説明

エラストマー形成バリヤー製剤

本発明は皮膚(角質層)に適用するための製剤に関する。本発明によれば、製剤は、シリコーン組成物を含み、そのシリコーン組成物は適用時に高度に粘稠であり、かつ適用後に架橋によって硬化して皮膚に接着する柔らかくかつ皮膚に優しいエラストマーを形成する。本発明はまた、製剤を適用するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚へ適用するための製剤、皮膚へ保護層を適用するための方法、及びかかる製剤を貯蔵及び適用するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の皮膚が持つ最も重要な機能の一つは、環境に対する身体のバリヤーを構成することである。皮膚は微生物、毒性物質、熱、寒さ、機械的損傷などの有害な作用に対して保護する。皮膚はまた、脱水に対して必要な保護を構成する。創傷のまわりの皮膚、特に治すのに数週間から数ヶ月かかる慢性創傷と称されるものは、しばしば残りの皮膚より悪い状態であり、そのバリヤー機能は結果として損なわれる。この情況に対して幾つかの理由が存在しうる。幾つかの創傷は主に根底にある疾患から生じ、それは局所的に循環及び栄養を損なうことを起こし、それによって皮膚を弱め、皮膚を容易に損傷させやすくする。多くの創傷は湿潤し、分泌物を生成し、それはしばしば創傷のまわりの皮膚上へ漏出し、その湿分が皮膚を崩壊させる。創傷分泌物は酵素、微生物及び他の物質を含有し、それらは皮膚に、特に崩壊する皮膚に有害な作用を持ちうる。創傷に用いられる手当用品はしばしば自己接着性の接着剤を与えられる。自己接着性の接着剤の目的はそれが創傷のまわりの皮膚に接着し、意図した部位に手当用品を固定することである。しかしながら、自己接着性の接着剤の欠点は手当用品が除去されるときに皮膚が損傷されうること及び不愉快な痛みが同時に起こりうることである。それは自己接着性手当用品が相対的に長い間にわたって頻繁に交換されなければならないときは特にやっかいである。コルチゾン、照射、細胞毒又は他の医療用製剤での系統的又は局所的治療は皮膚をさらに一層弱くしうる。
【0003】
創傷のまわりの皮膚を保護するために最も頻繁に使用される方法は、保護軟膏、クリーム又はペーストで皮膚を塗ることである。通常のパラフィン、例えばワセリンが時々使用される。他の頻繁に使用される製剤(それは英国の語法では「バリヤークリーム」と称されることが多い)は、ACO亜鉛ペースト(ACO hud AB[ACO Skin AB],Upplands Vaesy、スウェーデン)、ColoplastからのBaza(登録商標)Protect(Coloplast Corp.Marietta,Georgia、米国)、3M(登録商標)Durable Barrier Cream(3M Health Care,St.Paul,MN、米国)、Inotyol(Laboratoires URGO,Dijon、フランス)及びSilon(Smith & Nephew AB,Moelndal、スウェーデン)である。バリヤークリームは皮膚上に到来する液体又は他の有害物質に対する皮膚の抵抗性を増大する。保護軟膏/クリーム/ペースト層は創傷液が皮膚と直接接触することを防止する。滲出性の創傷が包帯をされるとき、創傷に最も近い皮膚上に高度に粘稠の軟膏又はペースト(例えば亜鉛ペースト)の相対的に厚い約1cm幅の層を使用することが多い。湿分を保護する保護軟膏又はクリームのより薄い層がこの要素の外側に適用され、皮膚が乾燥することを防止し、それによって皮膚の固有のバリヤー機能を改良する。
【0004】
軟膏/クリーム/ペーストが創傷のまわりで使用されるとき、それらはカバーされた皮膚を保護するのに加えてある機能も持つ。軟膏/クリーム/ペーストは創傷から創傷の外側の皮膚への創傷液の周囲漏出を防止すると同時にそれは創傷の外側及び内側からの液体、例えば尿の通過に対して保護する。
【0005】
多くの製剤はヒドロコルチゾン、尿素、ZnO及び抗菌性物質の如き活性成分を含み、それらは皮膚の刺激を低下しかつ/又は皮膚の治療を促進する。軟膏又はクリームは軟膏圧迫ガーゼと称されるものによって適用されることがあり、それは上述のタイプの軟膏で含浸された多少まばらな織物材料である。圧迫ガーゼは皮膚上のある領域にわたって及ぶように創傷の領域上に置かれる。
【0006】
本願では、軟膏、クリーム、ペースト及び高度に粘稠という用語は以下に記載されるように規定される。
【0007】
軟膏は油、脂肪及びろう並びに軟膏に特定の性質を与える添加物質の混合物から構成される無水軟膏基材からなる。添加物質は例えば薬学的調製物、ハーブ抽出物、化粧品、色素、ビタミン、酵素などからなる。軟膏は添加される水が全くないか又は極めて少量の添加水を含有するだけである。
【0008】
クリームは軟膏基材における水の乳剤又は水における軟膏基材の乳剤である。クリームはまた、添加される量の様々な脂肪溶解性及び/又は水溶性の物質を含有しうる。
【0009】
一般的な規定によれば、ペーストは40%より多い固体物質を含む軟膏である。
【0010】
軟膏、クリーム及びペーストはそれらが指又は手を使用して皮膚上に容易に広げることができるような稠度を有する。
【0011】
上述の軟膏、クリーム及びペーストは幾つかの欠点を持つ。それらは極めて低い結合力を有し、それゆえ粘着性であるように感じ、手当用品の下で適所に維持することが難しいことが多い。なぜならばそれらは寸法安定性を持たないが、代わりに粘稠な液体として挙動するからである。それらは創傷中に漏出し、創傷手当用品に吸収され、又は創傷の領域から漏出して衣服などを汚しうる。自己接着性の手当用品は接着が不活性であるのでこれらの製剤で被覆される皮膚に固定されることができない。結果として、皮膚と手当用品の間の創傷液の漏出が頻繁に起こる。古いペースト及び軟膏を拭き取ることはしばしば手当用品を交換するときに時間を消費する工程である。
【0012】
別の方法は創傷のまわりの皮膚に、揮発性液体に溶解又は分散される固体物質を含む液体を適用することによって皮膚を保護することである。US 5741509はかかる方法の例を与える。皮膚への適用後、揮発性物質は蒸発してなくなり、固体物質の保護フィルムが後に残る。液体はスプレーの形態で又は例えば脱脂綿で広げられることによって適用されることができる。このタイプの製品の例は3M(登録商標)Cavilon(登録商標)No Sting Barrier Film(3M Health Care,St.Paul,MN、米国)である。
【0013】
この方法の欠点は皮膚から保護フィルムを除去することが難しいことであり、また保護材料の十分厚い層を得ることが難しいことである。結果として、その方法は必ずしも十分に有効ではない。このタイプの製品は創傷からの創傷液の周囲への漏出又は外部から創傷中への尿などの移動を適切に防止しない。
【0014】
皮膚を保護する軟膏/ペーストはまた、創傷のまわりの皮膚に対するケアと関連したもの以外の状況で重要な機能を持つ。例えば、敏感で損傷された皮膚は様々なタイプのストーマのまわりにも見出され、そこでは皮膚は様々なタイプのチュ−ブを貫通されている。多少の凝集体液の漏出はこれらの適用と関連して起こることが多く。皮膚は自己接着性手当用品の頻繁な交換を受ける。軟膏はこの関連で使用されることが多いが、それらはストーマバッグ又は取り付けられることが必要である他の物品の接着を防止するときに使用することが問題になりうる。
【0015】
本発明の目的は、上述の製剤の欠点を有さない、皮膚への適用が容易で皮膚上に保護層を生成する製剤を提供することである。
【発明の開示】
【0016】
この目的は皮膚(角質層)に適用するための製剤において、それがシリコーン組成物を含み、そのシリコーン組成物が適用時に高度に粘稠であり、かつ適用後に架橋によって硬化して皮膚に接着する柔らかくかつ皮膚に優しいエラストマーを形成することを特徴とする製剤によって達成される。
【0017】
この特許明細書において、「高度に粘稠」は10S−1の剪断速度で5〜300Pa*sの粘度を有する液体、軟膏、ペースト又はクリームを意味するものとして理解される。300Pa*sより大きい粘度を有する製剤はこの用途では機能しない。なぜならばそれらを皮膚上に広げることは難しくなるからである。
【0018】
好ましい実施態様によれば、製剤は適用時に5〜300Pa*s、好ましくは10〜120Pa*s、より好ましくは20〜80Pa*sの粘度を有し、硬化後に2〜15mm、好ましくは3〜10mmの針入度を有する。皮膚上での硬化後、製剤は0.3〜3.0N/25mmの皮膚への接着力を有する。適用後の硬化時間は0.5分〜24時間、好ましくは1分〜1時間、より好ましくは1〜5分間である。
【0019】
製剤におけるシリコーン組成物は付加硬化RTVシリコーン系からなることが好ましい。シリコーン系における架橋可能な物質はメチル基の幾つかがビニル基で置換されたポリジメチルシロキサンからなることができ、架橋形成物質はメチル基の幾つかが水素で置換されたジメチルシロキサンからなることができ、組成物はプラチナベースの触媒を含む。
【0020】
一種以上のスキンケア物質がシリコーン組成物に添加されることができる。
【0021】
本発明はまた、保護層を皮膚に付着するための方法において、シリコーン組成を含む製剤を皮膚に適用し、その後製剤を硬化して皮膚に接触する柔らかくかつ皮膚に優しいエラストマーを形成させること、及びシリコーン組成物が適用時に高度に粘稠であり、かつ適用後に架橋によって硬化して皮膚に接着する柔らかくかつ皮膚に優しいエラストマーを形成することを特徴とする方法に関する。
【0022】
好ましい実施態様では、製剤は0.1〜5mmの層厚さで適用される。
【0023】
ストーマバッグ、チューブ又は創傷手当用品もしくは包帯の部品の如き医療用途のための物品を、製剤が硬化する前に、製剤の上側、即ち皮膚から離れて面する側に適用することができる。変形例では、製剤はそれが物品と結合して皮膚に適用される前に医療用途のための物品に適用される。
【0024】
製剤は医療用途のための物品へのその接着力が硬化後の皮膚への製剤の接着力より大きいように設計されることが有利であり、結果として製剤は物品除去時に物品に伴う。
【0025】
製剤は2〜100mmの幅で、創傷の縁のすぐ外側に、創傷のまわりに適用されることができる。
【0026】
方法の有利な実施において、一種以上の創傷手当用品は、その手当用品が創傷及び製剤が適用される領域をカバーし、その手当用品が製剤硬化前に適用されるように、適用されることができる。創傷手当用品は液密手当用品であることが好ましい。もし幾つかの異なる層からなる手当用品システムが使用されるなら、層のうち一つが液密であれば十分である。
【0027】
図面の記載
本発明は添付図面を参照して記載されるだろう。
図1は本発明の好ましい実施態様による製剤によって包囲された創傷の透視図を概略的な形で示す。
図2は上にある手当用品と相互作用する本発明の好ましい実施態様による製剤によって包囲された創傷の横断面図を概略的な形で示す。
図3及び4はストーマバッグが取り付けられる本発明による保護層の横断面図を概略的な形で示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図1は例えば腕2上の創傷1を概略的な形で示す。本発明による製剤は0.1〜5mm厚の層3で創傷のまわりに適用される。製剤層3は適用時に軟膏状の稠度を有し、層3中の製剤は皮膚上で広げられた後、架橋反応によって柔らかくかつ皮膚に優しい架橋エラストマーを形成するシリコーン系を含有する。この架橋反応の速度は皮膚との接触で製剤に付与される温度で、即ち20〜40℃で十分であり、材料は1分〜24時間後に実際には最終的に硬化される。この関連において、「実際には最終的に硬化される」は、材料が反応終了後の値より大きい、2mmより小さい針入度値に相当する硬さに達したことを意味するものとして理解される。形成されるエラストマーは商業的に入手可能な軟膏/クリーム/ペーストよりかなり高い結合力を有し、さらに皮膚に優しい態様で皮膚に付着する。それは製剤が除去されるときに皮膚が損傷されないことを意味する。
【0029】
適用時に軟膏状である製剤層3は、20〜40℃で自発的に架橋して柔らかいエラストマーを形成するシリコーン組成物を含有する。付加硬化であり、かつ室温で架橋されうる、RTVシリコーン系が特に好ましい。RTVシリコーンは柔らかくかつ曲げやすく作ることができる。RTVは「室温加硫(Room temperature vulcanizing)」を表わす。
【0030】
RTV付加硬化シリコーン系の例はEP 0300620 A1に与えられ、それはアルケニル置換ポリジオルガノシロキサン、シリコン原子の幾つかに連結された水素原子を含有するオルガノシロキサン、及びプラチナ触媒からなる「ゲル形成組成物」と称するものを記載する。
【0031】
RTVシリコーンの化学組成はUS 6471985 B2にも記載され、それはまた、その場で製造される創傷手当用品を記載する。
【0032】
これらの材料の変形は本発明に従って皮膚上のエラストマー形成漏出封止として使用するために最適化されることができる。
【0033】
商業的に入手可能なRTVシリコーンの例はWacker−Chemie GmbH,Munich、ドイツからのWacker SilGel 612である。これは二成分系である。形成されるエラストマーの軟度は二成分A:Bの割合を1.0:0.7から1.0:1.3まで変化することによって変更されることができる。
【0034】
乾燥皮膚に接着する他の柔らかいシリコーンエラストマーの例はNuSil Technology,Carpinteria.GA、米国からのNuSil MED−6340,NuSil MED3−6300及びNuSil MED 12−6300、及びDow Corning Corporation,Midland、米国からのDow Corning 7−9800である。
【0035】
商業的に入手可能なRTVシリコーンはまた、低温で反応の速度を減少する目的のため、即ち材料が混合後に自発的に硬化するまでの時間を長くする目的のための抑制剤を含有することが多い。本発明による適用では、ある場合には、市場で入手可能であり、そうでなければ好適な特性を持つ付加硬化RTV型の標準シリコーンのほとんどによって与えられるものより迅速な架橋の必要性がある。かかる場合には、同じグレードであるが標準グレードに存在するものより低い量の抑制剤を有するものを使用することができる。あるいは、抑制剤を省略することができる。また、触媒の量を10倍増加することによって硬化時間を実質的に短くすることができる。PCT WO/73376 A1は架橋反応を調整するための抑制剤及び触媒の使用を記載する。
【0036】
層3における製剤は様々な目的のための多数の添加剤、例えば流動性を調整するためのパラフィン又はZnO、皮膚への接着を低減するためのパラフィン、皮膚の脱水を低減するための尿素、ヒドロコルチゾンの如き抗炎症製剤、抗菌剤、皮膚治癒プロセスを促進するための緩衝成分、軟膏を視覚化するためのZnOの如き薬剤を含むことができる。製剤をチキソトロープ性にするために添加剤を使用することが有利である。なぜならばチキソトロープ材料は皮膚上に広げると粘稠性が少ないが、いったん適所にとどまり製剤がもはや動作しなくなると粘稠になって流れにくくなるからである。チキソトロープ性はシリカ及び他の充填剤を加えることによって増大されることができる。また、シリコーンベースの物質を加えることによってチキソトロープ性を増大するための方法も知られている。
【0037】
適用時の製剤の粘度は5〜300Pa*s、好ましくは10〜120Pa*s、より好ましくは20〜80Pa*sであるべきであり、軟膏が実際に最終的に硬化されるまでの時間は0.5分〜24時間、好ましくは1分〜1時間、最も好ましくは1〜5分間であるべきである。
【0038】
硬化後、軟膏は2〜15mm、好ましくは3〜10mmの針入度(軟度)、2.0N/25mm未満、好ましくは1.0N/25mm未満、より好ましくは0.7N/25mm未満であるテフロンプレートに対して硬化された後の皮膚への接着力、0.3〜3.0N/25mmの皮膚上の硬化後の皮膚への接着力、及び0.1未満、好ましくは0.05未満である皮膚損傷指数(skin damage index)Hxを有するべきである。
【0039】
上述の接着力の値は乾燥した清潔な皮膚に適用される軟膏に関するものであることが注意される。
【0040】
架橋反応は製剤を使用して創傷の領域上に他の手当用品を効果的に取り付ける可能性及び製剤をワンピースで除去できる可能性を与える。図2はかかる適用の図を示し、そこでは手当用品4は創傷1上に適用され、製剤層3に取り付けられている。手当用品4は吸収材料から構成される創傷パッド5、創傷表面に取り付けられていない柔らかい疎水性シリコ−ン接着剤から構成される有孔層6、及び例えばプラスチック材料から構成される外部液密層7を含む。製剤層3が軟膏状の稠度を有し、創傷のまわりの皮膚への適用時に5〜300Pa*sの粘度を持つことによって、それは皮膚における全てのでこぼこに流れるだろう。製剤層3は結果として創傷の領域のまわりの皮膚の全ての部分と密接に接着剤接触し、それによって液体が層3と皮膚の間を通過できることを確実に防止するだろう。手当用品4は層3が硬化されてエラストマーを形成する前にその外部が層3をカバーするように適用されることが好ましい。それによって、これは有孔層6の下側と層3の上側の間の密接な接着剤接触を確実にする。さらに、手当用品4の外側7は吸収された滲出物が吸収体から漏出することを防止する。この性質のデザインは創傷床が全ての側上で液密バリヤーによって包囲されることを生じる。上にある手当用品における滲出物のいかなる吸収も防止するために創傷表面が層3における製剤のないままに保たれるように層3が適用されることが重要である。
【0041】
シリコーン接着剤の柔らかい有孔層を与えられた手当用品の例はMoelnlycke Health Care AB,Gothenburg,スウェーデンからのMepilex,Mepilex Border,Mepilex Transfer及びMepitelである。
【0042】
手当用品4以外の他のタイプの手当用品は層3が構成される製剤、例えば有孔プラスチックフィルム、不織材料又は織物材料からなる表面を有する伝統的な吸収手当用品、例えばMoelnlycke Health Care AB,Gothenburg,スウェーデンからのAlldress,Mepore及びMesorb、又はSmith & Nephew Wound Management Ltd.,Hull,英国からのMelolinと当然相互作用することができる。
【0043】
製剤がなお高度に粘稠な液体である間に、製剤は皮膚に適用され、それが付着されることを意図される医療用途のための物品は所望の位置に置かれる。その後、製剤は架橋される。物品への製剤の接着力が架橋反応後の皮膚へのものより大きいように付着される物品の材料及び表面構造を選択することが好ましい。原則として、材料が製剤に接着する度合いは材料の表面構造の粗さ及び隆起性、及びその接触面積の大きさに直接比例する。最高の接着力は製剤が表面材料の部分を包囲する架橋及び格子を形成する可能性を有する物品のための表面材料が使用されるときに得られる。かかる材料の例は織物材料、不織布及び連続気泡フォームである。製剤が表面上に置かれるとき、それは材料中に浸透して布、又はフォーム中の気泡壁を包囲し、かくして完全に浸透する格子と称されるものによる機械的固定が硬化後に得られることができる。触媒抑制剤として機能しかつ医療用途のための物品に存在させてもよいいかなる物質も考慮しなければならない。製剤と接触するとき、これらの物質は架橋反応を完全に又は部分的に防止することができる。多くの場合において、手当用品の層6への製剤層3の接着力が皮膚へのものより大きく、手当用品の除去時に層3が手当用品4に伴うように製剤層3を念入りに作ることが好ましい。
【0044】
最初に医療用途のための物品に製剤を適用し、次いで物品を適用された製剤層とともに皮膚上の意図した位置に置くことも当然可能である。
【0045】
保護層を構成することを別として、製剤は医療用途のための物品を皮膚に接着するための皮膚に優しい接着剤として機能することもできる。図3は本発明による製剤の層3′が腸開口9のまわりの皮膚8にどのように取り付けられるかを図の形で示す。さらに、ストーマバッグ10は円形支持プレート12に付着される接着剤層11を使用して層3′の外側の皮膚に付着される。図4は変形例を示し、それはストーマバッグ10′の接着剤層11′が保護層3′の領域内に延びていない点が図3に示された例と異なるにすぎない。二つの実施態様における対応する構成要素は同じ参照符号を与えられているが、図4の構成要素の場合においてプライム符号を付加されている。
【0046】
製剤を供給するための適切な方法は混合ノズルを与えられた二室システム系にある。この方法では、二つの反応性シリコーンプレポリマーは成分がノズルを通して押出されるまで別個で未反応のままに維持されることができる。この二成分付化硬化システムは混合の準備を整えて供給されることもできる。この場合には、以下で記載されるタイプの抑制剤の十分な量を添加することが必要である。この完全な混合物は自発的に架橋するまでに使用される時間が限られており、早い硬化を遅らせるために低温で貯蔵されなければならない。
【0047】
層3を構成する、記載された製剤は、軟膏及びクリームが通常、保護及び治療のために使用される皮膚、例えば創傷のまわりの皮膚(創傷周囲皮膚)、敏感な皮膚(創傷周囲皮膚ではない)、損傷された皮膚/皮膚疾患(湿疹、乾癬など)、及び外乱(機械的なもの、化学的なもの、水及び微生物)にさらされた皮膚上に使用されることができる。
【0048】
上記製剤層3は皮膚保護製品であり、それは軟膏/ペースト及びバリヤークリームが持つ積極的な特性のほとんどを与えられることができるが、同時にこれらの重要な欠点を持たない。製剤は軟膏/クリーム及びペーストが通常使用される状況の全てにおいて使用されることができるが、それはまた、軟膏/ペーストの特性を越えかつそれより上の製剤が持つ新規な特性、まっさきに言うと高度な凝集と組み合わせた良好な接着性のため他の領域内で幅広い用途を持つ。製剤はまた、上述の揮発性バリヤー製品と比較すると大きな利点を持つ。
【0049】
− 適用時に軟膏状である製剤はその粘着性によって皮膚に良く接着し、創傷液及び他の液体から皮膚を保護する。製剤の疎水性は皮膚の表面から水及び水性液体を遠ざけるのに寄与する。製剤が凝固前に皮膚に流れることによって皮膚と製剤の間に実質的に完全な密着が作られる。製剤が凝固して適用時よりかなり高い凝集性を持つエラストマーを形成した後、製剤が皮膚の精密な型(「鍵穴における鍵」)を形成するので皮膚への機械的結合も起こる。隙間には創傷液が皮膚を流れて皮膚を損傷する溝は全く形成されない。特徴は製剤が架橋後であっても柔らかくかつ可撓性を有するので皮膚に優しく体の動きにうまく対応することである。接着性は製剤除去時に皮膚細胞が剥離されない信頼性のある固定のために十分強い。皮膚に対する接着性の強さはシリコーン組成物の選択もしくは結合の程度によって又は例えば軟膏基材、シリコーンオイル又はZnOの添加量によって調整されることができる。
【0050】
− 適用時に軟膏状であるシリコーンベースの製剤は、もし創傷手当用品が製剤がまだ軟膏又はペーストの稠度を持っている間に製剤の上に置かれるなら、多くのタイプの創傷手当用品(例えば、フォームベース又は繊維ベースの手当用品)に架橋後、付着する。製剤の架橋と関連して、製剤は機械的及び接着的結合によってこれらの上にある手当用品に結合する。機械的結合は手当用品の一部(例えばフォーム中の繊維、糸又は細胞壁)がシリコーン材料によって包囲されることから生じる。手当用品が除去されるとき、凝固された製剤はそれらに伴う。これは取り扱いを容易にし、創傷包帯時間を短くする。製剤はまた、Mepitel,Mepilex又はMepilex Borderタイプ(Moelnlycke Health Care,Gothenburg、スウェーデン)の手当用品のシリコーン被覆表面に接着する。前記製品の下側の柔らかいシリコーン表面に十分に接着する市販されている接着剤又は硬膏は全く知られていない。製剤が手当用品の交換とともに剥離されることが必要であるとき、製剤は皮膚に対する接着性が手当用品に対する接着性より低いように調製されるべきである。
【0051】
− 適用時に軟膏状である製剤は凝固されると、その下側で皮膚に対する接着剤として、その上側で手当用品に対する接着剤として機能するので、創傷のまわりの領域上に製剤を広げ、その上に液密手当用品、例えばMepilex Border又はMepiform(ともにMoelnlycke Health Care AB,Gothenburg、スウェーデンからのもの)を置くことによって液密バリヤーを作ることができる。凝固された軟膏及び手当用品はともに、液体及び汚染物(例えば水、尿及び糞便)が外部から創傷中に透過するのを防止するバリヤーを形成する。同時に、創傷液は創傷から出て周囲の領域を汚染しうるのを防止される。創傷液は創傷中に残ったままであり、もし手当用品が吸収性手当用品であるなら上の手当用品中に押しやられる。
【0052】
− 製剤が自発的に架橋することによって、それは意図した位置により容易にとどまる。それが手当用品の外側の皮膚に広がったり又は創傷中に広がる危険は減少する。製剤は皮膚から消えないが、軟膏は徐々に上方へ移行して上にある手当用品に吸収され、そこでそれはまた、創傷液の意図した吸収をブロックしうる。
【0053】
− もし製剤が手当用品と組み合わせて使用され、それが手当用品除去時に連行しないなら、代わりに鉗子を使用して手当用品を除去することができる。なぜならば製剤は凝集したままであり、それゆえ一片で(又は二、三片で)剥離されることができる。もちろん、例えば製剤が接着しない剥離紙又は同種材料を製剤が適用される皮膚の領域の一部に付着することによって、製剤の適用時に把持タブなどを製造することもできる。剥離紙は硬化後に除去されることができ、そのとき皮膚に付着されない製剤の一部を持っていく。この場合において、製剤のこの部分はそれが適用された製剤の残りから横方向に突出するように適用されることが有利である。もちろん、製剤に接着する材料の把持部を製剤の外側に突出させ、材料の錨止部を製剤に付着することだけによって、かかる材料を使用する把持タブを設計することもできる。
【0054】
− それが硬化反応後に接着するという事実にかかわらず、製剤は伝統的な接着剤と比較すると極めて皮膚に優しい。Dykeの方法によれば、それは角質細胞層に対して損傷を生じないか又は伝統的な接着剤より損傷が少ない。もし製剤が凝固して柔らかいエラストマーを形成するなら、架橋されたシリコーン製剤の真下の皮膚上に成長する毛は製剤が除去されるときにつかまえられて製剤に伴うことはないだろう。
【0055】
− 製剤はまた、ストーマバッグを固定するための親水性コロイドベースの自己接着性接着剤プレートの代わりに使用されるために好適である(人工肛門形成及び回腸造瘻では、漏出防止性を維持すると同時に敏感な皮膚を保護することが重要である)。
【0056】
− 製剤はまた、ハエのウジを用いて壊死創傷を治療するときに漏出防止性を生成するために好適である。それはウジ療法と称され、ウジが逃避できなくなるように創傷に閉じ込められる。この関連において、製剤は創傷のすぐ外側に広がり、そこにハエのウジが置かれ、その後幼虫が通過できない閉じた網目ネットを創傷及び凝固させた軟膏製剤上に置く。製剤は皮膚とネットの両方に対する接着剤として機能する。
【0057】
− 製剤はまた、皮膚に優しい方法で医療用途のための他の物品、例えばチューブなどを皮膚に固定するために使用されることができる。
【0058】
− 軟膏/エラストマーは皮膚に供することが望ましい皮膚保護物質、例えば酸化亜鉛、pH緩衝剤、石油ゼリー、尿素及びビタミンのための優れたキャリアである。
【0059】
製剤は架橋される前に、適用時に正しい粘度を有することが重要である。状況が異なれば異なる粘度を必要とする。
【0060】
様々なシリコーンベースの製剤及び商業的に入手可能な軟膏、ペースト及びクリームが身体上の様々な厚さ及び様々な部位の層において実験対象の皮膚上に広げられた。様々な製剤の粘度は30℃の温度及び10S−1の剪断速度でCSL 100 Carri−Medレオメータを使用して測定された。試験された製剤、即ちWacker SilGel 612(50%ZnOの添加された存在下でA:B=1:1),Vitt Vaselin[白色石油ゼリー](Apoteksbolaget Produktion och Laboratorier[The Pharmacy Company Production and Laboratories],Gothenburg、スウェーデン),Inotyol(Laboratories Urgo[Urgo Laboratories],Dijon、フランス),Silon(Smith & Nephew,Moelndal、スウェーデン)、ACO亜鉛ペースト(ACO hud AB[ACO Skin AB],Upplands Vaesby、スウェーデン)、Natusan亜鉛軟膏(Johnson & Johnson Ltd.,Maidenhead,SL6 3UG、英国)及びEPSE Imprint II Garant Monophase(3M SPE Dental Products,St.Paul,MN 55144−1000、米国)の幾つかの結果を以下の表に見ることができる。
【0061】

【0062】
充填剤、例えばZnO又はシリカを添加することによって製剤の粘度を増加することができた。様々な製剤が様々な粘度でどのように機能するかを決定するための実験も、製剤を様々な温度に冷却することによって実施された。一つのWacker SilGel 612(A:B=1:1)実験では、粘度はZnOを添加混合することによってかなり増大されることができた(以下の表参照)。粘度値は成分を一緒に混合した後、1分間で読み取った。
【0063】

【0064】
我々は5〜300Pa*sの範囲内の粘度を有する製剤が様々な使用者状況において十分に作用することを見出した。ずっと高い粘度では、製剤は極めて粘稠になるのでそれらはこの用途にもはや使用できない。この明細書では、高度に粘稠な液体は結果として上述の範囲の粘度を有する液体を意味するものとして理解される。上述の範囲の下方部分内の粘度を有する製剤は例えばスタティックミキサーで混合することが容易であり、広がりやすい。しかしながら、そのとき製剤がかなり大きな程度で流出し、製剤が凝固するまで意図した部位に適切に残らない危険が高い。これは製剤が身体の動き、圧力又は摩擦によって影響される場合は特にそうである。製剤の粘度が高いほど、製剤がより厚い層で適用することが容易であり、同時に製剤は適所に信頼性高く留まる。他方、高粘度の製剤は相対的に増粘されているので混合して広げることが難しい。
【0065】
適用時に10〜120Pa*sの範囲内の粘度を有する製剤が最も良好に機能する。ほとんどの場合において、20〜80Pa*sの範囲内の粘度を有する製剤は特に製剤を使用して手当用品又は他の医療用物品を皮膚に固定することが必要であるなら、とりわけ最良に機能する。薬局で購入可能な多くの皮膚軟膏及び皮膚ペーストはまさにこの範囲内の粘度を有し、これは皮膚への適用を容易にする。
【0066】
充填剤を添加することによって、シリコーンにチキソトロープ特性を与えることもでき、これは取り扱いに関して有利である。例えば商標Wacker HDKの下でWacker Chemieによって販売されるようなヒュームドシリカがこの目的のために特に有効であった。
【0067】
製剤の別の重要な特性は架橋が起こった後のその軟度である。軟度は特定の時間にわたって試料中に規定された幾何学的形状及び重量を有する円錐を沈めることによって、mm単位での針入度で測定される。柔らかい材料の場合では、円錐はより深く沈み、硬い材料の場合(この場合、円錐は深く沈まない)で得られるものより高い針入度値を生じる。その方法はEP 0782457により詳細に記載されており、読者はそれを参照されたい。硬すぎる材料は特にもし材料が相対的に厚い層に横たわるなら使用者にとって不十分な可撓性でありうる。柔らかすぎる材料はそれらの粘着性及び時には低い凝集性のために除去することがやっかいでありうる。
【0068】
架橋された材料の軟度は多数のパラメータ、例えば架橋度及び充填剤の添加混合の程度によって影響される。ある実験では、凝固されたシリコーン材料の軟度がZnOを添加混合することによって及びその架橋度によってどのように影響されるかを決定するために実施された。
【0069】
我々は様々な比でWacker SilGel 612における二つの成分を混合し、針入度を測定した:
【0070】

【0071】
比が100:130に減少されるとき、針入度はさらに増大し、比が100:70に増大されるとき針入度はさらに減少する。針入度値はある程度、バッチ依存であり、それは所望の針入度値を達成するために各バッチの場合においてA:Bの比を変更することがおそらく必要である。
【0072】
充填剤はこの材料の硬度を増大する(針入度値を減少する)目的のために添加されることができる。50%ZnOが100:80の混合物に添加されるとき、7.3mmの針入度値が達成された。ZnO含有量がさらに60%に増大されるとき、5.9mmの針入度値が達成された。
【0073】
製剤は硬化後に2〜15mmの範囲内の針入度値を達成するときに前記用途において機能しうることを見出した。3〜10mmの範囲の針入度を有する材料が最も良好に機能した。
【0074】
触媒の量及びタイプ、及び抑制剤の量及びタイプを変化することによって付加硬化プラチナ触媒RTVシリコーンの硬化速度を調整することができることが良く知られている。硬化速度はまた、特にポリマー成分の置換度、分枝度及び分子量に、及び架橋剤の量及びタイプに当然依存する。これらの全ては当業者に良く知られており、文献に十分に記載されている。
【0075】
柔らかいシリコーンは本発明に最も良く適している。Wackerによって供給されたSilGel 612を使用して実験を実施するように選択された。50%ZnOの添加された存在下で約5mmの針入度値を与える組成物が選択された。この混合物は30℃で約4時間の硬化時間を有していた。ある用途ではより短い硬化時間が要求される。それらの場合に、触媒の量を増加することができる。増加した量の製造者のオリジナルの触媒を添加するとき、硬化時間は短くなった。前記系と同様であるが抑制剤を欠いたシリコーン系を代わりに使用するとき、硬化時間は30分未満に減少した。硬化時間は針入度を測定することによって決定され、硬化は針入度値が最終値より2mm未満高いときに達成されたものとみなした。実験は触媒及び抑制剤の量を変更することによって硬化時間を所望のレベルに調整することは簡単であることを証明する。
【0076】
シリコーン材料を皮膚上の適所に置くときにシリコーン材料を硬化することによって、皮膚に対する接着を生成することができる。それは、同じ材料がまず手当用品の表面上で硬化し、次いで皮膚に適用されるより、漏出に対する安全性がかなり高い。以下の実験がこの結論を支持する:
【0077】
非弾性織物材料(グラム割合約30g/m)の100mm長さ及び25mm幅のストリップを、50重量%のZnOを含有するWacker SilGel 612の約2mm厚の層で被覆された。二つの異なるA:Bの比、即ち100:80及び100:90が選択された。織物材料はシリコーン材料によってすっかり含浸され、両側を完全に被覆された。試料の半分は30℃でテフロン被覆加熱プレート上に横たわり、硬化された。他の半分は実験対象の皮膚上に置かれ、硬化された。加熱プレート上の試料が硬化したとき、それらもまた、他の試料と並んで実験対象の皮膚上に置かれた。その後、試料は135°の引っ張り角度及び25mm/sのスピードで除去され、引っ張り力は同時に読み取られた。この方法はEP 0782457にも記載され、読者はそれを参照されたい。
【0078】

【0079】
測定結果は皮膚に対する製剤の接着力が適用前に硬化されるときと比較して皮膚表面に硬化されずに適用されたときにかなり大きいことを示す。最良に機能する製剤はそれらがその場で硬化されるときに少なくとも二倍の皮膚に対する接着力を示す。
【0080】
製剤の重要な特性は、製剤が良好な接着性、及び硬化後の皮膚に対する良好な液体封止性を示しながら、これが除去時に皮膚に対して損傷を起こさせないことである。この特性を示す実験を以下に記載する。使用された方法はJournal of Wound Care,Vol.10,No.2,2001;Effects of Adhesive Dressings on the Stratum Corneum of the Skin,P.J.Dykes,R.Heggie and S.A Hillで公開された方法の変形である。
【0081】
実験対象の前腕の内側を石けん及び水でこすることによって入念に洗浄し、次いで乾燥した。皮膚の色は試料が続いて適用される位置で測定された(F)。色を測定するために測色装置、即ちMinolta Chroma Meterが使用された。装置はカラースケールa*b*Lに設定され、b値はカラースケールにおいて緑/赤色軸を表わす。調査中の領域が緑色であればあるほど、b値は小さくなる。領域の緑色が少なく、赤色が多いほど、b値は大きくなる。
【0082】
詰綿を濃い緑色の食品着色剤に浸漬した。製造者:Ekstroems、スウェーデン。内容物:水、グリセロール、色素E104及びE131、及びエタノール。腕の縦方向の約3*20cmのサイズの領域が緑色に着色されるように綿を前腕の内側に対して20回なでた。着色が適切に乾燥した後、腕を約1分間流水で洗浄すると同時に、着色された皮膚を全領域にわたって均一に他方の手の内側でこすり、過剰の色を除去した。皮膚の色は緑着色を実施する前と同じ位置で再び測定された(F)。
【0083】
25*100mmのサイズの試料ストリップを測色が行なわれた位置をカバーするように適用した。試料は前腕の内側上に横方向に適用された。以下の試料を使用した:
a.50重量%のZnOを含有するWacker SilGel 612の約2mm厚の層に包囲された、非弾性であるが柔らかいナイロン織物材料(約30g/m)。A:B=100:80
b.試料aと同じであるがA:B=100:90のもの。
c.Tielle、開放創傷のための手当用品(Johnson & Johnson、米国)。自己接着性縁が実験に使用された。
d.Mefix、手当用品などを皮膚に固定するための自己接着性アクリレート接着剤被覆された布(Moelnlycke Health Care AB、スウェーデン)。
e.Duoderm、開放創傷を治療するための自己接着性親水性コロイド手当用品(Convatec、米国)。
f.Micropore、皮膚に優しい固定テープ(Johnson & Johnson、米国)。
g.Symphony SimCareストーマ手当用品(Foerbandsmaterial[手当用品材料]FMAB,Partille、スウェーデン)。腸開口の周りにストーマ手当用品を固定するために使用される自己接着性接着剤表面を使用した。
【0084】
試料a〜dを完全に凝固させた後、全ての試料を除去すると同時に、前述の方法を使用して引っ張り力を測定した。試料を白色支持体上に置き、その際皮膚に付着された側を上方に向けた。色は試料上の二つの部位、即ち、一方は着色されていない皮膚上に横たわらせた部分(F)、及び他方は着色された皮膚上に横たわらせた部分(F)で測定された。
【0085】
皮膚損傷指数を各試料について計算した。この指数は手当用品が除去されるときに手当用品に伴う表皮の外部層の量の測定値である。表皮の損傷が少ないほど、Hxは小さい。皮膚損傷指数(Hx)は以下の式を使用して計算された:

【0086】

【0087】
結果は、その場で硬化されたシリコーンは高い接着力を示すにもかかわらず、これは表皮からの細胞の除去の増加が全くないことを示す。
【0088】
皮膚の色素沈着をほとんど有しない実験対象を使用して測色時の精度を最高になるようにした。
【0089】
実験はまた、上述の公開された方法(Dykes/Heggie/Hill)のようにメチレンブルーを使用して実施された。そのとき代わりにa*b*Lカラースケールにおける青/黄色軸が使用された。結果は同様である。
【0090】
シリコーンが硬化する前に上の実験からの試料a及びbを毛でカバーされた皮膚に適用することによって実験が実施された。硬化後、試料が皮膚から除去されるときに偶然に毛が試料に伴うだけであることが観察された。これは除去時に手当用品の真下の毛を多く一緒に伴うことが多いMefix,Duoderm及びTielleタイプの試料と比較すると大きな違いであった。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の好ましい実施態様による製剤によって包囲された創傷の透視図を概略的な形で示す。
【図2】は上にある手当用品と相互作用する本発明の好ましい実施態様による製剤によって包囲された創傷の横断面図を概略的な形で示す。
【図3】ストーマバッグが取り付けられる本発明による保護層の横断面図を概略的な形で示す。
【図4】ストーマバッグが取り付けられる本発明による保護層の横断面図を概略的な形で示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚(角質層)に適用するための製剤において、それがシリコーン組成物を含み、そのシリコーン組成物が適用時に高度に粘稠であり、かつ適用後に架橋によって硬化して皮膚に接着する柔らかくかつ皮膚に優しいエラストマーを形成することを特徴とする製剤。
【請求項2】
適用時に5〜300Pa*s、好ましくは10〜120Pa*s、より好ましくは20〜80Pa*sの粘度を有し、硬化後に2〜15mm、好ましくは3〜10mmの針入度(軟度)を有することを特徴とする請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
皮膚上での硬化後、0.3〜3.0N/25mmの皮膚への接着力を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の製剤。
【請求項4】
適用後の硬化時間が0.5分〜24時間、好ましくは1分〜1時間、より好ましくは1〜5分間であることを特徴とする請求項1,2又は3に記載の製剤。
【請求項5】
製剤が疎水性であることを特徴とする請求項1,2,3又は4に記載の製剤。
【請求項6】
シリコーン組成物が付加硬化RTVシリコーン系からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の製剤。
【請求項7】
シリコーン系における架橋可能物質がメチル基の幾つかをビニル基で置換されたポリジメチルシロキサンからなり、架橋形成物質がメチル基の幾つかが水素で置換されたジメチルシロキサン、及びプラチナベースの触媒からなることを特徴とする請求項6に記載の製剤。
【請求項8】
一種以上のスキンケア物質がシリコーン組成物に添加されていることを特徴とする請求項6又は7に記載の製剤。
【請求項9】
保護層を皮膚(角質層)に適用するための方法において、シリコーン組成物を含む製剤を皮膚に適用し、その後製剤を硬化して皮膚に接触する柔らかくかつ皮膚に優しいエラストマーを形成させること、及びシリコーン組成物が適用時に高度に粘稠であり、かつ適用後に架橋によって硬化して皮膚に接着する柔らかくかつ皮膚に優しいエラストマーを形成することを特徴とする方法。
【請求項10】
製剤が0.1〜5mmの層厚さで適用されることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ストーマバッグ、チューブ又は創傷手当用品もしくは包帯の部品の如き医療用途のための物品を、製剤が硬化する前に、製剤の上側、即ち皮膚から離れて面する側に適用し、製剤が硬化した後に、物品が製剤に付着されることを特徴とする請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
製剤を医療用途のための物品に適用した後、それを物品と同時に皮膚に適用することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
製剤が、医療用途のための物品へのその接着力が硬化後の皮膚へのその接着力より大きいように、設計されることを特徴とする請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
製剤を、2〜100mmの幅で、創傷のまわりに、創傷の縁のすぐ外側に適用することを特徴とする請求項9〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
一種以上の創傷手当用品が、その手当用品が創傷及び製剤が適用される領域をカバーし、その手当用品が製剤硬化前に適用されるように、適用されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
創傷手当用品が液密手当用品からなることを特徴とする請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−534344(P2007−534344A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517019(P2006−517019)
【出願日】平成16年6月2日(2004.6.2)
【国際出願番号】PCT/SE2004/000848
【国際公開番号】WO2004/108175
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(503121332)メールンリユーケ ヘルス ケアー アーベー (6)
【Fターム(参考)】