説明

エレベータの照明装置

エレベータの照明装置100は、エレベータのかご室1の天井部4に、かご室1内の照明用として設けられた光源要素を備える。光源要素は、第1の発光色を放射する少なくとも1つの第1の光源10aと、第1の発光色と異なる第2の発光色を放射する少なくとも1つの第2の光源10bとを含む複数の光源の組み合せからなる。発光色の異なる複数の光源を同時に用いることで、色調を多彩にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータのかご室内を照明する照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータのかご室は、上部に天井部を有している。照明箱は、この天井部の下面に取り付けられている。照明箱は、下面に大きな開口部を有し、この開口部に光透過性の例えば合成樹脂からなる照明板が設けられている。
【0003】
光源要素として複数の蛍光ランプ(熱陰極管)が、天井部の下面に設けられている。これら蛍光ランプが点灯すると、照明板を通してその光がかご室内に拡散し、かご室内が照明される。
【0004】
かご室内を照明する光源要素として使用される蛍光ランプの発光色は、白色や昼白色等、複数種類のうちから一つが標準色に選択される。かご室内の内装の装飾や配色は、この選択された標準色の蛍光ランプにあわせてデザインされる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かご室内は、自然光が差し込むことは稀である。したがって、かご室内の意匠性や雰囲気は、その内部に設けられる照明効果に依存するところが大きい。かご室内の照明用に採用した光源要素の発光色に、白色や昼白色等のうちの一つが選択されると、かご室内の色合いは、画一的なものとなる。このため、エレベータの設置場所等に応じた意匠性や雰囲気をつくりだすことが困難となっている。
【0006】
そこで、本発明は、エレベータの設置場所等に応じてかご室内の照明色の色調を変え、所望の意匠性や雰囲気を作りだすことができるエレベータの照明装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るエレベータの照明装置は、エレベータのかご室の天井部に、かご室内照明用として設けられた光源要素を備える。光源要素は、第1の発光色を放射する少なくとも1つの第1の光源と、第1の発光色と異なる第2の発光色を放射する少なくとも1つの第2の光源とを含む複数の光源の組み合せからなる。
【0008】
このとき、光源としては、冷陰極蛍光ランプ、あるいは、発光ダイオードまたは有機エレクトロルミネッセンスの少なくともいずれか一方の素子を適用する。光源は、かご室の天井部に規則性を有して配設する。この場合、隣り合う光源は、互いに異なる発光色にする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、発光色の異なる複数の光源を備えることで、色調が多彩になり、かご室内の照明色をエレベータの設置場所等に応じた色合いに設定することができる。したがって、顧客が要望する意匠や雰囲気をつくりだすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に係る第1の実施形態について図1および図2を参照して説明する。
図1にはエレベータのかご室1の構成を示している。このかご室1は、床部2と、この床部2の上の四方を囲む側板部3と、側板部3の上端部に設置された天井部4とを備えている。
【0011】
照明箱5は、天井部4の下面に取り付けられ、下面に大きな開口部6を有している。この開口部6に光透過性を有する、例えば合成樹脂で形成された、照明板7が設けられている。天井部4の下面には、光源要素として、複数の直管形の光源10a,10bがそれぞれソケット台11を介して規則的に並列するように取り付けられている。これら光源10a,10bから放射される光は、照明板7を透過してかご室1内に拡散さることによって、かご室1内を照明する。
【0012】
照明装置100は、光源10a,10bとソケット台11とコネクタ21と操作盤22とテールコード23と制御盤24と商業用の外部電源25とで構成される。外部電源25は、現地で入手可能な電力の電圧であってもよいし、入手した電力を変圧器で調整されたものでも良い。外部電源25は、制御盤24に接続される。制御盤24は、テールコード23によって、かご室1内の操作盤22に接続されている。
【0013】
操作盤22は、外部電源25をオン・オフさせるためのスイッチが配置されている。操作盤22は、かご室1外側の天井部4の上に設置されるコネクタ21に接続されている。コネクタ21は、照明箱5内の複数あるソケット台11のそれぞれと並列に接続されている。ソケット第11は、安定器や変圧器を含むインバータを内蔵している。
【0014】
なお、かご室1は、正面に出入口15が形成されている。この出入口15は、この出入口15を閉じるためのドア16a,16bが設けられている。また、ドア16a,16bの上部は、幕板で覆われる。側板部3の下端は、巾木18が取り付けられる。
【0015】
光源10a,10bは、図2に示すように、天井部4の下面に縦横に均等的に配列するように設けられている。これら光源10a,10bは、冷陰極蛍光ランプであって、第1の発光色を放射する第1の光源10aと、これと隣り合い第1の発光色と異なる第2の発光色を放射する第2の光源10bである。第1の発光色および第2の発光色として、白色、昼白色、昼光色、電球色などのほか、光の3原色の赤、青、緑から作られる色であっても良い。
【0016】
発光色の組み合せの一例を挙げると、複数の光源のうちの幾つかは白色で、残りの光源10は昼白色となっている。例えば、図2に示す8つの光源のうち、4つの第1の光源10aは白色、残りの4つの第2の光源10bは昼白色で、白色の第1の光源10aと昼白色の第2の光源10bとが横方向および縦方向に対して交互に並ぶように設けられている。
【0017】
このように、複数の光源10a,10bの発光色が異なることにより、一種類の発光色の光源を用いる場合比べて、複数の色が交じり合った独特の色合いで、かご室1内が照明される。したがって、かご室1内の意匠性や雰囲気は、エレベータの設置場所等に相応しいように設定することができる。
【0018】
光源10a,10bの発光色の組み合せは、上述の例の場合に限らず、例えば図2における左半分の光源を白色、右半分の光源を昼白色とする場合、上半分の光源を白色、下半分の光源を昼白色とする場合、あるいは左右の2つずつの光源を白色、その中間部の4つの光源を昼白色とする場合など、種々のバリエーションを選ぶことが可能である。また、外の制御盤24によって点灯させる光源10a,10bの数を変化させ、例えば外の天気や明るさなどに応じてかご室1内の明るさを変化させても良い。
【0019】
また、使用する光源の発光色についても、白色と昼白色との組み合せとする場合に限らず、青色、赤色、緑色などの種々の発光色の光源を組み合わせて使用することが可能である。これによりさらに幻想的な照明色でかご室1内を照明することができる。
【0020】
光源10a,10bとして用いられる冷陰極蛍光ランプは、1〜6mm程度の直径を有する透光性放電容器と、この放電容器の両端部に封止された一対の冷陰極と、放電容器の内面に塗布された蛍光体と、放電容器内に封入された放電媒体とを備える。陰極が加熱されることなく発光するため、点灯・消灯の回数によって寿命が左右されることがない。単に発光時間に起因する要素だけで寿命が決まるという特性をもっている。また、この冷陰極蛍光ランプは、電圧を印加すると直に点灯し、発光までの時間的な遅れがないことも特徴の1つである。
【0021】
このような冷陰極蛍光ランプを光源10a,10bとし、発光色の異なる複数の種類を天井部4に取り付けるようにする。冷陰極蛍光ランプの管径が小さく、発熱も少ないので、天井部4に光源10a,10bを密に配設することができる。これにより点灯時に照明板7の全域をむらなく一様に照光して、かご室1内を均等に照明することができる。また、光源10a,10bである冷陰極蛍光ランプの管径が小さいので、照明箱5の厚さを薄形に構成できる。かご室1は、天井が高くなり、かご室1の内部空間を広く有効に使用することができる。
【0022】
さらに、冷陰極蛍光ランプは、通常一般の蛍光ランプに比べて格段に長寿命である。このためその交換期間を大幅に延ばすことができ、保守に手間がかから無い。冷陰極蛍光ランプは、通常一般の蛍光ランプのような点灯時における不規則な点滅動作がなく、直ちに点灯が可能である。このため点灯の瞬間からかご室1内を違和感なく照明することができる。点灯させる光源10a,10bを運行途中で切換える制御を行っても利用者に違和感を与えることがない。
【0023】
本発明に係る第2の実施形態の照明装置100について、図3を参照して説明する。なお、第1の実施形態に記載の照明装置100と同じ機能を有する構成は、同一の符号を付してその説明を省略する。図3に示すエレベータの天井に取り付けられた照明装置100は、第1の光源としてのLED(発光ダイオード)10cと、第2の光源としてのLED10dとを備えている。本実施形態において、各LED10c,10dは、緻密に一列に並べられた状態で、ソケット台11に装着されている。LED10c,10dは、かご室1内として必要な光量を満たす十分な数だけ取り付けられる。また、発光色は、第1の実施形態と同様に多種類用意される。このとき隣り合うソケット台11ごとにLED10c,10dどうし異なる発光色としてもよいし、同じソケット台11内で異なる発光色のLEDが配置されていても良い。図3に示すように一列のソケット台11にユニット化する以外に、パネル状にLEDを配置したものでも良い。
【0024】
本発明に係る第3の実施形態の照明装置100について、図4を参照して説明する。なお、第2の実施形態に記載の照明装置と同じ機能を有する構成は、同一の符号を付してその説明を省略する。図4に示すエレベータの天井に取り付けられた照明装置100は、第1および第2の光源として有機EL(エレクトロルミネッセンス)10e,10fを備える。パネル状に形成された有機EL10e,10fは、単色のパネルであってもよいし、複数色を表示できるカラーパネルであってもよい。有機EL10e,10fの大きさは、かご室1内に必要な十分な光量を提供できる発光面積を有している。また、有機EL10e,10fは、光源としてのモノトーンな明かりのみならず、空などの開放的な風景、幻想的な景色や図柄、あるいは広告といった画像、映像などを写し出しても良い。
【0025】
第2および第3の実施形態の場合、光源は、LED10c,10d、有機EL10e,10fなのでソケット台11にインバータを内蔵しない。また、ソケット台11には、光源としてLED10c,10dを配設する場合であっても、有機EL10e,10fを配設する場合であっても、あるいはLED10c,10dと有機EL10e,10fとを適数ずつ組み合わせて配設する場合等であってもよい。LED10c,10dや有機EL10e,10fを発光制御する手段としては、従来一般の駆動制御装置を用いる。
【0026】
本発明に係る第4の実施形態の照明装置100について、図5を参照して説明する。なお、第1の実施形態に記載の照明装置100と同じ機能を有する構成は、同一の符号を付してその説明を省略する。図5に示す照明装置100は、出入口15に向いてかご室1の中心の位置を境にそこから左右に3本ずつ、等間隔で第1の光源および第2の光源となる冷陰極蛍光ランプ10g,10hが配置されている。
【0027】
本発明に係る第5の実施形態の照明装置100について、図6を参照して説明する。なお、第1の実施形態に記載の照明装置と同じ構成を有する構成は、同一の符号を付してその説明を省略する。図6に示す照明装置100は、第1の発光色の第1の光源10mと、これと異なる発光色の第2の発光色の第2の光源10nとを備える。
【0028】
第1の光源10mは、天井側の照明箱5の内部に取り付けられ、第2の光源10nは、照明板7の内側に取り付けられている。第2の光源10nは、かご室1の上部の隅に沿って配置され、照明板7から第1の光源10mとの間に延びる仕切り板31で囲われている。第1の光源10mから放射される光は、仕切り板31の間の照明板7を透過してかご室1内を照らす。第2の光源10nからの光は、仕切り板31で囲われた外側の範囲の照明板7を透過してかご室1内に放射される。
【0029】
第1の発光色の具体例は、昼光色であり、第2の発光色の具体例は、白色である。発光色の違いは、冷陰極管を光源に用いる場合、ガラス管の内面に塗布される蛍光材料によって変更される。
【0030】
なお、第1の光源10mが冷陰極管で、第2の光源10nがLEDであっても良い。また、冷陰極管とLEDと有機ELのいずれを組み合わせて組み込んでも良い。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明に係る照明装置は、外からの光が入りにくい閉鎖空間における人工照明として有効である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る第1の実施形態の照明装置を備えるエレベータの鉛直方向に沿ってかご室の断面を模式的に示す図。
【図2】図1に示したかご室の天井部を下から見上げた平面図。
【図3】本発明に係る第2の実施形態の照明装置を備えるエレベータのかご室の天井を下から見上げた平面図。
【図4】本発明に係る第3の実施形態の照明装置を備えるエレベータのかご室の天井を下から見上げた平面図。
【図5】本発明に係る第4の実施形態の照明装置を備えるエレベータのかご室の天井を下から見上げた平面図。
【図6】本発明に係る第5の実施形態の照明装置を備えるエレベータの鉛直方向に沿ってかご室の断面を模式的に示す図。
【符号の説明】
【0033】
1…かご室、4…天井部、10a…第1の光源、10b…第2の光源、10c…LED(第1の光源)、10d…LED(第2の光源)、10e…有機EL(第1の光源)、10f…有機EL(第2の光源)、10g…冷陰極蛍光ランプ(第1の光源)、10h…冷陰極蛍光ランプ(第2の光源)、10m…第1の光源、10n…第2の光源、100…照明装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータのかご室と、このかご室の天井部にかご室内照明用として設けられた光源要素と、を具備し、
前記光源要素は、
第1の発光色を放射する少なくとも1つの第1の光源と、
前記第1の発光色と異なる第2の発光色を放射する少なくとも1つの第2の光源と
を含む複数の光源との組み合せからなることを特徴とするエレベータの照明装置。
【請求項2】
前記光源は、冷陰極蛍光ランプであることを特徴とする請求項1に記載のエレベータの照明装置。
【請求項3】
前記光源は、発光ダイオードおよび有機エレクトロルミネッセンスのうちの少なくともいずれか一方の素子であることを特徴とする請求項1に記載のエレベータの照明装置。
【請求項4】
前記複数の光源は、前記かご室の天井部に規則的に並んで配設されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のエレベータの照明装置。
【請求項5】
前記かご室の天井部に規則的に並んで配設される複数の光源は、互に発光色の異なる光源が互に隣り合って並ぶ状態にあることを特徴とする請求項4に記載のエレベータの照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−505021(P2007−505021A)
【公表日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526015(P2006−526015)
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【国際出願番号】PCT/JP2004/016279
【国際公開番号】WO2005/042390
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】