エレベータードア制御装置及びエレベータードア制御方法及びプログラム
【課題】風圧による過負荷増加を即時に検出し、制御に反映するとともに、検出後は過負荷の増加量に応じて戸開閉力の制限を補正することができるエレベーターのドア制御装置を提供する。
【解決手段】エレベーターの出入口に設置された戸をモータによって開閉駆動するエレベータードア制御システムにおいて、外気温とエレベーターシャフト内の温度との差に基づき風圧による過負荷増加の予測パターンを求め、現在のトルク指令値における通常負荷時からの増加パターンとを比較し、風圧による過負荷増加を検出する手段と、風圧による過負荷を検出した場合に、トルク制限値を過負荷増加の予測パターンに基づいて補正する手段を備えた構成とする。
【解決手段】エレベーターの出入口に設置された戸をモータによって開閉駆動するエレベータードア制御システムにおいて、外気温とエレベーターシャフト内の温度との差に基づき風圧による過負荷増加の予測パターンを求め、現在のトルク指令値における通常負荷時からの増加パターンとを比較し、風圧による過負荷増加を検出する手段と、風圧による過負荷を検出した場合に、トルク制限値を過負荷増加の予測パターンに基づいて補正する手段を備えた構成とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレベーターのドアの開閉を制御するエレベータードアの制御技術に関するものであり、特に、高層ビルのエレベーターシャフトでシャフト内外の温度差によるドラフトが発生する状況において、戸開閉時に精度よく風圧による過負荷の発生を検出し、確実に戸開動作又は戸閉動作させるエレベータードアの制御技術に関するものである。
【0002】
エレベーターシャフトは、建物を縦に伸びていることから、冬期には建物内が暖房される関係で煙突効果によってエレベーターシャフト内において下方から上方へ空気の流れが発生する。この空気の流れのことをドラフトという。
ドラフトが発生するとエレベータードアが風に押されスムーズな開閉動作が妨げられることになる。本発明は、このようなドラフト発生時の風圧による過負荷の発生を検出し、確実に戸開動作又は戸閉動作させるエレベータードアの制御技術に関するものである。
なお、エレベータードアを戸ともいう。
【背景技術】
【0003】
従来のエレベータードアの制御装置では、戸閉動作(又は戸開動作)において所定時間内に戸閉(又は戸開)が完了しないことで風圧による過負荷を検出する手段が備えられている。
また、風圧による過負荷を検出し再度戸閉(又は戸開)する際に、前回の停止位置でトルク制限値などを補正する手段を備えたエレベータードアの制御装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1のエレベータードアの制御装置では、予め設定された速度指令値とトルク制限値に従ってトルク指令を発生してドア開閉用のモータを駆動してドアの開閉動作を行うが、ドア開またはドア閉指令が発せられてから所定時間内にドア開またはドア閉が未完了であることが検出された場合は、ドア反転動作を行い再度ドア開またはドア閉を行う。
この時、ドア停止位置より所定値手前の位置で、速度指令値及びトルク制限値を増加させることにより、風圧に対するドアの開または閉時のエネルギー(慣性力)が高まり、安全性の低下を最小限に抑え、ドアの再開閉動作を確実にし、エレベータの運転効率を向上させる。
【特許文献1】特開平8−20482号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の従来技術においては、ドア開またはドア閉の未完了の検出までに一度戸閉動作又は戸開動作を行い過負荷を検出した後でないと、風圧による過負荷を検出できないため、1開閉分の時間を余分に必要とするという課題がある。
【0006】
また、上記の従来技術においては、前回の停止位置で部分的にトルク制限値を引き上げるため、トルク制限値の引き上げにより音や振動が発生し、エレベーター乗客に不安感を与える場合があるという課題がある。
つまり、トルク制限値の部分的な引き上げにより、戸開閉速度が滑らかな波形ではなくなり、これにより戸開閉動作中に音や振動が発生し、この結果、エレベーター乗客は不安をかきたてられるという課題がある。
【0007】
この発明は、上記の課題を解決することを主な目的の一つとしており、風圧による過負荷を検出し、制御に反映するとともに、検出後は風圧による過負荷増加量に応じた戸開閉力の制限をすることができるエレベータードア制御装置等を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るエレベータードア制御装置は、
エレベータードアの開閉を制御するエレベータードア制御装置であって、
エレベーターシャフト内外の気象状態を比較し、エレベーターシャフト内外の気象状態の差を数値化する気象状態比較部と、
前記気象状態比較部により数値化されたエレベーターシャフト内外の気象状態の差に基づき、エレベータードア開動作時又は閉動作時にエレベータードアを流通する気流の風圧増加によるエレベータードア開動作時又は閉動作時のトルク指令値の予測増加量を予測トルク指令値増加量として算出する予測トルク指令値増加量算出部と、
エレベータードア開動作時及び閉動作時の少なくともいずれかにおいて、エレベータードア開動作時又は閉動作時の標準トルク指令値と、エレベータードア開動作時又は閉動作時の実測トルク指令値とを比較し、標準トルク指令値に対する実測トルク指令値の増加量を実測トルク指令値増加量として算出する実測トルク指令値増加量算出部と、
前記予測トルク指令値増加量算出部により算出された予測トルク指令値増加量と、前記実測トルク指令値増加量算出部により算出された実測トルク指令値増加量とを比較し、実測トルク指令値増加量におけるトルク指令値の増加がエレベータードアを流通する気流の風圧増加による増加であるか否かを判定するトルク指令値比較部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、エレベーターシャフト内外の気象状態の差に基づき、ドラフト現象発生に伴うドア開閉時の気流の風圧増加によるトルク指令値の予測増加量を求め、実際のトルク指令値における増加量と比較することで、風圧によるトルク指令値の増加を検出することができ、検出結果をエレベータードア制御に反映することができ、ドア開閉動作を安全かつスムーズに行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係わるエレベータードア制御システムの制御ユニット及びその周辺装置の機能ブロック図である。
図2は、実施の形態1に係わるエレベータードア制御システムの構成例を示す図である。
図3は、実施の形態1に係わる戸閉時における通常動作時の波形図である。
【0011】
この発明の実施の形態1に係わるエレベータードア制御システム1は、図2に示すように、エレベーターの乗客カゴの出入口を開閉する戸2、戸2を開閉する戸開閉機構3、戸開閉機構3を駆動する戸駆動機構4を有している。
戸開閉機構3は、戸2の上部に固定されている懸架部材5、その懸架部材5の上部に配設されているハンガローラ6、戸2の上方に配設されているレール7、レール7の上方に所定の間隔だけ水平方向に離設されている2つのプーリ8、プーリ8間を周回するように配設されているベルト9、一端がベルト9の所定位置に固定され、他端が懸架部材5に固定されている連結部材10とを備える。
そして、戸開閉機構3は、戸駆動機構4によりベルト9が左右に往復運動されると、レール7上を走行するハンガローラ6により案内されて、戸2が反対方向に往復運動し、出入口を開閉する。
【0012】
戸駆動機構4は、図1に示すように、プーリ8に回転軸を介して連動するモータ11、モータ11の回転をパルスに変換するパルスエンコーダ12、パルスエンコーダ12から出力されるパルスを演算処理して求められる戸2の位置に対応する速度指令値と戸速度から求まるトルク指令値からモータ11を制御する制御信号を出力する制御ユニット16を備える。
【0013】
制御ユニット16は、外気温とエレベーターシャフト内の温度との差から風圧による過負荷増加の予測パターンを求め、現在のトルク指令値における通常負荷時からの増加パターンとを比較し、風圧による過負荷を検出する。
【0014】
制御ユニット16は、エレベーター制御装置13との間で情報の送受信する入出力ポート17、パルスエンコーダ12から入力されるパルスをカウントするパルスカウントユニット19、あらかじめ定められた速度指令パターンW11、およびトルク制限値W41とを記憶する記憶手段としてのROM(Read Only Memory)20を備える。
なお、トルク制限値とは、ドア開閉中に必要以上のトルクが発生しないように、トルク指令値の上限を定める値である。
また、制御ユニット16は、パルスカウントユニット19で求まるパルスカウントから戸2の位置を求める戸位置検出手段としての戸位置検出部21、同じくパルスカウントユニット19で求まるパルスカウントから戸2の速度を求める戸速度検出手段としての戸速度検出部22、戸2の位置に基づきROM20に記憶されている速度指令値W11を読み出し、速度指令値W11と上記戸速度検出部22で求まる戸速度W21との偏差からトルク指令値W31を算出するモータ負荷検出手段としてのモータ負荷検出部23、エレベーター制御装置13からの指令とトルク指令値W31に基づきモータ11への開閉駆動指令を制御する戸駆動制御部24、制御ユニット16での演算データや通常負荷時のトルク指令値W31を一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)18を備える。
【0015】
制御ユニット16には、エレベーターシャフト内の温度を検出するシャフト内温度検出部14、エレベーターシャフト外の気温を検出する外気温検出部15が接続されている。
制御ユニット16には、加えて、エレベーターシャフト内外の検出温度を比較し温度差を求める温度比較部25、温度比較部25により求められた温度差に基づき、ドラフトに起因する風圧増加によるトルク指令値の予測増加パターンを算出する予測増加パターン算出部29、モータ負荷検出部23により指定された現在のトルク指令値とRAM18に記憶された通常負荷時のトルク指令値W31を比較しトルクの過負荷増加の実測増加パターンを算出する実測増加パターン算出部30と、予測増加パターン算出部29により算出された予測増加パターンと実測増加パターン算出部30により算出された実測増加パターンとを比較し、風圧増加による負荷増加であるか否かを判定するトルク指令値比較部26を備える。
【0016】
図1において、破線100で囲んだ範囲、すなわち、温度比較部25、予測増加パターン算出部29、実測増加パターン算出部30及びトルク指令値比較部26がエレベータードア制御装置を構成する。
温度比較部25は、気象状態比較部の例である。
本実施の形態では、温度比較部25が、エレベーターシャフト内外の温度差を求めることとしているが、エレベーターシャフト内外の気象状態を比較し、エレベーターシャフト内外の気象状態の差を数値化できれば温度以外の基準を用いてもよい。
ここで、気象状態とは、エレベーターシャフト内外の気体の状態をいい、エレベーターシャフト内外の気象状態の比較として、例えばエレベーターシャフト内外の風速を比較してもよいし、エレベーターシャフト内外の風圧を比較してもよい。
また、予測増加パターン算出部29は、予測トルク指令値増加量算出部の例である。
予測増加パターン算出部29は、前述したように、温度比較部25により数値化されたエレベーターシャフト内外の気象状態の差、すなわち温度差に基づき、エレベータードア開動作時又は閉動作時にエレベータードアを流通する気流の風圧増加によるエレベータードア開動作時又は閉動作時のトルク指令値の予測増加幅の変化パターン(予測トルク指令値増加量)を算出する。
実測増加パターン算出部30は、実測トルク指令値増加量算出部の例である。
実測増加パターン算出部30は、前述したように、エレベータードア開動作時及び閉動作時の少なくともいずれかにおいて、エレベータードア開動作時又は閉動作時の標準トルク指令値W31と、エレベータードア開動作時又は閉動作時の実測トルク指令値(モータ負荷検出部23により指定された現在のトルク指令値)とを比較し、標準トルク指令値に対する実測トルク指令値の実測増加幅の変化パターン(実測トルク指令値増加量)を算出する。
また、トルク指令値比較部26は、予測増加パターン算出部29により算出された予測増加幅の変化パターン(予測トルク指令値増加量)と、実測増加パターン算出部30により算出された実測増加幅の変化パターン(実測トルク指令値増加量)とを比較し、実際のトルク指令値の増加がエレベータードアを流通する気流の風圧増加による増加であるか否かを判定する。
【0017】
なお、図1では、図示を省略しているが、制御ユニット16の機能の一部は、CPU(Central Processing Unit)により実現される。
より具体的には、戸位置検出部21、戸速度検出部22、モータ負荷検出部23、戸駆動制御部24、温度比較部25、トルク指令値比較部26、予測増加パターン算出部29及び実測増加パターン算出部30は、磁気ディスク装置等の補助記憶装置に格納されているプログラムであり、
CPUによりこれらの機能を実現するプログラムが読み出され、実行される。
本実施の形態及び以降の実施の形態において、「〜の判断」、「〜の計算」、「〜の算出」、「〜の比較」、「〜の検出」、「〜の設定」、「〜の登録」等として説明している処理の結果を示す情報やデータや信号値や変数値やパラメータが、「〜ファイル」や「〜データベース」の各項目として記憶されている。
「〜ファイル」や「〜データベース」は、ディスクやメモリなどの記録媒体に記憶される。ディスクやメモリになどの記憶媒体に記憶された情報やデータや信号値や変数値やパラメータは、読み書き回路を介してCPUによりメインメモリやキャッシュメモリに読み出され、抽出・検索・参照・比較・演算・計算・処理・編集・出力・表示などのCPUの動作に用いられる。
抽出・検索・参照・比較・演算・計算・処理・編集・出力・表示のCPUの動作の間、情報やデータや信号値や変数値やパラメータは、メインメモリ、レジスタ、キャッシュメモリ、バッファメモリ等に一時的に記憶される。
また、本実施の形態及び以降の実施の形態で説明しているフローチャートの矢印の部分は主としてデータや信号の入出力を示し、データや信号値は、RAMのメモリ、磁気ディスク装置の磁気ディスク、その他光ディスク、ミニディスク、DVD、フラッシュメモリ等の記録媒体に記録される。また、データや信号は、バスや信号線やケーブルその他の伝送媒体によりオンライン伝送される。
【0018】
また、本実施の形態及び以降の実施の形態の説明において「〜部」として説明しているものは、「〜回路」、「〜装置」、「〜機器」であってもよく、また、「〜ステップ」、「〜手順」、「〜処理」であってもよい。すなわち、「〜部」として説明しているものは、ROMに記憶されたファームウェアで実現されていても構わない。或いは、ソフトウェアのみ、或いは、素子・デバイス・基板・配線などのハードウェアのみ、或いは、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせ、さらには、ファームウェアとの組み合わせで実施されても構わない。ファームウェアとソフトウェアは、プログラムとして、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD、フラッシュメモリ等の記録媒体に記憶される。プログラムはCPUにより読み出され、CPUにより実行される。すなわち、プログラムは、本実施の形態及び以降の実施の形態の「〜部」としてコンピュータを機能させるものである。あるいは、本実施の形態及び以降の実施の形態の「〜部」の手順や方法をコンピュータに実行させるものである。
【0019】
次に、図3を参照して、戸閉時における通常動作時の制御ユニット16の動作例について説明する。
エレベーター制御装置13よりドア閉信号が発生すると、入出力ポート17を通じてモータ負荷検出部23にドア閉信号が読み込まれ、これに対応して、ROM20よりドアの速度指令値W11とトルク制限値W41がドア位置の関数として戸駆動制御部24に読み込まれる。
ドア位置は次のようにして求められる。
モータ11に取り付けられているパルスエンコーダ12からの出力を、パルスカウントユニット19によりパルスをカウントし、そのカウント値が戸位置検出部21に送られ、戸位置検出部21はドアの位置を演算する。なお、ドア位置の代わりにドア開閉指令発生からの経過時間に対応した速度指令値及びトルク制限値を読み出すことも可能である。
また戸速度検出部22では、パルスカウントユニット19のカウント値をもとに戸の実速度W21の演算を行う。
【0020】
モータ負荷検出部23は、読み出した速度指令値W11と演算された戸の実速度W21との速度偏差から、速度指令値W11に追従させるために必要なトルク指令値W31を演算し、これを戸駆動制御部24に送る。
ここでトルク指令値W31はPWM信号に変換され、その出力によりゲート信号が発生し、パワー回路が駆動し、モータ11に電圧が加わり、モータ11を回転させスムーズなドア開閉となるように速度制御が行われる。
【0021】
次に、実施の形態1に係わる戸2に対する風圧による過負荷増加を検出する方法について、図4を参照して説明する。
図4は、実施の形態1において風圧による過負荷増加時の波形を示す図である。
図4(a)の速度指令値W11及び実速度W21は、図3(a)に示したものと同様である。
図4(b)において、W31は、通常負荷における戸閉動作時に記憶されたトルク指令値を示す。トルク指令値W31は、標準トルク指令値である。
W41は、そのトルク指令値W31に適したトルク制限値を示す。
また、図4(c)のW51は、トルク指令値W31に対応しており、後述するW52及びW53との比較のための線である。
【0022】
次に、エレベーターシャフト外の気温とシャフト内の気温の温度差が大きい場合、すなわちドラフト現象発生に伴う風圧による過負荷増加の影響を大きく受けている場合、W32のようなトルク指令値となり、その際の通常負荷におけるトルク指令値W31に対する増加パターンはW52のようになり、全閉に進むに従い開口部が狭まるため増加する。
増加パターンW52は、戸全開から戸全閉までの間のトルク指令値W32からトルク指令値W31を差し引いた増加幅の変化パターン(W52=W32−W31)である。
すなわち、戸全開から戸全閉までの間の各点におけるトルク指令値W32とトルク指令値W31との差が増加パターンW52と増加パターンW51との差になる。
さらにエレベーターシャフト外の気温とシャフト内の気温の温度差が大きい場合には、W33のようなトルク指令値および、W53のような通常負荷時のトルク指令値に対する増加パターンとなる。
増加パターンW53は、戸全開から戸全閉までの間のトルク指令値W33からトルク指令値W31を差し引いた増加幅の変化パターン(W53=W33−W31)である。
すなわち、戸全開から戸全閉までの間の各点におけるトルク指令値W33とトルク指令値W31との差が増加パターンW53と増加パターンW51との差になる。
エレベーターシャフト外の気温とシャフト内の気温の温度差が大きい場合のトルク指令値W32、W33に適したトルク制限値は、W42およびW43に示すようになり、通常負荷時のトルク指令値W31に対して、大きく裕度を持つ必要がでてくる。
【0023】
このように、エレベーターシャフト外の気温とシャフト内の気温の温度差が大きい場合の通常負荷時のトルク指令値に対する増加パターンを照らし合わせることにより、風圧による過負荷増加を検出することができる。
すなわち、温度比較部25により数値化されたエレベーターシャフト内外の温度差に基づき、予測増加パターン算出部29がドラフト現象発生に伴う風圧によるトルク指令値の増加幅の予測パターンを算出し、実測増加パターン算出部30がモータ負荷検出部23により出力される実際のトルク指令値の標準トルク指令値に対する増加幅の実測パターンを算出し、トルク指令値比較部26が予測パターンと実測パターンとを比較し、両パターンの傾きが一致していれば、ドラフト現象に起因する風圧による過負荷増加と判定することができる。
【0024】
次に、実施の形態1に係わる戸2の風圧による過負荷増加を検出する手順について、図5を参照して説明する。
図5は、実施の形態1において戸2に対する風圧による過負荷増加を検出する方法の手順を示すフローチャートである。
なお、図5に示すフローとは別ルーチンで一定周期ごとにシャフト内温度検出部14がエレベーターシャフト内の温度を検出し、外気温検出部15がエレベーターシャフト内の温度を検出し、温度比較部25がエレベーターシャフト内外の温度を比較し、エレベーターシャフト内外の温度差を数値化しているものとする(気象状態比較ステップ)。
図5のフローにおいて、まず、S101で戸2が戸閉動作中であることを判断し、戸閉動作中であればS102へ進み、戸閉動作中で無い場合はS101を繰り返す。なお、図5では、戸閉動作中の処理例を説明するが、戸開動作においても図5と同様の手順を適用できる。
戸閉動作中である場合(S101でYES)、S102において、温度比較部25がエレベーターシャフト内外の温度差を閾値と比較し、閾値未満の場合(S102でNO)は風圧による過負荷増加が発生しない状態と判断し、S101へ戻る。
温度差が閾値を超える場合(S102でYES)は、風圧による過負荷増加が発生する状態にあると判断し、S103へ進む。
【0025】
S103では、予測増加パターン算出部29が、シャフト内外の温度差に基づく風圧による過負荷増加時のトルク指令値の増加幅の予測パターン(例えば、パターンW52、W53のいずれか)を算出し(予測トルク指令値増加量算出ステップ)、S104へ進む。
予測増加パターン算出部29は、(シャフト内外の温度差)×(所定の係数)という計算を行って、トルク指令値の増加幅の予測パターンを算出する。
S104では、実測増加パターン算出部30が、現在と通常負荷時のトルク指令値の差であるトルク指令値の増加幅の実測パターン(例えば、パターンW51〜W53のいずれか)を算出する(実測トルク指令値増加量算出ステップ)。
実測増加パターン算出部30は、(戸の現在位置におけるトルク指令値の増加幅)/(戸の位置移動量)を計算して、トルク指令値の増加幅の実測パターンを算出する。
戸の現在位置におけるトルク指令値の増加幅は、(戸の現在位置における実際のトルク指令値)−(戸の現在位置における標準トルク指令値W31)から求められる。
続いて、S105では、トルク指令値比較部26が、S103において温度差から算出された風圧による過負荷増加時の予測パターンの傾きと、現在のトルク指令値の増加幅の実測パターンの傾きを比較し、同じであれば、風圧による過負荷増加の発生と判断し(S106)、S101へ戻る。もし、傾きが異なれば、別の要因と判断し、S101へ戻る。
【0026】
このように、本実施の形態に係るエレベータードア制御装置は、エレベーターシャフト内外の温度差より求まる過負荷増加の予測パターンの傾きから、風圧による過負荷増加を検出することができる。
そして、風圧による過負荷増加を検出することで、風圧による過負荷増加を即時に判断し、制御に反映することができる。
【0027】
なお、図5のフローにおいて、S103で一度予測パターンを算出した後は、算出した予測パターンをRAM18に格納しておけば、シャフト内外の温度差に大幅な変化がない限り、RAM18に格納している予測パターンを用いればよく、予測パターンを繰り返し算出しなくてもよい。
【0028】
また、以上の説明では、トルク指令値の増加幅の予測パターン(傾き)と実際のトルク指令値の増加幅の実測パターン(傾き)とを比較して、風圧による過負荷増加を検出することとしていたが、戸の現在位置におけるトルク指令値の予測増加幅及び戸の現在位置におけるトルク指令値の実際の増加幅を算出し、これらを比較して、風圧による過負荷増加を検出するようにしてもよい。
すなわち、(シャフト内外の温度差)×(所定の係数)×(戸の現在位置)という計算により、ドラフト発生に伴う風圧による過負荷時のトルク指令値の推定増加幅を求め、(戸の現在位置におけるトルク指令値の増加幅)/(戸の位置移動量)+(戸開閉開始位置のけるトルク指令値)という計算により現在のトルク指令値の標準トルク指令値W31に対する実際の増加幅を求め、両者を比較して両者が所定の範囲内で一致すれば、風圧によりトルク指令値が増加していると判断することができる。
【0029】
以上、本実施の形態では、エレベーターの出入口に設置された戸をモータによって開閉駆動するエレベータードア制御システムについて説明した。
より具体的には、予め保存されている正常負荷時のトルク指令値と、上記戸を戸閉又は戸開駆動中のトルク指令値を比較し、増加パターンを算出する手段と、エレベーターシャフト内外の温度を検出し、温度差を算出する手段と、上記エレベーターシャフト内外の温度差が広がった場合に、シャフト内外の温度差に基づく風圧による過負荷増加の予測パターンと上記トルク指令値の増加パターンを比較し、風圧による過負荷増加を検出する手段とを備えたエレベータードア制御システムについて説明した。
【0030】
実施の形態2.
図6は、この発明の実施の形態2に係わるエレベータードア制御システムの制御ユニット及びその周辺装置の機能ブロック図である。
この発明の実施の形態2に係わるエレベータードア制御システムは、実施の形態1に係わるエレベータードア制御システム1とは、制御ユニット16Bが異なっており、それ以外は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記して説明は省略する。
実施の形態2に係わる制御ユニット16Bは、実施の形態1に係わる制御ユニット16とは、階床係数算出部27が異なっており、それ以外は同様であるので同様な部分に同じ符号を付記して説明は省略する。
制御ユニット16Bは、実施の形態1における制御ユニット16の機能に加えて、風圧による過負荷増加発生時において、階床が異なることによる負荷の増分を補正するための係数を算出する階床係数算出部27を備える。
そして、本実施の形態では、予測増加パターン算出部29は、温度比較部25により数値化されたエレベーターシャフト内外の温度差とエレベータードアの制御が行われる階床高に対応する係数とに基づき、トルク指令値の予測増加幅の変化パターンを算出する。
【0031】
図7において、戸2に対して階床によって異なる風圧による過負荷増加時の波形動作について、説明する。
図7は、実施の形態2において階床が異なる場合における風圧発生時の波形を示す図である。
図7(a)の速度指令値W11及び実速度W21は、図3(a)に示したものと同様である。
図7(b)において、W31は、通常負荷における戸閉動作時に記憶したトルク指令値を示す。
次に、W32は、エレベーターシャフト外の気温とシャフト内の温度の差が大きい場合、すなわちドラフト現象発生に伴う風圧による過負荷増加の影響を大きく受けている場合における低層階のトルク指令値を示す。
図7(c)のW52は、その際の通常負荷におけるトルク指令値からの増加パターンを示す。
このようなケースにおいて、エレベーターシャフト外の気温とシャフト内の温度差が大きい場合、高層階でのトルク指令値はドラフト現象の特性上W34に示すようになり、通常負荷におけるトルク指令値からの増加パターンはW54のようになる。
そのため、エレベーターシャフト外の気温とシャフト内の温度差が大きい場合の通常負荷におけるトルク指令値からの増加パターンの傾きを照らし合わせる際には、この階床による増分を考慮し、予測増加パターンはW52ではなくW54を用いることにより、風圧による過負荷増加を精度よく検出することができる。
【0032】
次に実施の形態2の動作について、図8を参照して説明する。
図8は、実施の形態2において階床が異なる場合を想定した風圧による過負荷検出の手順を示すフローチャートである。
実施の形態2に係わる手順のうち、S201からS205までは実施の形態1に係わる手順のS101からS105と同様であり、異なる手順であるS206について、説明する。
S202においてエレベーターシャフト内外の温度差を閾値と比較し、閾値未満の場合は、風圧による過負荷増加が発生する状態と判断し、S203にて、予測増加パターン算出部29が温度差に基づく風圧による過負荷予測パターンを算出するとともに、S204にて、実測増加パターン算出部30が現在と通常負荷時のトルク指令値におけるトルク増加のパターンを算出し、S206へ進む。
S206では、予測増加パターン算出部29が、その風圧による過負荷増加の予測パターンに対して階床を基にした係数を掛け合わせる。当該階床数に対応する係数は、階床係数算出部27が算出する。階床係数算出部27は、例えば、戸開動作又は戸閉動作が行われる階床数の情報を入出力ポート17を介してエレベーター制御装置13から入力し、入力した階床数の情報に基づき階床係数を算出する。
続いて、S205では、トルク指令値比較部26が、S206において算出された風圧による過負荷増加予測パターンの傾きと、S204にて算出された現在のトルク増加パターンの傾きを比較し、同じであれば、風圧による過負荷増加の発生と判断し(S207)、S201へ戻る。
【0033】
このようなエレベータードア制御装置は、エレベーターシャフト内外の温度差より求まる過負荷増加の予測パターンの傾きに対して、階床に基づく係数を掛け合わせることにより、風圧による過負荷増加の検出を、より精度よく行うことができる。
【0034】
なお、本実施の形態においても、トルク指令値の増加幅の予測パターン(傾き)と実際のトルク指令値の増加幅の実測パターン(傾き)の代わりに、戸の現在位置におけるトルク指令値の予測増加幅及び戸の現在位置におけるトルク指令値の実際の増加幅を算出し、これらを比較して、風圧による過負荷増加を検出するようにしてもよい。
このときに、エレベータードアの開動作又は閉動作を行う階床高に対応した係数を用いてトルク指令値の予測増加幅を算出する。
【0035】
以上、本実施の形態では、予測パターンに対して、戸開閉の対象となる階床に基づく係数を掛け合わせ、その風圧による過負荷増加の予測パターンと、現在のトルク指令値における通常負荷時からの増加パターンとを比較し、風圧による過負荷を検出する手段を備えるエレベータードア制御システムについて説明した。
【0036】
実施の形態3.
図9は、この発明の実施の形態3に係わるエレベータードア制御システムの制御ユニット及びその周辺装置の機能ブロック図である。
この発明の実施の形態3に係わるエレベータードア制御システムは、実施の形態2に係わるエレベータードア制御システム1と制御ユニット16Cが異なっており、それ以外は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記して説明は省略する。
実施の形態3に係わる制御ユニット16Cは、実施の形態1に係わる制御ユニット16とトルク制限値制御部28が異なっており、それ以外は同様であるので同様な部分に同じ符号を付記して説明は省略する。
制御ユニット16Cは、実施の形態1における制御ユニット16の機能に加えて、風圧による過負荷増加時において既存のトルク制限値に対して過負荷増加の予測パターンを加算するトルク制限値制御部28を備える。
トルク制限値制御部28は、トルク指令値比較部26によりトルク指令値の増加がエレベータードアを流通する気流の風圧増加による増加であると判定された場合に、予測増加パターン算出部29により算出された予測パターンに基づき、トルク指令値を制限するトルク制限値を補正する。
トルク制限値制御部28は、トルク制限値補正部の例である。
本実施の形態では、温度比較部25、予測増加パターン算出部29、実測増加パターン算出部30、トルク指令値比較部26及びトルク制限値制御部28がエレベータードア制御装置を構成する。
【0037】
図10において、戸2に風圧による過負荷が加えられた場合にトルク制限値を制御した波形動作について、説明する。
図10は、実施の形態3において風圧による過負荷が加えられた場合のトルク制限値制御時の波形を示す図である。
図10(a)の速度指令値W11及び実速度W21は、図3(a)に示したものと同様である。
図10(b)において、W31は、通常負荷における戸閉動作時に記憶したトルク指令値を示す。
W41は、そのトルク指令値W31に適したトルク制限値を示す。
次に、W33は、エレベーターシャフト外の気温とシャフト内の温度差が大きい場合のトルク指令値であり、W43はそのトルク指令値W33に適したトルク制限値である。
また、通常負荷におけるトルク指令値に対する過負荷増加の予測パターンは、W53に示す。
ここで、W41に示したトルク制限値に対して、W53に示した風圧による過負荷増加の予測パターンを加算することで、トルク制限値を風圧による過負荷の大きさに応じて可変するトルク制限値W44を求めることができる。
【0038】
次に実施の形態3の動作について、図11を参照して説明する。
図11は、実施の形態3において風圧による過負荷増加の予測パターンを元にトルク制限値を補正する方法の手順を示すフローチャートである。
実施の形態3に係わる手順のうち、S301からS306までは実施の形態2に係わる手順のS201からS206と同様であり、異なる手順であるS307からS309について、説明する。
まず、S307において、トルク制限値制御部28が、既存のトルク制限値W41を読み出す。
次に、S302において、温度比較部25が、エレベーターシャフト内外の温度差を閾値と比較し、閾値未満の場合は風圧による過負荷増加が発生しない状態と判断し、S309へ進み、読み出されたトルク制限値はそのまま適用される。
温度差が閾値を超える場合は、風圧による過負荷増加が発生する状態と判断し、S303へ進む。
S303では、予測増加パターン算出部29が、シャフト内外の温度差と戸の現在位置に基づく風圧による過負荷増加の予測パターンを算出し、S304へ進む。
S304では、実測増加パターン算出部30が、現在と通常負荷時のトルク指令値におけるトルク増加のパターンを算出し、S306へ進む。
S306では、予測増加パターン算出部29が、風圧による過負荷増加の予測パターンに対して階床を基にした係数を掛け合わせる。
続いて、S305では、トルク指令値比較部26が、S306で算出された風圧による過負荷増加時の予測パターンの傾きと、S304で算出された現在のトルク増加パターンの傾きを比較し、同じであれば、風圧による過負荷増加の発生と判断し、S308へ移る。
傾きが異なれば、S309へ進み、読み出されたままのトルク制限値が適用される。
S308では、トルク制限値制御部28が、S307で読み出されたトルク制限値に風圧による過負荷増加時の予測パターンを加算することで、トルク制限値を補正し、S309へ進み、モータ負荷検出部23が、補正されたトルク制限値を適用する。
【0039】
このようなエレベータードア制御装置は、風圧による過負荷の発生を精度よく検出した後に、その過負荷に応じたトルク制限値の補正を行い、最低限の戸開閉力の制限とすることで、戸閉動作における安全でかつスムーズな動特性を実現することができる。
【0040】
以上、本実施の形態では、風圧による過負荷増加を検出した場合に、風圧による過負荷増加の予測パターンに基づきトルク制限値を補正するトルク制限値補正手段を備えるエレベータードア制御システムについて説明した。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】この発明の実施の形態1に係わるエレベータードア制御システムの制御ユニット及びその周辺装置の機能ブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係わるエレベータードア制御システムの構成図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係わる通常動作時の波形図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係わる風圧発生時の波形図である。
【図5】この発明の実施の形態1を示すフローチャートである。
【図6】この発明の実施の形態2に係わるエレベータードア制御システムの制御ユニット及びその周辺装置の機能ブロック図である。
【図7】この発明の実施の形態2に係わる階床が異なる風圧発生時の波形図である。
【図8】この発明の実施の形態2を示すフローチャートである。
【図9】この発明の実施の形態3に係わるエレベータードア制御システムの制御ユニット及びその周辺装置の機能ブロック図である。
【図10】この発明の実施の形態3に係わる風圧発生時のトルク制限値制御時の波形図である。
【図11】この発明の実施の形態3を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0042】
1 エレベータードア制御システム、2 戸、3 戸開閉機構、4 戸駆動機構、5 懸架部材、6 ハンガローラ、7 レール、8 プーリ、9 ベルト、10 連結部材、11 モータ、12 パルスエンコーダ、13 エレベーター制御装置、14 シャフト内温度検出部、15 外気温検出部、16 制御ユニット、17 入出力ポート、18 RAM、19 パルスカウントユニット、20 ROM、21 戸位置検出部、22 戸速度検出部、23 モータ負荷検出部、24 戸駆動制御部、25 温度比較部、26 トルク指令値比較部、27 階床係数算出部、28 トルク制限値制御部、29 予測増加パターン算出部、30 実測増加パターン算出部。
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレベーターのドアの開閉を制御するエレベータードアの制御技術に関するものであり、特に、高層ビルのエレベーターシャフトでシャフト内外の温度差によるドラフトが発生する状況において、戸開閉時に精度よく風圧による過負荷の発生を検出し、確実に戸開動作又は戸閉動作させるエレベータードアの制御技術に関するものである。
【0002】
エレベーターシャフトは、建物を縦に伸びていることから、冬期には建物内が暖房される関係で煙突効果によってエレベーターシャフト内において下方から上方へ空気の流れが発生する。この空気の流れのことをドラフトという。
ドラフトが発生するとエレベータードアが風に押されスムーズな開閉動作が妨げられることになる。本発明は、このようなドラフト発生時の風圧による過負荷の発生を検出し、確実に戸開動作又は戸閉動作させるエレベータードアの制御技術に関するものである。
なお、エレベータードアを戸ともいう。
【背景技術】
【0003】
従来のエレベータードアの制御装置では、戸閉動作(又は戸開動作)において所定時間内に戸閉(又は戸開)が完了しないことで風圧による過負荷を検出する手段が備えられている。
また、風圧による過負荷を検出し再度戸閉(又は戸開)する際に、前回の停止位置でトルク制限値などを補正する手段を備えたエレベータードアの制御装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1のエレベータードアの制御装置では、予め設定された速度指令値とトルク制限値に従ってトルク指令を発生してドア開閉用のモータを駆動してドアの開閉動作を行うが、ドア開またはドア閉指令が発せられてから所定時間内にドア開またはドア閉が未完了であることが検出された場合は、ドア反転動作を行い再度ドア開またはドア閉を行う。
この時、ドア停止位置より所定値手前の位置で、速度指令値及びトルク制限値を増加させることにより、風圧に対するドアの開または閉時のエネルギー(慣性力)が高まり、安全性の低下を最小限に抑え、ドアの再開閉動作を確実にし、エレベータの運転効率を向上させる。
【特許文献1】特開平8−20482号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の従来技術においては、ドア開またはドア閉の未完了の検出までに一度戸閉動作又は戸開動作を行い過負荷を検出した後でないと、風圧による過負荷を検出できないため、1開閉分の時間を余分に必要とするという課題がある。
【0006】
また、上記の従来技術においては、前回の停止位置で部分的にトルク制限値を引き上げるため、トルク制限値の引き上げにより音や振動が発生し、エレベーター乗客に不安感を与える場合があるという課題がある。
つまり、トルク制限値の部分的な引き上げにより、戸開閉速度が滑らかな波形ではなくなり、これにより戸開閉動作中に音や振動が発生し、この結果、エレベーター乗客は不安をかきたてられるという課題がある。
【0007】
この発明は、上記の課題を解決することを主な目的の一つとしており、風圧による過負荷を検出し、制御に反映するとともに、検出後は風圧による過負荷増加量に応じた戸開閉力の制限をすることができるエレベータードア制御装置等を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るエレベータードア制御装置は、
エレベータードアの開閉を制御するエレベータードア制御装置であって、
エレベーターシャフト内外の気象状態を比較し、エレベーターシャフト内外の気象状態の差を数値化する気象状態比較部と、
前記気象状態比較部により数値化されたエレベーターシャフト内外の気象状態の差に基づき、エレベータードア開動作時又は閉動作時にエレベータードアを流通する気流の風圧増加によるエレベータードア開動作時又は閉動作時のトルク指令値の予測増加量を予測トルク指令値増加量として算出する予測トルク指令値増加量算出部と、
エレベータードア開動作時及び閉動作時の少なくともいずれかにおいて、エレベータードア開動作時又は閉動作時の標準トルク指令値と、エレベータードア開動作時又は閉動作時の実測トルク指令値とを比較し、標準トルク指令値に対する実測トルク指令値の増加量を実測トルク指令値増加量として算出する実測トルク指令値増加量算出部と、
前記予測トルク指令値増加量算出部により算出された予測トルク指令値増加量と、前記実測トルク指令値増加量算出部により算出された実測トルク指令値増加量とを比較し、実測トルク指令値増加量におけるトルク指令値の増加がエレベータードアを流通する気流の風圧増加による増加であるか否かを判定するトルク指令値比較部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、エレベーターシャフト内外の気象状態の差に基づき、ドラフト現象発生に伴うドア開閉時の気流の風圧増加によるトルク指令値の予測増加量を求め、実際のトルク指令値における増加量と比較することで、風圧によるトルク指令値の増加を検出することができ、検出結果をエレベータードア制御に反映することができ、ドア開閉動作を安全かつスムーズに行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係わるエレベータードア制御システムの制御ユニット及びその周辺装置の機能ブロック図である。
図2は、実施の形態1に係わるエレベータードア制御システムの構成例を示す図である。
図3は、実施の形態1に係わる戸閉時における通常動作時の波形図である。
【0011】
この発明の実施の形態1に係わるエレベータードア制御システム1は、図2に示すように、エレベーターの乗客カゴの出入口を開閉する戸2、戸2を開閉する戸開閉機構3、戸開閉機構3を駆動する戸駆動機構4を有している。
戸開閉機構3は、戸2の上部に固定されている懸架部材5、その懸架部材5の上部に配設されているハンガローラ6、戸2の上方に配設されているレール7、レール7の上方に所定の間隔だけ水平方向に離設されている2つのプーリ8、プーリ8間を周回するように配設されているベルト9、一端がベルト9の所定位置に固定され、他端が懸架部材5に固定されている連結部材10とを備える。
そして、戸開閉機構3は、戸駆動機構4によりベルト9が左右に往復運動されると、レール7上を走行するハンガローラ6により案内されて、戸2が反対方向に往復運動し、出入口を開閉する。
【0012】
戸駆動機構4は、図1に示すように、プーリ8に回転軸を介して連動するモータ11、モータ11の回転をパルスに変換するパルスエンコーダ12、パルスエンコーダ12から出力されるパルスを演算処理して求められる戸2の位置に対応する速度指令値と戸速度から求まるトルク指令値からモータ11を制御する制御信号を出力する制御ユニット16を備える。
【0013】
制御ユニット16は、外気温とエレベーターシャフト内の温度との差から風圧による過負荷増加の予測パターンを求め、現在のトルク指令値における通常負荷時からの増加パターンとを比較し、風圧による過負荷を検出する。
【0014】
制御ユニット16は、エレベーター制御装置13との間で情報の送受信する入出力ポート17、パルスエンコーダ12から入力されるパルスをカウントするパルスカウントユニット19、あらかじめ定められた速度指令パターンW11、およびトルク制限値W41とを記憶する記憶手段としてのROM(Read Only Memory)20を備える。
なお、トルク制限値とは、ドア開閉中に必要以上のトルクが発生しないように、トルク指令値の上限を定める値である。
また、制御ユニット16は、パルスカウントユニット19で求まるパルスカウントから戸2の位置を求める戸位置検出手段としての戸位置検出部21、同じくパルスカウントユニット19で求まるパルスカウントから戸2の速度を求める戸速度検出手段としての戸速度検出部22、戸2の位置に基づきROM20に記憶されている速度指令値W11を読み出し、速度指令値W11と上記戸速度検出部22で求まる戸速度W21との偏差からトルク指令値W31を算出するモータ負荷検出手段としてのモータ負荷検出部23、エレベーター制御装置13からの指令とトルク指令値W31に基づきモータ11への開閉駆動指令を制御する戸駆動制御部24、制御ユニット16での演算データや通常負荷時のトルク指令値W31を一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)18を備える。
【0015】
制御ユニット16には、エレベーターシャフト内の温度を検出するシャフト内温度検出部14、エレベーターシャフト外の気温を検出する外気温検出部15が接続されている。
制御ユニット16には、加えて、エレベーターシャフト内外の検出温度を比較し温度差を求める温度比較部25、温度比較部25により求められた温度差に基づき、ドラフトに起因する風圧増加によるトルク指令値の予測増加パターンを算出する予測増加パターン算出部29、モータ負荷検出部23により指定された現在のトルク指令値とRAM18に記憶された通常負荷時のトルク指令値W31を比較しトルクの過負荷増加の実測増加パターンを算出する実測増加パターン算出部30と、予測増加パターン算出部29により算出された予測増加パターンと実測増加パターン算出部30により算出された実測増加パターンとを比較し、風圧増加による負荷増加であるか否かを判定するトルク指令値比較部26を備える。
【0016】
図1において、破線100で囲んだ範囲、すなわち、温度比較部25、予測増加パターン算出部29、実測増加パターン算出部30及びトルク指令値比較部26がエレベータードア制御装置を構成する。
温度比較部25は、気象状態比較部の例である。
本実施の形態では、温度比較部25が、エレベーターシャフト内外の温度差を求めることとしているが、エレベーターシャフト内外の気象状態を比較し、エレベーターシャフト内外の気象状態の差を数値化できれば温度以外の基準を用いてもよい。
ここで、気象状態とは、エレベーターシャフト内外の気体の状態をいい、エレベーターシャフト内外の気象状態の比較として、例えばエレベーターシャフト内外の風速を比較してもよいし、エレベーターシャフト内外の風圧を比較してもよい。
また、予測増加パターン算出部29は、予測トルク指令値増加量算出部の例である。
予測増加パターン算出部29は、前述したように、温度比較部25により数値化されたエレベーターシャフト内外の気象状態の差、すなわち温度差に基づき、エレベータードア開動作時又は閉動作時にエレベータードアを流通する気流の風圧増加によるエレベータードア開動作時又は閉動作時のトルク指令値の予測増加幅の変化パターン(予測トルク指令値増加量)を算出する。
実測増加パターン算出部30は、実測トルク指令値増加量算出部の例である。
実測増加パターン算出部30は、前述したように、エレベータードア開動作時及び閉動作時の少なくともいずれかにおいて、エレベータードア開動作時又は閉動作時の標準トルク指令値W31と、エレベータードア開動作時又は閉動作時の実測トルク指令値(モータ負荷検出部23により指定された現在のトルク指令値)とを比較し、標準トルク指令値に対する実測トルク指令値の実測増加幅の変化パターン(実測トルク指令値増加量)を算出する。
また、トルク指令値比較部26は、予測増加パターン算出部29により算出された予測増加幅の変化パターン(予測トルク指令値増加量)と、実測増加パターン算出部30により算出された実測増加幅の変化パターン(実測トルク指令値増加量)とを比較し、実際のトルク指令値の増加がエレベータードアを流通する気流の風圧増加による増加であるか否かを判定する。
【0017】
なお、図1では、図示を省略しているが、制御ユニット16の機能の一部は、CPU(Central Processing Unit)により実現される。
より具体的には、戸位置検出部21、戸速度検出部22、モータ負荷検出部23、戸駆動制御部24、温度比較部25、トルク指令値比較部26、予測増加パターン算出部29及び実測増加パターン算出部30は、磁気ディスク装置等の補助記憶装置に格納されているプログラムであり、
CPUによりこれらの機能を実現するプログラムが読み出され、実行される。
本実施の形態及び以降の実施の形態において、「〜の判断」、「〜の計算」、「〜の算出」、「〜の比較」、「〜の検出」、「〜の設定」、「〜の登録」等として説明している処理の結果を示す情報やデータや信号値や変数値やパラメータが、「〜ファイル」や「〜データベース」の各項目として記憶されている。
「〜ファイル」や「〜データベース」は、ディスクやメモリなどの記録媒体に記憶される。ディスクやメモリになどの記憶媒体に記憶された情報やデータや信号値や変数値やパラメータは、読み書き回路を介してCPUによりメインメモリやキャッシュメモリに読み出され、抽出・検索・参照・比較・演算・計算・処理・編集・出力・表示などのCPUの動作に用いられる。
抽出・検索・参照・比較・演算・計算・処理・編集・出力・表示のCPUの動作の間、情報やデータや信号値や変数値やパラメータは、メインメモリ、レジスタ、キャッシュメモリ、バッファメモリ等に一時的に記憶される。
また、本実施の形態及び以降の実施の形態で説明しているフローチャートの矢印の部分は主としてデータや信号の入出力を示し、データや信号値は、RAMのメモリ、磁気ディスク装置の磁気ディスク、その他光ディスク、ミニディスク、DVD、フラッシュメモリ等の記録媒体に記録される。また、データや信号は、バスや信号線やケーブルその他の伝送媒体によりオンライン伝送される。
【0018】
また、本実施の形態及び以降の実施の形態の説明において「〜部」として説明しているものは、「〜回路」、「〜装置」、「〜機器」であってもよく、また、「〜ステップ」、「〜手順」、「〜処理」であってもよい。すなわち、「〜部」として説明しているものは、ROMに記憶されたファームウェアで実現されていても構わない。或いは、ソフトウェアのみ、或いは、素子・デバイス・基板・配線などのハードウェアのみ、或いは、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせ、さらには、ファームウェアとの組み合わせで実施されても構わない。ファームウェアとソフトウェアは、プログラムとして、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD、フラッシュメモリ等の記録媒体に記憶される。プログラムはCPUにより読み出され、CPUにより実行される。すなわち、プログラムは、本実施の形態及び以降の実施の形態の「〜部」としてコンピュータを機能させるものである。あるいは、本実施の形態及び以降の実施の形態の「〜部」の手順や方法をコンピュータに実行させるものである。
【0019】
次に、図3を参照して、戸閉時における通常動作時の制御ユニット16の動作例について説明する。
エレベーター制御装置13よりドア閉信号が発生すると、入出力ポート17を通じてモータ負荷検出部23にドア閉信号が読み込まれ、これに対応して、ROM20よりドアの速度指令値W11とトルク制限値W41がドア位置の関数として戸駆動制御部24に読み込まれる。
ドア位置は次のようにして求められる。
モータ11に取り付けられているパルスエンコーダ12からの出力を、パルスカウントユニット19によりパルスをカウントし、そのカウント値が戸位置検出部21に送られ、戸位置検出部21はドアの位置を演算する。なお、ドア位置の代わりにドア開閉指令発生からの経過時間に対応した速度指令値及びトルク制限値を読み出すことも可能である。
また戸速度検出部22では、パルスカウントユニット19のカウント値をもとに戸の実速度W21の演算を行う。
【0020】
モータ負荷検出部23は、読み出した速度指令値W11と演算された戸の実速度W21との速度偏差から、速度指令値W11に追従させるために必要なトルク指令値W31を演算し、これを戸駆動制御部24に送る。
ここでトルク指令値W31はPWM信号に変換され、その出力によりゲート信号が発生し、パワー回路が駆動し、モータ11に電圧が加わり、モータ11を回転させスムーズなドア開閉となるように速度制御が行われる。
【0021】
次に、実施の形態1に係わる戸2に対する風圧による過負荷増加を検出する方法について、図4を参照して説明する。
図4は、実施の形態1において風圧による過負荷増加時の波形を示す図である。
図4(a)の速度指令値W11及び実速度W21は、図3(a)に示したものと同様である。
図4(b)において、W31は、通常負荷における戸閉動作時に記憶されたトルク指令値を示す。トルク指令値W31は、標準トルク指令値である。
W41は、そのトルク指令値W31に適したトルク制限値を示す。
また、図4(c)のW51は、トルク指令値W31に対応しており、後述するW52及びW53との比較のための線である。
【0022】
次に、エレベーターシャフト外の気温とシャフト内の気温の温度差が大きい場合、すなわちドラフト現象発生に伴う風圧による過負荷増加の影響を大きく受けている場合、W32のようなトルク指令値となり、その際の通常負荷におけるトルク指令値W31に対する増加パターンはW52のようになり、全閉に進むに従い開口部が狭まるため増加する。
増加パターンW52は、戸全開から戸全閉までの間のトルク指令値W32からトルク指令値W31を差し引いた増加幅の変化パターン(W52=W32−W31)である。
すなわち、戸全開から戸全閉までの間の各点におけるトルク指令値W32とトルク指令値W31との差が増加パターンW52と増加パターンW51との差になる。
さらにエレベーターシャフト外の気温とシャフト内の気温の温度差が大きい場合には、W33のようなトルク指令値および、W53のような通常負荷時のトルク指令値に対する増加パターンとなる。
増加パターンW53は、戸全開から戸全閉までの間のトルク指令値W33からトルク指令値W31を差し引いた増加幅の変化パターン(W53=W33−W31)である。
すなわち、戸全開から戸全閉までの間の各点におけるトルク指令値W33とトルク指令値W31との差が増加パターンW53と増加パターンW51との差になる。
エレベーターシャフト外の気温とシャフト内の気温の温度差が大きい場合のトルク指令値W32、W33に適したトルク制限値は、W42およびW43に示すようになり、通常負荷時のトルク指令値W31に対して、大きく裕度を持つ必要がでてくる。
【0023】
このように、エレベーターシャフト外の気温とシャフト内の気温の温度差が大きい場合の通常負荷時のトルク指令値に対する増加パターンを照らし合わせることにより、風圧による過負荷増加を検出することができる。
すなわち、温度比較部25により数値化されたエレベーターシャフト内外の温度差に基づき、予測増加パターン算出部29がドラフト現象発生に伴う風圧によるトルク指令値の増加幅の予測パターンを算出し、実測増加パターン算出部30がモータ負荷検出部23により出力される実際のトルク指令値の標準トルク指令値に対する増加幅の実測パターンを算出し、トルク指令値比較部26が予測パターンと実測パターンとを比較し、両パターンの傾きが一致していれば、ドラフト現象に起因する風圧による過負荷増加と判定することができる。
【0024】
次に、実施の形態1に係わる戸2の風圧による過負荷増加を検出する手順について、図5を参照して説明する。
図5は、実施の形態1において戸2に対する風圧による過負荷増加を検出する方法の手順を示すフローチャートである。
なお、図5に示すフローとは別ルーチンで一定周期ごとにシャフト内温度検出部14がエレベーターシャフト内の温度を検出し、外気温検出部15がエレベーターシャフト内の温度を検出し、温度比較部25がエレベーターシャフト内外の温度を比較し、エレベーターシャフト内外の温度差を数値化しているものとする(気象状態比較ステップ)。
図5のフローにおいて、まず、S101で戸2が戸閉動作中であることを判断し、戸閉動作中であればS102へ進み、戸閉動作中で無い場合はS101を繰り返す。なお、図5では、戸閉動作中の処理例を説明するが、戸開動作においても図5と同様の手順を適用できる。
戸閉動作中である場合(S101でYES)、S102において、温度比較部25がエレベーターシャフト内外の温度差を閾値と比較し、閾値未満の場合(S102でNO)は風圧による過負荷増加が発生しない状態と判断し、S101へ戻る。
温度差が閾値を超える場合(S102でYES)は、風圧による過負荷増加が発生する状態にあると判断し、S103へ進む。
【0025】
S103では、予測増加パターン算出部29が、シャフト内外の温度差に基づく風圧による過負荷増加時のトルク指令値の増加幅の予測パターン(例えば、パターンW52、W53のいずれか)を算出し(予測トルク指令値増加量算出ステップ)、S104へ進む。
予測増加パターン算出部29は、(シャフト内外の温度差)×(所定の係数)という計算を行って、トルク指令値の増加幅の予測パターンを算出する。
S104では、実測増加パターン算出部30が、現在と通常負荷時のトルク指令値の差であるトルク指令値の増加幅の実測パターン(例えば、パターンW51〜W53のいずれか)を算出する(実測トルク指令値増加量算出ステップ)。
実測増加パターン算出部30は、(戸の現在位置におけるトルク指令値の増加幅)/(戸の位置移動量)を計算して、トルク指令値の増加幅の実測パターンを算出する。
戸の現在位置におけるトルク指令値の増加幅は、(戸の現在位置における実際のトルク指令値)−(戸の現在位置における標準トルク指令値W31)から求められる。
続いて、S105では、トルク指令値比較部26が、S103において温度差から算出された風圧による過負荷増加時の予測パターンの傾きと、現在のトルク指令値の増加幅の実測パターンの傾きを比較し、同じであれば、風圧による過負荷増加の発生と判断し(S106)、S101へ戻る。もし、傾きが異なれば、別の要因と判断し、S101へ戻る。
【0026】
このように、本実施の形態に係るエレベータードア制御装置は、エレベーターシャフト内外の温度差より求まる過負荷増加の予測パターンの傾きから、風圧による過負荷増加を検出することができる。
そして、風圧による過負荷増加を検出することで、風圧による過負荷増加を即時に判断し、制御に反映することができる。
【0027】
なお、図5のフローにおいて、S103で一度予測パターンを算出した後は、算出した予測パターンをRAM18に格納しておけば、シャフト内外の温度差に大幅な変化がない限り、RAM18に格納している予測パターンを用いればよく、予測パターンを繰り返し算出しなくてもよい。
【0028】
また、以上の説明では、トルク指令値の増加幅の予測パターン(傾き)と実際のトルク指令値の増加幅の実測パターン(傾き)とを比較して、風圧による過負荷増加を検出することとしていたが、戸の現在位置におけるトルク指令値の予測増加幅及び戸の現在位置におけるトルク指令値の実際の増加幅を算出し、これらを比較して、風圧による過負荷増加を検出するようにしてもよい。
すなわち、(シャフト内外の温度差)×(所定の係数)×(戸の現在位置)という計算により、ドラフト発生に伴う風圧による過負荷時のトルク指令値の推定増加幅を求め、(戸の現在位置におけるトルク指令値の増加幅)/(戸の位置移動量)+(戸開閉開始位置のけるトルク指令値)という計算により現在のトルク指令値の標準トルク指令値W31に対する実際の増加幅を求め、両者を比較して両者が所定の範囲内で一致すれば、風圧によりトルク指令値が増加していると判断することができる。
【0029】
以上、本実施の形態では、エレベーターの出入口に設置された戸をモータによって開閉駆動するエレベータードア制御システムについて説明した。
より具体的には、予め保存されている正常負荷時のトルク指令値と、上記戸を戸閉又は戸開駆動中のトルク指令値を比較し、増加パターンを算出する手段と、エレベーターシャフト内外の温度を検出し、温度差を算出する手段と、上記エレベーターシャフト内外の温度差が広がった場合に、シャフト内外の温度差に基づく風圧による過負荷増加の予測パターンと上記トルク指令値の増加パターンを比較し、風圧による過負荷増加を検出する手段とを備えたエレベータードア制御システムについて説明した。
【0030】
実施の形態2.
図6は、この発明の実施の形態2に係わるエレベータードア制御システムの制御ユニット及びその周辺装置の機能ブロック図である。
この発明の実施の形態2に係わるエレベータードア制御システムは、実施の形態1に係わるエレベータードア制御システム1とは、制御ユニット16Bが異なっており、それ以外は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記して説明は省略する。
実施の形態2に係わる制御ユニット16Bは、実施の形態1に係わる制御ユニット16とは、階床係数算出部27が異なっており、それ以外は同様であるので同様な部分に同じ符号を付記して説明は省略する。
制御ユニット16Bは、実施の形態1における制御ユニット16の機能に加えて、風圧による過負荷増加発生時において、階床が異なることによる負荷の増分を補正するための係数を算出する階床係数算出部27を備える。
そして、本実施の形態では、予測増加パターン算出部29は、温度比較部25により数値化されたエレベーターシャフト内外の温度差とエレベータードアの制御が行われる階床高に対応する係数とに基づき、トルク指令値の予測増加幅の変化パターンを算出する。
【0031】
図7において、戸2に対して階床によって異なる風圧による過負荷増加時の波形動作について、説明する。
図7は、実施の形態2において階床が異なる場合における風圧発生時の波形を示す図である。
図7(a)の速度指令値W11及び実速度W21は、図3(a)に示したものと同様である。
図7(b)において、W31は、通常負荷における戸閉動作時に記憶したトルク指令値を示す。
次に、W32は、エレベーターシャフト外の気温とシャフト内の温度の差が大きい場合、すなわちドラフト現象発生に伴う風圧による過負荷増加の影響を大きく受けている場合における低層階のトルク指令値を示す。
図7(c)のW52は、その際の通常負荷におけるトルク指令値からの増加パターンを示す。
このようなケースにおいて、エレベーターシャフト外の気温とシャフト内の温度差が大きい場合、高層階でのトルク指令値はドラフト現象の特性上W34に示すようになり、通常負荷におけるトルク指令値からの増加パターンはW54のようになる。
そのため、エレベーターシャフト外の気温とシャフト内の温度差が大きい場合の通常負荷におけるトルク指令値からの増加パターンの傾きを照らし合わせる際には、この階床による増分を考慮し、予測増加パターンはW52ではなくW54を用いることにより、風圧による過負荷増加を精度よく検出することができる。
【0032】
次に実施の形態2の動作について、図8を参照して説明する。
図8は、実施の形態2において階床が異なる場合を想定した風圧による過負荷検出の手順を示すフローチャートである。
実施の形態2に係わる手順のうち、S201からS205までは実施の形態1に係わる手順のS101からS105と同様であり、異なる手順であるS206について、説明する。
S202においてエレベーターシャフト内外の温度差を閾値と比較し、閾値未満の場合は、風圧による過負荷増加が発生する状態と判断し、S203にて、予測増加パターン算出部29が温度差に基づく風圧による過負荷予測パターンを算出するとともに、S204にて、実測増加パターン算出部30が現在と通常負荷時のトルク指令値におけるトルク増加のパターンを算出し、S206へ進む。
S206では、予測増加パターン算出部29が、その風圧による過負荷増加の予測パターンに対して階床を基にした係数を掛け合わせる。当該階床数に対応する係数は、階床係数算出部27が算出する。階床係数算出部27は、例えば、戸開動作又は戸閉動作が行われる階床数の情報を入出力ポート17を介してエレベーター制御装置13から入力し、入力した階床数の情報に基づき階床係数を算出する。
続いて、S205では、トルク指令値比較部26が、S206において算出された風圧による過負荷増加予測パターンの傾きと、S204にて算出された現在のトルク増加パターンの傾きを比較し、同じであれば、風圧による過負荷増加の発生と判断し(S207)、S201へ戻る。
【0033】
このようなエレベータードア制御装置は、エレベーターシャフト内外の温度差より求まる過負荷増加の予測パターンの傾きに対して、階床に基づく係数を掛け合わせることにより、風圧による過負荷増加の検出を、より精度よく行うことができる。
【0034】
なお、本実施の形態においても、トルク指令値の増加幅の予測パターン(傾き)と実際のトルク指令値の増加幅の実測パターン(傾き)の代わりに、戸の現在位置におけるトルク指令値の予測増加幅及び戸の現在位置におけるトルク指令値の実際の増加幅を算出し、これらを比較して、風圧による過負荷増加を検出するようにしてもよい。
このときに、エレベータードアの開動作又は閉動作を行う階床高に対応した係数を用いてトルク指令値の予測増加幅を算出する。
【0035】
以上、本実施の形態では、予測パターンに対して、戸開閉の対象となる階床に基づく係数を掛け合わせ、その風圧による過負荷増加の予測パターンと、現在のトルク指令値における通常負荷時からの増加パターンとを比較し、風圧による過負荷を検出する手段を備えるエレベータードア制御システムについて説明した。
【0036】
実施の形態3.
図9は、この発明の実施の形態3に係わるエレベータードア制御システムの制御ユニット及びその周辺装置の機能ブロック図である。
この発明の実施の形態3に係わるエレベータードア制御システムは、実施の形態2に係わるエレベータードア制御システム1と制御ユニット16Cが異なっており、それ以外は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記して説明は省略する。
実施の形態3に係わる制御ユニット16Cは、実施の形態1に係わる制御ユニット16とトルク制限値制御部28が異なっており、それ以外は同様であるので同様な部分に同じ符号を付記して説明は省略する。
制御ユニット16Cは、実施の形態1における制御ユニット16の機能に加えて、風圧による過負荷増加時において既存のトルク制限値に対して過負荷増加の予測パターンを加算するトルク制限値制御部28を備える。
トルク制限値制御部28は、トルク指令値比較部26によりトルク指令値の増加がエレベータードアを流通する気流の風圧増加による増加であると判定された場合に、予測増加パターン算出部29により算出された予測パターンに基づき、トルク指令値を制限するトルク制限値を補正する。
トルク制限値制御部28は、トルク制限値補正部の例である。
本実施の形態では、温度比較部25、予測増加パターン算出部29、実測増加パターン算出部30、トルク指令値比較部26及びトルク制限値制御部28がエレベータードア制御装置を構成する。
【0037】
図10において、戸2に風圧による過負荷が加えられた場合にトルク制限値を制御した波形動作について、説明する。
図10は、実施の形態3において風圧による過負荷が加えられた場合のトルク制限値制御時の波形を示す図である。
図10(a)の速度指令値W11及び実速度W21は、図3(a)に示したものと同様である。
図10(b)において、W31は、通常負荷における戸閉動作時に記憶したトルク指令値を示す。
W41は、そのトルク指令値W31に適したトルク制限値を示す。
次に、W33は、エレベーターシャフト外の気温とシャフト内の温度差が大きい場合のトルク指令値であり、W43はそのトルク指令値W33に適したトルク制限値である。
また、通常負荷におけるトルク指令値に対する過負荷増加の予測パターンは、W53に示す。
ここで、W41に示したトルク制限値に対して、W53に示した風圧による過負荷増加の予測パターンを加算することで、トルク制限値を風圧による過負荷の大きさに応じて可変するトルク制限値W44を求めることができる。
【0038】
次に実施の形態3の動作について、図11を参照して説明する。
図11は、実施の形態3において風圧による過負荷増加の予測パターンを元にトルク制限値を補正する方法の手順を示すフローチャートである。
実施の形態3に係わる手順のうち、S301からS306までは実施の形態2に係わる手順のS201からS206と同様であり、異なる手順であるS307からS309について、説明する。
まず、S307において、トルク制限値制御部28が、既存のトルク制限値W41を読み出す。
次に、S302において、温度比較部25が、エレベーターシャフト内外の温度差を閾値と比較し、閾値未満の場合は風圧による過負荷増加が発生しない状態と判断し、S309へ進み、読み出されたトルク制限値はそのまま適用される。
温度差が閾値を超える場合は、風圧による過負荷増加が発生する状態と判断し、S303へ進む。
S303では、予測増加パターン算出部29が、シャフト内外の温度差と戸の現在位置に基づく風圧による過負荷増加の予測パターンを算出し、S304へ進む。
S304では、実測増加パターン算出部30が、現在と通常負荷時のトルク指令値におけるトルク増加のパターンを算出し、S306へ進む。
S306では、予測増加パターン算出部29が、風圧による過負荷増加の予測パターンに対して階床を基にした係数を掛け合わせる。
続いて、S305では、トルク指令値比較部26が、S306で算出された風圧による過負荷増加時の予測パターンの傾きと、S304で算出された現在のトルク増加パターンの傾きを比較し、同じであれば、風圧による過負荷増加の発生と判断し、S308へ移る。
傾きが異なれば、S309へ進み、読み出されたままのトルク制限値が適用される。
S308では、トルク制限値制御部28が、S307で読み出されたトルク制限値に風圧による過負荷増加時の予測パターンを加算することで、トルク制限値を補正し、S309へ進み、モータ負荷検出部23が、補正されたトルク制限値を適用する。
【0039】
このようなエレベータードア制御装置は、風圧による過負荷の発生を精度よく検出した後に、その過負荷に応じたトルク制限値の補正を行い、最低限の戸開閉力の制限とすることで、戸閉動作における安全でかつスムーズな動特性を実現することができる。
【0040】
以上、本実施の形態では、風圧による過負荷増加を検出した場合に、風圧による過負荷増加の予測パターンに基づきトルク制限値を補正するトルク制限値補正手段を備えるエレベータードア制御システムについて説明した。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】この発明の実施の形態1に係わるエレベータードア制御システムの制御ユニット及びその周辺装置の機能ブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係わるエレベータードア制御システムの構成図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係わる通常動作時の波形図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係わる風圧発生時の波形図である。
【図5】この発明の実施の形態1を示すフローチャートである。
【図6】この発明の実施の形態2に係わるエレベータードア制御システムの制御ユニット及びその周辺装置の機能ブロック図である。
【図7】この発明の実施の形態2に係わる階床が異なる風圧発生時の波形図である。
【図8】この発明の実施の形態2を示すフローチャートである。
【図9】この発明の実施の形態3に係わるエレベータードア制御システムの制御ユニット及びその周辺装置の機能ブロック図である。
【図10】この発明の実施の形態3に係わる風圧発生時のトルク制限値制御時の波形図である。
【図11】この発明の実施の形態3を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0042】
1 エレベータードア制御システム、2 戸、3 戸開閉機構、4 戸駆動機構、5 懸架部材、6 ハンガローラ、7 レール、8 プーリ、9 ベルト、10 連結部材、11 モータ、12 パルスエンコーダ、13 エレベーター制御装置、14 シャフト内温度検出部、15 外気温検出部、16 制御ユニット、17 入出力ポート、18 RAM、19 パルスカウントユニット、20 ROM、21 戸位置検出部、22 戸速度検出部、23 モータ負荷検出部、24 戸駆動制御部、25 温度比較部、26 トルク指令値比較部、27 階床係数算出部、28 トルク制限値制御部、29 予測増加パターン算出部、30 実測増加パターン算出部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータードアの開閉を制御するエレベータードア制御装置であって、
エレベーターシャフト内外の気象状態を比較し、エレベーターシャフト内外の気象状態の差を数値化する気象状態比較部と、
前記気象状態比較部により数値化されたエレベーターシャフト内外の気象状態の差に基づき、エレベータードア開動作時又は閉動作時にエレベータードアを流通する気流の風圧増加によるエレベータードア開動作時又は閉動作時のトルク指令値の予測増加量を予測トルク指令値増加量として算出する予測トルク指令値増加量算出部と、
エレベータードア開動作時及び閉動作時の少なくともいずれかにおいて、エレベータードア開動作時又は閉動作時の標準トルク指令値と、エレベータードア開動作時又は閉動作時の実測トルク指令値とを比較し、標準トルク指令値に対する実測トルク指令値の増加量を実測トルク指令値増加量として算出する実測トルク指令値増加量算出部と、
前記予測トルク指令値増加量算出部により算出された予測トルク指令値増加量と、前記実測トルク指令値増加量算出部により算出された実測トルク指令値増加量とを比較し、実測トルク指令値増加量におけるトルク指令値の増加がエレベータードアを流通する気流の風圧増加による増加であるか否かを判定するトルク指令値比較部とを有することを特徴とするエレベータードア制御装置。
【請求項2】
前記エレベータードア制御装置は、更に、
前記トルク指令値比較部によりエレベータードアを流通する気流の風圧増加によるトルク指令値の増加であると判定された場合に、前記予測トルク指令値増加量算出部により算出された予測トルク指令値増加量に基づき、トルク指令値を制限するトルク制限値を補正するトルク制限値補正部とを有することを特徴とする請求項1に記載のエレベータードア制御装置。
【請求項3】
前記気象状態比較部は、
エレベーターシャフト内外の気象状態の比較として、エレベーターシャフト内外の温度を比較し、エレベーターシャフト内外の温度差を数値化することを特徴とする請求項1又は2に記載のエレベータードア制御装置。
【請求項4】
前記気象状態比較部は、
エレベーターシャフト内外の気象状態の比較として、エレベーターシャフト内外の風速を比較し、エレベーターシャフト内外の風速差を数値化することを特徴とする請求項1又は2に記載のエレベータードア制御装置。
【請求項5】
前記気象状態比較部は、
エレベーターシャフト内外の気象状態の比較として、エレベーターシャフト内外の風圧を比較し、エレベーターシャフト内外の風圧差を数値化することを特徴とする請求項1又は2に記載のエレベータードア制御装置。
【請求項6】
前記予測トルク指令値増加量算出部は、
エレベータードアを流通する気流の風圧増加によるトルク指令値のドア位置ごとの予測増加幅の変化パターンを予測トルク指令値増加量として算出し、
前記実測トルク指令値増加量算出部は、
ドア位置ごとに標準トルク指令値と実測トルク指令値とを比較し、標準トルク指令値に対する実測トルク指令値の実測増加幅の変化パターンを実測トルク指令値増加量として算出することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のエレベータードア制御装置。
【請求項7】
前記予測トルク指令値増加量算出部は、
エレベータードアを流通する気流の風圧増加によるトルク指令値の予測増加幅をドア位置ごとに予測トルク指令値増加量として算出し、
前記実測トルク指令値増加量算出部は、
ドア位置ごとに標準トルク指令値と実測トルク指令値とを比較し、ドア位置ごとに標準トルク指令値に対する実測トルク指令値の実測増加幅を実測トルク指令値増加量として算出することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のエレベータードア制御装置。
【請求項8】
前記予測トルク指令値増加量算出部は、
前記気象状態比較部により数値化されたエレベーターシャフト内外の気象状態の差とエレベータードアの制御が行われる階床高とに基づき、予測トルク指令値増加量を算出することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のエレベータードア制御装置。
【請求項9】
コンピュータが、エレベータードアの開閉を制御するエレベータードア制御方法であって、
コンピュータが、エレベーターシャフト内外の気象状態を比較し、エレベーターシャフト内外の気象状態の差を数値化する気象状態比較ステップと、
前記気象状態比較ステップにより数値化されたエレベーターシャフト内外の気象状態の差に基づき、コンピュータが、エレベータードア開動作時又は閉動作時にエレベータードアを流通する気流の風圧増加によるエレベータードア開動作時又は閉動作時のトルク指令値の予測増加量を予測トルク指令値増加量として算出する予測トルク指令値増加量算出ステップと、
エレベータードア開動作時及び閉動作時の少なくともいずれかにおいて、コンピュータが、エレベータードア開動作時又は閉動作時の標準トルク指令値と、エレベータードア開動作時又は閉動作時の実測トルク指令値とを比較し、標準トルク指令値に対する実測トルク指令値の増加量を実測トルク指令値増加量として算出する実測トルク指令値増加量算出ステップと、
コンピュータが、前記予測トルク指令値増加量算出ステップにより算出された予測トルク指令値増加量と、前記実測トルク指令値増加量算出ステップにより算出された実測トルク指令値増加量とを比較し、実測トルク指令値増加量におけるトルク指令値の増加がエレベータードアを流通する気流の風圧増加による増加であるか否かを判定するトルク指令値比較ステップとを有することを特徴とするエレベータードア制御方法。
【請求項10】
エレベータードアの開閉を制御するコンピュータに、
エレベーターシャフト内外の気象状態を比較し、エレベーターシャフト内外の気象状態の差を数値化する気象状態比較処理と、
前記気象状態比較処理により数値化されたエレベーターシャフト内外の気象状態の差に基づき、エレベータードア開動作時又は閉動作時にエレベータードアを流通する気流の風圧増加によるエレベータードア開動作時又は閉動作時のトルク指令値の予測増加量を予測トルク指令値増加量として算出する予測トルク指令値増加量算出処理と、
エレベータードア開動作時及び閉動作時の少なくともいずれかにおいて、エレベータードア開動作時又は閉動作時の標準トルク指令値と、エレベータードア開動作時又は閉動作時の実測トルク指令値とを比較し、標準トルク指令値に対する実測トルク指令値の増加量を実測トルク指令値増加量として算出する実測トルク指令値増加量算出処理と、
前記予測トルク指令値増加量算出処理により算出された予測トルク指令値増加量と、前記実測トルク指令値増加量算出処理により算出された実測トルク指令値増加量とを比較し、実測トルク指令値増加量におけるトルク指令値の増加がエレベータードアを流通する気流の風圧増加による増加であるか否かを判定するトルク指令値比較処理とを実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項1】
エレベータードアの開閉を制御するエレベータードア制御装置であって、
エレベーターシャフト内外の気象状態を比較し、エレベーターシャフト内外の気象状態の差を数値化する気象状態比較部と、
前記気象状態比較部により数値化されたエレベーターシャフト内外の気象状態の差に基づき、エレベータードア開動作時又は閉動作時にエレベータードアを流通する気流の風圧増加によるエレベータードア開動作時又は閉動作時のトルク指令値の予測増加量を予測トルク指令値増加量として算出する予測トルク指令値増加量算出部と、
エレベータードア開動作時及び閉動作時の少なくともいずれかにおいて、エレベータードア開動作時又は閉動作時の標準トルク指令値と、エレベータードア開動作時又は閉動作時の実測トルク指令値とを比較し、標準トルク指令値に対する実測トルク指令値の増加量を実測トルク指令値増加量として算出する実測トルク指令値増加量算出部と、
前記予測トルク指令値増加量算出部により算出された予測トルク指令値増加量と、前記実測トルク指令値増加量算出部により算出された実測トルク指令値増加量とを比較し、実測トルク指令値増加量におけるトルク指令値の増加がエレベータードアを流通する気流の風圧増加による増加であるか否かを判定するトルク指令値比較部とを有することを特徴とするエレベータードア制御装置。
【請求項2】
前記エレベータードア制御装置は、更に、
前記トルク指令値比較部によりエレベータードアを流通する気流の風圧増加によるトルク指令値の増加であると判定された場合に、前記予測トルク指令値増加量算出部により算出された予測トルク指令値増加量に基づき、トルク指令値を制限するトルク制限値を補正するトルク制限値補正部とを有することを特徴とする請求項1に記載のエレベータードア制御装置。
【請求項3】
前記気象状態比較部は、
エレベーターシャフト内外の気象状態の比較として、エレベーターシャフト内外の温度を比較し、エレベーターシャフト内外の温度差を数値化することを特徴とする請求項1又は2に記載のエレベータードア制御装置。
【請求項4】
前記気象状態比較部は、
エレベーターシャフト内外の気象状態の比較として、エレベーターシャフト内外の風速を比較し、エレベーターシャフト内外の風速差を数値化することを特徴とする請求項1又は2に記載のエレベータードア制御装置。
【請求項5】
前記気象状態比較部は、
エレベーターシャフト内外の気象状態の比較として、エレベーターシャフト内外の風圧を比較し、エレベーターシャフト内外の風圧差を数値化することを特徴とする請求項1又は2に記載のエレベータードア制御装置。
【請求項6】
前記予測トルク指令値増加量算出部は、
エレベータードアを流通する気流の風圧増加によるトルク指令値のドア位置ごとの予測増加幅の変化パターンを予測トルク指令値増加量として算出し、
前記実測トルク指令値増加量算出部は、
ドア位置ごとに標準トルク指令値と実測トルク指令値とを比較し、標準トルク指令値に対する実測トルク指令値の実測増加幅の変化パターンを実測トルク指令値増加量として算出することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のエレベータードア制御装置。
【請求項7】
前記予測トルク指令値増加量算出部は、
エレベータードアを流通する気流の風圧増加によるトルク指令値の予測増加幅をドア位置ごとに予測トルク指令値増加量として算出し、
前記実測トルク指令値増加量算出部は、
ドア位置ごとに標準トルク指令値と実測トルク指令値とを比較し、ドア位置ごとに標準トルク指令値に対する実測トルク指令値の実測増加幅を実測トルク指令値増加量として算出することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のエレベータードア制御装置。
【請求項8】
前記予測トルク指令値増加量算出部は、
前記気象状態比較部により数値化されたエレベーターシャフト内外の気象状態の差とエレベータードアの制御が行われる階床高とに基づき、予測トルク指令値増加量を算出することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のエレベータードア制御装置。
【請求項9】
コンピュータが、エレベータードアの開閉を制御するエレベータードア制御方法であって、
コンピュータが、エレベーターシャフト内外の気象状態を比較し、エレベーターシャフト内外の気象状態の差を数値化する気象状態比較ステップと、
前記気象状態比較ステップにより数値化されたエレベーターシャフト内外の気象状態の差に基づき、コンピュータが、エレベータードア開動作時又は閉動作時にエレベータードアを流通する気流の風圧増加によるエレベータードア開動作時又は閉動作時のトルク指令値の予測増加量を予測トルク指令値増加量として算出する予測トルク指令値増加量算出ステップと、
エレベータードア開動作時及び閉動作時の少なくともいずれかにおいて、コンピュータが、エレベータードア開動作時又は閉動作時の標準トルク指令値と、エレベータードア開動作時又は閉動作時の実測トルク指令値とを比較し、標準トルク指令値に対する実測トルク指令値の増加量を実測トルク指令値増加量として算出する実測トルク指令値増加量算出ステップと、
コンピュータが、前記予測トルク指令値増加量算出ステップにより算出された予測トルク指令値増加量と、前記実測トルク指令値増加量算出ステップにより算出された実測トルク指令値増加量とを比較し、実測トルク指令値増加量におけるトルク指令値の増加がエレベータードアを流通する気流の風圧増加による増加であるか否かを判定するトルク指令値比較ステップとを有することを特徴とするエレベータードア制御方法。
【請求項10】
エレベータードアの開閉を制御するコンピュータに、
エレベーターシャフト内外の気象状態を比較し、エレベーターシャフト内外の気象状態の差を数値化する気象状態比較処理と、
前記気象状態比較処理により数値化されたエレベーターシャフト内外の気象状態の差に基づき、エレベータードア開動作時又は閉動作時にエレベータードアを流通する気流の風圧増加によるエレベータードア開動作時又は閉動作時のトルク指令値の予測増加量を予測トルク指令値増加量として算出する予測トルク指令値増加量算出処理と、
エレベータードア開動作時及び閉動作時の少なくともいずれかにおいて、エレベータードア開動作時又は閉動作時の標準トルク指令値と、エレベータードア開動作時又は閉動作時の実測トルク指令値とを比較し、標準トルク指令値に対する実測トルク指令値の増加量を実測トルク指令値増加量として算出する実測トルク指令値増加量算出処理と、
前記予測トルク指令値増加量算出処理により算出された予測トルク指令値増加量と、前記実測トルク指令値増加量算出処理により算出された実測トルク指令値増加量とを比較し、実測トルク指令値増加量におけるトルク指令値の増加がエレベータードアを流通する気流の風圧増加による増加であるか否かを判定するトルク指令値比較処理とを実行させることを特徴とするプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−12961(P2009−12961A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−179154(P2007−179154)
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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