説明

エレベータの機械台倒れ止め装置

【課題】本発明は、据付現場で倒れ止め本体の位置を容易に調整し、据付作業の作業効率を向上させることを目的とするものである。
【解決手段】機械台倒れ止め装置14は、倒れ止め本体15と、倒れ止め本体15を機械台6,7に固定する複数組の挟持装置16とを有している。倒れ止め本体15は、第1及び第2の上部フランジ部6b,7bの上面に係合された上部係合部15aと、第1及び第2の下部フランジ部6c,7cの下面に係合された下部係合部15bとを有している。挟持装置16は、上部係合部15aとの間に第1及び第2の上部フランジ部6b,7bを、下部係合部15bとの間に第1及び第2の下部フランジ部6c,7cをそれぞれ挟み込むことにより、倒れ止め本体15を第1及び第2の機械台6,7に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、巻上機を支持する第1及び第2の機械台が地震時に転倒するのを防止するために、第1及び第2の機械台に連結されるエレベータの機械台倒れ止め装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベータの機械台では、一対の梁状体にそれぞれ連結片が溶接されている。そして、連結片間には平板状の連結部材が連結されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】実開昭53−50961号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来の機械台では、工場で連結片が梁状体に予め溶接されており、また連結片には連結部材を連結するための孔が予め加工されているため、連結片の溶接位置や孔の加工位置が誤っていた場合には、据付現場で追加加工を施す必要があり、手間がかかる。特に、機械台は機械室の壁に対して斜めに配置されることが多く、その場合、梁状体が長手方向に互いにずらして配置されるため、現地での正確な据付状況を把握するのが難しく、従って連結片や孔を予め適正に設けることが難しかった。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、据付現場で倒れ止め本体の位置を容易に調整することができ、据付作業の作業効率を向上させることができるエレベータの機械台倒れ止め装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るエレベータの機械台倒れ止め装置は、上端部に第1の上部フランジ部が設けられ、下端部に第1の下部フランジ部が設けられている梁状の第1の機械台と、上端部に第2の上部フランジ部が設けられ、下端部に第2の下部フランジ部が設けられ、第1の機械台に並べて配置された梁状の第2の機械台とに連結されているものであって、第1及び第2の上部フランジ部に係合される上部係合部と、第1及び第2の下部フランジ部に係合される下部係合部と、上部係合部と下部係合部との間に設けられている繋ぎ部とを有する倒れ止め本体、及び上部係合部との間に第1及び第2の上部フランジ部を、下部係合部との間に第1及び第2の下部フランジ部をそれぞれ挟み込むことにより、倒れ止め本体を第1及び第2の機械台に固定する複数の挟持装置を備えている。
【発明の効果】
【0007】
この発明のエレベータの機械台倒れ止め装置は、第1及び第2の上部フランジ部に係合される上部係合部と、第1及び第2の下部フランジ部に係合される下部係合部と、上部係合部と下部係合部との間に設けられている繋ぎ部とを有する倒れ止め本体を用い、複数の挟持装置により、上部係合部との間に第1及び第2の上部フランジ部を、下部係合部との間に第1及び第2の下部フランジ部をそれぞれ挟み込むようにしたので、据付現場で倒れ止め本体の位置を容易に調整することができ、据付作業の作業効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1によるエレベータの機械台倒れ止め装置の設置状態を示す斜視図である。図において、かご(図示せず)が昇降される昇降路の上部には、機械室1が設けられている。機械室1の床2上には、シンダーコンクリート3が施工されている。
【0009】
シンダーコンクリート3には、一対の機械台受け材4,5が互いに平行に埋設されている。機械台受け材4,5間には、梁状の第1及び第2の機械台6,7が互いに幅方向に間隔をおいて並べて架設されている。機械台受け材4,5の上面と機械台6,7の下面との間には、複数の防振ゴム8が介在されている。
【0010】
第1及び第2の機械台6,7としては、長さ及び断面寸法が等しい2本のI型鋼が用いられている。また、第1及び第2の機械台6,7は、長手方向両端面の位置を揃えて互いに平行に配置されている。さらに、第1及び第2の機械台6,7は、それらの長手方向が機械台受け材4,5の長手方向に直交するように配置されている。
【0011】
機械台6,7上には、かごを昇降させる巻上機10が複数の防振ブロック9を介して支持されている。巻上機10は、巻上機モータ11、巻上機モータ11により回転される綱車12を有している。綱車12には、かご及び釣合おもり(図示せず)を吊り下げる複数本の巻上ロープ13が巻き掛けられている。
【0012】
機械台6,7の長手方向両端部には、一対の機械台倒れ止め装置14が取り付けられている。各機械台倒れ止め装置14は、鋼板をコ字形に折り曲げ加工してなる倒れ止め本体15と、この倒れ止め本体15を機械台6,7に固定する複数組の挟持装置16とを有している。
【0013】
図2は図1の機械台倒れ止め装置14を拡大して示す斜視図、図3は図2の機械台倒れ止め装置14を示す平面図、図4は図2の機械台倒れ止め装置14を示す側面図である。第1の機械台6は、鉛直な第1のウエブ6aと、第1のウエブ6aの上端部に設けられた水平な第1の上部フランジ部6bと、第1のウエブ6aの下端部に設けられた水平な第1の下部フランジ部6cとを有している。
【0014】
同様に、第2の機械台7は、鉛直な第2のウエブ7aと、第2のウエブ7aの上端部に設けられた水平な第2の上部フランジ部7bと、第2のウエブ7aの下端部に設けられた水平な第2の下部フランジ部7cとを有している。
【0015】
倒れ止め本体15は、第1及び第2の上部フランジ部6b,7bの上面に係合(当接)された平板状の上部係合部15aと、第1及び第2の下部フランジ部6c,7cの下面に係合(当接)された平板状の下部係合部15bと、上部係合部15aと下部係合部15bとの間に設けられ機械台6,7の端面に当接された繋ぎ部15cとを有している。
【0016】
上部係合部15a及び下部係合部15bは、互いに対向するように水平に配置されている。また、繋ぎ部15cは、上部係合部15a及び下部係合部15bの端部間に鉛直に配置されている。
【0017】
上部係合部15aは、第1及び第2の機械台6,7の長手方向に沿って延長され、第1及び第2の機械台6,7間の間隙を覆う機械台カバー(落下防止カバー)を兼ねている。即ち、上部係合部15aには、機械台カバー部15dが設けられている。また、上部係合部15aの上面には、多数の滑り止め溝15eが設けられている。
【0018】
繋ぎ部15cには、挟持装置16の装着時に作業者が手を挿入するための複数の開口15fが設けられている。この例では、第1及び第2の機械台6,7の近傍にそれぞれ1個ずつ、合計2個の円形の開口15fが設けられている。また、開口15fは、第1及び第2の機械台6,7間の空間に連通するように設けられている。
【0019】
各挟持装置16は、フランジ部6b,6c,7b,7cのいずれかに当接されるクリップ片17と、このクリップ片17をフランジ部6b,6c,7b,7cのいずれかに押し当てつつ倒れ止め本体15に固定する締結具18とを有している。また、締結具18としては、倒れ止め本体及びクリップ片17を貫通するボルトと、このボルトに螺着されたナットとが用いられている。
【0020】
挟持装置16は、上部係合部15aとの間に第1及び第2の上部フランジ部6b,7bを、下部係合部15bとの間に第1及び第2の下部フランジ部6c,7cをそれぞれ挟み込むことにより、倒れ止め本体15を第1及び第2の機械台6,7に固定する。
【0021】
第1の機械台6と各倒れ止め本体15との間には、第1の機械台6の長手方向端部の第1の上部フランジ部6bを第1のウエブ6aの両側で挟持する2組の挟持装置16と、第1の機械台6の長手方向端部の第1の下部フランジ部6cを第1のウエブ6aの両側で挟持する2組の挟持装置16と、機械台カバー部15dの端部で第1の上部フランジ部6bを挟持する2組の挟持装置16とが用いられている。第2の機械台7と各倒れ止め本体15との間にも、第1の機械台6と同様の配置で、計6組の挟持装置16が用いられている。
【0022】
このようなエレベータの機械台倒れ止め装置14では、挟持装置16により、上部係合部15aとの間に第1及び第2の上部フランジ部6b,7bを、下部係合部15bとの間に第1及び第2の下部フランジ部6c,7cをそれぞれ挟み込むようにしたので、機械台6,7に倒れ止め本体15を取り付けるための溶接加工や孔加工を施す必要がなく、据付現場で倒れ止め本体15の位置を容易に調整することができ、据付作業の作業効率を向上させることができる。
【0023】
また、倒れ止め本体15に機械台カバー部15dを設けたので、機械台6,7間に工具等を落とすことを防止できる。
さらに、機械台カバー部15dは上部係合部15aに一体に設けられているので、部品点数を削減できるとともに、据付作業の手間を軽減できる。
さらにまた、倒れ止め本体15に開口15fを設けたので、機械台6,7間に位置する挟持装置16の装着作業を容易に行うことができる。
【0024】
なお、機械台カバー部15dは、下部係合部15bを延長して設けてもよい。
また、機械台カバー部15dは、不要であれば省略してもよい。
【0025】
実施の形態2.
次に、図5はこの発明の実施の形態2によるエレベータの機械台倒れ止め装置を示す平面図、図6は図5の機械台倒れ止め装置を示す側面図、図7は図5の機械台倒れ止め装置を示す分解斜視図である。
【0026】
この例では、第1及び第2の機械台6,7は、機械台受け材4,5に対して斜めに配置されている。即ち、第1及び第2の機械台6,7は、平面的に見て建屋の壁に対して斜めに配置されている。これに伴い、第1及び第2の機械台6,7は、それらの長手方向に互いにずらして配置されている。また、第1及び第2の機械台6,7の端面は、第1及び第2の機械台6,7の長手方向に対して斜めになっている。
【0027】
倒れ止め本体15は、第1及び第2の機械台6,7の長手方向に対して斜めに配置されている。また、倒れ止め本体15は、機械台受け材4,5に平行に配置されている。上部係合部15aは、下部係合部15bと同じ長さであり、倒れ止め本体15とは別体の平板状の機械台カバー19が第1及び第2の機械台6,7上に固定されている。
【0028】
機械台カバー19の倒れ止め本体15側の端部は、倒れ止め本体15とともに挟持装置16により上部フランジ部6b,7bに固定されている。また、機械台カバー19の倒れ止め本体15とは反対側の端部も、挟持装置16により上部フランジ部6b,7bに固定されている。機械台カバー19には、挟持装置16のボルトを通す複数の孔が設けられている。他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0029】
このように、第1及び第2の機械台6,7が斜めに配置されており、第1及び第2の機械台6,7に対して倒れ止め本体15が斜めに配置される場合でも、機械台6,7に倒れ止め本体15を取り付けるための溶接加工や孔加工を施す必要がなく、据付現場で倒れ止め本体15の位置を容易に調整することができ、据付作業の作業効率を向上させることができる。
【0030】
実施の形態3.
次に、図8はこの発明の実施の形態3によるエレベータの機械台倒れ止め装置を示す平面図、図9は図8の機械台倒れ止め装置を示す側面図、図10は図8のX−X線に沿う断面図、図11は図8の機械台倒れ止め装置を示す分解斜視図である。
【0031】
図において、第1及び第2の機械台6,7の端部は、建屋壁20に設けられた凹部20a内に挿入されている。このため、機械台倒れ止め装置は、第1及び第2の機械台6,7の端部ではなく、中間部に取り付けられている。実施の形態3の機械台倒れ止め装置は、倒れ止め本体21と、この倒れ止め本体21を第1及び第2の機械台6,7に固定する複数組の挟持装置16とを有している。
【0032】
倒れ止め本体21は、互いに対向する断面コ字形の一対の固定部材22と、固定部材22上に固定される平板状の上板23とを有している。各固定部材22は、上板23の下面を受ける平板状の上板取付部22aと、第1及び第2の下部フランジ部6c,7cの下面に係合(当接)された平板状の下部係合部22bと、上板取付部22aと下部係合部22bとの間に設けられた繋ぎ部22cとを有している。
【0033】
繋ぎ部22cには、挟持装置16の装着時に作業者が手を挿入するための開口22dが設けられている。上板23は、複数の締結具(ボルト・ナット)24により、上板取付部22aに固定される。第1及び第2の機械台6,7の長手方向における上板23の両端部には、第1及び第2の上部フランジ部6b,7bの上面に係合(当接)された上部係合部23a,23bが設けられている。
【0034】
また、上板23の中間部は、第1及び第2の機械台6,7間の間隙を覆う機械台カバーを兼ねている。さらに、上板23の上面には、多数の滑り止め溝23cが設けられている。
【0035】
このような機械台倒れ止め装置であっても、挟持装置16により、上部係合部23a,23bとの間に第1及び第2の上部フランジ部6b,7bを、下部係合部22bとの間に第1及び第2の下部フランジ部6c,7cをそれぞれ挟み込むようにしたので、機械台6,7に倒れ止め本体21を取り付けるための溶接加工や孔加工を施す必要がなく、据付現場で倒れ止め本体15の位置を容易に調整することができ、据付作業の作業効率を向上させることができる。
【0036】
また、第1及び第2の機械台6,7の空いた部分のどこにでも機械台倒れ止め装置を取り付けられるため、機械台倒れ止め装置をバランス良く振り分けることができる。
さらに、第1及び第2の機械台6,7の端部が建屋壁20に埋め込まれたり、第1及び第2の機械台6,7の端部近傍に他の機器が設置されたりしている場合にも、機械台倒れ止め装置を設置することができる。
【0037】
なお、機械台倒れ止め装置の設置個数は2個に限定されるものではなく、十分な倒れ止め効果が得られれば1個でも3個以上でもよい。
また、上記の例では、断面I形の機械台6,7を示したが、上部フランジ部及び下部フランジ部を有していればI形に限定されるものではなく、例えば断面コ字形でもよい。
さらに、挟持装置16の装着が可能であれば開口15f,22dは省略してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】この発明の実施の形態1によるエレベータの機械台倒れ止め装置の設置状態を示す斜視図である。
【図2】図1の機械台倒れ止め装置を拡大して示す斜視図である。
【図3】図2の機械台倒れ止め装置を示す平面図である。
【図4】図2の機械台倒れ止め装置を示す側面図である。
【図5】この発明の実施の形態2によるエレベータの機械台倒れ止め装置を示す平面図である。
【図6】図5の機械台倒れ止め装置を示す側面図である。
【図7】図5の機械台倒れ止め装置を示す分解斜視図である。
【図8】この発明の実施の形態3によるエレベータの機械台倒れ止め装置を示す平面図である。
【図9】図8の機械台倒れ止め装置を示す側面図である。
【図10】図8のX−X線に沿う断面図である。
【図11】図8の機械台倒れ止め装置を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0039】
6 第1の機械台、6b 第1の上部フランジ部、6c 第1の下部フランジ部、7 第2の機械台、7b 第2の上部フランジ部、7c 第2の下部フランジ部、14 機械台倒れ止め装置、15,21 倒れ止め本体、15a,23a 上部係合部、15b,22b 下部係合部、15c,22c 繋ぎ部、15d 機械台カバー部、15f,22d 開口、16 挟持装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端部に第1の上部フランジ部が設けられ、下端部に第1の下部フランジ部が設けられている梁状の第1の機械台と、上端部に第2の上部フランジ部が設けられ、下端部に第2の下部フランジ部が設けられ、前記第1の機械台に並べて配置された梁状の第2の機械台とに連結されているエレベータの機械台倒れ止め装置であって、
前記第1及び第2の上部フランジ部に係合される上部係合部と、前記第1及び第2の下部フランジ部に係合される下部係合部と、前記上部係合部と前記下部係合部との間に設けられている繋ぎ部とを有する倒れ止め本体、及び
前記上部係合部との間に前記第1及び第2の上部フランジ部を、前記下部係合部との間に前記第1及び第2の下部フランジ部をそれぞれ挟み込むことにより、前記倒れ止め本体を前記第1及び第2の機械台に固定する複数の挟持装置
を備えていることを特徴とするエレベータの機械台倒れ止め装置。
【請求項2】
前記上部係合部及び前記下部係合部の少なくともいずれか一方は、前記第1及び第2の機械台の長手方向に沿って延長され、前記第1及び第2の機械台間の間隙を覆う機械台カバーを兼ねていることを特徴とする請求項1記載のエレベータの機械台倒れ止め装置。
【請求項3】
前記繋ぎ部には、前記挟持装置の装着時に手を挿入するための開口が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエレベータの機械台倒れ止め装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−154990(P2009−154990A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−332340(P2007−332340)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】