説明

エレクトレットシャッタ及び撮像モジュール

【課題】実際にカメラ等に搭載可能な小型で構造が簡単なエレクトレットシャッタ及び撮像モジュールを提供することである。
【解決手段】エレクトレットシャッタユニット10は、所定の開口部13を有し外周部表面に複数の駆動電極12が設けられた略半円形状の固定子11と、該固定子11の中心部に回動可能に取り付けられた移動子15とを備えて成る。該移動子15は、固定子11の駆動電極12と対向する面に所定の間隔を保つように配設されるもので、移動子15の固定子11側に永久分極された誘電体であるエレクトレットを固着している。そして、開口部13に対し往復動して、該開口部13に進退を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラ及び該デジタルカメラ等に利用可能なエレクトレットシャッタ及び撮像モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラ等の光学機器に於けるシャッタ装置に於いては、シャッタ羽根をステップモータで駆動する方式や、スプリング力を利用してシャッタ羽根を開閉させる方式のものが知られている。しかしながら、これらの方式によるものは、シャッタ羽根を駆動する駆動装置の駆動力をシャッタ羽根に伝達するために複雑な構造を必要としていた。
【0003】
一方で、配置スペースを有効利用することができて、組み込まれるレンズ鏡筒等の機器の小型化に有効な装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−100514号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1は、2つのソレノイドとプランジャを有してセクタを移動させる構造となっている。こうした種類の静電アクチュエータの原理を用いたエレクトレットシャッタ装置(以下、エレクトレットシャッタと略記する)を実際にカメラに搭載させることを考慮すると、駆動電極基板とカバーガラスとを、スペーサを介して積層し、それによってシャッタ幕の移動空間を確保するという構造が考えられる。
【0005】
しかしながら、複数枚の基板やカバーガラスを積層すると、その光軸方向にスペースを必要としてしまい、鏡筒の小型化には不十分であり、搭載するカメラを小型化しようとする際にも、まだ不十分なものである。
【0006】
したがって本発明は、上記実状に鑑みてなされたものであり、実際にカメラ等に搭載可能な小型で構造が簡単なエレクトレットシャッタ及び撮像モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、請求項1に記載の発明は、光束通過領域を有し外周部表面に複数の駆動電極が設けられた固定部材と、該固定部材の中心部に回動可能に取り付けられ、該固定部材の上記駆動電極と対向するように配設され、該移動部材の上記固定部材側には永久分極された誘電体であるエレクトレットが設けられ、上記光束通過領域を覆うことが可能な面積を有する部材であって、上記光束通過領域に対し往復動して上記光束通過領域に進退を行う移動部材と、を具備することを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、光束通過領域を有し外周部表面に複数の駆動電極が設けられた固定部材と、上記光束通過領域より入射した光線が照射されることが可能なように撮像素子が設けられ、上記固定部材が固着された収納部材と、上記固定部材の中心部に回動可能に取り付けられ、上記固定部材の上記駆動電極に対向し、上記固定部材側には永久分極された誘電体であるエレクトレットが設けられ、上記光束通過領域を覆うことが可能な面積を有する部材であって、上記光束通過領域に対し往復動して上記光束通過領域に対し進退を行う移動部材と、を具備することを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1若しくは2に記載の発明に於いて、上記駆動電極に印加する交番電解の周波数を可変することによって上記移動部材の回転速度を可変することを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、被写体光束が通過する光束通過領域を有し、所定間隔で配置された複数の駆動用電極が配設された固定部材と、上記固定部材の中心部に回動可能に取り付けられるもので、該固定部材の上記駆動電極と対向する面に、所定の間隔をおいて永久分極された誘電体であるエレクトレットが複数固着された移動部材と、を具備することを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明に於いて、上記移動部材は、上記光束通過領域に対して往復動して上記光束通過領域に進退を行うことを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明に於いて、上記固定部材は、少なくとも上記移動部材によって上記光束通過領域を全開状態と全閉状態とに切り替えが可能な面積を有する形状であることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の発明に於いて、上記固定部材は、略半円形状であることを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項4に記載の発明に於いて、上記移動部材は、少なくとも上記光束通過領域を覆う面積を有することを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項4若しくは5に記載の発明に於いて、上記駆動電極に印加する交番電解の周波数を可変することによって上記移動部材の回転速度を可変することを特徴とする。
【0016】
請求項10に記載の発明は、光束通過領域を有し外周部表面に複数の駆動電極が設けられた固定部材と、該固定部材の中心部に回動可能に取り付けられ、該固定部材の上記駆動電極と対向するように配設され、該移動部材の上記固定部材側には永久分極された誘電体であるエレクトレットが設けられ、上記光束通過領域を覆うことが可能な面積を有する部材であって、上記光束通過領域に対し往復動して上記光束通過領域に進退を行う移動部材と、上記固定部材の上記移動部材と対向する面の裏面側に配置され、上記光束通過領域より入射した光束通過領域受けて被写体を撮像するための撮像素子と、を具備することを特徴とする。
【0017】
請求項11に記載の発明は、光束通過領域を有し外周部表面に複数の駆動電極が設けられた固定部材と、上記固定部材の中心部に回動可能に取り付けられ、上記固定部材の上記駆動電極に対向し、上記固定部材側には永久分極された誘電体であるエレクトレットが設けられ、上記光束通過領域を覆うことが可能な面積を有する部材であって、上記光束通過領域に対し往復動して上記光束通過領域に対し進退を行う移動部材と、上記固定部材の上記移動部材と対向する面の裏面側に配置され、上記光束通過領域より入射した光束通過領域受けて被写体を撮像するための撮像素子と、上記撮像素子が設けられると共に、上記固定部材が固着された収納部材と、を具備することを特徴とする。
【0018】
請求項12に記載の発明は、請求項10若しくは11に記載の発明に於いて、上記駆動電極に印加する交番電解の周波数を可変することによって上記移動部材の回転速度を可変することを特徴とする。
【0019】
請求項13に記載の発明は、被写体光束が通過する光束通過領域を有し、所定間隔で配置された複数の駆動用電極が配設された固定部材と、上記固定部材の中心部に回動可能に取り付けられるもので、該固定部材の上記駆動電極と対向する面に、所定の間隔をおいて永久分極された誘電体であるエレクトレットが複数固着された移動部材と、上記固定部材の上記移動部材と対向する面の裏面側に配置され、上記光束通過領域より入射した光束通過領域受けて被写体を撮像するための撮像素子と、を具備することを特徴とする。
【0020】
請求項14に記載の発明は、請求項13に記載の発明に於いて、上記移動部材は、上記光束通過領域に対して往復動して上記光束通過領域に進退を行うことを特徴とする。
【0021】
請求項15に記載の発明は、請求項14に記載の発明に於いて、上記固定部材は、少なくとも上記移動部材によって上記光束通過領域を全開状態と全閉状態とに切り替えが可能な面積を有する形状であることを特徴とする。
【0022】
請求項16に記載の発明は、請求項15に記載の発明に於いて、上記固定部材は、略半円形状であることを特徴とする。
【0023】
請求項17に記載の発明は、請求項13に記載の発明に於いて、上記移動部材は、少なくとも上記光束通過領域を覆う面積を有することを特徴とする。
【0024】
請求項18に記載の発明は、請求項13若しくは14に記載の発明に於いて、上記駆動電極に印加する交番電解の周波数を可変することによって上記移動部材の回転速度を可変することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、実際にカメラ等に搭載可能な小型で構造が簡単なエレクトレットシャッタ及び撮像モジュールを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0027】
(第1の実施形態)
図1乃至図3は、本発明に係る第1の実施形態のロータリタイプのエレクトレットシャッタユニットの構成を示す図である。図1はエレクトレットシャッタユニットの外観を示すもので、(a)は初期状態であるシャッタ閉の状態を示した図、(b)はシャッタ開の状態を示した図、(c)は再びシャッタ閉の状態を示した図である。図2はシャッタユニットの外観斜視図であって、(a)は初期状態であるシャッタ閉の状態を示した図、(b)はシャッタ開の状態を示した図、(c)は再びシャッタ閉の状態を示した図、図3は該シャッタユニットの移動子の固定子と対向する面側を示した図である。
【0028】
本シャッタユニット10は、略半円形状で遮光性を有する固定部材としての固定子11と、この固定子11の中心を軸として回動可能で扇形状(この場合、ほぼ1/4円形状)の遮光性を有する移動部材としての移動子15とを有している。
【0029】
上記固定子11には、後述する収納容器22内の撮像素子23に対応する位置に、光束通過領域として長方形状の開口部13が形成されている。この開口部13を通った光が撮像素子23に結像されるようになっている。加えて、上記固定子11は、少なくとも上記移動子15によって上記開口部13を全開状態と全閉状態とに切り替えが可能な面積を有する形状である。
【0030】
尚、本実施形態では、開口部13の長手方向を、略半円形状の固定子11の直径に沿った辺と平行にして形成している。
【0031】
そして、固定子11の周縁部近傍には、該固定子11の中心より放射状に、複数の帯状に延出された電極部材である駆動電極12が、所定の間隔で配設されている。また、固定子11の中心には、移動子15をボス18によって回動自在に支持するための穴(図示せず)が形成されている。
【0032】
ここで、固定子11は、ガラス等を基板として構成されており、その表面に駆動電極12が形成され、更に駆動電極12上に絶縁膜(図示せず)が設けられている。この絶縁膜が施されることにより、隣接する駆動電極間の短絡を防止している。
【0033】
一方、移動子15は、ポリイミドやテフロン(登録商標)が基材として用いられており、アルミニウム等の金属が蒸着されている。これにより、完全ではないものの、ある程度の遮光性を確保することができる。本実施形態に於いては、このような特性を半透光性と称するものとする。
【0034】
更に、移動子15は、回転軸となる穴17を中心とした扇形状を有しているが、少なくとも開口部13を覆うものであればよい。そして、この移動子15はシャッタ幕を構成するもので、固定子11と対向する面側の周縁部近傍には、上述した駆動電極12と対向して、移動子15の中心より放射状に、複数の帯状に延出されて永久分極された誘導体(以下、エレクトレットと称する)16が配設されている。このエレクトレット16は、コロナ放電法により形成されている(これをエレクトレット化するという)。
【0035】
そして、上記移動子15の中心に形成されている穴17と、固定子11に形成されている穴(図示せず)を介し、ボス18が後述する収納容器22のボス取付用穴24に固着されることによって、移動子15が収納容器22に回動可能に支持される。
【0036】
図4は、上述したエレクトレットシャッタユニットが取付けられる撮像ユニット側の構成を示す外観斜視図、図5及び図6はエレクトレットシャッタユニットが撮像ユニットに取付けられた状態を示すもので、図5は外観斜視図、図6は外観側面図である。
【0037】
本撮像モジュール20は、エレクトレットシャッタユニット10と、撮像ユニット21とで構成されている。上記撮像ユニット21は、一方の側を開口とした半円筒形状の収納容器22と、該収納容器22内の中心近傍に配置された、CCD等の撮像素子23とを有して構成される。この撮像素子23には複数本の端子25が設けられており、電気基板26を介して駆動回路等からの配線が接続されている。
【0038】
尚、固定子11と移動子15との間には、金属製のワッシャ19が介在されている。
【0039】
図7は、こうしたエレクトレットシャッタユニットの断面を模式的に示すと共に該エレクトレットシャッタの駆動回路を示した図である。
【0040】
シャッタユニット10に於いて、固定子11に並設されたそれぞれの駆動電極12には、駆動回路30からの電圧信号線が接続されている。これらの電圧信号線には、4相の電圧信号が印加されるようになっており、従って、駆動電極12には、4本毎に同一の電圧信号が印加される。図7では、駆動電極12にA、B、C、Dの符号を付してこの電圧信号を区別している。
【0041】
移動子15には、固定子11との対向面にエレクトレット16を複数備えている。
【0042】
尚、この図は、あくまでも模式図であり、実際のエレクトレットシャッタに於ける電極やエレクトレット化部位の数や配置間隔は、シャッタの大きさ、開口部の面積、エレクトレット化部位の極性、その配置形態、シャッタ装置として要求される駆動分解能、シャッタ最高速度等の様々な要因によって適宜決定されるものである。また、このエレクトレットシャッタの場合、正負の極性を有するエレクトレット化部位が交互に配置されたタイプであるが、何れか一方の極性だけでも実現可能である。
【0043】
図7の左側には、上述したエレクトレットシャッタユニット10の構成と共に、エレクトレットシャッタユニット10に印加する電圧信号を発生するための駆動回路30の構成が示されている。
【0044】
パルス発生回路31で生成した矩形波列(駆動パルス信号)は、位相器32及び昇圧回路33に供給される。昇圧回路33では、入力された矩形波列が100V程度まで昇圧されると共に、2つの極性を有する電圧信号に分岐されて、駆動電極4A及び4Cに供給される。一方、位相器32に入力された矩形波列は、90°位相が遅れた波形となり、その後、昇圧回路33に入力されて、上述と同様の2つの矩形波列となり、駆動電極12B及び12Dに供給される。
【0045】
図8は、上記駆動回路30によって作成されて、駆動電極12A〜12Dに印加される電圧信号列の例を示したタイミングチャートである。このうち、図8(a)は駆動電極12A、図8(b)は駆動電極12B、図8(c)は駆動電極12C、図8(d)は駆動電極12Dのタイミングチャートである。
【0046】
尚、駆動電極12A〜12Dの電圧の状態は、時間t1〜t4の4つの状態が、時間経過に対応して繰り返して変化するものである。
【0047】
図9(a)〜(d)は、上述したエレクトレットシャッタ10の動作を説明する図である。尚、図9(a)〜(d)に於いて、同図右側方向をエレクトレットの進行方向として、後方側(左側)に正極(プラス)のエレクトレット(エレクトレット化部位)16a、前方側(右側)に負極(マイナス)のエレクトレット(エレクトレット化部位)16bが配列されているものとする。
【0048】
図9(a)は、図8に示される時間t1に切り替わった直後のエレクトレットと駆動電極12の電圧の状態(極性)を示している。
【0049】
この状態に於いて、正極のエレクトレット16aは、駆動電極12A(正極)から反発力を受け、駆動電極12B(負極)から吸引力を受ける。また、負極のエレクトレット16bは、駆動電極12C(負極)から反発力を受け、駆動電極12D(正極)から吸引力を受ける。このため、移動子15は、図9(a)の右方向に力を受けて、1つの駆動電極ピッチd分右方向に移動する。
【0050】
図9(b)は、時間t2に切り替わった直後のエレクトレットと駆動電極の電圧の状態を示している。
【0051】
この状態に於いて、エレクトレット16aは、駆動電極12B(正極)から反発力を受け、駆動電極12C(負極)から吸引力を受ける。また、エレクトレット16bは、駆動電極12D(負極)から反発力を受け、駆動電極12A(正極)から吸引力を受ける。このため、移動子15は、図9(b)の右方向に力を受けて、1つの駆動電極ピッチd分移動する。
【0052】
同様に、図9(c)は、時間t3に切り替わった直後のエレクトレットと駆動電極の電圧の状態を示している。
【0053】
この状態に於いて、エレクトレット16aは、駆動電極12C(正極)から反発力を受け、駆動電極12D(負極)から吸引力を受ける。また、エレクトレット16bは、更に別の駆動電極12A(負極)から反発力を受け、駆動電極12B(正極)から吸引力を受ける。このため、移動子15は、図9(c)の右方向に力を受けて、1つの駆動電極ピッチd分移動する。
【0054】
更に、図9(d)は、時間t4に切り替わった直後のエレクトレットと駆動電極の電圧の状態を示している。
【0055】
この状態に於いて、エレクトレット16aは、駆動電極12D(正極)から反発力を受け、駆動電極12A(負極)から吸引力を受ける。また、エレクトレット16bは、駆動電極12B(負極)から反発力を受け、駆動電極12C(正極)から吸引力を受ける。このため、移動子15は、図9(d)の右方向に力を受けて、1つの駆動電極ピッチd分移動する。
【0056】
上述したように、移動子15は1つの駆動電極ピッチd移動し、この動作が繰り返されることで、移動子15は、図9(a)→(b)→(c)→(d)のように右方向(図示矢印F方向)に移動する。尚、移動子15を図の左方向に移動するためには、駆動電極12に印加する電圧の極性を逆に切り替えれば良い。
【0057】
このような構成に於いて、駆動電極12A〜12Dに周波電圧が印加されると、駆動電極12A〜12Dと上述したエレクトレット16a、16bとの間に吸引力若しくは反発力が発生し、結果的に移動子15が固定子11に対して相対移動する。したがって、移動子15が固定子11の開口部13を、開放若しくは遮蔽するように移動可能にしておけば、これによってシャッタ装置を構成することができる。
【0058】
また、駆動電極12A〜12Dに入力される電圧の周波数を変化させれば、移動子15の(回転)速度が変わるため、シャッタスピードを変化させることができる。
【0059】
図10は、本発明に係る第1の実施形態に於けるカメラのシャッタ関係の電気的構成を示すブロック図である。
【0060】
図10に於いて、このカメラは、該カメラ全体の制御を司る制御手段である制御回路(CPU)40を有している。この制御回路40には、シャッタレリーズを行うためのレリーズスイッチ41と、駆動回路30と、タイミングジェネレータ(TG)回路43と、測光回路48が接続されている。
【0061】
上記駆動回路30は、移動子15を所定方向に回転駆動するためのものである。レリーズスイッチ41は、エレクトレットシャッタによる撮影操作を行うためのレリーズ釦に対応したスイッチである。このレリーズスイッチ41が操作されてオンされることにより、駆動回路30を通じて移動子15が所定方向に回転する。
【0062】
また、測光回路40は、受光素子47で得られた受光量に基づいて測光処理を行うための回路である。この測光回路40で処理された測光値に従って、CPU40が駆動回路30を駆動制御するようになっている。
【0063】
上記タイミングジェネレータ回路43は、所定のタイミングでCCD23を駆動するためのCCDドライバ44、及び撮像回路45を駆動するための回路である。
【0064】
次に、図11のフローチャートを参照して、本第1の実施形態に於けるシャッタレリーズの動作について説明する。
【0065】
レリーズスイッチ41が操作されてオンされると、カメラ等の光学機器のメインルーチンから撮像素子等への露光のためのレリーズの本サブルーチンに入る。
【0066】
本サブルーチンでは、先ず、ステップS1にて、図1(a)に示されるように露光開口(開口部)13が閉じられた状態で、受光素子47及び測光回路48によって測光が行われる。次いで、ステップS2に於いて、上記ステップS1での測光結果に従って、露光量が決定される。すなわち、本エレクトレットシャッタの機構に於けるシャッタ秒時が決定され、開口部13を通過する光量が決定される。
【0067】
次に、ステップS3にて、CPU40により駆動回路30が駆動されて、移動子15の駆動手段である固定子11の駆動電極12にパルス電圧が印加される。すると、開口部13が閉じられていたシャッタ幕、すなわち移動子15が回転し始めて、開口部13が開状態に入る。
【0068】
図12はシャッタの開閉状態を示したもので、開口面積(S)と経過時間(t)との関係を表している。
【0069】
そして、開口部13が開かれる状態にあって、ステップS4に於いて、パルス発生回路31から出力されたパルスが所定数に達したか否かが判定される。ここで、パルスが所定数に達した、すなわち開口部13が全開口の状態(図1(b)参照)になったならば、続くステップS5にて、パルス電圧が印加されてからの時間をカウントするためタイマ(図示せず)が開始されて時間がカウントされる。
【0070】
そして、ステップS6に於いて、上記タイマの所定時間が経過するまでタイマがモニタされる。尚、この所定時間は、上記移動子15が固定子11上を1往復するまでの時間であり、上記測光結果によって当然1駒撮影毎に変化する。
【0071】
上記ステップS6にて、上記所定時間が経過したならば、上記移動子15が1往復は完了したことになるので、ステップS7へ移行する。このステップS7では、上記ステップS3とは逆に開口部13が開かれていたシャッタ幕、すなわち移動子15が逆回転し始めて、開口部13が閉状態に入る。
【0072】
そして、開口部13が閉じられる状態にあって、ステップS8に於いて、パルス発生回路31から出力されたパルスが所定数に達したか否かが判定される。ここで、パルスが所定数に達した、すなわち開口部13が全閉口の状態(図1(c)参照)になったならば、ステップS9に移行して、撮像処理が行われる。
【0073】
実際のシャッタの開閉動作は上記ステップS3〜S8で行われ、露光秒時は、図12に示されるTの値となる。
【0074】
その後、本サブルーチンが終了して、1駒の露光が完了したとして、図示されないメインのフローチャートに戻る。
【0075】
このように、駆動電極12に交番電界が印加されることによって、移動部材である移動子15が回動し、固定部材である固定子11に設けられた開口部13から入射する光量を透過または遮断して、撮像素子23への照射光量が制御可能となる。また、上記交番電解の周波数を変化させることにより、移動子13の回転速度が変化、すなわちシャッタスピードが変化する。
【0076】
このようして、エレクトレットシャッタを使用したレリーズ操作が行われる。
【0077】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0078】
図13及び図14は、本発明に係る第2の実施形態のロータリタイプのエレクトレットシャッタユニットの構成を示す図である。図13はエレクトレットシャッタユニット10aの外観を示すもので、(a)は初期状態であるシャッタ閉の状態を示した図、(b)はシャッタ開の状態を示した図、(c)は再びシャッタ閉の状態を示した図である。図14はシャッタユニット10aの外観斜視図であって、(a)は初期状態であるシャッタ閉の状態を示した図、(b)はシャッタ開の状態を示した図、(c)は再びシャッタ閉の状態を示した図である。
【0079】
上述した第1の実施形態は、開口部13の長手方向を、略半円形状の固定子11の直径に沿った方向と平行にして形成していたが、本第2の実施形態では、開口部13aの長手方向を、略半円形状の固定子11の直径に沿った辺と垂直な方向にして形成している。すなわち、第1の実施形態に於ける開口部13を90°回転させた形状としている。
【0080】
この開口部13a以外の、エレクトレットシャッタユニットの主要構成部材については、基本的に図1乃至図12に示される第1の実施形態のシャッタユニットの構成及び動作と同じである。したがって、これらの構成及び動作については、同一の部分には同一の参照番号を付して、その図示及び説明は省略する。
【0081】
尚、上述した実施形態に於いては、開口部の形状を長方形状としたがこれに限られるものではなく、移動子の移動により開口部が全開、全閉状態を表すことができるものであれば、例えば円形状であってもよい。
【0082】
また、上述した実施形態に於いて、収納容器11は、一方の側を開口とした円筒形状のものとして説明したが、これに限られるものではない。
【0083】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態以外にも、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形実施が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明に係る第1の実施形態のロータリタイプのエレクトレットシャッタユニットの外観を示すもので、(a)は初期状態であるシャッタ閉の状態を示した図、(b)はシャッタ開の状態を示した図、(c)は再びシャッタ閉の状態を示した図である。
【図2】本発明に係る第1の実施形態のロータリタイプのエレクトレットシャッタユニットのシャッタユニットの外観斜視図であって、(a)は初期状態であるシャッタ閉の状態を示した図、(b)はシャッタ開の状態を示した図、(c)は再びシャッタ閉の状態を示した図である。
【図3】本発明に係る第1の実施形態のロータリタイプのエレクトレットシャッタユニットの構成を示すもので、該シャッタユニットの移動子の固定子と対向する面側を示した図である。
【図4】本発明に係る第1の実施形態のロータリタイプのエレクトレットシャッタユニットの構成を示すもので、エレクトレットシャッタユニットが取付けられる撮像ユニット側の構成を示す外観斜視図である。
【図5】エレクトレットシャッタユニットが撮像ユニットに取付けられた状態を示す外観斜視図である。
【図6】エレクトレットシャッタユニットが撮像ユニットに取付けられた状態を示す外観側面図である。
【図7】エレクトレットシャッタユニットの断面を模式的に示すと共に該エレクトレットシャッタの駆動回路を示した図である。
【図8】駆動回路30によって作成されて、駆動電極12A〜12Dに印加される電圧信号列の例を示したタイミングチャートである。
【図9】エレクトレットシャッタ10の動作を説明する図である。
【図10】本発明に係る第1の実施形態に於けるカメラのシャッタ関係の電気的構成を示すブロック図である。
【図11】第1の実施の形態に於けるシャッタレリーズの動作について説明するフローチャートである。
【図12】シャッタの開閉状態を示したもので、開口面積(S)と経過時間(t)との関係を表した図である。
【図13】本発明に係る第2の実施形態のロータリタイプのエレクトレットシャッタユニットの外観を示すもので、(a)は初期状態であるシャッタ閉の状態を示した図、(b)はシャッタ開の状態を示した図、(c)は再びシャッタ閉の状態を示した図である。
【図14】本発明に係る第2の実施形態のロータリタイプのエレクトレットシャッタユニットの構成を示すもので、シャッタユニットの外観斜視図である。
【符号の説明】
【0085】
10…エレクトレットシャッタユニット、11固定子、12…駆動電極、13…開口部、15…移動子、16…永久分極された誘導体(エレクトレット)、18…ボス、20…撮像モジュール、21…撮像ユニット、22…収納容器、23…撮像素子、24…ボス用取付穴、30…駆動回路、31…パルス発生回路、32…位相器、33…昇圧回路、40…制御回路(CPU)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光束通過領域を有し外周部表面に複数の駆動電極が設けられた固定部材と、
該固定部材の中心部に回動可能に取り付けられ、該固定部材の上記駆動電極と対向するように配設され、該移動部材の上記固定部材側には永久分極された誘電体であるエレクトレットが設けられ、上記光束通過領域を覆うことが可能な面積を有する部材であって、上記光束通過領域に対し往復動して上記光束通過領域に進退を行う移動部材と、
を具備することを特徴とするエレクトレットシャッタ。
【請求項2】
光束通過領域を有し外周部表面に複数の駆動電極が設けられた固定部材と、
上記光束通過領域より入射した光線が照射されることが可能なように撮像素子が設けられ、上記固定部材が固着された収納部材と、
上記固定部材の中心部に回動可能に取り付けられ、上記固定部材の上記駆動電極に対向し、上記固定部材側には永久分極された誘電体であるエレクトレットが設けられ、上記光束通過領域を覆うことが可能な面積を有する部材であって、上記光束通過領域に対し往復動して上記光束通過領域に対し進退を行う移動部材と、
を具備することを特徴とするエレクトレットシャッタ。
【請求項3】
上記駆動電極に印加する交番電解の周波数を可変することによって上記移動部材の回転速度を可変することを特徴とする請求項1若しくは2に記載のエレクトレットシャッタ。
【請求項4】
被写体光束が通過する光束通過領域を有し、所定間隔で配置された複数の駆動用電極が配設された固定部材と、
上記固定部材の中心部に回動可能に取り付けられるもので、該固定部材の上記駆動電極と対向する面に、所定の間隔をおいて永久分極された誘電体であるエレクトレットが複数固着された移動部材と、
を具備することを特徴とするエレクトレットシャッタ。
【請求項5】
上記移動部材は、上記光束通過領域に対して往復動して上記光束通過領域に進退を行うことを特徴とする請求項4に記載のエレクトレットシャッタ。
【請求項6】
上記固定部材は、少なくとも上記移動部材によって上記光束通過領域を全開状態と全閉状態とに切り替えが可能な面積を有する形状であることを特徴とする請求項5に記載のエレクトレットシャッタ。
【請求項7】
上記固定部材は、略半円形状であることを特徴とする請求項6記載のエレクトレットシャッタ。
【請求項8】
上記移動部材は、少なくとも上記光束通過領域を覆う面積を有することを特徴とする請求項4に記載のエレクトレットシャッタ。
【請求項9】
上記駆動電極に印加する交番電解の周波数を可変することによって上記移動部材の回転速度を可変することを特徴とする請求項4若しくは5に記載のエレクトレットシャッタ。
【請求項10】
光束通過領域を有し外周部表面に複数の駆動電極が設けられた固定部材と、
該固定部材の中心部に回動可能に取り付けられ、該固定部材の上記駆動電極と対向するように配設され、該移動部材の上記固定部材側には永久分極された誘電体であるエレクトレットが設けられ、上記光束通過領域を覆うことが可能な面積を有する部材であって、上記光束通過領域に対し往復動して上記光束通過領域に進退を行う移動部材と、
上記固定部材の上記移動部材と対向する面の裏面側に配置され、上記光束通過領域より入射した光束通過領域受けて被写体を撮像するための撮像素子と、
を具備することを特徴とする撮像モジュール。
【請求項11】
光束通過領域を有し外周部表面に複数の駆動電極が設けられた固定部材と、
上記固定部材の中心部に回動可能に取り付けられ、上記固定部材の上記駆動電極に対向し、上記固定部材側には永久分極された誘電体であるエレクトレットが設けられ、上記光束通過領域を覆うことが可能な面積を有する部材であって、上記光束通過領域に対し往復動して上記光束通過領域に対し進退を行う移動部材と、
上記固定部材の上記移動部材と対向する面の裏面側に配置され、上記光束通過領域より入射した光束通過領域受けて被写体を撮像するための撮像素子と、
上記撮像素子が設けられると共に、上記固定部材が固着された収納部材と、
を具備することを特徴とする撮像モジュール。
【請求項12】
上記駆動電極に印加する交番電解の周波数を可変することによって上記移動部材の回転速度を可変することを特徴とする請求項10若しくは11に記載の撮像モジュール。
【請求項13】
被写体光束が通過する光束通過領域を有し、所定間隔で配置された複数の駆動用電極が配設された固定部材と、
上記固定部材の中心部に回動可能に取り付けられるもので、該固定部材の上記駆動電極と対向する面に、所定の間隔をおいて永久分極された誘電体であるエレクトレットが複数固着された移動部材と、
上記固定部材の上記移動部材と対向する面の裏面側に配置され、上記光束通過領域より入射した光束通過領域受けて被写体を撮像するための撮像素子と、
を具備することを特徴とする撮像モジュール。
【請求項14】
上記移動部材は、上記光束通過領域に対して往復動して上記光束通過領域に進退を行うことを特徴とする請求項13に記載の撮像モジュール。
【請求項15】
上記固定部材は、少なくとも上記移動部材によって上記光束通過領域を全開状態と全閉状態とに切り替えが可能な面積を有する形状であることを特徴とする請求項14に記載の撮像モジュール。
【請求項16】
上記固定部材は、略半円形状であることを特徴とする請求項15記載の撮像モジュール。
【請求項17】
上記移動部材は、少なくとも上記光束通過領域を覆う面積を有することを特徴とする請求項13に記載の撮像モジュール。
【請求項18】
上記駆動電極に印加する交番電解の周波数を可変することによって上記移動部材の回転速度を可変することを特徴とする請求項13若しくは14に記載の撮像モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−78769(P2006−78769A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−262564(P2004−262564)
【出願日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】