重合反応は起こるとしても、該金属化合物が存在する場合には反応速度および反応収率が格段に向上することから、本発明を実施する上で該金属化合物体は存在することが望ましい。ルイス酸性金属化合物は、好ましくは金属錯体であり、さらに好ましくは周期表の3族〜13族元素およびマグネシウムおよびカルシウムの中から選択される元素を中心金属として含む金属錯体である。好適な中心金属には、アルミニウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、カドミウムに加え、イットリウム、ネオジムなどの希土類金属が含まれる。最も好ましい中心金属はクロムおよびコバルトである。いずれの金属も異なる複数の酸化状態をとり得るため、酸化数を特定することは適当ではないが、例えば、クロムおよびコバルトについて、3価の酸化状態で含まれる化合物を使用することができる。
【0040】
本発明に使用する金属錯体は、典型的には平面4配位構造のカチオン性金属錯体と対アニオンとの組み合わせからなる塩である。
本発明の金属錯体を構成し得る配位子は、NまたはOのいずれか、または両方を配位原子として含む、単一または複数の中性化合物またはアニオン性化合物である。好ましい配位子は、NとOを配位原子とするシッフ塩基系配位子、Nを配位原子とするポリフィリン系配位子、β−ジイミナト系配位子、ピリジン系配位子、Oを配位子原子とするアセチルアセトナト系、フェノキシド系、ベンゾエート系配位子、ピリジニウムアルコキシド、クロロアセテート、THFなどである(ただし、これらに限定されない。)。また、これらの配位子の中から複数の配位子を選択して組み合わせてもよい。さらに、同一分子中に上記配位子の複数を一部分として含む化合物でもよい。例えば、フェノキシドのアリール基が環状に連結された大環状化合物では、同一配位子の中に複数のフェノキシド部分が含まれ得ることになる。
【0041】
シッフ塩基系配位子には、サリチルアルジミナト系配位子、サリチリデンエチレンジイミナト(salen)系配位子などがある。
本発明の金属錯体に含まれ得る対アニオンは、以下に限定されわけではないが、好ましくは、アジ化イオン、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオンなどのハライドイオン、アセテートイオン、ベンゾエートイオンなどのカルボキシレートイオンを含んだ有機酸アニオンおよびアルコキシレートイオンなどである。
【0042】
以上の金属と配位子との組み合わせの中で、好ましい金属錯体は、下記式(3)および(4)で表されるクロム(III)(シッフ塩基)塩化物およびコバルト(III)(シッフ塩基)塩化物である。
【0043】
【化3】

【0044】
本発明の重合反応は、生成する反応中間体に対する酸素などの影響を排除するために不活性雰囲気下で実施することが好ましい。
反応は通常室温で行われるが、場合により室温から二硫化炭素の加熱還流温度(46℃)までの範囲で行ってもよい。
反応時間は、使用する触媒化合物の種類その他の反応条件により変動し得るが、典型的には反応開始後、数時間〜数十時間で終了する。
副生成物の環状トリチオカーボナートは溶媒に溶解しており、ポリマーが固体として得られる場合にはポリマーを溶媒から取り出すことにより副生成物から分離することができる。他方、ポリマーが溶解している場合にはメタノールなどの貧溶媒を添加することによりポリマーのみを析出させて、副生成物から分離する。
【0045】
ポリマーの精製は溶媒からの再析出によって行うことができる。
得られたポリマー生成物の同定は、HNMRおよび13CNMRスペクトル、赤外吸収スペクトル、平均分子量および分子量分布の測定によって行った。交互重合による規則的構造については、前述したとおり上記NMRスペクトルにより確認した。
【0046】
NMRスペクトルの測定は、JEOL社製JNM−ECP500(500MHz)を用いて行った。また、赤外吸収スペクトルの測定は、SHIMADZU社製FT−IR8400を用いて、溶液法(二硫化炭素)により400〜4000cm-1の範囲で行った。
【0047】
平均分子量は、ジーエルサイエンス社製高速液体クロマトグラフィーシステム(DG660B・PU713・CO631A・UV702・RI704)とSHODEX社製KF−804Fカラム2本を用い、40℃、流速1ml/分の条件でテトラヒドロフランを溶出液として、ポリスチレン標準を基準に換算して測定した。
【0048】
比旋光度の測定は日本分光社製DIP−360を使用して行った。
本発明の交互共重合体の熱的性質を調べるために、メトラートレド社製DSC30を用いて−50〜100℃の温度範囲でガラス転移温度(Tg)を測定した。なお、この測定において、ポリマーは溶融前に分解した(180〜200℃)ことから、融点の測定できなかた。
【0049】
本発明により製造される交互共重合体の主鎖は、エピスルフィドと二硫化炭素が1:1で交互に連結された直鎖構造である。図1、2、4、5は、本発明の方法により製造されたポリトリチオカーボナート交互共重合体のHおよび13CNMRスペクトルの測定結果である。このスペクトルからは、共重合体の主鎖には交互性の不完全さに起因する水素または炭素のシグナルは観測されず、完全な交互共重合体であることを確認することができる。
【0050】
本発明の交互共重合体の分子量に関して特に制限する必要はないが、ゲルパミエーションクロマトグラフィー(GPC;ポリスチレン換算)によって測定した典型的な数平均分子量Mは1000以上、好ましくは2,000〜1,000,000、さらに好ましくは3,000〜500,000である。
【0051】
本発明の交互共重合体は比較的狭い分子量分布(M/M)を有し得る。具体的には、約4未満であり、好ましくは約2.5未満、最も好ましくは、約1.0〜約1.8である。
【0052】
本発明の製造方法では、原料であるエピスルフィドに光学不斉中心が存在する場合に、光学異性体の1種類を選択して使用することにより光学活性な対掌体の一方のみに相当するポリマーを得ることができる。
【0053】
例えば、プロピレンスルフィドのようにエピスルフィド環の炭素原子の一方のみが不斉中心となる場合は、2種類の存在するエピスルフィドの光学異性体の一方を選択して使用すれば、下図に示すとおり、交互重合反応により得られるポリマーの主鎖中には必然的にSまたはRのいずれかの配置の炭素が規則的に並び、生成したポリマー分子は光学活性を有することになる。
【0054】
【化4】

【0055】
以上のことは、エピスルフィド環の二個の炭素とも不斉中心である場合にも同様に当てはまる。すなわち、二個の不斉炭素に結合する少なくとも一個の置換基が他方の炭素に結合する置換基と異なる場合には、立体構造が制御された交互共重合体が得られる場合がある。例えば、下図のように、置換基RとRが嵩高さの点で異なる場合には、置換基の立体障害が原因で、求核剤の攻撃によって開裂しやすい一方のC−S結合が優先的に開裂して重合反応が進行する(下図中、丸の大きさは置換基の嵩高さを表す。)。したがって、下図に示すようなエピスルフィド光学異性体の1種類のみを出発原料として使用すれば、不斉炭素中心が規則的に並んだポリマーが生成し、このポリマー分子は光学活性を有することになる。このようにして、対掌体の一方のみを選択的に合成することが可能である。
【0056】
【化5】

【本発明の効果】
【0057】
本発明の製造方法により、二硫化炭素とエピスルフィドの新規トリチオカーボナート交互共重合体が得ることができる。特に本発明では、高重合活性を有する触媒を使用により効率的な交互重合反応の実施が可能である。また、原料化合物のエピスルフィドに複数の光学異性体が存在する場合には単一の異性体を出発原料として選択することにより、生成するポリマーの主鎖の不斉炭素の配置を制御することができる。これにより、光学活性ポリマーの対称体の一方のみを選択的に合成することができる。
【実施例】
【0058】
以下の実施例により、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
本実施例に使用するビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウムクロリドはAldrich社から入手可能な97%グレード試薬を精製せずにそのまま用いた。プロピレンスルフィドは東京化成工業から入手可能な>98%グレード試薬(安定剤入り)を水素化カルシウムで脱水後、蒸留したものを使用した。二硫化炭素は関東化学から入手可能な特級グレード試薬を蒸留したものを使用した。シクロヘキセンスルフィドは文献(Organic Synthesis, Collective Volume 4, 232)に記載の方法に従って調製したものを使用した。また、光学活性なプロピレンスルフィドは文献(Organometallics 1999, 18, 2061)に記載の方法に従って調製したものを使用した。触媒であるクロム(シッフ塩基)錯体は、Inorg. Chem. 2004, 43, 6024.にに記載の方法に従って調製したものを使用した。触媒であるコバルト(シッフ塩基)錯体は、J. Am. Chem. Soc. 2002, 124, 1307に記載の方法に従って調製したものを使用した。
【0059】
実施例1 プロピレンスルフィドと二硫化炭素との交互共重合反応によるコポリマーの合成
1−A クロム(III)(シッフ塩基)錯体を使用した合成例
1−A(3) プロピレンスルフィドの二硫化炭素に対するモル比が1:1の場合
【0060】
【化6】

【0061】
アルゴンガス雰囲気下、20 mL容のシュレンク管反応器にクロム錯体 (13 mg, 0.02 mmol)、ビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウムクロリド (11.5 mg, 0.02 mmol)、プロピレンスルフィド(0.8 mL, 10 mmol)および二硫化炭素 (0.6 mL) を入れて、室温で5時間撹拌した。反応容器に内部標準としてドデカン (0.1 mL, 0.44 mmol)、二硫化炭素 (5.0 mL) を加えた。その後、反応混合物の一部を抜き取って、重クロロホルムで希釈して1H NMR測定を行い、収率および共重合体/環状体のモル比を決定した。残りの反応混合物に〔1〕1 M塩酸(2 mL)とメタノール (5 mL) を徐々に加えた後、さらにメタノール (100 mL) を加えて共重合体を析出させた。次に、〔2〕上澄み液をデカンテーションで除き、二硫化炭素 (5 mL) を加えて共重合体を溶解させた。〔1〕〔2〕の操作を二度繰り返しおこなった後、濃縮・真空乾燥して重合体を得た [712 mg, 47% yield, Mn = 20,300 (g・mol-1), Mw/Mn= 1.6,Tg = 22.5 °C]。IR (CHCl3) 1066, 1045 cm-1 (C=S)。 1H NMR (CDCl3) d 4.52-4.43 (m, 1H), 3.38-3.75 (m, 2H), 1.49 (d, 7.1 Hz, 3H); 13C NMR (CDCl3): d 221.09, 45.82, 41.62, 19.11。
【0062】
1-A(1) プロピレンスルフィドの二硫化炭素に対するモル比が1:0.5の場合
プロピレンスルフィド:二硫化炭素のモル比が1:0.5となるように二硫化炭素の使用量を調節した以外は、上記1−A(3)と全く同様の手順で合成を行った。得られた結果は、下表に記載の通りである。
【0063】
1-A(2) プロピレンスルフィドの二硫化炭素に対するモル比が1:0.5の場合
プロピレンスルフィド:二硫化炭素のモル比が1:0.7となるように二硫化炭素の使用量を調節した以外は、上記1−A(3)と全く同様の手順で合成を行った。得られた結果は、下表に記載の通りである。
【0064】
1-A(4) プロピレンスルフィドの二硫化炭素に対するモル比が1:1.5の場合
プロピレンスルフィド:二硫化炭素のモル比が1:1.5となるように二硫化炭素の使用量を調節した以外は、上記1−A(3)とを全く同様の手順で合成を行った。得られた結果は、下表に記載の通りである。
【0065】
1-A(5) プロピレンスルフィドの二硫化炭素に対するモル比が1:2.0の場合
プロピレンスルフィド:二硫化炭素のモル比が1:2.0となるように二硫化炭素の使用量を調節した以外は、上記1−A(3)と全く同様の手順で合成を行った。
【0066】
以上の実施例によって得られた結果をまとめると、下表の通りである。
【0067】
【表1】

【0068】
1−B コバルト(III)(シッフ塩基)錯体を使用した合成例
【0069】
【化7】

【0070】
アルゴンガス雰囲気下、20 mL容のシュレンク管反応器にコバルト錯体(13 mg, 0.02 mmol)、ビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウムクロリド(12 mg, 0.02 mmol)、プロピレンスルフィド(0.80 mL, 10 mmol)および二硫化炭素 (1.2 mL)を入れ、室温で5時間撹拌した。反応容器に内部標準としてドデカン(0.10 mL, 0.44 mmol)、二硫化炭素(2.0 mL)を加えた。その後、反応混合物の一部を抜き取り,重クロロホルムで希釈して1H NMR測定をおこない、共重合体/環状体のモル比を決定した。残りの反応混合物に〔1〕メタノール(100 mL)を一気に加えて共重合体を析出させた。次に、〔2〕上澄み液をデカンテーションで除き、二硫化炭素(5 mL)を加えて共重合体を溶解させた。〔1〕〔2〕の操作を二度繰り返しおこなった後、濃縮・真空乾燥して重合体を得た[120 mg, 8% yield, Mn= 10,000 (g・mol-1), Mw/Mn = 2.4]。
【0071】
1−C プロピレンスルフィドの光学異性体の1種類のみを出発原料として使用した、光学活性交互共重合体の合成
【0072】
【化8】

【0073】
アルゴンガス雰囲気下、20 mL容のシュレンク管反応器にクロム錯体(16 mg, 0.025 mmol)、ビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウムクロリド(14mg, 0.025 mmol)、光学活性(S)-プロピレンスルフィド(0.40 mL, 5 mmol)および二硫化炭素(0.60 mL)を入れ、室温で5時間撹拌した。反応容器に内部標準としてドデカン(0.10 mL, 0.44 mmol)、二硫化炭素(2.0 mL)を加えた。その後、反応混合物の一部を抜き取り,重クロロホルムで希釈して1H NMR測定をおこない、共重合体/環状体のモル比を決定した。残りの反応混合物に〔1〕メタノール(100 mL)を一気に加えて共重合体を析出させた。次に、〔2〕上澄み液をデカンテーションで除き、二硫化炭素(5 mL)を加えて共重合体を溶解させた。〔1〕〔2〕の操作を二度繰り返しおこなった後、濃縮・真空乾燥して重合体を得た[595 mg, 79% yield, Mn= 23,200 (g・mol-1), Mw/Mn = 2.2]。比旋光度:[a]D18= -213.3 ° (c 0.53, CS2)。
【0074】
実施例2 シクロへキセンスルフィドと二硫化炭素の交互共重合反応によるコポリマー合成
【0075】
【化9】

【0076】
アルゴンガス雰囲気下、20 mL容のシュレンク管反応器にクロム錯体(13 mg, 0.02 mmol)、ビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウムクロリド(12 mg, 0.02 mmol)、シクロヘキセンスルフィド(1.1 mL, 10 mmol)および二硫化炭素 (1.2 mL)を入れ、室温で5時間撹拌した。反応容器に内部標準としてドデカン(0.10 mL, 0.44 mmol)、二硫化炭素(2.0 mL)を加えた。その後、反応混合物の一部を抜き取り,重クロロホルムで希釈して1H NMR測定をおこない、共重合体/環状体のモル比を決定した。残りの反応混合物に〔1〕1 M塩酸(2 mL)とメタノール(5 mL)を徐々に加えた後、メタノール(100 mL)を一気に加えて共重合体を析出させた。次に、〔2〕上澄み液をデカンテーションで除き、二硫化炭素(5 mL)を加えて共重合体を溶解させた。〔1〕〔2〕の操作を二度繰り返しおこなった後、濃縮・真空乾燥して重合体を得た[550 mg, 29% yield, Mn= 8700 (g・mol-1), Mw/Mn = 1.8]。1H NMR (CDCl3) d 4.49-4.37 (br, 2H), 2.28-2.16 (br, 2H), 1.82-1.61 (br, 4H), 1.59-1.49 (br, 2H); 13C NMR (CDCl3) d 219.71 (br), 52.49 (br), 52.26 (br), 31.92 (br), 24.70 (br)。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】実施例1で得られたポリチオカーボナート交互重合体のH NMRスペクトル
【図2】実施例1で得られたポリチオカーボナート交互重合体の13C NMRスペクトル
【図3】実施例1で得られたポリチオカーボナート交互重合体のIRスペクトル
【図4】実施例2で得られたポリチオカーボナート交互重合体のH NMRスペクトル
【図5】実施例2で得られたポリチオカーボナート交互重合体の13C NMRスペクトル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,000以上の数平均分子量を有する、下記式(1)で表される繰り返し単位を含むポリトリチオカーボナート交互共重合体。
【化1】

(式中、R1およびR2は、独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ、カルボキシル、直鎖または分岐鎖のC〜C20アルキル、C〜C20アルケニル若しくはC〜C20アルキニル、C〜C20シクロアルキル、C〜C24アリールまたはC〜C40アリールアルキルであり、あるいは、RおよびR2は、それらが結合する炭素と一緒になって飽和または不飽和のC5〜C10脂環式基を形成してもよく;前記アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキルおよび脂環式基並びに前記アリールアルキルのアルキル部分は、1個以上の二重結合または三重結合を含んでもよく;また、前記アルキル、アルケニルおよびアルキニル並びに前記アリールアルキルのアルキル部分は、ハロゲン原子、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、ニトロ、カルボキシル、スルホン酸基の中の1個以上の基で置換されていてもよく;前記シクロアルキル、アリール、アリールアルキルおよび脂環式基に含まれる飽和または不飽和の炭素環は、ハロゲン原子、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、ニトロ、カルボキシル、スルホン酸基、直鎖または分岐鎖のC〜C20アルキル、C〜C20アルケニル若しくはC〜C20アルキニル、C〜C20シクロアルキルからなる群から選ばれる1個以上の置換基で置換されてもよく、あるいは、炭素環を構成する二個の隣接した炭素に結合する両置換基が該炭素と一緒になって飽和または不飽和のC〜C10脂環式基を形成してもよく;前記アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキルおよび脂環式基は1個以上のヘテロ原子を含んでよく、ここで前記ヘテロ原子は、窒素、酸素、硫黄、リンおよびケイ素の中から選択される1種類以上の原子であり;前記ハロゲンはフッ素,塩素,臭素およびヨウ素の中から選択される1種類以上の原子である;ただし、R1およびR2はともに水素原子であることはない)。
【請求項2】
数平均分子量が3,000〜500,000である、請求項1に記載の共重合体。
【請求項3】
Rが水素原子を表し、Rが水素原子以外の置換基を表すことを特徴とする、請求項1または2に記載の共重合体。
【請求項4】
Rが結合する不斉炭素がR配置またはS配置の一方のみをとる、請求項3に記載の共重合体。
【請求項5】
Rが水素原子を表し、Rがメチル基を表すことを特徴とする、請求項3または4に記載の共重合体。
【請求項6】
R、Rが共に水素原子以外の置換基を表すことを特徴とする、請求項1または2に記載の共重合体。
【請求項7】
RとRが異なる置換基を表し、RがRに比べて嵩高な基であることを特徴とする、請求項6に記載の共重合体。
【請求項8】
RおよびRが結合する不斉炭素が(R配置、R配置)、(S配置、S配置)(R配置、S配置)および(S配置、R配置)のいずれかのみをとることを特徴とする、請求項7に記載の共重合体。
【請求項9】
RおよびRが、それらが結合する炭素原子と一緒になってシクロヘキサン環を形成する、請求項6に記載の共重合体。
【請求項10】
エピスルフィドと二硫化炭素との反応によりポリトリチオカーボナート交互共重合体を製造する方法であって、前記反応を求核性試薬の存在下で行うことを特徴とする前記方法。
【請求項11】
求核性試薬とともにルイス酸性金属化合物の存在下で前記反応を行うことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ルイス酸性金属化合物が、周期表の3族〜13族元素およびマグネシウムおよびカルシウムの中から選択される元素を中心金属として含む金属錯体であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記金属がアルミニウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、カドミウムおよび希土類金属からなる群から選ばれる少なくとも1種類の金属であることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記金属がクロムまたはコバルトである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
金属錯体が平面4配位構造のカチオン性錯体と対アニオンとの組み合わせからなることを特徴とする、請求項12〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
金属錯体の配位子が、NまたはOのいずれか、または両方を配位原子として含む、単一または複数の中性配位子またはアニオン性配位子からなる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
配位子がシッフ塩基系化合物である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
金属錯体のカチオン性錯体が下記式(2)または(3)で表されることを特徴とする、請求項12〜17のいずれか1項に記載の方法。
【化2】

【請求項19】
エピスルフィドが、エピスルフィド三員環を構成する2個の炭素のいずれか一方にのみ不斉中心を有し、前記エピスルフィドが複数存在する光学異性体の1種類のみで構成されていることを特徴とする、請求項10〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
エピスルフィドが、エピスルフィド三員環を構成する2個の炭素の双方ともに不斉中心を有し、一方の炭素に結合する置換基の少なくとも一つが他方の炭素に結合する置換基とは異なり、前記エピスルフィドが複数存在する光学異性体の1種類のみで構成されていることを特徴とする、請求項10〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
請求項10〜18のいずれか1項に記載の方法により製造される、ポリトリチオカーボナート交互共重合体。
【請求項22】
請求項19または20の方法により製造される、光学活性ポリトリチオカーボナート交互共重合体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−238639(P2007−238639A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−58500(P2006−58500)
【出願日】平成18年3月3日(2006.3.3)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】