説明

エレベータのかご室

【課題】簡易で省スペースな構造でかご床を照光することができ、効率的に照明装置の交換作業を行うことができる照明を有するエレベータかご室の提供を目的とする。
【解決手段】かご床の床上側に設けられた光を透過させる透光板と、前記かご床の床下側に設けられ、側端から照射された光を前記透光板を介して前記かご室内部へ向けて反照する導光板と、前記導光板の周囲に設けられ、前記導光板へ向けて光を発生させる照光装置とを備えていることを特徴とするエレベータのかご室。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエレベータのかご室に関し、特にエレベータのかご床に設けられる照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータかご室の床下に蛍光灯を採用した照光装置を設置し、床の透光板を介してかご室内を照光するエレベータが知られている。しかし、床面を均一に照光するためには蛍光灯ケースを設置するためのスペースに加えて、蛍光灯から透光板まで一定の間隔が必要であり、かご床下の寸法を大きくする必要があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記のような従来のエレベータかご床に設けられる照明装置の問題点に鑑みてなされたもので、簡易で省スペースな構造でかご床を照光することができ、ピットを深くする必要なく効率的に照明装置の交換作業を行うことができるエレベータかご室の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明のエレベータかご室は、かご室側壁、かご室天井、かご室の出入口戸及び少なくともその一部に光を透過させる透光板を有するかご床から構成され、前記かご床の下側に設けられ、側端面から照射された光を前記透光板から前記かご室内部へ向けて照射する導光板と、前記導光板の側端面に設けられ、前記導光板へ向けて光を発生させる光源とを備えていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】本発明の第1の実施形態によるエレベータのかご室を示す縦断面図である。
【図2】同じくエレベータのかご室を示す平面図である。
【図3】同じくエレベータのかご床の詳細図である。
【図4】同じく照光装置の取り付け構造を示す部分概略図である。
【図5】同じく照光装置の取り付け構造を示す部分概略図である。
【図6】本発明の第2の実施形態によるエレベータのかご室を示す縦断面図である。
【図7】同じくエレベータのかご室を示す平面図である。
【図8】同じくエレベータのかご床の詳細図である。
【図9】同じくエレベータかご室の一部の構造を示す部分概略図である。
【図10】本発明の第3の実施形態によるエレベータかご室の部分概略図である。
【図11】本発明の第4の実施形態によるエレベータかご室の部分概略図である。
【図12】本発明の第5の実施形態によるエレベータかご室の部分概略図である。
【図13】本発明の第6の実施形態によるエレベータかご室の部分概略図である。
【図14】本発明の第7の実施形態によるエレベータかご室の部分概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
図1は、第1の実施形態を示すエレベータかご室の縦断面図である。また、図2はその平面図であり、図3はこの平面図におけるA-A方向の縦断面図である。破線は照光装置の設置位置を示す。本実施形態におけるエレベータかご室は、かご室側壁1、かご室天井2、吊天井3、出入口戸4およびかご床5からなる。
【0007】
このかご床5は、その全面にマトリクス状に配列された複数の透光板6により構成されている。各透光板6は、強化ガラス等からなる矩形のパネルである。
【0008】
かご床5の下側には、導光板7が設置されている。導光板7の側端部には複数個の照光装置、例えばLED光源8が配列設置されている。図2において破線で示すように、LED光源8はエレベータのかご床全体の周囲に配列設置されている。
【0009】
導光板7は、光源8からの光を拡散させ、透光板6を介してかご床5を下方から照射する。光源8からの光を均一に発光させることができ、広い面積での発光を可能としている。導光板7は、全体として薄い板状であり、この端面に設置される各LED光源8も小型であるため、これらによって形成される照明装置は全体として薄型となり、エレベータのかご床下側に占めるスペースも小さくすることができる。従って、照明装置の保守点検に要するエレベータのかご床下側に設けられるピットの深さも相対的に浅くすることが可能となる。また、光源としてLEDを使用することによって、光源8の設置スペースを縮小することができ、光源の寿命が長くなることによりランプ等に比べ交換の頻度を減らすことができる。また、発光色の変更、点灯や点滅の演出を制御することで、より自由な光のイルミネーションを演出することができる。
【0010】
なお、透光板6は、強化ガラス以外にも、法令上求められる防火基準、強度を満たし、透光性を有するものであればどのような素材を選択してもよい。
【0011】
また、かご床5の下方に予備電源9を設けることによって建物の停電によってエレベータの照明電源が給電中止となった場合、非常照明に切りかえることが可能である。
【0012】
図4、図5は、本実施形態におけるかご室側壁1およびかご床5が接する部分の構造を示す一部切欠断面図である。かご室側壁1のうち、例えば巾木10のようなかご床5に近い部分が取り外し可能に構成されている。従って、かご室内から光源8の取付けまたは交換作業を行うことができる。
【0013】
エレベータのかご床下側のピットで交換作業をする必要がないため、床下のスペースを縮小することができ、エレベータを停止することなく、安全に作業することができる。また、かご室側面の必要な部分のみ取り外して作業をすることで、より簡易に交換作業を行うことができる。図4は、ネジ等で固定された光源8を巾木10の位置から交換できる構造を示す。図5は、かご室内から巾木10を取りはずし、ネジ等で固定された光源8を蝶番11を基点として回転させて交換する構造を示す。これにより、省スペースの照明装置においても簡易に、迅速に、また安全に交換することができる。
【0014】
図6は、第2の実施形態を示す正面図であり、エレベータかご室の下部を切欠して断面を示す。図7は本実施形態のかご床5を示す平面図でり、A-A方向の縦断面図を図8に示す。この実施形態においては、エレベータのかご床5の下側に設置される導光板7は、長方形の4個のユニットに分割され、それらの平行な長辺に沿って複数個のLED光源8が設置されている。このユニットごとに設置された光源8に対してそれらの光出力を制御できる制御手段12が設けられている。この制御手段12は、全面に透光板6が設けられている場合であっても、かご床5の一部を照明することができる。これによりかご室内の照度を調節し、より自由なイルミネーションを与えることができる。また、エレベータの到着にあわせて光源8を点灯することで、利用者に目的階への到着を知らせることができ、視覚によっての様々な案内を表示することができる。
【0015】
図9は、本実施形態におけるかご室側壁1およびかご床5が接する部分の構造を示す一部切欠断面図である。光源8は、導光板7の端面に設置されかご床下のピットから取り外しできる位置に設置されている。そのため、既存のピットから、かご床の下部を取り外し、光源8の取り付けまたは交換を簡易に行うことができる。
【0016】
図10は第3の実施形態におけるかご室側壁1およびかご床5が接する部分の構造を示す一部切欠断面図である。かご床5には透光板6のパネルが複数枚配置され、かご室側壁1の下側には光源8が設置されている。透光板6はかご室内に取り外しができる構造である。かご室側壁1に接する透光板6のうち作業が必要な位置のパネルをかご室内に取り外すことで、光源8を取り付けまたは交換することができる。
【0017】
図11は第4の実施形態におけるかご室側壁1およびかご床5が接する部分の構造を示す一部切欠断面図である。かご床5には複数枚の透光板6が設置され、透光板6を設けていない部分のかご床5の下側に光源8を付属させる。透光板6を設けていない部分のかご床5はかご室内に取り外すことができるよう設置する。作業が必要な位置のかご床5を取り外すことで、光源8を取り付けまたは交換することができる。
【0018】
本実施形態ではかご室内から簡易に交換作業を行うことができるので、保守性が向上する。さらに、床下のピットに入らず交換作業を行うことができるため、ピットのスペースを縮小し、エレベータを停止することなく、安全に交換作業を行うことができる。
【0019】
図12は第5の実施形態において、かご室側壁1およびかご床5が接する部分の構造を示す一部切欠断面図である。かご室側壁1のうち、例えば巾木10のようなかご床5に近い部分が取り外し可能に構成され、導光板7の端面にある光源をかご室側壁1の接する巾木10の位置まで移動して取付けまたは交換作業を行うことができる構造である。
【0020】
巾木10の位置にて作業を行えるため、床下のスペースをさらに縮小することができる。また、必要な部分の側面のみ取り外して作業をすることができるので、より簡易に交換作業を行うことができ、保守性が向上する。
【0021】
図13は、第6の実施形態においてかご床5の透光板6が、部分的に設置されたエレベータかご室の平面図である。破線は光源8の設置位置を示し、矢印は導光板7への光の照射方向を示す。対面する2面のかご室側壁1とかご床の接する箇所から一定幅のかご床5に透光板6を設置する。この2面のかご室側壁1下部に光源8aを、導光板7のかご床5中央側に平行して8bを設置する。制御系統の異なる光源8a、光源8bは照光領域を制御する制御手段12を備える。これにより、光源8aを点灯し光源8bを消灯するなどエレベータの使用状況に応じて、かご室内の照度を調節し、より自由なイルミネーションを与えることができる。
【0022】
図14は、第7の実施形態においてかご床5の透光板6が、部分的に設置されたエレベータかご室の平面図である。破線は光源8の設置位置を示し、矢印は導光板7への光の照射方向を示す。かご室側壁1とかご床5の接する箇所から一定幅のかご床5に透光板6を設置する。かご室側壁1の下部にある光源8は、照光領域を制御する制御手段12を備える。本実施形態は、エレベータの到着に併せて光源8を点灯するなど照光領域を制御することによって利用者に目的階への到着を知らせることができ、視覚によっての様々な案内を表示することができる。
【0023】
このように、エレベータのかご床内部の光源8からの光を導光板7により拡散させ、透光板6を介してかご床5を下方から照射する。これにより、エレベータのかご室の構造を大きく変えることなく簡易な構造で、かご床5を照光することができる。また、光源8の交換にまで配慮した構造をも採用することで、エレベータの保守にかかる時間を短縮し、サービスの向上を図ることができる。
【0024】
なお、本発明は、上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階では、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。例えば、光源8として、有機ELを用いることも考えられる。有機ELを用いることで、更なる省スペース化を図れるだけでなく、透光板6を利用して様々な情報も併せて提供することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 かご室側壁
2 かご室天井
3 吊天井
4 出入口戸
5 かご床
6 透光板
7 導光板
8 光源
9 予備電源
10 巾木
11 蝶番
12 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側壁、天井、出入口戸及び床から構成されるエレベータのかご室と、
前記床の少なくとも一部に設けられた光を透過させる透光板と、
前記透光板の下側に設けられ、側端面から照射された光を前記透光板を介して前記かご室内部へ向けて導光する導光板と、
前記導光板の周囲に設けられ、前記導光板内に向けて光を射出する複数の光源を有する照光装置とを備えていることを特徴とするエレベータのかご室。
【請求項2】
前記照光装置に、光源としてLEDを使用することを特徴とする請求項1記載のエレベータのかご室。
【請求項3】
前記透光板は、前記かご床の全面に設けられていることを特徴とする請求項1記載のエレベータのかご室。
【請求項4】
前記照光装置を構成する複数の光源は、複数個ずつまとめてユニット化され、ユニット単位で光源を制御する制御手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のエレベータのかご室。
【請求項5】
前記照光装置の電源に、予備電源を備えていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のエレベータのかご室。
【請求項6】
前記照光装置の下部のかご床底の一部は、かご室床下から着脱自在であり、
前記照光装置は、このかご床底を取り外すことで前記導光板の下側から着脱可能となる構造を備えていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のエレベータのかご室。
【請求項7】
前記照光装置の上部の床もしくは透光板は、かご室内から着脱自在であり、
前記照光装置は、この床もしくは透光板を取り外すことで前記導光板の上側から着脱可能となる構造を備えていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のエレベータのかご室。
【請求項8】
前記照光装置の上部にある側壁の一部は、かご室内から着脱自在であり、
前記照光装置は、この側壁の一部を取り外すと前記導光板の上側から着脱可能となる構造を備えていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のエレベータのかご室。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−56724(P2012−56724A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202175(P2010−202175)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】