説明

エラストマー組成物及びそれらの製品における使用

動的加硫されたアロイは少なくとも1つのイソブチレン含有エラストマー及び少なくとも1つの熱可塑性樹脂を含む。このエラストマーは小さな加硫された又は部分的に加硫された粒子の分散相として、熱可塑性樹脂の連続相中に存在している。この動的に加硫されたアロイは高いショアA硬度を維持しつつ、加工において改善された流動性を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は20009年8月27日に出願された米国特許出願No.12/548,797に対して優先権を主張する。この文献をそのまま参照により本明細書に援用する。
【0002】
本発明は熱可塑性エラストマー組成物に関する。より具体的には、本発明は組成物中の熱可塑性物質に対して増量剤及び官能性可塑剤として働く化合物を含む熱可塑性エラストマー組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
本発明は、不透過性を必要とされる、タイヤ、及び強化さえた又は他の処理が施された、他の工業ゴム製品に特に有用な熱可塑性エラストマー組成物に関する。
【0004】
EP0722850B1は空気式タイヤのインナーライナーとして優れた低透過性熱可塑性エラストマー組成物を開示する。この組成物は低透過性ゴムを分散する低透過性熱可塑性物質を含む。EP0969039A1は同様の組成物を開示し、熱可塑性物質中の分散しているゴムの粒子サイズが小さいことが、得られた組成物の許容可能な耐久性を達成するために重要であることを示唆している。
【0005】
ゴム及び熱可塑性物質からなる熱可塑性エラストマーをタイヤのインナーラーナーとして使用する例もある。しかしながら、一般的に、これらの文献に開示されているタイプの柔軟な物質は熱耐性が低い。組成物中の熱可塑性物質がタイヤ加硫温度よりも低い融点を有しており、タイヤの硬化されているブラダーが硬化サイクルの最後で放出される場合、硬化されているブラダーのゴムに組成物の熱可塑性物質が付着することによる、タイヤの内部表面が欠陥を有することになる。
【0006】
粘度の違いは分散されるゴム粒子サイズに影響するので、組成物中の2つの異なる物質の間の粘度の違いをコントロールすることは、重要であると考えられている。しかしながら、ゴム/プラスチックが1.0の融解粘度の比を維持しようとする時に、このゴムがマトリックスを占めてしまい、組成物はもはや好ましい熱可塑性質を有さなくなる。EP0969039A1参照。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、既に知られている同様の組成物に対して改善された特徴を有する熱可塑性エラストマー組成物に関する。
【0008】
本発明は、少なくとも1つのイソブチレン含有エラストマー及び少なくとも1つ熱可塑性樹脂を含む動的加硫されたアロイに関する。このエラストマーは熱可塑性樹脂の連続相中に、小さい加硫された又は部分的に加硫された粒子の分散相として存在している。この動的に加硫されたアロイはその中に無水官能化オリゴマーも含む。
【0009】
本開示発明の他の側面において、官能化する前の無水官能化オリゴマーのオリゴマーは500乃至5000の範囲の分子量を有している。本開示発明の他の側面において、このオリゴマーは750乃至2500の範囲の分子量を有している。
【0010】
本開示発明の他の側面において、このオリゴマーはアルキル、アリール、又はアルケニルオリゴマーであり、無水物は無水マレイン酸又は無水コハク酸である。本発明の他の態様において、無水コハク酸官能化ポリマーはポリ−n−アルキルコハク酸無水物又はポリ−イソ−アルキルコハク酸無水物である。
【0011】
本発明の他の態様において、この官能化オリゴマーはポリイソブチレン無水コハク酸、ポリイソブテン無水コハク酸、ポリブテン無水コハク酸、ポリイソペンテン無水コハク酸、ポリペンテン無水コハク酸、ポリオクテン無水コハク酸、ポリイソオクテニルコハク酸無水物、ポリヘキセンコハク酸無水物、ポリドデセニルコハク酸無水物からなる群より選択される。
【0012】
本発明の他の態様において、このアロイはアロイ中のイソブチレン含有エラストマーの量に基づいて、2乃至35phrの無水コハク酸官能化ポリマーを含む。
【0013】
本発明の他の側面において、このアロイは更に可塑剤を含む。この可塑剤はポリアミド、3級アミン、2級ジアミン、エステル、又はスルホンアミドでよい。好ましくは、可塑剤に対する無水コハク酸官能化ポリマーの比は0.15乃至3.0の範囲内である。
【0014】
本発明の他の側面において、このアロイは如何なるアクリレートも実質的に含まず、好ましくは、このアロイはあらゆるアクリレートを含まない。
【0015】
本発明の他の側面において、このイソブチレン含有エラストマーはハロゲン化ブチルゴムである。本発明の他の側面において、このブチレン含有エラストマーはイソブチレンとアルキルスチレンとのランダムコポリマーである。好ましくは、このエラストマーはイソブチレン及びアルキルスチレンのランダムコポリマーであるとき、アルキルスチレンはパラメチルスチレンである。任意の態様において、このエラストマーは臭素又は塩素でハロゲン化される。
【0016】
本発明の他の側面において、このイソブチレン含有エラストマーは2乃至90重量パーセントの範囲での量で、アロイ中に存在する。
【0017】
本開示発明の他の側面において、この熱可塑性樹脂はポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリアクトン、ポリアセタール、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスチレン、スチレンアクリロニトリル樹脂、スチレン無水マレイン酸樹脂、芳香族ポリケトン、エチレンビニル酢酸、エチレンビニルアルコール、及びこれらの混合物からなる群より選択される。
【0018】
本発明の他の側面において、このアロイは、少なくとも70のショアA硬度を有している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の各種特定の態様、バージョン、及び実施例を説明する。好適な態様及び本明細書で用いる定義は特許請求の範囲の発明を理解する目的で用いる。特に例示的な態様を説明しているが、各種他の態様も明らかであり、本発明の精神及び範囲を逸脱しない限り、当業者は容易に成し得ることができる。侵害の判断については、本発明の範囲は、添付の請求項の1つ以上を参照し、列挙されているものと均等なもの、構成要素、又は限定を含む。
定義
【0020】
本開示発明に適用可能な定義を以下に記載する。
【0021】
ポリマーは、ホモポリマー、コポリマー、インターポリマー、ターポリマー等を意味する。同様に、コポリマーは少なくとも2つのモノマー、任意で他のモノマーも含むポリマーを意味する。ポリマーがモノマーを含むといわれている場合は、このモノマーはモノマーの重合された形態であるポリマーとして、又はモノマー由来誘導体(即ち、単量体単位)の重合された形態として存在する。しかしながら、参照しやすいように、「(それぞれの)モノマーを含む」というフレーズ等は簡略化して用いる。同様に、触媒成分が、成分の中性安定形態を含むと説明されている場合には、当業者は成分のイオン形態がモノマーと反応してポリマーを生成する形態であると理解する。
【0022】
ゴムはASTM D1556の定義:大きな変形から回復することができ、加硫されている場合には溶媒中に必ず不要となる(しかし膨張する)状態に改良することができる又は既に改良された物質、に一致する任意のポリマー又はポリマー組成物を意味する。ゴムは時々エラストマーとも言われている。エラストマーの用語は本明細書において、ゴムの用語と互換的に使用される。
【0023】
「phr」はゴム100部あたりの部又は「一部」を示し、当分野ではエラストマー組成物全部に対して測定された成分の一般的な測定値である。所与の配合中に存在する、1つ、2つ、3つ、又はそれ以上の異なるゴム成分の全てのゴム成分の総phr又はpartsは、通常100phrであると定義される。他の非ゴム成分の全部はゴム100部に対して割合が決められ、phrで表される。この方法で、誰もが、例えば、硬化剤又は添加された増量剤等のレベルを比較でき、1つだけ又はそれ以上の成分のレベルを調節した後に、各種成分についてのパーセンテージを再計算することなく、ゴムの同じ相対割合に基づいて、組成物間の比較を容易に行うことができる。
【0024】
イソオレフィンは1つの炭素上に2つの置換を有する少なくとも1つの炭素を有する任意のオレフィンモノマーを意味する。マルチオレフィンは2つ以上の二重結合を有する任意のモノマーを意味する。好ましい態様において、このマルチオレフィンは共役ジエン様イソプレン等の共役二十結合を含む任意のモノマーである。
【0025】
イソブチレンベースエラストマー又はイソブチレンベースポリマーはイソブチレンからの少なくとも70モル%の繰り返し単位を含むエラストマー又はポリマーを意味する。
エラストマー
【0026】
本発明に有用なエラストマー組成物はモノマーの混合物を含む。このモノマーは少なくとも(1)C乃至Cイソオレフィンモノマー成分と(2)マルチオレフィンモノマー成分を含む。このイソオレフィンは1つの態様において、総モノマーの重量により70乃至99.5wt%、及び他の態様において、85乃至99.5重量%の範囲で存在する。このマルチオレフィン組成物は、1つの態様において、30乃至約0.5%の範囲の量で存在し、他の態様では、15乃至0.5wt%の範囲の量で存在する。更なる態様において、モノマー混合物の8乃至0.5wt%がマルチオレフィンである。
【0027】
イソオレフィンはC乃至C化合物であり、非限定的例としては、イソブチレン、イソブテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、1−ブテン、2−ブテン、メチルビニルエーテル、インデン、ビニルトリメチルシラン、ヘキサン、及び4−メチル−1−ペンテン等がある。マルチオレフィンはイソプレン、ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、ミルセン、6,6−ジメチルフルベン、ヘキサジエン、シクロペンタジエン、及びピペリン等のC乃至C14マルチオレフィンである。スチレン及びジシクロロスチレン等の他の重合可能モノマーもイソブチルゴム中でのホモポリメリゼーション又はコポリメリゼーションに有用である。
【0028】
本発明の実施に有用な好適なエラストマーはイソブチレンベースコポリマーを含む。前述のように、イソブチレンベースエラストマー又はポリマーはイソブチレンからの繰返し単位を少なくとも70%と少なくとも1つの重合可能な単位とを含むエラストマー又はポリマーと反応する。このイソブチレンベースコポリマーはハロゲン化されていてもいなくてもよい。
【0029】
本発明の1つの態様において、このエラストマーはブチルタイプゴム、又は分岐ブチルタイプゴム、特に、それらのエラストマーのハロゲン化バージョンである。有用なエラストマーはオレフィン又はイソオレフィンとマルチオレフィンとのコポリマーのような、不飽和ブチルゴムである。本発明の方法及び組成物に有用な不飽和エラストマーの非限定的な例としては、ポリ(イソブチレン−co−イソプレン)、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリイソブチレン、ポリ(スチレン−co−ブタジエン)、天然ゴム、星状分岐ブチルゴム、及びこれらの混合物である。本発明に有用なエラストマーは当業者に知られている方法で生成することができ、本発明はエラストマーを製造する方法により限定されない。
【0030】
本発明のブチルゴムポリマーの1つの態様は95乃至99.5%のイソブチレンと0.5乃至8wt%のイソプレンを反応させることにより得られる。あるいは、他の態様ではイソプレンは0.5wt%乃至5.0wt%でもよい。
【0031】
本発明のエラストマー組成物はイソブチレン等のC乃至Cイソモノオレフィンを含むランダムコポリマー、及び重量により少なくとも80%、あるいは少なくとも90%のパラ異性体を含むパラメチルスチレン等のアルキルスチレンコモノマーを含む。ここで、スチレンモノマー単位中に存在するアルキル置換キシレンの少なくとも1つ以上がベンジルハロゲン又は幾つかの他の官能基を含む。他の態様において、このポリマーは重量により少なくとも80%、あるいは少なくとも90%のパラ異性体を含む、C乃至Cアルファオレフィンと、パラメチルスチレン等のアルキルスチレンとのランダムエラストマー性コポリマーを含み、任意で官能化インターポリマーを含む。ここにおいて、スチレンモノマー単位中に含まれるアルキル置換キシレンの少なくとも1つ以上がベンジルハロゲン又は他の官能基を含む。例示的な物質はポリマー鎖に沿ってランダムに配置された以下のモノマー単位を含むポリマーにより特徴付けられる:
【式1】
【0032】

式中、R及びRは独立して、ハロゲン、C乃至Cアルキル及び1級又は2級アルキルハライド等の低級アルキルであり、Xはハロゲン等の官能基である。1つの態様において、R及びRはそれぞれハロゲンである。ランダムポリマー構造中に存在するパラ置換されたスチレンの60モル%までが、1つの態様では上記の官能化された構造(2)であり、他の態様では、0.1乃至5モル%である。更なる態様において、官能化された構造(2)の量は0.2乃至3モル%である。
【0033】
官能基Xはハロゲン又は、カルボン酸、カルボン酸塩、カルボキシエステル、カルボキシアミド、カルボキシイミド、ヒドロキシ、アルコキシド、フェノキシド、チオレート、チオエーテル、キサンタン、シアン化物、シアネート、アミノ、及びそれらの混合物等の他の基とベンジルハロゲンの求核置換により取り込まれる幾つかの他の官能基でよい。これらの官能化されたイソモノオレフィンコポリマー、それらの調整方法、官能化の方法、及び硬化は米国特許No.5,162,445に具体的に記載されている。
【0034】
1つの態様において、エラストマーはイソブチレンと0.5乃至20モル%までのパラメチルスチレンとのランダムポリマーを含む。ここにおいて、ベンジル環上に存在するメチル置換基の60モル%までが臭素又は塩素(パラ−ブロモメチルスチレン)等のハロゲン、酸、あるいはエステルで官能化される。
【0035】
他の態様において、官能性はマトリクスポリマー中に存在する官能基と反応できるか又は極性結合形成するように選択される。例えば、ポリマー成分が高温で混合される場合は、酸、アミノ、又はヒドロキシ官能基が選択される。
【0036】
1つの態様において、臭素化ポリ(イソブチレン−co−p−メチルスチレン)「BIMSM」ポリマーは通常コポリマー中に存在するモノマー誘導単位の総量に対して0.1乃至5モル%のブロモエチルスチレン基を含む。他の態様において、ブロモメチル基の量は0.2乃至3.0モル%であり、他の態様では0.3乃至2.8モル%であり、他の態様では0.4乃至2.5モル%であり、他の態様では0.3乃至2.0モル%である。ここにおいて、所望の範囲は任意の上限と任意の下限値の組み合わせでもよい。別の言い方をすれば、例示的なコポリマーは、ポリマーの総重量に基づいて、0.2乃至10wt%の臭素を含み、他の態様では0.4乃至6wt%の臭素を含み、他の態様では、0.6乃至5.6wt%の臭素を含み、ポリマー骨格鎖に環状ハロゲン又はハロゲンを実質的に含まない。1つの態様において、ランダムコポリマーはC乃至Cイソオレフィン誘導単位(又はイソモノオレフィン)、パラメチルスチレン誘導単位、及びパラ(ハロメチルスチレン)誘導単位のコポリマーである。ここにおいて、パラ(ハロメチルスチレン)単位はパラメチルスチレンの総数に基づいて0.4乃至3.0モル%ポリマー中に存在し、パラメチルスチレン誘導体は1つの態様では、ポリマーの総重量に基づいて3乃至15wt%存在し、他の態様では4乃至10wt%存在する。他の態様において、このパラ(ハロハロメチルスチレン)はパラ(ブロモメチルスチレン)である。
熱可塑性樹脂
【0037】
本発明の目的のために、熱可塑性物質(あるいは熱可塑性樹脂ともいう)は、23℃におけるヤング弾性率が200Mpaよりも大きい熱可塑性ポリマー、コポリマー又はこれらの混合物である。この樹脂は約170℃乃至約260℃、好ましくは260℃未満、及びより好ましくは約240℃未満の融点を有する。従来の定義により、熱可塑性物質は熱を加えると柔軟になり、冷却すると本来の性質を取り戻す合成樹脂である。
【0038】
そのような熱可塑性樹脂は単独又は組み合わせて用いられ、通常窒素、酸素、ハロゲン、硫黄、又はハロゲン又は酸性基等の芳香族官能基と相互作用できる他の基を含む。好適な熱可塑性樹脂は、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリアクトン、ポリアセタール、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ASB)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル樹脂(SAN)、スチレン無水マレイン酸樹脂(SMA)、芳香族ポリケトン(PEEK、PED、及びPEKK)、エチレンコポリマー樹脂(EVA又はEVOH)及びこれらの混合物からなる群より選択される。
【0039】
好適なポリマー(ナイロン)はポリマー鎖中に繰り返しているアミド単位の有するコポリマー又はターポリマーを含む、結晶性又は樹脂性、高分子量固形ポリマーを含む。ポリアミドは、カプロラクタム、ピロリドン、ラウリルラクタム、及びアミノウンデカンラクタム又はアミノ酸等の1つ以上のエプシロンラクタムの重合により生成され、又は二塩基酸及びジアミンの宿業により生成される。繊維状及び成形グレードのナイロンも好適である。そのようなポリアミドの例としては、ポリカプロラクタム(ナイロン−6)、ポリラウリルラクタム(ナイロン−12)、ポリヘキサエチレンアジパミド(ナイロン−6,6)、ポリヘキサメチレンアザラミド(ナイロン−6,9)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン6,10)、ポリヘキサメチレンイソフタラミド(ナイロン−6、IP)、及び11−アミノウンデカン酸(ナイロン−11)の縮合生成物がある。商業的に入手可能なポリアミドは本発明の実施に用いられ、160℃乃至260℃の間の軟化点又は融点を有するように調製された直鎖結晶性ポリアミドである。
【0040】
用いられる好適なポリエステルは、無水物の脂肪族又は芳香族ポリカルボン酸の1つ又は混合物と、ジオールの1つ又は混合物との重合反応生成物を含む。飽和ポリエステルの例としては、ポリ(トランス−1,4−シクロヘキシレン コハク酸)及び ポリ(トランス−1,4−シクロヘキシレン アジペート)等のポリ(トランス−1,4−シクロヘキシレンC2−6アルカンジカルボキシレート;ポリ(cis−1,4−シクロヘキサンジメチレン)オキシレート及びポリ−(cis−1,4−シクロヘキサンジメチレン)スクシニレート等のポリ(cis又はトランス−1,4−シクロヘキサンジメチレン)アルカンジカルボキシレート;ポリエチレンテレフタレート及びポリテトラムエチレン−テレフタレート等のポリ(C2−4アルキレンテレフタレート);ポリエチレンイソフタレート及びポリテトラムエチレン−イソフタレート等のポリ(C2−4アルキレンイソフタレート)等がある。好適なポリエステルはナフタレン酸又はフタレン三量体等の芳香族ジカルボン酸、及びポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレート等のC乃至Cジオール由来である。好適なポリエステルは160℃乃至260℃の融点を有するものである。
【0041】
本発明に用いても良いポリ(フェニレンエーテル)(PPE)樹脂はよく知られている、商業的に入手可能な物質であり、アルキル置換されたフェノールの酸化カップリング重合により生成される。それらは通常直鎖、アモルファスポリマーであり、190℃乃至235℃の範囲のガラス転位温度を有する。
【0042】
本発明に有用なエチレンコポリマー樹脂は、カルボン酸自体のほかに、低級カルボン酸の不飽和エステルとエチレンとのコポリマーを含む。特に、エチレンと、ビニルアセテート又はメチルアクリレート及びエチルアクリレート等のアルキルアクリレートとのコポリマーを用いることができる。これらのエチレンコポリマーは通常約60乃至約99%のエチレン、好ましくは約70乃至95wt%のエチレン、より好ましくは約75乃至約90%のエチレンを含む。本明細書で用いる「エチレンコポリマー樹脂」の表現は、エチレンと、低級カルボン酸(C1乃至C4)及び酸自体;例えば、アクリル酸、ビニルエステル又はアルキルアクリレート、とのコポリマーを通常意味する。EVAとEVOHの両方を含むことも意図する。これは、エチレンビニルアセテートコポリマー、及びそれらの加水分解物の一部のエチレンビニルアルコールを意味する。
熱可塑性エラストマー組成物
【0043】
少なくとも1つの前述のエラストマーと少なくとも1つの前述の熱可塑性物質をブレンドして動的に加硫されたアロイを形成する。本明細書で用いる「動的に加硫」の語は、高剪断及び高温の条件下で、熱可塑性物質の存在下で、加硫可能なエラストマーが加硫される加硫プロセスを意味する。この結果、加硫可能なエラストマーは同時に架橋され、好ましくは熱可塑性物質内に「ミクロゲル」の細かいミクロン以下のサイズの粒子として分散される。得られた物質はしばしば動的に加硫されたアロイ(DVA)といわれる。
【0044】
動的加硫は、ロールミル、Banbury(商標)ミキサー、連続ミキサー、混練又は混合押出し成形器、例えば、二軸押出成形器中の、エラストマーの硬化温度又はそれ以上の温度、及び熱可塑性物質成分の融点以上もの温度における成分の混合により影響される。動的に硬化された組成物の独特の特徴は、エラストマー成分が十分に加硫されているにもかかわらず、この組成物は押出し成形、射出成形、圧縮成形等の従来の熱可塑性加工技術により処理及び再処理することができることである。スクラップ又はフラッシングも回収して再利用することができる。当業者はエラストマー性ポリマーだけを含む従来の弾性熱硬化性スクラップは、加硫されたポリマーの架橋性質により容易に処理することができないことを理解している。
【0045】
好ましくは、この熱可塑性樹脂は、ポリマーブレンドに基づいて、約10乃至98wt%、好ましくは約20乃至95wt%の範囲の量で存在する。エラストマーは(ポリマーブレンドに基づいて)約2乃至90wt%、好ましくは約5乃至80wt%の範囲の量で存在する。
【0046】
このエラストマーは組成物中に、1つ以上の態様において、90wt%までの範囲で存在し、他の態様においては50wt%まで、他の態様において、40wt%まで、更なる態様において、30wt%まで、の量で存在する。更なる態様において、このエラストマーは少なくとも2wt%、他の態様において、少なくとも5wt%、更なる態様において、少なくとも5wt%、及び更なる態様において、少なくとも10wt%存在する。好適な態様は、前述の任意の上限のwt%と任意の下限のwt%の任意の組み合わせを含む。
【0047】
DVAの調製において、他の物質はブレンダー中でエラストマー及び熱可塑性物質が組み合わされる前に、エラストマー又は熱可塑性物質のいずれかとブレンドされるか、あるいは熱可塑性物質及びエラストマーが既に導入されている間又はその後にキミサーに添加してもよい。これらの他の物質は、DVAの調製を助けるために又はDVAの所望の物理的性質を提供するために添加される。そのような追加的な物質は、硬化剤、相溶剤、増量剤、及び可塑剤を含むがこれらに限定されない。
【0048】
本開示発明のエラストマーに関して、「加硫された」又は「硬化」の意味はエラストマーのポリマー鎖の間の結合又は架橋を形成する化学反応を意味する。エラストマーの硬化は硬化剤及び/又は促進剤の取込により達成され、そのような添加剤の混合物全体を硬化システム又は硬化剤パッケージという。
【0049】
好適な硬化剤分は、硫黄、金属酸化物、有機金属化合物、ラジカル開始剤を含む。一般的な硬化剤は、ZnO、CaO、MgO、Al、CrO、FeO、Fe、及びNiOを含む。これらの金属酸官能化物はステアリン酸金属酸化物(例えば、Zn、Ca、Mg、及びAlのステアリン酸塩)と、あるいはステアリン酸又は他の有機酸、並びに硫黄化合物、アルキル又はアリール過酸化化合物、又はジアゾフリーラジカル開始剤のいずれかと一緒に用いることができる。過酸化物を用いる場合、本分野で通常用いられている過酸化共同剤を用いる。熱可塑性樹脂が、過酸化物の存在により熱可塑性樹脂が架橋するものである場合、過酸化物硬化剤は用いない。
【0050】
既に記載したように、反応促進剤(硬化促進剤としても知られている)は硬化剤に添加され、硬化剤パッケージを形成する。好適な硬化促進剤は、アミン、グアニジン、チオウレア、チアゾール、チウラム、スルフェンアミド、スルフェンイミド、チオカルバメート、キサンタン等含む。多くの促進剤が本分野で知られており、ステアリン酸、ジフェニルグアニジン(DPG)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、4,4’−ジチオジモルフォリン(DTDM)、テトラブチルチウラムジスルフィド(TBTD)、2,2’−ベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、ヘキサメチレン−1,6−ビスチオフルフェートの2ナトリウム塩、2−(モルフォニノチオ)ベンゾチアゾール(MBS又はMOR)、90%MOR及び10%MBTSの組成物(MOR90)、N−3級ブチル2−ベンゾチオアゾールスルフェンアミド(TBBS)、及びN−オキシジエチレンチオカルバミル−N−オキシジエチレンスルホンアミド8OTOS)、ジンク2−エチルヘキサノエート(ZHE)、N,N’−ジエチルチオウレアを含むがこれらに限定されない。
【0051】
本発明の1つの態様において、少なくとも1つの硬化剤、好ましくは酸化亜鉛、は通常約0.1乃至約15phr、あるいは約0.5乃至約10phr、又は約1.0乃至2.0phr存在する。
【0052】
DVAの態様において、熱可塑性物質ドメイン中の個々の(分散された)粒子として存在するエラストマーの最終目的に応じて、硬化剤成分の添加と成分の熱プロファイルを調節して、正確な形状を確実に開発する。従って、もしDVAの調製において複数の混合工程がある場合、硬化剤はエラストマーのみを調整する初期の工程の間に添加される。代替的に、この硬化剤はエラストマー及び熱可塑性樹脂を組み合わせる直前に添加される。又は熱安定性物質が融解されゴムと混合された後に添加してもよい。連続している熱可塑性物質のマトリックス中の不連続なゴム粒子の形状が好適な形状であるが、本発明はこの形状のみに限定されることはなく、エラストマーと熱可塑性物質の両方が連続相である形態も含む。ゴム粒子の内側に熱可塑性物質を更に含ませることもあってよい。
【0053】
DVA中の熱可塑性樹脂及びエラストマーの可溶性における違いにより、相溶剤も用いられる。そのような相溶剤は組成物のゴム及び熱可塑性成分の間の表面張力を修飾、特に減らすことにより機能すると考えられている。好適な相溶剤は、エチレン(付加により)不飽和されたニトリルー共役ジエンベース高飽和コポリマーゴム(HNBR)、エポキシ天然ゴム(ENR)、アクリレートゴム、及びこれらの混合物、並びに熱可塑性樹脂又は熱安定性ポリマーと同じ構造を有するか、熱可塑性樹脂又はエラストマーと反応することができる、エポキシ基、カルボニル基、ハロゲン基、アミン基、マレイン酸基、オキサゾリン基、又はヒドロキシル基を有するコポリマーの構造を有するコポリマーを含む。
【0054】
相溶剤の量は、エラストマーの総重量100重量部に基づいて、通常約0.5乃至約10重量部、好ましくは約3乃至約8重量部である。
【0055】
混合及び/又は処理工程の間のエラストマーと熱可塑性樹脂成分との間の粘度の差を最小にする事は、混合を均一にし、所望の透過性のほかに、良好なブレンドメカニカルを有意に高める細かい(良好な)ブレンド形態となる。しかしながら、エラストマー性質ポリマーが本来持つ流れ性質及び剪断減粘性の結果として、高温でのエラストマー性ポリマーの低められた粘度の値及び混合間に生じる剪断速度はエラストマーがブレンドされたものを有する熱可塑性成分の粘度を低めるよりも顕著である。物質間の粘度の差を減らすことが、許容可能なエラストマーの分散サイズを有するDVAを得るために好ましい。
【0056】
エラストマーと熱可塑性成分の間の粘度を適合させるために、以前より用いられていた成分は低分子量ポリアミド、10,000以上の分子量オーダーを有する無水マレイン酸グラフトポリマー、メタクリレートコポリマー、3級アミン及び2級ジアミンを含む。例としては、無水マレイン酸エチレンエチルアクリレートコポリマー(JIS K6710で測定される溶融流量が7g/10分であるAR−210として三井―DuPontから入手可能な固形ゴム物質)及びブチルベンジルスルホンアミド(BBSA)を含む。これらの化合物はエラストマー/熱可塑性化合物中の熱可塑性物質の「効果的な」量を高めるために機能する。添加剤の量を選択してDVAの性質にその影響を与えずに所望の粘度比較を達成することができる。量が多すぎると、不透過性が減少し、余剰分は後処理の間にとり除かれなければならない。相溶剤の量が不十分であると、このエラストマーは相を反転して熱可塑性樹脂マトリックス中に分散された相とならなくなる。
【0057】
本発明において、ことのほか、DVAについての可塑剤又は粘度修飾剤として、従来の相溶剤又は可塑剤の替わりに無水グラフトオリゴマーを採用することで既知の相溶剤の制約を減少させることができる。無水種、無水マレイン酸及び無水コハク酸種の両方は、本発明の組成物中に用いられた熱可塑性物質に対して親和性があり、相溶性がある。この無水物は熱可塑性物質と混和性があるか、十分な相溶性があり、理論に拘束されることは意図しないけれども、無水物は熱可塑性物質中の任意の末端アミンについて、スカベンジャーとしても作用するので、熱可塑性物質に無水コハク酸が結合して、ほかの可塑剤及び相溶剤の使用を減らすこととなると信じられている。グラフト反応の結果として、無水官能化オリゴマーはDVA中に固定され、フィルムブロー又はタイヤ硬化等のDVAの後処理工程の間に、従来の可塑剤/相溶剤の様に揮発することがない。従って、得られたDVAは揮発性化合物の放出が少ない。このことは、熱可塑性物質を用いた時に最も顕著であると信じられている。更に、ポリアミド熱可塑性相の融点が、熱可塑性物質の融点を不利に押し下げるn−ブチルベンゼンスルホンアミド等のポリアミド熱可塑性物質についての従来の可塑剤とは反対に、無水物を用いた場合に変らないことは驚くべきことである。
【0058】
無水マレイン酸及び無水コハク酸の両方(両芳香族無水物)は本発明に有用である。好適な無水物は、置換無水コハク酸であり、この置換はアルキル、アリール、又はアルケニルでよい。この置換された無水コハク酸は無水マレイン酸とアルキル、アリール、又はオレフィンを反応させる当分野で知られている熱又は塩化方法により、調製してもよい。無水マレイン酸又は無水コハク酸と反応する低級オレフィンのコポリマーを含むオリゴマーは約500乃至5000、あるいは約750乃至2500、あるいは約500乃至1500の範囲の分子量を有する。このオリゴマーは1000乃至5000、800乃至2500、又は750乃至1250の範囲の分子量を有していてもよい。置換された無水コハク酸の具体的な例としては、ポリイソブチレンコハク酸無水物、n−オクチルコハク無水酸物、n−ヘキシルコハク酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物を含む。
【0059】
本発明についての最も好適な無水官能化オリゴマーはポリイソブテン由来のものであり、ポリイイソブチレン無水コハク酸又はポリイソブテン無水コハク酸(PIBSA)として一般的に知られているものである。このPISBAはボロントリスルフィドを触媒として、イソブテンのカチオン重合により生成される。重合の過程において、高濃度のオレフィンが移行反応の間に形成され、その結果として重合生成物が末端二重結合(α−オレフィン)の割合が高くなる。それらは、通常、透明ないし琥珀色の粘性のある液体であり、特に、重合後のマレイン化反応の間に最適化(利用)され、ビスマレイン化物を少なくする。PIBSAの無水レベルは変更することができ、好ましい範囲は、数パーセント乃至約30wt%、好ましくは5乃至25wt%、及びより好ましくは7乃至17wt%、最も好ましくは9乃至15wt%である。
【0060】
無水コハク酸は、DVA中に約2phr、5phr、又は10phrの最小量から15phr、20phr、25phr、30phr又は35phrまでの最大量の範囲の量で存在する。無水コハク酸の範囲は、前述の任意の下限値から前述の任意の上限値まで変動してよく、無水コハク酸の量はこのいずれかの範囲内である。
【0061】
無水コハク酸は、ポリアミドベースDVA化合物にこれまで用いられていたブチルベンゼンスルホンアミド又は他のスルホンアミド等の可塑剤又は可塑剤の一部を置き換えることができる。無水コハク酸が可塑剤の一部を置き換える場合、置換の量はDVAを調整するのに必要とされる可塑剤の量を超えない。無水コハク酸と可塑剤の総量は約2phr、約5phr、又は10phrの最小量から、15phr、20phr、25phr、30phr、又は35phrの最大量の範囲内である。
【0062】
好適な態様において、無水コハク酸及び可塑剤はDVA中に0.15乃至3.0の比の範囲内で存在する。他の態様において、この比は0.15乃至1.50である。他の態様において、可塑剤に対する無水コハク酸ポリイソブチレンの比は約0.30乃至1.50である。
【0063】
他の好適な態様において、このDVAは実質的に如何なるアクリレートも含まない。実質的に含まないとは、このDVAが0.5phr未満のアクリレートを含むか、好ましくはアクリレートを含まないことを意味する。
【0064】
従って本願発明は以下の態様を提供する:
A:a)少なくとも1つのイソブチレン含有エラストマー
b)少なくとも1つの熱可塑性樹脂、及び
c)無水官能化オリゴマーを含み、
前記熱可塑性樹脂の連続相中の、小さな加硫された又は部分的に加硫された粒子の分散相として前記エラストマーが存在する、動的に加硫されたアロイ。
B:前記オリゴマーがアルキル、アリール、又はアルケニルオリゴマーからなる群より選択される、Aに記載のアロイ。
C:
前記オリゴマーが500乃至5000の範囲の分子量である、A又はBに記載のアロイ。
D:
前記無水官能化部分が、無水コハク酸又は無水マレイン酸である、A、B、及びCのいずれか1項に記載のアロイ。
E:
前記無水官能化オリゴマーがポリ−n−アルキル無水コハク酸、又はポリ−イソ−アルキル無水コハク酸である、A乃至Dのいずれか1項に記載のアロイ。
F:
前記官能化オリゴマーがポリイソブチレン無水コハク酸、ポリイソブテン無水コハク酸、ポリブテン無水コハク酸、ポリイソペンテン無水コハク酸、ポリペンテン無水コハク酸、ポリオクテン無水コハク酸、ポリイソオクテニルコハク酸無水物、ポリヘキセニルコハク酸無水物、及びポリドデセニルコハク酸無水物からなる群より選択される、A乃至Eのいずれか1項に記載のアロイ。
G:
アロイ中のイソブチレン含有エラストマーの量に基づいて、2乃至35phrの無水官能化オリゴマーを含む、A乃至Fのいずれか1項に記載のアロイ。
H:
前記アロイが更に可塑剤を含み、前記可塑剤がポリアミド、3級アミン、2級ジアミン、エステル、及びスルホンアミドからなる群より選択される、A乃至Gのいずれか1項に記載のアロイ。
I:
前記アロイがあらゆるアクリルエステルを実質的に含まない、A乃至Hのいずれか1項に記載のアロイ。
J:
前記エラストマーがハロゲン化ブチルゴムである、A乃至Iのいずれか1項に記載のアロイ。
K:
前記エラストマーがイソブチレンとアルキルスチレンとのコポリマーである、A乃至Jのいずれか1項に記載のアロイ。
L:
前記エラストマーがイソブチレンとパラメチルスチレンとのコポリマーであり、任意でハロゲン化されている、A乃至Kのいずれか1項に記載のアロイ。
M:
前記熱可塑性樹脂がポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリラクトン、ポリアセタール、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル樹脂、スチレン無水マレイン酸樹脂、芳香族ポリケトン、エチレンビニル酢酸、エチレンビニルアルコール、及びこれらの混合物からなる群より選択される、A乃至Lのいずれか1項に記載のアロイ。
N:
前記エラストマーがアロイ中に2乃至90wt%の範囲の量で存在する、A乃至Mのいずれか1項に記載のアロイ。
【0065】
【実施例】
【0066】
方法を表1にまとめる。
【0067】
可能であれば、標準的なASTM試験を用いてDVAの物理的性質を測定した。(表1参照
)。応力/歪み性質(引張強度、破断点伸び、モジュラス値、破断点エネルギー)はInston(商標)4204を用いて室温で測定した。応力測定は室温で、0.16インチ(0.41cm)の幅と0.75インチ(1.91cm)の長さ(2つのタブの間の)試験片(ドッグボーンシェイプ)を用いて行った。この試験片の厚みの変化はA Mahr Federal Inc.厚みゲージで手動で測定した。この試験片を20インチ/分(51cm/分)のクロスヘッド速度で引張、応力/歪みデータを記録した。少なくとも3つの試験片について、応力/ゆがみ値の平均値を報告する。ショアA硬度は15秒刊行物の押し込みの後に、Zwick Durometerを用いて室温で測定した。LCR年度は1200l/s、200℃、30/1 L/D(長さ/直径)で、Dynisco(商標)キャピラリーレオメーターで測定した。融点は10/分で示差走査熱量計で測定した。
【表1】

【0068】
表3の比較例DVA、AとB及び本発明により製造した実施例のDVAを調製してサンプルとした。サンプル中に用いた化合物は以下の表2に定義されている。本発明の実施リンカーエラストマーのためのPIBSAフォームは実施例に用いたものに限定されない。特に、開始PIBSAの分子量によりPIBSAの粘度が高い場合には、オイル中に希釈される他の市販品も用いることができる。混合装置に容易に分注でき、それらの取込及び混合を促進させるためにこのPIBSAを加熱した。
【表2】

【0069】
比較例サンプルA以外は、エラストマーの量、ポリアミド、安定剤ブレンド、及び硬化剤は全てのサンプルにおいて同じである。安定剤ブレンドは0.48phrの量で存在し、それぞれのDVAについての硬化剤は0.15phrの酸亜鉛、0.30phrのステアリン酸亜鉛、及び0.65phrのステアリン酸からなり、全部で1.58phrである。比較サンプルAについて、エラストマーの量のみを多くして比較例Bを同様なphrにした。以下で同定する各実施例について、DVAは同じように85cmのBrabender(商標)ミキサーを用いて調製した。比較例及び実施例のDVAサンプルを試験して、物理的性質を測定した。組成物及び試験結果を以下の表3に示す。
【0070】
相溶剤、mEEAの全量を無水コハク酸ポリイソブチレンで置き換え、可塑剤の量を変えない場合、DVAの強度性質、ショアA硬度と極限引っ張り強度、は改善された。10%モジュラスの増加及び最大歪みから、DVAの弾性性質も改善された。LCRで測定される物質の粘性性質は5phrのPIBSAでは有意に改善されなかったけれども、10phrPIBSAでは粘度が有意に低下した。これらのDVAについて、フィルム又は部品を作る成形操作が、物質の改善された流動性により改善されるので、粘度を低くして流動性が高くなることは好ましい特性である。
【表3】

【0071】
DVAの好ましい性質に対して改善された性質を得るとともに、本発明は可塑剤の低減について研究した。実施例3において見られるように、1/2官能性にとり可塑剤を少なくすると、DVAの硬度性質を減少させ、10%モジュラス値を改善し、DVAの最大歪みにだけ負の影響を与える。可塑剤を更に少なくしたデータは可塑剤をほぼ完全に除去するとDVAの弾性性質に不利に影響することを示している。本発明のサンプルの融解粘度は比較サンプルに対して低くなった。この事は押出し成形又はフィルムブロー成形登録商標の成形操作の間の生成物の加工性、布加工性、ドレープ性について、改善されかつ追及されてきた特性である。
【0072】
無水分反応の前に分子量1,000のオレフィンを含む第二PIBSAも試験した。組成物及び結果を表4に示す。
【表4】

【0073】
比較例DVAのBに対する比較において、実施例6のDVAはショアA硬度及び極限引張強度の改善された固形状態強度性質及び粘度におけるわずかな減少の改善された弾性性質を示した。融解状態における物質の流動性が改善されていることを示しているので、粘度が減少することは有利である。
【0074】
PIBSA1と同様にPIBSA2の使用も物質の性質に影響しないで、可塑剤の使用量を減少することができた。
【0075】
可塑剤の減少及び無水コハク酸ポリイソブチレンオリゴマーの包含の限界を解析するために、更に実施例10乃至13を調製した。可塑剤と同僚のPIBSAを含む実施例DVAを比較した。ショアA硬度と極限引張粘度性質は同様であった。PIBSAの量が多いと、LCR年度が低くなった。これらの性質もDVAに好ましいものであった。
【0076】
可塑剤に対するPIBSAの比を有意に高めて、可塑剤を更に少なくすると、10%モジュラスは更に低くなる。この事は可塑剤を少なくする事の限界が近いことを示す。
【0077】
DVAについて、アロイ中の無水コハク酸ポリマーの置換により、固形状態の強度性質を維持しつつ、LCR粘度における各種減少により測定さあれるDVAの流動性が好ましく改善された。ショアA硬度が少なくとも70、最も好ましくは75であることも好ましい。
【0078】
本発明の組成物は数多くの製品に用いることができる。1つの態様において、この製品はタイヤ硬化ブラダー、タイヤライナー、タイヤインナーチューブ、及びエアスリーブから選択される。他の態様において、この製品はホース又はポリアミド、特にポリアミド12を層の成分の1つとして含む、多層ホースである。本発明の組成物を用いて作ることができる他の有用な物品はエアスプリングラダー、シール、成形品、ケーブルハウジング、及びTHE VANDERBILT RUBBER HANDBOOK, P 637-772 (Ohm, ed., R.T. Vanderbilt Company, Inc. 1990) に記載の製品を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも1つのイソブチレン含有エラストマー
b)少なくとも1つの熱可塑性樹脂、及び
c)無水官能化オリゴマーを含み、
前記熱可塑性樹脂の連続相中の、小さな加硫された又は部分的に加硫された粒子の分散相として前記エラストマーが存在する、動的に加硫されたアロイ。
【請求項2】
前記オリゴマーがアルキル、アリール、又はアルケニルオリゴマーからなる群より選択される、請求項1に記載のアロイ。
【請求項3】
前記オリゴマーが500乃至2500の範囲の分子量である、請求項1又は2に記載のアロイ。
【請求項4】
前記無水官能化部分が、無水コハク酸又は無水マレイン酸である、請求項1、2、及び3のいずれか1項に記載のアロイ。
【請求項5】
前記無水官能化オリゴマーがポリ−n−アルキル無水コハク酸、又はポリ−イソ−アルキル無水コハク酸である、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のアロイ。
【請求項6】
前記官能化オリゴマーがポリイソブチレン無水コハク酸、ポリイソブテン無水コハク酸、ポリブテン無水コハク酸、ポリイソペンテン無水コハク酸、ポリペンテン無水コハク酸、ポリオクテン無水コハク酸、ポリイソオクテニルコハク酸無水物、ポリヘキセニルコハク酸無水物、及びポリドデセニルコハク酸無水物からなる群より選択される、選択される1乃至5のいずれか1項に記載のアロイ。
【請求項7】
アロイ中のイソブチレン含有エラストマーの量に基づいて、2乃至35phrの無水官能化オリゴマーを含む、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のアロイ。
【請求項8】
前記アロイが更に可塑剤を含み、前記可塑剤がポリアミド、3級アミン、2級ジアミン、エステル、及びスルホンアミドからなる群より選択される、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のアロイ。
【請求項9】
前記アロイがあらゆるアクリルエステルを実質的に含まない、請求項1乃至8のいずれか1項に記載のアロイ。
【請求項10】
前記エラストマーがハロゲン化ブチルゴムであるか、又はイソブチレンとアルキルスチレンとのコポリマーである、請求項1乃至9のいずれか1項に記載のアロイ。
【請求項11】
前記エラストマーがイソブチレンとパラメチルスチレンとのコポリマーであり、任意でハロゲン化されている、請求項1乃至10のいずれか1項に記載のアロイ。
【請求項12】
前記熱可塑性樹脂がポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリラクトン、ポリアセタール、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル樹脂、スチレン無水マレイン酸樹脂、芳香族ポリケトン、エチレンビニル酢酸、エチレンビニルアルコール、及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項1乃至11のいずれか1項に記載のアロイ。
【請求項13】
前記エラストマーがアロイ中に2乃至90wt%の範囲の量で存在する、請求項1乃至12のいずれか1項に記載のアロイ。

【公表番号】特表2013−502506(P2013−502506A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−526758(P2012−526758)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【国際出願番号】PCT/US2010/041689
【国際公開番号】WO2011/025593
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(599134676)エクソンモービル・ケミカル・パテンツ・インク (301)
【Fターム(参考)】