説明

エマルジョンベースの接着剤

【課題】低ノイズ接着剤製品およびその製造法が開示される。この接着剤製品はガムテープとして有用である。
【解決手段】エマルジョンポリマーが:
(a)250ナノメートル以下の重量平均直径および−10℃未満のTg計算値を有する第一粒子を、ポリマーの合計重量基準で5〜95重量%含む微細モード;および
(b)250ナノメートルよりも大きな重量平均直径を有する第二粒子を、ポリマーの合計重量基準で少なくとも5重量%含む大モードを含み;
さらに、エマルジョンポリマーの全体的なTg計算値が−20℃未満である、ポリオレフィンフィルム上のエマルジョンポリマーの乾燥により形成される接着剤層を含む低ノイズ接着剤製品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低ノイズ接着剤製品、さらに詳細には、小単一モードまたは二モードエマルジョンポリマーを有する接着剤コーティングを含有する低ノイズテープ製品およびかかる製品の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、公知粘着テープは実際に、すなわち、20から200m/分の間のほどき(unwind)速度で使用される場合、比較的音をたててほどかれ、騒音レベルの増大の結果として、労働条件の悪化につながる。費用効率が高く、生産性が高い低ノイズテープ製品に対する世界的需要が増大している。
【0003】
米国特許第6,706,392号は、巻いたものがほどかれる騒音問題を解決することを試みるテープを開示している。米国特許第6,706,392号は、ポリオレフィンベースのフィルムおよびアクリル分散物ベースの接着剤を有する無溶媒粘着テープを開示している。この製品は騒々しいほどきに関連していくつかの利益を提供しうるが、費用効率が高く、かつ静かなテープに対する必要性に取り組んでいない。
【特許文献1】米国特許第6,706,392号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、2以上のサイズのポリマー粒子を含むエマルジョンポリマーを含有する接着剤製品を提供することにより、この巻いたものがほどかれる騒音および費用効率の問題を解決する。ここで、前記ポリマーの少なくとも一部は、250nm以下の平均粒子直径を有し、少なくとも一部は250nmより大きな平均粒子直径を有する。この接着剤製品は、高いほどき速度で静かな、巻いたものをほどくことを達成する。
【0005】
さらに詳細には、本発明は低ノイズ接着剤製品であって、ポリオレフィンフィルム基体またはバッキング上に小単一モードおよび/または二モードエマルジョンポリマーを含む低ノイズ接着剤製品を提供する。低ノイズ性能は、従来技術の単一モードエマルジョンよりも、二モード感圧接着剤エマルジョンにおいてプロセスおよび組成の変動に対して感受性が低いことが見いだされている。さらに、二モード感圧接着剤エマルジョンは、低粘度を維持しつつ、単一モードエマルジョンよりも高い固形分で形成することができ、これにより所定の容器から、より大きな生産能力がもたらされる。これらはまた、乾燥ポリマーの重量あたりの輸送コストを低くし、テープ製造プロセスにおいて固形分の高い接着剤をより速く乾燥させ、乾燥オーブン中で生産能力の増大および/またはエネルギー消費の減少をもたらす。
【0006】
広範囲におよぶ重量平均粒子直径分布または3以上の重量平均粒子直径モードの分布(ここで、モードの少なくとも1つは微細モードである)は、好適な低ノイズ接着剤製品を提供することも想定される。本発明は、意外にも、高いほどき速度で、静かなほどきをもたらし、商業的に慣用の段ボール包装用途のガムテープとして好ましいことを示す。
【0007】
本明細書において用いられる「(メタ)」なる用語とその後に別の用語、例えば、アクリレートが続く用法は、アクリレートおよびメタクリレートのどちらもさす。例えば、「(メタ)アクリレート」なる用語は、アクリレートまたはメタクリレートのいずれかをさし;「(メタ)アクリル」なる用語は、アクリルまたはメタクリルのいずれかをさし;「(メタ)アクリロニトリル」なる用語は、アクリロニトリルまたはメタクリロニトリルのいずれかをさし;「(メタ)アクリルアミド」なる用語は、アクリルアミドまたはメタクリルアミドのいずれかをさす。
【0008】
本明細書において用いられる場合、「ガラス転移温度」または「T」とは、それ以上でガラス状ポリマーがポリマー鎖の部内運動をする温度を意味する。ポリマーのガラス転移温度は、次のFox式[Bulletin of the American Physical Society、13、p123(1956)]:
1/T=w/Tg(1)+w/Tg(2)
により見積もることができる。コポリマーに関して、wおよびwは、2つのコモノマーの重量分率をさし、Tg(1)およびTg(2)は2つの対応するホモポリマーのガラス転移温度(ケルビン)をさす。3以上のモノマーを含有するポリマーに関しては、さらなる項(w/Tg(n))が追加される。ポリマー相のTは、例えば、“Polymer Handbook”、J.BrandrupおよびE.H.Immergut編、Interscience Publishersにおいて見出すことができる、ホモポリマーのガラス転移温度について適当な値を用いることにより計算することもできる。本明細書において記載されているTの値は、Fox式を用いて計算される。複数の重量平均粒子直径分布を有する水性ポリマー分散物の全体的なTを計算する場合、分散物の各部分のT計算値が適用される。さらに詳細には、ポリマー分散物の全体的なTは、Fox式を用い、分散物中のモノマーの全てに基づいて計算される。
【0009】
本明細書において用いられる場合、「分散物」なる用語は、少なくとも2つの異なる相を含む物質の物理的状態であって、第一相が第二相中に分配され、第二相が連続媒体である状態をさす。水性ポリマー分散物は、主に水であり、少量の水溶性または水混和性液体、例えば、低級アルキルアルコール類、ケトン類、またはグリコール類を含有する水性第二相中に分配された第一相を含有する分散物である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第一の態様において、ポリオレフィンフィルム上のエマルジョンポリマーの乾燥により形成される接着剤層を含む低ノイズ接着剤製品が提供され、ここで、エマルジョンポリマーは:
(a)250ナノメートル(nm)以下の重量平均直径および−10℃未満のTg計算値を有する第一粒子を、ポリマーの合計重量基準で5〜95重量%含む微細モード;および
(b)250nmよりも大きな重量平均直径を有する第二粒子を、ポリマーの合計重量基準で少なくとも5重量%含む大モードを含み;
さらに、エマルジョンポリマーの全体的なTg計算値は−20℃未満である。
【0011】
本発明の第二の態様において、低ノイズ接着剤製品を製造する方法であって:
(a)ポリオレフィンフィルムの処理された表面をエマルジョンポリマーでコーティングし(ここで、前記エマルジョンポリマーは:
(i)250nm以下の重量平均直径および−10℃未満のTg計算値を有する第一粒子を、ポリマーの合計重量基準で5〜95重量%含む微細モード;および
(ii)250nmよりも大きな重量平均直径を有する第二粒子を、ポリマーの合計重量基準で少なくとも5重量%含む大モードを含み、さらに、エマルジョンポリマーの全体的なTgは−20℃未満である);
(b)コーティング後にポリオレフィンフィルム上のエマルジョンポリマーを乾燥させ;および
(c)ポリオレフィンフィルムのコーティングされていない面を処理することを含む方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
当該分野において、ポリプロピレンベースの一軸および二軸延伸フィルムはガムテープ、絆創膏、および他の粘着テープのために多量に用いられる。延伸ポリエチレンまたはエチレンおよび/またはプロピレン単位を含有する延伸コポリマーベースのフィルムも公知である。様々なポリマーの混合物もフィルムを製造するために使用できる。
【0013】
フィルムの表面は公知技術により処理される。コロナ、火炎、およびまたはプラズマ前処理による表面処理が選択されるのが好ましい。表面処理の技術の概説は、例えば、論文“Surface pretreatment of plastics for adhesive bonding”(A.Kruse、G.Kruger、A.Baalmann、およびO.D.Hennemann、J.Adhesion Sci.Technol.、第9巻、12号、pp.1611〜1621(1995)に含まれる。典型的には、テープ製品の両面は、接着剤がコーティングされるフィルムの面(第一面)の表面エネルギーを、47、45および42dynesの上限から35、38および40dynesの下限までの範囲のレベルに低下させるために処理される。全ての処理範囲は、両端を含み、組み合わせ可能である。
【0014】
テープのコーティングされていない面(第二面)は、典型的には第一のコーティングされた面よりも約4dynes低い表面張力になるように処理される。コーティングされていない面は、コーティング前、コーティング直後、または別の段階のどこか:例えば、切断および巻き取りの間で処理された表面であり得る。コーティングされていない面の表面処理は、好ましくはコーティング後に行われる。標準的な市販の試験インクを用いて測定して、43、41、および38dynesの上限から31、34、および36dynesの下限までの範囲の表面張力をもたらすコロナ前処理がなされるのが好ましい。すべての処理範囲は両端を含み、組み合わせ可能である。同様に、火炎および/またはプラズマによる表面処理が可能である。
【0015】
接着剤層の適用割合は、10〜45g/mである。一実施態様において、18〜35g/mの適用割合、特に好ましくは18〜28g/mが設定される。
【0016】
本発明の粘着テープは、印刷操作の間に、例えば、コロナ放電などのさらなる表面処理を必要とすることなく、さらに印刷することができる。ポリオレフィン類、好ましくは延伸ポリオレフィン類ベースのフィルムの使用は以前から知られており、最新技術の一部である。
【0017】
水性ポリマー分散物は公知であり、粘着テープおよびラベル用接着剤の両方に関して、大量に用いられる。これらの分散物は、典型的には、分散物の水性相中に分散分布したアクリルポリマー類の粒子を含む。本発明において、これらの水性ポリマー分散物は、複数の平均粒子直径分布を有し、ここにおいて、1以上の粒子は250nm以下の直径を有し、1以上の粒子は250nmより大きな直径を有する。本明細書において用いられる場合、重量平均直径が250nm以下である粒子は「小粒子(small particles)」または「微細モード(fine mode)」と呼ばれる。本明細書において用いられる場合、250nmより大きな重量平均直径を有する粒子は「大モード(large mode)」と呼ばれる。
【0018】
本発明のエマルジョンポリマーは、重量平均粒子直径が250nmの上限から50nmの下限までの範囲である微細モード粒子を含む。典型的には、これらの小モードは、100〜200nmの範囲の重量平均粒子直径を有する。さらに、これらの小モード粒子は、100、50および20重量%の小粒子の上限から5重量%の小粒子の下限までの範囲でエマルジョンポリマー中に存在する。さらに、微細モードは、−10℃未満のTg計算値を有する。例えば、微細モードのTgは−20℃未満または−30℃未満でありうる。
【0019】
さらに、本発明のエマルジョンポリマーは、重量平均粒子直径が250nmより大きな範囲の大モード粒子を含む。典型的には、これらの第二粒子は、300nmよりも大きな重量平均粒子直径を有する。
【0020】
二モード粒子直径分布を有する粒子を含有する本発明の水性ポリマー分散物は、様々な乳化重合法により調製することができる。例えば、二モード粒子直径分布を有する水性ポリマー分散物は、ポリマー粒子の第一モードを重合し、ポリマー粒子の第二モードを開始させるために適した界面活性剤またはシードポリマー粒子を添加し、次にモノマーを重合させて、ポリマー粒子の第二モードを調製することにより調製できる。ポリマー粒子の第一および第二モードの直径は、界面活性剤量、界面活性剤の種類、シード粒子の数、または他の合成パラメータにより制御される。さらに、多モードポリマーは、様々な単一モードまたは多モード部分を一緒にブレンドして、全体的なポリマー系を形成することにより調製できる。
【0021】
第二ポリマー粒子の第二モードの形成は、シードポリマー、界面活性剤、ミニエマルジョン、またはpH調節剤、例えば、緩衝液の添加により助けることができる。ミニエマルジョンは、当該分野において、液滴直径が1ミクロンより小さな水中油分散物であって、数時間から数ヶ月にわたる期間、安定であるものとして周知である。本発明との関連で、ミニエマルジョンの液滴は、エチレン性不飽和モノマーおよび安定なサブミクロンの液滴を提供するために必要な他の任意の成分を含有することができる。これらの他の任意の成分は、水溶性が非常に低く、当該分野において、補助界面活性剤(co−surfactants)、補助安定剤(co−stabilizers)、または疎水性物質と呼ばれる化合物を包含する。典型的な疎水性物質は、高級アルカン、例えば、ヘキサデカン、疎水性アルコール、たとえば、セチルアルコール、非常に疎水性であるモノマー、たとえば、ステアリルメタクリレート、およびポリマーを包含する。ミニエマルジョンは、典型的には、ローターステーター装置、超音波処理装置、および高圧ホモジナイザーの使用による高剪断下で形成される。ミニエマルジョンは、典型的には、界面活性剤を使用して調製される。ミニエマルジョンおよび乳化重合におけるその使用の説明は、“Miniemulsion Polymerization”、by J.M.Asua in Progress in Polymer Science、第27巻、pp.1283〜1346(2002)において見出すことができる。さまざまなモードのポリマー粒子を含有する水性ポリマー分散物であって、各モードが異なる重量平均粒子直径を有する分散物は、2以上のピークを有する重量平均粒子直径分布を有することを特徴とする。重量平均粒子直径分布は、粒子直径の関数としてのある粒子直径を有するポリマー粒子の重量である。各ピークは、ポリマー粒子のあるモードと関連する。重量平均粒子直径分布は、キャピラリー式流体力学的分離装置、例えば、200nmでの紫外線検出器を有するMatec CHDF−2000装置(Matec Applied Sciences(マサチューセッツ州))を用いて測定される。重量平均粒子直径標準は、例えば、Duke Scientific Corporation(カリフォルニア州)により供給されるような、50〜800nmの米国標準技術局(NIST)トレーサブルポリスチレン標準により提供される。
【0022】
水性媒体に添加する前に、エチレン性不飽和モノマーを2、1.5、および1%の上限から0.05、0.075、および0.1%の下限までの範囲で存在するアニオン性または非イオン性分散剤(界面活性剤ともいう)で、水中で乳化させることができる。全ての分散剤範囲は両端を含み、組み合わせ可能である。アニオン性および非イオン性分散剤の組み合わせも用いることができる。任意に、少なくとも1つの重合可能なエチレン性不飽和結合を有する共重合可能な界面活性剤を用いることができる。
【0023】
好適なアニオン性分散剤としては、例えば、高級脂肪族アルコール硫酸塩、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム;アルキルアリールスルホン酸エステル、例えば、イソプロピルベンゼンスルホン酸またはイソプロピルナフタレンスルホン酸のナトリウムまたはカリウム塩;アルカリ金属高級アルキルスルホコハク酸塩、例えば、オクチルスルホコハク酸ナトリウム、N−メチル−N−パルミトイルラウリン酸ナトリウム、オレイルイソチオン酸ナトリウム;アルキルアリールポリエトキシエタノール硫酸、スルホン酸、またはリン酸のアルカリ金属塩およびアンモニウム塩、例えば、1〜50のオキシエチレン単位を有するtert−オクチルフェノキシポリエトキシエチル硫酸ナトリウム;アルキルポリエトキシエタノール硫酸、スルホン酸、およびリン酸のアルカリ金属塩およびアンモニウム塩;ならびにアリールポリエトキシエタノール硫酸、スルホン酸、およびリン酸のアルカリ金属塩およびアンモニウム塩が挙げられる。
【0024】
好適な非イオン性分散剤としては、約7〜18の炭素原子のアルキル基および約6〜60のオキシエチレン単位を有するアルキルフェノキシポリエトキシエタノール、例えば、ヘプチルフェノキシポリエトキシエタノール、メチルオクチルフェノキシポリエトキシエタノール;メチレン結合アルキルフェノール類のポリエトキシエタノール誘導体;硫黄含有剤、例えば、約6〜60モルのエチレンオキシドをノニルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、またはアルキルチオフェノール類(ここで、アルキル基は、6〜16個の炭素原子を含有する)と縮合することにより調製されるもの;長鎖カルボン酸、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、または1分子あたり6〜60のオキシエチレン単位を含有するトール油中で見られるものなどの酸の混合物のエチレンオキシド誘導体;長鎖アルコール、例えば、オクチル、デシル、ラウリル、またはセチルアルコールの類似エチレンオキシド縮合物、疎水性炭化水素鎖を有するエーテル化またはエステル化ポリヒドロキシ化合物のエチレンオキシド誘導体、例えば、6〜60のオキシエチレン単位を含有するソルビタンモノステアレート;1以上の疎水性プロピレンオキシドセクションと結合したエチレンオキシドセクションのブロックコポリマーが挙げられる。アルキルベンゼンスルホネートおよびエトキシル化アルキルフェノールの混合物を用いることができる。
【0025】
乳化重合法は、熱またはレドックスタイプであってよく;すなわち、フリーラジカルは単に開始剤種の熱解離によって生成しうるか、またはレドックス系を用いることができる。フリーラジカルタイプの重合開始剤、例えば、過硫酸アンモニウムまたはカリウムを単独またはレドックス系の酸化成分として用いることができ、前記レドックス系は、還元性成分、たとえば、メタ重亜硫酸カリウム、チオ硫酸ナトリウム、またはホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウムも包含する。還元性成分は、しばしば促進剤と呼ばれる。開始剤および促進剤は、通常、触媒、触媒系、またはレドックス系と呼ばれ、重合されるモノマーの重量基準で、それぞれ約0.01%以下から3%の割合で使用できる。レドックス触媒系の例としては、t−ブチルヒドロペルオキシド/ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム/Fe(II)および過硫酸アンモニウム/重亜硫酸ナトリウム/ヒドロ亜硫酸ナトリウム/Fe(II)が挙げられる。他の好適な開始剤はアゾ化合物を包含する。重合温度は10℃〜90℃、またはそれ以上であることができ、通常どおり、用いられる触媒系に関して最適化することができる。乳化重合は、シードが添加されてもよいし、あるいはシードが添加されなくてもよい。
【0026】
重合されるモノマーの全部または一部を含有するモノマーエマルジョンは、モノマー、水、および界面活性剤を用いて調製することができる。水中で触媒を含有する触媒溶液を別に調製することができる。モノマーエマルジョンおよび触媒溶液を乳化重合中に重合容器中に同時に供給することができる。反応容器は、シードエマルジョンをさらに含んでもよく、さらに重合触媒の初期充填物をさらに含有してもよい。乳化重合の間の反応容器の温度は、重合反応により生成した熱を除去するために冷却するか、または反応容器を加熱することにより、制御することができる。反応容器の内容物のpHは、乳化重合法の間に変更することもできる。さらにエマルジョンは、追加の可塑剤、粘着付与剤、クロスリンカー、多価金属イオン塩、消泡剤、増粘剤、レオロジー改良剤、顔料、および湿潤剤を含有することができる。
【0027】
本発明の方法における使用、または第一ポリマー粒子の調製に適したエチレン性不飽和モノマーは、モノマー、例えば、スチレン、ブタジエン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル、ビニルバーサテート、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸の様々なC−C40アルキルエステル;例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オレイル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、およびステアリル(メタ)アクリレート;他の(メタ)アクリレート、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、および2−ブロモメチル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、例えば、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エチレン性不飽和ジ−およびトリカルボン酸および無水物のフルエステル、例えば、エチルマレエート、ジメチルフマレート、およびエチルメチルイタコネートを包含する。他の好適なモノマーは、アニオン性モノマーであって、これは、カルボン酸含有モノマー、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、フマル酸、およびマレイン酸を包含する;リン酸含有モノマーはリン酸二水素塩モノマーであり、2−ホスホエチル(メタ)アクリレート、2−ホスホプロピル(メタ)アクリレート、3−ホスホプロピル(メタ)アクリレート、および3−ホスホ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートを包含する;硫黄酸含有モノマー、例えば、ビニルスルホン酸およびスチレンスルホン酸。イオン性モノマーは、アニオン性モノマーの塩、例えば、アンモニウム、ナトリウム、またはカリウム塩も包含する。さらに他の好適なモノマーとしては、多エチレン性不飽和モノマーが挙げられ、これは分子量を上昇させ、ポリマー粒子を架橋するために有効である。多エチレン性不飽和モノマーの例としては、アリル(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、トリビニルベンゼン、およびジビニルナフタレンが挙げられる。
【0028】
本発明における酸モノマー含量は、5、3、および2.5重量%の上限から0.25、0.5、および1重量%の下限までの範囲である。酸モノマーの一例は、(メタ)アクリル酸である。一例において、1〜2.5%の(メタ)アクリル酸単位および99.5〜90%、特に好ましくは99〜97.5%のn−ブチルアクリレートまたは2−エチルヘキシルアクリレート単位を含有するアクリル分散物、およびその任意の組み合わせが使用される。本発明のアクリル分散物の別の例は、80〜90%の2−エチルヘキシルアクリレート単位および8〜20%のn−ブチルアクリレート単位を含有するアクリル分散物である。
【0029】
アクリル分散物は、追加のモノマー単位を含むことができ、これにより、例えば、ガラス転移温度および架橋可能性を制御することができる。例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、無水マレイン酸、アクリルアミド、グリシジルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、およびこれらのアクリレートに対応するメタクリレートが挙げられる。アクリル分散物は通常、0〜10%のこれらの追加のモノマー単位を含有し;ここで、1つの追加のモノマー単位のみが使用されるか、またはその混合物が使用されるかのいずれかである。
【0030】
得られるガラス転移温度は、使用されるモノマーに依存する。本発明の接着剤に関して使用されるアクリル分散物は、乾燥状態において−20、−30および−40℃の上限から−80、−70および−60℃の下限までの範囲のガラス転移温度を有する。全てのガラス転移温度範囲は両端を含み、組み合わせ可能である。
【0031】
アクリル分散物の好ましい固形分は、70、65、および62重量%の上限から、56、58、および60重量%の下限までの範囲である。全ての固形分範囲は両端を含み、組み合わせ可能である。
【0032】
本発明の粘着テープは、公知方法により製造することができる。慣例的な製造法の概説は、例えば、“Coating Equipment”、Donatas Satas in Handbook of Pressure Sensitive Adhesive Technology、第2版、Donatas Satas編、Van Nostrand Reinhold New York、pp.767〜808において見出すことができる。同様に、粘着テープの乾燥および切断の公知方法は、the Handbook of Pressure Sensitive Adhesive Technology、pp.809〜874において見出すことができる。
【0033】
分散物接着剤でのフィルムのコーティングは、好ましくは、所望の適用割合をもたらすように設定されたワイヤドクターシステムを用いて行われる。コートされたフィルムのその後の乾燥は、特に熱風を用いて動作するトンネル乾燥機中で行われる。原則として、赤外線ランプによる追加の乾燥も可能である。本発明の好ましい重量平均粒子直径分布は、管理可能な粘度を維持しつつ、従来の「低ノイズ」ポリマーと比較して増大した固形分を可能にする。この固形分における増加は、接着剤のより速い乾燥を可能にし、その結果、テープ製造法におけるエネルギーコストの減少および/または改善されたコーター生産性をもたらす。
【0034】
可能な限り、粘着テープのロールは、均一な張力および均一な適用圧力で巻き上げられなければならない。巻き取りの最適化は、使用される装置に依存し、当業者に公知である。巻き取りの間の条件は、粘着テープロールの十分静かなほどきをもたらすように設定されるべきである。
【0035】
先に詳述した本発明により、ポリオレフィンバッキングおよび水性分散物を有する公知粘着テープの公知の脆弱性を克服することができる。さらに、本発明の粘着テープは市販の慣用印刷インクで印刷することができ、本発明の粘着テープは印刷中に表面活性化を加えることなく印刷できる点で、ポリオレフィンバッキングおよびアクリル分散物ベースの接着剤を有する公知粘着テープよりも実質的な利点を有する。これは顕著に印刷操作を簡素化する。
【実施例】
【0036】
試験法
テープのロールを調製し、次に1週間50℃で老化させる。テープをオーブンから取り出し、次に23℃、相対湿度50%に設定された環境室中で平衡化させる。少なくとも24時間平衡化後、Bruel & Kjearから入手した標準的な市販の騒音計(2226型)を巻いてあるのがほどかれるテープから8cmに設置することにより、これらの条件下でノイズを測定した。テープは、デシベルレベルが60m/分で100デシベルより低ければ、低ノイズであると見なされた。
【0037】
低ノイズ合成例
大単一モード比較例C1〜C15
撹拌および温度制御器を備えた5リットルガラス製リアクターに、678gの脱イオン水を入れる。表1に記載されたモノマーを443.7gの脱イオン水、および30gのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの23%水溶液と混合することにより、モノマープレエマルジョンが形成される。リアクター内容物を90℃に加熱し、100nmの重量平均粒子直径を有する25.4%固形分ラテックス137g、48gの脱イオン水中10gの過硫酸アンモニウム、および31gの脱イオン水中1グラムの炭酸ナトリウムをリアクターに添加する。モノマープレエマルジョンおよび558.4gの脱イオン水中3.7gの過硫酸アンモニウムの独立したフィードを次に、リアクター内容物を85℃に維持しつつ、リアクターに3時間にわたって添加する。モノマープレエマルジョンのリアクターへの添加が完了したら、0.008gの硫酸鉄七水和物および13gの脱イオン水中0.008gのEDTA四ナトリウムをリアクターに添加し、リアクター内容物を徐々に冷却し、48gの脱イオン水中4.2gの70%水性t−ブチルヒドロペルオキシドおよび58gの脱イオン水中2.3gのホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウムを徐々に添加することにより、未重合モノマーを減少させる。13gの脱イオン水中8.7gの28%水性アンモニアを次に添加して、エマルジョンのpHを上昇させる。最終エマルジョンは約53%の固形分および400nmの重量平均粒子直径を有する。
【0038】
(<250nmの直径を有する粒子を含む実施例1〜15)
撹拌および温度制御器を備えた5リットルガラス製リアクターに、478グラムの脱イオン水を入れる。表1に記載されたモノマーを343.7グラムの脱イオン水、および30グラムのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの23%水溶液と混合することにより、モノマープレエマルジョンが形成される。リアクター内容物を90℃に加熱し、100nmの重量平均粒子直径を有する25.4%固形分ラテックス61.8グラム、48グラムの脱イオン水中10グラムの過硫酸アンモニウム、および31グラムの脱イオン水中1グラムの炭酸ナトリウムをリアクターに添加する。モノマープレエマルジョンおよび238.7グラムの脱イオン水中3.7グラムの過硫酸アンモニウムの独立したフィードを次に、リアクター内容物を85℃に維持しつつ、リアクターに3時間にわたって添加する。モノマープレエマルジョンの45%がリアクターに添加されたら、80nmの重量平均粒子直径を有する27.8%固形分ラテックス80.9グラムをリアクターに添加する。モノマープレエマルジョンのリアクターへの添加が完了したら、0.008グラムの硫酸鉄七水和物および13グラムの脱イオン水中0.008グラムのEDTA四ナトリウムをリアクターに添加し、リアクター内容物を徐々に冷却し、48グラムの脱イオン水中4.2グラムの70%水性t−ブチルヒドロペルオキシドおよび58グラムの脱イオン水中2.3グラムのホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウムを徐々に添加することにより、未重合モノマーを減少させる。13グラムの脱イオン水中8.7グラムの28%水性アンモニアを次に添加して、エマルジョンのpHを上昇させる。最終エマルジョンは約61.8%の固形分を有する。エマルジョン中、全ポリマーの約8〜12重量%が110〜150nmの重量平均直径を有する粒子で存在し、ポリマーの残りは、450〜500nmの重量平均直径を有する粒子で存在する。
【0039】
【表1】

【0040】
次の方法により粘着テープを製造するために比較例C1〜C15および実施例1〜15を用いる。コート重量制御のためのワイヤラウンドロッドを備えたパンフィードコーターを用いて、40〜42dynesの表面エネルギーになるようにA面上で火炎処理された厚さ30ミクロンの二軸延伸されたポリプロピレンフィルムのロールのA面を、A面上でエマルジョンポリマーでコーティングして、乾燥接着剤1平方メートルあたり約21グラムのコート重量を得る。接着剤を、接着剤の重量基準で約0.25〜0.5重量%水まで乾燥し、ロール上に巻き取る。テープを次いでロールから巻き戻し、フィルムのB面を約36dynesの表面エネルギーになるようにコロナ処理し、テープを幅5cmに切断し、直径7.6cmの厚紙芯上に幅5cm×長さ50メートルのロール上に巻き取る。5cm幅テープを、新しく製造された時および室温で30日間貯蔵後の両方でノイズ試験に付す。平均で、実施例1〜15を用いて製造されたテープは、同じ組成を有する比較例C1〜C15よりも静かである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エマルジョンポリマーが:
(a)250ナノメートル以下の重量平均直径および−10℃未満のTg計算値を有する第一粒子を、ポリマーの合計重量基準で5〜95重量%含む微細モード;および
(b)250ナノメートルよりも大きな重量平均直径を有する第二粒子を、ポリマーの合計重量基準で少なくとも5重量%含む大モード:を含み、
さらに、エマルジョンポリマーの全体的なTg計算値が−20℃未満である、
ポリオレフィンフィルム上のエマルジョンポリマーの乾燥により形成される接着剤層を含む、低ノイズ接着剤製品。
【請求項2】
微細モードの重量平均直径が200ナノメートル以下である請求項1記載の製品。
【請求項3】
エマルジョンポリマーが、ポリマーの合計重量基準で5〜50重量%の第一粒子を含む請求項1記載の製品。
【請求項4】
エマルジョンポリマーが二モードである請求項1記載の製品。
【請求項5】
フィルムが二軸延伸ポリプロピレンである請求項1記載の製品。
【請求項6】
低ノイズ接着剤製品を製造する方法であって、
(a)ポリオレフィンフィルムの処理された表面をエマルジョンポリマーでコーティングし
(ここで、前記エマルジョンポリマーは:
(i)250ナノメートル以下の重量平均直径および−10℃未満のTg計算値を有する第一粒子を、ポリマーの合計重量基準で5〜95重量%含む微細モード;および
(ii)250ナノメートルよりも大きな重量平均直径を有する第二粒子を、ポリマーの合計重量基準で少なくとも5重量%含む大モード:を含み;
さらにエマルジョンポリマーの全体的なTgは−20℃未満である);
(b)コーティング後にポリオレフィンフィルム上のエマルジョンポリマーを乾燥させ;および
(c)ポリオレフィンフィルムのコーティングされていない面を処理することを含む、方法。
【請求項7】
エマルジョンポリマーの固形分が56重量%よりも高い請求項6記載の方法。
【請求項8】
小モード粒子の重量平均直径が200ナノメートル未満である請求項6記載の方法。
【請求項9】
エマルジョンポリマーが二モードである請求項6記載の方法。
【請求項10】
フィルムが二軸延伸ポリプロピレンである請求項6記載の方法。

【公開番号】特開2008−127568(P2008−127568A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−296748(P2007−296748)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】