説明

エレベータのバッテリモジュール

【課題】保守点検作業を容易にすることができ、故障しにくくすることができるエレベータのバッテリモジュールを得る。
【解決手段】エレベータのバッテリモジュール11は、エレベータの制御盤6の筐体10内に設けられる。また、バッテリモジュール11は、容器12と、容器12内に収容されたバッテリモジュール本体13とを有している。バッテリモジュール本体13は、水平方向へ並べられた複数のセル14と、各セル14間の少なくともいずれかに介在することによりセル14間に通風路22を形成するダミー部材16とを有している。容器12には、セル14が並ぶ方向について通風路22の位置に合わせて配置された吸気口18,19と、吸気口18,19よりも高い位置に配置された排気口17とが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレベータの制御盤内に設けられるエレベータのバッテリモジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のキャパシタと複数の伝熱加圧ゴムとを水平方向へ交互に並べられた状態で金属筐体内に収納した電気化学蓄電素子モジュールが知られている。従来の電気化学蓄電素子モジュールでは、各キャパシタと各伝熱加圧ゴムとが隙間なく並べられている。また、各セルを冷却するために、金属筐体の一方の側面に冷却ファンが取り付けられ、金属筐体の他方の側面に複数の通風孔が設けられている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−170687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の電気化学蓄電素子モジュールでは、各キャパシタと各伝熱加圧ゴムとが隙間なく並べられているので、冷却ファンにより金属筐体内に送られた冷却風の流れがセル及び伝熱加圧ゴムで妨げられ、金属筐体内に塵や埃等が溜まりやすくなる。これにより、セルの正極と負極との間に短絡が生じやすくなってしまい、電気化学蓄電素子モジュールが故障しやすくなってしまう。また、冷却ファンに対するメンテナンスも必要になり、電気化学蓄電素子モジュールの保守点検作業に手間がかかってしまう。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、保守点検作業を容易にすることができ、故障しにくくすることができるエレベータのバッテリモジュールを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るエレベータのバッテリモジュールは、エレベータの制御盤の筐体内に設けられるエレベータのバッテリモジュールであって、容器、及び水平方向へ並べられた複数のセルと、各セル間の少なくともいずれかに介在することによりセル間に通風路を形成するスペーサとを有し、容器内に収容されたバッテリモジュール本体を備え、容器には、セルが並ぶ方向について通風路の位置に合わせて配置された吸気口と、吸気口よりも高い位置に配置された排気口とが設けられている。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係るエレベータのバッテリモジュールでは、各セル間の少なくともいずれかにスペーサが介在することによりセル間に通風路が形成され、容器には、セルが並ぶ方向について通風路の位置に合わせて配置された吸気口と、吸気口よりも高い位置に配置された排気口とが設けられているので、容器内を下方から上方へ流れる冷却風に対する抵抗を少なくすることができる。従って、各セルの発熱で生じた上昇気流により、冷却風を容器内に流入させやすくすることができるとともに、容器内の冷却風を流出させやすくすることができる。これにより、容器内での冷却風の滞留を少なくすることができ、バッテリモジュールの故障を生じにくくすることができる。また、容器内の上昇気流による冷却風により十分な冷却効果を得ることができるので、メンテナンスが必要な冷却用のファンを容器に取り付ける必要がなくなり、バッテリモジュールの保守点検作業を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1によるエレベータを示す構成図である。
【図2】図1の制御盤を示す正面図である。
【図3】図2のIII-III線に沿った断面図である。
【図4】図2のバッテリモジュールを示す正面図である。
【図5】図4のバッテリモジュールを示す下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1によるエレベータを示す構成図である。図において、昇降路1の上部には、機械室2が設けられている。機械室2内には、駆動綱車3を有する巻上機(駆動装置)4と、駆動綱車3に対して間隔を置いて配置されたそらせ車5と、エレベータの運転を制御する制御機器を含む制御盤6とが設けられている。
【0010】
駆動綱車3及びそらせ車5には、昇降路1内を昇降可能なかご8及び釣合おもり9を吊り下げる長尺の懸吊体7が巻き掛けられている。懸吊体7としては、例えばロープやベルト等が用いられている。かご8及び釣合おもり9は、駆動綱車3の回転により昇降路1内を昇降される。かご8及び釣合おもり9が昇降路1内を昇降されるときには、かご8がかごガイドレール(図示せず)に案内され、釣合おもり9が釣合おもりガイドレール(図示せず)に案内される。
【0011】
なお、昇降路1の底部(ピット部)には、かご8の下方に位置するかご緩衝器と、釣合おもり9の下方に位置する釣合おもり緩衝器とが設けられている。かご緩衝器は、かご8の衝突を受けたときにかご8に与える衝撃を和らげる。釣合おもり緩衝器は、釣合おもり9の衝突を受けたときに釣合おもり9に与える衝撃を和らげる。
【0012】
図2は、図1の制御盤6を示す正面図である。また、図3は、図2のIII-III線に沿った断面図である。さらに、図4は図2のバッテリモジュールを示す正面図、図5は図4のバッテリモジュールを示す下面図である。制御盤6は、図2及び図3に示すように、金属製の筐体10と、筐体10内に設けられ、充電及び放電が可能なバッテリモジュール11とを有している。この例では、バッテリモジュール11はエレベータの回生電力を蓄積するエレベータの回生蓄電用バッテリモジュールとされている。
【0013】
筐体10は、前面に開口が設けられた筐体本体10a(図3)と、筐体本体10aの開口を開閉可能な板状の筐体蓋10bとを有している。筐体本体10aの開口を閉じているときの筐体蓋10bは、水平面に対して立った状態で配置されている。
【0014】
バッテリモジュール11は、筐体10の底面と上面との間の高さの中間位置に配置されている。また、バッテリモジュール11は、筐体10の内面に固定された支持固定具(図示せず)を介して筐体10内に取り付けられている。バッテリモジュール11は、金属製の容器12と、容器12内に収容されたバッテリモジュール本体13とを有している。
【0015】
容器12は、バッテリモジュール本体13を下から受ける底面壁12aと、バッテリモジュール本体13の上方に配置された上面壁12bと、容器12の幅方向について互いに対向し、底面壁12a及び上面壁12b間にそれぞれ固定された一対の側面壁12cと、容器12の奥行き方向について互いに対向し、底面壁12a及び上面壁12b間にそれぞれ固定された正面壁12d及び背面壁12eとを有している。
【0016】
また、容器12は、底面壁12aを水平にした状態で筐体10内に取り付けられている。各側面壁12c、正面壁12d及び背面壁12eは、底面壁12aに垂直に立てて設けられている。筐体蓋10bが筐体本体10aの開口を閉じているときには、筐体蓋10bと正面壁12dとが筐体10の奥行き方向について互いに対向している。
【0017】
バッテリモジュール本体13は、図4及び図5に示すように、水平方向へ並べられた複数のセル14と、各セル14に接続され、かつ各セル14の電圧をモニタするための基板15と、各セル14間の少なくともいずれかに介在することによりセル14間に通風路(空気層)22を形成する金属製のダミー部材(スペーサ)16とを有している。この例では、各セル14が電気二重層キャパシタとされている。
【0018】
各セル14は、容器12の幅方向へ並べられている。これにより、各セル14は、正面壁12d及び背面壁12eのそれぞれに沿った方向へ並べられている。バッテリモジュール本体13と側面壁12cとの間には、セル14が並ぶ方向へ弾性反発力を発生する図示しない複数のばね(弾性体)が縮められている。これにより、各セル14及びダミー部材16は、容器12内で加圧されながら保持されている。
【0019】
基板15は、各セル14の上方に配置されている。また、基板15は、各セル14が並ぶ方向に沿って水平に配置されている。基板15には、各セル14の上端部に設けられた端子14aが接続されている。
【0020】
バッテリモジュール本体13には、所定の個数(例えば、3個〜5個)のセル14のまとまりをそれぞれ示す複数のブロックが設定されている。即ち、複数のセル14は、所定の個数(例えば、3個〜5個)の単位で複数のブロックに分けられている。ダミー部材16は、各ブロック間に介在している。
【0021】
この例では、3個のセル14のまとまりを示すブロックがバッテリモジュール本体13に3つ設定されている。また、2つのダミー部材16が各ブロック間に介在している。従って、バッテリモジュール本体13には、2つの通風路22が形成されている。
【0022】
ダミー部材16は、ダミー部材16を挟む2つのセル14間の間隔を所定の距離に維持しながら、通風路22を確保する。この例では、ダミー部材16は、セル14が並ぶ方向について互いに対向する一対の対向板と、各対向板間にそれぞれ固定された複数の固定棒とを有している。また、ダミー部材16の厚さ寸法(即ち、各対向板の外面間の距離)は、各セル14の厚さ寸法と同じになっている。通風路22は、各対向板間に形成されている。
【0023】
容器12には、セル14が並ぶ方向(即ち、容器12の幅方向)について通風路22の位置に合わせて配置された第1の吸気口18及び第2の吸気口19と、第1の吸気口18及び第2の吸気口19のそれぞれよりも高い位置に配置された排気口17とが設けられている。第1の吸気口18及び第2の吸気口19は、互いに離れた状態で容器12に個別に設けられている。
【0024】
第1の吸気口18は、容器12の正面壁12dに設けられている。また、第1の吸気口18の数は、通風路22の数に合わせて2つとされている。各第1の吸気口18のそれぞれの位置は、図4に示すように、セル14が並ぶ方向について各通風路22の位置と同位置とされている。各第1の吸気口18は、通風路22に沿って上下方向へ延びる長穴とされている。また、各第1の吸気口18は、各セル14の下端部から中間部にわたる高さに配置されている。
【0025】
第2の吸気口19は、容器12の底面壁12aに設けられている。また、第2の吸気口19の数は、通風路22の数に合わせて2つとされている。各第2の吸気口19のそれぞれの位置は、図5に示すように、セル14が並ぶ方向について各通風路22の位置と同位置とされている。各第2の吸気口19は、通風路22に沿って容器12の奥行き方向へ延びる長穴とされている。また、各第2の吸気口19は、底面壁12aに設けられているので、各セル14よりも低い位置に配置されている。
【0026】
排気口17は、容器12の正面壁12dに設けられている。この例では、3つの排気口17が正面壁12dに設けられている。各排気口17は、図4に示すように、セル14が並ぶ方向(即ち、容器12の幅方向)について互いに間隔を置いて配置されている。また、各排気口17は、セル14が並ぶ方向へ延びる長穴とされている。さらに、各排気口17は、セル14が並ぶ方向について各通風路22の位置を避けて配置されている。従って、各排気口17の位置と、セル14のまとまりを示す各ブロックの位置とは、セル14が並ぶ方向について同位置とされている。また、各排気口17は、各セル14の上端部の高さに配置されている。
【0027】
筐体10の筐体蓋10bには、図2及び図3に示すように、各排気口17の位置に合わせて配置された共通の排気用開口部20と、各第1の吸気口18の位置に合わせて個別に配置された複数(この例では、2つ)の吸気用開口部21とが設けられている。
【0028】
排気用開口部20は、筐体10の幅方向(水平方向)へ延びる長穴とされている。各吸気用開口部21は、上下方向へ延びる長穴とされている。筐体本体10aの開口を閉じているときの制御盤6を筐体10の奥行き方向に沿って見たときには、図2に示すように、排気用開口部20の領域内に各排気口17がまとめて収まっており、各吸気用開口部21の領域内に各吸気口18が個別に収まっている。
【0029】
バッテリモジュール11は、各第2の吸気口19が筐体10内の支持固定具で塞がれることを避けて、支持固定具に取り付けられている。即ち、バッテリモジュール11は、各第2の吸気口19をバッテリモジュール11の下方に露出させた状態で、支持固定具を介して筐体10内に取り付けられている。
【0030】
次に、動作について説明する。各セル14の発熱によって容器12内の温度が上昇すると、容器12内で上昇気流が発生する。これにより、各通風路22には、図3に示すように、各セル14の温度よりも低い温度の冷却風(外気)23が各吸気用開口部21を通って各第1の吸気口18から流入し、冷却風24が各第2の吸気口19から流入する。
【0031】
各通風路22に流入した冷却風23,24は、図3に示す矢印の経路で各通風路22を通過した後、各排気口17及び排気用開口部20を通って筐体10の外部へ排出される。各セル14は、冷却風23,24が各通風路22を通過することにより冷却される。
【0032】
このようなエレベータのバッテリモジュール11では、各セル14間の少なくともいずれかにダミー部材16が介在することによりセル14間に通風路22が形成され、容器12には、セル14が並ぶ方向について通風路22の位置に合わせて配置された第1の吸気口18及び第2の吸気口19と、第1の吸気口18及び第2の吸気口19のそれぞれよりも高い位置に配置された排気口17とが設けられているので、容器12内を下方から上方へ流れる冷却風23,24に対する抵抗を少なくすることができる。従って、各セル14の発熱で生じた上昇気流により、冷却風23,24を容器12内に流入させやすくすることができるとともに、容器12内の冷却風23,24を流出させやすくすることができる。これにより、容器12内での冷却風23,24の滞留を少なくすることができ、塵や埃等によるセルの正極と負極との間での短絡を生じにくくすることができる。これにより、バッテリモジュール11の故障を生じにくくすることができる。また、容器12内の上昇気流による冷却風23,24により十分な冷却効果を得ることができるので、メンテナンスが必要な冷却用のファンを容器12に取り付ける必要がなくなり、ファンの交換等の作業をなくすことができる。これにより、バッテリモジュール11の保守点検作業を容易にすることができる。
【0033】
また、排気口17が正面壁12dに設けられているとともに、第1の吸気口18が正面壁12dに設けられ、第2の吸気口19が底面壁12aに設けられているので、上下方向についての位置が異なる第1の吸気口18及び第2の吸気口19から冷却風23,24を容器12内に流入させることができ、冷却風23,24による各セル14の冷却効率をさらに向上させることができる。
【0034】
なお、上記の例では、第1の吸気口18及び第2の吸気口19のそれぞれが容器12に設けられているが、第1の吸気口18及び第2の吸気口19のうち、いずれかのみを容器12に設けてもよい。即ち、底面壁12aに第2の吸気口19が設けられていれば、正面壁12dに第1の吸気口18はなくてもよいし、正面壁12dに第1の吸気口18が設けられていれば、底面壁12aに第2の吸気口19はなくてもよい。
【0035】
また、上記の例では、各排気口17は、セル14が並ぶ方向について通風路22の位置を避けて配置されているが、セル14が並ぶ方向について通風路22の位置に合わせて各排気口17を配置してもよい。さらに、各排気口17間の仕切りを除去して各排気口17を繋げた1つの排気口を正面壁12dに設けてもよい。即ち、バッテリモジュール本体13の幅方向全体にわたって延びる1つの排気口を正面壁12dに設けてもよい。
【0036】
また、上記の例では、各排気口17が各セル14の上端部の高さに配置されているが、各セル14の上端部よりも高い位置に各排気口17を配置してもよい。
【0037】
また、上記の例では、ダミー部材16の数が2つとされているが、ダミー部材16の数を1つとしてもよいし、3つ以上としてもよい。
【0038】
また、上記の例では、ダミー部材16は、一対の対向板と、各対向板間に固定された複数本の固定棒とを有しているが、セル14間の間隔を所定の距離に維持し、かつ通風路22を確保する部材であれば、これに限定されない。例えば、仮想直方体の各辺に棒状部材を配置して組み立てた骨組みをダミー部材としてもよい。
【0039】
また、上記の例では、制御盤6が機械室2に設置されているエレベータにこの発明が適用されているが、制御盤6が昇降路内に設置された機械室レスエレベータにこの発明を適用してもよい。機械室レスエレベータにこの発明を適用すれば、ファンの交換等の保守点検作業の回数を減らすことにより、エレベータの保守管理をさらに容易にすることができる。
【符号の説明】
【0040】
6 制御盤、10 筐体、11 バッテリモジュール、12 容器、12a 底面壁、12d 正面壁、13 バッテリモジュール本体、14 セル、16 ダミー部材(スペーサ)、17 排気口、18 第1の吸気口(吸気口)、19 第2の吸気口(吸気口)、20 排気用開口部、21 吸気用開口部、22 通風路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの制御盤の筐体内に設けられるエレベータのバッテリモジュールであって、
容器、及び
水平方向へ並べられた複数のセルと、各上記セル間の少なくともいずれかに介在することにより上記セル間に通風路を形成するスペーサとを有し、上記容器内に収容されたバッテリモジュール本体
を備え、
上記容器には、上記セルが並ぶ方向について上記通風路の位置に合わせて配置された吸気口と、上記吸気口よりも高い位置に配置された排気口とが設けられているエレベータのバッテリモジュール。
【請求項2】
上記容器は、上記バッテリモジュール本体を下から受ける底面壁と、各上記セルが並ぶ方向に沿って上記底面壁に立てて設けられた正面壁とを有し、
上記吸気口は、上記正面壁及び上記底面壁のそれぞれに個別に設けられ、
上記排気口は、上記正面壁に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のエレベータのバッテリモジュール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−144360(P2012−144360A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−5697(P2011−5697)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】