説明

エラストマー性デンタルフロス

口を清潔にする道具として有用な、ポリプロピレンおよびエラストマー性ブロックコポリマーの融解したブレンドならびに可塑剤を含む組成物。そのエラストマー性組成物はデンタルフロスとして用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
[0001] この出願は2009年11月5日に出願された米国仮特許出願第61/258,411号に対して優先権を主張し、それを本明細書に援用する。
【背景技術】
【0002】
[0002] デンタルフロスおよび他の歯間クリーナーの使用は歯科衛生の重要な部分であり、歯の間および歯肉線の下、例えば口の中の歯ブラシが届くことができない領域からプラークおよび他の微粒子を除去するために用いられる。しばしば、特に定期的に清潔にされない場合、これらは齲食の開始部位である。しかし、たとえ日常的に手入れしても、なおこれらの領域において齲食および歯肉炎が発現する。従って、より有効なデンタルフロスを開発する継続的な必要性が存在する。
【0003】
[0003] デンタルフロスは一般に、一定の直径/寸法を有する物質の線状の細片である。しかし、歯は全てが等しい間隔で離れているわけではない。従って、歯の間の距離よりも小さい直径を有するデンタルフロスの使用は、結果として非効率的な、または有効でない歯の間のクリーニングをもたらす。加えて、通常は歯肉および2本の隣接する歯の間に空間が存在し、それは通常はデンタルフロスの直径よりも大きく、そのような領域の効率的なクリーニングは難しい。デンタルフロスの使用者は時々歯肉をマッサージするためにデンタルフロスを使用するが、デンタルフロスは一般にぴんと張って引いた際に硬く、結果として歯肉への損傷をもたらす可能性がある。
【0004】
[0004] そのような問題を克服するための解決策には、より広い直系を有するデンタルフロスを製造することが含まれる。これは、実質的な力の増大無しで歯の間をより大きな直径のフロスを、または通常の直径のフロスさえも通すのが難しい可能性がある限りにおいて、問題を引き起こす可能性がある。フロスを歯の間を通すためにかけられる力は、一度そのフロスが歯の間を通るとすぐに解放され、通常は結果として歯肉との痛みを伴う衝突がもたらされ、裂傷および出血がもたらされる可能性がある。また、フロスを歯の間を通すためにかけられるこの“余分な”力は、細断およびほつれを引き起こす繊維のフィラメントの断裂を引き起こすであろう。従って、小さい子供は可能性のある自ら招いた負傷によりフロッシングする気を失ってしまう可能性すらある。
【0005】
[0005] ゼラチン状のエラストマー性の物品は当技術において既知であり、しばしば傘のための柄として、ブラシとして、または玩具、デンタルフロス、手の運動の握り、クッション等のために用いられる。その開示をそのまま本明細書に援用する米国特許第5,334,646号および第5,508,334号は、ポリ(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン)トリブロックコポリマーの高レベルの可塑化用油との密接なブレンド混合物からなるゼラチン状組成物を開示している。これらのゼラチン状ポリマーは通常はゼリー状すぎて十分な堅さを欠いておりデンタルフロスの用途で用いることができず、これは特にそれらが伸長の際に容易に破断しすぎる傾向がある(すなわち、破断点引張り強度が実用には高すぎ、破断点伸長が低すぎる)ためである。その開示をそのまま本明細書に援用する米国特許第5,962,572号は、様々な適用、例えば低頻度振動の適用、機械的構造の制動等において有用な方向付けられたゲルを開示している。
【0006】
[0006] その開示をそのまま本明細書に援用する米国特許第5,755,243号は、エラストマー状の外層に囲まれた繊維中心部からなるデンタルフロスを開示している。その外層は、フロスのブラシ部分として用いられるより密なフロス上のより柔らかいコーティングを提供しているが、フロス自体は内部の繊維中心部のために引き伸ばすことができない。米国特許第5,875,797号において類似のフロスが開示されており、その開示をそのまま本明細書に援用する。その開示をそのまま本明細書に援用する米国特許第5,918,609号は微粒子で修飾されたエラストマー性フロスを開示しており、ここで微粒子修飾剤はそのフロスの表面に吸着されているか、またはそのフロスの表面に埋め込まれているかのどちらかである。
【0007】
[0007] その開示をそのまま本明細書に援用する米国特許第5,941,256号は、破裂してフロスの使用を示すための色を放出するであろう、フロスの一部と会合したマイクロカプセルを有するデンタルフロスを開示している。その開示をそのまま本明細書に援用する米国特許第6,029,678号は、芯の物質およびゲル物質を含む“ゲル”デンタルフロスを開示しており、ここでその芯の物質は十分な引張り強度を提供し、そのゲル構成要素はそのフロスの柔らかさを提供する。その開示をそのまま本明細書に援用する米国特許第6,161,555号は、向上した高い引裂き強度および向上した高い引張り強度を有するゲルから作られた撚り糸(strand)またはテープの形のデンタルフロスを開示している。
【0008】
[0008] 従って、そのような問題を解決するデンタルフロス組成物を開発する必要性が残っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,334,646号
【特許文献2】米国特許第5,508,334号
【特許文献3】米国特許第5,962,572号
【特許文献4】米国特許第5,755,243号
【特許文献5】米国特許第5,875,797号
【特許文献6】米国特許第5,918,609号
【特許文献7】米国特許第5,941,256号
【特許文献8】米国特許第6,029,678号
【特許文献9】米国特許第6,161,555号
【発明の概要】
【0010】
[0009] 通常のフロッシング操作において破断することなく引き伸ばす、および膨潤することができる少なくとも1種類のエラストマー性材料からなるエラストマー性デンタルフロス。そのデンタルフロスは向上した、そしてより穏やかな歯肉への適用を提供し、歯肉をマッサージすることができ、使用するのがより面白く、そして楽しく、フロッシングの間の容易な取り扱いを可能にするように柔軟である。
【0011】
[0010] 1態様において、そのエラストマー性デンタルフロスは少なくともエラストマー性ブロックコポリマー、ポリプロピレン、可塑剤、任意の香味料、および任意の着色剤を含む。そのエラストマー性デンタルフロスは好ましくは破断することなくそれの最初の長さの1,500%まで伸ばすことができ、幅2mmの試料に関して2.76×10Pa(40psig)のグリップ(grips)を有するInstron4464上で測定した場合の破断点における引張り強度のピークは20N・分未満であり、幅2mmの試料に関して2.76×10Pa(40psig)のグリップを有するInstron4464上で測定した場合の破断点における伸長は100%より大きい。
【0012】
[0011] 別の態様において、そのエラストマー性デンタルフロスは、少なくともエラストマー性ブロックコポリマー、ポリプロピレンホモポリマー、鉱油、任意の香味料、および任意の着色剤の混合物を成形型を通して押出しまたは射出成形して円形、星型、台形、楕円形、正方形、三角形、八角形、および長方形からなるグループから選択される断面形状を有するフィラメント状デンタルフロス製品を製造することにより調製される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[0012] 全体において用いられるように、範囲はその範囲内にあるそれぞれおよび全ての値を記述するための略記として用いられる。範囲内のあらゆる値は、範囲の末端として選択することができる。加えて、本明細書において引用される全ての参考文献をそのまま本明細書に援用する。本開示における定義および引用された参考文献の定義において不一致がある場合には、本開示が統制する。加えて、その組成物および方法は、そこで記述された要素を含んでいてよく、本質的にそれで構成されていてよく、またはそれで構成されていてよい。
【0014】
[0013] 別途明記されない限り、本明細書において、および明細書中の他の箇所において示されている全ての百分率および量は、重量による百分率を指すものと理解されるべきである。与えられた量はその物質の有効重量に基づく。本明細書における具体的な値の列挙は、その値プラスまたはマイナス測定における誤差を説明するためのある程度の変動性を意味することを意図している。例えば、10%の量には、測定における誤差の程度を考慮すれば、9.5%または10.5%が含まれてよく、当業者はそれを認識および理解しているであろう。
【0015】
[0014] ゲル組成物をデンタルフロスとして有効に用いることができることは驚くべき発見である。一般に、そのゲル組成物はエラストマー性ブロックコポリマー、好ましくはスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)ブロックコポリマー、ポリプロピレンホモポリマー、および可塑剤の融解したブレンドを含み、変形可能で引き伸ばし可能な固体であり、それはそれを引き伸ばした際に細くなる。そのゲル組成物はその元の長さの3000%まで引き伸ばすことができ、緩めた際にその元の長さの100%〜120%の範囲内に戻ることができる。一般に、そのゲル組成物はそれが引き伸ばされた状態になった際に“細くなり”、緩めた際に“太くなる”、またはその元の直径に戻る。従って、そのゲル組成物は歯の間を上手く処理するために引き伸ばすことができ、歯肉に接触する際に緩んで、例えばその領域を清潔にすることができる。
【0016】
[0015] 好ましい態様において、そのエラストマー性デンタルフロスは固体のゲル組成物の形であり、当業者に既知の押出し法または射出成形法によりフィラメントへと製造することができ、それはゲル様の粘稠度も示し、例えば容易に変形可能で引き伸ばし可能であるが、そのような変形および引き伸ばしの後にそれらの元の大きさおよび形状に戻る。その組成物は、80から99重量%までの不飽和中間ブロック(mid−block)鎖を有するSEBS(スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン)ブロックコポリマー、1から20重量%までのポリプロピレンホモポリマー、0.01から5重量%までの鉱油を含むエラストマー性ポリマー性材料を含むのが好ましい。その組成物はさらに、0.001重量%から1重量%までの着色剤、および0.05から1.5重量%までの香味料を含有していてよい。
【0017】
[0016] それが本明細書で記述される望まれる特性を有する最終組成物を提供する限り、あらゆる適切なSEBSブロックコポリマーを用いることができる。米国特許第5,334,646号および第5,508,334号はゼリー様の特徴を有する様々なSEBSコポリマーを開示しているが、そこで記述されているポリマーは、それらの望ましくない破断点引張り強度および破断点伸長の特徴のため、デンタルフロスとしての使用には実用的でない。本発明者らは、1から20重量%までのポリプロピレンのホモポリマーをSEBSおよび可塑化用油と混合して、破断することなくそれの最初の長さの1,500%まで伸ばすことができ、幅2mmの試料に関して2.76×10Pa(40psig)のグリップを有するInstron4464上で測定した場合に20N・分未満の破断点における引張り強度のピークを有し、幅2mmの試料に関して2.76×10Pa(40psig)のグリップを有するInstron4464上で測定した場合に100%より大きい破断点における伸長を有するエラストマー性組成物を提供することにより、適切なデンタルフロスを作ることができることを発見した。
【0018】
[0017] 用いられる適切なブロックコポリマーはより一般的な構成A−B−Aを有し、ここでそれぞれのAはポリスチレンの結晶質ポリマー末端ブロック区分であり;Bはポリ(エチレン−ブチレン)のエラストマー性ポリマー中心ブロック区分である。これらのブロックコポリマーはしばしばSEBSブロックコポリマーと呼ばれ、様々な商業的に入手できる源から容易に入手可能であり、または望まれる特性に応じて本明細書で提供されるガイドラインを用いて特別に設計することができる。そのポリ(エチレン−ブチレン)およびポリスチレン部分は、それらが柔軟なポリ(エチレン−ブチレン)鎖により相互接続されたガラス状のポリスチレンのサブミクロン領域からなる2相系を形成することができるように共存不能であってよい。これらの領域は、構造を架橋して補強する役目を果たす。この物理的なエラストマー性の網状構造は可逆的であり、そのポリマーをポリスチレンの軟化点より上に加熱すると一時的に構造が乱れ、それは温度を下げることにより元に戻すことができる。
【0019】
[0018] 様々な態様において有用なSEBSブロックコポリマーには、おおよそ20:80以下〜40:60以上の広い範囲のスチレン末端ブロック対エチレン/ブチレン中心ブロック比が含まれ得る。様々なスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマーがShell Chemical CompanyおよびPecten Chemical Company(Shell Oil Companyの事業部)から商品名Kraton G 1651、Kraton G 4600、Kraton G 4609等の下で商業的に入手可能である。(SEBS)ポリマーの他の等級を利用することもでき、それには0.92の比重、40,000cpsの25℃におけるトルエン中25重量パーセント固体溶液(solids solution)のブルックフィールド粘度、または25℃のトルエン中20重量パーセント固体溶液において8,000〜20,000cpsのブルックフィールド粘度を有するKraton G 1855Xが含まれる。
【0020】
[0019] そのスチレンのエチレンおよびブチレンに対する重量比は、以下の比率内のどこにでも変動することができる:19:81、20:80、21:79、22:78、23:77、24:76、25:75、26:74、27:73、28:72、29:71、30:70、31:69、32:68、33:67、34:66、35:65、36:64、37:63、38:62、39:61、40:60、41:59、42:58、43:57、44:65、45:55、46:54、47:53、48:52、49:51、50:50、51:49等。19:81未満の、または51:49より高い他の比率の値も可能である。
【0021】
[0020] 有用な他の適切なブロックコポリマーは、Kuraray Co., Ltd.(日本、東京)により商品名SEPTON(商標)の下で製造されているブロックコポリマーである。これらのブロックコポリマーには例えばスチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロックポリマー(SEPS)、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロックポリマー(SEBS)、スチレン−エチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロックポリマー(SEEPS)等が含まれる。
【0022】
[0021] 好ましくはそのブロックコポリマー(SEBSまたはSEPTONのどちらか)を、そのエラストマー性混合物(可塑剤油を含む)の総重量に基づいて1重量%から20重量%まで、より好ましくは3重量%から15重量%までのポリプロピレンホモポリマーと混合する。ポリプロピレンホモポリマーはDow Chemical Company(DOW(登録商標)ポリプロピレン5D49、DOW(登録商標)ポリプロピレン5D98、DOW(登録商標)ポリプロピレン5E16S、DOW(登録商標)ポリプロピレン5E89等)、DuPont、GE等から商業的に入手可能である。いずれかの理論により束縛されることを意図するわけではないが、本発明者らは、少量のより堅いポリプロピレンホモポリマーをエラストマー性コポリマーの混合物中に含ませることにより、デンタルフロス製品に適した望ましい破断点引張り強度および破断点伸長を有するより適切なデンタルフロス製品を達成することができると信じる。
【0023】
[0022] 実際の使用に特に好ましい可塑剤は当技術で周知であり、それらにはゴム加工油、例えばパラフィン系およびナフテン系の石油系油、高度に精製された芳香族を含まないパラフィン系およびナフテン系の食品および技術的等級の白色石油鉱油、イソプロピルミリステート、ならびにポリブテン、ポリプロペン、ポリテルペン等の合成液体オリゴマーが含まれる。その合成系列の加工油は高い粘度のオリゴマーであり、それは中程度〜高分子量の永久に流体の液体非オレフィン類(nonolefins)、イソパラフィン類またはパラフィン類である。多くのそのような油が既知であり、商業的に入手可能である。代表的な商業的な油の例には、Amoco(登録商標)ポリブテン類、水素化ポリブテン類およびポリブテンポリマーの1つの末端にエポキシド官能性を有するポリブテン類が含まれる:そのようなポリブテン類の例には以下のものが含まれる:L−14(320Mn)、L−50(420Mn)、L−100(460Mn)、H−15(560Mn)、H−25(610Mn)、H−35(660Mn)、H−50(750Mn)、H−100(920Mn)、H−300(1290Mn)、L−14E(100°Fにおいて27〜37cstの粘度)、L−300E(210°Fにおいて635〜690cstの粘度)、Actipol E6(365Mn)、E16(973Mn)、E23(1433Mn)等。様々な商業的な油の例にはARCO PrimeおよびTufflo油が含まれ、他の白色鉱油にはBayol、Bernol、American、Blandol、Drakeol、Ervol、Gloria、Kaydol、Litetek、Marcol、Parol、Peneteck、Primol、Protol、Sontex等が含まれる。
【0024】
[0023] 様々な態様において、そのエラストマー性コポリマーは水素化されており、中間ブロック鎖(例えばエチレン/プロピレンコポリマー等)は不飽和であるのが好ましい。そのエラストマー性コポリマー(SEBSまたは他のSEPTONコポリマーのどちらか)はその融解したブレンドの50重量%から99重量%まで、より好ましくは70重量%から99重量%まで、より好ましくは80重量%から99重量%まで、最も好ましくは85重量%、90重量%、または95重量%〜を構成する。そのエラストマー性コポリマー中に存在するスチレンの量は、スチレンの重量により20%から40%まで、例えば35%から35%までの範囲、または30%であることができる。そのポリプロピレンホモポリマーはそのブレンド中に、その融解したブレンドの重量に基づいて1重量%から20重量%までの量で含まれるのが好ましく、より好ましくは2重量%から15重量%まで、最も好ましくは5重量%、10重量%、または15重量%の量で含まれる。
【0025】
[0024] ポリプロピレンホモポリマーおよびエラストマー性ブロックコポリマーの融解したブレンドならびに添加剤が含まれる組成物全体には、好ましくはその融解したブレンドの重量により30%から100%まで、より好ましくは75%から99%まで、最も好ましくは95%より大きい量の融解したブレンドが含まれる。
【0026】
[0025] そのエラストマー性デンタルフロス組成物には、1種類以上の香味剤も含まれていてよい。用いてよい香味剤には、精油および様々な香味アルデヒド類、エステル類、アルコール類、および類似の物質が含まれるが、それらに限定されない。精油の例には、スペアミント、ペパーミント、ウィンターグリーン、サッサフラス、チョウジ、セージ、ユーカリ、マヨラマ、桂皮、レモン、ライム、グレープフルーツ、およびオレンジの油が含まれる。メントール、カルボン(carvone)、およびアネトール(anethole)のような化学物質も有用である。特定の態様は、ペパーミントおよびスペアミントの油を用いる。その香味剤はそのゲル組成物中に0.01〜5重量%、より好ましくは0.05から1.5重量%まで、より好ましくは0.1重量%から1重量%までの濃度で組み込まれてよい。そのゲル組成物には1種類以上の顔料も、例えばその組成物全体の0.001重量%〜1重量%、より好ましくは0.01重量%から0.5重量%まで含まれてよい。従ってそのエラストマー性デンタルフロスはわずかに色が付いていてよく、または半透明(transluscent)もしくは透明であってよいが、色が付いた製品が好まれる。
【0027】
[0026] 本明細書で記述されるデンタルフロス製品はさらに、フッ化物イオンの源、研磨剤、防腐剤または抗微生物剤、鎮痛剤、抗炎症剤、L−アルギニン、重炭酸L−アルギニン、凝固剤、ビタミン類、およびそれらの組み合わせから選択される追加の成分を含んでいてよい。1態様において、そのデンタルフロス組成物には場合によりフッ化物、またはフッ化物イオンの源が含まれていてよい。多種多様なフッ化物イオンを生じる物質を本組成物における可溶性フッ化物の源として用いることができる。代表的なフッ化物イオンの源にはフッ化第一スズ、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フルオロケイ酸ナトリウム、フルオロケイ酸アンモニウム、アミンフッ化物、フッ化アンモニウム、およびそれらの組み合わせが含まれるが、それらに限定されない。特定の態様において、そのフッ化物イオンの源にはフッ化第一スズ、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウムおよびそれらの混合物が含まれる。
【0028】
[0027] そのエラストマー性デンタルフロスは研磨性粒子、例えば酸化アルミニウム、小粒子シリカ、炭酸カルシウム、または他の研磨性(abrasive)もしくは研磨性(polishing)粒子も含んでいてよい。その研磨性粒子は、そのゲルが例えばデンタルフロスとして用いられる場合に破片の除去を助けることができる。
【0029】
[0028] そのエラストマー性デンタルフロスは、その塩基性アミノ酸の有益な作用をさらに促進するために、以下のものから選択される防腐剤または抗微生物剤も含んでいてよい:ハロゲン化ジフェニルエーテル(例えばトリクロサン、塩化セチルピリジニウム(CPC))、草の抽出物および精油(例えば、ローズマリーの抽出物、チモール、メントール、ユーカリプトール、サリチル酸メチル)、ビスグアニド系防腐剤(例えば、クロルヘキシジン、アレキシジンまたはオクテニジン)、第四級アンモニウム化合物(例えば、塩化セチルピリジニウム)、フェノール系防腐剤、ヘキセチジン、ポビドンヨード、デルモピノール(delmopinol)、サリフルオル(salifluor)、金属イオン(例えば亜鉛塩類、例えばクエン酸亜鉛、酸化亜鉛、乳酸亜鉛、および同様のもの)、サンギナリン、プロポリス、およびそれらの組み合わせ。
【0030】
[0029] 特定の態様において、そのエラストマー性デンタルフロスは場合により鎮痛剤、抗炎症剤、凝固剤、ビタミン類、およびそれらの組み合わせを含んでいてよい。
[0030] エラストマー性デンタルフロスの形成において、そのポリプロピレンおよびエラストマー性コポリマーは好ましくは一緒にブレンドされ、融解される。可塑剤は好ましくはそのゲルが固体構造を維持しているが変形可能でもあるようにするのに十分な量で添加される。次いでその混合物を押出しまたは射出成形してシートまたは撚り糸にして放冷する。その押出されたシートおよび撚り糸はあらゆる直径であってよく、あらゆる断面形状(例えば円形、正方形、星形、長方形等)を有していてよい。好ましくは、その押出しの直径は、そのゲルを150%〜1000%引き伸ばし、そうしてその直径を細くした際に、そのゲル組成物の細くなった直径が歯の間を容易に滑らかに動くことができるような直径である。そのデンタルフロスは円形の断面で測定した場合に0.5mmから10mmまでの直径を有するのが好ましく、より好ましくは1.0mmから3mmまで、最も好ましくは2mmの直径を有する。他の断面、例えば長方形(平らにしたフィルム様の材料)が用いられる場合、そのデンタルフロスは1から5mmまで、より好ましくは1.5から3mmまでの範囲内、最も好ましくは2mmの幅、および1から5mmまで、より好ましくは1.25から2.5mmまで、最も好ましくは1.5mmの厚さを有するのが好ましい。しかし、そのゲルは歯の間に適用された際にゲルが歯の間を滑らかに動くことを可能にする十分に細い直径にそれが達するまで伸び続け、そして細くなり続けると考えられるため、そのゲルの正確な直径は重要ではないことを特筆する。
【0031】
[0031] また、そのエラストマー性デンタルフロスは好ましくは1から10グラム/mまで、より好ましくは1.5から5g/mまで、最も好ましくは1.6から3.5g/mまでの範囲内の基本重量を有する。そのエラストマー性デンタルフロスは好ましくは0.25から2.5g/mまで、より好ましくは0.5から1.5g/mまで、最も好ましくは0.75から1g/mまでの見掛け密度を有する。そのエラストマー性デンタルフロスの破断する前の平均直径は、好ましくは0.1から0.75mmまで、より好ましくは0.2から0.5mmまで、最も好ましくは0.3から0.4mmまでの範囲である。
【0032】
[0032] そのエラストマー性デンタルフロスは好ましくはその元の長さの1,500%まで破断することなく引き伸ばすことができる。Instron Corporation(マサチューセッツ州ノーウッド)から商業的に入手可能であるINSTRON(登録商標)装置、好ましくはINSTRON(登録商標)4464を用いて、エラストマー性デンタルフロスの試料を破断点伸長およびその破断点における引張り強度のピークに関して試験することができる。好ましくは、そのInstron装置は2.76×10Pa(40psig)で、またはその付近で試料を保持することができるグリップと共に用いられる。Instron装置において用いられるエラストマー性デンタルフロスの試料は、最小中央切欠(notch)において2mmの厚さ、2mmの幅、10mmの全幅、およびその切欠のそれぞれの側において29.5mmの長さ、および11mmの切欠の長さを有していてよい。従って、その緩んだ標本の直径は1.9mmであり、それはその試料の中間にある切欠の中央における幅および厚さとおおよそ等しい。
【0033】
[0033] この試験手順を用いて、そのエラストマー性デンタルフロスは好ましくは22N・m未満、より好ましくは20N・m未満、最も好ましくは18N・m未満未満の破断点における引張り強度のピークを有する。そのエラストマー性デンタルフロスは好ましくは(切欠の中央において−すなわち、それの最も薄い点において)幅2mmの試料に関して100%より大きい、より好ましくは150%より大きい、最も好ましくは200%より大きい破断点における伸長を有する。
【0034】
[0034] そのエラストマー性デンタルフロス組成物は、デンタルフロスとして用いられるために芯の上にコートされてよい。その芯は繊維であってよく、それはポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル、またはそのフロスに引張り強度および/または剛性を与えることができる他のポリマーの多重フィラメント繊維であってよく、デンタルフロスの形成に関して有用であることが当業者に既知のあらゆる繊維であってよい。そのような繊維フロスを製造する方法は当技術で周知である。例えば、繊維デンタルフロスはナイロンから製造されてよく、ナイロン塩を重合させ、得られたポリマーをポンプで押出して、または押出し成形して単一フィラメントを形成する。そのフィラメントを硬化させ、次いで組み合わせてフロスの撚り糸を形成する。デンタルフロスの繊維はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から製造されてよい。そのポリマーを融解させ、押出し成形して細い撚り糸にする。繊維フロスの製造の後、その繊維フロスを、その繊維がコートされた状態になるようにその組成物を通過させる。繊維デンタルフロス/芯をコートするための方法も当技術で既知である。1態様において、その繊維デンタルフロス/芯をそのゲル組成物を含むエマルジョン槽中で処理する。そのエマルジョン槽は場合により、その繊維フロスに接着し、それによりそのゲル組成物をその芯に接着させる1種類以上のろう剤を含有していてよい。別の態様において、非PTFE繊維を含む繊維フロスを第1コーティングおよびその第1コーティングを覆う第2コーティングでコートする。その第1コーティングはナイロン結合性コーティングであり、第2コーティングは組成物である。
【0035】
[0035] 多重フィラメントのコートされた芯の提供において、その組成物およびそのフィラメントの数を選択しなければならない。フィラメントの数は、そのフィラメントのデニールに応じて2から250まで、好ましくは2から100までであろう。そのフィラメントは、フロスのリボンを形成するためにインチあたり1〜5回の撚りで撚られてよい。その撚りは、糸巻き上での、およびそれに続く取り扱い、例えばコーティングの間のフロスの完全性を提供する。香味を液体または固体として適用することもできる。噴霧乾燥された固体を用いるのが好ましい。同様に、様々な他の添加物を液体または固体として適用することができる。液体として適用する場合、そのフロスを糸巻き上に巻きつける前に乾燥させる。その乾燥は放射乾燥または空気乾燥によることができる。乾燥の後、そのフロスを糸巻き上に巻きつける。次いでその繊維を糸巻きから取り外し、ゲル組成物でコートする。
【0036】
[0036] 別の観点において、ゲルでコートされた芯の内部の芯は、ゲル内で異なる、または代わりの配置を有していてよく;すなわち、その芯はそのゲル組成物でコートする際に必ずしも一直線である、またはぴんと張ってある必要はない。従って、その芯はそのゲル組成物でコートする際に緩んでいてよく、または“コイル”の形状へと形作られていてよい。そのような配置はデンタルフロスの破断に耐えるために、例えば2つの別の破断点を提供するために望ましい可能性がある。従って、例えば、芯をコイルの様式に配置し、次いでそのゲル組成物でコートしてデンタルフロスを形成する。デンタルフロスの長さはそのゲル組成物の長さにより決定され、用いられる際に、そのゲル組成物および芯は同時に伸長するであろう。1態様において、そのゲル組成物が応力の下で砕けた場合にその芯が完全なままで例えば歯の間をフロッシングするように、その芯の引張り強度はそのゲル組成物の引張り強度より大きい。別の態様では、その芯が応力の下で砕けた場合にそのゲル組成物が完全なままで例えば歯の間をフロッシングするように、そのゲル組成物の引張り強度はその芯の引張り強度より大きい。その2つの態様のどちらにおいても、そのフロスの一方の構成要素は破断したが、他方の構成要素は完全なままである。用いている間に破断するデンタルフロスはしばしば使用者に不快感をもたらすため、そのような配置が望ましい可能性がある。
【0037】
[0037] 好ましい態様のエラストマー性デンタルフロスを製造するために用いられる加工条件は最終的な特性に応じて異なるであろう。好ましくは、製造される異なる形状(例えば円形、長方形、薄膜状、星型、八角形等)に適合するための様々な成形型の形状を有するマルチゾーン単軸スクリュー押出機が用いられる。そのスクリューの直径は製造される製品の規模に応じて、実験室規模に関して25から30mmまでのどこかから商業的規模での適用に関してはるかに大きな直径まで異なり得る。当業者は、本明細書で提供するガイドラインを用いて、エラストマー性デンタルフロス組成物を製造するための適切な押出機を設計することができる。多数の層を有する共押出プロセスを用いてデンタルフロスを製造することもできるであろう。
【0038】
[0038] あるいは、そのエラストマー性デンタルフロス製品は、射出成形技法を用いて製造することもできる。また、当業者は本明細書で提供するガイドラインを用いて適切な射出成形法および装置を設計することができるであろう。
【0039】
[0039] ここで、好ましい態様を、以下の限定的でない実施例に関連してより詳細に記述する。
【実施例】
【0040】
[0040] エラストマー性デンタルフロス製品を作り、商業的に入手可能なデンタルフロス製品と比較した。本発明のエラストマー性デンタルフロスを、30mmのスクリュー直径、25のL/D比、1/3の圧縮速度、60kg/hrの公称容量、および12m/秒の材料流速を有するマルチゾーン単軸スクリューMIOTTO(登録商標)押出機(Miotto Ltda、ブラジル、サンパウロ)において融解押出しにより製造した。様々な区域における押出機の本体温度は(Z1=164℃;Z2=164℃;Z3=173;およびZ4=172℃)であり、様々な区域における押出機の押出口温度は(Z1=175℃;およびZ2=175℃)であった。その製品を28℃で維持された水冷タンク中で冷却した。
【0041】
[0041] そのエラストマー性デンタルフロスは、押出機中でそのデンタルフロスの総重量に基づいて100重量%の以下のポリマーブレンド:SEBS(スチレン−エチレン/プロピレン−スチレン)ブロックコポリマー25.8%、プロピレンホモポリマー19.396%、ナフテン系鉱油51.7%、0.1%の抗酸化剤/安定剤構成要素、0.02重量%の着色剤、および3重量%のミントの香味を混合することにより調製された。そのエラストマー性デンタルフロスは、1.9mmの直径、2.45g/mの基本重量および0.83g/mの見掛け密度を有していた。この発明のデンタルフロスを試料1と名付けた。
【0042】
[0042] そのエラストマー性デンタルフロスを、以下の構成要素から調製された一般に用いられるデンタルフロス製品と比較した:ポリアミドナイロン繊維(C1)、ポリプロピレン繊維(C2)、およびPTFE、ポリテトラフルオロエチレン(C3)。本発明の試料を、以下の寸法を有するように調製した:最小中央切欠において2mmの幅、10mmの全幅、および切欠のそれぞれの側において29.5mmの長さ、および11mmの切欠の長さ。
【0043】
[0043] それぞれの試料をINSTRON(登録商標)4464引張装置上で試験して破断点寸法、破断点における引張り強度のピーク、および破断点における伸長を測定した。破断を促進するために、物質に上記のように切欠を入れた。その実験の結果を下記の表1に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
[0044] その結果は、試料1で調製されたエラストマー性デンタルフロス製品が一般に用いられる繊維デンタルフロス製品と比較した場合に優れた破断前の最大伸長における寸法、優れた破断点における引張り強度のピーク、および優れた破断点伸長を有していたことを示している。
【0046】
[0045] 本発明は上記で説明的な実施例に関連して記述されたが、本発明はその開示された態様に限定されないことは理解されるべきである。当業者が本明細書を読んで思い浮かぶであろう変更および修正も本発明の範囲内であり、それは添付された特許請求の範囲において定義される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のもの:
a.エラストマー性ブロックコポリマーおよびポリプロピレンのブレンド;ならびに
b.可塑剤
を含むエラストマー性デンタルフロス組成物。
【請求項2】
そのエラストマー性ブロックコポリマーがスチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロックコポリマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
そのエラストマー性ブロックコポリマーがそのブレンドの50重量%〜99重量%を構成する、いずれかの前記の請求項に記載の組成物。
【請求項4】
そのポリプロピレンがそのブレンドの1重量%〜50重量%を構成する、いずれかの前記の請求項に記載の組成物。
【請求項5】
その組成物が30重量%から99重量%までのそのブレンドを含む、いずれかの前記の請求項に記載の組成物。
【請求項6】
そのスチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロックコポリマーが20重量%〜40重量%のスチレンを含む、いずれかの前記の請求項に記載の組成物。
【請求項7】
その可塑剤が鉱油、ナフテン系油、またはそれらの組み合わせである、いずれかの前記の請求項に記載の組成物。
【請求項8】
さらに香味料、着色剤、フッ化物イオンの源、研磨剤、防腐剤または抗微生物剤、鎮痛剤、抗炎症剤、凝固剤、ビタミン類、またはそれらの組み合わせを含む、いずれかの前記の請求項に記載の組成物。
【請求項9】
その組成物がデンタルフロスの形であり、それを破断することなくその最初の長さの1,500%まで伸ばすことができる、いずれかの前記の請求項に記載の組成物。
【請求項10】
その組成物がデンタルフロスの形であり、それが幅2mmの試料に関して2.76×10Pa(40psig)のグリップを有するInstron4464上で測定した場合に20N・分未満の破断点における引張り強度のピークを有する、いずれかの前記の請求項に記載の組成物。
【請求項11】
その組成物がデンタルフロスの形であり、それが幅2mmの試料に関して2.76×10Pa(40psig)のグリップを有するInstron4464上で測定した場合に18N・分未満の破断点における引張り強度のピークを有する、いずれかの前記の請求項に記載の組成物。
【請求項12】
その組成物がデンタルフロスの形であり、それが幅2mmの試料に関して2.76×10Pa(40psig)のグリップを有するInstron4464上で測定した場合に100%より大きい破断点における伸長を有する、いずれかの前記の請求項に記載の組成物。
【請求項13】
その組成物がデンタルフロスの形であり、それが幅2mmの試料に関して2.76×10Pa(40psig)のグリップを有するInstron4464上で測定した場合に200%より大きい破断点における伸長を有する、いずれかの前記の請求項に記載の組成物。
【請求項14】
その組成物がデンタルフロスの形であり、それが幅2mmの試料に関して2.76×10Pa(40psig)のグリップを有するInstron4464上で測定した場合に0.35mm未満の破断前の最大伸長における平均直径を有する、いずれかの前記の請求項に記載の組成物。

【公表番号】特表2013−510170(P2013−510170A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538036(P2012−538036)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【国際出願番号】PCT/US2010/055656
【国際公開番号】WO2011/057095
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(590002611)コルゲート・パーモリブ・カンパニー (147)
【氏名又は名称原語表記】COLGATE−PALMOLIVE COMPANY
【Fターム(参考)】