説明

エレベータかごドアおよび乗場ドア用の底部案内装置

かごおよび/または乗場ドアのしきい板(5)に平行にかつそのしきい板(5)からわずかな距離内でそれぞれ移動する少なくとも1つの高速移動ドア(3)と1つの低速移動ドア(1)とを有する、入れ子式エレベータかごおよび/または乗場ドア用の本発明による底部案内装置は、ドア(1、3)の移動経路に平行な少なくとも1つの下縁部が形成されかつドアの底部案内軌道部(31)を形成する、かごおよび/または乗場側のしきい板(5)と、低速ドア(1)と一体でありかつ高速ドア(3)の下方にわずかなクリアランスで延在する底板(11)であって、ドア(1、3)の移動経路に平行な案内軌道部(13)がしきい板側に設けられ、高速ドア(3)と一体でありかつその後方の下端部に近接する案内要素(19)を収容する底板(11)と、低速ドアの底板(11)と一体でありかつ自由に摺動するようにしきい板上の軌道部(31)に収容される少なくとも2つの離隔した案内要素(25)と、高速ドア(3)と一体でありかつ前記しきい板上の案内軌道部(31)に収容される少なくとも1つの案内要素(33)であって、両ドアが開かれかつ互いに面するときに、実質的に高速ドア(3)の前端にかつ低速ドア(1)上の案内要素(25)から十分に離れて配置される案内要素(33)と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエレベータかごドアおよび乗場ドア用の底部案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータかごドアおよび乗場ドアは、一般にその下部において、ドアしきい棒の溝内で摺動する案内要素またはシューにより案内されることが知られている。しかしながら、これらの溝はクズ(debris)で埋められ、案内要素の自由な変位を妨げたり阻止したりすることがある。加えて、これらの溝は、特に重荷重の通過を受けた場合、その上縁部が変形することがある。最後に、これらの溝付のしきい棒は、床上で心地よい外観を有さない。
【0003】
さらに、中央で開くエレベータドアであって、しきい棒の下方でかつその下方の案内縁部上で摺動する案内要素またはシューによって、エレベータドアの下部において、案内されるエレベータドアもまた知られている。この場合、摺動要素はクズの堆積から保護され、しきい棒の下方で不可視となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また米国特許出願2003/0033754Aにも、入れ子式エレベータドア用の底部案内装置が記載されており、この装置では、高速移動ドアはしきい板の下方の案内レール上を摺動する少なくとも2つの下部側方案内脚により案内され、低速移動ドアは、一方の側では高速ドアと共に、他方の側では低速ドア内の二重の底部溝を使用してフレーム内の固定点により案内される。この案内装置は案内に関しては欠点を有するが、これは、低速ドアが点形状の領域で保持され、その長さ上で堅固に保持されないことから、高速ドアの正面の案内点が二重溝内の固定された後方案内点に達するためである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はこの欠点を修正することを目的とし、少なくとも1つの高速移動ドアおよび1つの低速移動ドアがそれぞれ、かごおよび/または乗場のしきい板に平行にかつそれらからわずかな距離内で変位される入れ子式エレベータかごおよび/または乗場ドア用の底部案内装置であって、ドアの変位経路に平行な少なくとも1つの下縁部が形成されかつドアの底部案内軌道部を形成する、かごおよび/または乗場側のしきい板と、低速ドアと一体でありかつ高速ドアの下方にわずかなクリアランスで延在する底板であって、ドアの変位経路に平行な案内軌道部がしきい側に設けられ、高速ドアと一体でありかつその後方下端部に近接して位置する案内要素を収容する底板と、離隔しかつ低速ドアの前記底板と一体であり、前記しきい板軌道上を自由に摺動するよう収容された少なくとも2つの案内要素であって、低速ドアの下端部にほぼ位置する案内要素と、高速ドアと一体でありかつ前記しきい板の案内軌道部に収容される少なくとも1つの案内要素であって、両ドアが互いに面しているときに、ドアが開いたときほぼ高速ドアの前端部にかつ低速ドア上の前記案内要素から十分に離れて配置される案内要素と、を使用することを特徴とする底部案内装置を提供する。
【0006】
この構成の結果、低速ドアは対応するしきい板に対して案内され、高速ドアは、両ドアに共通するその下側の一方では低速ドアに対して、およびその他方の正面下側ではしきい板に対して案内されることになる。低速ドアはしきい板内の案内軌道部から離隔した2つの案内点によって堅固に保持され、高速ドアもまた、一方では低速ドアの底板の軌道部における案内点によって、他方ではしきい板の案内軌道部における案内点によって、その案内端部において、横方向に堅固に保持される。
【0007】
低速ドア上の前記2つの離隔した案内要素は、ある1つの案内要素が確実にドアを長さ方向に堅固に案内するに十分な長さであれば、その1つの案内要素により置き換えることができる。
【0008】
低速ドアの底板上の案内軌道部は明らかに、高速ドアの変位距離に少なくとも等しい長さにわたって延在する。
【0009】
実際には、低速および高速ドアは幅が等しいため、これは1つの縁部から他の縁部まで低速ドアの長さにわたって延在する。
【0010】
この軌道部は、U字形断面を有する底板の一定な直線的輪郭部とすることができ、対応する案内要素は、輪郭部の断面に実質的に相補的でありかつその中に収容されてわずかなクリアランスで摺動するパッドまたはシューとすることができる。
【0011】
同様に、しきい板の案内軌道部は、下向きのU字形断面を有する一定な直線的輪郭部であり、低速ドアおよび高速ドアの案内要素は、その輪郭部の断面に実質的に相補的でありかつその中に収容されてわずかなクリアランスで摺動する断面を有するパッドまたはシューである。
【0012】
加えて、本発明によるこの構成では、かごの床上にしきいの縁部に至るまで、同様に乗場上に、連続的な床を構築する可能性をもたらし、乗場の床およびかごの床が、乗場とエレベータかごとの間に連続した様子の表面を実現する同じライニングを用いて、同一となることができる。
【0013】
最後に、本発明はまた、上述の底部案内装置を装備したかごドアおよび/または乗場ドアを有するエレベータに関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、添付の図面を参照して、例示的実施形態に基づいて以下に例示される。
【0015】
図面を参照すると、本発明によるエレベータドア案内装置は、互いに対して差動的に摺動しかつ互いに重なり合う少なくとも2枚の入れ子式パネルを備える、入れ子式のかごドアおよび乗場ドアに関している。パネルまたはドアのうちの一方は徐々に移動し、他方はより急速に移動するが、ここで、かごおよび乗場ドアパネルの変位は、これらのパネルが乗場ドアおよびかごを開くことに関して同時に開閉するように同期される。かごおよび乗場ドアパネルは同じ寸法を有し、したがって乗場ドアの開口フレームのそれぞれの側で、およびかごの開口フレームからわずかな距離にあるかごの各側部で互いに面して開き、乗場の開口部およびかごの開口部を閉鎖するために閉じるときには互いに部分的に重なる。
【0016】
図1から図3には入れ子式ドアまたはドアパネルの下部のみを示し、以下の説明はかごドアの案内に基づくが、乗場ドアにも同様に当てはまる。
【0017】
かごドア案内装置は、同じ寸法を有しかつ並進移動中に互いに可変な範囲で重なる低速ドア1と高速ドア3との2つの入れ子式エレベータかごドア、ならびにかごプラットホーム7と一体でありかつかごの開口部の縁部に位置するしきい板5を備える。
【0018】
ドア1、3は、ドアの移動距離をわずかに超えて延在するしきい板5からわずかな距離だけ離れかつそのしきい板5に平行に摺動して、フレーム9により表されるかごの開口部を開閉する。
【0019】
ドア1、3は、その上部においては、支持レール(図示せず)上で転動することによって、周知の方式で案内されかつ駆動され、その下部においては、後述する本発明による案内装置により案内される。
【0020】
この装置は低速ドアと一体の底板11を備え、この底板11は、しきい板5と高速ドア3の底端部との間にわずかなクリアランスを有して移動し、かごの開口部のしきい側において、上方に開いたU字形断面を有する一定の案内輪郭部13を備えている。この底板11は、低速ドアの横幅全体に延在する平坦な水平主要部15と、垂直な折返し部17であってこの折返し部17によって底板11が低速ドア1の正面に取り付けられる垂直な折返し部17とを備える。案内輪郭部13は、ドア1の横幅にわたりかつそれに平行に一方の縁部から他方の縁部へ延在し、また、案内輪郭部13は、その後端側で高速ドア3の正面下部に取り付けられたシューの形状をなす案内要素19をわずかなクリアランスで収容する。このシュー要素は、前記輪郭部内で摺動するように装着され、かつU字形の輪郭部13の袖部によって、長手方向に案内される長方形のフェルトブロックとすることができる。これは、2つの支持ブリッジ23によって、高速ドアの正面側に取り付けられた垂直な板要素に装着される。
【0021】
特定の長さを有する案内要素25が、その後端側で上述した輪郭部13の正面の袖部に取り付けられる。この案内要素は、板要素27であってその下端部が折り返された板要素27(図4)でできており、この下端部にはしきい板5の前端に形成された相補的な案内軌道部31に収容されたシュー29が設けられている。この案内軌道部31は、下方に開きかつわずかな摺動クリアランスで前記シュー29を収容するU字形断面を有する一定の輪郭部である。この軌道部はドア1、3の並進経路と平行して延在し、外部からは見えない。低速ドアをしきい板5の軌道部31に対して堅固に案内することを可能にするために、シュー29は、板要素27の幅と同程度の長さなど、特定の長さのフェルトブロックを有する長手形状の要素とすることができる。これはまた、板要素27の各端部に装着された2つの離隔したシュー要素でできていてもよい(図示せず)。
【0022】
しきい板の底部案内軌道部31と一体の最後の案内要素33は、高速ドア3の下端部にその正面または外側の端部に近接して取り付けられる。
【0023】
この案内要素は、2つの水平なブリッジ37によって、ドアに取り付けられた垂直な板35でできており、この垂直な板35には下縁部が設けられており、この下縁部にシュー39が装着されており、このシューはシュー29と類似した断面を有し、軌道輪郭部に装着されてわずかなクリアランスで摺動する。この案内要素によって、高速ドアの正面の下端部を案内することが可能になる一方で、その後部の下端部は低速ドアと一体のU字形の軌道部13上で案内される。したがって、高速ドア3は低速ドア1に対して部分的に案内され、各ドアの案内はドアの並進移動の全体にわたる長さに沿って維持される。
【0024】
低速ドアの案内要素27、29および高速ドアの案内要素33は、図3に示すように、ドアが開いたときに互いに衝突しないように、幅が相補的に配置されなければならないことに留意されたい。
【0025】
当然ながら、すでに述べたように、かごの床は、その全表面にわたって平坦かつ連続的とすることができ、しきい板5およびかごの床表面の残りにわたって、ならびに乗場にわたって延在する同じライニング41を備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】ドアを閉じた本発明による入れ子式エレベータかごドア用の案内装置を示す斜視図。
【図2】半分開けられたドアを有する装置を示す図1と類似の図。
【図3】開けられたドアを有する装置を示す図。
【図4】装置の横断面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
かごおよび/または乗場ドアのしきい板(5)に平行にかつそのしきい板(5)からわずかな距離内でそれぞれ移動する少なくとも1つの高速移動ドア(3)と1つの低速移動ドア(1)とを有する、入れ子式エレベータかごおよび/または乗場ドア用の底部案内装置であって、前記ドア(1、3)の移動経路に平行な少なくとも1つの下縁部が形成されかつ前記ドアの底部案内軌道部(31)を形成する、前記かごおよび/または乗場側のしきい板(5)と、前記低速ドア(1)と一体でありかつ前記高速ドア(3)の下方にわずかなクリアランスで延在する底板(11)であって、前記ドア(1、3)の前記移動経路に平行な案内軌道部(13)がしきい板側に設けられ、前記高速ドア(3)と一体でありかつその後方の下端部に近接する案内要素(19)を収容する底板(11)と、前記低速ドアの前記底板(11)と一体でありかつ自由に摺動するように前記しきい板上の前記軌道部(31)に収容される少なくとも2つの離隔した案内要素(25)と、前記高速ドア(3)と一体でありかつ前記しきい板上の前記案内軌道部(31)に収容される少なくとも1つの案内要素(33)であって、前記両ドアが開かれかつ互いに面するときに、実質的に前記高速ドア(3)の前端にかつ前記低速ドア(1)上の前記案内要素(25)から十分に離れて配置される案内要素(33)と、を備えることを特徴とする底部案内装置。
【請求項2】
前記低速ドア上の前記2つの離隔した案内要素(25)が、前記ドア(1)を堅固に長手方向に案内することを確実にするに十分な長さの1つの案内要素により置き換えられることを特徴とする請求項1記載の案内装置。
【請求項3】
前記低速ドアの前記底板(11)上の前記案内軌道部(13)が、前記高速ドア(3)の移動距離に少なくとも等しい長さにわたって延在することを特徴とする請求項1または2記載の案内装置。
【請求項4】
実際には、前記低速(1)および高速(3)ドアが同じ幅を有するとき、前記軌道部(13)が前記低速ドア(1)の幅にわたって一方の縁部から他方の縁部へ延在することを特徴とする請求項3記載の案内装置。
【請求項5】
前記軌道部(13)が前記底板において、U字形断面を有する一定の直線的な輪郭部であり、対応する案内要素(19)が、実質的に前記輪郭部(13)と相補的なパッドまたはシュー要素であり、その中に収容されてわずかなクリアランスで摺動することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の案内装置。
【請求項6】
前記しきい板(5)の前記案内軌道部(31)が、下向きのU字形断面を有する一定の直線的な輪郭部であり、前記低速ドアの前記案内要素(25)および前記高速ドアの前記案内要素(33)が、前記輪郭部(31)の断面と実質的に相補的な断面を有し、その中に収容されてわずかなクリアランスで摺動するパッドまたはシュー要素(29、39)であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の案内装置。
【請求項7】
前記かごの床上に前記しきいの縁部に至るまで、同様に前記乗場上に、連続的な床を構築することを可能にし、前記乗場およびかごの床が、前記乗場と前記エレベータかごとの間に連続した様子の表面を実現する同じライニング(41)を用いて、同一となることができることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の案内装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の底部案内装置を装備した入れ子式かごドア(1、3)および/または乗場ドアを備えることを特徴とするエレベータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−536188(P2007−536188A)
【公表日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−512539(P2007−512539)
【出願日】平成16年5月5日(2004.5.5)
【国際出願番号】PCT/IB2004/001595
【国際公開番号】WO2005/105654
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(591020353)オーチス エレベータ カンパニー (402)
【氏名又は名称原語表記】OTIS ELEVATOR COMPANY
【Fターム(参考)】