説明

エレクトロルミネッセンス素子および機能デバイス

【課題】発光層上に陰極層を形成する際に、発光層が劣化する欠点を解消し、かつ、本来の機能の低下の無いエレクトロルミネッセンス素子を提供すること、およびそのようなエレクトロルミネッセンス素子を製造するのに適した製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】基材2上に陽極層3A、発光層4、電荷輸送性保護層5、および陰極層3Bが順に積層された積層構造を有しており、電荷輸送性保護層5を透明絶縁材料で構成するか又は透明絶縁材料及び金属で形成してエレクトロルミネッセンス素子1を構成することにより、課題を解決することができた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエレクトロルミネッセンス素子および機能デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
発光層を一対の電極の間にはさみ、両電極間に電圧をかけて発光させるエレクトロルミネッセンス素子は、種々のディスプレイ素子の中でも輝度が高く、応答速度が速いために注目され、実用化が進んでいる。
【0003】
エレクトロルミネッセンス素子を製造するには、基材上に、陽極層、発光層および陰極層を順次積層する方式が採られ、実際の発光層の形成は、発光層を構成する種々の層を順次積層することによって行なわれる。
【0004】
上記の各層のうち、陽極層および陰極層のような導電層は、スパッタリングによって積層することが、製造上効率的であるが、陰極層を積層する際には、下地が発光層であるので、発光層が高いエネルギーを有するスパッタ粒子や、プラズマが用いられるときはプラズマ雰囲気に曝されることにより、発光層の性能が低下しやすい。
【0005】
ところで、エレクトロルミネッセンス素子は、発光層を構成する物質が物理的もしくは化学的な環境変化に対してデリケートで、しばしばダークスポットを生じることがあるため、原因の一つである空気中の水分の浸透を防止する目的で、エレクトロルミネッセンス素子全体を、水分を遮断する保護膜で覆うことが行なわれている。(特許文献1)。
また、基材上に、陽極、スパッタ保護層、および陰極を順次積層する方式において、スパッタ保護層を金、ニッケル又はアルミニウムを用いて構成することも提案されている。(特許文献2)。
有機エレクトロルミネッセンス素子の陰極を、有機発光層側より、電子注入電極層(Mg、Ca、Ba等で構成)および非晶質透明導電膜(In−Zn−O系の酸化物膜で構成)とで構成し、ITO等で構成した陰極が空気中の水分や酸素が浸入しやすいことを回避することが提案されている。(特許文献3)。
さらには、基材、下部電極、有機EL層、バッファ層、および上部電極からなる有機EL素子のバッファ層をAu、Pt、Pd、Ag等の金属でドーピングしたフタロシアニン化合物で構成したもの(特許文献4)、BCP(バソクプロン)等の電子輸送性有機材料にアルカリ金属、アルカリ土類金属としてLi、Cs、Ba、Sr、Ca等を混合したものを電子輸送保護層とするもの(特許文献5))も提案されている。
【特許文献1】特開2003−338363号公報。
【特許文献2】特開2003−77651号公報。
【特許文献3】特開平10−162959号公報。
【特許文献4】特開2004−296234号公報。
【特許文献5】特開2004−127740号公報。
【0006】
特許文献1においては、陰極上に高融点金属による保護膜を設ける際に、既に積層されている陰極がバッファとなるため、保護膜をスパッタで形成することができるとされているが、陰極を積層する際の発光層の劣化に関しては何ら解決策が示されていない。
また、特許文献2においては、陰極を積層する際の発光層の劣化を解消する課題について触れているものの、金属を用いると、保護機能上は厚みが厚い方が好ましいが、逆に透明性が低下するため、必要な保護機能と透明性との両立が困難であった。
特許文献3においては、電子注入電極層上にスパッタにより非晶質透明導電膜を形成する際に、下層の電子注入電極層が保護効果を生む可能性があるものの、保護効果を発揮させるのに十分な厚みを持たせると、透過率が低下する欠点が避けられない。
文献4においては、金属ドーピングしたフタロシアニンを用いる旨の限定が、また、文献5においては、アルカリ金属ドーピングもしくはアルカリ土類金属ドーピングしたBCP(バソキュプロン)等を用いる旨の限定がなされている。しかし、本発明では金属ドーピングしたフタロシアニンは用いない。また、文献5において用いられる金属、Li、Cs、Ba、Sr、Caの仕事関数はいずれも3.0eVより小さく、本発明で用いられる金属の仕事関数は3.0eV以上であって、相違している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明においては、発光層上に陰極層を形成する際の上記の問題点を解消し、しかも、本来の機能の低下のないエレクトロルミネッセンス素子を提供すること、およびその
ために用いる保護層の保護機能と透明性の両立が可能なものであること、並びに、そのようなエレクトロルミネッセンス素子を製造するのに適した製造方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者等の検討によれば、エレクトロルミネッセンス素子の陰極層の形成に先立って、透明絶縁材料もしくは、透明絶縁材料に金属を加えた素材で保護層を積層することにより、従来、陰極層の形成の際に起こりやすかった発光層の劣化が抑制されること、およびそのような層を前もって積層しても透明性が低下しないこと、並びに、得られるエレクトロルミネッセンス素子の性能上の問題が生じないことが判明し、本発明に到達することができた。
【0009】
第1の発明は、基材上に陽極層、発光層、および陰極層を少なくとも有し、前記発光層と前記第二電極層との間に透明絶縁材料を主体とする素材からなる保護層を有することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子に関するものである。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、前記保護層が前記透明絶縁材料および金属を素材とすることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子に関するものである。
【0011】
第3の発明は、第2の発明において、前記保護層における前記金属の体積基準の割合が、30%以下であることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子に関するものである。
【0012】
第4の発明は、第2または第3の発明において、前記金属の仕事関数が3.0eV以上であることを特徴とする請求項2または請求項3記載のエレクトロルミネッセンス素子。
【0013】
第5の発明は、第1〜第4いずれかの発明において、前記保護層の厚みが10nm〜1000nmであることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子に関するものである。
【0014】
第6の発明は、基材上に陽極層、発光層、透明絶縁材料を主体とする素材からなる保護層、および陰極層を順次積層する工程を含み、前記保護層を積層する工程を化学的気相成長法、真空蒸着法、もしくは塗布法によって行ない、前記陰極層を積層する工程をスパッタリング法もしくはイオンプレーティング法によって行なうことを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子の製造方法に関するものである。
【0015】
第7の発明は、基材上に陽極層、電界もしくは電流により機能を発揮する機能層、および陰極層をこの順序で有しており、前記機能層と前記陰極層との間に透明絶縁材料を主体とする素材からなる保護層を有することを特徴とする機能デバイスに関するものである。
【0016】
第8の発明は、前記保護層が前記透明絶縁材料および金属を素材とすることを特徴とする請求項7記載の機能デバイスに関するものである。
【発明の効果】
【0017】
第1の発明によれば、発光層と陰極層との間に、透明絶縁材料を主体とする素材からなる保護層を有することにより、陰極層形成時の発光層の劣化を抑制することが可能である上、厚みが増加しても透明性が低下せず、しかも本来的な機能の低下の無いエレクトロルミネッセンス素子を提供することができる。
【0018】
第2の発明によれば、第1の発明の効果に加えて、保護層が、透明絶縁材料および金属を素材とするので、保護層の導電性の確保がより確実に行なえるエレクトロルミネッセンス素子を提供することができる。
【0019】
第3の発明によれば、保護層の素材中の金属の割合を規定したので、第2の発明の効果をより確実に発揮することが可能なエレクトロルミネッセンス素子を提供することができる。
【0020】
第4の発明によれば、保護層の素材中の金属の仕事関数の下限を規定したので、第2または第3の発明の効果に加えて、保護層に用いる金属がアルカリ金属、アルカリ土類金属に限られることが無く、しかも、高仕事関数の金属を用いることが出来、保護層自体の酸化耐性を高めることが可能なエレクトロルミネッセンス素子を提供することができる。
【0021】
第5の発明によれば、第1〜第4いずれかの発明の効果に加えて、保護層の厚みを規定したので、陰極層形成時の発光層の劣化を抑制することが確実に行なえ、しかも、素子の抵抗が過大にならないエレクトロルミネッセンス素子を提供することができる。
【0022】
第6の発明によれば、保護層を化学的気相成長法、真空蒸着法、もしくは塗布法によって積層し、陰極層をスパッタリング法もしくはイオンプレーティング法によって積層するので、各層を形成する際の発光層の劣化を抑制することが可能で、しかも、陰極層を効率よく積層することが可能なエレクトロルミネッセンス素子の製造方法を提供することができる。
【0023】
第7の発明によれば、電界もしくは電流により機能を発揮する機能層と陰極層との間に透明絶縁材料を主体とする素材からなる保護層を有することにより、陰極層形成時の機能層の劣化を抑制することが可能な機能デバイスを提供することができる。
【0024】
第8の発明によれば、電界もしくは電流により機能を発揮する機能層と陰極層との間に透明絶縁材料および金属を素材とする保護層を有することにより、陰極層形成時の機能層の劣化を抑制することが可能な機能デバイスを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1は、本発明のエレクトロルミネッセンス素子の積層構造を示す図である。
図2は、本発明における発光層の積層構造の例を示す図である。
【0026】
図1に示すように、本発明における基本的なエレクトロルミネッセンス素子1は、基材2上に、陽極層3A、発光層4、保護層5、および陰極層3Bがこの順に積層された積層構造を有するものである。ここで、発光層4自身は、後にも述べるように、種々の層からなる積層構造を有するものであってもよい。また、エレクトロルミネッセンス素子1が2層以上積層されたマルチフォトン構造であってもよい。
背景技術の説明において触れたように、陰極層3B上、もしくは上記のエレクトロルミネッセンス素子1の全体が、防湿性等の被覆層で覆われていても良い。
【0027】
本発明における特徴的な部分である保護層5は、透明絶縁材料を主体とする素材からなるものであるか、あるいは、透明絶縁材料および金属を素材とするものである。
【0028】
保護層5は、透明絶縁材料で構成されることが好ましい。透明絶縁材料としては、金属や半導体の酸化物、窒化物、フッ化物、硫化物やこれらの混合物等の無機材料、可視光域での透過率の高い有機材料を挙げることができる。保護層5は、透過率が40%以上であることが好ましく、40%以上の透過率が確保されれば、必ずしも電気的性質による限定を要しない。保護層5を構成する材料の導電率が高ければ、単独で保護層とすることができ、材料の導電率が低い場合には、金属を共蒸着することで保護層とすることができる。
【0029】
上記の金属の酸化物、窒化物、もしくは酸化窒化物等の透明絶縁材料は、可視領域での高い透過率を有するので、厚みが増しても、透明性を保つことが可能である。
【0030】
保護層5を構成する素材は、透明絶縁材料および金属からなっていてもよい。金属としては、Be、Mg、Sc、Y、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Al、Ga、In、Ti、Sn、Pb、Biを挙げることができる。これらの金属としては、仕事関数が3.0eV以上であるものが好ましい。
【0031】
保護層5が透明絶縁材料および金属からなる場合、透明絶縁材料の体積と金属の体積の和において、金属が占める割合が30%以下であることが好ましい。金属が占める割合がこれより高いと不透明になる上、保護層5の絶縁性が低くなるからである。
【0032】
保護層5の厚みは、10nm〜1000nmであることが好ましい。保護層の厚みが10nmよりも薄いと、保護効果が十分に得られず、発光層の劣化を完全に抑制することができない。また、保護層の厚みが1000nmよりも厚いと、保護層の抵抗が増大し、素子の抵抗が過大になってしまう。
保護層5が透明絶縁材料および金属からなる場合、透明絶縁材料の体積と金属の体積の和において金属が占める割合(金属濃度)が増加すると、保護層の導電率が高くなるために、保護層5の膜厚を10nm〜1000nm程度まで厚膜化しても素子の高抵抗化を引き起こさない。従って、金属濃度が高いほど保護層5の膜厚を厚くでき、より確実な保護効果を有する保護層5を形成することができる。一方で、金属濃度が高すぎると透過率が低下するために、保護層が不透明になるという問題がある。従って、保護層5は、膜厚、金属濃度、透過率において上記条件を満たすことが好ましい。
【0033】
保護層5を形成する方法としては、下層の発光層4の劣化を招かない意味で、物理的気相成長法であるスパッタリング法やイオンプレーティング法等による高エネルギー物質を付着させる方法によるよりも、化学的気相成長法もしくは物理的気相成長法の範ちゅうである真空蒸着法による低エネルギー物質を付着させる方法による方が好ましく、塗布法によってもよい。化学的気相成長法や真空蒸着法による場合には、気体となった物質の持つ運動エネルギーが低いので、保護層5を形成する対象物である発光層4に対して与えるエネルギーが小さいからである。特に、真空蒸着法による場合は、酸素等の反応の可能性のある気体が導入されないことも有利な理由の一つである。従って、スパッタリング法やイオンプレーティング法を採用する場合、または化学的気相成長法を採用する場合でも、酸素等の反応の可能性のある気体を導入せず、希ガス等の反応性の無いガスを導入することが好ましい。
【0034】
真空蒸着法としては抵抗加熱蒸着法、フラッシュ蒸着法、アーク蒸着法、レーザー蒸着法、高周波加熱蒸着法、もしくは電子ビーム加熱蒸着法を挙げることができる。
また、スパッタリング法としてはDC2極スパッタリング法、RF2極スパッタリング法、3極スパッタリング法、4極スパッタリング法、ECRスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法、もしくはマグネトロンスパッタリング法を挙げることができる。これら以外にも、下層へのダメージを抑制可能なスパッタリング法として、段階スパッタリング法、対向ターゲット式スパッタリング法、2V字カソード対向ターゲット式スパッタリング法、プラズマ拘束対向ターゲット式スパッタリング法、ミラートロンスパッタリング法、もしくは対向&コニカル形状ターゲットスパッタリング法等を挙げることができる。
【0035】
基材2は、陽極層3A以降の各層を支持するものである。基材2側から発光によって生じた光を取り出す場合には透明性を有することが好ましいが、陰極層3B側から光を取り出す場合には、必ずしも透明性を有する必要は無い。
【0036】
具体的に基材2を構成する素材としては、石英、ガラス、シリコンウェハ、TFT(薄膜トランジスタ)が形成されたガラス等の無機材料を挙げることができる。
または基材としては、高分子からなるもの、即ち、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等を挙げることもできる。
【0037】
基材としては、上記の中でも、石英、ガラス、シリコンウェハ、またはスーパーエンジニアリングプラスチックであるポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を用いることが好ましい。これらの材料は200℃以上の耐熱性を有しており、製造工程での基材温度を高くすることができるからである。特にTFTを用いたアクティブ駆動表示装置を製造する場合、製造工程中に高温となるので、上記の材料を好適に用いることができる。
【0038】
基材2の厚みとしては、基材2を構成する素材、もしくは有機エレクトロルミネッセンス素子の用途により、それぞれ適切に選択されることが好ましいが、0.005mm〜5mm程度である。
【0039】
基材2として、高分子材料を用いる場合、高分子材料から発生するガスによって発光層が劣化する可能性があることから、基材2と陽極層3Aとの間にシリコン酸化物やシリコン窒化物等からなるガスバリア層を設けてもよい。
【0040】
陽極層3Aは、エレクトロルミネッセンス素子1の使われ方により、陽極であっても陰極であってもよく、また、透明もしくは半透明であってもよいし、透明もしくは半透明でなくてもよい。例えば基材2側から光を取出す場合には、陽極層3Aが透明または半透明であることが好ましく、陰極層3B側から光を取出す場合は、陽極層3Aは、必ずしも透明もしくは半透明でなくてもよい。また、基材2側および陰極層3B側の両側から光を取出す場合には、陽極層3Aおよび陰極層3Bの両方が透明もしくは半透明であることが好ましい。
【0041】
陽極層3Aを構成する素材としては、導電性材料であれば特に限定はされなく、例えばAu、Ta、W、Pt、Ni、Pd、Cr、Cu、Mo、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の金属、これらの金属の酸化物、およびAlLi、AlCa、AlMg等のAl合金、MgAg等のMg合金、Ni合金、Cr合金、アルカリ金属の合金、アルカリ土類金属の合金等の合金などを挙げることができる。
以上の導電性材料は、単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよく、2種類以上を用いる場合には、各々の素材からなる層を積層してもよい。
さらに、導電性材料としては、In−Sn−O、In−Zn−O、In−O、Zn−O、Zn−O−Al、Zn−Sn−O等の導電性無機酸化物、金属ドープされたポリチオフェン、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリアルキルチオフェン誘導体、ポリシラン誘導体等の導電性高分子、α−Si、α−SiCなどを用いることもできる。
【0042】
陽極層3Aを形成する方法としては、スパッタリング法、真空加熱蒸着法、EB蒸着法、イオンプレーティング法等を挙げることができる。
【0043】
発光層4は、蛍光体層単独で構成され得るが、電子や正孔の注入性、輸送性を向上させる目的で、蛍光体層に加えて、正孔注入輸送層や電子注入層等の種々の層を積層した積層構造からなることが多く、このような積層構造としては多くの種類がある。例えば、次の(1)〜(3)のような積層構造が推奨できるが、これらに限られるものではない。
(1)正孔注入輸送層/蛍光体層
(2)蛍光体層/電子注入層
(3)正孔注入輸送層/蛍光体層/電子注入層
図2に上記のように、正孔注入輸送層41、蛍光体層42、および電子注入層43が順次積層した積層構造を有する発光層4の例を示す。
また、これらのように層の機能を分けずに、機能の異なる材料を混合して、複数の機能を併せ持つ層を設けることもできる。
以下に、正孔注入輸送層、蛍光体層、電子注入層の各層について説明する。
【0044】
正孔注入輸送層を構成する材料としては、陽極から注入された正孔を安定に発光層内へ輸送することができる材料であれば特に限定はされない。例えば、フェニルアミン系、スターバースト型アミン系、フタロシアニン系、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化アルミニウムなどの酸化物、アモルファスカーボン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレンなどの誘導体等を挙げることができる。より具体的には、ビス(N−(1−ナフチル−N−フェニル)ベンジジン(α−NPD)、4,4,4−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(MTDATA)、ポリ3,4エチレンジオキシチオフェン−ポリスチレンスルホン酸(PEDOT−PSS)、ポリビニルカルバゾール(PVCz)等を挙げることができる。
【0045】
正孔注入輸送層の厚みとしては、陽極層または陰極層から正孔を注入し、発光層へ正孔を輸送する機能が十分に発揮される厚みであれば特に限定されないが、具体的には、0.5nm〜300nmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは10nm〜100nmの範囲内である。
【0046】
正孔注入輸送層を形成する方法としては、例えば蒸着法、印刷法、インクジェット法、スピンコート法、キャスティング法、ディッピング法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷法、スプレーコート法、もしくは自己組織化法(交互吸着法、自己組織化単分子膜法)等を挙げることができるがこれに限定されない。中でも、蒸着法、スピンコート法、もしくはインクジェット法等を挙げることが
できる。
【0047】
蛍光体層は、電子と正孔との再結合の場を提供して発光する機能を有するものであり、通常、色素系発光材料、金属錯体系発光材料、もしくは高分子系発光材料から構成されるものである。
【0048】
蛍光体層を構成し得る色素系発光材料としては、シクロペンタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、トリフマニルアミン誘導体、クマリン誘導体、オキサジアゾールダイマー、ピラゾリンダイマー等を挙げることができる。
【0049】
蛍光体層を構成し得る金属錯体系発光材料としては、アルミニウムキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾール亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、ユーロピウム錯体、イリジウム金属錯体、プラチナ金属錯体等、中心金属に、Al、Zn、Be、Ir、Pt等、またはTb、Eu、Dy等の希土類金属を有し、配位子にオキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造等を有する金属錯体等を挙げることができる。具体的には、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq3)を用いることができる。
【0050】
蛍光体層を構成し得る高分子系発光材料としては、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリフルオレノン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリキノキサリン誘導体、ポリジアルキルフルオレン誘導体、およびそれらの共重合体等を挙げることができる。また、上記色素系発光材料および金属錯体系発光材料を高分子化したものも挙げられる。
【0051】
蛍光体層の厚みとしては、電子と正孔との再結合の場を提供して発光する機能を発現することができる厚みであれば特に限定はなく、例えば1nm〜200nm程度とすることができる。
【0052】
蛍光体層中には、発光効率の向上、発光波長を変化させる等の目的で蛍光発光または燐光発光するドーパントを添加してもよい。このようなドーパントとしては、例えば、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクリドン誘導体、スクアリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、スチリル色素、テトラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾン、キノキサリン誘導体、カルバゾール誘導体、フルオレン誘導体等を挙げることができる。
【0053】
蛍光体層を形成する方法としては、エレクトロルミネッセンス素子に要求される微細なパターンの形成が可能な方法であれば特に限定されるものではない。例えば蒸着法、印刷法、インクジェット法、スピンコート法、キャスティング法、ディッピング法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷法、スプレーコート法、もしくは自己組織化法(交互吸着法、自己組織化単分子膜法)等を挙げることができる。中でも、蒸着法、スピンコート法、もしくはインクジェット法を用いることが好ましい。
【0054】
エレクトロルミネッセンス素子1を用いて、フルカラー表示もしくはマルチカラー表示のディスプレイを作製する際には、異なる色を発光する蛍光体層を微細な形状に形成した上、所定の配列で並べる必要があることから、蛍光体層のパターニングを要することがある。蛍光体層のパターニングは、異なる発光色ごとに、マスキング法により塗り分けや蒸着を行なうか、印刷法もしくはインクジェット法によって行えばよい。配列した蛍光体層間には隔壁を有していてもよい。隔壁があると、インクジェット法等によって蛍光体層を形成する際に、蛍光体が隣接した区域に広がらない利点が生じる。隔壁自体は、感光性ポリイミド樹脂、アクリル系樹脂等の光硬化型樹脂、または熱硬化型樹脂、および無機材料等で形成できる。また、隔壁を形成する材料の表面エネルギー(濡れ性)を変化させる処理が行なわれてもよい。
【0055】
電子注入層を構成する材料としては、発光層内への電子の注入を安定化させることができる材料であれば特に限定はされない。例えば、アルミニウム、ストロンチウム、カルシウム、リチウム、セシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ストロンチウム、酸化リチウム、フッ化リチウム、フッ化マグネシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、フッ化セシウム、ポリメチルメタクリレートポリスチレンスルホン酸ナトリウム等のようなアルカリ金属またはアルカリ土類金属、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の酸化物、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のフッ化物、アルカリ金属の有機錯体等を挙げることができる。中でも、アルカリ土類金属のフッ化物を用いることが好ましい。アルカリ土類金属のフッ化物は、有機EL層の安定性および寿命を向上させることができるからである。これは、アルカリ土類金属のフッ化物が、上述したアルカリ金属の化合物やアルカリ土類金属の酸化物などに比べて水との反応性が低く、電子注入層の成膜中あるいは成膜後における吸水が少ないためである。さらに、アルカリ土類金属のフッ化物が、上述したアルカリ金属の化合物に比べて融点が高く耐熱安定性に優れるためである。
【0056】
電子注入層の厚みとしては、上述したアルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物等の導電率、透過率を考慮すると、0.2nm〜20nm程度の範囲内であることが好ましい。
【0057】
陰極層3Bを構成する素材、および陰極層3Bを形成する方法としては、陽極層3Aについて説明したのと同様である。
【0058】
以上においては、本発明を有機エレクトロルミネッセンス素子に適用した例を中心として説明したが、本発明の適用範囲は、単に有機エレクトロルミネッセンス素子のみに留まるものではない。本発明におけるような保護層は、キャリア注入および輸送機能が必要とされ、かつ発光層等の機能層上に陰極層等を真空成膜により形成する際のダメージを抑制する機能が望まれるデバイスに対しては、広く、適用可能であるからである。
【0059】
具体的には、上記の説明における発光層は、電界もしくは電流により機能を発揮する種々の機能層であってもよく、そのような機能層を用いて構成された機能デバイスも本発明の適用範囲に含まれる。機能層としては、無機エレクトロルミネッセンス層、トランジスタ層、メモリ層、太陽電池層、もしくは液晶層等を挙げることができる。
【実施例1】
【0060】
ガラス基板上に、まず、酸化インジウム錫(ITO)の薄膜(厚み:150nm)をスパッタリング法により形成して陽極を形成した。陽極を形成した後、基板の洗浄およびUVオゾン処理を施した。その後、大気中にて、ITO薄膜上にポリエチレンジオキシチオフェン−ポリスチレンスルホネート(略称:「PEDOT−PSS」)の溶液をスピンコート法により塗布し、塗布後乾燥させて、正孔注入輸送層(厚み:80nm)を形成した。
次に、低酸素(酸素濃度:0.1ppm以下)、低湿度(水蒸気濃度:0.1ppm以下)状態のグローブボックス中にて、上記正孔注入輸送層上にフルオレン系コポリマー(アメリカン・ダイ・ソース社製、品番:ADS133YE)の溶液をスピンコート法により塗布し、塗布後乾燥させて、発光層(厚み:80nm)を形成した。

【0061】
発光層まで形成した基板に対し、真空中(圧力:1×10-4Pa)にて、発光層上にCa薄膜(厚み:10nm)を抵抗加熱蒸着により成膜し、電子注入層を形成した。
次に真空中(圧力:1×10-4Pa)にて、電子注入層上に、SiOとAgを抵抗加熱蒸着法により共蒸着して成膜し、保護層(厚み:100nm)を形成した。なお、蒸着源におけるSiとAgの体積比を、SiO/Ag=97/3とした。因みにSiOの成膜速度は0.97Å/s、Agの成膜速度は0.03Å/sである。
さらに、上記保護層上に、IZOの薄膜(厚み:150nm)を対向ターゲット式スパッタリング法により成膜し、陰極を形成した。
陰極形成後、低酸素(酸素濃度:0.1ppm以下)、低湿度(水蒸気濃度:0.1ppm以下)状態のグローブボックス中にて無アルカリガラスにより封止し、有機EL素子を得た。
【0062】
得られた有機EL素子の陽極と陰極の間に電圧を印加し、0.01cd/m2の輝度が得られる電圧(発光開始電圧)を測定したところ、4.1Vであった。また、有機EL素子を肉眼で観察した範囲では、ダークスポット等の欠陥は生じていなかった。
【0063】
(比較例1)
保護層を形成せず、また、電子注入層上に直接IZOを成膜して陰極を形成した以外は実施例1と同様にして、有機EL素子を得た。
【0064】
この比較例1で得られた有機EL素子について、実施例1で得られた有機EL素子の場合と同様にして発光開始電圧を測定したところ、6.0Vであった。
従って、比較例1と実施例1で得られた有機EL素子の発光開始電圧が相違した結果から見て、保護層を形成していない比較例1の有機EL素子においては、陰極形成の際の電子注入層および発光層のスパッタダメージによって、発光特性が低下しており、これに対し、保護層を形成した実施例1の有機EL素子においては、スパッタダメージが抑制されていることが確認された。
【0065】
(比較例2)
保護層およびIZOの薄膜を形成せず、真空中(圧力:1×10-4Pa)にて電子注入層上に直接Agの薄膜(厚み:150nm)を抵抗加熱蒸着により成膜して陰極を形成した以外は実施例1と同様にして、有機EL素子を得た。
【0066】
この比較例2で得られた有機EL素子について、実施例1で得られた有機EL素子の場合と同様にして発光開始電圧を測定したところ、3.8Vであった。
従って、比較例2と実施例1の結果から、陰極を形成するのに先立って保護層を形成した有機EL素子では、陰極をスパッタで成膜しても、蒸着の場合にくらべて、素子の特性の低下がほぼ無いことが確認された。
【0067】
(比較例3)
保護層として、SiOとAgの共蒸着膜の代わりに、Ag薄膜(厚み:1nm)を抵抗加熱蒸着法により成膜した以外は、実施例1と同様に行なって、有機EL素子を得た。
【0068】
この比較例3で得られた有機EL素子について、実施例1で得られた有機EL素子の場合と同様にして発光開始電圧を測定したところ、5.4Vであった。
【0069】
(比較例4)
保護層として、SiOとAgの共蒸着膜の代わりに、Ag薄膜(厚み:10nm)を抵抗加熱蒸着法により成膜した以外は、実施例1と同様に行なって、有機EL素子を得た。
【0070】
この比較例4で得られた有機EL素子について、実施例1で得られた有機EL素子の場合と同様にして発光開始電圧を測定したところ、5.3Vであった。
【0071】
実施例1、比較例3および4の結果から、保護層の厚みが薄くなると、発光特性が低下することが確認された。
【実施例2】
【0072】
保護層の厚みを10nmとした以外は、実施例1と同様に行なって、有機EL素子を得た。
この実施例2で得られた有機EL素子について、実施例1で得られた有機EL素子の場合と同様にして発光開始電圧を測定したところ、4.5Vであった。実施例1、実施例2、比較例1の結果から、保護層の厚みを10nmにすると、保護層のない場合よりは発光特性が向上するものの、保護層の厚みが100nmの場合よりは、保護効果が低下して、発光特性が低下することが確認された。
【実施例3】
【0073】
保護層の膜厚を280nmとした以外は、実施例1と同様に行なって、有機EL素子を得た。
この実施例3で得られた有機EL素子について、実施例1で得られた有機EL素子の場合と同様にして発光開始電圧を測定したところ、4.0Vであった。この結果から、保護層の厚みを280nmまで増大させても、保護効果が持続し、発光特性が低下しないことが確認された。
【実施例4】
【0074】
ガラス基板上に、まず、酸化インジウム錫(ITO)の薄膜(厚み:150nm)をスパッタリング法により形成して陽極を形成した。陽極を形成した後、基板の洗浄およびUVオゾン処理を施した。その後、大気中にて、ITO薄膜上にポリエチレンジオキシチオフェン−ポリスチレンスルホネート(略称:「PEDOT−PSS」)の溶液をスピンコート法により塗布し、塗布後乾燥させて、正孔注入輸送層(厚み:80nm)を形成した。
次に、真空中(圧力:1×10-4Pa)にて、発光層上にα−NPD(厚み:40nm)、Alq3(厚み:60nm)、LiF(厚み:0.5nm)、Ca(厚み:10nm)を抵抗加熱蒸着により順次成膜し、正孔輸送層、発光層、電子注入層を形成した。
次に真空中(圧力:1×10-4Pa)にて、電子注入層上に、SiOとAgを抵抗加熱蒸着法により共蒸着して成膜し、保護層(厚み:100nm)を形成した。なお、蒸着源におけるSiとAgの体積比を、SiO/Ag=97/3とした。因みにSiOの成膜速度は0.97Å/s、Agの成膜速度は0.03Å/sである。
さらに、上記保護層上に、IZOの薄膜(厚み:150nm)を対向ターゲット式スパッタリング法により成膜し、陰極を形成した。
陰極形成後、低酸素(酸素濃度:0.1ppm以下)、低湿度(水蒸気濃度:0.1ppm以下)状態のグローブボックス中にて無アルカリガラスにより封止し、有機EL素子を得た。
この実施例4で得られた有機EL素子について、実施例1で得られた有機EL素子の場合と同様にして発光開始電圧を測定したところ、2.35Vであった。また、有機EL素子を肉眼で観察した範囲では、ダークスポット等の欠陥は生じていなかった。
【0075】
(比較例5)
保護層を形成せず、また、電子注入層上に直接IZOを成膜して陰極とした以外は、実施例6と同様に行なって、有機EL素子を得た。
この比較例5で得られた有機EL素子について、実施例6で得られた有機EL素子の場合と同様にして発光開始電圧を測定したところ、2.4Vであった。
従って、比較例5と実施例6で得られた有機EL素子の発光開始電圧が相違した結果から見て、保護層を形成していない比較例5の有機EL素子においては、陰極形成の際の電子注入層および発光層のスパッタダメージによって、発光特性が低下しており、これに対し、保護層を形成した実施例6の有機EL素子においては、スパッタダメージが抑制されていることが確認された。
【0076】
(比較例6)
保護層およびIZOの薄膜を形成せず、真空中(圧力:1×10-4Pa)にて電子注入層上に直接Agの薄膜(厚み:150nm)を抵抗加熱蒸着により成膜して陰極を形成した以外は実施例6と同様にして、有機EL素子を得た。
この比較例6で得られた有機EL素子について、実施例7で得られた有機EL素子の場合と同様にして発光開始電圧を測定したところ、2.3Vであった。
従って、比較例6と実施例6の結果から、陰極を形成するのに先立って保護層を形成した有機EL素子では、陰極をスパッタで成膜しても、蒸着の場合にくらべて、素子の特性の低下が少ないことが確認された。
実施例1で用いたのと同じガラス基板上に、SiOとAgの共蒸着膜(厚み:100nm)のみを形成した。SiOとAgの共蒸着膜の形成条件は実施例1におけるのと同じである。
得られたSiOとAgの共蒸着膜の透過率を分光光度計によって測定したところ、波長550nmでの透過率は98%であり、高い透明性を有していることが確認された。
【0077】
上記のSiOとAgの共蒸着膜の透過率の測定結果から、SiOとAgの共蒸着膜は、数10nmの膜厚でも、高い透明性を有することが確認された。
【0078】
実施例1で用いたのと同じガラス基板上に、Ag薄膜(厚み:1nm)のみを抵抗加熱蒸着法により成膜した。薄膜の形成条件は比較例3におけるのと同じである。
実施例1で用いたのと同じガラス基板上に、Ag薄膜(厚み:10nm)のみを抵抗加熱蒸着法により成膜した。薄膜の形成条件は比較例4におけるのと同じである。
【0079】
得られたAg薄膜の透過率を分光光度計によって測定したところ、厚みが1nmの方が92%、厚みが10nmの方が41%であった。これらの結果から、10nm以上の膜厚のAg薄膜では、透過率が大幅に低下することが確認された。
各層の厚みは、洗浄済みのガラス基板上へ各層を単膜で成膜した場合の膜厚を基準とした成膜レートから見積もったものである。膜厚測定には、プローブ顕微鏡(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製、Nanopics1000)を用いた。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明のエレクトロルミネッセンス素子の積層構造を示す図である。
【図2】本発明における発光層の積層構造を示す図である。
【符号の説明】
【0081】
1……エレクトロルミネッセンス素子
2……基材
3……電極層(3A:陽極層、3B;陰極層)
4……発光層
5……保護層
41……正孔注入輸送層
42……蛍光体層
43……電子注入層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に陽極層、発光層、および陰極層をこの順序で有しており、前記発光層と前記陰極層との間に透明絶縁材料を主体とする素材からなる保護層を有することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項2】
前記保護層が前記透明絶縁材料および金属を素材とすることを特徴とする請求項1記載のエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
前記保護層における前記金属の体積基準の割合が、30%以下であることを特徴とする請求項2記載のエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
前記金属の仕事関数が3.0eV以上であることを特徴とする請求項2または請求項3記載のエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
前記保護層の厚みが10nm〜1000nmであることを特徴とする請求項1〜請求項4いずれかに記載のエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
基材上に陽極層、発光層、透明絶縁材料を主体とする素材からなる保護層、および陰極層を順次積層する工程を含み、前記保護層を積層する工程を化学的気相成長法、真空蒸着法、もしくは塗布法によって行ない、前記陰極層を積層する工程をスパッタリング法もしくはイオンプレーティング法によって行なうことを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項7】
基材上に陽極層、電界もしくは電流により機能を発揮する機能層、および陰極層をこの順序で有しており、前記機能層と前記陰極層との間に透明絶縁材料を主体とする素材からなる保護層を有することを特徴とする機能デバイス。
【請求項8】
前記保護層が前記透明絶縁材料および金属を素材とすることを特徴とする請求項7記載の機能デバイス。


【図1】
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【図2】
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