説明

エレベータの音響制御装置及びエレベータの音響システム及びエレベータ装置

【課題】視覚障害者でもエレベータの運転状態を聴覚にて認識できるようにすることを目的とする。
【解決手段】エレベータの音響制御装置103において、データ受信部105は、エレベータ制御装置101から、乗りかご102の運転状態を示す運転データを受信する。信号生成部140は、乗りかご102内に効果音を出力するスピーカ104a,104bの各々に与える効果音信号を、スピーカごとに生成する。信号処理部130は、データ受信部105が受信した運転データで示された運転状態に対応する音響効果をスピーカ104a,104bによって出力される効果音に付加する信号処理を、スピーカごとに信号生成部140が生成した効果音信号に対して施す。信号出力部150は、信号処理部130が信号処理を施した効果音信号をスピーカ104a,104bの各々に与えて、スピーカ104a,104bに効果音を出力させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータの音響制御装置及びエレベータの音響システム及びエレベータ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレベータは上下方向に移動する乗り物であるが、エレベータに乗り込んだ乗客は展望エレベータやガラス窓があるエレベータでは外の景色の変化で上下運行していることを認識できる。また、特許文献1のようにかご内にある階床インジケータの表示の変化で上下走行していることを認識できる。しかし、視覚障害者の場合、視覚からの情報がないため、エレベータが昇っているか降っているかはエレベータに乗り込んだ後では認識困難である。
【0003】
例えば特許文献2のように近年エレベータでは音声合成アナウンス装置によりエレベータの動作を音声アナウンスにより報知することが一般化してきており、その場合は、乗場からかごに乗り込む音声合成アナウンス装置が「上に参ります」や「下に参ります」等と音声アナウンスして報知することにより、視覚障害者であっても乗り込むエレベータがどちらの方向へ走行しようとしているかを認識できるようにしている。
【特許文献1】特開昭59−17474号公報
【特許文献2】特開昭56−78782号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ただ上記のような場合でも、かごに乗った後、どちらへ走行するアナウンスであったかを忘れてしまえば、二度と認識するタイミングはない。特に高層ビル等で停止する階と階の間隔が大きい場合等、エレベータに乗り込んだ後で、視覚障害者が本当にこのエレベータが自分の乗りたかった方向へ向かって走行しているか不安を感じることが考えられる。例えば、エレベータ走行中も定期的に「上に走行中です」とか「下に走行中です」と音声合成アナウンス装置が報知すれば、機能としてはよいかもしれないが、視覚障害者以外の乗客はアナウンスをくどいと感じたりすることが考えられるから現実的な方法とはいえない。
【0005】
本発明は、例えば、視覚障害者でもエレベータの運転状態を聴覚にて認識できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一の態様に係るエレベータの音響制御装置は、
エレベータの乗りかごの運転を制御するエレベータ制御装置から、前記乗りかごの運転状態を示す運転データを受信するデータ受信部と、
前記乗りかご内に効果音を出力する複数のスピーカの各々に与える効果音信号を、スピーカごとに生成する信号生成部と、
前記データ受信部が受信した運転データで示された運転状態に対応する音響効果を前記複数のスピーカによって出力される効果音に付加する信号処理を、スピーカごとに前記信号生成部が生成した効果音信号に対して施す信号処理部と、
前記信号処理部が信号処理を施した効果音信号を各スピーカに与えて、前記複数のスピーカに効果音を出力させる信号出力部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一の態様によれば、エレベータの音響制御装置において、信号生成部が、エレベータの乗りかご内に効果音を出力する複数のスピーカの各々に与える効果音信号を、スピーカごとに生成し、信号処理部が、前記乗りかごの運転状態に対応する音響効果を前記複数のスピーカによって出力される効果音に付加する信号処理を、スピーカごとに前記信号生成部が生成した効果音信号に対して施し、信号出力部が、前記信号処理部が信号処理を施した効果音信号を各スピーカに与えて、前記複数のスピーカに効果音を出力させることにより、視覚障害者でもエレベータの運転状態が聴覚で認識できるようにすることが可能となる。ひいては、従来技術より障害者に対して優しいエレベータ装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図を用いて説明する。
【0009】
実施の形態1.
図1は、本実施の形態に係るエレベータ装置100の構成例を示す図である。
【0010】
図1において、エレベータ装置100は、巻上機(図示していない)を制御してエレベータを運転するためのエレベータ制御装置101(エレベータ制御盤)、エレベータの乗りかご102(エレベータ)のほか、エレベータの音響システム120を具備する。音響システム120は、エレベータの音響制御装置103、複数のスピーカ104a,104bを備える。スピーカ104aは、乗りかご102の上部へ取り付けられている。スピーカ104bは、乗りかご102の下部へ取り付けられている。
【0011】
音響制御装置103は、エレベータ制御装置101からエレベータの運行データを受信するデータ受信部105のほか、信号処理部130、信号生成部140、信号出力部150を有する。信号処理部130は、制御装置106、記憶装置107、設定装置108、音響演算装置109を備える。信号生成部140は、音声データ記憶装置110を備える。信号出力部150は、D/A(デジタル/アナログ)変換部111a,111b(D/Aコンバータ)、増幅装置112a,112bを備える。
【0012】
データ受信部105はエレベータ制御装置101からエレベータの運行データ(運転データ)を受信する。記憶装置107は例えばROM(Read・Only・Memory)やフラッシュメモリであり、予め制御プログラムを記憶している。設定装置108は例えばディップスイッチであり、エレベータの運行状態がどのような場合にどのような音響演出をするかを決める。制御装置106は例えばCPU(Central・Processing・Unit)であり、記憶装置107から制御プログラムを読み出して実行する。制御プログラムの処理手順として、まず、制御装置106は設定装置108から各種設定値を読み取る。また、制御装置106はデータ受信部105からエレベータの運行データを受け取る。そして、制御装置106は上記設定値に基づき、エレベータの運行に合わせて音響演算装置109へどのような音声データを入力し、どのような音響演出をするのか(どのような音響効果を付加するのか)を決定した後に指令を出す。音響演算装置109は制御装置106からの指令に従って、音声データ記憶装置110にデジタル信号として記憶された音声データ(効果音信号)から音響演算を行うものを選択する。次に音響演算装置9はスピーカごとに音声データに対し、制御装置106からの指令に従って必要な音響演算処理をする。例えば、音響演算処理として、音響演算装置109は乗りかご102内のスピーカ104a,104bの各々へ出力した場合に音源が移動していくように乗客に聞こえるようにスピーカ104a,104bの各々の音量(振幅)、位相、周波数を演算する。なお音響演算処理はより高速でリアルタイムに行う程、より優れた音響演出が可能となる。今日では高速で演算処理が可能なゲートアレイ、DSP(Digital・Signal・Processing)素子等があり、これらを用いて音響演算装置109は実現できる。音響演算装置109にて演算されたスピーカ104a,104bの各々ヘの音声データはD/A変換部111a,111bによりアナログ信号(音声信号)に変換された後、増幅装置112a,112bへ送られる。増幅装置112a,112bは音声信号をスピーカが駆動できるだけの電気信号へ増幅して、スピーカ104a,104bを駆動する。これにより、スピーカ104a,104bは音声(効果音)を乗りかご102で出力する。
【0013】
上記のように、本実施の形態では、エレベータの音響制御装置103において、データ受信部105は、乗りかご102の運転を制御するエレベータ制御装置101から、乗りかご102の運転状態を示す運転データを受信する。信号生成部140は、乗りかご102内に効果音を出力するスピーカ104a,104bの各々に与える効果音信号を、スピーカごとに生成する。信号処理部130は、データ受信部105が受信した運転データで示された運転状態に対応する音響効果をスピーカ104a,104bによって出力される効果音に付加する信号処理を、スピーカごとに信号生成部140が生成した効果音信号に対して施す。信号出力部150は、信号処理部130が信号処理を施した効果音信号をスピーカ104a,104bの各々に与えて、スピーカ104a,104bに効果音を出力させる。
【0014】
例えば、音響制御装置103が、エレベータの乗りかご102が上方へ走行するのに合わせて、乗りかご102内の乗客に対して音によって上方向へ移動している音響演出を行うとする。エレベータの音響制御装置103がエレベータ制御装置101からの上方向へ走行するとの情報(運転データ)をデータ受信部105によって受信すると、制御装置106は記憶装置107に記憶された制御プログラムを実行し、設定装置108の設定値に従って、音響演算装置109へ上昇走行用の音響演出のパターン指令をすることを選択する。上昇走行用の音響演出のパターンとしてはいろいろなものが考えられるが、例えば以下のような形態が可能である。
【0015】
まず、音響制御装置103は、乗りかご102の上部のスピーカ104aから音響信号出力(効果音信号の振幅)を徐々に大きくしていく。上部設置のスピーカ104aからの音響信号出力がある一定値に達したら、次に遅れて下部設置のスピーカ104bからも同じ音響信号出力(スピーカ104aの効果音信号と振幅以外は同じ効果音信号の振幅)を徐々に大きくしながら出力していく。このとき上部設置のスピーカ104aからの音響信号出力については一定値を一定時間保持した後、徐々に出力を小さくしていく。下部設置のスピーカ104bの音響信号出力についても、上部設置のスピーカ104aから一定時間遅れて、一定値を一定時間保持した後、徐々に出力を小さくしていく。これにより乗りかご102内の乗客は音響信号(効果音)が上から段々聞こえてきてその後、その音が聞こえる音源位置(音像の定位位置)が徐々に下方へ移動していき、最後は、下方で段々聞こえなくなることから音が上から下へ移動していったと感じる。その結果、相対的に自身が上方へ上がっている感覚を得ることができる。
【0016】
またこれとは逆の制御を行うことにより、音響制御装置103は、エレベータが下方へ走行したときに、乗客に下方へ降りる感覚を与えることも可能である。
【0017】
さらに、音響制御装置103は、予め音声データ記憶装置110に記憶させる音声データ自体をドップラ効果の遠くから近づいてくるとき音が高くなりその後遠ざかっていくとき音が低くなっていく音にしておくことにより、よりリアルな音響演出が可能となる。また同様な効果は音響演算装置109によって音声データ記憶装置110に記憶させた音声データを周波数演算処理することによっても得ることが可能である。
【0018】
このときの上部設置のスピーカ104aと下部設置のスピーカ104bの音響信号出力パターンは、音声データ記憶装置110に記憶された音声データに対して音響演算装置109がどのような音響演算処理をかけるかによって決まる。例えばどれくらいの速度で音響信号の周波数を変化させるかは音響演算装置109に予め複数の音響演出パターンを持たせておき、これを設定装置108の設定値やエレベータ制御装置101からの走行情報(運転データ)に従って、制御装置106が任意に選択するといった形態が可能である。この場合、音響演算装置109は、制御装置106からの指令に従って音響演出パターンを1つ選択し、選択した音響演出パターンでスピーカ104a,104bによる音響信号出力パターンを設定することにより、乗りかご102内の乗客に対して所望の移動感覚を与えることが可能となる。
【0019】
上記のように、本実施の形態では、エレベータの音響制御装置103において、信号処理部130は、乗りかご102が上昇中の場合、スピーカ104a,104bによって出力される効果音の音像の定位位置を上から下へ移動させる信号処理を施す。また、信号処理部130は、乗りかご102が下降中の場合、スピーカ104a,104bによって出力される効果音の音像の定位位置を下から上へ移動させる信号処理を施す。そのために、例えば、信号処理部130は、乗りかご102の上方に設置されるスピーカ104aによって効果音が出力されるタイミングと乗りかご102の下方に設置されるスピーカ104bによって効果音が出力されるタイミングとの間に差を設ける信号処理を施す。あるいは、信号処理部130は、乗りかご102の上方に設置されるスピーカ104aに与えられる効果音信号と乗りかご102の下方に設置されるスピーカ104bに与えられる効果音信号との振幅、周波数、位相の少なくともいずれかに差を設ける信号処理を施す。
【0020】
以下、1つの例を説明する。
【0021】
例えば、乗りかご102が上昇中に、信号生成部140は、スピーカ104a,104bの各々に与える効果音信号を、スピーカごとに定期的に生成する。この時点では、異なるスピーカに与えられる効果音信号であっても、タイミング、振幅、周波数、位相等は同じであるとする。信号処理部130は、乗りかご102が上昇している状態に対応する音響効果として、スピーカ104bから出力される効果音がスピーカ104aから出力される効果音より一定時間遅れるような効果を付加するために、スピーカ104bに与えられる効果音信号のみに対して、タイミングを一定時間遅らせる信号処理を施す。信号出力部150は、定期的に効果音信号をスピーカ104aに与えるとともに、それより一定時間遅いタイミングで定期的に効果音信号をスピーカ104bに与えて、効果音を出力させる。このとき、効果音信号が与えられる周期(即ち、効果音の出力周期)は、スピーカ104a,104b間の効果音信号のタイミング差(即ち、効果音の出力タイミングのずれ)より長く設定する(例えば、スピーカ104aには3秒ごとに効果音を出力させ、スピーカ104bにはスピーカ104aから1秒遅れて効果音を出力させる)。これにより、乗りかご102内の乗客は、乗りかご102が上昇していることを聴覚で認識できるようになる。
【0022】
以下、他の例を説明する。
【0023】
例えば、乗りかご102が上昇中に、信号生成部140は、スピーカ104a,104bの各々に与える効果音信号を、スピーカごとに生成する。この時点では、異なるスピーカに与えられる効果音信号であっても、タイミング、振幅、周波数、位相等は同じであるとする。信号処理部130は、乗りかご102が上昇している状態に対応する音響効果として、最初はスピーカ104aのみから周波数が低い(及び/又は振幅が小さい)効果音が出力され、徐々にその周波数が高くなる(及び/又は振幅が大きくなる)とともに、スピーカ104bからも周波数が低い(及び/又は振幅が小さい)効果音が出力され始めると、スピーカ104aからの効果音の周波数が低くなっていき(及び/又は振幅が小さくなっていき)、同時に、スピーカ104bからの効果音の周波数が高くなっていき(及び/又は振幅が大きくなっていき)、その後、スピーカ104bからの効果音の周波数が低くなっていき(及び/又は振幅が小さくなっていき)、最後はスピーカ104aのみから周波数が低い(及び/又は振幅が小さい)効果音が出力されるといった効果(即ち、ドップラ効果)を付加するために、スピーカ104a,104bに与えられる効果音信号に対して振幅や周波数を変化させる信号処理を施す。信号出力部150は、そのような信号処理が施された効果音信号をスピーカ104a,104bに与えて、効果音を出力させる。これにより、乗りかご102内の乗客は、乗りかご102が上昇していることを聴覚で認識できるようになる。
【0024】
図1ではスピーカ104a,104bを対角上に設置しているが、スピーカ104a,104bはこれ以外にも上下の位置関係に設置できれば、基本的には上記のような音響演出が可能である。しかし本来人間は両耳に入ってくる音波の音圧差や位相差によりその音波の出る位置、音の定位を認識することから、図1のようにできるだけ両耳に対して2つのスピーカ104a,104bが離れているほうが、よりリアルな音響演出が可能となる。
【0025】
上記のように、本実施の形態では、エレベータの音響システム120において、乗りかご102に設置されるスピーカが、乗りかご102の上方に設置されるスピーカと乗りかご102の下方に設置されるスピーカとを少なくとも1つずつ含むことが望ましい。そして、さらに、乗りかご102の上方に設置されるスピーカと乗りかご102の下方に設置されるスピーカとが、乗りかご102の対角線上に(特に、乗りかご102の乗場戸がある面の対角に)設置されることが望ましい。
【0026】
以上説明したように、本実施の形態において、エレベータの音響システム120は、エレベータの乗りかご102内において少なくとも2個のスピーカを有し、一方は乗りかご102の上方に設置され、他方は対向する乗りかご102の下方に設置される。また、音響システム120は、エレベータの運行を制御するエレベータ制御装置101から受信したエレベータの運行情報に合わせて、内蔵する音声データに対して各スピーカヘの音響出力ごとに任意に音量、位相、周波数について演算処理を施すことができる音響演算装置109を有する。そして、音響システム120は、これによってエレベータの乗りかご102内へ、エレベータの運行に合わせ様々な音響演出をすることが可能である。
【0027】
上記の音響システム120は、車等の移動体に乗って固定された音源にだんだん近づいてその後、通り過ぎるとき、人が両耳で感じるのと同じ音響現象(音の強弱、音の定位、ドップラ現象)を音響演算装置109でシミュレートすることにより、音によって乗客に対してエレベータが昇っている又は降っているという感覚を与えることができる。例えば、一定間隔で上方向から下方向へ音の定位が流れていくような音響演出をすることにより、乗客は乗りかご102が上に向かって走行している感覚を聴覚から得ることができる。これにより、音声メッセージによる走行する方向のアナウンスとは違う方法で、視覚障害者でもエレベータがどちらの方向へ走行しているかを聴覚にて認識できるようにすることが可能となる。そして、従来技術より障害者に対して優しいエレベータ装置を提供することが可能となる。
【0028】
実施の形態2.
本実施の形態について、主に実施の形態1との差異を説明する。
【0029】
図2は、本実施の形態に係るエレベータ装置100の構成例を示す図である。
【0030】
図2においては、エレベータの乗りかご102に対してスピーカ104c〜104nが上下に直線状に多数設置されている。本図ではスピーカ104c〜104nが12個設置されているが、数が多いほうがより明確に音の上下移動を演出することができる。なお、スピーカ104c〜104nを1直線に並べて設置するのではなく、1つずつ高さをずらして設置するだけでも一定の効果が得られる。
【0031】
図2では例えばエレベータの乗りかご102が上方に走行するのに合わせて、乗りかご102内の乗客に対して、最も上方に設置されたスピーカ104cから順次、最も下方に設置されたスピーカ104nへ音響信号を順々に出力していく。これにより乗りかご102内の乗客は音響信号(効果音)が上から段々聞こえてきてその後、その音が聞こえる音源位置(音像の定位位置)が徐々に下方へ移動していき、最後は、下方で段々聞こえなくなることから音が上から下へ移動していったと感じる。
【0032】
また図2ではエレベータの音響制御装置103は1台のみであるが、例えば、1台の音響制御装置103につき、制御可能なスピーカを4個までとしておき、音響制御装置103を3台使用することにより12個のスピーカ104c〜104nを制御可能にするような構成も可能である。即ち、1台の音響制御装置103で全てのスピーカを制御する構成でもよいし、複数の音響制御装置103(この例では2台〜12台)でスピーカ104c〜104nを制御する構成でもよい。1台の音響制御装置103で制御可能なスピーカの数に限りがあり、その数よりも多くのスピーカを制御する場合には、後者のシステム構成が有効である。
【0033】
上記のように、本実施の形態では、複数のスピーカ104c〜104nが、乗りかご102の上方から下方まで1つずつ高さをずらして設置される。エレベータの音響制御装置103において、信号処理部130は、乗りかご102が上昇中の場合、乗りかご102の最も上方に設置されるスピーカ104cから設置位置の高い順に効果音の出力が開始されるようにスピーカ104c〜104nの各々による効果音の出力タイミングを調整する信号処理を施す。また、信号処理部130は、乗りかご102が下降中の場合、乗りかご102の最も下方に設置されるスピーカ104nから設置位置の低い順に効果音の出力が開始されるようにスピーカ104c〜104nの各々による効果音の出力タイミングを調整する信号処理を施す。
【0034】
以上説明したように、本実施の形態において、エレベータの音響システム120は、エレベータの乗りかご102内に多数のスピーカを上下ライン上に配置したものである。このように、スピーカを上下ライン上に多数取り付けることにより、より音が上下に移動しているような音響演出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施の形態1に係るエレベータ装置の構成例を示す図である。
【図2】実施の形態2に係るエレベータ装置の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
100 エレベータ装置、101 エレベータ制御装置、102 乗りかご、103 音響制御装置、104a〜104n スピーカ、105 データ受信部、106 制御装置、107 記憶装置、108 設定装置、109 音響演算装置、110 音声データ記憶装置、111a,111b D/A変換部、112a,112b 増幅装置、120 音響システム、130 信号処理部、140 信号生成部、150 信号出力部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの乗りかごの運転を制御するエレベータ制御装置から、前記乗りかごの運転状態を示す運転データを受信するデータ受信部と、
前記乗りかご内に効果音を出力する複数のスピーカの各々に与える効果音信号を、スピーカごとに生成する信号生成部と、
前記データ受信部が受信した運転データで示された運転状態に対応する音響効果を前記複数のスピーカによって出力される効果音に付加する信号処理を、スピーカごとに前記信号生成部が生成した効果音信号に対して施す信号処理部と、
前記信号処理部が信号処理を施した効果音信号を各スピーカに与えて、前記複数のスピーカに効果音を出力させる信号出力部とを有することを特徴とするエレベータの音響制御装置。
【請求項2】
前記信号処理部は、前記乗りかごが上昇中の場合、前記複数のスピーカによって出力される効果音の音像の定位位置を上から下へ移動させる信号処理を施し、前記乗りかごが下降中の場合、前記複数のスピーカによって出力される効果音の音像の定位位置を下から上へ移動させる信号処理を施すことを特徴とする請求項1に記載のエレベータの音響制御装置。
【請求項3】
前記複数のスピーカは、前記乗りかごの上方に設置されるスピーカと前記乗りかごの下方に設置されるスピーカとを少なくとも1つずつ含み、
前記信号処理部は、前記乗りかごの上方に設置されるスピーカによって効果音が出力されるタイミングと前記乗りかごの下方に設置されるスピーカによって効果音が出力されるタイミングとの間に差を設ける信号処理を施すことを特徴とする請求項1又は2に記載のエレベータの音響制御装置。
【請求項4】
前記信号処理部は、前記乗りかごの上方に設置されるスピーカに与えられる効果音信号と前記乗りかごの下方に設置されるスピーカに与えられる効果音信号との振幅、周波数、位相の少なくともいずれかに差を設ける信号処理を施すことを特徴とする請求項3に記載のエレベータの音響制御装置。
【請求項5】
前記複数のスピーカは、前記乗りかごの上方から下方まで1つずつ高さをずらして設置され、
前記信号処理部は、前記乗りかごが上昇中の場合、前記乗りかごの最も上方に設置されるスピーカから設置位置の高い順に効果音の出力が開始されるように各スピーカによる効果音の出力タイミングを調整する信号処理を施し、前記乗りかごが下降中の場合、前記乗りかごの最も下方に設置されるスピーカから設置位置の低い順に効果音の出力が開始されるように各スピーカによる効果音の出力タイミングを調整する信号処理を施すことを特徴とする請求項1から4までのいずれかに記載のエレベータの音響制御装置。
【請求項6】
エレベータの乗りかご内に効果音を出力する複数のスピーカを備えるとともに、
前記乗りかごの運転を制御するエレベータ制御装置から、前記乗りかごの運転状態を示す運転データを受信するデータ受信部と、
各スピーカに与える効果音信号を、スピーカごとに生成する信号生成部と、
前記データ受信部が受信した運転データで示された運転状態に対応する音響効果を前記複数のスピーカによって出力される効果音に付加するための信号処理を、スピーカごとに前記信号生成部が生成した効果音信号に対して施す信号処理部と、
前記信号処理部が信号処理を施した効果音信号を各スピーカに与えて、前記複数のスピーカに効果音を出力させる信号出力部とを有する音響制御装置を備えることを特徴とするエレベータの音響システム。
【請求項7】
前記複数のスピーカは、前記乗りかごの上方に設置されるスピーカと前記乗りかごの下方に設置されるスピーカとを少なくとも1つずつ含み、
前記乗りかごの上方に設置されるスピーカと前記乗りかごの下方に設置されるスピーカとは、前記乗りかごの対角線上に設置されることを特徴とする請求項6に記載のエレベータの音響システム。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のエレベータの音響システムを具備することを特徴とするエレベータ装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−126348(P2010−126348A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−306158(P2008−306158)
【出願日】平成20年12月1日(2008.12.1)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】