説明

エレクトレットコンデンサー

【課題】特性ばらつきが小さく、小型、高信頼性、高性能なエレクトレットコンデンサーを提供する。
【解決手段】半導体基板101及び薄膜で構成するエレクトレットコンデンサーにおいて、半導体基板101の中央部に、半導体基板101を選択的に除去したメンブレン領域113を備え、導電膜により、下部電極104と引出し配線115が設けられている。この下部電極104を、メンブレン領域113の内側に設けることにより、寄生容量を抑制することができる。これにより、高性能なECMを実現することができる。
また、シリコン窒化膜103、シリコン酸化膜105及びシリコン窒化膜106の端面は、半導体基板101と重なるように設けることにより、振動膜112の共振周波数特性を容易に制御することができ、小型かつ高感度のエレクトレットコンデンサーを実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は振動電極と固定電極を有するエレクトレットコンデンサーに関し、特にMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いて形成するエレクトレットコンデンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンデンサーマイクロホンなどの素子に応用される永久的電気分極を有する誘電体であるエレクトレットコンデンサーでは、平行平板型コンデンサーを構成する固定電極と可動電極の間に、エレクトレット膜とエアギャップ(空洞)層を備えた構造を有する。
【0003】
近年、エアギャップ層厚さを薄くかつばらつきを低減するために、微細加工技術を利用したエアギャップ層の構造及び製造方法が提案されている。具体例としては、特許文献1に示すようなSi基板の一部を水酸化カリウムを用いたウェットエッチングにより除去して凹部を形成するものである。また、特許文献2に示すような、スペーサとなるポリイミド表面に平坦化膜であるシリコン窒化膜を設けることにより、ポリイミド膜厚のばらつきを抑制するものである。
【特許文献1】特開2002−345088号公報
【特許文献2】特開2002−315097号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年の機器の小型化、高性能化を実現するため、より小型で高性能でありながら、寄生容量が小さいエレクトレットコンデンサーの実現が望まれている。
【0005】
本発明は、小型かつ高性能であり、寄生容量が小さいエレクトレットコンデンサーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために、本発明に係る第1のエレクトレットコンデンサーは、半導体基板の中央部に、半導体基板を選択的に除去した領域と、領域を覆うように半導体基板上に形成された絶縁膜と、絶縁膜表面に形成された電極膜とを備え、電極膜は、半導体基板と重ならないように領域内に形成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る第1のエレクトレットコンデンサーによると、電極膜を半導体基板と重ならないように設けるので、寄生容量を小さくすることができる。
【0008】
本発明に係る第1のエレクトレットコンデンサーにおいて、半導体基板と重なるように、電極膜から引き出された配線が形成されていることが好ましい。
【0009】
本発明に係る第2のエレクトレットコンデンサーは、周辺部を残すように除去された領域を有する半導体基板と、領域を覆うように半導体基板上に形成された絶縁膜と、絶縁膜表面に形成された電極膜とを備え、電極膜は、半導体基板と重ならないように領域内に形成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る第2のエレクトレットコンデンサーによると、電極膜を半導体基板と重ならないように設けるので、寄生容量を小さくすることができる。
【0011】
本発明に係る第2のエレクトレットコンデンサーにおいて、半導体基板と重なる周辺部には、電極膜から引き出された配線が形成されていることが好ましい。
【0012】
本発明に係る第1又は第2のエレクトレットコンデンサーにおいて、絶縁膜の端面は、領域の外側の半導体基板と重なる領域に形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、寄生容量が小さく高感度のエレクトレットコンデンサーの実現が可能となる。さらに、それらを搭載した各種応用装置を広く社会に供給することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
最初に、エレクトレットコンデンサーの応用例であるエレクトレットコンデンサーマイクロフォン(以下、ECM)について説明する。
【0015】
図1にECMの構成図を示す。図1(a)はECMの上面図を、図1(b)はECMの断面図を示している。図1(a)において、プリント基板21上にマイク部18、コンデンサーなどのSMD(表面実装部品)19、FET(電界効果型トランジスタ)20が搭載されている。また、図1(b)において、ECMのケース22を示している。
【0016】
図2は、ECMの回路ブロック図である。ECMの内部回路23は、マイク部18、SMD19、FET20より構成されており、出力端子24及び出力端子25から、外部端子26および外部端子27へ信号を出力する構成となっている。実際の動作としては、端子28より2V程度の入力信号がなされ、端子29に数十mVの交流の信号出力がなされる。端子27と端子30は、ECM内部回路23の中のGND端子である出力端子25に接続される。
【0017】
以下に、本発明のエレクトレットコンデンサーの実施の形態について詳細に説明する。
【0018】
図3は、本発明のエレクトレットコンデンサーの断面図である。図4は、エレクトレットコンデンサーの下部電極および引出し配線の平面図である。
【0019】
図3に示すように、半導体基板101の上にシリコン酸化膜102が形成され、半導体基板101及びシリコン酸化膜102の周辺を残すように除去してメンブレン領域113を形成している。ここで、メンブレン領域113とは、振動膜112が外部から圧力を受けて振動することを可能とするために半導体基板101が周辺を残すように部分的に除去されている領域である。そして、シリコン窒化膜103がシリコン酸化膜102上及びメンブレン領域113中に形成されている。その上に、下部電極104及び引出し配線115が、1つの導電膜から形成されている。そして、シリコン窒化膜103、下部電極104及び引出し配線115の上に、シリコン酸化膜105及びシリコン窒化膜106が形成されている。ここで、下部電極104及びシリコン酸化膜105にはリークホール107が形成されている。そして、シリコン窒化膜103及びシリコン窒化膜106は、リークホール107が形成されたメンブレン領域113の下部電極104及びシリコン酸化膜105を覆うように形成されている。ここで、メンブレン領域113に位置するシリコン窒化膜103、導電膜からなる下部電極104、シリコン酸化膜105及びシリコン窒化膜106は、振動膜112となる。また、シリコン酸化膜105は、電荷を蓄えたエレクトレット膜である。さらに、シリコン窒化膜106の上方には、シリコン窒化膜114で覆われた導電膜からなる固定膜110が形成されている。振動膜112と固定膜110の間は、エアギャップ層109が形成されており、それ以外のシリコン窒化膜106と固定膜110の間には、シリコン酸化膜108が形成されている。このエアギャップ層109は、少なくともメンブレン領域113を含むように形成されている。また、エアギャップ層109の上方の固定膜110には、複数のアコースティックホール111が形成されている。また、引出し配線115が露出するようにシリコン窒化膜114、固定膜110及びシリコン酸化膜108に開口部116が設けられている。そして、下部電極104は、引出し配線115を介して、図2に示したFET20のゲートと電気的に接続されている。また、固定膜110は、シリコン窒化膜114に設けられた開口部117により露出しており、図2のGND端子25に接続されている。
【0020】
ここで、下部電極104及び引出し配線115について、図4を用いて説明する。下部電極104及び引出し配線115は、1つの導電膜から形成されている。下部電極104は、メンブレン領域113内に形成されており、周辺にはリークホール107が形成されている。そして、下部電極104が外部と電気的に接続するために引出し配線115を形成している。
【0021】
ここで、下部電極104がメンブレン領域113内に形成されている理由について説明する。ECMにおけるコンデンサーの容量は、振動膜の振動により変化する容量成分と変化しない容量成分によって決定される。寄生容量により変化しない容量成分が大きくなると、ECMの性能に大きく関わる。本発明においては、エレクトレットコンデンサーの下部電極104をメンブレン領域113の内側に設けている。この構成により、下部電極104、半導体基板101及びシリコン酸化膜102からなるMOS容量の面積を無くすことができ、引出し配線115、半導体基板101及びシリコン酸化膜102からなるMOS容量の小さい面積だけにすることができる。すなわち、コンデンサーの変化しない容量成分(寄生容量)の増加を防ぎ、小型かつ高性能なエレクトレットコンデンサーを実現することができる。
【0022】
また、振動膜112となるシリコン窒化膜103、導電膜からなる下部電極104、シリコン酸化膜105及びシリコン窒化膜106のうち、メンブレン領域113を覆うように形成されているシリコン窒化膜103、シリコン酸化膜105及びシリコン窒化膜106の端面は、半導体基板101と重なるように形成されている。振動膜112のうち導電膜からなる下部電極104は、半導体基板101と重なることがない様にメンブレン領域113の内側に形成されている。
【0023】
これにより、振動膜112の共振周波数特性は、シリコン窒化膜103、シリコン酸化膜105及びシリコン窒化膜106の膜厚を調整させることで制御することができる。すなわち、外部からの圧力を受けて変化するコンデンサー容量成分の制御を容易にし、小型かつ高感度のエレクトレットコンデンサーを実現することができる。
【0024】
なお、下部電極104を形成する導電膜は、不純物をドーピングしたポリシリコンや金、アルミニウム、アルミニウム系合金などの金属で形成することができる。
【0025】
最後に、エレクトレットコンデンサーの動作について説明する。図3において、アコースティックホール111を通して、振動膜112が上方から音圧を受けたとき、その音圧に応じて振動膜112が機械的に上下に振動する。図3においては、下部電極104と固定膜110を電極とする平行平板型のコンデンサー構造を形成している。振動膜112が振動すると下部電極104と固定膜110との電極間距離が変化することで、コンデンサーの容量(C)が変化する。コンデンサーに蓄えられる電荷(Q)は一定であるため、下部電極104と固定膜110との間の電圧(V)に変化が生じる。この理由は、物理的に、以下の式(1)の条件を満足する必要があるためである。
【0026】
Q=C・V ・・・・(1)
固定膜110は、図2のFET20のゲートと電気的に接続しているので、FET20のゲート電位は、振動膜の振動により変化する。FET20のゲートの電位変化は外部出力端子29に電圧変化として出力されることとなる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
以上説明したように、本発明のエレクトレットコンデンサーは、寄生容量を小さくできるので、高性能で小型のECMの実現に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】エレクトレットコンデンサーマイクロフォンの構成図
【図2】エレクトレットコンデンサーマイクロフォンの回路図
【図3】本発明の実施の形態のエレクトレットコンデンサーの断面図
【図4】本発明の実施の形態のエレクトレットコンデンサーの下部電極および引出し配線の平面図
【符号の説明】
【0029】
18 マイク部
19 SMD
20 FET
21 プリント基板
22 ECMのケース
23 ECMの内部回路
24 出力端子
25 出力端子
26 外部端子
27 外部端子
28 端子
29 端子
30 端子
101 半導体基板
102 シリコン酸化膜
103 シリコン窒化膜
104 下部電極
105 シリコン酸化膜
106 シリコン窒化膜
107 リークホール
108 シリコン酸化膜
109 エアギャップ層
110 固定膜
111 アコースティックホール
112 振動膜
113 メンブレン領域
114 シリコン窒化膜
115 引出し配線
116 開口部
117 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周辺部を残すように除去された領域を有する半導体基板と、
前記領域を覆うように前記半導体基板上に形成された絶縁膜と、
前記絶縁膜表面に形成された電極膜とを備え、
前記電極膜は、前記半導体基板と重ならないように前記領域内に形成されていることを特徴とするコンデンサーマイクロフォン。
【請求項2】
前記半導体基板と重なる周辺部には、前記電極膜から引き出された配線が形成されていることを特徴とする請求項1記載のコンデンサーマイクロフォン。
【請求項3】
前記絶縁膜の端面は、前記領域の外側の前記半導体基板と重なる領域に形成されていることを特徴とする請求項1記載のコンデンサーマイクロフォン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−22055(P2009−22055A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−275125(P2008−275125)
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【分割の表示】特願2004−251573(P2004−251573)の分割
【原出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】