説明

エレベーターのドア係合装置

【課題】内部開放ロープが設けられた既設のエレベーターに適用することができ、容易に設置することができるエレベーターのドア係合装置の提供。
【解決手段】乗場側ドアに設けられた乗場側ドア係合装置1は、乗場側ドアが閉じているときに乗場側ドアを施錠すると共に、回動することによって開錠するフック3と、フック3に設けられ、フック3を回動させて開錠する内部開放手段とを有し、フック3は、かご側ドアが開く際にかご側ドアのかご側ドア係合装置4が係合する可動ローラ9を含み、内部開放手段は、フック3に設けられた孔11と、孔11に取り付けられる内部開放ロープ10とを含むエレベーターのドア係合装置において、かご側ドアが開く際にかご側ドア係合装置4が可動ローラ9に係合しない場合に、かご側ドア係合装置4が内部開放手段を動作させることによってフック3を回動させて開錠する施錠部材回動手段を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、かご側ドア係合装置が乗場側ドア係合装置に係合することによって乗場側ドアがかご側ドアに連動して開閉するエレベーターのドア係合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図5は従来のエレベーターのドア係合装置の構成を示す図であり、(a)図は側面図、(b)図は平面図、図6は図5に示す従来のエレベーターのドア係合装置に備えられるフックが開錠したときの状態を示す図であり、(a)図は側面図、(b)図は平面図である。
【0003】
図5(a)、(b)に示すように、この種のエレベーターのドア係合装置は、一般的に図示しない乗場側ドアに設けられ、乗場側ドアを図示しないかご側ドアに連動して開閉させる乗場側ドア係合装置31と、かご側ドアに設けられ、かご側ドアが開く際に乗場側ドア係合装置31に係合するかご側ドア係合装置34とを備えている。
【0004】
乗場側ドア係合装置31は、乗場側ドアが閉じているときに乗場側ドアを施錠すると共に、回動することによって開錠する施錠部材、例えば乗場側に固定されたキー30に施錠時に係合する凹部33aが形成されたフック33と、このフック33を軸線周りに回動させる軸32と、軸線方向が互いに直交するように回動可能に設けられたロックローラ5,6とを有している。また、かご側ドア係合装置34は、かご側ドアが開く際に乗場側ドア係合装置31のロックローラ5,6間に位置し、ロックローラ6に係合するように突出した先端34aを有している。
【0005】
従って、上述のエレベーターのドア係合装置は、かご側ドアが開く際にかご側ドア係合装置34の先端34aが乗場側ドア係合装置31のインターロック5,6間に挿入され、かご側ドアが開くことによって当該先端34aがインターロック6に係合する。これにより、図6(a)、(b)に示すように軸32の軸線周りにフック33を時計回りに回動させるモーメントが発生するので、フック33が回動することによってフック33の凹部33aがキー30から外れ、開錠する。そして、かご側ドアがそのまま開くことにより、インターロック6がかご側ドア係合装置34の先端34aに押されるので、乗場側ドアがかご側ドアに追従して開閉する。
【0006】
ここで、地震やいたずら等によって大きな外力がかご側ドアに作用した場合には、かご側ドアが開く際にかご側ドア係合装置34の先端34aがロックローラ5,6間に位置せず、ロックローラ6よりもかご側ドアの進行方向前方へ位置する係合外れ状態になることがある。このとき、かご側ドアが開いてもフック33の凹部33aがキー30から外れず開錠されないので、乗場側ドアが開かない。そのため、仮に乗客がかご内にいる場合には、乗客がかご内に閉じ込められることになり、乗客に大きな負担をかけることが問題となっていた。
【0007】
そこで、これを防止するためにかご側ドアが開く際に乗場側ドア係合装置31のロックローラ5,6よりもかご側ドアの進行方向前方へ所定距離隔てた位置において、図5に示すかご側ドア係合装置34の先端34aが係合する補助解除部7が乗場側ドア係合装置31に設けられたエレベータドアのインターロック解除機構が提案されている(例えば、特許文献1参照)。これにより、かご側ドアが開く際にかご側ドア係合装置34aが係合外れ状態になっても、かご側ドア係合装置34の先端34aが補助解除部7の先端7aに係合することにより、上述したのと同じようにフック33が回動して開錠するので、乗場側ドアがかご側ドアに追従して開閉することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−76781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した特許文献1に開示された従来技術のエレベータドアのインターロック解除機構は、かご側ドア係合装置34の先端34aがインターロック6に係合しない係合外れ状態となった場合でも、先端34aが補助解除部7に係合することによって軸32の回りにモーメントを発生させてフック33を直接回動させるようにしているので、補助解除部7を乗場側ドア係合装置31に取り付ける際に乗場側ドア係合装置31全体に対して大幅な変更が発生する。
【0010】
例えば、既設のエレベーターの乗場側ドア係合装置の中には、フックを回動させて開錠する内部開放手段が設けられているものがあり、この内部開放手段は、フックに設けられた孔と、この孔に取り付けられる内部開放ロープとを含み、メンテナンス等の作業を昇降路で行う作業者が、例えば昇降路から乗場側ドアを開ける際に内部開放ロープを引っ張ることによってフックを回動させて開錠することができるようになっている。
【0011】
従って、このような既設のエレベーターに備えられた乗場側ドア係合装置に上述の補助解除部7を設ける場合には、かご側ドア係合装置34の先端34aが補助解除部7に係合することによってフックを直接回動させるために既設の内部開放ロープや軸32等の位置関係を考慮して補助解除部7を取り付ける必要があるので、フック、すなわち施錠部材に変更が生じ、そのままでは適用することができないことが問題となっている。また、既に内部開放手段が備えられた乗場側ドア係合装置に設けられているフックを図5、6に示す内部開放ロープが取り付けられていないフック33等に交換する場合には、フック33の交換作業及び補助解除部7の取付作業に多くの労力と時間を要するので、作業が煩雑になることが懸念されている。なお、新設されたエレベーターの乗場側ドア係合装置が内部開放手段を備えている場合には、現状の生産工程を中止して新たに生産工程を立ち上げる必要がある。
【0012】
本発明は、このような従来技術の実情からなされたもので、その目的は、内部開放ロープが設けられた既設のエレベーターに適用することができ、容易に設置することができるエレベーターのドア係合装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明のエレベーターのドア係合装置は、乗場側ドアに設けられ、前記乗場側ドアをかご側ドアに連動して開閉させる乗場側ドア係合装置と、前記かご側ドアに設けられ、前記かご側ドアが開く際に前記乗場側ドア係合装置に係合するかご側ドア係合装置とを備え、前記乗場側ドア係合装置は、前記乗場側ドアが閉じているときに前記乗場側ドアを施錠すると共に、回動することによって開錠する施錠部材と、この施錠部材に設けられ、前記施錠部材を回動させて開錠する内部開放手段とを有し、前記施錠部材は、前記かご側ドアが開く際に前記かご側ドア係合装置が係合する係合部を含み、前記内部開放手段は、前記施錠部材に設けられた孔と、この孔に取り付けられる内部開放ロープとを含み、前記かご側ドアが開く際に前記かご側ドア係合装置が前記施錠部材の前記係合部に係合することによって前記施錠部材を回動させて開錠し、前記乗場側ドアが前記かご側ドアに連動して開閉するエレベーターのドア係合装置において、前記かご側ドアが開く際に前記かご側ドア係合装置が前記施錠部材の前記係合部に係合しない場合に、前記かご側ドア係合装置が前記内部開放手段を動作させることによって前記施錠部材を回動させて開錠する施錠部材回動手段を備えたことを特徴としている。
【0014】
このように構成した本発明は、かご側ドアが開く際にかご側ドア係合装置が施錠部材の係合部に係合しない場合、すなわちかご側ドア係合装置が施錠部材の係合部よりもかご側ドアの進行方向前方へ位置する係合外れ状態にある場合に、施錠部材回動手段によってかご側ドア係合装置が内部開放手段を動作させることによって施錠部材を回動させて開錠するので、既設のエレベーターに既に備えられている内部開放ロープを取り外すことなく内部開放手段を利用することができる。すなわち、かご側ドア係合装置が係合外れの状態になっても、かご側ドアが開く際に施錠部材回動手段によって内部開放手段の内部開放ロープが施錠部材を回動させるモーメントを発生させるので、施錠部材が内部開放ロープに引っ張られて開錠することができる。このように、内部開放ロープが設けられた既設のエレベーターに適用することができ、容易に設置することができる。なお、新設されたエレベーターの乗場側ドア係合装置が内部開放手段を備えている場合にも、上述したのと同様に適用することができる。
【0015】
また、本発明に係るエレベーターのドア係合装置は、前記発明において、前記施錠部材回動手段は、前記乗場側ドア係合装置に設けられたプレートと、前記乗場側ドア係合装置に揺動可能に設けられ、前記内部開放ロープの一端を接続するバーと、前記プレートに設けられ、前記かご側ドアが開く際に前記かご側ドア係合装置が前記バーに接触することによって前記施錠部材を回動するように前記内部開放ロープが掛けられたプーリとを有することを特徴としている。このように構成すると、かご側ドアが開く際にかご側ドア係合装置が施錠部材の係合部に係合しなくても、かご側ドア係合装置がバーに接触することによってプレートのプーリに掛けられた内部開放ロープに張力が加わり、施錠部材を回動させるモーメントが発生するので、施錠部材が回動して開錠することができる。これにより、かご側ドアが開くことによって乗場側ドア係合装置のバーがかご側ドア係合装置に押されるので、乗場側ドアがかご側ドアに追従して開くことができ、かご側ドア係合装置が係合外れの状態になっても乗客がかご内に閉じ込められる事態を大幅に低減することができる。
【0016】
また、本発明に係るエレベーターのドア係合装置は、前記発明において、前記バーは、前記乗場側ドア係合装置に取り付けられた弾性体と、前記かご側ドアが開く際に前記かご側ドア係合装置が前記バーに接触しない場合に、前記かご側ドア係合装置が前記バーに接触して前記施錠部材を回動させる位置へ戻りを可能とするようにテーパー状に形成された乗場側テーパー部とを含むことを特徴としている。このように構成すると、仮にかご側ドアが開く際にかご側ドア係合装置がバーに接触しなくなった場合に、かご側ドアを閉めることによってかご側ドア係合装置をバーの乗場側テーパー部に当接させると、バーが弾性体によって縮められるので、かご側ドア係合装置が乗場側テーパー部のテーパー状に形成された面に沿って当該位置まで戻ることができる。これにより、かご側ドアが開く際にかご側ドア係合装置がバーに接触しなくなった場合でも、かご側ドアを閉めることによって再びかご側ドア係合装置をバーに接触させて施錠部材を回動させることができるので、装置の信頼性を高めることができる。
【0017】
また、本発明に係るエレベーターのドア係合装置は、前記発明において、前記施錠部材回動手段は、一端が前記施錠部材のうち前記内部開放手段の前記孔が設けられた部分に固定された前記固定片と、この固定片の他端に回動可能に設けられたローラと、前記かご側ドア係合装置に設けられ、前記かご側ドアが開く際に前記かご側ドア係合装置が前記固定片の前記ローラに接触することによってこのローラが回動して前記施錠部材を回動するようにテーパー状に形成されたかご側テーパー部とを有することを特徴としている。このように構成すると、かご側ドアが開く際にかご側ドア係合装置が施錠部材の係合部に係合しなくても、かご側ドア係合装置のかご側テーパー部が固定片に設けられたローラに接触することにより、固定片のローラがかご側テーパー部のテーパー状に形成された面に沿って回動し、固定片と共に施錠部材が回動して開錠することができる。これにより、かご側ドアが開くことによって乗場側ドア係合装置の固定片のローラが、かご側ドア係合装置に押されるので、乗場側ドアがかご側ドアに追従して開くことができる。このように、ローラを有する固定片を施錠部材のうち内部開放手段の孔が設けられた部分に固定するだけで簡単に設置することができるので、設置作業にかかる作業者の負担を軽減することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のエレベーターのドア係合装置は、乗場側ドアに設けられ、乗場側ドアをかご側ドアに連動して開閉させる乗場側ドア係合装置と、かご側ドアに設けられ、かご側ドアが開く際に乗場側ドア係合装置に係合するかご側ドア係合装置とを備えている。上述の乗場側ドア係合装置は、乗場側ドアが閉じているときに乗場側ドアを施錠すると共に、回動することによって開錠する施錠部材と、この施錠部材に設けられ、施錠部材を回動させて開錠する内部開放手段とを有し、施錠部材は、かご側ドアが開く際にかご側ドア係合装置が係合する係合部を含み、内部開放手段は、施錠部材に設けられた孔と、この孔に取り付けられる内部開放ロープとを含んでいる。そして、本発明のエレベーターのドア係合装置は、かご側ドアが開く際にかご側ドア係合装置が施錠部材の係合部に係合しない場合に、かご側ドア係合装置が内部開放手段を動作させることによって施錠部材を回動させて開錠する施錠部材回動手段を備えていることにより、かご側ドアが開く際にかご側ドア係合装置が施錠部材の係合部に係合しない場合でも、既設のエレベーターに既に備えられている内部開放ロープを取り外すことなく内部開放手段を利用することができる。これにより、内部開放ロープが設けられた既設のエレベーターに適用することができ、容易に設置することができるので、従来よりも設置作業における効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るエレベーターのドア係合装置の第1実施形態の構成を示す図であり、(a)図は側面図、(b)図は平面図である。
【図2】図1に示す本発明の第1実施形態に備えられるフックが開錠したときの状態を示す図であり、(a)図は側面図、(b)図は平面図である。
【図3】本発明に係るエレベーターのドア係合装置の第2実施形態の構成を示す図であり、(a)図は側面図、(b)図は平面図である。
【図4】図3に示す本発明の第2実施形態に備えられるフックが開錠したときの状態を示す図であり、(a)図は側面図、(b)図は平面図である。
【図5】従来のエレベーターのドア係合装置の構成を示す図であり、(a)図は側面図、(b)図は平面図である。
【図6】図5に示す従来のエレベーターのドア係合装置に備えられるフックが開錠したときの状態を示す図であり、(a)図は側面図、(b)図は平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るエレベーターのドア係合装置を実施するための形態を図に基づいて説明する。
【0021】
[第1実施形態]
図1(a)、(b)に示すように、本発明に係るエレベーターのドア係合装置の第1実施形態は、図示しない乗場側ドアに設けられ、乗場側ドアを図示しないかご側ドアに連動して開閉させる乗場側ドア係合装置1と、かご側ドアに設けられ、かご側ドアが開く際に乗場側ドア係合装置1に係合するかご側ドア係合装置4とを備えている。
【0022】
乗場側ドア係合装置1は、乗場側ドアが閉じているときに乗場側ドアを施錠すると共に、回動することによって開錠する施錠部材、例えば乗場側に固定された図示しないキーに施錠時に係合する凹部3aが形成されたフック3と、このフック3に設けられ、フック3を回動させて開錠する後述の内部開放手段とを有している。また、フック3は、かご側ドアが開く際にかご側ドア係合装置4が係合する係合部、例えば回動可能に設けられた可動ローラ9と、軸線周りに回動するように軸2とを含んでいる。なお、乗場側ドア係合装置1は、図示しない乗場頂部の昇降路壁に固定された乗場ドアポケット21に設けられている。
【0023】
さらに、本発明の第1実施形態は、乗場ドアポケット21に固定された固定ローラ8を備えており、上述の内部開放手段は、例えばフック3の両端のうち凹部3aが形成されている側と反対側の一端に設けられた孔11と、この孔11に取り付けられる内部開放ロープ10とを含んでいる。そして、本発明の第1実施形態は、かご側ドアが開く際にかご側ドア係合装置4がフック3の凹部3aに係合しない場合に、かご側ドア係合装置4が内部開放手段を動作させることによってフック3を回動させて開錠する施錠部材回動手段を備えている。
【0024】
具体的には、施錠部材回動手段は、乗場側ドア係合装置1に設けられたプレート12と、乗場側ドア係合装置1に揺動可能に設けられ、内部開放ロープ10の一端を接続するバー13と、プレート12に設けられ、かご側ドアが開く際にかご側ドア係合装置4がバー13に接触することによってフック3を回動するように内部開放ロープ10が掛けられたプーリ12a,12bとを有している。従って、これらのプーリ12a,12bは、プレート12のうちフック3の孔11の高さ位置よりも下方に配置されており、かご側ドアが開く際に、かご側ドア係合装置4がバー13をかご側ドアの進行方向前方へ押圧することにより、内部開放ロープ10がフック3の両端のうち孔11側の一端を下方へ引っ張るようになっている。これにより、フック3が軸2の軸線周りに回動し、開錠するようになっている。なお、プレート12は、フック3を挟むようにコ字状に成型され、内部開放手段の孔11に取り付けられている。
【0025】
上述のバー13は、乗場側ドア係合装置1に取り付けられた弾性体、例えば乗場ドアポケット21に取り付けられたばね16と、かご側ドアが開く際にかご側ドア係合装置4がバー13に接触しない場合に、かご側ドア係合装置4がバー13に接触してフック3を回動させる位置へ戻りを可能とするようにテーパー状に形成された乗場側テーパー部13aとを含んでいる。また、バー13はコ字状に成型されており、このバー13のコ字状の凹部にプレート15が配設されている。
【0026】
本発明の第1実施形態では、プレート15とプレート12とを接続するリンク14が設けられており、このリンク14は、バー13を乗場ドアポケット21側へ揺動させるヒンジ14aを有し、折れ曲がり可能になっている。従って、本発明の第1実施形態では、フック3とバー13との間にプレート12、リンク14、及びプレート15が配置されており、ばね16はリンク14のヒンジ14aの折れ曲がりを復帰させるように作用する。なお、プレート15には、図1(b)に示すように長穴15a,15bが開けられている。
【0027】
かご側ドア係合装置4は、コ字状に成型されており、対向する一対の端面4a,4bを有している。従って、かご側ドアが開閉動作を行う場合には、かご側ドア係合装置4は、固定ローラ8及び可動ローラ9を内側に収容する状態で乗場側ドア係合装置1に係合し、かご側ドアが開く際には、図1に示す右側、すなわちかご側ドアの進行方向前方へ変位して端面4aが可動ローラ9に当接し、フック3を回動させて持ち上げ、乗場側ドアを施錠状態から開錠状態に変化させるようになっている。なお、本発明の第1実施形態では、かごの位置を検出する図示しないかご位置検出装置が設けられている
次に、本発明の第1実施形態の動作を図2(a)、(b)に基づいて説明する。
【0028】
図2は図1に示す本発明の第1実施形態に備えられるフックが開錠したときの状態を示す図であり、(a)図は側面図、(b)図は平面図である。
【0029】
本発明の第1実施形態は、図2(a)、(b)に示すようにかご側ドア係合装置4が、何らかの原因で固定ローラ8及び可動ローラ9を挟む平常位置からずれた係合外れ状態、すなわち固定ローラ8よりもかご側ドアの進行方向前方へ位置した場合には、まず乗場側ドア係合装置1とかご側ドア係合装置4が係合可能な位置にかごが停止しているかどうかをかご位置検出装置で検出する。
【0030】
そして、乗場側ドア係合装置1とかご側ドア係合装置4が係合可能な高さ位置にかごが停止していると判断した場合には、かご側ドア係合装置4の端面4aが、乗場側ドア係合装置1の固定ローラ8に当接するまでかご側ドアを閉じる。ここで、図示されていないが、かご側ドア係合装置4が、バー13よりも図中右側、すなわちバー13よりもかご側ドアの進行方向前方に位置している場合には、バー13の乗場側テーパー部13aに形成されたテーパー面をガイドとしてかご側ドア係合装置4の端面4a,4bが押圧してばね16を縮ませ、リンク14のヒンジ14aを乗場ドアポケット21側へ折り曲げることにより、かご側ドア係合装置4全体がバー13を乗り越えて図中左側、すなわち固定ローラ8とバー13との間の位置に移動させる。
【0031】
このとき、かご側ドア係合装置4全体が、バー13を乗り越えて固定ローラ8とバー13との間の位置に移動したか、すなわち乗場側ドア係合装置1の固定ローラ8に当接するまでかご側ドアを閉めたかどうかの検出は、図示しないドアモータ等に連結した図示しないエンコーダからの信号が途絶えたことによって判断するか、あるいはかご側ドア係合装置4の端面4aに図示しない着圧スイッチを設け、この着圧スイッチの動作によって検出する。なお、バー13は、かご側ドア係合装置4の端面4a,4bに当たると上述したようにリンク14のヒンジ14aによって乗場ドアポケット21側に折れ曲がるが、かご側ドア係合装置4の端面4a,4bが通過するとばね16によって元の状態に戻る。
【0032】
次に、バー13が乗場側ドア係合装置1の固定ローラ8に当接することが検出された後、かご側ドアを開くと、かご側ドア係合装置4の端面4bがバー13をかご側ドアの進行方向前方へ押圧することから、プレート15の長穴15a,15bの余裕分だけ内部開放ロープ10が引っ張られて乗場側ドア係合装置1のフック3が回動し、フック3の凹部3aが持ち上がって開錠する。そして、かご側ドアが開くことにより、かご側ドア係合装置4の端面4bがバー13をかご側ドアの進行方向前方へ押圧し続けるので、乗場側ドアがかご側ドアに追従して開く。
【0033】
このように構成した本発明の第1実施形態によれば、かご側ドアが開く際にかご側ドア係合装置4の端面4aが可動ローラ9に係合しない場合、すなわちかご側ドア係合装置4が可動ローラ9及び固定ローラ8よりもかご側ドアの進行方向前方へ位置する係合外れ状態にある場合には、かご側ドアが開いてもフック3が軸2の軸線周りに回動しないので、フック3の凹部3aが持ち上がらず開錠されないが、かご側ドアがそのまま開くことによってかご側ドア係合装置4がバー13をかご側ドアの進行方向前方へ押圧し、内部開放ロープ10がフック3の両端のうち孔11側の一端を下方へ引っ張る。これにより、フック3を軸2の軸線周りに回動させて開錠することができる。このように、施錠部材回動手段によってかご側ドア係合装置4が内部開放手段を動作させることによってフック3を回動させて開錠するので、既設のエレベーターに既に備えられている内部開放ロープ10を取り外すことなく内部開放手段を利用することができる。従って、内部開放ロープが設けられた既設のエレベーターに適用することができ、容易に設置することができるので、設置作業における効率を向上させることができる。なお、新設されたエレベーターの乗場側ドア係合装置が内部開放手段を備えている場合にも、上述したのと同様に適用することができる。
【0034】
また、本発明の第1実施形態は、施錠部材回動手段は、乗場側ドア係合装置1に設けられたプレート12と、乗場側ドア係合装置1にばね16を介して揺動可能に設けられ、内部開放ロープ10の一端を接続するバー13と、プレート12のうちフック3の孔11の高さ位置よりも下方に設けられたプーリ12a,12bとを有し、このプーリ12a,12bに内部開放ロープ10を掛けることにより、上述したようにかご側ドアが開く際にかご側ドア係合装置4の端面4aが可動ローラ9に当接しなくても、かご側ドア係合装置4の端面4bがバー13に接触することによって内部開放ロープ10がフック3の両端のうち孔11側の一端を下方に引っ張るので、フック3を軸2の軸線周りに回動させるモーメントを発生させることができ、フック3を回動させて開錠することができる。これにより、かご側ドアが開くことによって乗場側ドア係合装置1のバー13がかご側ドア係合装置4の端面4bに押されるので、乗場側ドアがかご側ドアに追従して開くことができ、かご側ドア係合装置4が係合外れの状態になっても乗客がかご内に閉じ込められる事態を大幅に低減することができる。
【0035】
また、本発明の第1実施形態は、バー13とプレート12がリンク14を介して接続されており、バー13が、上述したように乗場側ドア係合装置1に取り付けられたばね16と、テーパー状に形成された乗場側テーパー部13aとを含むことにより、仮にかご側ドアが開く際にかご側ドア係合装置4の端面4bがバー13に接触しなくなった場合、すなわちかご側ドア係合装置4が、バー13よりもかご側ドアの進行方向前方に位置している場合には、かご側ドアを閉めることによってかご側ドア係合装置4の端面4a,4bをバー13の乗場側テーパー部13aに当接させると、バー13がばね16によって縮められるので、かご側ドア係合装置4が乗場側テーパー部13aのテーパー状に形成された面に沿って固定ローラ8とバー13との間の位置まで戻ることができる。これにより、かご側ドアが開く際にかご側ドア係合装置4の端面4bがバー13に接触しなくなった場合でも、かご側ドアを閉めることによって再びかご側ドア係合装置4の端面4bをバー13に接触させてフック3を回動させることができるので、装置の信頼性を高めることができる。
【0036】
[第2実施形態]
図3は本発明に係るエレベーターのドア係合装置の第2実施形態の構成を示す図であり、(a)図は側面図、(b)図は平面図、図4は図3に示す本発明の第2実施形態に備えられるフックが開錠したときの状態を示す図であり、(a)図は側面図、(b)図は平面図である。
【0037】
本発明の第2実施形態が前述した第1実施形態と異なるのは、図1、図2に示すように第1実施形態における施錠部材回動手段が、プレート12、バー13、及びプーリ12a,12bとを有しているのに対して、第2実施形態では、施錠部材回動手段は、図3(a)、(b)に示すように一端がフック3のうち内部開放手段の孔11が設けられた部分に固定された固定片18と、この固定片18の他端に回動可能に設けられたローラ19と、かご側ドア係合装置4に設けられ、かご側ドアが開く際にかご側ドア係合装置4が固定片18のローラ19に接触することによってこのローラ19が回動してフック3を回動するようにテーパー状に形成されたかご側テーパー部20とを有することである。すなわち、かご側テーパー部20は、かご側ドア係合装置4の端面4bの外側に取り付けられており、下方につれて細くなっている。その他の構成は第1実施形態と同じである。
【0038】
この場合、図4(a)、(b)に示すようにかご側ドア係合装置4が、何らかの原因で固定ローラ8及び可動ローラ9を挟む平常位置からずれた係合外れ状態、すなわち固定ローラ8よりもかご側ドアの進行方向前方へ位置した場合に、かご側ドアを開くと、かご側ドア係合装置4の端面4bのかご側テーパー部20が固定片18のローラ19をかご側ドアの進行方向前方へ押圧することから、ローラ19がかご側テーパー部20に形成されたテーパー面に沿って移動することにより、固定片18が下方に変位するので、フック3が固定片18に引っ張られて軸2の軸線周りに回動し、フック3の凹部3aが持ち上がって開錠する。
【0039】
このように構成した本発明の第2実施形態によれば、かご側ドアが開く際にかご側ドア係合装置4の端面4aが可動ローラ9に係合しない場合、すなわちかご側ドア係合装置4が可動ローラ9及び固定ローラ8よりもかご側ドアの進行方向前方へ位置する係合外れ状態にあっても、かご側ドア係合装置4の端面4bのかご側テーパー部20が固定片18に設けられたローラ19に接触することにより、上述したように固定片18のローラ19がかご側テーパー部20のテーパー状に形成された面に沿って回動するので、固定片18と共にフック3が軸2の軸線周りに回動して開錠することができる。これにより、かご側ドアが開くことによってかご側ドア係合装置4の端面4bのかご側テーパー部20がローラ19をかご側ドアの進行方向前方へ押圧し続けるので、乗場側ドアがかご側ドアに追従して開くことができる。このように、ローラ19を有する固定片18をフック3のうち内部開放手段の孔11が設けられた部分に固定するだけで簡単に設置することができるので、設置作業にかかる作業者の負担を軽減することができ、作業の能率を高めることができる。
【符号の説明】
【0040】
1,31 乗場側ドア係合装置
2,32 軸
3,33 フック(施錠部材)
3a,33a 凹部
4,34 かご側ドア係合装置
4a,4b 端面
5,6 ロックローラ
7 補助解除部
7a,34a 先端
8 固定ローラ
9 可動ローラ
10 内部開放ロープ
11 孔
12 プレート
12a,12b プーリ
13 バー
13a 乗場側テーパー部
14 リンク
14a ヒンジ
15a,15b 長穴
16 ばね
18 固定片
19 ローラ
20 かご側テーパー部
21 乗場ドアポケット
30 キー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗場側ドアに設けられ、前記乗場側ドアをかご側ドアに連動して開閉させる乗場側ドア係合装置と、前記かご側ドアに設けられ、前記かご側ドアが開く際に前記乗場側ドア係合装置に係合するかご側ドア係合装置とを備え、前記乗場側ドア係合装置は、前記乗場側ドアが閉じているときに前記乗場側ドアを施錠すると共に、回動することによって開錠する施錠部材と、この施錠部材に設けられ、前記施錠部材を回動させて開錠する内部開放手段とを有し、前記施錠部材は、前記かご側ドアが開く際に前記かご側ドア係合装置が係合する係合部を含み、前記内部開放手段は、前記施錠部材に設けられた孔と、この孔に取り付けられる内部開放ロープとを含み、前記かご側ドアが開く際に前記かご側ドア係合装置が前記施錠部材の前記係合部に係合することによって前記施錠部材を回動させて開錠し、前記乗場側ドアが前記かご側ドアに連動して開閉するエレベーターのドア係合装置において、
前記かご側ドアが開く際に前記かご側ドア係合装置が前記施錠部材の前記係合部に係合しない場合に、前記かご側ドア係合装置が前記内部開放手段を動作させることによって前記施錠部材を回動させて開錠する施錠部材回動手段を備えたことを特徴とするエレベーターのドア係合装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエレベーターのドア係合装置において、
前記施錠部材回動手段は、
前記乗場側ドア係合装置に設けられたプレートと、
前記乗場側ドア係合装置に揺動可能に設けられ、前記内部開放ロープの一端を接続するバーと、
前記プレートに設けられ、前記かご側ドアが開く際に前記かご側ドア係合装置が前記バーに接触することによって前記施錠部材を回動するように前記内部開放ロープが掛けられたプーリとを有することを特徴とするエレベーターのドア係合装置。
【請求項3】
請求項2に記載のエレベーターのドア係合装置において、
前記バーは、
前記乗場側ドア係合装置に取り付けられた弾性体と、
前記かご側ドアが開く際に前記かご側ドア係合装置が前記バーに接触しない場合に、前記かご側ドア係合装置が前記バーに接触して前記施錠部材を回動させる位置へ戻りを可能とするようにテーパー状に形成された乗場側テーパー部とを含むことを特徴とするエレベーターのドア係合装置。
【請求項4】
請求項1に記載のエレベーターのドア係合装置において、
前記施錠部材回動手段は、
一端が前記施錠部材のうち前記内部開放手段の前記孔が設けられた部分に固定された前記固定片と、
この固定片の他端に回動可能に設けられたローラと、
前記かご側ドア係合装置に設けられ、前記かご側ドアが開く際に前記かご側ドア係合装置が前記固定片の前記ローラに接触することによってこのローラが回動して前記施錠部材を回動するようにテーパー状に形成されたかご側テーパー部とを有することを特徴とするエレベーターのドア係合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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