説明

エラストマー架橋用の過酸化物の混合物

本発明は、少なくともOO−tert−ブチル−O−(2−エチルヘキシル)モノペルオキシカルボナートおよび少なくともOO−tert−アミル−O−(2−エチルヘキシル)モノペルオキシカルボナートを含む混合物であって、前記OO−tert−アミル−O−(2−エチルヘキシル)モノペルオキシカルボナートが、混合物の総重量に対して0.001重量%から45重量%の範囲の含有率で混合物中に存在することを特徴とする混合物に関する。本発明はまた、エラストマーおよびこのような混合物を含む架橋性組成物、ならびにこのような組成物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にエチレン−酢酸ビニル(EVA)コポリマーの架橋に有用である過酸化物混合物に関する。本発明はまた、エチレン−酢酸ビニルコポリマーおよびこのような過酸化物混合物を含む架橋性組成物に関する。本発明はまた、エチレン−酢酸ビニル(EVA)コポリマーを架橋する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン−酢酸ビニル(EVA)コポリマーを、フリーラジカル開始過酸化物、例えばO,O−tert−ブチル−O−(2−エチルヘキシル)モノペルオキシカルボナートの存在下にこのコポリマーを置くことにより架橋することは、実務上公知である。
【0003】
しかしながら、このような方法を介して得られる架橋時間は、長時間である。このことは、このエラストマーを完成品に変える工業についての生産性の損失をもたらす。
【0004】
さらに、エチレン−酢酸ビニル(EVA)コポリマーの架橋プロセスの間、良好な架橋密度を維持することが重要である。特に、架橋密度は、完成品の機械的特性の指標である。従って、架橋密度が低すぎる場合、完成品は、低すぎる破壊強さおよび引裂強さを特徴とし得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、特にエチレン−酢酸ビニル(EVA)コポリマーエラストマーをベースとする完成品を迅速に製造する目的のための、エラストマーポリマー、例えばエチレン−酢酸ビニル(EVA)コポリマーの架橋性組成物についての架橋を容易にする一方、同時に良好な架橋密度を維持する混合物が依然として要求されている。改善された反応速度を有する一方、同時に良好な架橋密度を維持する、このような架橋性組成物を架橋する方法も依然として要求されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
驚くべきことに、本出願人は、特定の過酸化物の混合物を、これらの過酸化物の少なくとも1種について特定の含有率で使用することにより、エチレン−酢酸ビニル(EVA)コポリマーを迅速に架橋する一方、同時に良好な架橋密度を維持することが可能であることを目下発見した。
【0007】
本発明は、特定の過酸化物混合物を含み、これらの過酸化物の一方が他方の過酸化物に対して小さい比率である、特にエチレン−酢酸ビニル(EVA)コポリマーの架橋を容易にする混合物に関する。従って、本発明の第1の態様は、少なくともO,O−tert−ブチル−O−(2−エチルヘキシル)モノペルオキシカルボナートおよび少なくともO,O−tert−アミル−O−2−エチルヘキシルモノペルオキシカルボナートを含む混合物であって、前記O,O−tert−アミル−O−2−エチルヘキシルモノペルオキシカルボナートが、混合物の総重量に対して0.001重量%から45重量%の範囲の含有率で混合物中に存在することを特徴とする混合物に関する。
【0008】
本発明の混合物中の2種の過酸化物O,O−tert−ブチル−O−(2−エチルヘキシル)モノペルオキシカルボナートおよびO,O−tert−アミル−O−2−エチルヘキシルモノペルオキシカルボナートの組合せ(O,O−tert−アミル−O−2−エチルヘキシルモノペルオキシカルボナートについて、混合物の総重量に対して0.001重量%から45重量%の範囲の特定の含有率である。)により、特にO,O−tert−ブチル−O−(2−エチルヘキシル)モノペルオキシカルボナートのみを使用する架橋方法と比べて、エチレン−酢酸ビニル(EVA)コポリマーの架橋を本発明による混合物の存在下で実施する際の反応速度を増加させることが可能になる。
【0009】
本発明の別の態様は、少なくとも1種のエチレン−酢酸ビニル(EVA)コポリマーおよび上記定義の混合物を含む架橋性組成物に関する。
【0010】
本発明はまた、少なくとも1種のエチレン−酢酸ビニルコポリマーを含む組成物を架橋する方法であって、前記エチレン−酢酸ビニルコポリマーを上記定義の混合物と反応させる段階を少なくとも含む方法に関する。
【0011】
本発明による方法により、反応速度をより高くし、ひいてはエチレン−酢酸ビニルコポリマーの架橋をより早める一方、同時に良好な架橋密度を維持することが可能になる。従って、本発明による方法により架橋されたエチレン−酢酸ビニルコポリマーをベースとする完成品は、高い破壊応力および高いモジュラスを有する。
【0012】
従って、本発明の別の態様は、エチレン−酢酸ビニルコポリマーを架橋する方法において架橋速度を増加させるための、上記定義の混合物の使用に関する。
【0013】
本発明の別の態様は、フィルムを製造する方法であって、少なくとも以下の段階:
a)上記定義の架橋性組成物をフィルムの形態で押出する段階、
b)前記押出段階a)の間または後に前記架橋性組成物を架橋する段階
を含むことを特徴とする方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明による混合物は、少なくともO,O−tert−ブチル−O−(2−エチルヘキシル)モノペルオキシカルボナート(TBEC)を含む。この化合物は、Arkema社から商標名Luperox(登録商標)TBECで市販されている。
【0015】
本発明による混合物はまた、O,O−tert−アミル−O−2−エチルヘキシルモノペルオキシカルボナート(TAEC)を含む。この化合物は、Arkema社から商標名Luperox(登録商標)TAECで市販されている。
【0016】
O,O−tert−アミル−O−(2−エチルヘキシル)モノペルオキシカルボナート(TAEC)は、混合物の重量に対して0.001重量%から45重量%の範囲の含有率で、本発明による混合物中に存在する。このような含有率により、O,O−tert−ブチル−O−(2−エチルヘキシル)モノペルオキシカルボナート(TBEC)単独の使用と比べて、エチレン−酢酸ビニル(EVA)コポリマーの架橋反応速度を顕著に増加させる一方、同時に良好な架橋密度を保持することが可能になる。
【0017】
好ましくは、本発明による混合物中のO,O−tert−アミル−O−2−エチルヘキシルモノペルオキシカルボナート(TAEC)の含有率は、混合物の総重量に対して10重量%から35重量%、より好ましくは15重量%から30重量%の範囲である。
【0018】
本発明の一実施形態において、前記混合物は、前記O,O−tert−ブチル−O−(2−エチルヘキシル)モノペルオキシカルボナートおよび前記O,O−tert−アミル−O−2−エチルヘキシルモノペルオキシカルボナートからなる。
【0019】
本発明はまた、少なくとも1種のエチレン−酢酸ビニル(EVA)コポリマーおよび上記定義の混合物を含む架橋性組成物に関する。
【0020】
本発明の一実施形態において、前記エチレン−酢酸ビニル(EVA)コポリマーは、組成物の重量に対して85重量%から99.5重量%、好ましくは97重量%から99重量%の範囲の含有率で前記組成物中に存在する。
【0021】
本発明の一実施形態において、前記混合物は、組成物の重量に対して0.5重量%から5重量%、好ましくは1重量%から3重量%の範囲の含有率で前記組成物中に存在する。
【0022】
本発明における使用に好適なエチレン−酢酸ビニル(EVA)コポリマーは、例えば、Arkema社により商品名Evatane(登録商標)18−150およびEvatane(登録商標)40−55でそれぞれ販売されているエチレン−酢酸ビニルコポリマーである。本発明における使用に好適なエチレン−酢酸ビニルコポリマーの酢酸ビニル含有率は、変動してもよく:例えば、これらのポリマーは、低含有率の酢酸ビニルまたは高含有率の酢酸ビニルを有してもよい。
【0023】
本発明の一実施形態において、前記架橋性組成物はまた、少なくとも1種の酸化防止剤を含む。例えば、酸化防止剤は、組成物の重量に対して0.1重量%から3重量%の範囲の含有率で前記組成物中に存在する。
【0024】
酸化防止剤は、例えば、(1,2−ジヒドロ−2,2,4−トリメチルキノリン)(TMQ)であってもよい。
【0025】
本発明による方法によれば、少なくとも1種のエチレン−酢酸ビニル(EVA)コポリマーを上記定義の混合物と、例えば上記定義の架橋性組成物中で反応させる。
【0026】
本発明による方法により、架橋速度を増加させて完成品を製造することが可能になる。従って、本発明による方法により、完成品製造業者についての生産性が向上する。本発明による方法により、エチレン−酢酸ビニルコポリマーをベースとするフィルムを、生産性を増加させて架橋する一方、良好な架橋密度に起因してこれらのフィルムについて良好な機械的特性を維持することが可能である。
【0027】
以下の実施例は本発明を説明する。
【0028】
(実施例)
以下の実施例において:
Luperox(登録商標)TBECは:O,O−tert−ブチル−O−(2−エチルヘキシル)モノペルオキシカルボナートを意味し、
Luperox(登録商標)TAECは:O,O−tert−アミル−O−2−エチルヘキシルモノペルオキシカルボナートを意味し、
Evatane(登録商標)18−150:18%の酢酸ビニルおよびメルトフローインデックス(MFI)値150(規格ASTM1238により測定)を有するEVA、
Evatane(登録商標)40−55:40%の酢酸ビニルおよびメルトフローインデックス(MFI)値55(規格ASTM1238により測定)を有するEVA、
TMQ:酸化防止剤(1,2−ジヒドロ−2,2,4−トリメチルキノリン)。
【実施例1】
【0029】
低含有率の酢酸ビニルを有するEVA化合物の調製:
以下の表Iに示す生成物の量を秤取する:
【0030】
【表1】

【0031】
Brabender350S混合機(EUVR184)を以下のパラメーターにより使用する:
公称浴温度=70℃、
公称ローター回転速度=50rpm、
Evatane(登録商標)18−150(80℃において1時間予熱)を添加し、
1分間混合した後、TMQを添加し、
圧延前の混合物の容器中への物理的滴下を300から360秒の間で行い、最終温度は90℃を超過しないようにしてポリマーの過剰な分解を避ける。
【0032】
混合後:薄厚(0.5から1mmの間)において4回圧延し、次いで2mmの厚みにおいて5回圧延し、高温におけるプレス中での架橋準備済の薄型フィルムを得る。
【0033】
低含有率の酢酸ビニルを有するEVA化合物を得る。
【0034】
次いで、以下の混合物を調製した(各混合物における比率を混合物の重量に対する重量パーセントとして挙げる。):
混合物A(比較例):100%のLuperox(登録商標)TBEC、
混合物B(本発明):85%のLuperox(登録商標)TBEC+15%のLuperox(登録商標)TAEC、
混合物C(比較例):50%のLuperox(登録商標)TBEC+15%のLuperox(登録商標)TAEC、
混合物D(比較例):15%のLuperox(登録商標)TBEC+85%のLuperox(登録商標)TAEC。
【0035】
使用される混合物に応じたエラストマー組成物の流動度測定による特性の比較:
実施例1において得られた低含有率EVA化合物248gを秤取する。
【0036】
Brabender350S混合機(EUVR184)を以下のパラメーターにより使用する:
公称浴温度=70℃、
公称ローター回転速度=50rpm、
圧力=6bar、
約65℃の混和温度のために60秒間混合した後に生成物を添加し、
70℃の最終温度における化合物の物理的滴下を、約150秒において行う。
【0037】
混合後:薄厚(0.5から1mmの間)において4回圧延し、次いで2mmの厚みにおいて5回圧延する。
【0038】
140℃におけるRPA流動計についての比較測定を、混合直後に行った。これらの測定は、規格ASTM D5289Aにより行った。
【0039】
−M(以下の定義を参照のこと)を、以下の4種のエラストマー組成物について測定した(各組成物における比率を組成物の重量に対する重量パーセントとして挙げる。):
組成物A(比較例):1.5%の混合物A+98.5%の実施例1の低含有率EVA化合物、
組成物B(本発明):1.5%の混合物B+98.5%の実施例1の低含有率EVA化合物、
組成物C(比較例):1.5%の混合物C+98.5%の実施例1の低含有率EVA化合物、
組成物D(比較例):1.5%の混合物D+98.5%の実施例1の低含有率EVA化合物。
【0040】
結果を以下の表IIにまとめる:
【0041】
【表2】

RPA:Alpha Technologies社からの流動計
−M:最大トルク−最小トルク(dN.m)
【0042】
15未満のM−Mでは、完成品にとって良好な架橋密度を得ることができず:この過剰に低い密度は、架橋物品の過剰な変形を意味する過剰に低い破壊強さおよび過剰に高い伸びを生じさせる。
【0043】
従って、使用される過酸化物混合物が、例えば50%、またはさらには85%のLuperox(登録商標)TAECを含む場合、完成品は以下の欠点:過剰に低い破壊強さおよび引裂強さを有する。
【0044】
次いで、以下の定義によるt90、tおよび最大速度S’を、組成物AおよびBについて測定した:
90:架橋時間または値M−Mの90%に達するのに必要とされる時間(分)、
s2:スコーチ時間または値M+2(最小トルク+2)に達する時間(分)、
最大速度S’:(架橋速度(dN.m/分)。
【0045】
90および最大速度S’は、生産性に直接結びつく。それというのも、高い最大速度S’値が迅速な架橋を示す通り、低いt90値は架橋が迅速であることを意味するからである。結果を以下の表IIIにまとめる:
【0046】
【表3】

【0047】
従って、本発明による過酸化物混合物を含む本発明による組成物Bを用いると、t90が約6%向上する。ts2も5秒だけ減り、このことは、フィルムの押出を加速すれば押出機中でのスコーチの危険があることを意味する。最大速度S’値は増加し、この結果、プレス中での架橋速度が増加し、ひいては生産性が良好になる。
【0048】
従って、本発明による組成物により、従来技術の組成物と比較して生産性が向上する。
【0049】
次いで、比較組成物Aおよび本発明による組成物Bを用いて得られた完成品、例えばプラック(プラックA(比較例)およびプラックB(本発明))の機械的特性を比較した。
【0050】
各プラックを140℃において30分間硬化させた。
【0051】
測定は、架橋プラックについて、Instron引張試験装置(速度500mm/分/試験片H2)を使用して行う。
【0052】
これらの測定は、規格ASTM D412により行う。
【0053】
プラックAおよびBについて、50%、100%、200%および300%モジュラスをそれぞれ測定した。結果を以下の表IVにまとめる(標準偏差を丸括弧中に挙げる。)。
【0054】
【表4】

【0055】
本発明による組成物を用いて調製したプラック(プラックB)を用いて得られたモジュラスは、従来技術による組成物を用いて調製したプラック(プラックA)を用いて得られたモジュラスより良好である。より大きいモジュラスは、これらの架橋プラックを変形させることがより困難であること、および従って架橋プラックはより大きい寸法安定性を特徴とすることを意味する。
【実施例2】
【0056】
高含有率の酢酸ビニルを有するEVA化合物の調製:
以下の表Vに示す生成物の量を秤取する:
【0057】
【表5】

【0058】
Brabender350S混合機(EUVR184)を以下のパラメーターにより使用する:
公称浴温度=50℃、
公称ローター回転速度=50rpm、
Evatan(登録商標)40−55(80℃において1時間予熱)を添加し、
1分間混合した後、TMQを添加し、
混合物の物理的滴下を、300から360秒の間で行い、最終温度は90℃を超過しないようにしてポリマーの過剰な分解を避ける。
【0059】
混合後:薄厚(0.5から1mmの間)において4回圧延し、次いで2mmの厚みにおいて5回圧延し、高温におけるプレス中での架橋準備済の薄型フィルムを得る。
【0060】
高含有率の酢酸ビニルを有するEVA化合物を得る。
【0061】
次いで、実施例1のものと同一である以下の混合物を調製した(各混合物における比率を混合物の重量に対する重量パーセントとして挙げる。):
混合物A(比較例):100%のLuperox(登録商標)TBEC、
混合物B(本発明):85%のLuperox(登録商標)TBEC+15%のLuperox(登録商標)TAEC、
混合物C(比較例):50%のLuperox(登録商標)TBEC+50%のLuperox(登録商標)TAEC、
混合物D(比較例):15%のLuperox(登録商標)TBEC+85%のLuperox(登録商標)TAEC。
【0062】
使用される混合物に応じたエラストマー組成物の流動度測定による特性の比較:
実施例2において得られた高含有率EVA化合物248gを秤取する。
【0063】
Brabender350S混合機(EUVR184)を以下のパラメーターにより使用する:
公称浴温度=50℃、
公称ローター回転速度=50rpm、
圧力=6bar、
約65℃の混和温度のために60秒間混合した後に生成物を添加し、
70℃の最終温度における化合物の滴下を、約150秒において行う。
【0064】
混合後:薄厚(0.5から1mmの間)において4回圧延し、次いで2mmの厚みにおいて5回圧延する。
【0065】
140℃におけるRPA流動計(Alpha Technologies社からのもの)についての比較測定を、混合直後に行った。これらの測定は、規格ASTM D5289Aにより行った。
【0066】
−Mを、以下の4種のエラストマー組成物について測定した(各組成物における比率を組成物の重量に対する重量パーセントとして挙げる。):
組成物A1(比較例):1.5%の混合物A+98.5%の実施例1の高含有率EVA化合物、
組成物B1(本発明):1.5%の混合物B+98.5%の実施例1の高含有率EVA化合物、
組成物C1(比較例):1.5%の混合物C+98.5%の実施例1の高含有率EVA化合物、
組成物D1(比較例):1.5%の混合物D+98.5%の実施例1の高含有率EVA化合物。
【0067】
結果を以下の表VIにまとめる:
【0068】
【表6】

【0069】
25未満のM−Mでは、完成品にとって良好な架橋密度を得ることができず:この過剰に低い密度は、架橋物品の過剰な変形を意味する過剰に低い破壊強さおよび過剰に高い伸びを生じさせる。
【0070】
従って、使用される過酸化物混合物が、例えば50%、またはさらには85%のLuperox(登録商標)TAECを含む場合、完成品は以下の欠点:過剰に低い破壊強さおよび引裂強さを有する。
【0071】
次いで、t90、tおよび最大速度S’を、組成物A1およびB1について測定した。t90および最大速度S’は、生産性に直接結びつく。それというのも、高い最大速度S’値が迅速な架橋を示す通り、低いt90値は架橋が迅速であることを意味するからである。結果を以下の表VIIにまとめる:
【0072】
【表7】

【0073】
従って、本発明による過酸化物混合物を含む本発明による組成物B1を用いると、t90が約7%向上する。ts2も3秒だけ減り、このことは、フィルムの押出を加速すれば押出機中でのスコーチの危険があることを意味する。最大速度S’値は増加し、この結果、プレス下での架橋速度が増加し、ひいては生産性が良好になる。
【0074】
従って、本発明による組成物により、従来技術の組成物と比較して生産性が向上する。
【0075】
次いで、比較組成物A1および本発明による組成物B1を用いて得られた完成品、例えばプラック(プラックA1(比較例)およびプラックB1(本発明))の機械的特性を比較した。
【0076】
各プラックを140℃において30分間硬化させた。
【0077】
測定は、架橋プラックについて、Instron引張試験装置(速度500mm/分/試験片H2)を使用して行う。
【0078】
これらの測定は、規格ASTM D412により行う。
【0079】
プラックA1およびB1について、50%、100%、200%および300%モジュラスをそれぞれ測定した。結果を以下の表VIIIにまとめる(標準偏差を丸括弧中に挙げる。)。
【0080】
【表8】

【0081】
本発明による組成物を用いて調製したプラック(プラックB1)を用いて得られたモジュラスは、従来技術による組成物を用いて調製したプラック(プラックA1)を用いて得られたモジュラスより良好である。より大きいモジュラスは、これらの架橋プラックを変形させることがより困難であること、および従って架橋プラックはより大きい寸法安定性を特徴とすることを意味する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともO,O−tert−ブチル−O−(2−エチルヘキシル)モノペルオキシカルボナートおよび少なくともO,O−tert−アミル−O−2−エチルヘキシルモノペルオキシカルボナートを含む混合物であって、前記O,O−tert−アミル−O−2−エチルヘキシルモノペルオキシカルボナートが、混合物の総重量に対して0.001重量%から45重量%の範囲の含有率で混合物中に存在することを特徴とする混合物。
【請求項2】
前記含有率が、混合物の総重量に対して10重量%から35重量%、好ましくは15重量%から30重量%の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の混合物。
【請求項3】
前記O,O−tert−ブチル−O−(2−エチルヘキシル)モノペルオキシカルボナートおよび前記O,O−tert−アミル−O−2−エチルヘキシルモノペルオキシカルボナートからなることを特徴とする、請求項1または2に記載の混合物。
【請求項4】
少なくとも1種のエチレン−酢酸ビニル(EVA)コポリマーを含む架橋性組成物であって、請求項1または2に記載の混合物をさらに含むことを特徴とする架橋性組成物。
【請求項5】
前記エチレン−酢酸ビニル(EVA)コポリマーが、組成物の重量に対して85重量%から99.5重量%、好ましくは97重量%から99重量%の範囲の含有率で前記組成物中に存在することを特徴とする、請求項4に記載の架橋性組成物。
【請求項6】
前記混合物が、組成物の重量に対して0.5重量%から5重量%、好ましくは1重量%から3重量%の範囲の含有率で前記組成物中に存在することを特徴とする、請求項4または5に記載の架橋性組成物。
【請求項7】
少なくとも1種の酸化防止剤をさらに含むことを特徴とする、請求項4から6の一項に記載の架橋性組成物。
【請求項8】
前記酸化防止剤が、組成物の重量に対して0.1重量%から3重量%の範囲の含有率で前記組成物中に存在することを特徴とする、請求項7に記載の架橋性組成物。
【請求項9】
少なくとも1種のエチレン−酢酸ビニルEVAコポリマーを含む組成物を架橋する方法であって、前記エチレン−酢酸ビニルEVAコポリマーを請求項1から3の一項に記載の混合物と反応させる段階を少なくとも含む方法。
【請求項10】
エチレン−酢酸ビニル(EVA)コポリマーを架橋する方法において架橋速度を増加させるための、請求項1から3の一項に記載の混合物の使用。
【請求項11】
フィルムを製造する方法であって、少なくとも以下の段階:
a)請求項4から8のいずれか一項に記載の架橋性組成物をフィルムの形態で押出する段階、
b)前記押出段階a)の間または後に前記架橋性組成物を架橋する段階
を含むことを特徴とする方法。

【公表番号】特表2011−528389(P2011−528389A)
【公表日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517977(P2011−517977)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際出願番号】PCT/FR2009/051405
【国際公開番号】WO2010/007315
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(505005522)アルケマ フランス (335)
【Fターム(参考)】