説明

エレベータのドアセンサ装置

【課題】本発明は、発光器からの光の光量にむらが生じるのを防止しつつ、固定手段を発光器内に効率的に配置することができるエレベータのドアセンサ装置を得ることを目的とするものである。
【解決手段】第1の筐体3は、複数本の第1の固定用ボルト4により第1の縦枠2aに固定されている。第2の筐体8は、複数本の第2の固定用ボルト9により第2の縦枠2bに固定されている。固定用ボルト4,9は、投光素子5,10の前方(かご出入口1側)、かつ拡散板6,11の後方(反かご出入口1側)で、拡散板6,11から出射される光の上下方向への連続性及び均等性を実質的に妨げない位置に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、出入口の一側から照射される棒状の光を出入口の他側のカメラで撮像することにより、出入口付近の乗客や物を検出するエレベータのドアセンサ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベータ出入口の安全装置では、乗場枠の一方の縦枠に投光器が、他方の縦枠に受光器がそれぞれ複数のボルトにより取り付けられている。投光器には、複数の投光素子が上下方向に互いに間隔をおいて設けられている。また、受光器には、投光素子からの光を受ける複数の受光素子が上下方向に互いに間隔をおいて設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−132372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来の安全装置では、投光素子からの光が遮断されて受光素子に到達しないことにより乗客や物を検出しているので、投光器を縦枠に取り付けるためのボルトの位置は特に制約を受けない。しかし、棒状の光をカメラで撮像して乗客や物を検出するタイプのドアセンサ装置では、従来と同様に発光器をボルトで固定すると、広角の照射角度を持つ投光素子からの光がボルトにより遮られ、発光器からの光の光量にむらが生じ、検出精度が低下してしまう。また、これを避けるために投光素子の配置領域の外部にボルトを配置しようとすると、投光器が大型化したり、上下方向の投光素子の配置領域が狭くなり検出範囲が狭くなったりする。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、発光器からの光の光量にむらが生じるのを防止しつつ、固定手段を発光器内に効率的に配置することができるエレベータのドアセンサ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るエレベータのドアセンサ装置は、出入口の側方の固定部に固定された支持部材と、上下方向に互いに間隔をおいて支持部材に取り付けられている複数の投光素子と、出入口に臨んで投光素子の前方に配置され、投光素子からの光を拡散する拡散板とを有し、上下方向に長尺かつ連続した光を出入口側へ出射する発光器、支持部材を固定部に固定するための複数の固定手段、及び出入口を挟んで発光器に対向し、発光器からの光を撮像するカメラを備え、固定手段は、投光素子の前方、かつ拡散板の後方で、拡散板から出射される光の上下方向への連続性を実質的に妨げない位置に配置されている。
【発明の効果】
【0007】
この発明のエレベータのドアセンサ装置は、固定手段を、投光素子の前方、かつ拡散板の後方で、拡散板から出射される光の上下方向への連続性を実質的に妨げない位置に配置したので、発光器からの光の光量にむらが生じるのを防止しつつ、固定手段を発光器内に効率的に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1によるエレベータのドアセンサ装置を示す正面図である。
【図2】図1のドアセンサ装置の制御回路を示すブロック図である。
【図3】図1の第1及び第2の発光器の要部断面図である。
【図4】図1の第1及び第2の発光器を示す正面図である。
【図5】この発明の実施の形態2によるドアセンサ装置の発光器の要部断面図である。
【図6】この発明の実施の形態3によるドアセンサ装置の発光器の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1によるエレベータのドアセンサ装置を示す正面図であり、かごの正面を乗場側から見た図である。図において、かご出入口1の両側には、固定部としての第1及び第2の縦枠(かご柱)2a,2bが設けられている。
【0010】
第1の縦枠2aには、支持部材としての第1の筐体3が固定されている。第1の筐体3は、固定手段としての複数本の第1の固定用ボルト4により第1の縦枠2aに固定されている。
【0011】
第1の筐体3には、複数の第1の投光素子5が上下方向に互いに等間隔をおいて取り付けられている。第1の投光素子5は、上下方向に沿う一直線上に整列されている。第1の投光素子5の前方には、第1の投光素子5からの光を透過・拡散する第1の拡散板6が配置されている。第1の拡散板6は、かご出入口1に臨むように第1の筐体3に固定されている。また、第1の拡散板6は、第1の投光素子5の列に平行に配置されている。
【0012】
第1の発光器7は、第1の筐体3、第1の投光素子5及び第1の拡散板6を有している。また、第1の発光器7は、上下方向に長尺かつ連続した棒状の光を第1の拡散板6からかご出入口1側へ出射する。
【0013】
第2の縦枠2bには、支持部材としての第2の筐体8が固定されている。第2の筐体8は、固定手段としての複数本の第2の固定用ボルト9により第2の縦枠2bに固定されている。
【0014】
第2の筐体8には、複数の第2の投光素子10が上下方向に互いに等間隔をおいて取り付けられている。第2の投光素子10は、上下方向に沿う一直線上に整列されている。第2の投光素子10の前方には、第2の投光素子10からの光を透過・拡散する第2の拡散板11が配置されている。第2の拡散板11は、かご出入口1に臨むように第2の筐体8に固定されている。また、第2の拡散板11は、第2の投光素子10の列に平行に配置されている。
【0015】
第2の発光器12は、第2の筐体8、第2の投光素子10及び第2の拡散板11を有している。また、第2の発光器12は、上下方向に長尺かつ連続した棒状の光を第2の拡散板11からかご出入口1側へ出射する。
【0016】
第1及び第2の発光器7,12は、かご出入口1を挟んで互いに対向している。第1及び第2の投光素子5,10としては、例えば発光ダイオード、半導体レーザ、ランプ又はエレクトロルミネッセンス素子等が用いられる。第1及び第2の拡散板6,11としては、例えば半透明の乳白色の樹脂板、又は表面が拡散処理された透明樹脂板やガラス板が用いられる。
【0017】
第1の筐体3の下端部近傍には、第1のカメラ13が取り付けられている。第1のカメラ13は、かご出入口1を挟んで第2の発光器12に対向し、第2の発光器12からの光を撮像する。
【0018】
第2の筐体8の上端部近傍には、第2のカメラ14が取り付けられている。第2のカメラ14は、かご出入口1を挟んで第1の発光器7に対向し、第1の発光器7からの光を撮像する。
【0019】
第2の発光器12からの光を第1のカメラ13で撮像することにより、直角三角形状の第1の監視領域15a内の乗客や物の有無が検出される。また、第1の発光器7からの光を第2のカメラ14で撮像することにより、直角三角形状の第2の監視領域15b内の乗客や物の有無が検出される。
【0020】
図2は図1のドアセンサ装置の制御回路を示すブロック図である。第1の筐体3内には、第1の発光器7、第1のカメラ13及び第1の物体検知制御部16が収容されている。第1の物体検知制御部16は、第1の発光器7を点灯制御する。
【0021】
また、第1の物体検知制御部16は、第1の画像処理部16aを有している。第1の画像処理部16aは、第1のカメラ13で撮像して出力される画像信号に基づいて画像処理を行い、第1の監視領域15a内に乗客や物が存在するかどうかを判定する。そして、第1の画像処理部16aにより乗客や物が存在すると判定されると、第1の物体検知制御部16は、かご制御部17に検知信号を出力する。
【0022】
第2の筐体8内には、第2の発光器12、第2のカメラ14及び第2の物体検知制御部18が収容されている。第2の物体検知制御部18は、第2の発光器12を点灯制御する。
【0023】
また、第2の物体検知制御部18は、第2の画像処理部18aを有している。第2の画像処理部18aは、第2のカメラ14で撮像して出力される画像信号に基づいて画像処理を行い、第2の監視領域15b内に物体が存在するかどうかを判定する。そして、第2の画像処理部18aにより乗客や物が存在すると判定されると、第2の物体検知制御部18は、かご制御部17に検知信号を出力する。
【0024】
第1及び第2の物体検知制御部16,18は、かご制御部17を介して信号を互いに送受信することで、第2及び第1の発光器12,7の点灯・消灯のタイミングをそれぞれ知ることができる。
【0025】
かご操作パネルには、警報装置19が設けられている。警報装置19は、かご制御部17により制御され、かご1内の乗客に対して警告アナウンスや警告音を発したり警告表示を行ったりする。
【0026】
また、かご制御部17は、かごドアの開閉を制御する開閉制御部20に対して開閉指令を出力する。このような構成によって、かご制御部17は、物体検知制御部16,18からの検知信号に応じて、警報装置19を動作させたり、かごドアの開閉を制御したりする。
【0027】
なお、かご制御部17、第1の物体検知制御部16、第2の物体検知制御部18及び開閉制御部20は、それぞれマイクロコンピュータを有しており、マイクロコンピュータに格納されたプログラムに基づいてそれぞれの機能を実行することができる。
【0028】
図3は図1の第1及び第2の発光器7,12の要部断面図、図4は図1の第1及び第2の発光器7,12を示す正面図である。各投光素子5,10の光の照射角度は、図3の1点鎖線に示すように直角に近い広角となっており、上下に隣接する投光素子5,10の光の照射範囲が拡散板6,11で互いに部分的に重なっている。これにより、発光器7,12から出射される光は、上下方向に長尺かつ連続した棒状の光となる。
【0029】
固定用ボルト4,9は、投光素子5,10の前方(かご出入口1側)、かつ拡散板6,11の後方(反かご出入口1側)で、拡散板6,11から出射される光の上下方向への連続性及び均等性を実質的に妨げない位置に配置されている。また、固定用ボルト4,9は、投光素子5,10よりも前側の光線が影響しない箇所に配置されている。さらに、固定用ボルト4,9は、その頭部の外周部の一部のみが投光素子5,10の照射範囲内に位置し、その他の大部分が照射範囲外に位置するように配置されている。
【0030】
具体的には、固定用ボルト4,9は、上下に隣接する投光素子5,10の照射範囲が交差する位置Cの後ろ側に配置されている。即ち、固定用ボルト4,9の頭部のかご出入口1側の端部(図3の右端部)は、位置C上又はその少し後方に位置している。
【0031】
また、固定用ボルト4,9の上下方向の位置は、上下に隣接する投光素子5,10の上下方向の位置の中間である。さらに、この例では、図1に示すように、一番上の投光素子5,10とその下の投光素子5,10との中間の高さ位置、及び一番下の投光素子5,10とその上の投光素子5,10との中間の高さ位置に、固定用ボルト4,9が配置されている。
【0032】
次に、乗客や物の検出方法について説明する。まず、発光器7,12が点灯していないときのカメラ13,14からの画像データαと、発光器7,12が点灯しているときの画像データβとを画像処理部16a,18aに取り込む。そして、画像データβから画像データαを引いた差分画像γを演算する。物体の検出を実行する際には、このような動作を繰り返す。
【0033】
このような差分処理を行うと、差分画像γには、周囲の外光が除去された発光器7,12の像のみが残る。従って、カメラ13,14を頂点として発光器7,12を底辺とする2つの三角形の監視領域15a,15b内に光を遮る物体が存在しない場合、差分画像γには、連続した1本の棒状の発光面像が残る。
【0034】
これに対して、監視領域内に光を遮る物体が存在する場合、光の一部が遮断されるため、差分画像γの発光面像が複数に分断されて不連続になったり、発光面像の長さが通常時よりも短くなったりする。画像処理部16a,18aは、発光面像が不連続になったこと、短くなったこと、又は発光面像が消失したことを検出すると、縦枠2a,2b間に乗客や物が存在すると判定し、その旨の信号をかご制御部17に送る。
【0035】
このようなエレベータのドアセンサ装置では、固定用ボルト4,9を、投光素子5,10の前方、かつ拡散板6,11の後方で、拡散板6,11から出射される光の上下方向への連続性を実質的に妨げない位置に配置したので、発光器7,12からの光の光量にむらが生じるのを防止しつつ、固定用ボルト4,9を発光器7,12内に効率的に配置することができる。また、このようなドアセンサ装置は、かご出入口1の両側に配置されるが、固定用ボルト4,9が投光素子5,10の前方に配置されているので、取付及び交換が容易である。
【0036】
また、上下に隣接する投光素子5,10の光の照射範囲が拡散板6,11で互いに部分的に重なっており、固定用ボルト4,9は、上下に隣接する投光素子5,10の照射範囲が交差する位置の後ろ側に配置されているので、発光器7,12からの光の光量にむらが生じるのをより確実に防止することができる。
【0037】
実施の形態2.
次に、図5はこの発明の実施の形態2によるドアセンサ装置の発光器の要部断面図である。この例では、拡散板6,11の背面(投光素子5,10に対向する面)に断面三角形の多数の微小な突起が形成されている。他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0038】
このような拡散板6,11を用いることにより、投光素子5,10からの光の上下方向への拡散効果を高めることができ、投光素子5,10の上下方向の間隔を大きくすることができる。これにより、投光素子5,10の個数を減らすことができるとともに、固定用ボルト4,9の配置を容易にすることができ、発光器7,12からの光の光量にむらが生じるのをより確実に防止することができる。
【0039】
実施の形態3.
次に、図6はこの発明の実施の形態3によるドアセンサ装置の発光器の要部断面図である。この例では、拡散板6,11の背面(投光素子5,10に対向する面)に断面半円形の多数の微小な突起が形成されている。他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0040】
このような拡散板6,11を用いることにより、投光素子5,10からの光の上下方向への拡散効果を高めることができ、投光素子5,10の上下方向の間隔を大きくすることができる。これにより、投光素子5,10の個数を減らすことができるとともに、固定用ボルト4,9の配置を容易にすることができ、発光器7,12からの光の光量にむらが生じるのをより確実に防止することができる。
【0041】
なお、拡散板6,11に設ける微小な突起の断面形状は、三角形及び半円形に限定されるものではない。
また、上記の例では、物体により遮光されて発光面像が途切れたり短くなったりすることで物体を検出したが、物体の検出方法はこれに限定されない。例えば、最新の差分画像と所定時間前の差分画像との差分である時間差分画像を求め、時間差分画像に所定値以上の値が存在するかどうかを判定してもよい。この方法では、物体が存在しなければ、時間差分画像は全面でほぼ0の値となる。また、動く物体が存在すれば、時間差分画像に所定値以上の部分が出現する。このため、所定値以上の部分があれば、物体が存在すると判定できる。このような方法によれば、発光器7,12に付着して動かないゴミを排除し、乗客等の動く物体のみを効率良く検出することができる。
さらに、この発明のドアセンサ装置は、乗場出入口に設けてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 かご出入口、2a 第1の縦枠(固定部)、2b 第2の縦枠(固定部)、3 第1の筐体(支持部材)、4 第1の固定用ボルト(固定手段)、5 第1の投光素子、6 第1の拡散板、7 第1の発光器、8 第2の筐体(支持部材)、9 第2の固定用ボルト(固定手段)、10 第2の投光素子、11 第2の拡散板、12 第2の発光器、13 第1のカメラ、14 第2のカメラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出入口の側方の固定部に固定された支持部材と、上下方向に互いに間隔をおいて前記支持部材に取り付けられている複数の投光素子と、前記出入口に臨んで前記投光素子の前方に配置され、前記投光素子からの光を拡散する拡散板とを有し、上下方向に長尺かつ連続した光を前記出入口側へ出射する発光器、
前記支持部材を前記固定部に固定するための複数の固定手段、及び
前記出入口を挟んで前記発光器に対向し、前記発光器からの光を撮像するカメラ
を備え、
前記固定手段は、前記投光素子の前方、かつ前記拡散板の後方で、前記拡散板から出射される光の上下方向への連続性を実質的に妨げない位置に配置されていることを特徴とするエレベータのドアセンサ装置。
【請求項2】
上下に隣接する前記投光素子の光の照射範囲が前記拡散板で互いに部分的に重なっており、
前記固定手段は、上下に隣接する前記投光素子の照射範囲が交差する位置の後ろ側に配置されていることを特徴とする請求項1記載のエレベータのドアセンサ装置。
【請求項3】
前記拡散板の前記投光素子に対向する面には、多数の微小な突起が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエレベータのドアセンサ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−180018(P2010−180018A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−25124(P2009−25124)
【出願日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】