説明

エルボ型配管カバー

【課題】屈曲角度を変更自在にしながらも、製造コストと外観の両面で優れ、且つ、収納される配管類に生じる屈曲負荷の変化も少ないエルボ型配管カバーを提供する。
【解決手段】軸芯方向の中間部が弧状軸心線を有する湾曲形状に構成されたエルボ型配管カバー2を構成するアウター半体3とインナー半体4とから構成され、弧状軸心線の長さの異なる複数の配管類被覆姿勢を現出可能なように、インナー半体4のベース部材7の一端側をアウター半体3のベース部材5の一端側に表側から重ねた取付け姿勢で両ベース部材5、7を弧状軸心線に沿って一定範囲内でスライド自在な状態で係合可能な係合手段9が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、冷媒管やドレンホース等の配管類を被覆する複数種の配管カバーを壁面等の被取付け面に沿う配管類配設ルートに沿って配設する配管カバー構造において配管類配設ルートの曲がり部に配設されるエルボ型配管カバーに関し、特に、配管類配設ルートの曲がり部の角度の変化に対応して全体の曲がり角度を変更自在にする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のエルボ型配管カバーとしては、軸芯方向(配管配設方向)の一端側のアウター半体と他端側のインナー半体とを両部材間に形成した枢支点周りの一定範囲内で回動自在に構成し、この一定範囲内での両者の相対回動によりカバーの曲がり角度を変更可能に構成したものがある(下記特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−74276号公報
【特許文献2】特開平9−166337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記従来の技術では、カバーの曲がり角度に係わらずアウター半体とインナー半体との間に隙間が生じないようにするのに、内側となるインナー半体の左右の側壁部を前記枢支点周りの半径の小さな弧状壁部に構成する必要があるため、曲がり角度の変更範囲を広くする場合には、構造上、インナー半体の弧状壁部の先端が配管収納スペースとなるカバー内方側に突出することになる。
【0005】
よって、曲がり角度の変更範囲を広くする場合、配管収納スペースを確保するためにインナー半体とアウター半体との接続部をインナー半体の弧状壁部の先端が配管収納スペースに突出する分だけ幅方向で大きくしなければならず、そのため、製造コストが嵩み、且つ、外観も不恰好になる不都合がある。
【0006】
また、インナー半体とアウター半体の接続部の回動により曲がり角度を変更するのに伴って収納される配管類の屈曲半径も変化させなければならないため、例えば、カバーの曲がり角度を大きくした場合には配管類を小さな屈曲半径で曲げることなって、そのことで、配管類の破損や耐用年数の減少等の不都合を招く虞もある。
【0007】
本発明は、上述の実状に鑑みて為されたものであって、その主たる課題は、曲がり角度が変更自在でありながら、製造コストと外観の両面で優れ、且つ、収納される配管類の破損や耐用年数の減少等の不都合も生じ難いエルボ型配管カバーを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1特徴構成は、配管類の曲がり部を被覆可能なように軸心方向中間部が弧状軸心線を有する湾曲形状に構成されているエルボ型配管カバーであって、
一端側が前記弧状軸心線と同じ曲率の軸心線を有する湾曲形状に構成されたアウター半体と、一端側が前記弧状軸心線と同じ曲率の軸心線を有する湾曲形状で且つ前記アウター半体の一端側に内挿可能な外形寸法に構成されたインナー半体とから構成されているとともに、
前記インナー半体と前記アウター半体の各々が、被取付け面に対する取付け部を備えたベース部材と、該ベース部材に取付け可能な蓋部材とから構成され、
前記弧状軸心線の長さの異なる複数の配管類被覆姿勢を現出可能なように、前記インナー半体のベース部材の一端側を前記アウター半体のベース部材の一端側に表側から重ねた被取付け面に対する取付け姿勢において、前記インナー半体のベース部材と前記アウター半体のベース部材とを前記弧状軸心線に沿って一定範囲内でスライド自在な状態で係合可能な係合手段が設けられている点にある。
【0009】
つまり、上記構成によれば、前記インナー半体のベース部材と前記アウター半体のベース部材との一定範囲内でのスライド移動によって、インナー半体のベース部材とアウター半体のベース部材とを所望の配管類被覆姿勢を現出するための姿勢にすることができ、被取付け面に対する両ベース部材の取付け操作、配管類の配設操作、両ベース部材への両蓋部材の取付け操作を経て、所望の配管類被覆姿勢で配管類を被覆することができる。
【0010】
すなわち、上記構成によれば、インナー半体のベース部材とアウター半体のベース部材との一定範囲内でのスライド移動によって全体の曲がり角度を変更するから、曲がり角度を大きくした場合でも、先述の従来技術のようにインナー半体の弧状壁部の先端が配管収納スペースに突出する不都合を不存とすることができ、これにより、幅方向での寸法を極力小さくすることが可能になって、製造コストと外観の双方で優れたものとすることができる。
【0011】
しかも、前記係合手段によってインナー半体のベース部材とアウター半体のベース部材とのスライド移動が一定範囲内に保たれるから、例えば、一定量を超えるスライド操作によって両ベース部材が分離するなどの不具合を効果的に抑止することができる。
【0012】
また、軸芯方向中間部の弧状軸心線の長さを変更する形態で曲がり角度を変更するから、曲がり角度を大きくした場合でも配管類の屈曲半径はそのまま維持することができ、これにより、小さな屈曲半径に曲げられることに原因する配管類の破損や耐用年数の減少等の不都合も確実に防止することができる。
【0013】
本発明の第2特徴構成は、前記係合手段が、前記取付け姿勢でインナー半体のベース部材とアウター半体のベース部材とを前記弧状軸心線に沿って一定範囲内でスライド自在な状態で連結する連結手段から構成されている点にある。
【0014】
上記構成によれば、目標の曲がり角度となる配管類被覆姿勢を現出する相対姿勢で両ベース部材を被取付け面に取付けるのに、前記連結手段によって両者を分離しない状態に保つことができるから、その分、両ベース部材の被取付け面への取付け操作の容易化を図ることができる。
【0015】
本発明の第3特徴構成は、前記連結手段が、前記インナー半体のベース部材の一端側と前記アウター半体のベース部材の一端側の一方にそれの軸心線又はそれに平行する線に沿って延設されたスライドガイド孔と、
前記インナー半体のベース部材の一端側と前記アウター半体のベース部材の一端側の他方に前記取付け姿勢でスライドガイド孔内に入り込む状態に形成された凸部とから構成されているとともに、
前記凸部の先端側には、前記スライドガイド孔に基端側を入り込ませた状態でスライドガイド孔の表側でスライドガイド孔の溝幅よりも外方に張り出してスライドガイド孔からの外れを阻止する外れ止め用の拡大頭部が形成されている点にある。
【0016】
上記構成によれば、簡素な構造でありながら、前記スライドガイド孔と前記凸部の基端側との係合によって両ベース部材のスライド移動を案内することができるとともに、スライドガイド孔と凸部の拡大頭部との外れ止め作用によって両ベース部材を連結することができる。
【0017】
本発明の第4特徴構成は、前記アウター半体のベース部材の一端側の内幅寸法が、前記インナー半体のベース部材の一端側の外幅寸法と同幅又は略同幅に構成され、
前記スライドガイド孔には、前記インナー半体のベース部材又はアウター半体のベース部材或いはそれら両ベース部材を弾性的に変形させた状態で前記拡大頭部の通過が可能なうように、連結操作用の拡大孔部が前記取付け姿勢では前記拡大頭部と位置ズレする状態で形成されている点にある。
【0018】
つまり、上記構成によれば、インナー半体のベース部材又はアウター半体のベース部材或いはそれら両ベース部材を弾性的に変形させなければ、前記拡大孔部に前記拡大頭部を通過させて両ベース部材の連結を解除することができないから、例えば、両ベース部材のスライド移動操作中に両ベース部材の連結が不測に解除されたりする不具合を両ベース部材の構造を利用する形態で効率的に抑止することができる。
【0019】
本発明の第5特徴構成は、前記インナー半体のベース部材と前記アウター半体のベース部材とが前記係合手段による係合状態での前記スライド操作によって所定相対姿勢になったとき、その所定相対姿勢に対する姿勢保持力を付与する位置決め手段が設けられている点にある。
【0020】
上記構成によれば、前記位置決め手段による姿勢保持力によって、両ベース部材を所定姿勢にするためのスライド操作、及び、両ベース部材を所定姿勢で被取付け面に取付けるための取付け操作の双方を容易にすることができる。
【0021】
本発明の第6特徴構成は、前記位置決め手段が、複数の前記所定相対姿勢の各々で姿勢保持力を付与するように構成されている点にある。
【0022】
上記構成によれば、設置場所等によって複数の所定姿勢から何れかが選択される場合でも、複数の所定姿勢の夫々に対応して、両ベース部材を所定姿勢にするためのスライド操作、及び、両ベース部材を所定姿勢で被取付け面に取付けるための取付け操作の双方を容易にすることができる。
【0023】
本発明の第7特徴構成は、前記インナー半体のベース部材、又は、前記アウター半体のベース部材、或いは、それら両ベース部材には、前記位置決め手段による複数の姿勢保持位置の各々での曲がり角度を示す角度表示部が設けられている点にある。
【0024】
上記構成によれば、角度表示分によって両ベース部材の姿勢から決定される最終的な曲がり角度を蓋部材の取付け前から把握することができ、蓋部材の取付け後に曲がり角度の誤りが発覚して両ベース部材の取付け操作からやり直す等の不都合を抑止することができる。
【0025】
本発明の第8特徴構成は、前記位置決め手段が、前記アウター半体のベース部材の一端側の内周面と前記インナー半体の一端側の外周面との間に形成された位置決め凸部と位置決め凹部とから構成され、前記所定相対姿勢になったときに位置決め凸部が位置決め凹部に入り込むように構成されているとともに、
前記位置決め凸部及び前記位置決め凹部の前記弧状軸心線に沿う方向の両端面の各々が曲面形状に構成されている点にある。
【0026】
上記構成によれば、例えば、位置決め凸部と位置決め凹部の前記弧状軸心線に沿う方向の両端面の各々が垂直壁部に構成されている場合に比べ、位置決め凸部と位置決め凹部との入り込み状態から離脱させるための操作力を小さくすることができるから、その分、位置きめ手段による姿勢保持力が両ベース部材のスライド操作の邪魔になる不都合を抑止することができる。
【0027】
本発明の第9特徴構成は、配管類の曲がり部を被覆可能なように軸心方向中間部が弧状軸心線を有する湾曲形状に構成されているエルボ型配管カバーであって、
一端側が前記弧状軸心線と同じ曲率の軸心線を有する湾曲形状に構成されたアウター半体と、一端側が前記弧状軸心線と同じ曲率の軸心線を有する湾曲形状で且つ前記アウター半体の一端側に内挿可能な外形寸法に構成されたインナー半体とから構成されているとともに、
前記弧状軸心線の長さの異なる複数の配管類被覆姿勢を現出可能なように、前記インナー半体の一端側を前記アウター半体の一端側に内挿した姿勢において、アウター半体とインナー半体の一端側どうしを前記弧状軸心線に沿って一定範囲内でスライド自在な状態で係合する係合手段が設けられている点にある。
【0028】
上記構成によれば、インナー半体とアウター半体の一端側どうしの前記弧状軸心線に沿っての一定範囲内でのスライド移動によって全体の曲がり角度を変更するから、曲がり角度を大きくした場合でも、先述の従来技術のようにインナー半体の弧状壁部の先端が配管収納スペースに突出する不都合を不存とすることができ、これにより、幅方向での寸法を極力小さくすることが可能になって、製造コストと外観の双方で優れたものとすることができる。
【0029】
しかも、前記係合手段によってインナー半体とアウター半体との前記のスライド移動が一定範囲内に保たれるから、例えば、一定量を超えるスライド操作によって両半体が分離するなどの不具合を抑止することができる。
【0030】
また、軸芯方向中間部の弧状軸心線の長さを変更する形態で曲がり角度を変更するから、曲がり角度を大きくした場合でも配管類の屈曲半径は維持することができ、これにより、小さな屈曲半径に曲げられることに原因する配管類の破損や耐用年数の減少等の不都合も確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】配管カバー構造の曲がり部を示す説明図
【図2】配管カバー構造の曲がり部を示す説明図
【図3】図1のIII−III線断面図
【図4】図1のIV−IV線断面図
【図5】図1のV−V線断面図
【図6】両ベース部材の連結状態を示す正面図
【図7】両ベース部材の連結状態を示す正面図
【図8】(a)インナー側ベース部材の内面形状を示す正面図、(b)インナー側ベース部材の外面形状を示す背面図
【図9】図8(a)のIX−IX線断面図
【図10】(a)アウター側ベース部材の内面形状を示す正面図、(b)アウター側ベース部材の外面形状を示す背面図
【図11】図10(a)のXI−XI線断面図
【図12】(a)インナー側蓋部材の外面形状を示す正面図、(b)インナー側蓋部材の内面形状を示す背面図
【図13】(a)アウター側蓋部材の外面形状を示す正面図、(b)アウター側蓋部材の内面形状を示す背面図
【図14】両ベース部材の連結方法を示す説明断面図
【図15】配管カバー構造の配設方法を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1、図2は、冷媒管やドレンホース等の配管類Pを被覆する複数種の合成樹脂製等の配管カバーを壁面W(被取付け面の一例)に沿う配管類配設ルートに沿って配設した配管カバー構造の一部を示す。
【0033】
1は、配管類配設ルートの曲がり部において交差姿勢にある直管型配管カバー2どうしを接続する筒状のエルボ型配管カバーであり、このエルボ型配管カバー1は、配管類Pの曲がり部を被覆可能なように軸芯方向中間部が弧状軸心線Cを有する湾曲形状に構成されているとともに、図1、図2に示すように、弧状軸心線Cの長さLの異なる複数の配管類被覆姿勢(すなわち、全体としての曲がり角度αの異なる複数の配管類被覆姿勢)を現出可能に構成されている。なお、図1に示す姿勢は、全体としての曲がり角度αが90度の配管類被覆姿勢であり、図2に示す姿勢は、全体としての曲がり角度αが135度の配管類被覆姿勢を示す。
【0034】
前記エルボ型配管カバー1は、図1〜図13に示すように、一端側が前記弧状軸心線Cと同じ曲率の軸心線c3(具体的には、幅方向外方位置の点を中心とする弧状の軸心線)を有する湾曲形状に構成され、他端側に一方の直管型配管カバー2に対する接続口部3aを備えた筒状のアウター半体3と、一端側が前記弧状軸心線Cと同じ曲率の軸心線c4(具体的には、幅方向外方位置の点を中心とする弧状の軸心線)を有する湾曲形状で且つアウター半体3の一端側に内挿可能な外形寸法(具体的には、アウター半体の内形寸法より僅かに小なる外形寸法)に構成され、他端側に他方の直管型配管カバー2に対する接続口部4aを備えたインナー半体4とから構成されている。
【0035】
なお、インナー半体4の他端側は、最も曲がり角度αの小さな配管類被覆姿勢でアウター半体3の一端側の端面に当接する段部4bを形成するように、アウター半体3の一端側の外形寸法と同じ外形寸法に構成されている。
【0036】
前記アウター半体3は、壁面Wに対する取付け部を備えた横断面略U字状のアウター側ベース部材5と、該アウター側ベース部材5に取付け可能な横断面略U字状のアウター側蓋部材6とから構成されている。
【0037】
アウター側ベース部材5の左右の両側壁部5Bの先端には、アウター側蓋部材6の左右の両側壁部6Bの先端に突出形成された被係合片6bと係合して両部材5、6の相対姿勢を装着姿勢に保持する係合片5bが突出形成されている。
【0038】
また、アウター側ベース部材5の一端側の底壁部5Aの幅方向中間部には、壁面Wに対してビスやネジ等の固定手段21で固定するための取付け孔5a(前記取付け部の一例)が貫通形成されている。
【0039】
アウター側ベース部材5の一端側の両側壁部5Bの近傍位置には、アウター側蓋部材6に貫通形成された取付け孔6dを介してビスやネジ等の固定手段22でアウター側蓋部材6と固定するための被取付け孔5dを備えた被取付け筒部が形成されている。
【0040】
一方、前記インナー半体4は、壁面Wに対する取付け部を備えた横断面略U字状のインナー側ベース部材7と、該インナー側ベース部材7に取付け可能な横断面略U字状のインナー側蓋部材8とから構成されている。
【0041】
前記インナー側ベース部材7の両側壁部7Bの先端には、インナー側蓋部材8の両側壁部8Bの先端に突出形成された被係合片8bと係合して両部材7、8の相対姿勢を装着姿勢に保持する係合片7bが突出形成されている。
【0042】
また、インナー側ベース部材7の一端側の底壁部7Aの幅方向中間部には、壁面Wに対してビスやネジ等の固定手段23で固定するための取付け孔7a(前記取付け部の一例)が貫通形成されている。
【0043】
インナー側ベース部材7の一端側の両側壁部7Bの近傍位置には、インナー側蓋部材8に貫通形成された取付け孔8dを介してビスやネジ等の固定手段24でインナー側蓋部材8と固定するための被取付け孔7dを備えた被取付け筒部が形成されている。
【0044】
そして、前記エルボ型配管カバー1には、前記弧状軸心線Cの長さLの異なる複数の配管類被覆姿勢を現出可能なように、インナー半体側ベース部材7の一端側をアウター側ベース部材5の一端側に表側から重ねた壁面Wに対する取付け姿勢(図6、図7に示す姿勢)において、インナー半体側ベース部材7とアウター半体側ベース部材5とを弧状軸心線Cに沿って一定範囲内でスライド自在な状態で連結可能な連結手段9が設けられている。
【0045】
なお、当該連結手段9は、弧状軸心線Cの長さLの異なる複数の配管類被覆姿勢を現出可能なように、アウター半体3とインナー半体4の一端側どうしを弧状軸心線Cに沿って一定範囲内でスライド自在な状態で係合する係合手段を構成し、また、弧状軸心線Cの長さLの異なる複数の配管類被覆姿勢を現出可能なように、前記取付け姿勢においてインナー半体側ベース部材7とアウター半体側ベース部材5とを弧状軸心線Cに沿って一定範囲内でスライド自在な状態で係合可能な係合手段を構成する。
【0046】
当該連結手段9は、アウター側ベース部材5の底壁部5A一端側の端縁近傍位置に突出形成された連結用の凸部9Aと、インナー側ベース部材7の底壁部7Aの一端側に形成された係合用兼スライド案内用のスライドガイド孔9B(被連結孔の一例)とから構成されている。
【0047】
前記連結用凸部9Aは、アウター側ベース部材5の一端側の軸心線c3上に中心が位置し、且つ、スライドガイド孔9Bの幅寸法と同幅又はそれよりも僅かに小幅に形成された略正方形断面形状の基部9aと、それよりも広幅に形成された略長方形断面の拡大頭部9bとから構成されている。当該基部9a及び拡大頭部9bの各々は、前記軸心線c3上に中心が位置する形態に構成されている。
【0048】
前記スライドガイド孔9Bは、インナー側ベース部材7の一端側の軸心線c4上に沿って延設されているとともに、当該スライドガイド孔9Bの一端側の端部には、アウター側ベース部材5の連結用凸部9Aの拡大頭部9bに対応する長方形状の拡大孔部9cが形成されている。
【0049】
つまり、連結用の凸部9Aの拡大頭部9bとスライドガイド孔9Bの拡大孔部9cとを位置合わせした状態で拡大頭部9bを拡大孔部9cに通過させることによって、連結用凸部9Aとスライドガイド孔9Bとを抜け止め状態で係合さて両ベース部材5、7を連結し得るように構成されている。
【0050】
また、前記拡大孔部9cは、連結用の凸部9Aの基部9a及び拡大頭部9bが前記取付け姿勢で弧状軸心線Cに重なる前記軸心線c3上に中心が位置する形態に構成されていることに対して、前記取付け姿勢で弧状軸心線Cに重なる前記軸心線c4からやや内側に偏倚した位置に中心が位置する形態に構成されている。
【0051】
つまり、前記拡大頭部9bと前記拡大孔部9cは、インナー側ベース部材7の一端側とアウター側ベース部材5の一端側とが重なる前記取付け姿勢において幅方向で位置ズレした状態で設けられていて、図14(a)〜(c)に示すように、インナー側ベース部材7又はアウター側ベース部材5或いは両ベース部材5、7を弾性的に変形させた状態でのみ、前記拡大孔部9cに前記拡大頭部9bを通過させることができるように構成されている。
【0052】
つまり、当該連結手段9は、インナー側ベース部材7又はアウター側ベース部材5或いは両ベース部材5、7を弾性的に変形させない限り、インナー側ベース部材7とアウター側ベース部材5の連結状態が現出・解除できない嵌合連結構造に構成されている。
【0053】
また、エルボ型配管カバー1には、インナー側ベース部材7とアウター側ベース部材5とが、前記係合手段9による係合状態でのスライド移動操作によって所定相対姿勢になったとき、その所定相対姿勢に対して姿勢保持力を付与する位置決め手段10が設けられている。当該位置決め手段10は、複数の前記所定相対姿勢の各々で姿勢保持力を付与可能に構成されている。
【0054】
前記位置決め手段10は、アウター側ベース部材5の一端側の内周面(具体的には、底壁部5Aの表面)とインナー側ベース部材7の一端側の外周面(具体的には、底壁部7Aの裏面)との間に形成された位置決め凸部10aと位置決め凹部10bとから構成されている。
【0055】
当該位置決め凸部10aと位置決め凹部10bとは、前記所定相対姿勢になったとき、前記連結手段9の抜け止め作用による両ベース部材5、7を一定距離に保つ保持力でもって係合するように構成されている。
【0056】
前記位置決め凸部10aは、アウター側ベース部材5の一端側の底壁部5Aの裏面側における端縁近傍位置における幅方向の外方箇所に突出形成されている。当該位置決め凸部10aは、弧状軸心線C(具体的には、軸心線c3)に沿う方向の両端面が曲面形状に構成され、具体的には、周壁部が緩傾斜の曲面形状に形成された半長円形状に構成されている。
【0057】
また、前記位置決め凹部10bは、インナー側ベース部材7の一端側の底壁部7Aの裏面における幅方向の外方箇所において、前記弧状軸心線C(具体的には、軸心線c4)に平行する線に沿って複数個が一定ピッチ(一定の曲がり角度毎のピッチ、例えば、5度ピッチ)で並ぶ状態に窪み形成されている。
【0058】
当該位置決め凹部10bも、弧状軸心線C(具体的には、軸心線c4)に沿う方向の両端面が曲面形状に構成され、具体的には、周壁部が緩傾斜の曲面形状に形成された半長円形状に構成されている。
【0059】
更に、当該エルボ型配管カバー2には、前記姿勢保持位置の各々での曲がり角度αを示す角度表示部11が設けられている。
【0060】
前記表示部11は、前記アウター側ベース部材5の一端側の底壁部5Aの表面の軸心線c3及びその周縁領域に刻設された目盛り線から構成されていて、インナー側ベース部材5のガイド孔9Bを通して外部から視認し得るように構成されている。当該目盛り線は、エルボ型配管カバー2の曲がり角度αを5度ピッチで認識し得るように構成されている。
【0061】
次に、上記の如く構成されたエルボ型配管カバー2の使用方法を簡単に説明する。
先ず、インナー側ベース部材7とアウター側ベース部材5とを連結操作して連結手段9でもって連結する。なお、インナー側ベース部材7とアウター側ベース部材5との連結は、出荷前の段階で行っていてもよい。
【0062】
そして、前記角度表示部11を見ながら両ベース部材5、7の連結体の裏面を壁面Wに当て付けた状態で両ベース部材5、7をスライド操作して両ベース部材5、7を目標の曲がり角度に対応する所定姿勢にし、図15(a)に示すように、固定手段21、24でもって両ベース部材5、7を壁面Wに取り付ける。
【0063】
そして、図15(b)に示すように、直管型配管カバーや配管類を配設し、その後、両蓋部材6、8の各々を固定手段22、2でもって両ベース部材5、7に取付け、配管カバー構造の施工が完了する。
【0064】
[その他の実施形態]
(1)前述の実施形態では、エルボ型配管カバー2が配管類を包囲可能な筒状に構成されている場合を例に示したが、被取付け面との間で配管類を包囲可能な半筒状に構成されていてもよい。
【0065】
(2)前述の実施形態では、インナー側ベース部材7とアウター側ベース部材5とを弧状軸心線Cに沿って一定範囲内でスライド自在な状態で係合可能な係合手段、及び、インナー半体4とアウター半体3とを弧状軸心線Cに沿って一定範囲内でスライド自在な状態で係合可能な係合手段として、両者を連結可能な構造(つまり、連結手段9)を例に示したが、単に、両者を係合可能なだけの構造から構成されていてもよい。
【0066】
(3)前述の実施形態では、連結手段9が、両ベース部材5、7に構成されている場合を例に示したが、両蓋部材6、8に構成されていてもよい。
【0067】
(4)前述の実施形態では、スライドガイド孔9Bがインナー半体4に形成され、且つ、連結用凸部9Aがアウター半体3に形成されている場合を例に示したが、これとは逆に、連結用凸部9Aがインナー半体4に形成され、且つ、スライドガイド孔9Bがアウター半体3に形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0068】
W 被取付け面
α 曲がり角度
C 弧状軸心線
c3 軸心線
c4 軸心線
3 アウター半体
4 インナー半体
5、7 ベース部材
6、8 蓋部材
6d 取付け孔(取付け部)
9 連結手段(係合手段)
9A 凸部
9B スライドガイド孔
9b 拡大頭部
9c 拡大孔部
10 位置決め手段
10a 位置決め凸部
10b 位置決め凹部
11 角度表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管類の曲がり部を被覆可能なように軸心方向中間部が弧状軸心線を有する湾曲形状に構成されているエルボ型配管カバーであって、
一端側が前記弧状軸心線と同じ曲率の軸心線を有する湾曲形状に構成されたアウター半体と、一端側が前記弧状軸心線と同じ曲率の軸心線を有する湾曲形状で且つ前記アウター半体の一端側に内挿可能な外形寸法に構成されたインナー半体とから構成されているとともに、
前記インナー半体と前記アウター半体の各々が、被取付け面に対する取付け部を備えたベース部材と、該ベース部材に取付け可能な蓋部材とから構成され、
前記弧状軸心線の長さの異なる複数の配管類被覆姿勢を現出可能なように、前記インナー半体のベース部材の一端側を前記アウター半体のベース部材の一端側に表側から重ねた被取付け面に対する取付け姿勢において、前記インナー半体のベース部材と前記アウター半体のベース部材とを前記弧状軸心線に沿って一定範囲内でスライド自在な状態で係合可能な係合手段が設けられているエルボ型配管カバー。
【請求項2】
前記係合手段が、前記取付け姿勢でインナー半体のベース部材とアウター半体のベース部材とを前記弧状軸心線に沿って一定範囲内でスライド自在な状態で連結する連結手段から構成されている請求項1記載のエルボ型配管カバー。
【請求項3】
前記連結手段が、前記インナー半体のベース部材の一端側と前記アウター半体のベース部材の一端側の一方にそれの軸心線又はそれに平行する線に沿って延設されたスライドガイド孔と、
前記インナー半体のベース部材の一端側と前記アウター半体のベース部材の一端側の他方に前記取付け姿勢でスライドガイド孔内に入り込む状態に形成された凸部とから構成されているとともに、
前記凸部の先端側には、前記スライドガイド孔に基端側を入り込ませた状態でスライドガイド孔の表側でスライドガイド孔の溝幅よりも外方に張り出してスライドガイド孔からの外れを阻止する外れ止め用の拡大頭部が形成されている請求項2記載のエルボ型配管カバー。
【請求項4】
前記アウター半体のベース部材の一端側の内幅寸法が、前記インナー半体のベース部材の一端側の外幅寸法と同幅又は略同幅に構成され、
前記スライドガイド孔には、前記インナー半体のベース部材又はアウター半体のベース部材或いはそれら両ベース部材を弾性的に変形させた状態で前記拡大頭部の通過が可能なうように、連結操作用の拡大孔部が前記取付け姿勢では前記拡大頭部と位置ズレする状態で形成されている請求項3記載のエルボ型配管カバー。
【請求項5】
前記インナー半体のベース部材と前記アウター半体のベース部材とが前記係合手段による係合状態での前記スライド移動操作によって所定相対姿勢になったとき、その所定相対姿勢に対する姿勢保持力を付与する位置決め手段が設けられている請求項1〜4のいずれか1項に記載のエルボ型配管カバー。
【請求項6】
前記位置決め手段が、複数の前記所定相対姿勢の各々で姿勢保持力を付与するように構成されている請求項5記載のエルボ型配管カバー。
【請求項7】
前記インナー半体のベース部材、又は、前記アウター半体のベース部材、或いは、それら両ベース部材には、前記位置決め手段による複数の姿勢保持位置の各々での曲がり角度を示す角度表示部が設けられている請求項6記載のエルボ型配管カバー。
【請求項8】
前記位置決め手段が、前記アウター半体のベース部材の一端側の内周面と前記インナー半体の一端側の外周面との間に形成された位置決め凸部と位置決め凹部とから構成され、前記所定相対姿勢になったときに位置決め凸部が位置決め凹部に入り込むように構成されているとともに、
前記位置決め凸部及び前記位置決め凹部の前記弧状軸心線に沿う方向の両端面の各々が曲面形状に構成されている請求項5〜7のいずれか1項に記載のエルボ型配管カバー。
【請求項9】
配管類の曲がり部を被覆可能なように軸心方向中間部が弧状軸心線を有する湾曲形状に構成されているエルボ型配管カバーであって、
一端側が前記弧状軸心線と同じ曲率の軸心線を有する湾曲形状に構成されたアウター半体と、一端側が前記弧状軸心線と同じ曲率の軸心線を有する湾曲形状で且つ前記アウター半体の一端側に内挿可能な外形寸法に構成されたインナー半体とから構成されているとともに、
前記弧状軸心線の長さの異なる複数の配管類被覆姿勢を現出可能なように、前記インナー半体の一端側を前記アウター半体の一端側に内挿した姿勢において、アウター半体とインナー半体の一端側どうしを前記弧状軸心線に沿って一定範囲内でスライド自在な状態で係合する係合手段が設けられているエルボ型配管カバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−214590(P2011−214590A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−80406(P2010−80406)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000119830)因幡電機産業株式会社 (147)
【Fターム(参考)】