説明

エレクトロルミネッセンス測定を行うためのセル

【課題】液体試料のエレクトロルミネッセンス測定において、妨害成分による測定干渉を効率的に防ぐ測定セルを提供する。
【解決手段】長楕円形経路13の形状をした測定セルキャビティと、測定セルキャビティ14中へ流体を導入するために測定セルキャビティ14の縦方向に対して横に伸びる流体流入口経路4と、前記測定セルキャビティ14から流体を排出するための流体流出口経路6を持つ測定セル筐体2、10、12と、前記測定セルキャビティ上または内の少なくとも一つの作用電極16および対向電極と、前記測定セルキャビティ14中のエレクトロルミネッセンス効果を観察するための測定セル筐体中の光学観察素子とからなる測定セルにより、エレクトロルミネッセンス測定を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長楕円形経路の形状をした測定セルキャビティと、測定セルキャビティ中へ流体を導入するための後者に向けて測定セルキャビティの縦方向に対して横に伸びる流体流入口経路と前記測定セルキャビティから流体を排出するための流体流出口経路(6)を持つ測定セル筐体と前記測定セルキャビティ上または内の少なくとも一つの作用電極および対向電極と、前記測定セルキャビティ中のエレクトロルミネッセンス効果を観察するための測定セル筐体中の光学観察素子とからなるサンプル分析用のエレクトロルミネッセンス測定を行うためのセルに関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロルミネッセンステスト、特にそのような測定セルを用いて免疫学的検定により、サンプルを分析するための種類および方法の測定セルは、たとえばDE4342942A1、DE19803528A1、WO89/10551A1およびWO90/11511から公知であり、そのため本発明の主課題に関する基礎的技術の理解のために、これらの出版物を参照する。
【0003】
エレクトロルミネッセンスにより液体サンプルを分析するときには、前記液体サンプル中に含まれる物質(検体)の濃度を、通常求めることになる。医療分野においては、特に血液、尿、唾液などの体液の分析が、たとえば、抗体、抗原、ホルモンなどの底に含まれる検体の見地から非常に重要である。本発明は、特に、エレクトロルミネッセンス結合反応テストによるサンプルの分析に適用される改良された測定セルを参照する。
【0004】
そのようなテストにおける代表的な測定方法は、測定セル中の液体および/または混合物の多重交換を含む。従って、代表的測定の間、第1混合物は、測定セルキャビティ中の流体流入口経路を経由して、清浄化された測定セル中に誘導される。前記第1混合物は、サンプル、試薬および磁性粒子の抱卵である。現在考えられているテストにおいては、エレクトロルミネッセンス標的物質を用いてマークされまた前記分析の特性でもある複合分子は、これらの磁性粒子に固定される。そのような固定は、特定の1対の生化学的結合パートナーにより行われ、それにより、特に、ストレプトアビジン−ビオチン対による値となる。前記磁性粒子は、たとえば、ストレプトアビジンポリマーで被覆され、一方ビオチンは、複合分子に結合されている。
【0005】
前記測定セルにおいては、前記磁性粒子は、作用電極近くに配置された磁石の磁場中で、そこに結合された標識錯体と共に、作用電極表面にトラップされる。このことは、第1混合物の連続的流れのあいだに行われ、それにより、培養流体は、流体流出口経路を経由して、測定セルキャビティから排出される。培養流体を放出しながら作用電極上に前記磁性粒子を蓄積することは、結合フリー分離と呼ばれている。
【0006】
前記磁性粒子をトラップした後、測定試薬を次の工程でセル中に導入し、それにより、前記磁性粒子を前記測定試薬を用いて洗浄する。この洗浄工程は、潜在的には電気化学的反応を阻害する作用電極から未結合成分を除去することである。
【0007】
その後、エレクトロルミネッセンス反応が、前記作用電極に電位を印加することにより引き起こされ、それにより、発光光の強度は、ホトセンサーにより検出され、作用電極の表面上の標識化磁性粒子の濃度の尺度として評価され、またそれにより、この濃度が再び、サンプル中の検体濃度の尺度としての機能を果たす。
【0008】
エレクトロルミネッセンス測定後、前記セルは、通常洗浄液体で洗浄され、それは、さらなる工程で、次の測定用セルの状態調節のために、測定試薬と共に排出される。
【0009】
上記の洗浄工程が、効率的であることが、測定の品質のために、必須であり、前記培養から分離される測定試薬と磁性粒子の混合物中には、たとえば、サンプル成分として、妨害成分の最小可能性量が含まれる。そのような、妨害成分は、測定信号の変化を生じさせる。そのような測定干渉が、マトリックス効果とも呼ばれている。もし上記の洗浄工程が、あまり手荒く行われると、負の効果を引き起こすことにもなり、もし、たとえば、あまりにも大きな流速、乱流などによる場合には、磁性粒子は、作用電極上の位置から取り除かれる。
【0010】
公知の測定セルにおいては、流体流入口経路および流体流出口経路は、長楕円形状の測定セルキャビティの縦方向に直交する測定セルキャビティに、接触し、その結果、流体が、測定セルを通過するときに、角流体流れは、測定セルキャビティ内に誘導されるときは、角度90゜だけ急激に偏向され−最終的には、測定セルキャビティから放出されるときには、角度90゜だけ再び偏向される。そのような流体経路の形状は、構築と生産の理由から確立されたものであり、またそれ以後、測定セルの最適な操作に適していると考えられてきた。公知の測定セルにおいては、その筐体は、流体流入口経路および流体流出口経路より分散されたまたその横面の1つにより測定セルキャビティを、測定セルキャビティの周辺面上に設けられた作用電極を用いて区画するベースブロックからなる。前記流体経路は、このベースブロックを貫通し、前記ベースブロックの測定セルキャビティの周辺面の面に対して直交して伸びている。洗浄器として作用しまた中央クリアランスを持っているスペーサーが、前記ベースブロック上に置かれて、測定セルキャビティの側壁の制限を、内部輪郭をもって形成している。アクリルガラスパネルは、光学窓としてスペーサー洗浄器上に置かれて、その上に、作用電極の反対側に、対向電極が設けられている。
【発明の開示】
【0011】
本発明の目的は、エレクトロルミネッセンスのマトリックス効果を、公知の一般測定セルよりも、より効率的に防ぐことを特徴とする上記の種類の測定セルを提供することである。
【0012】
この問題を解決するために、本発明により、上記の特性からなる測定セルにおいて、前記流体流入口経路は、前記測定セルキャビティに接続される末端にある流体流入口経路が、流体を前記測定セルキャビティ中に導入するとき、ほとんど安定した流量プロファイルを発生させるような方式で形成されるように、前記測定セルキャビティへの遷移領域において少なくともほぼ連続的曲線コースを持っていることが示されている。
【0013】
本発明者らは、測定セルキャビティ中の流れ特性、特に結合フリー分離および洗浄工程に影響を与えることにより、発光測定工程を進歩させることが、より効率的に行われ、同時に、磁性粒子の蓄積および作用電極にトラップされるそこに結合される標識化錯体に対して、より緩やかになることを実現したところである。テストは、発光測定が起きるまでの結合フリーかつ洗浄工程のあいだで、安定でかつ相対的に低い流れが、記述したマトリックス効果の抑制に関して最良の結果を含んでいることを、示したところである。さらに、本発明者らは、測定セルキャビティ中の流れ特性は、作用電極の範囲において、流体流入口経路から測定セルキャビティへの遷移における幾何的構造的尺度により影響を受けかつ測定セルキャビティへの遷移において連続流れを可能にすることにより、測定セルキャビティ中に排出するように、その接合末端において流体流入口経路を構築することにより、均一性については最適化されることを実現した。
【0014】
測定セルキャビティへの遷移における流体流入口経路の幾何的配置を選択し、それが、測定セルキャビティ中へ誘導されるときに、流体流れの急激な偏向を避けることになる。
【0015】
好ましくは、流体流出口経路も、たとえば、遷移領域において少なくともほぼ安定的な曲線コースを測定セルキャビティに向けて持つことにより、またはそこから縦方向に、または必要により、測定セルキャビティの縦方向に対してある小さな角度に導くことにより、測定セルキャビティに対して連続的かつ安定的コースを持って接続されるべきである。
【0016】
前記測定セル筐体は、好ましくは、前記測定セルキャビティの前記周辺面上に設けられている前記作用電極を伴って、前記流体流入口経路および前記流体流出口経路によって画定され、かつ横面の1つを用いて前記測定セルキャビティを区切るベースブロックを含む。
【0017】
前記測定セルの好ましい実施態様によれば、流体流入口経路および前記流体流出口経路は、前記ベースブロックの前記測定セルキャビティの前記周辺面の面に対して少なくともほぼ直交して前記ベースブロック中に伸びまた前記測定セルキャビティの前記周辺面における前記測定セルキャビティ中に入っている。
【0018】
好ましくはシールとして作用しかつ中央クリアランスを持つスペーサーは、測定セルキャビティの前記周辺面上に置かれている。前記スペーサーは、前記測定セルキャビティを側面に沿って区切る内部輪郭を持っている。光学的窓を含みまたは光学的窓として作用するカバーまたはパネルは、前記スペーサー上に支持され、前記カバーは、前記ベースブロックに固定され、特に、そこに直接ネジ止めされている。代替として、光センサーを、可視素子として窓の代わりに設けることが出来る。
【0019】
前記測定セルの好ましい実施態様によれば、前記ベースブロックは、前記測定セルキャビティから対向する前記作用電極の側に磁石を収容するための中空のスペースを含んでいる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明による前記測定セルの実施態様を、以下にさらに詳細に説明する。
【0021】
図1によれば、前記測定セルは、好ましくは導電性材料で作られており経路4および経路6で散らされているベースブロック2からなっている。前記ベースブロック2は、シールエレメントおよび/またはスペーサーエレメント10がシールされる前記測定セルキャビティの周辺面8を含み、前記セルキャビティの輪郭は、図3に示す。前記シールエレメントおよび/またはスペーサーエレメント10は、その上で支持されるアクリルガラスなどから作られたカバー12に対するスペーサーとして作用し、発光検出用の外部ホトセンサー用光学視認素子としての働きをする。
【0022】
窓カバー12は、(図示されていない)ネジにより、前記ベースブロック2上に直接ネジ止めされている。前記ネジも、窓カバー12とベースブロック2のあいだでスペーサーとして作用する前記シールエレメントおよび/またはスペーサーエレメント10を貫通している(図2および図3中のネジ穴パターンを参照のこと)。
【0023】
前記シールエレメントおよび/またはスペーサーエレメント10は、中央クリアランス13を持っており(図3を参照のこと)、その内部周縁の輪郭は、たとえば垂直のほぼ菱形の前記測定セルキャビティ14を定めており、その残りは、前記ベースブロック2の周辺面8および窓カバー12により区切られている。対向電極は、前記作用電極16の反対側で、窓カバー12に置かれている(図示してない)。さらに、中空スペース18が、窓カバー12から離れて対向する前記作用電極16のその側上で、ベースブロック2中に設けられており、前記中空スペース18は、前記結合フリー分離工程のあいだに磁性粒子をトラップするための磁石を収容している。
【0024】
図1に見られるように、経路4、6は、その軸末端近くの前記測定セルキャビティ14中に入り、前記経路4、6は、前記測定セルキャビティ中に流体を誘導するときには、かなり安定な流れのプロファイルを生じさせるために、また流体流出口経路を経由して、前記測定セルキャビティ14から、流体のスムースな排出を用意するために、前記測定セルキャビティ14への遷移状態において、20、22で視認できる連続的に曲がったコースを持っている。
【0025】
そのような測定セルにより、前記作用電極16上での磁性粒子の蓄積のかなり純粋化された製造およびそれによるマトリックス効果の抑制が、容易に出来るように、前記測定セルキャビティ中の流体および/または流体混合物を効率的に交換でき、また必要により、流体および/または流体混合物、特に洗浄流体を用いた前記測定セルキャビティ14の安定したフラッシングが可能である。
【0026】
さらに、本発明の測定セルの機能は、その部品の組み立て変化を考慮して、より慣用性がある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図2中のA−Aで特徴づけられる断面を持った測定セルの断面図を示す。
【図2】図1中の矢Bで示された視認方向からの図1の測定セルの正面図を示す。
【図3】窓カバーを取り除いた測定セルの正面図を示す。
【符号の説明】
【0028】
2、10、12 測定セル筐体
4 流体流入口経路
6 流体流出口経路
8 側面
13 長楕円形経路
14 セルキャビティ
16 作用電極
18 中空スペース
20 曲線コース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長楕円形経路(13)の形状をした測定セルキャビティと、測定セルキャビティ(14)中へ流体を導入するために測定セルキャビティ(14)の縦方向に対して横に伸びる流体流入口経路(4)と、前記測定セルキャビティ(14)から流体を排出するための流体流出口経路(6)を持つ測定セル筐体(2、10、12)と、前記測定セルキャビティ上または内の少なくとも一つの作用電極(16)および対向電極と、前記測定セルキャビティ(14)中のエレクトロルミネッセンス効果を観察するための測定セル筐体中の光学観察素子とからなるエレクトロルミネッセンス測定を行うための測定セルであって、
前記流体流入口経路(4)は、前記測定セルキャビティに接続される末端にある流体流入口経路(4)が、流体を前記測定セルキャビティ(14)中に導入するとき、大いに安定した流量プロファイルを発生させるような方式で形成されるように、前記測定セルキャビティ(14)への遷移領域において少なくともほぼ連続的曲線コース(20)を持っていることを特徴とする測定セル。
【請求項2】
前記流体流出口経路(6)が、連続コースを持った前記測定セルキャビティ(14)に接続されていることを特徴とする請求項1記載の測定セル。
【請求項3】
前記流体流出口経路(6)が、測定セルキャビティ(14)の縦方向に対して横に伸びまた前記測定セルキャビティ(14)への遷移領域において少なくともほぼ連続的曲線コースを持っていることを特徴とする請求項1または2記載の測定セル。
【請求項4】
前記流体流出口経路は、その縦方向に伸びる前記測定セルキャビティの下から打ち出していることを特徴とする請求項1記載の測定セル。
【請求項5】
前記測定セル筐体は、前記流体流入口経路(4)および前記流体流出口経路(6)によって画定され、かつ横面(8)の1つを用いて前記測定セルキャビティ(14)を区切るベースブロック(2)を含み、前記作用電極(16)が、前記測定セルキャビティの前記周辺面(8)上に設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の測定セル。
【請求項6】
流体流入口経路(4)および前記流体流出口経路(6)は、前記ベースブロック(2)の前記測定セルキャビティの前記周辺面(8)の面に対して少なくともほぼ直交して前記ベースブロック(2)中に伸びまた前記測定セルキャビティの前記周辺面(8)における前記測定セルキャビティ(14)中に入ることを特徴とする請求項5記載の測定セル。
【請求項7】
スペーサー(10)は、前記ベースブロック(2)の前記周辺面(8)上に置かれ、前記測定セルキャビティ(14)を側面に沿って区切る内部輪郭を含み、光学的窓を含みまたは光学的窓として作用するカバー(12)は、前記スペーサー(10)上に支持され、前記カバーは、前記ベースブロック(2)に固定されまたは好ましくはネジ止めされていることを特徴とする請求項5または6のいずれか1項に記載の測定セル。
【請求項8】
前記ベースブロック(2)は、前記測定セルキャビティ(14)から対向する前記作用電極(16)の側に磁石を収容するための中空のスペースを含んでいることを特徴とする請求項5、6、7のいずれか1項に記載の測定セル。
【請求項9】
サンプル分析用のエレクトロルミネッセンス測定を行うための、請求項1〜8のいずれか1項に記載の測定セルの用途。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−51813(P2008−51813A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−213073(P2007−213073)
【出願日】平成19年8月17日(2007.8.17)
【出願人】(501205108)エフ ホフマン−ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト (285)
【Fターム(参考)】