説明

エレベーターの消音装置

【課題】乗りかご内で発生する雑音を十分に低減すると共に、乗りかごに容易に適用することができるエレベーターの消音装置の提供。
【解決手段】昇降路内を走行する乗りかご1と、この乗りかご1に設けられ、音を入出力するインターホン2と、このインターホン2に接続され、インターホン2によって入力された音を受信すると共に、インターホン2に出力させる音を送信する監視装置4とを備えたエレベーターに設けられ、乗りかご1内で発生する雑音を低減するエレベーターの消音装置において、監視装置4は、インターホン2によって入力された音のうち乗りかご1内で発生した雑音を検出する雑音検出手段6と、この雑音検出手段6によって検出された雑音に対して逆位相の音を生成する位相反転手段7と、この位相反転手段7によって生成された逆位相の音をインターホン2に送信して出力させる逆位相音出力手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗りかご内で発生する雑音を低減するエレベーターの消音装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術の1つとして、かご枠を乗りかごを覆う外殻形状に形成し、乗りかごとかご枠との間に消音空間を設けて騒音を検出する少なくとも一つの騒音検出手段と、騒音を消音する音響を発生する少なくとも一つの音響発生手段と、それぞれの騒音検出手段の検出信号を制御信号に変換してそれぞれの音響発生手段に出力する制御手段とを具備したエレベーター乗りかごの遮音装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、このようなエレベーターの消音装置の従来技術の他の例として、乗りかごに、騒音信号又はこの騒音信号と高い相関をもつ信号を検出する検出手段と、検出手段によって検出された信号を処理する処理手段と、乗りかご内の騒音を消音するための付加音を出力する発音手段と、騒音と付加音とで合成される音を受音する受音手段とを備え、発音手段及び受音手段は乗りかごの天井又は床面と側面との接続部に設けられる消音装置付エレベーターが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−78065号公報
【特許文献2】特開平5−310389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に開示された従来技術のエレベーター乗りかごの遮音装置は、騒音を検出する騒音検出手段が乗りかごとかご枠との間に形成される消音空間に設けられ、この消音空間に乗りかご又はかご枠から伝達された音を検出しており、乗りかごの内部の音を直接検出していない。そのため、上述した騒音検出手段は、乗りかご内で発生する雑音に対する感度が低く、音響発生手段から発生される音響によって乗りかご内で発生する雑音を十分に消音することができないことが懸念されている。従って、雑音によって乗りかご内で待機する乗客に対して不快感を与える虞がある。
【0006】
また、特許文献2に開示された従来技術の消音装置付エレベーターは、乗りかご内で発生する騒音、及び発音手段から出力される騒音を低減する付加音を受音手段によって受信し、これらの検出した音に対して処理手段による処理を繰り返すことによって付加音に対して補正が行われているが、上述したように発音手段及び受音手段は乗りかごの天井又は床面と側面との接合部に設けられるので、これらの発音手段及び受音手段の取付作業が煩雑となっている。特に、既設された乗りかごの天井又は床面と側面との接合部に乗りかごの位置を検出する装置等が設置されている場合には、発音手段及び受音手段を取付けるために乗りかごの構造を変更する等の改造作業が必要となり、汎用性が低いことが問題となっている。
【0007】
本発明は、このような従来技術の実情からなされたもので、その目的は、乗りかご内で発生する雑音を十分に低減すると共に、乗りかごに容易に適用することができるエレベーターの消音装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明のエレベーターの消音装置は、昇降路内を走行する乗りかごと、この乗りかごに設けられ、音を入出力するインターホンと、このインターホンに接続され、前記インターホンによって入力された音を受信すると共に、前記インターホンに出力させる音を送信する監視装置とを備えたエレベーターに設けられ、前記乗りかご内で発生する雑音を低減するエレベーターの消音装置において、前記監視装置は、前記インターホンによって入力された音のうち前記乗りかご内で発生した雑音を検出する雑音検出手段と、この雑音検出手段によって検出された雑音に対して逆位相の音を生成する位相反転手段と、この位相反転手段によって生成された逆位相の音を前記インターホンに送信して出力させる逆位相音出力手段とを有することを特徴としている。
【0009】
このように構成した本発明は、乗りかご内で雑音が発生した場合には、監視装置の雑音検出手段が乗りかごに設けられているインターホンから雑音を検出し、位相反転手段が検出された雑音に対して逆位相の音を生成する。そして、監視装置の逆位相音出力手段が位相反転手段によって生成された逆位相の音を乗りかごのインターホンに送信して出力させることにより、雑音に対して逆位相の音を乗りかご内で重ね合わせることができるので、乗りかご内で発生する雑音を効果的に低減することができる。また、インターホンは乗りかごに既に設けられており、このインターホンから雑音を受信すると共に、雑音に対して逆位相の音を乗りかご内の各部分へ伝達することができるので、乗りかご内で発生する雑音を消音するために乗りかごを改造する必要もない。このように、乗りかごに既設されているインターホンの通信機能を利用することにより、乗りかご内で発生する雑音を十分に低減すると共に、乗りかごに容易に適用することができる。
【0010】
また、本発明に係るエレベーターの消音装置は、前記発明において、前記乗りかご内に搭乗した人数を検出する搭乗人数検出手段を備え、前記逆位相音出力手段は、前記搭乗人数検出手段によって検出された人数が所定の人数未満である場合に、前記位相反転手段によって生成された逆位相の音を前記インターホンに送信して出力させ、前記搭乗人数検出手段によって検出された人数が所定の人数以上である場合に、前記位相反転手段によって生成された逆位相の音を前記インターホンから出力させないようにしたことを特徴としている。
【0011】
このように構成した本発明は、搭乗人数検出手段が乗りかご内に搭乗した人数を検出し、逆位相音出力手段は、検出された人数が所定の人数未満のときだけ乗りかご内で発生する雑音に対して逆位相の音をインターホンから出力させることにより、インターホンから出力される音が雑音と重ね合わさる際に、乗りかご内に搭乗した乗客に当たって互いの位相がずれることを軽減することができる。これにより、乗りかごのインターホンから出力された音によって雑音が消音されずに増大することを防止することができる。このように、搭乗人数検出手段によって検出された人数に応じて逆位相音出力手段がインターホンによる音の出力を制限することにより、乗りかご内で雑音に対して逆位相の音を適切に重ね合わせることができる。
【0012】
また、本発明に係るエレベーターの消音装置は、前記発明において、前記搭乗人数検出手段は、前記乗りかごに設けられ、前記乗りかご内に搭乗した乗客の搭乗状態を取得する搭乗状態取得手段と、この搭乗状態取得手段によって取得された前記搭乗状態に基づいて前記乗りかご内に搭乗した人数を算出する算出手段とを有し、前記搭乗状態取得手段は、前記乗りかご内の荷重を検出する荷重センサーと、前記乗りかご内を撮影して監視する監視カメラと、前記乗りかご内に搭乗した乗客を検知する人感センサーとの少なくとも一方から構成されたことを特徴としている。
【0013】
このように構成した本発明は、荷重センサー、監視カメラ、及び人感センサーのうち少なくとも一方によって乗りかご内に搭乗した乗客の搭乗状態を迅速に取得することができる。そして、算出手段は、取得された搭乗状態を参照することによって乗りかご内に搭乗した人数を容易に算出することができる。特に、荷重センサー、監視カメラ、及び人感センサーのそれぞれから乗客の搭乗状態を取得した場合には、算出手段は、取得された搭乗状態から乗りかご内の状況をより的確に把握して算出することができる。
【0014】
また、本発明に係るエレベーターの消音装置は、前記発明において、前記搭乗人数検出手段は、検出した前記乗りかご内に搭乗した人数を前記監視装置へ送信する送信手段を有し、前記監視装置の外部に設けられたことを特徴としている。このように構成すると、搭乗人数検出手段と監視装置とが別々に設けられているので、搭乗人数検出手段が監視装置と独立して処理を行うことができ、監視装置にかかる処理負荷を軽減することができる。
【0015】
また、本発明に係るエレベーターの消音装置は、前記発明において、前記逆位相音出力手段は、前記乗りかごの大きさが所定の大きさより小さい場合に、前記位相反転手段によって生成された逆位相の音を前記インターホンに送信して出力させ、前記乗りかごの大きさが所定の大きさと同じ又はこれより大きい場合に、前記位相反転手段によって生成された逆位相の音を前記インターホンから出力させないようにしたことを特徴としている。
【0016】
このように構成した本発明は、逆位相音出力手段は、乗りかごの大きさが所定の大きさより小さいときだけ乗りかご内で発生する雑音に対して逆位相の音をインターホンから出力させることにより、出力された逆位相の音の広がりを抑えることができるので、インターホンから出力される音が雑音と重ね合わさる際に位相がずれることを軽減することができる。これにより、乗りかごの大きさの違いによって生じる誤差を減少させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のエレベーターの消音装置は、昇降路内を走行する乗りかごと、この乗りかごに設けられ、音を入出力するインターホンと、このインターホンに接続され、インターホンによって入力された音を受信すると共に、インターホンに出力させる音を送信する監視装置とを備えたエレベーターに設けられる。そして、監視装置は、インターホンによって入力された音のうち乗りかご内で発生した雑音を検出する雑音検出手段と、この雑音検出手段によって検出された雑音に対して逆位相の音を生成する位相反転手段と、この位相反転手段によって生成された逆位相の音をインターホンに送信して出力させる逆位相音出力手段とを有しているので、この逆位相音出力手段によって雑音に対して逆位相の音をインターホンから出力し、乗りかご内で重ね合わせて消音することができるので、乗りかご内で発生する雑音を効果的に低減することができる。従って、乗りかごに既設されているインターホンの通信機能を利用することにより、乗りかご内で発生する雑音を十分に低減すると共に、乗りかごに容易に適用することができる。これにより、従来よりも乗りかご内に搭乗した乗客に対するサービス性を向上させると共に、高い汎用性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るエレベーターの消音装置の第1実施形態の構成を示す図である。
【図2】本発明に係るエレベーターの消音装置の第1実施形態の動作を説明するフローチャートである。
【図3】本発明に係るエレベーターの消音装置の第2実施形態の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るエレベーターの消音装置を実施するための形態を図に基づいて説明する。
【0020】
[第1実施形態]
図1に示すように、本発明に係るエレベーターの消音装置の第1実施形態は、図示しない昇降路内を走行する乗りかご1と、この乗りかご1に設けられ、音を入出力するインターホン2と、このインターホン2に接続され、インターホン2によって入力された音を受信すると共に、インターホン2に出力させる音を送信する監視装置4とを備えたエレベーターに設けられる。このエレベーターは、昇降路内に立設され、乗りかご1を案内する一対のガイドレール8と、乗りかご1の天井に設けられ、乗りかご1内の空気を換気する換気装置9と、乗りかご1の天井のうち角部の上に設置され、乗りかご1内の空気を冷却する冷却装置10とを備えている。なお、インターホン2は、乗りかご1の4つの側面の1つに配設されている。
【0021】
本発明の第1実施形態は、監視装置4は、インターホン2によって入力された音のうち乗りかご1内で発生した雑音を検出する雑音検出手段6と、この雑音検出手段6によって検出された雑音に対して逆位相の音を生成する位相反転手段7と、この位相反転手段7によって生成された逆位相の音をインターホン2に送信して出力させる図示しない逆位相音出力手段とを有している。
【0022】
また、本発明の第1実施形態は、乗りかご1内に搭乗した人数を検出する後述の搭乗人数検出手段を備えている。そして、監視装置4の逆位相音出力手段は、例えば搭乗人数検出手段によって検出された人数が所定の人数未満である場合に、位相反転手段7によって生成された逆位相の音をインターホン2に送信して出力させ、搭乗人数検出手段によって検出された人数が所定の人数以上である場合に、位相反転手段7によって生成された逆位相の音をインターホン2から出力させないようにしている。
【0023】
さらに、本発明の第1実施形態は、上述した搭乗人数検出手段は、乗りかご1に設けられ、乗りかご1内に搭乗した乗客の搭乗状態を取得する搭乗状態取得手段と、この搭乗状態取得手段によって取得された搭乗状態に基づいて乗りかご1内に搭乗した人数を算出する算出手段5とを有し、この算出手段5は監視装置4の内部に含まれている。そして、搭乗状態取得手段は、乗りかご1内の荷重を検出する荷重センサー3と、乗りかご1内を撮影して監視する監視カメラ11と、乗りかご1内に搭乗した乗客を検知する人感センサー12との少なくとも一方、例えば荷重センサー3、監視カメラ11、及び人感センサー12の3つから構成されている。なお、これらの荷重センサー3、監視カメラ11、及び人感センサー12は、算出手段5にそれぞれ接続されている。
【0024】
また、本発明の第1実施形態では、荷重センサー3は、乗りかご1の下面に配置され、乗りかご1の荷重を測定するように取り付けられている。また、監視カメラ11は、乗りかご1上部の四隅のうち冷却装置10の下方に設置されている。さらに、人感センサー12は、乗りかご1の4つの側面のうちインターホン2が設けられた側面の上部に取り付けられている。
【0025】
次に、本発明の第1実施形態の動作を図2のフローチャートに基づいて説明する。
【0026】
図2は本発明に係るエレベーターの消音装置の第1実施形態の動作を説明するフローチャートである。
【0027】
本発明の第1実施形態は、図2に示すように乗りかご1が走行すると(ステップ(以下、Sと記す)101)、荷重センサー3が乗りかご1内の荷重を検出する。このとき、監視カメラ11が乗りかご1内を撮影して監視すると共に、人感センサー12が乗りかご1内に搭乗した乗客を検知する。そして、これらの荷重センサー3、監視カメラ11、及び人感センサー12は、取得した情報をそれぞれ監視装置4へ送信する。監視装置4が荷重センサー3、監視カメラ11、及び人感センサー12から乗りかご1内に搭乗した乗客の搭乗状態の情報を受信すると、搭乗人数検出手段の算出手段5が受信した情報、すなわち乗りかご1内の重量、映像、及び感知した数値等に基づいて乗りかご1内に搭乗した人数を算出する(S102)。
【0028】
次に、監視装置4は、搭乗人数検出手段によって検出された人数が所定の人数未満であるかどうかを判断する(S103)。監視装置4は、搭乗人数検出手段によって検出された人数が所定の人数未満であると判断した場合には、インターホン2から乗りかご1内の音を受信し(S104)、雑音検出手段6がインターホン2によって入力された音のうち乗りかご1内で発生した雑音、例えば乗りかご1の換気装置9や冷却装置10の作動音を検出する(S105)。
【0029】
そして、位相反転手段7が雑音検出手段6によって検出された雑音に対して逆位相の音を生成し(S106)、監視装置4の逆位相音出力手段が位相反転手段7によって生成された逆位相の音をインターホン2に送信して出力させる。これにより、雑音に対して逆位相の音がインターホン2から発生して雑音が消音され(S107)、乗りかご1が目的階へ停止するまで手順S104〜S107の動作が繰り返される(S108)。なお、手順S105において雑音検出手段6によって雑音が検出されなくなった場合には、位相反転手段7によって逆位相の音も生成されなくなる。そして、手順S108において乗りかご1が目的階へ到着して停止すると、音がインターホン2から発生されなくなり、本発明の第1実施形態の動作が終了する。一方、手順S101において乗りかご1が停止している場合、あるいは手順S103において監視装置4が、搭乗人数検出手段によって検出された人数が所定の人数以上であると判断した場合には、上述したように位相反転手段7によって生成される逆位相の音をインターホン2から出力させずに本発明の第1実施形態の動作を終了する。
【0030】
このように構成した本発明の第1実施形態によれば、手順S105において雑音検出手段6が乗りかご1内で雑音を検出した場合には、手順S106において位相反転手段7が検出された換気装置9や冷却装置10の作動音等の雑音に対して逆位相の音を生成し、手順S107において監視装置4の逆位相音出力手段が生成された逆位相の音を乗りかご1のインターホン2に送信して出力させることにより、雑音に対して逆位相の音を乗りかご1内で重ね合わせることができるので、乗りかご1内で発生する雑音を効果的に低減することができる。また、インターホン2は乗りかごの側面の1つに既に配設されており、手順S104においてインターホン2から雑音を受信すると共に、手順S107において雑音に対して逆位相の音を乗りかご1内の各部分へ伝達することができるので、乗りかご1内で発生する雑音を消音するために乗りかご1を改造する必要もない。このように、乗りかご1に既設されているインターホン2の通信機能を利用することにより、乗りかご1内で発生する雑音を十分に低減すると共に、乗りかご1に容易に適用することができる。これにより、乗りかご1内に搭乗した乗客に対するサービス性を向上させると共に、高い汎用性を得ることができる。
【0031】
また、本発明の第1実施形態は、手順S102において荷重センサー3、監視カメラ11、及び人感センサー12から得た情報に基づいて算出手段5が乗りかご1内に搭乗した人数を算出し、手順S107において監視装置4の逆位相音出力手段は、検出された人数が所定の人数未満のときだけ乗りかご1内で発生する雑音に対して逆位相の音をインターホン2から出力させることにより、インターホン2から出力される音が雑音と重ね合わさる際に、乗りかご1内に搭乗した乗客に当たって互いの位相がずれることを軽減することができる。これにより、乗りかご1のインターホン2から出力された音によって雑音が消音されずに増大することを防止することができる。このように、搭乗人数検出手段における荷重センサー3、監視カメラ11、人感センサー12、及び算出手段5によって検出された人数に応じて逆位相音出力手段がインターホン2による音の出力を制限することにより、乗りかご1内で雑音に対して逆位相の音を適切に重ね合わせることができるので、優れた消音効果を発揮することができる。
【0032】
また、本発明の第1実施形態は、手順S101において乗りかご1が走行すると、乗りかご1に設置された荷重センサー3が乗りかご1内の荷重を検出し、監視カメラ11が乗りかご1内を撮影して監視すると共に、人感センサー12が乗りかご1内に搭乗した乗客を検知することにより、乗りかご1内に搭乗した乗客の搭乗状態を迅速に取得することができる。そして、手順S102において監視装置4の算出手段5は、受信した乗りかご1内の重量、映像、及び感知した数値等の情報から乗りかご1内に搭乗した人数を容易に算出することができる。本発明の第1実施形態では、上述したように荷重センサー3、監視カメラ11、及び人感センサー12の3つから乗客の搭乗状態を取得しているので、算出手段5がこの搭乗状態から乗りかご1内の状況をより的確に把握して算出することができ、乗りかご1内に搭乗した人数の検出に対して高い精度を確保することができる。
【0033】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態が前述した第1実施形態と異なるのは、第1実施形態では乗りかご1内に搭乗した人数を検出する搭乗人数検出手段を備え、監視装置4の逆位相音出力手段は、搭乗人数検出手段によって検出された人数が所定の人数未満である場合に、位相反転手段7によって生成された逆位相の音をインターホン2に送信して出力させ、搭乗人数検出手段によって検出された人数が所定の人数以上である場合に、位相反転手段7によって生成された逆位相の音をインターホン2から出力させないようにしたのに対して、第2実施形態では、搭乗人数検出手段を備える代わりに、監視装置4の逆位相音出力手段は、乗りかご1の大きさが所定の大きさより小さい場合に、位相反転手段7によって生成された逆位相の音をインターホン2に送信して出力させ、乗りかご1の大きさが所定の大きさと同じ又はこれより大きい場合に、位相反転手段7によって生成された逆位相の音をインターホン2から出力させないようにしたことである。その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0034】
次に、本発明の第2実施形態の動作を図3のフローチャートに基づいて説明する。
【0035】
図3は本発明に係るエレベーターの消音装置の第2実施形態の動作を説明するフローチャートである。
【0036】
本発明の第2実施形態は、乗りかご1の大きさが所定の大きさより小さい場合には、図3に示すように乗りかご1が走行すると(S201)、監視装置4は、インターホン2から乗りかご1内の音を受信し(S202)、雑音検出手段6がインターホン2によって入力された音のうち乗りかご1内で発生した雑音、例えば乗りかご1の換気装置9や冷却装置10の作動音を検出する(S203)。
【0037】
そして、位相反転手段7が雑音検出手段6によって検出された雑音に対して逆位相の音を生成し(S204)、監視装置4の逆位相音出力手段が位相反転手段7によって生成された逆位相の音をインターホン2に送信して出力させる。これにより、雑音に対して逆位相の音がインターホン2から発生して雑音が消音され(S205)、本発明の第2実施形態の動作を終了する。
【0038】
一方、手順S201において乗りかご1が停止している場合、あるいは手順S203において雑音検出手段6によって雑音が検出されなかった場合には、本発明の第2実施形態の動作を終了する。なお、本発明の第2実施形態では、乗りかご1の大きさが所定の大きさと同じ又はこれより大きい場合には、監視装置4の逆位相音出力手段は、位相反転手段7によって生成される逆位相の音をインターホン2から出力させないので、乗りかご1が走行するか否かに拘わらず、乗りかご1内の雑音に対して逆位相の音がインターホン2から発生しない。
【0039】
このように構成した本発明の第2実施形態によれば、監視装置4の逆位相音出力手段は、乗りかご1の大きさが所定の大きさより小さいときだけ乗りかご1内で発生する雑音に対して逆位相の音をインターホン2から出力させることにより、出力された逆位相の音の広がりを抑えることができるので、インターホン2から出力される音が雑音と重ね合わさる際に位相がずれることを軽減することができる。これにより、乗りかご1の大きさの違いによって生じる誤差を減少させることができるので、インターホン2から出力される音を乗りかご1内における雑音の発生源の近傍まで的確に伝達することができ、乗りかご1内における消音効果に対して高い信頼性を得ることができる。
【0040】
なお、上述した本発明の第1実施形態は、搭乗人数検出手段の算出手段5が監視装置4の内部に含まれている場合について説明したが、この場合に限らず、搭乗人数検出手段は、例えば検出した乗りかご1内に搭乗した人数を監視装置4へ送信する送信手段を有し、監視装置4の外部に設けられるようにしても良い。このように構成すると、搭乗人数検出手段と監視装置4とが別々に設けられているので、搭乗人数検出手段が監視装置4と独立して処理を行うことができ、監視装置4にかかる処理負荷を軽減することができる。これにより、監視装置4に備えられた他の機器における処理能力を向上させることができる。
【符号の説明】
【0041】
1 乗りかご
2 インターホン
3 荷重センサー
4 監視装置
5 算出手段
6 雑音検出手段
7 位相反転手段
11 監視カメラ
12 人感センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路内を走行する乗りかごと、この乗りかごに設けられ、音を入出力するインターホンと、このインターホンに接続され、前記インターホンによって入力された音を受信すると共に、前記インターホンに出力させる音を送信する監視装置とを備えたエレベーターに設けられ、前記乗りかご内で発生する雑音を低減するエレベーターの消音装置において、
前記監視装置は、
前記インターホンによって入力された音のうち前記乗りかご内で発生した雑音を検出する雑音検出手段と、
この雑音検出手段によって検出された雑音に対して逆位相の音を生成する位相反転手段と、
この位相反転手段によって生成された逆位相の音を前記インターホンに送信して出力させる逆位相音出力手段とを有することを特徴とするエレベーターの消音装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエレベーターの消音装置において、
前記乗りかご内に搭乗した人数を検出する搭乗人数検出手段を備え、
前記逆位相音出力手段は、
前記搭乗人数検出手段によって検出された人数が所定の人数未満である場合に、前記位相反転手段によって生成された逆位相の音を前記インターホンに送信して出力させ、前記搭乗人数検出手段によって検出された人数が所定の人数以上である場合に、前記位相反転手段によって生成された逆位相の音を前記インターホンから出力させないようにしたことを特徴とするエレベーターの消音装置。
【請求項3】
請求項2に記載のエレベーターの消音装置において、
前記搭乗人数検出手段は、
前記乗りかごに設けられ、前記乗りかご内に搭乗した乗客の搭乗状態を取得する搭乗状態取得手段と、
この搭乗状態取得手段によって取得された前記搭乗状態に基づいて前記乗りかご内に搭乗した人数を算出する算出手段とを有し、
前記搭乗状態取得手段は、
前記乗りかご内の荷重を検出する荷重センサーと、
前記乗りかご内を撮影して監視する監視カメラと、
前記乗りかご内に搭乗した乗客を検知する人感センサーとの少なくとも一方から構成されたことを特徴とするエレベーターの消音装置。
【請求項4】
請求項2に記載のエレベーターの消音装置において、
前記搭乗人数検出手段は、検出した前記乗りかご内に搭乗した人数を前記監視装置へ送信する送信手段を有し、前記監視装置の外部に設けられたことを特徴とするエレベーターの消音装置。
【請求項5】
請求項1に記載のエレベーターの消音装置において、
前記逆位相音出力手段は、
前記乗りかごの大きさが所定の大きさより小さい場合に、前記位相反転手段によって生成された逆位相の音を前記インターホンに送信して出力させ、前記乗りかごの大きさが所定の大きさと同じ又はこれより大きい場合に、前記位相反転手段によって生成された逆位相の音を前記インターホンから出力させないようにしたことを特徴とするエレベーターの消音装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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