説明

エラストマー系芯鞘コンジュゲート繊維

【課題】生地の強度が大きく、生地破損が生じ難いにもかかわらず、着衣のし易いストレッチ衣料を製造することのできる芯鞘コンジュゲート繊維を提供する。
【解決手段】芯部分に熱可塑性ポリウレタン系エラストマー樹脂(A)を含有し、鞘部分に熱可塑性ポリエステル系エラストマー樹脂又はポリアミド系エラストマー(B)を含有する芯鞘コンジュゲート繊維であって、芯鞘コンジュゲート繊維によって編成された生地を解糸した糸の引張試験により得られた強伸度曲線において、荷重1.2cN時の伸度が12%以上、かつ荷重8.0cN時の伸度が120%以下であることを特徴とする芯鞘コンジュゲート繊維である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストッキング、特にパンティストッキング(PS)等のストレッチ衣料に用いられる芯鞘コンジュゲート繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のストッキング、パンティストッキング等のストレッチ衣料に用いられる繊維として、ポリウレタンエラストマーを芯部分に、ポリエステル系エラストマー又はポリアミド系エラストマーを鞘部分に有する芯鞘コンジュゲート繊維が報告されている。特許文献1及び2の芯鞘コンジュゲート繊維では、サポート性を向上させるために、繊維の伸縮弾性力の向上の観点から、鞘部分においても、伸縮弾性力の高いエラストマー樹脂を用いることが記載されている。また、特許文献3においては、捲縮性及び伸縮性に優れたコンジュゲート繊維として、鞘部分にポリトリメチレンテレフタレートを用い、特定の芯鞘比率を有する繊維について記載されている。さらに、特許文献4では、強度及び伸縮弾性力に優れ、かつ、透明性に優れたコンジュゲート繊維として、鞘部分の表面粗さを制御した繊維が記載されている。
【0003】
これらの特許文献1〜4に記載されるコンジュゲート繊維は、伸縮弾性力や強度において優れるものの、ストレッチ衣料の原料として用いた場合において、生地の破損の抑制や、ストレッチ衣料の着衣のし易さの観点からは、未だ改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−77556号公報
【特許文献2】国際公開公報第2007/123214号パンフレット
【特許文献3】特開2008−231606号公報
【特許文献4】特開2008−231614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、生地の強度が大きく、生地破損が生じ難いにもかかわらず、着衣のし易いストレッチ衣料を製造することのできる芯鞘コンジュゲート繊維を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、芯鞘コンジュゲート繊維の引張試験により得られた強伸度曲線において、糸の構成、延伸条件等を選択することによって、芯鞘コンジュゲート繊維の荷重時の伸度を制御することができ、そのような荷重時の伸度の制御によって、生地破損がほとんど生じないほどの強度を保ちつつ、着衣のし易い伸縮性を有する生地やストレッチ衣料を得ることのできる芯鞘コンジュゲート繊維を見出した。
【0007】
本発明は、斯かる知見に基づき完成されたものである。
【0008】
項1.芯部分に熱可塑性ポリウレタン系エラストマー樹脂(A)を含有し、
鞘部分に熱可塑性ポリエステル系エラストマー樹脂又はポリアミド系エラストマー(B)を含有する芯鞘コンジュゲート繊維であって、
芯鞘コンジュゲート繊維によって編成された生地を解糸した糸の引張試験により得られた強伸度曲線において、
荷重1.2cN時の伸度が12%以上、かつ荷重8.0cN時の伸度が120%以下であることを特徴とする芯鞘コンジュゲート繊維。
【0009】
項2.該芯鞘コンジュゲート繊維によって編成された生地を解糸した糸の繊度が15〜52dtexであることを特徴とする項1に記載の芯鞘コンジュゲート繊維。
【0010】
項3.該芯鞘コンジュゲート繊維によって編成された生地を解糸した糸の熱水収縮率が20〜62%であることを特徴とする項1又は2に記載の芯鞘コンジュゲート繊維。
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
I.芯鞘コンジュゲート繊維
本発明の芯鞘コンジュゲート繊維は、芯部分に熱可塑性ポリウレタン系エラストマー樹脂(A)を含有し、鞘部分に熱可塑性ポリエステル系エラストマー樹脂又はポリアミド系エラストマー(B)を含有する芯鞘コンジュゲート繊維であって、芯鞘コンジュゲート繊維によって編成された生地を解糸した糸の引張試験により得られた強伸度曲線において、荷重1.2cN時の伸度が12%以上、かつ荷重8.0cN時の伸度が120%以下であることを特徴とする。ここで、「解糸」とは、生地から糸をほどく行為のことをいう。
【0013】
荷重1.2cN時及び荷重8.0cN時のそれぞれの伸度については、例えば図5に示されるように、解糸した糸の引張試験により得られる強伸度曲線により求めることができる。
【0014】
本発明の芯鞘コンジュゲート繊維は、芯鞘コンジュゲート繊維によって編成された生地を解糸した糸の引張試験により得られた強伸度曲線において、荷重1.2cN時の伸度は12%以上であり、好ましくは15%以上である。荷重1.2cN時の伸度が12%未満であると、前記芯鞘コンジュゲート繊維から得られる生地の破損は小さいが、生地の伸びが小さくなるため、前記芯鞘コンジュゲート繊維を用いて得られるストレッチ衣料については、着衣し難いものとなる傾向がある。なお、荷重1.2cN時の伸度の上限については、特に限定されるものではないが、生地の強度を向上させ、生地が破損し難くなるという観点から、120%以下が好ましい。
【0015】
前記芯鞘コンジュゲート繊維によって編成された生地を解糸した糸の引張試験により得られた強伸度曲線において、荷重8.0cN時の伸度は120%以下であり、110%以下が好ましく、90%以下がより好ましい。荷重8.0cN時の伸度が120%を超えると、芯鞘コンジュゲート繊維によって編成された生地の伸度については十分大きいため、得られるストレッチ衣料については着衣し易くはなるが、生地の強度が低下するため、着衣時に破損し易くなる。なお、荷重8.0cN時の伸度の下限については、特に限定されるものではないが、ストレッチ衣料の履き易さを向上させることができるという観点から、12%以上が好ましい。
【0016】
前記芯鞘コンジュゲート繊維によって編成された生地を解糸した糸の繊度(以下、解糸繊度ともいう)は、生地の強度を向上させ、生地が破損し難くなるという点から、15dtex以上が好ましく、16dtex以上がより好ましく、19dtex以上がさらに好ましい。また、解糸繊度は、生地の厚みを小さくすることができ、ストレッチ衣料の履き易さを向上させることができるという点、生地の強度を向上させ、生地が破損し難くなるという観点において良好であるという点から、52dtex以下が好ましく、50dtex以下がより好ましく、47dtex以下がさらに好ましい。
【0017】
生地に編成する前(延伸後の熱固定処理後)の芯鞘コンジュゲート繊維の熱水収縮率(JIS L 1013)は、生地が破損し難くなるという観点で良好であるという点から、20%以上が好ましく、22%以上がより好ましく、30%以上がさらに好ましい。また、生地に編成する前(延伸後の熱固定処理後)の糸の熱水収縮率(JIS L 1013)は、ストレッチ衣料の履き易さを向上させることができるという点から、62%以下が好ましく、60%以下がより好ましく、55%以下がさらに好ましい。
【0018】
芯鞘コンジュゲート繊維断面形状は、同心円型であっても偏芯円型でもよい。
【0019】
本発明の芯鞘コンジュゲート繊維の芯部分を構成する熱可塑性ポリウレタン系エラストマー樹脂(A)は、ウレタン構造のハードセグメントとポリエステル又はポリエーテルのソフトセグメントで構成される。このような熱可塑性ポリウレタン系エラストマー樹脂(A)としては、ディーアイシーバイエルポリマー社製のパンデックスT−1185N、T−1190N、日本ミラクトラン社製のミラクトラン、大日本インキ化学工業社製のパンデックス、ダウケミカルジャパン社製のペレセン、BASFポリウレタンエラストマーズ社製のエラストラン、協和発酵工業社製のエステン、大日精化工業社製のレザミンP、三井化学ポリウレタン社製のハイプレン、日清紡績社製のモビロン、クラレ社製のクラミロンU、旭硝子社製のユーファイン、アプコ社製のスミフレックス、東洋紡績社製の東洋紡ウレタン等のような市販の熱可塑性ポリウレタン系エラストマー樹脂を用いてもよい。
【0020】
エラストマー樹脂(A)の引張強度(JIS K7311)は、30〜60MPa程度が好ましく、45〜60MPa程度の高強度のものがより好ましい。また、引張伸度(JIS K7311)は400〜900%程度が好ましく、400〜600%がより好ましい。また、表面硬度A(JIS K 7311)は、A70〜98程度、さらにA80〜90が好ましい。表面硬度Aが、A70未満であると強度の確保が難しくなり、A98を越えると伸度及び伸縮性が極端に悪くなる傾向にある。
【0021】
熱可塑性ポリウレタン系エラストマー樹脂(A)の製法を以下に示す。ポリウレタン系エラストマー樹脂は、例えば、芳香族ポリイソシアネートとポリオールから、ワンショット法、プレポリマー経由法等の公知の方法を用いて製造できる。
【0022】
原料である芳香族ポリイソシアネートとしては、炭素数(NCO基中の炭素を除く、以下同様)6〜20の芳香族ジイソシアネート、これらの芳香族ジイソシアネートの変性物(カーボジイミド基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、ウレア基等を有するジイソシアネート変性物);及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0023】
芳香族ポリイソシアネートの具体例としては、1,3−及び/又は1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−及び/又は2,6−トリレンジイソシアネート、2,4’−及び/又は4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと略記)、4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5−ナフチレンジイソシアネートなどが挙げられる。このうちで、特に好ましいものはMDIである。
【0024】
原料であるポリオールとしては、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、脂肪族系ポリオール等が挙げられ、特にポリエーテル系又はポリエステル系ポリオールが好適である。
【0025】
ポリオールの数平均分子量は、本材料から製造される繊維のソフト感の観点から好ましくは300以上、好ましくは1000以上、さらに好ましくは2000以上であり、該繊維の弾性の観点から好ましくは4000以下、好ましくは3500以下、さらに好ましくは3000以下である。
【0026】
本発明の芯鞘コンジュゲート繊維の鞘部分を構成する熱可塑性ポリエステル系エラストマー樹脂又はポリアミド系エラストマー(B)における熱可塑性ポリエステル系エラストマー樹脂は、ポリエステル構造のハードセグメントとポリエーテル又はポリエステルのソフトセグメントで構成される。
【0027】
これは、エラストマー樹脂(B)の原形では、エラストマー樹脂(B)を構成するハードセグメントとソフトセグメントがランダム状態にあるが、これを100%以上延伸するとハードセグメントが配向したまま復元されず、ソフトセグメントのみが伸縮弾性を有することになるためと考えられる。本発明の芯鞘コンジュゲート繊維は、エラストマー樹脂(B)のこの特性を巧みに利用し、高いサポート性を発揮する。
【0028】
エラストマー樹脂(B)として用いられるポリエステル系エラストマーとしては、例えば、芳香族ポリエステル成分からなるハードセグメントと、ポリエーテル成分又はポリエステル成分からなるソフトセグメントとから構成されるポリエーテル(又はポリエステル)エステルブロック共重合体が挙げられる。ハードセグメントである芳香族ポリエステル成分としては、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等が挙げられ、ソフトセグメントであるポリエーテル成分又はポリエステル成分としては、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)、ポリカプロラクトン(PCL)等が挙げられる。本発明ではこれらのいずれをも用いることができるが、ポリエーテルエステルブロック共重合体を用いるのが好ましい。
【0029】
具体的には、例えば、東レ・デュポン社製のハイトレル、東洋紡績社製のペルプレン(Pタイプ、Sタイプ等)、大日本インキ化学工業社製のグリラックスE、日本イージープラスチックス社製のローモッド、帝人社製のヌーベラン、三菱化学社製のプリマロイ等が例示される。また、例えば、特開平11-302519号公報、特開2000-143954号公報等に記載のポリエステル系エラストマーも用いることができる。
【0030】
エラストマー樹脂(B)として用いられるポリアミド系エラストマーとしては、例えば、ポリアミド成分からなるハードセグメントと、ポリエーテル成分又はポリエステル成分あるいは両成分からなるソフトセグメントから構成されるブロック共重合体が挙げられる。例えば、アルケマ(株)製のペバックス、宇部興産社製のPAEシリーズ等が例示される。
【0031】
該エラストマー樹脂(B)の永久伸び(JIS K 6301)は100%伸長時25〜70%程度が好ましく、30〜70%程度がより好ましく、40〜60%程度がさらに好ましい。エラストマー樹脂(B)の100%伸長時の永久伸びが25%未満であると芯鞘コンジュゲート繊維として高いサポート性が得られない。また、70%を越えると塑性変形が主となり、弾性体の性質すなわち伸縮性が低下する。
【0032】
エラストマー樹脂(B)の引張強度(ASTM D638)は、10〜40MPa程度が好ましく、25〜40MPa程度の高強度のものがより好ましい。また、引張伸度(ASTM D638)は100〜800%程度が好ましく、400〜600%程度がより好ましい。引張伸度の値が、100%未満であると伸度不足でストレッチ衣料の用途として使用不可能であり、800%を越えると一般に強度が低く、高いサポート性が得られない。また、エラストマー樹脂(B)の表面硬度D(ASTM D2240)は、D30〜70程度が好ましく、さらにD35〜60がより好ましい。表面硬度DをD30以上とすることにより、表面硬度が柔らかくならず、延伸後の形状保持を得ることが可能になると同時に肌触りも良好にすることができる。また、D70以下とすることによって、延伸後の形状保持(セット性)を高く保持することができ、伸縮弾性も十分に保つことができる。
【0033】
さらに、繊維に染色性を付与するために、鞘部分のエラストマー樹脂(B)に染色可能な樹脂(例えば、ナイロン、ポリエステル等)をアロイ化したりして改質することも可能である。染色可能な樹脂としては例としてポリアミド系、ポリエステル系、アクリル系、ビニロン系など選択できるが、好ましくはポリアミド系、ポリエステル系が例示できる。これらの配合量はエラストマー(B)の染色性に応じて決定されるが、上記樹脂の含有量の好ましい下限は1重量%、好ましい上限は30重量%である。更に好ましい上限は10重量%である。1重量%未満であると、染色による発色性が低く、30重量%を超えると、繊維の強伸度が低下することがある。また紡糸性が悪くなる。
【0034】
また、肌触りを改良するために、鞘部分のエラストマー樹脂(B)の表面に無機微粒子等を分散したりして改質することも可能である。
【0035】
無機微粒子としては特に限定されず、例として軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム等の炭酸カルシウム;炭酸バリウム、塩基性炭酸マグネシウム等の炭酸マグネシウム;カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、フェライト粉末、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、焼成ケイソウ土等のケイソウ土;珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、無定形シリカ、非晶質合成シリカ、コロイダルシリカ等のシリカ;コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、アルミノ珪酸塩、活性白土、ベントナイト、セリサイト等の鉱物質顔料等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。これらのなかでは、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、シリカが好ましい。
【0036】
また、上記無機微粒子の形状としては特に限定されず、球状、針状、板状等の定型物又は非定型物が挙げられる。
【0037】
上記無機微粒子の平均粒子径の好ましい下限は0.20μm、好ましい上限は3.00μmである。0.20μm未満であると、湿潤時のベトツキ等の不快感を改善する効果が不充分となることがあり、3.00μmを超えると衣料にした場合、風合いや肌触りが損なわれたり、繊維の強度が低下したりすることがある。
【0038】
上記無機微粒子の含有量の好ましい下限は2重量%、好ましい上限は30重量%である。更に好ましい上限は7重量%である。2重量%未満であると、湿潤時のベトツキ等の不快感を改善する効果が不充分となることがあり、30重量%を超えると、繊維の強伸度が低下することがある。また紡糸性が悪くなる。
【0039】
繊維断面積に対するエラストマー樹脂(A)からなる芯部分の占有率は、40〜95%程度、好ましくは50〜90%程度、より好ましくは70〜90%程度であればよい。換言すれば、エラストマー樹脂(A)からなる芯部分とエラストマー樹脂(B)からなる鞘部分との面積比が95:5〜40:60程度、好ましくは90:10〜50:50程度、より好ましくは90:10〜70:30程度である。この範囲であれば、サポート性の高い芯鞘コンジュゲート繊維にすることができる。芯部分の占有率が、40%未満だとエラストマー(B)の占有率が高くなるので、高いサポート性が得られず、また、95%を越えると延伸した後、安定した形状、長さに復し難い。
【0040】
本発明の芯鞘コンジュゲート繊維の直径は、特に限定はないが、通常、20〜100μm程度、好ましくは30〜80μm程度である。特に、パンティストッキング(PS)用の素材に用いる場合は、40〜70μm程度にするのが好適である。
【0041】
本発明の芯鞘コンジュゲート繊維によって編成された生地を解糸した糸について、前記の引張試験において、荷重1.2cNという小さい荷重時においても伸度を十分に有し、かつ荷重8.0cNという高荷重時においてもあまり伸度が向上しないため、得られる生地の強度が強く破損し難くなり、かつ前記芯鞘コンジュゲート繊維によって得られるストレッチ衣料は、十分な伸縮性を有するものであるため、履き易くなるという特徴を有している。
【0042】
従って、当該機能が特に求められるストッキング、パンティストッキング等の用途に好適に用いることができるが、当然これらの用途に限定されるものでなく、他の衣料用途にも用いることができる。
【0043】
II.芯鞘コンジュゲート繊維の製法
本発明の芯鞘コンジュゲート繊維は、(1)熱可塑性ポリウレタン系エラストマー樹脂(A)及び熱可塑性ポリエステル系エラストマー樹脂又はポリアミド系エラストマー(B)を複合紡糸させ、芯部分に熱可塑性ポリウレタン系エラストマー樹脂(A)を含有し、鞘部分に熱可塑性ポリエステル系エラストマー樹脂又はポリアミド系エラストマー(B)を含有する芯鞘コンジュゲート繊維を得る工程、(2)工程(1)により得られた芯鞘コンジュゲート繊維を延伸後の熱固定処理する工程によって製造される。
【0044】
工程(1)では、上記所定のエラストマー樹脂(A)及びエラストマー樹脂(B)とをそれぞれ紡糸に適した温度で溶融し、エラストマー樹脂(A)が芯部分にエラストマー樹脂(B)が鞘部分となるように複合紡糸する。このような複合紡糸が可能であれば、公知の紡糸方法、紡糸装置等を採用することができる。繊維断面における芯部分と鞘部分との面積比は、各樹脂の吐出量を変化させて適宜調整することができる。
【0045】
またこれらの作製方法としてはエラストマー樹脂(B)に繊維に染色性を付与するために、鞘部分のエラストマー樹脂(B)に前記の染色可能な樹脂をアロイ化したりして改質する場合、上記樹脂を混合して押出機に投入することで出来るが、安定した物性を得るには均一分散をさせることが望ましい。このため、2軸混練機でコンパウンド原料を作製し押出機に投入することがより望ましい。
【0046】
これにより、肌触りが良好でしかも種々の染色が可能なファッション性に優れたパンティストッキングを製造することも可能となる。
【0047】
さらに、エラストマー樹脂(B)の表面に無機微粒子等を分散したりして改質する場合、無機微粒子を混合して押出機に投入することで出来るが、安定した物性を得るには均一分散をさせることが望ましい。このため、2軸混練機でコンパウンド原料を作製し押出機に投入することがより望ましい。
【0048】
前記工程(1)によって複合紡糸された繊維は、工程(2)により、延伸後に熱固定処理される。ここで、延伸後の熱固定処理とは、延伸を行った後、熱を与えて延伸状態で固定する処理をいう。熱固定処理の方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、複合紡糸した繊維をローラーで巻き取る際に、ローラー自体の熱処理する温度まで加熱しておき、ローラーと繊維とを接触させる方法や、複合紡糸した繊維に熱風を当てることによって熱処理する方法、複合紡糸した繊維に赤外線ヒーターなどを用いて熱処理する方法等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0049】
一般的に、編成された生地のある一点に荷重が加わった場合、高荷重時に伸びすぎる糸の場合、その荷重を加えた一点にある糸だけが伸びてしまい、ループとループの結節点にまで力が伝わらない。そのため、生地全体を見ると、次々のループ結節点へと力が伝わらず、ある糸一点にだけ力がはたらき、生地全体が伸びずに、結果的に目が割れた状態になるために、生地が破損し易くなる。
【0050】
本発明の芯鞘コンジュゲート繊維では、編成された生地を解糸した糸の引張試験において、荷重1.2cNという小さい荷重時においても伸度を十分に有するため、ストレッチ衣料にしたときにおいても伸縮性に優れ、非常に着衣し易いものとなる。また、荷重8.0cNという高荷重時においてもあまり伸度が向上しないため、生地の一点に力が加わった際、生地のループ結節点へと力が伝わり、生地全体が伸び、結果的に目が割れた状態になりにくく、生地が破損し難くなる。そのため例えば、生地を爪で突き刺した場合等により生じる目割れのような生地破損を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】実施例及び比較例で製造された繊維を用いて得られたパンティストッキング編生地の突き刺し荷重を評価する測定機器の模式図である。
【図2】実施例及び比較例で製造された繊維を用いて得られたパンティストッキング編生地の突き刺し荷重を測定する際に用いた突刺し棒の模式図である。
【図3】実施例及び比較例で製造された繊維を用いて得られたパンティストッキング編生地の突き刺し荷重を測定する際に用いた刺繍枠の模式図である。
【図4】実施例及び比較例で製造された繊維を用いて得られたパンティストッキングの生地破損を評価する際の着衣方法を示す図であり、上図(A法)は、被験者の普段通りの履き方を示し、下図(B法)は、丁寧なもち方・丁寧な履き方を示す。
【図5】実施例1及び比較例2における引張試験において、伸度に対する荷重の関係をプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下に実施例及び比較例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0053】
実施例1
熱可塑性ポリウレタン(ディーアイシーバイエルポリマー(株)製のパンデックスT−1190N、表面硬度A92(JIS K7311))及びポリエステル系エラストマー(東洋紡績(株)製のペルプレンP−90B、表面硬度D52(ASTM D2240))を、それぞれ単軸押出機によりバレル温度170〜205℃、及び180〜220℃で加熱溶融し各ギアポンプで計量した後、225℃に加熱した複合口金で、熱可塑性ポリウレタンが芯部分にポリエステル系エラストマーが鞘部分になるように、同心円型に複合紡糸した。
【0054】
巻き取り速度は800m/分で、シリコン系油剤を付着させて未延伸で巻き取り、その後、別工程で12時間の熱処理(60℃、55%RHの湿熱環境下)を行った後、常温のローラーで100m/分のフィードした糸をほぼ同速(104m/分)で回転する90℃の熱ローラーで接触加熱しながら、340m/分の周速(延伸倍率3.4倍)で回転する155℃の熱ローラー(ローラー径:21cm)で延伸後に熱固定処理して繊維を得た。
【0055】
また、得られた繊維の繊維断面積に対する芯部分の占有率は90%であった。
【0056】
得られた芯鞘コンジュゲート繊維をレッグ部用の糸に用いて、釜径4インチ、針本数400本の通常のパンティストッキング用丸編機(LONATI L404RT)で天竺組織に編成しパンティストッキングの生地を得た。
【0057】
次いで、該生地を吊り下げた状態で、90℃スチーム、100℃加圧スチームで順次プレセットを行った後、股部及びトウ部を縫製した。
【0058】
繊維の油剤を充分に洗浄除去した後、95℃で40分間パンティストッキングの一般色であるベージュに染色、柔軟仕上げ剤処理し、通常の足型にかぶせて110℃、15秒でファイナルセットを行い、パンティストッキングを得た。
【0059】
実施例2
熱可塑性ポリウレタン(ディーアイシーバイエルポリマー(株)製のパンデックスT−1190N、表面硬度A92(JIS K7311))及びポリエステル系エラストマー(東洋紡績(株)製のペルプレンP−90B、表面硬度D52(ASTM D2240))を、それぞれ単軸押出機によりバレル温度170〜205℃、及び180〜220℃で加熱溶融し各ギアポンプで計量した後、225℃に加熱した複合口金で、熱可塑性ポリウレタンが芯部分にポリエステル系エラストマーが鞘部分になるように、同心円型に複合紡糸した。
【0060】
巻き取り速度は800m/分で、シリコン系油剤を付着させて未延伸で巻き取り、その後、別工程で12時間の熱処理(60℃、55%RHの湿熱環境下)を行った後、常温のローラーで100m/分のフィードした糸をほぼ同速(104m/分)で回転する90℃の熱ローラーで接触加熱しながら、340m/分の周速(延伸倍率3.4倍)で回転する165℃の熱ローラー(ローラー径:21cm)で延伸後に熱固定処理して繊維を得た。
【0061】
また、得られた繊維の繊維断面積に対する芯部分の占有率は90%であった。
【0062】
それ以外は、実施例1と同様にしてパンティストッキングを作製した。
【0063】
実施例3
熱可塑性ポリウレタン(ディーアイシーバイエルポリマー(株)製のパンデックスT−1190N、表面硬度A92(JIS K7311))及びポリエステル系エラストマー(東洋紡績(株)製のペルプレンP−90B、表面硬度D52(ASTM D2240))を、それぞれ単軸押出機によりバレル温度170〜205℃、及び180〜220℃で加熱溶融し各ギアポンプで計量した後、225℃に加熱した複合口金で、熱可塑性ポリウレタンが芯部分にポリエステル系エラストマーが鞘部分になるように、同心円型に複合紡糸した。
【0064】
巻き取り速度は800m/分で、シリコン系油剤を付着させて未延伸で巻き取り、その後、別工程で12時間の熱処理(60℃、55%RHの湿熱環境下)を行った後、常温のローラーで100m/分のフィードした糸をほぼ同速(104m/分)で回転する90℃の熱ローラーで接触加熱しながら、340m/分の周速(延伸倍率3.4倍)で回転する155℃の熱ローラー(ローラー径:21cm)で延伸後に熱固定処理して繊維を得た。
【0065】
また、得られた繊維の繊維断面積に対する芯部分の占有率は80%であった。
【0066】
それ以外は、実施例1と同様にしてパンティストッキングを作製した。
【0067】
実施例4
熱可塑性ポリウレタン(ディーアイシーバイエルポリマー(株)製のパンデックスT−1185N、表面硬度A86(JIS K7311))及びポリエステル系エラストマー(東洋紡績(株)製のペルプレンP−90B、表面硬度D52(ASTM D2240))を、それぞれ単軸押出機によりバレル温度170〜205℃、及び180〜220℃で加熱溶融し各ギアポンプで計量した後、225℃に加熱した複合口金で、熱可塑性ポリウレタンが芯部分にポリエステル系エラストマーが鞘部分になるように、同心円型に複合紡糸した。
【0068】
巻き取り速度は800m/分で、シリコン系油剤を付着させて未延伸で巻き取り、その後、別工程で12時間の熱処理(60℃、55%RHの湿熱環境下)を行った後、常温のローラーで100m/分のフィードした糸をほぼ同速(104m/分)で回転する90℃の熱ローラーで接触加熱しながら、300m/分の周速(延伸倍率3.0倍)で回転する145℃の熱ローラー(ローラー径:21cm)で延伸後に熱固定処理して繊維を得た。
【0069】
また、得られた繊維の繊維断面積に対する芯部分の占有率は90%であった。
【0070】
それ以外は、実施例1と同様にしてパンティストッキングを作製した。
【0071】
実施例5
熱可塑性ポリウレタン(ディーアイシーバイエルポリマー(株)製のパンデックスT−1185N、表面硬度A86(JIS K7311))及びポリエステル系エラストマー(東洋紡績(株)製のペルプレンP−90B、表面硬度D52(ASTM D2240))を、それぞれ単軸押出機によりバレル温度170〜205℃、及び180〜220℃で加熱溶融し各ギアポンプで計量した後、225℃に加熱した複合口金で、熱可塑性ポリウレタンが芯部分にポリエステル系エラストマーが鞘部分になるように、同心円型に複合紡糸した。
【0072】
巻き取り速度は800m/分で、シリコン系油剤を付着させて未延伸で巻き取り、その後、別工程で12時間の熱処理(60℃、55%RHの湿熱環境下)を行った後、常温のローラーで100m/分のフィードした糸をほぼ同速(104m/分)で回転する90℃の熱ローラーで接触加熱しながら、340m/分の周速(延伸倍率3.4倍)で回転する155℃の熱ローラー(ローラー径:21cm)で延伸後に熱固定処理して繊維を得た。
【0073】
また、得られた繊維の繊維断面積に対する芯部分の占有率は80%であった。
【0074】
それ以外は、実施例1と同様にしてパンティストッキングを作製した。
【0075】
実施例6
熱可塑性ポリウレタン(ディーアイシーバイエルポリマー(株)製のパンデックスT−1185N、表面硬度A86(JIS K7311))及びポリエステル系エラストマー(東洋紡績(株)製のペルプレンP−90B、表面硬度D52(ASTM D2240))を、それぞれ単軸押出機によりバレル温度170〜205℃、及び180〜220℃で加熱溶融し各ギアポンプで計量した後、225℃に加熱した複合口金で、熱可塑性ポリウレタンが芯部分にポリエステル系エラストマーが鞘部分になるように、同心円型に複合紡糸した。
【0076】
巻き取り速度は800m/分で、シリコン系油剤を付着させて未延伸で巻き取り、その後、別工程で12時間の熱処理(60℃、55%RHの湿熱環境下)を行った後、常温のローラーで100m/分のフィードした糸をほぼ同速(104m/分)で回転する90℃の熱ローラーで接触加熱しながら、340m/分の周速(延伸倍率3.4倍)で回転する155℃の熱ローラー(ローラー径:21cm)で延伸後に熱固定処理して繊維を得た。
【0077】
また、得られた繊維の繊維断面積に対する芯部分の占有率は70%であった。
【0078】
それ以外は、実施例1と同様にしてパンティストッキングを作製した。
【0079】
実施例7
熱可塑性ポリウレタン(ディーアイシーバイエルポリマー(株)製のパンデックスT−1190N、表面硬度A92(JIS K7311))及びポリエステル系エラストマー(東洋紡績(株)製のペルプレンP−150B、表面硬度D57(ASTM D2240))を、それぞれ単軸押出機によりバレル温度170〜205℃、及び180〜220℃で加熱溶融し各ギアポンプで計量した後、225℃に加熱した複合口金で、熱可塑性ポリウレタンが芯部分にポリエステル系エラストマーが鞘部分になるように、同心円型に複合紡糸した。
【0080】
巻き取り速度は800m/分で、シリコン系油剤を付着させて未延伸で巻き取り、その後、別工程で12時間の熱処理(60℃、55%RHの湿熱環境下)を行った後、常温のローラーで100m/分のフィードした糸をほぼ同速(104m/分)で回転する90℃の熱ローラーで接触加熱しながら、340m/分の周速(延伸倍率3.4倍)で回転する160℃の熱ローラー(ローラー径:21cm)で延伸後に熱固定処理して繊維を得た。
【0081】
また、得られた繊維の繊維断面積に対する芯部分の占有率は90%であった。
【0082】
それ以外は、実施例1と同様にしてパンティストッキングを作製した。
【0083】
実施例8
熱可塑性ポリウレタン(ディーアイシーバイエルポリマー(株)製のパンデックスT−1190N、表面硬度A92(JIS K7311))及びポリアミド系エラストマー(アルケマ(株)製のペバックス6333、表面硬度D63(ASTM D2240))を、それぞれ単軸押出機によりバレル温度170〜205℃、及び160〜235℃で加熱溶融し各ギアポンプで計量した後、225℃に加熱した複合口金で、熱可塑性ポリウレタンが芯部分にポリアミド系エラストマーが鞘部分になるように同心円型に、複合紡糸した。
【0084】
巻き取り速度は800m/分で、シリコン系油剤を付着させて未延伸で巻き取り、その後、別工程で12時間の熱処理(60℃、55%RHの湿熱環境下)を行った後、常温のローラーで100m/分のフィードした糸をほぼ同速(104m/分)で回転する90℃の熱ローラーで接触加熱しながら、340m/分の周速(延伸倍率3.4倍)で回転する155℃の熱ローラー(ローラー径:21cm)で延伸後に熱固定処理して繊維を得た。
【0085】
また、得られた繊維の繊維断面積に対する芯部分の占有率は90%であった。
【0086】
それ以外は、実施例1と同様にしてパンティストッキングを作製した。
【0087】
実施例9
熱可塑性ポリウレタン(ディーアイシーバイエルポリマー(株)製のパンデックスT−1190N、表面硬度A92(JIS K7311))及びポリエステル系エラストマー(東洋紡績(株)製のペルプレンP−90B、表面硬度D52(ASTM D2240))を、それぞれ単軸押出機によりバレル温度170〜205℃、及び180〜220℃で加熱溶融し各ギアポンプで計量した後、225℃に加熱した複合口金で、熱可塑性ポリウレタンが芯部分にポリエステル系エラストマーが鞘部分になるように、同心円型に複合紡糸した。
【0088】
巻き取り速度は800m/分で、シリコン系油剤を付着させて未延伸で巻き取り、その後、別工程で12時間の熱処理(60℃、55%RHの湿熱環境下)を行った後、常温のローラーで100m/分のフィードした糸をほぼ同速(104m/分)で回転する90℃の熱ローラーで接触加熱しながら、280m/分の周速(延伸倍率2.8倍)で回転する180℃の熱ローラー(ローラー径:21cm)で延伸後に熱固定処理して繊維を得た。
【0089】
また、得られた繊維の繊維断面積に対する芯部分の占有率は90%であった。
【0090】
それ以外は、実施例1と同様にしてパンティストッキングを作製した。
【0091】
実施例10
熱可塑性ポリウレタン(ディーアイシーバイエルポリマー(株)製のパンデックスT−1190N、表面硬度A92(JIS K7311))及びポリエステル系エラストマー(東洋紡績(株)製のペルプレンP−90B、表面硬度D52(ASTM D2240))を、それぞれ単軸押出機によりバレル温度170〜205℃、及び180〜220℃で加熱溶融し各ギアポンプで計量した後、225℃に加熱した複合口金で、熱可塑性ポリウレタンが芯部分にポリエステル系エラストマーが鞘部分になるように、同心円型に複合紡糸した。
【0092】
巻き取り速度は800m/分で、シリコン系油剤を付着させて未延伸で巻き取り、その後、別工程で12時間の熱処理(60℃、55%RHの湿熱環境下)を行った後、常温のローラーで100m/分のフィードした糸をほぼ同速(104m/分)で回転する90℃の熱ローラーで接触加熱しながら、280m/分の周速(延伸倍率2.8倍)で回転する125℃の熱ローラー(ローラー径:21cm)で延伸後に熱固定処理して繊維を得た。
【0093】
また、得られた繊維の繊維断面積に対する芯部分の占有率は90%であった。
【0094】
それ以外は、実施例1と同様にしてパンティストッキングを作製した。
【0095】
実施例11
熱可塑性ポリウレタン(ディーアイシーバイエルポリマー(株)製のパンデックスT−1185N、表面硬度A86(JIS K7311))及びポリエステル系エラストマー(東洋紡績(株)製のペルプレンP−90B、表面硬度D52(ASTM D2240))を、それぞれ単軸押出機によりバレル温度170〜205℃、及び180〜220℃で加熱溶融し各ギアポンプで計量した後、225℃に加熱した複合口金で、熱可塑性ポリウレタンが芯部分にポリエステル系エラストマーが鞘部分になるように、同心円型に複合紡糸した。
【0096】
巻き取り速度は800m/分で、シリコン系油剤を付着させて未延伸で巻き取り、その後、別工程で12時間の熱処理(60℃、55%RHの湿熱環境下)を行った後、常温のローラーで100m/分のフィードした糸をほぼ同速(104m/分)で回転する90℃の熱ローラーで接触加熱しながら、280m/分の周速(延伸倍率2.8倍)で回転する125℃の熱ローラー(ローラー径:21cm)で延伸後に熱固定処理して繊維を得た。
【0097】
また、得られた繊維の繊維断面積に対する芯部分の占有率は80%であった。
【0098】
それ以外は、実施例1と同様にしてパンティストッキングを作製した。
【0099】
比較例1
熱可塑性ポリウレタン(ディーアイシーバイエルポリマー(株)製のパンデックスT−1190N、表面硬度A92(JIS K7311))及びポリエステル系エラストマー(東洋紡績(株)製のペルプレンP−90B、表面硬度D52(ASTM D2240))を、それぞれ単軸押出機によりバレル温度170〜205℃、及び180〜220℃で加熱溶融し各ギアポンプで計量した後、225℃に加熱した複合口金で、熱可塑性ポリウレタンが芯部分にポリエステル系エラストマーが鞘部分になるように、同心円型に複合紡糸した。
【0100】
巻き取り速度は800m/分で、シリコン系油剤を付着させて未延伸で巻き取り、その後、別工程で12時間の熱処理(60℃、55%RHの湿熱環境下)を行った後、常温のローラーで100m/分のフィードした糸をほぼ同速(104m/分)で回転する90℃の熱ローラーで接触加熱しながら、340m/分の周速(延伸倍率3.4倍)で回転する180℃の熱ローラー(ローラー径:21cm)で延伸後に熱固定処理して繊維を得た。
【0101】
また、得られた繊維の繊維断面積に対する芯部分の占有率は90%であった。
【0102】
それ以外は、実施例1と同様にしてパンティストッキングを作製した。
【0103】
比較例2
熱可塑性ポリウレタン(ディーアイシーバイエルポリマー(株)製のパンデックスT−1190N、表面硬度A92(JIS K7311))及びポリエステル系エラストマー(東洋紡績(株)製のペルプレンP−90B、表面硬度D52(ASTM D2240))を、それぞれ単軸押出機によりバレル温度170〜205℃、及び180〜220℃で加熱溶融し各ギアポンプで計量した後、225℃に加熱した複合口金で、熱可塑性ポリウレタンが芯部分にポリエステル系エラストマーが鞘部分になるように、同心円型に複合紡糸した。
【0104】
巻き取り速度は800m/分で、シリコン系油剤を付着させて未延伸で巻き取り、その後、別工程で12時間の熱処理(60℃、55%RHの湿熱環境下)を行った後、常温のローラーで100m/分のフィードした糸をほぼ同速(104m/分)で回転する90℃の熱ローラーで接触加熱しながら、340m/分の周速(延伸倍率3.4倍)で回転する180℃の熱ローラー(ローラー径:21cm)で延伸後に熱固定処理して繊維を得た。
【0105】
また、得られた繊維の繊維断面積に対する芯部分の占有率は90%であった。
【0106】
それ以外は、実施例1と同様にしてパンティストッキングを作製した。
【0107】
比較例3
熱可塑性ポリウレタン(ディーアイシーバイエルポリマー(株)製のパンデックスT−1185N、表面硬度A86(JIS K7311))及びポリエステル系エラストマー(東洋紡績(株)製のペルプレンP−90B、表面硬度D52(ASTM D2240))を、それぞれ単軸押出機によりバレル温度170〜205℃、及び180〜220℃で加熱溶融し各ギアポンプで計量した後、225℃に加熱した複合口金で、熱可塑性ポリウレタンが芯部分にポリエステル系エラストマーが鞘部分になるように、同心円型に複合紡糸した。
【0108】
巻き取り速度は800m/分で、シリコン系油剤を付着させて未延伸で巻き取り、その後、別工程で12時間の熱処理(60℃、55%RHの湿熱環境下)を行った後、常温のローラーで100m/分のフィードした糸をほぼ同速(104m/分)で回転する90℃の熱ローラーで接触加熱しながら、300m/分の周速(延伸倍率3.0倍)で回転する180℃の熱ローラー(ローラー径:21cm)で延伸後に熱固定処理して繊維を得た。
【0109】
また、得られた繊維の繊維断面積に対する芯部分の占有率は70%であった。
【0110】
それ以外は、実施例1と同様にしてパンティストッキングを作製した。
【0111】
比較例4
熱可塑性ポリウレタン(ディーアイシーバイエルポリマー(株)製のパンデックスT−1190N、表面硬度A92(JIS K7311))及びポリエステル系エラストマー(東洋紡績(株)製のペルプレンP−90B、表面硬度D52(ASTM D2240))を、それぞれ単軸押出機によりバレル温度170〜205℃、及び180〜220℃で加熱溶融し各ギアポンプで計量した後、225℃に加熱した複合口金で、熱可塑性ポリウレタンが芯部分にポリエステル系エラストマーが鞘部分になるように、同心円型に複合紡糸した。
【0112】
巻き取り速度は800m/分で、シリコン系油剤を付着させて未延伸で巻き取り、その後、別工程で12時間の熱処理(60℃、55%RHの湿熱環境下)を行った後、常温のローラーで100m/分のフィードした糸をほぼ同速(104m/分)で回転する90℃の熱ローラーで接触加熱しながら、130m/分の周速(延伸倍率1.3倍)で回転する105℃の熱ローラー(ローラー径:21cm)で延伸後に熱固定処理して繊維を得た。
【0113】
また、得られた繊維の繊維断面積に対する芯部分の占有率は90%であった。
【0114】
それ以外は、実施例1と同様にしてパンティストッキングを作製した。
【0115】
比較例5
熱可塑性ポリウレタン(ディーアイシーバイエルポリマー(株)製のパンデックスT−1190N、表面硬度A92(JIS K7311))及びポリエステル系エラストマー(東洋紡績(株)製のペルプレンP−90B、表面硬度D52(ASTM D2240))を、それぞれ単軸押出機によりバレル温度170〜205℃、及び180〜220℃で加熱溶融し各ギアポンプで計量した後、225℃に加熱した複合口金で、熱可塑性ポリウレタンが芯部分にポリエステル系エラストマーが鞘部分になるように、同心円型に複合紡糸した。
【0116】
巻き取り速度は800m/分で、シリコン系油剤を付着させて未延伸で巻き取り、その後、別工程で12時間の熱処理(60℃、55%RHの湿熱環境下)を行った後、常温のローラーで100m/分のフィードした糸をほぼ同速(104m/分)で回転する90℃の熱ローラーで接触加熱しながら、130m/分の周速(延伸倍率1.3倍)で回転する125℃の熱ローラー(ローラー径:21cm)で延伸後に熱固定処理して繊維を得た。
【0117】
また、得られた繊維の繊維断面積に対する芯部分の占有率は80%であった。
【0118】
それ以外は、実施例1と同様にしてパンティストッキングを作製した。
【0119】
比較例6
熱可塑性ポリウレタン(ディーアイシーバイエルポリマー(株)製のパンデックスT−1185N、表面硬度A86(JIS K7311))及びポリエステル系エラストマー(東洋紡績(株)製のペルプレンP−90B、表面硬度D52(ASTM D2240))を、それぞれ単軸押出機によりバレル温度170〜205℃、及び180〜220℃で加熱溶融し各ギアポンプで計量した後、225℃に加熱した複合口金で、熱可塑性ポリウレタンが芯部分にポリエステル系エラストマーが鞘部分になるように、同心円型に複合紡糸した。
【0120】
巻き取り速度は800m/分で、シリコン系油剤を付着させて未延伸で巻き取り、その後、別工程で12時間の熱処理(60℃、55%RHの湿熱環境下)を行った後、常温のローラーで100m/分のフィードした糸をほぼ同速(104m/分)で回転する90℃の熱ローラーで接触加熱しながら、130m/分の周速(延伸倍率1.3倍)で回転する105℃の熱ローラー(ローラー径:21cm)で延伸後に熱固定処理して繊維を得た。
【0121】
また、得られた繊維の繊維断面積に対する芯部分の占有率は90%であった。
【0122】
それ以外は、実施例1と同様にしてパンティストッキングを作製した。
【0123】
比較例7
熱可塑性ポリウレタン(ディーアイシーバイエルポリマー(株)製のパンデックスT−1190N、表面硬度A92(JIS K7311))及びポリエステル系エラストマー(東洋紡績(株)製のペルプレンP−150B、表面硬度D57(ASTM D2240))を、それぞれ単軸押出機によりバレル温度170〜205℃、及び180〜220℃で加熱溶融し各ギアポンプで計量した後、225℃に加熱した複合口金で、熱可塑性ポリウレタンが芯部分にポリエステル系エラストマーが鞘部分になるように、同心円型に複合紡糸した。
【0124】
巻き取り速度は800m/分で、シリコン系油剤を付着させて未延伸で巻き取り、その後、別工程で12時間の熱処理(60℃、55%RHの湿熱環境下)を行った後、常温のローラーで100m/分のフィードした糸をほぼ同速(104m/分)で回転する90℃の熱ローラーで接触加熱しながら、340m/分の周速(延伸倍率3.4倍)で回転する105℃の熱ローラー(ローラー径:21cm)で延伸後に熱固定処理して繊維を得た。
【0125】
また、得られた繊維の繊維断面積に対する芯部分の占有率は90%であった。
【0126】
それ以外は、実施例1と同様にしてパンティストッキングを作製した。
【0127】
比較例8
熱可塑性ポリウレタン(ディーアイシーバイエルポリマー(株)製のパンデックスT−1190N、表面硬度A92(JIS K7311))及びポリアミド系エラストマー(アルケマ(株)製のペバックス6333、表面硬度D63(ISO 868))を、それぞれ単軸押出機によりバレル温度170〜205℃、及び160〜235℃で加熱溶融し各ギアポンプで計量した後、225℃に加熱した複合口金で、熱可塑性ポリウレタンが芯部分にポリアミド系エラストマーが鞘部分になるように、同心円型に複合紡糸した。
【0128】
巻き取り速度は800m/分で、シリコン系油剤を付着させて未延伸で巻き取り、その後、別工程で12時間の熱処理(60℃、55%RHの湿熱環境下)を行った後、常温のローラーで100m/分のフィードした糸をほぼ同速(104m/分)で回転する90℃の熱ローラーで接触加熱しながら、340m/分の周速(延伸倍率3.4倍)で回転する105℃の熱ローラー(ローラー径:21cm)で延伸後に熱固定処理して繊維を得た。
【0129】
また、得られた繊維の繊維断面積に対する芯部分の占有率は90%であった。
【0130】
それ以外は、実施例1と同様にしてパンティストッキングを作製した。
【0131】
比較例9
熱可塑性ポリウレタン(ディーアイシーバイエルポリマー(株)製のパンデックスT−1190N、表面硬度A92(JIS K7311))及びポリエステル系エラストマー(東洋紡績(株)製のペルプレンP−150B、表面硬度D57(ASTM D2240))を、それぞれ200℃及び195〜210℃で溶融し、195℃に加熱した複合口金を2個有した口金で、熱可塑性ポリウレタンが芯部分にポリエステル系エラストマーが鞘部分になるように非捲縮発現型(同心円型)に複合紡糸した。複合繊維の横断面における熱可塑性ポリウレタンとポリエステル系エラストマーの面積比率は、表1に示す芯及び鞘比率となるように、各成分のギアポンプによる吐出比で変化させ、吐出量は、延伸後単糸24デニールになるように調整した。
【0132】
巻き取り速度は500m/分で、シリコン系油剤を付着させて未延伸で巻き取り、その後、別工程で延伸し、80℃、結露点10℃、24時間エージングを行い、コンジュゲート繊維を製造した。
【0133】
得られた繊維の直径は61μmであり、繊維断面積に対する芯部分の占有率は58%であった。
【0134】
得られたコンジュゲート繊維を用いて、シングルシリンダ編機でシングル編(天竺編)により筒状の編地を編成し、常法に従ってつま先縫、パンティー縫合した後、染色(ベージュ色;カルロ)、足型にて熱セットしてパンティストッキングを作製した。
【0135】
比較例10
ポリエステル系エラストマーに代えてポリアミド(ナイロン−6)(東レ(株)製のアラミンCM1007)を用いること以外は、比較例9と同様にしてコンジュゲート繊維を製造した。繊維の直径は60μmであり、繊維断面積に対する芯部分の占有率は56%であった。
【0136】
得られたコンジュゲート繊維を用いて、比較例9と同様にしてパンティストッキングを作製した。
【0137】
比較例11
熱可塑性ポリウレタン[ディーアイシーバイエルポリマー(株)製のパンデックスT−1190N、表面硬度A92(JIS K7311)]及びポリエステル系エラストマー[東洋紡績(株)製のペルプレンP−150B、引張強伸度(ASTM D638)38MPa、500%、永久伸び(JIS K6251)59%、表面高度D(ASTM D2240)57]を、それぞれ単軸押出機によりバレル温度180〜205℃、及び190〜220℃で加熱溶融し各ギアポンプで計量した後、225℃に加熱した複合口金を2個有した口金で、熱可塑性ポリウレタンが芯部分にポリエステル系エラストマーが鞘部分になるように同心円型に複合紡糸した。複合繊維の断面における熱可塑性ポリウレタンとポリエステル系エラストマーの面積比率は、各成分のギアポンプによる吐出比で変化させた。
【0138】
巻き取り速度は200m/分で、シリコン系油剤を付着させて未延伸で巻き取り、その後、別工程で熱処理(60℃、55%RHの湿熱環境下)を行った後、60℃に加熱しながら、3倍の延伸倍率で延伸処理して繊維を得た。得られたコンジュゲート繊維の直径は59μmであり、繊維断面積に対する芯部分の占有率は51%であった。
【0139】
得られたコンジュゲート繊維を用いて、比較例9と同様にしてパンティストッキングを作製した。
【0140】
比較例12
複合繊維の横断面における熱可塑性ポリウレタンとポリエステル系エラストマーの面積比率を、各成分のギアポンプによる吐出比で変化させ、表1に示す芯及び鞘比率にした以外は、比較例11と同じ方法でコンジュゲート繊維を製造した。繊維断面積に対する芯部分の占有率78%、繊維の直径は63μmであった。
【0141】
得られたコンジュゲート繊維を用いて、比較例9と同様にしてパンティストッキングを作製した。
【0142】
比較例13
ポリエステル系エラストマーに代えてポリアミド(ナイロン−6)(東レ(株)製のアラミンCM1007)を用いること以外は、比較例11と同様にしてコンジュゲート繊維を製造した。繊維の直径は60μmであり、繊維断面積に対する芯部分の占有率は56%であった。
【0143】
得られたコンジュゲート繊維を用いて、比較例9と同様にしてパンティストッキングを作製した。
【0144】
比較例14
比較例11において、熱処理(60℃、55%RHの湿熱環境下)工程を採用せずに、25℃に加熱しながら3倍の延伸倍率で延伸処理すること以外は、比較例11と同様にしてコンジュゲート繊維を製造した。繊維断面積に対する芯部分の占有率78%、繊維の直径は63μmを得た。
【0145】
得られたコンジュゲート繊維を用いて、比較例9と同様にしてパンティストッキングを作製した。
【0146】
比較例15
熱可塑性ポリウレタン(ディーアイシーバイエルポリマー(株)製のパンデックスT−1190N、表面硬度A92(JIS K7311))を用い、ポリトリメチレンテレフタレートは、以下の方法により製造したものを用いた。
【0147】
ジメチルテレフタル酸10.0kg、1,3−プロパンジオール7.8kg及び触媒としてテトラブチルチタネートを使用し、約180℃でエステル化反応を行った後、さらに、240℃温度一定の条件下で4時間重縮合反応を行い極限粘度が0.63のポリマーを得た。得られたプレポリマーを120℃で1時間予備乾燥した後、1.0hpaの減圧下、200℃で5時間固相重合することにより、極限粘度が0.87のポリトリメチレンテレフタレートを得た。得られたポリトリメチレンテレフタレートは、融点が226℃であった。
【0148】
上記の樹脂を、それぞれ単軸押出機によりバレル温度180〜225℃、及び200〜260℃で加熱溶融し各ギアポンプで計量した後、240℃に加熱した複合口金を2個有した口金で、熱可塑性ポリウレタンが芯部分にポリトリメチレンテレフタレートが鞘部分になるように同心円型に複合紡糸した。複合繊維の断面における熱可塑性ポリウレタンとポリトリメチレンテレフタレートの面積比率は、各成分のギアポンプによる吐出比で変化させた。
【0149】
巻き取り速度は1000m/分で、シリコン系油剤を付着させて未延伸で巻き取り、その後、別工程で熱処理(60℃、55%RHの湿熱環境下)を行った後、70℃に加熱しながら、3倍の延伸倍率で延伸処理して繊維を得た。得られた繊維の直径は60μmであり、繊維断面積に対する芯部分の占有率は80%であった。
【0150】
得られたコンジュゲート繊維を用いて、比較例9と同様にしてパンティストッキングを作製した。
【0151】
比較例16
ポリウレタン弾性糸22dTを芯糸、ナイロン糸11dT/5フィラメントをカバリング糸としてS方向から巻き付けたシングルカバードヤーンを作製した以外は、比較例15と同様の方法にてコンジュゲート繊維を製造した。繊維断面積に対する芯部分の占有率は、94%であった。
【0152】
得られたコンジュゲート繊維を用いて、比較例9と同様にしてパンティストッキングを作製した。
【0153】
比較例17
ポリトリメチレンテレフタレートに代えてポリアミド(ナイロン−6)(東レ(株)製のアラミンCM1007)を用いること以外は、比較例15と同様にしてコンジュゲート繊維を製造した。繊維断面積に対する芯部分の占有率は、79%であった。
【0154】
得られたコンジュゲート繊維を用いて、比較例9と同様にしてパンティストッキングを作製した。
【0155】
比較例18
熱可塑性ポリウレタン(ディーアイシーバイエルポリマー(株)製のパンデックスT−1190N、表面硬度A92(JIS K7311)及びポリエステル系エラストマー(東洋紡績(株)製のペルプレンP−150B、引張強伸度(ASTM D638)38MPa、500%、永久伸び(JISK6251準拠)59% 表面硬度D(ASTM D2240)57)に硫酸バリウム(堺化学工業(株)製の沈降性硫酸バリウムB−55、一次粒子径0.66μm)10重量%配合品を、それぞれ単軸押出機によりバレル温度180〜205℃、及び190〜220℃で加熱溶融し各ギアポンプで計量した後、225℃に加熱した複合口金を2個有した口金で、熱可塑性ポリウレタンが芯部分にポリエステル系エラストマーが鞘部分になるように同心円型に複合紡糸した。複合繊維の断面における熱可塑性ポリウレタンとポリエステル系エラストマーの面積比率は、各成分のギアポンプによる吐出比で変化させた。ポリエステル系エラストマーへの硫酸バリウムの配合方法は2軸混練機によりコンパウンド原料を作製し供した。
【0156】
巻き取り速度は200m/分で、シリコン系油剤を付着させて未延伸で巻き取り、その後、別工程で熱処理(60℃、55%RHの湿熱環境下)を行った後、60℃に加熱しながら、3倍延伸処理して繊維を得た。得られた繊維の直径は61μmであり、繊維断面積に対する芯部分の占有率は80%であった。
【0157】
得られたコンジュゲート繊維を用いて、比較例9と同様にしてパンティストッキングを作製した。
【0158】
比較例19
比較例18と同様にして、硫酸バリウム5重量%配合品を作製した。なお、延伸倍率は3倍とした。繊維の直径は59μmであり、繊維断面積に対する芯部分の占有率81%であった。
【0159】
得られたコンジュゲート繊維を比較例9と同様にして、パンティストッキングを作製した。
【0160】
比較例20
硫酸バリウムを用いなかった以外は、比較例18と同様にしてコンジュゲート繊維を製造した。繊維の直径は63μmであり、繊維断面積に対する芯部分の占有率は78%であった。
【0161】
得られたコンジュゲート繊維を比較例9と同様にして、パンティストッキングを作製した。
【0162】
比較例21
硫酸バリウム(堺化学工業(株)製の沈降性硫酸バリウムB−54、一次粒子径1.2μm)28重量%配合品を用いること以外は、比較例18と同様にしてコンジュゲート繊維を製造した。なお、延伸倍率は3倍とした。繊維の直径は63μmであり、繊維断面積に対する芯部分の占有率は77%であった。
【0163】
得られたコンジュゲート繊維を用いて、比較例9と同様にして、パンティストッキングを作製した。
【0164】
実施例1〜11及び比較例1〜21で製造した繊維及び該繊維で製造したパンティストッキングについて、以下の試験例によって、各物性を測定した。
【0165】
試験例
<芯比率及び鞘比率>
紡糸を行うときの芯部/鞘部の吐出量の比により芯比率及び鞘比率は決定した。吐出量はギアポンプの流量設定で調整した。作製した糸の断面のSEM観察を行い、芯部面積/鞘部面積の比率により芯比率及び鞘比率を確認した。各比率を表1にまとめた。
【0166】
<解糸繊度>
本発明での解糸とは、生地から糸をほどく行為のことをいい、この解糸した糸の繊度を解糸繊度という。この解糸繊度の測定方法は、JIS L 1013に基づいて測定した。解糸繊度測定結果を表2にまとめた。
【0167】
<熱水収縮率>
延伸後の糸を用いて、JIS L 1013に基づいて測定した。測定結果を表2にまとめた。
【0168】
<引張試験>
本発明による繊維の引張試験は、主にJIS L 1013を参考にしているが、初荷重を0.4g、試料長を100mm、引張速度を200mm/minとして測定した。
【0169】
<1.2cN時伸度、8.0cN時伸度>
繊維の引張試験を行ない、荷重(単位cN)と伸び(mm)の曲線を得、この伸びを伸度(=伸び率)(単位%)に変換し、荷重と伸度の曲線を得る。ここで、この曲線の1.2cN又は8.0cNの伸度を読み取った値を1.2cN時伸度又は8.0cN時伸度と呼ぶ。
【0170】
実施例1〜11及び比較例1〜21のパンティストッキング生地の解糸した糸の引張試験を行い、得られた1.2cN時伸度、8.0cN時伸度のそれぞれの測定結果を表2にまとめた。(n=10)
【0171】
<生地突刺し試験>
上記実施例1〜11及び比較例1〜8で製造された繊維を、1インチあたりのウェール数を13に、1インチあたりのコース数を65になるように密度調整して、パンティストッキング編生地を調整した。この生地を、図1〜図3に示すように、台4に固定されたΦ100mmの刺繍枠2に生地3をとり、オートグラフにΦ10mmの突刺し棒1を固定し、先ほどの刺繍枠2にとった生地3を突き刺し、その時の荷重と変位を測定した。突刺し棒1が生地3を完全に突刺し、生地3が破損した(穴が開いた)ときの荷重を「生地の突き刺し荷重」と表し、結果を表2にまとめた。
【0172】
<生地破損>
図4に示す手順に従い、パンティストッキングを被験者10名に着衣してもらった。その際に、図4に示す以下の2通りの方法で着衣してもらった。なお、表2に示す下記評価の判定の右に記載される数字は、該当する判定を行った被験者の数を表す。
【0173】
A法:被験者の普段通りの履き方
B法:丁寧なもち方・丁寧な履き方
履き終わった後の生地の破損状態を確認し、下記のような評価をした。なお、10人中1人でも×と評価された場合は、その条件は良くないものと判断した。
【0174】
◎:A法・B法両方ともに履けた。
【0175】
○:A法・B法どちらか一方で履けた。
【0176】
×:A法・B法両方ともに履けなかった。
【0177】
<履きやすさ>
被験者10名につきパンティストッキングを着衣する際の履きやすさをアンケート形式で評価した。なお、10人中1人でも×と評価された場合は、その条件は良くないものと判断した。なお、表2に示す下記評価の判定の右に記載される数字は、該当する判定を行った被験者の数を表す。
【0178】
◎:非常に履きやすい
○:履きやすい
×:履きにくい
−:履けなかった(生地の破損を含む)ので評価なし。
【0179】
【表1】

【0180】
【表2】

【0181】
結果と考察
表1より、実施例1〜8においては、A法及びB法いずれの方法においても、パンティストッキングが履きやすく、履き終わった後の生地の破損もなく良好であった。
【0182】
実施例9については、着衣評価に関して、全員が履けたが、実施例1〜8、10〜11より丁寧に履かないと生地が破損してしまう傾向があった。これは、繊度が小さく生地が薄いために実施例1〜8、10〜11に対しては生地が破損し易くなったのであろうと推測されるが、履きやすさに関しては、全員が履きやすいと評価した。
【0183】
実施例10については、履きやすさに関しては、全員が履きやすいと評価したが、実施例1〜9よりは少し履きにくい傾向がある。これは、繊度が大きく生地が分厚いため生地が少し伸び難くなったことが原因として考えられる。しかしながら、着衣評価に関して、全員が履けるという評価が得られた。
【0184】
実施例11について、履きやすさに関しては、全員が履きやすいと評価したが、実施例1〜9よりは少し履きにくい傾向がある。これは、繊度が大きく生地が分厚いため生地が少し伸び難くなったことが原因として考えられる。しかしながら、着衣評価に関しては、全員が履けるという評価が得られた。
【0185】
一方、比較例1については、着衣評価に関して、全員が履けた。しかし、履きやすさに関して、2人が生地が伸び難く履きにくいと評価した。これは、パンティストッキングを解糸した糸の引張試験の結果より、1.2cN時の伸度が低い(=糸が伸び難い)ためだと推測される。
【0186】
比較例2については、着衣評価に関して、生地が破損(伝線や目割れ)して全員が履けなかった。これは、パンティストッキングを解糸した糸の引張試験の結果より、8.0cN時の伸度が高いためだと推測される。
【0187】
比較例3については、着衣評価に関して、生地が破損(伝線や目割れ)して9人が履けなかった。これは、パンティストッキングを解糸した糸の引張試験の結果より、8.0cN時の伸度が高いためだと推測される。履きやすさに関して、履けた1人は、生地が伸び難く履きにくいと評価した。
【0188】
比較例4については、着衣評価に関して、生地が破損(伝線や目割れ)して2人が履けなかった。これは、パンティストッキングを解糸した糸の引張試験の結果より、8.0cN時の伸度が高いためだと推測される。履きやすさに関して、履けた8人全員が履きやすいと評価した。これは、パンティストッキングを解糸した糸の引張試験の結果より、1.2cN時の伸度が高い(=糸が伸び易い)ためだと推測される。
【0189】
比較例5については、着衣評価に関して、生地が破損(伝線や目割れ)して4人が履けなかった。これは、パンティストッキングを解糸した糸の引張試験の結果より、8.0cN時の伸度が高いためだと推測される。履きやすさに関して、履けた6人中5人が、生地が伸び難く履きにくいと評価した。これは、パンティストッキングを解糸した糸の引張試験の結果より、1.2cN時の伸度が低い(=糸が伸び難い)ためだと推測される。
【0190】
比較例6については、着衣評価に関して、生地が破損(伝線や目割れ)して5人が履けなかった。これは、パンティストッキングを解糸した糸の引張試験の結果より、8.0cN時の伸度が高いためだと推測される。履きやすさに関して、履けた5人全員が履きやすいと評価した。これは、パンティストッキングを解糸した糸の引張試験の結果より、1.2cN時の伸度が高い(=糸が伸び易い)ためだと推測される。
【0191】
比較例7については、着衣評価に関して、生地が破損(伝線や目割れ)して4人が履けなかった。これは、パンティストッキングを解糸した糸の引張試験の結果より、8.0cN時の伸度が高いためだと推測される。履きやすさに関して、履けた6人全員が履きやすいと評価した。これは、パンティストッキングを解糸した糸の引張試験の結果より、1.2cN時の伸度が高い(=糸が伸び易い)ためだと推測される。
【0192】
比較例8については、着衣評価に関して、生地が破損(伝線や目割れ)して9人が履けなかった。これは、パンティストッキングを解糸した糸の引張試験の結果より、8.0cN時の伸度が高いためだと推測される。履きやすさに関して、履けた1人は履きやすいと評価した。
【符号の説明】
【0193】
1:突刺し棒
2:刺繍枠
3:生地
4:台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯部分に熱可塑性ポリウレタン系エラストマー樹脂(A)を含有し、
鞘部分に熱可塑性ポリエステル系エラストマー樹脂又はポリアミド系エラストマー(B)を含有する芯鞘コンジュゲート繊維であって、
芯鞘コンジュゲート繊維によって編成された生地を解糸した糸の引張試験により得られた強伸度曲線において、
荷重1.2cN時の伸度が12%以上、かつ荷重8.0cN時の伸度が120%以下であることを特徴とする芯鞘コンジュゲート繊維。
【請求項2】
該芯鞘コンジュゲート繊維によって編成された生地を解糸した糸の繊度が15〜52dtexであることを特徴とする請求項1に記載の芯鞘コンジュゲート繊維。
【請求項3】
該芯鞘コンジュゲート繊維によって編成された生地を解糸した糸の熱水収縮率が20〜62%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の芯鞘コンジュゲート繊維。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−26736(P2011−26736A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−173968(P2009−173968)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】