説明

エポキシ樹脂及びフェノール樹脂

【課題】耐熱性、耐湿性、耐衝撃性に優れたビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂において、400nmにおける吸光度が小さいエポキシ樹脂を提供すること。
【解決手段】GPC分析において分子量400〜600(ポリスチレン換算)の間にピークとして検出される成分が0〜2.1面積%であることを特徴とする下記式(1)で表されるエポキシ樹脂。本発明エポキシ樹脂は、ビス(置換メチル)−ビフェニルの純度が95〜100重量%であるビフェニル化合物とフェノールを縮合し、これをグリシジルエーテル化して得られる。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光透過性に優れたエポキシ樹脂及びその原料として有用なフェノール樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は種々の硬化剤で硬化させることにより、一般的に機械的性質、耐水性、耐薬品性、耐熱性、電気的性質などに優れた硬化物となり、接着剤、塗料、積層板、成形材料、注型材料などの幅広い分野に利用されている。半導体封止材などの用途においては耐熱性が要求されるためクレゾールノボラック型エポキシ樹脂が広く利用されている。実装方式は、表面実装方式が一般的になり、半導体パッケージも半田リフロー時に直接高温に晒されることが多くなった上、近年の環境問題に対する意識の向上につれ、半導体を実装する際に鉛フリー半田を使用する場合が増えている。鉛フリー半田は従来の半田と比較して溶融温度が約20℃高い(約260℃)ため、半田リフロー時にパッケージクラックが生じる可能性は従来の半導体封止材よりもはるかに高くなった。そのような背景において、耐熱性、耐湿性、耐衝撃性等の諸特性に優れた性能を有するエポキシ樹脂として、ビフェニルノボラック型のエポキシ樹脂が提案されている(特許文献1)。一方では、LED、CCD、フォトカプラなどの光半導体素子の封止材料としてもエポキシ樹脂系の封止材料が性能と経済性のバランスの点で好ましいため、広く用いられている。近年、LEDの分野においては白色LEDを実現するために紫外光を発するLED(紫外LED)の開発が進んでいる。紫外LEDの場合、発せられる光の波長は400nm付近となるためにその波長において透過性すなわち吸光度の小さいエポキシ樹脂が望まれている。
【0003】
【特許文献1】特開平5−117350号公報(第1−6頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、耐熱性、耐湿性、耐衝撃性に優れたビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂であって、400nmにおける吸光度が小さいエポキシ樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の成分が少ないエポキシ樹脂が上記特性を満たすことを見いだし、本発明を完成させるに至った。
【0006】
即ち、本発明は
(1)下記式(1)で表されるエポキシ樹脂であって、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析において分子量400〜600(ポリスチレン換算)の間にピークとして検出される成分が0〜2.1面積%であることを特徴とするエポキシ樹脂、
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、nは平均値で1〜6の正数を示す。)
(2)下記式(2)で表される化合物の純度が95〜100重量%のビフェニル化合物とフェノールを反応させ得られる、式(3)で表されるフェノール樹脂をグリシジルエーテル化して得られるエポキシ樹脂、
【0009】
【化2】

【0010】
(式中、Xは塩素原子、臭素原子、メトキシ基、エトキシ基または水酸基を表す。)
【0011】
【化3】

【0012】
(式中、nは平均値で1〜6の正数を示す。)
(3)下記式(2)で表される化合物の純度が95〜100重量%のビフェニル化合物とフェノールを反応させ得られる、式(3)で表されるフェノール樹脂、
【0013】
【化4】

【0014】
(式中、Xは塩素原子、臭素原子、メトキシ基、エトキシ基または水酸基を表す。)
【0015】
【化5】

【0016】
(式中、nは平均値で1〜6の正数を示す。)
に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明のエポキシ樹脂は、本来有している耐熱性、耐湿性、耐衝撃性等の優れた諸特性に加えて、光透過性も高いため、電気・電子材料、成型材料、注型材料、積層材料、塗料、接着剤、レジストのみならず、光学材料の用途にもきわめて有用である。また、本発明のフェノール樹脂は該エポキシ樹脂の原料として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明のフェノール樹脂は、式(2)で表される化合物の純度が95〜100重量%であるビフェニル化合物とフェノールを縮合反応させて得られる。本発明のエポキシ樹脂は、前記式(3)で表される本発明のフェノール樹脂をエピハロヒドリンと反応させるによってグリシジルエーテル化して得ることができる。
【0019】
式(2)のビフェニル化合物としては例えば、4,4’−ビス(クロロメチル)−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス(ブロモメチル)−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス(メトキシメチル)−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス(エトキシメチル)−1,1’−ビフェニルなどが挙げられる。市販品としてはシグマアルドリッチ社の4,4’−ビス(クロロメチル)−1,1’−ビフェニルを入手することができる。これらのビフェニル化合物は、通常ビス(置換メチル)−ビフェニル体のみではなく、通常これの2量体やモノ(置換メチル)−ビフェニル体等が不純物として混在している。
本発明においては、これら不純物を除去し式(2)の化合物の純度が95〜100重量%にまで高める。純度の向上方法としては、特に制限がなくそれ自体公知の方法で行うことができる。具体的には、粗原料をトルエンやシクロヘキサンに溶解し、再結晶する。
【0020】
フェノールの使用量は、式(2)で表されるビフェニル化合物1モルに対し通常1.5〜20モル、好ましくは2.0〜15モルである。
【0021】
反応時に必要に応じて酸触媒を添加することができる。具体的には、種々のものが使用できるが硫酸、p−トルエンスルホン酸、シュウ酸等の有機あるいは無機酸、塩化第二錫、塩化亜鉛、塩化第二鉄等のフリーデルクラフツ型触媒等が挙げられる。なかでも塩化第二錫、硫酸、p−トルエンスルホン酸が好ましい。これら酸触媒の使用量は触媒の種類により異なるが、式(2)で表されるビフェニル化合物を含む原料に対して0.0005〜5重量%程度を添加すれば良い。
【0022】
縮合反応は無溶剤でも溶剤の存在下でも行うことが出来る。溶剤を使用する場合の用い得る具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン等が挙げられる。溶剤の使用量は、式(2)で表されるビフェニル化合物とフェノールの合計重量に対して通常10〜300重量%、好ましくは20〜250重量%である。縮合反応は、反応液を分取、分析して式(2)で表されるビフェニル化合物が完全に消失するまで行う。反応温度としては通常40〜150℃、反応時間としては通常1〜10時間である。
【0023】
縮合反応終了後、中和、水洗などにより酸触媒を除去し、次いで加熱減圧下で溶剤及び未反応のフェノールを除去することによって式(3)で表される本発明のフェノール樹脂が得られる。
【0024】
こうして得られた式(3)で表されるフェノール樹脂をエピハロヒドリン中でアルカリ金属水酸化物の存在下、グリシジルエーテル化して本発明のエポキシ樹脂を得ることができる。
【0025】
本発明のエポキシ樹脂を得る際のグリシジルエーテル化反応に使用されるエピハロヒドリンとしては、エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン、エピヨードヒドリン、β−メチルエピクロルヒドリン等があるが、工業的に入手しやすく安価なエピクロルヒドリンが好ましい。この反応は従来公知の方法に準じて行うことが出来る。
【0026】
反応は例えば、式(3)で表されるフェノール樹脂とエピハロヒドリンの混合物に水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の固体を添加し、または添加しながら20〜120℃で0.5〜10時間反応させる。この際アルカリ金属水酸化物は水溶液を使用してもよく、その場合は該アルカリ金属水酸化物の水溶液を連続的に添加すると共に反応混合物中から減圧下、または常圧下、連続的に水及びエピクロルヒドリンを留出させ、更に分液し水は除去しエピクロルヒドリンは反応混合中に連続的に戻す方法でもよい。
【0027】
上記の方法において、エピハロヒドリンの使用量はフェノール樹脂の水酸基1当量に対して通常0.5〜20モル、好ましくは0.7〜10モルである。アルカリ金属水酸化物の使用量はフェノール樹脂中の水酸基1当量に対し通常0.5〜1.5モル、好ましくは0.7〜1.2モルである。
また、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の非プロトン溶媒を添加することにより下記に定義する加水分解性ハロゲン量の低いエポキシ樹脂が得られ、このエポキシ樹脂は電子材料封止用途に適する。
【0028】
非プロトン性極性溶媒の使用量はエピハロヒドリンの重量に対し通常5〜200重量%、好ましくは10〜100重量%である。上記の溶媒以外にもメタノール、エタノールとのアルコール類を添加することによっても反応が進み易くなる。また、トルエン、キシレン等も使用することができる。ここで加水分解性ハロゲン量とは、例えば該エポキシ樹脂をジオキサンに添加し、数十分還流しながらKOH/エタノール溶液で滴定することにより測定することができる。
【0029】
また、フェノール樹脂と過剰のエピハロヒドリンの混合物にテトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライドなどの第四級アンモニウム塩を触媒として使用し、50〜150℃で1〜10時間反応させ、得られるフェノール樹脂のハロヒドリンエーテルに水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の固体または水溶液を加え、再び20〜120℃で1〜10時間反応させてハロヒドリンエーテルを閉環させて本発明のエポキシ樹脂を得ることもできる。この場合の第四級アンモニウム塩の使用量はフェノール樹脂の水酸基1モルに対して通常0.001〜0.2モル、好ましくは0.05〜0.1モルである。アルカリ金属水酸化物の使用量はフェノール樹脂の水酸基1モルに対して通常0.8〜1.5モル、好ましくは0.9〜1.1モルである。
【0030】
通常これらの反応生成物は水洗後、または水洗無しに加熱減圧下、過剰のエピハロヒドリン類や溶媒等を除去した後、再びトルエン、メチルイソブチルケトン等の溶媒に溶解し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を加えて再び反応を行う。この場合アルカリ金属水酸化物の使用量はフェノール樹脂の水酸基1モルに対して通常0.01〜0.2モル、好ましくは0.05〜0.1モルである。反応温度は通常50〜120℃、反応時間は通常0.5〜2時間である。
【0031】
反応終了後、副生した塩をろ過、水洗などにより除去し、更に加熱減圧下、トルエン、メチルイソブチルケトン等の溶媒を留去することにより本発明のエポキシ樹脂を得ることができる。
【0032】
本発明のエポキシ樹脂は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析において、分子量400〜600(ポリスチレン換算)の間にピークとして検出される成分が、0〜2.1面積%となる。この成分(以下、不純成分という)は、原料のビフェニル化合物中の不純物に起因するものと考えられる。不純成分が存在していても、例えば特許文献1記載の耐熱性、耐湿性、耐衝撃性等の物性は大きく低下することはない。しかしながら、本発明のエポキシ樹脂の最も顕著な特徴である透明性に関しては、影響があり、不純成分の割合が、前記分析において2.1面積%を越えると透明性の低下が顕著になる。
【0033】
本発明のエポキシ樹脂は、透明性に優れるため、例えば光半導体の封止材料等に好適に使用できるが、この用途以外にも種々の用途に使用できる。本発明のエポキシ樹脂は、通常、硬化剤、硬化触媒などと組み合わせることにより、エポキシ樹脂組成物として使用する。エポキシ樹脂組成物の具体的な用途例としては、プリント配線基板、ソルダーレジスト、半導体封止材、位相差フィルムなどの光学材料、成型材料、塗料、接着剤などが挙げられ。
【0034】
前記のエポキシ樹脂組成物において、本発明のエポキシ樹脂は単独で、または他のエポキシ樹脂と併用して用いることが出来る。併用する場合、本発明のエポキシ樹脂の全エポキシ樹脂中に占める割合は50重量%以上が好ましく、特に60重量%以上が好ましい。
【0035】
本発明のエポキシ樹脂と併用し得るエポキシ樹脂の具体例としてはビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール縮合型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、芳香族エポキシ樹脂の核水素化物等が挙げられるが、これらは単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0036】
前記エポキシ樹脂組成物が含有する硬化剤としては、例えばアミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物、フェノ−ル系化合物などが挙げられる。用い得る硬化剤の具体例としては、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、フェノ−ルノボラック、及びこれらの変性物、イミダゾ−ル、BF−アミン錯体、グアニジン誘導体、本発明のフェノール樹脂などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0037】
前記エポキシ樹脂組成物において硬化剤の使用量は、エポキシ樹脂のエポキシ基1モルに対して0.7〜1.2当量が好ましい。エポキシ基1モルに対して0.7当量に満たない場合、或いは1.2当量を越える場合、いずれも硬化が不完全になり、良好な硬化物性が得られない恐れがある。
【0038】
また前記エポキシ樹脂組成物においては硬化促進剤を使用することも出来る。用い得る硬化促進剤の具体例としては2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の第3級アミン類、トリフェニルホスフィンなどのホスフィン類、オクチル酸スズ等の金属化合物が挙げられる。硬化促進剤はエポキシ樹脂100重量部に対して0.1〜5.0重量部が必要に応じ用いられる。
【0039】
前記エポキシ樹脂組成物は必要により無機充填剤を含有し得る。用い得る無機充填剤の具体例としてはシリカ、アルミナ、タルク等が挙げられる。無機充填剤は本発明のエポキシ樹脂組成物において0〜90重量%を占める量が用いられる。更に本発明のエポキシ樹脂組成物には、シランカップリング剤、ステアリン酸、パルチミン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の離型剤、顔料などの種々の配合剤を添加することが出来る。
【0040】
前記エポキシ樹脂組成物は、各成分を均一に混合することにより得られる。本発明のエポキシ樹脂組成物は従来知られている方法と同様の方法で容易にその硬化物とすることが出来る。例えば本発明のエポキシ樹脂と硬化剤ならびに必要により硬化促進剤、無機充填剤及び配合剤とを必要に応じて押出機、ニーダ、ロールなどを用いて均一になるまで十分に混合してエポキシ樹脂組成物を得、そのエポキシ樹脂組成物を溶融後注型あるいはトランスファー成型機などを用いて成型し80〜200℃で、0.5〜20時間加熱することにより硬化物を得ることが出来る。
【実施例】
【0041】
次に本発明を実施例により更に具体的に説明するが、以下において部は特に断わりのない限り重量部である。なお、ビフェニル化合物の純度、GPC、エポキシ当量、軟化点、溶融粘度は以下の条件で測定した。
【0042】
・ビフェニル化合物の純度
高速液体クロマトグラフィー(面積百分率法)
カラム:ジーエルサイエンス社製HPLCカラム(Inertsil ODS−2)
カラム温度:40℃
溶離液:アセトニトリル/水
グラジエント条件:アセトニトリル/水=30/70(0分)
アセトニトリル/水=100/0(28分)
アセトニトリル/水=100/0(45分)
流量:1.0ml/分
検出:UV(274nm)
・GPC(面積百分率法)
カラム:GPC KF−803+KF−802.5+KF−802+KF−801(Shodex製)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
流量:1ml/分
検出:RI
データ処理は各ピークの谷からベースラインへ垂線を引いて行った。
・エポキシ当量
JIS K−7236に記載の方法で測定
・軟化点
JIS K−7234に記載の方法で測定
・溶融粘度
150℃におけるコーンプレート法における溶融粘度
測定器械:コーンプレート(ICI)高温粘度計
(RESEACH EQUIPMENT(LONDON)LTD.製)
コーンNo.:3(測定範囲0〜2.00Pa・s)
試料量:0.15±0.01g
【0043】
比較例1
攪拌機、温度計、コンデンサーを備えた四つ口フラスコにフェノール618部、p−トルエンスルホン酸1部を仕込み、80℃で攪拌しながら4,4’−ビス(クロロメチル)−1,1’−ビフェニル(純度94%)500部を2時間かけて加え、80℃で2時間反応を行った。反応終了後、MIBK1500部を加え水洗を繰り返した。ついで油層から加熱減圧下、未反応フェノール及びMIBKを留去することにより、比較用のフェノール樹脂(P1)625部を得た。得られたフェノール樹脂(P1)の軟化点は72℃、溶融粘度は0.13Pa・s、水酸基当量は209g/eqであった。
【0044】
実施例1
比較例1において、4,4’−ビス(クロロメチル)−1,1’−ビフェニル(純度94%)500部を4,4’−ビス(クロロメチル)−1,1’−ビフェニル(純度96%)500部に変えた以外は比較例1と同様の操作を行い、本発明のフェノール樹脂(P2)628部を得た。得られたフェノール樹脂(P2)の軟化点は71℃、溶融粘度は0.13Pa・s、水酸基当量は208g/eqであった。
【0045】
実施例2
比較例1において、4,4’−ビス(クロロメチル)−1,1’−ビフェニル(純度94%)500部を4,4’−ビス(クロロメチル)−1,1’−ビフェニル(純度98%)500部に変えた以外は合成例1と同様の操作を行い、本発明のフェノール樹脂(P3)621部を得た。得られたフェノール樹脂(P3)の軟化点は72℃、溶融粘度は0.13Pa・s、水酸基当量は207g/eqであった。
【0046】
実施例3
攪拌機、温度計、コンデンサーを備えた四つ口フラスコに、実施例1で得られたフェノール樹脂(P2)104部にエピクロルヒドリン231部、ジメチルスルホキシド58部を加えて溶解後、45℃に加熱し、フレーク状水酸化ナトリウム(純度99%)21部を90分かけて添加し、その後、さらに45℃で2時間、70℃で1時間反応させた。ついで油層の水洗浄液が中性になるまで水洗を繰り返し、油層から加熱減圧下、過剰のエピクロルヒドリンを留去し、残留物に264部のMIBKを添加し溶解した。
さらにこのMIBK溶液を70℃に加熱し30重量%の水酸化ナトリウム水溶液5部を添加し、1時間反応させた後、油層の水洗浄液が中性になるまで水洗を繰り返した。ついで油層から加熱減圧下、MIBKを留去することにより本発明のエポキシ樹脂(E1)121部を得た。得られたエポキシ樹脂(E1)の樹脂物性は、エポキシ当量は277g/eq、軟化点は56℃、溶融粘度は0.07Pa・sであった。GPC分析をしたところ分子量400〜600(ポリスチレン換算)の間にピークとして検出された成分量は1.9面積%であった。GPCチャートを図1に示す。
【0047】
実施例4
実施例3において、実施例1で得られたフェノール樹脂(P2)104部を実施例2で得られたフェノール樹脂(P3)104部に変えた以外は実施例3と同様の操作を行い、本発明のエポキシ樹脂(E2)122部を得た。得られたエポキシ樹脂(E2)の樹脂物性は、エポキシ当量は273g/eq、軟化点は57℃、溶融粘度は0.07Pa・sであった。GPC分析をしたところ分子量400〜600(ポリスチレン換算)の間にピークとして検出された成分量は1.0面積%であった。GPCチャートを図2に示す。
【0048】
比較例2
実施例3において、実施例1で得られたフェノール樹脂(P2)104部を比較例1で得られたフェノール樹脂(P1)105部に変えた以外は実施例3と同様の操作を行い、比較用のエポキシ樹脂(E3)120部を得た。得られたエポキシ樹脂(E3)の樹脂物性は、エポキシ当量は279g/eq、軟化点は57℃、溶融粘度は0.07Pa・sであった。GPC分析をしたところ分子量400〜600(ポリスチレン換算)の間にピークとして検出された成分量は2.3面積%であった。GPCチャートを図3に示す。
【0049】
試験例
実施例3〜4、比較例2において得られたエポキシ樹脂を樹脂濃度が50重量%になるようにテトラヒドロフラン(THF)に溶解させた。これらの樹脂溶液の吸光度を以下の条件で測定した。結果を表1に示す。
【0050】
・吸光度
分光光度計:UV−2500PC(島津製作所製)
セル:石英セル(1cm角)
試料:エポキシ樹脂のTHF溶液(樹脂濃度50%)
測定波長:400nm
【0051】
表1
実施例3 実施例4 比較例2
エポキシ樹脂 E1 E2 E3
吸光度(400nm) 0.40 0.34 0.91
【0052】
本発明のエポキシ樹脂は表1に示されるように400nmにおける吸光度が低い。従って、光学材料用途に非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実施例3で得られたエポキシ樹脂のGPCチャート。横軸は溶離時間(分)、縦軸はmVをそれぞれ表す。以下図2〜3において同様。ピークNo.5が分子量400〜600(ポリスチレン換算)を示すピークである。
【図2】実施例4で得られたエポキシ樹脂のGPCチャート。ピークNo.5が分子量400〜600(ポリスチレン換算)を示すピークである。
【図3】比較例2で得られたエポキシ樹脂のGPCチャート。ピークNo.5が分子量400〜600(ポリスチレン換算)を示すピークである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるエポキシ樹脂であって、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析において分子量400〜600(ポリスチレン換算)の間にピークとして検出される成分が0〜2.1面積%であることを特徴とするエポキシ樹脂。
【化1】

(式中、nは平均値で1〜6の正数を示す。)
【請求項2】
下記式(2)で表される化合物の純度が95〜100重量%のビフェニル化合物とフェノールを反応させ得られる、式(3)で表されるフェノール樹脂をグリシジルエーテル化して得られるエポキシ樹脂。
【化2】

(式中、Xは塩素原子、臭素原子、メトキシ基、エトキシ基または水酸基を表す。)
【化3】

(式中、nは平均値で1〜6の正数を示す。)
【請求項3】
下記式(2)で表される化合物の純度が95〜100重量%のビフェニル化合物とフェノールを反応させ得られる、式(3)で表されるフェノール樹脂。
【化4】

(式中、Xは塩素原子、臭素原子、メトキシ基、エトキシ基または水酸基を表す。)
【化5】

(式中、nは平均値で1〜6の正数を示す。)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−124492(P2006−124492A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−313519(P2004−313519)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】