説明

エレベータの敷居装置

【課題】この発明は、追加敷居の強度の低下を防ぎつつ、追加敷居の敷居本体に対する鉛直方向への変位をより確実に規制することができるエレベータの敷居装置を提供することを目的とするものである。
【解決手段】乗場敷居本体1のかご側には、乗場側追加敷居取付部1bが設けられている。乗場側追加敷居取付部1bのかご側部には、乗場側追加敷居7が締結されている。乗場側追加敷居取付部1bの下部には、変位規制部材20が締結されている。変位規制部材20には、乗場敷居本体1及びかご敷居本体間の隙間に突出する支持部20aが設けられている。乗場側追加敷居7は、支持部20aの上側に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレベータの乗場出入口及びかご出入口の下部に設けられるエレベータの敷居装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベータの敷居装置では、乗場敷居とかご敷居との間の隙間内に補助敷居が配置されている。補助敷居は、かご敷居側から乗場敷居に螺着された複数のボルトによって、乗場敷居に固定されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−269218号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来のエレベータの敷居装置では、補助敷居を乗場敷居に固定するボルトの数が少ないと、補助敷居を乗場敷居に強固に固定できない。これに対して、ボルトの数を増やすと、補助敷居の強度が低下してしまう。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、追加敷居の強度の低下を防ぎつつ、追加敷居の敷居本体に対する鉛直方向への変位をより確実に規制することができるエレベータの敷居装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るエレベータの敷居装置は、かご出入口の下部に設けられるかご敷居本体と、乗場出入口の下部に設けられる乗場敷居本体と、かご敷居本体及び乗場敷居本体間の隙間に突出する支持部を有し、かご敷居本体及び乗場敷居本体の少なくともいずれか一方に取り付けられる変位規制部材と、隙間内に配置されるとともに、支持部の上側に配置される追加敷居とを備える。
【発明の効果】
【0007】
この発明のエレベータの敷居装置によれば、追加敷居は、支持部の上側に配置されるので、追加敷居の敷居本体に対する鉛直方向への変位を、変位規制部材によって規制させることができる。従って、敷居本体に追加敷居を固定するためのボルトの数を低減させることができ、追加敷居の強度の低下を防ぎつつ、追加敷居の敷居本体に対する鉛直方向への変位をより確実に規制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1によるエレベータの敷居装置を示す斜視図である。図において、乗場敷居本体1は、乗場出入口の下部に設けられている。乗場敷居本体1には、乗場ドア(図示せず)の開閉動作を案内する複数の乗場敷居溝1aが設けられている。かご敷居本体2は、かご出入口の下部に設けられている。かご敷居本体2には、かごドア(図示せず)の開閉動作を案内する複数のかご敷居溝2aが設けられている。
【0009】
乗場敷居本体1とかご敷居本体2との間には、幅20〜30mm程度の隙間(ランニングクリアランス)5が設けられている。なお、隙間5の幅方向とは、かご出入口及び乗場出入口の間口方向に直角な方向である。
【0010】
隙間5内には、非可撓性の複数の追加敷居6が配置されている。追加敷居6には、乗場敷居本体1に対して固定された乗場側追加敷居7と、かご敷居本体2側に対して固定されたかご側追加敷居8とが含まれている。
【0011】
乗場側追加敷居7とかご側追加敷居8とは、互いに入れ子状に配置されている。つまり、乗場側追加敷居7とかご側追加敷居8とは、かご出入口及び乗場出入口の間口方向に互いに数mm程度の間隔を置いて隣り合うように配置されている。隙間5の幅方向において、乗場側追加敷居7は、かご側追加敷居8と対向していない。
【0012】
ここで、隙間5の幅方向における乗場側追加敷居7及びかご側追加敷居8の大きさは、10〜20mm程度である。従って、乗場敷居本体1とかご側追加敷居8との離間距離、及びかご敷居本体2と乗場側追加敷居7との離間距離は、10mm程度とされる。
【0013】
次に、図2は、図1の乗場側追加敷居7周辺を拡大して示す側面図である。図において、乗場側追加敷居7の下部には、平坦部7aが設けられている。乗場側追加敷居7の上部には、平坦部7aからかご敷居本体2側へ突出する突起部7bが設けられている。
【0014】
乗場敷居本体1のかご側には、一部開口の筒状の乗場側追加敷居取付部1bが設けられている。乗場側追加敷居取付部1bのかご側部及び平坦部7aには、乗場出入口の間口方向に互いに等間隔を置いて複数のボルト穴(締結穴)11が穿設されている。各ボルト穴11の内周部には、ネジ溝が設けられている。乗場側追加敷居取付部1bの内部には、ボルト穴11の位置に合わせて複数の第1の座13が配置されている。
【0015】
かご側から水平方向に沿ってボルト穴11に挿通された追加敷居固定用ボルト(締結部材)10が、第1の座13に螺着されることで、乗場側追加敷居7は乗場敷居本体1と締結されている。
【0016】
また、乗場敷居本体1の下部には、断面L字状の非可撓性板部材である変位規制部材20が配置されている。乗場側追加敷居取付部1bの下部及び変位規制部材20には、乗場出入口の間口方向に互いに等間隔を置いて複数のボルト穴(締結穴)21が穿設されている。各ボルト穴21の内周部には、ネジ溝が設けられている。乗場側追加敷居取付部1bの内部には、ボルト穴21の位置に合わせて複数の第2の座17が配置されている。
【0017】
変位規制部材20の下方から鉛直方向に沿ってボルト穴21に挿通された変位規制部材固定用ボルト(締結部材)16が、第2の座17に螺着されることで、変位規制部材20は、乗場敷居本体1と締結されている。
【0018】
変位規制部材20には、隙間5に突出する支持部20aが設けられている。乗場側追加敷居7は、支持部20aの上側に配置されている。変位規制部材20のかご側には、第1の端部20bが設けられている。第1の端部20bは、突起部7bに接触されている。また、変位規制部材20の乗場側には、第2の端部20cが設けられている。第2の端部20cは、乗場敷居溝1aの下部に配置されている。即ち、第2の端部20cは、乗場側追加敷居取付部1bよりも乗場側に配置されている。
【0019】
乗場側追加敷居7の乗場敷居本体1に対する鉛直方向への変位は、追加敷居固定用ボルト10のせん断力及び変位規制部材20によって規制される。
【0020】
次に、図3は、図1のかご側追加敷居8周辺を拡大して示す側面図である。図において、かご敷居本体2の乗場側には、かご側追加敷居取付部2bが設けられている。かご側追加敷居取付部2bには、乗場側追加敷居取付部1bと同様に、複数のボルト穴11及びボルト穴21が設けられている。
【0021】
また、かご側追加敷居取付部2bには、ボルト10,16によってかご側追加敷居8及び変位規制部材20が締結されている。かご側追加敷居8は、支持部20aの上側に配置されている。ここで、乗場敷居本体1の乗場側追加敷居取付部1bは、一部開口の筒状であったが、かご側追加敷居取付部2bは中空でない。つまり、かご敷居本体2では、かご側追加敷居8及び変位規制部材20をかご側追加敷居取付部2bに締結するために座13,17が用いられていない。
【0022】
かご側追加敷居8のかご敷居本体2に対する鉛直方向への変位は、追加敷居固定用ボルト10のせん断力及び変位規制部材20によって規制される。
【0023】
このようなエレベータの敷居装置では、追加敷居7,8は、支持部20aの上側に配置されているので、追加敷居7,8の敷居本体1,2に対する鉛直方向への変位は、追加敷居固定用ボルト10のせん断力のみだけでなく、変位規制部材20によっても規制される。従って、追加敷居固定用ボルト10の数を低減させることができ、追加敷居7,8の強度の低下を防ぎつつ、追加敷居7,8の敷居本体1,2に対する鉛直方向への変位をより確実に規制することができる。即ち、追加敷居7,8の落下をより確実に防止することができる。
【0024】
また、このようなエレベータの敷居装置では、乗場側追加敷居7とかご側追加敷居8とは、互いに入れ子状に配置されているので、例えば車椅子の車輪等が隙間5に挟まる可能性を低減させることができる。
【0025】
実施の形態2.
図4は、この発明の実施の形態2による乗場敷居本体1の要部を拡大して示す側面図である。図5は、この発明の実施の形態2によるかご敷居本体2の要部を拡大して示す側面図である。実施の形態1では、追加敷居7,8は、敷居本体1,2と締結されていたが、図4に示すように、追加敷居7,8は、敷居本体1,2と締結されていなくてもよい。つまり、追加敷居7,8は、変位規制部材20のみによって支持されるようにしてもよい。
【0026】
乗場側追加敷居7は、連結部材であるチェーン25によって乗場敷居本体1と連結されている。同様に、かご側追加敷居8は、チェーン25によってかご敷居本体2と連結されている。その他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0027】
このようなエレベータの敷居装置では、追加敷居7,8は、変位規制部材20のみによって支持されるようにしたので、追加敷居7,8にボルト穴11を設けずにすみ、追加敷居7,8の強度の低下をより確実に防ぐことができる。
【0028】
また、このようなエレベータの敷居装置では、追加敷居7,8は、チェーン25によって敷居本体1,2と連結されているので、例えばボルト16が緩む等して、変位規制部材20による追加敷居7,8の落下の規制が弱まり、追加敷居7,8が変位規制部材20上から落下したとしても、その落下は、チェーン25によって所定距離までとされ、追加敷居7,8が昇降路下部まで落下することを防止することができる。
【0029】
実施の形態3.
図6は、この発明の実施の形態3による乗場敷居本体1の要部を拡大して示す側面図である。図7は、この発明の実施の形態3によるかご敷居本体2の要部を拡大して示す側面図である。実施の形態1,2の変位規制部材20の形状は、断面L字状であると説明したが、この実施の形態3の変位規制部材28の形状は、平板状である。変位規制部材28には、隙間5に突出する支持部28aが設けられている。
【0030】
また、実施の形態1,2の乗場側追加敷居7及びかご側追加敷居8には、突起部7b,8bが設けられていたが、この実施の形態3の乗場側追加敷居29及びかご側追加敷居30には、突起部7b,8bが設けられていない。つまり、支持部28aと追加敷居29,30とは、1平面上でのみ互いに接触されている。また、実施の形態3の追加敷居29,30の底面29a,30aは、実施の形態1,2の追加敷居7,8の底面7c,8cよりも広くされている。換言すると、水平方向に沿う追加敷居29,30の下部の断面積は、実施の形態1,2の追加敷居7,8下部の水平方向に沿う断面積と比べて、より広くされている。
【0031】
変位規制部材28及び追加敷居29,30には、ボルト穴11が設けられている。ボルト穴11には、変位規制部材28の下方から鉛直方向に沿って追加敷居固定用ボルト10が螺着されている。追加敷居29,30は、追加敷居固定用ボルト10によって変位規制部材28と締結されている。その他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0032】
このようなエレベータの敷居装置では、変位規制部材28が平板状にされ、水平方向に沿う追加敷居29,30の断面積がより広くされているので、追加敷居29,30の強度をより高くすることができる。
【0033】
実施の形態4.
図8は、この発明の実施の形態4による乗場敷居本体1の要部を拡大して示す側面図である。図において、乗場側追加敷居取付部1bには、かご側へ突出する凸部33が設けられている。乗場側追加敷居34には、凸部33が嵌り込む凹部35が設けられている。乗場敷居本体1と乗場側追加敷居34とは互いに係合される。
【0034】
次に、図9は、この発明の実施の形態4によるかご敷居本体2の要部を拡大して示す側面図である。図において、かご側追加敷居取付部2bには、凹部35が設けられ、かご側追加敷居36には、凹部35に嵌り込む凸部33が設けられている。かご敷居本体2とかご側追加敷居8とは互いに係合される。その他の構成は、実施の形態3と同様である。
【0035】
このようなエレベータの敷居装置では、敷居本体1,2と追加敷居34,36とが互いに係合されるので、変位規制部材28による追加敷居34,36の敷居本体1,2に対する鉛直方向への変位の規制を補助することができ、その変位をより確実に規制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】この発明の実施の形態1によるエレベータの敷居装置を示す斜視図である。
【図2】図1の乗場側追加敷居周辺を拡大して示す側面図である。
【図3】図1のかご側追加敷居周辺を拡大して示す側面図である。
【図4】この発明の実施の形態2による乗場敷居本体の要部を拡大して示す側面図である。
【図5】この発明の実施の形態2によるかご敷居本体の要部を拡大して示す側面図である。
【図6】この発明の実施の形態3による乗場敷居本体の要部を拡大して示す側面図である。
【図7】この発明の実施の形態3によるかご敷居本体の要部を拡大して示す側面図である。
【図8】この発明の実施の形態4による乗場敷居本体の要部を拡大して示す側面図である。
【図9】この発明の実施の形態4によるかご敷居本体の要部を拡大して示す側面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 乗場敷居本体、2 かご敷居本体、5 隙間、6 追加敷居、7,29,34 乗場側追加敷居、8,30,36 かご側追加敷居、10 追加敷居固定用ボルト(締結部材)、11,21 ボルト穴(締結穴)、16 変位規制部材固定用ボルト(締結部材)、20,28 変位規制部材、20a,28a 支持部、25 チェーン(連結部材)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
かご出入口の下部に設けられるかご敷居本体と、
乗場出入口の下部に設けられる乗場敷居本体と、
上記かご敷居本体及び上記乗場敷居本体間の隙間に突出する支持部を有し、上記かご敷居本体及び上記乗場敷居本体の少なくともいずれか一方に取り付けられる変位規制部材と、
上記隙間内に配置されるとともに、上記支持部の上側に配置される追加敷居と
を備えていることを特徴とするエレベータの敷居装置。
【請求項2】
上記追加敷居には、上記乗場敷居本体に対して固定される乗場側追加敷居と、上記かご敷居本体に対して固定されるかご側追加敷居とが含まれており、
上記乗場側追加敷居と上記かご側追加敷居とは、上記かご出入口及び上記乗場出入口の間口方向に互いに間隔を置いて隣り合うように配置されることを特徴とする請求項1記載のエレベータの敷居装置。
【請求項3】
上記追加敷居は、上記乗場敷居本体及び上記追加敷居に設けられた締結穴にかご側から挿通された締結部材によって、上記乗場敷居本体と締結されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエレベータの敷居装置。
【請求項4】
上記追加敷居は、上記かご敷居本体及び上記追加敷居に設けられた締結穴に乗場側から挿通された締結部材によって、上記かご敷居本体と締結されることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のエレベータの敷居装置。
【請求項5】
上記変位規制部材は、上記敷居本体の下部に配置されるとともに、上記敷居本体及び上記変位規制部材に設けられた締結穴に上記変位規制部材の下側から挿通された締結部材によって、上記敷居本体と締結されることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載のエレベータの敷居装置。
【請求項6】
上記追加敷居は、上記かご敷居本体及び上記乗場敷居本体の少なくともいずれか一方に連結部材によって連結されることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載のエレベータの敷居装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−347728(P2006−347728A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−178047(P2005−178047)
【出願日】平成17年6月17日(2005.6.17)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】