説明

エレベータ制御装置

【課題】いろいろな非常状態での運転中に救出作業中の消防員等がエレベータのかご内に閉じ込められることを確実に防止できるエレベータ制御装置を提供すること。
【解決手段】本発明一例のエレベータ制御装置は、エレベータを通常運転モードから非常呼び戻し運転モードに切り替える非常呼び出しスイッチ、通常運転モードから一次消防運転モードに切り替える一次消防スイッチおよび一次消防運転モードから二次消防運転モードに切り替える二次消防スイッチを有するスイッチ群と、前記スイッチ群の情報からエレベータの運転モードを切り替えてエレベータ制御を行うエレベータ制御部と、前記エレベータ制御部とは独立し、戸開走行またはエレベータ制御異常を監視して前記エレベータ制御部をコントロールする戸開走行防止部と、前記スイッチ群の情報から運転モードを検出し、前記戸開走行防止部に運転モードを伝える運転モード検出手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータ装置の安全制御装置にかかわり、特に非常時の運転制御に係わるエレベータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エレベータの運転制御とは別個に、エレベータの戸開走行やエレベータ制御装置の監視を行い、これらに異常を検出した場合はエレベータの回路を遮断してエレベータを停止状態にし、その状態を保持することが、安全基準で義務付けられようとしてきている。
【0003】
従って、エレベータ制御装置とは独立した監視装置を設け、戸開走行を検出器で検出し戸開異常判別回路で異常を検出した場合、戸開状態でそのまま走行することを防止する(例えば特許文献1)。
【0004】
このように戸開走行などエレベータの異常を検出した場合、エレベータ駆動回路を遮断してエレベータを停止させ、保守員が復帰作業をするまで停止状態を保持させなければならない。それゆえ、消火活動や地震発生時の非常運転モードでエレベータを運転している際にエレベータに異常が発生した場合にも、エレベータは停止してしまう。異常発生後、安全性が確保されエレベータ制御装置の再起動が可能となった場合にも、監視装置による停止保持によってエレベータは保守員が到着するまで走行することはできず、救出作業中の消防員等がエレベータのかご内に閉じ込められるおそれがある。
【0005】
このような問題に対して、通常のエレベータ運転制御手段とは別にエレベータ異常動作に対する監視制御プログラムを独立に設定し、このプログラムがエレベータの異常動作の発生を検出したとき上記エレベータ運転制御手段に運転停止命令を出力する異常動作監視手段を有し、1次又は2次消防運転スイッチからの操作信号を入力している場合に、上記異常動作監視手段が出力した運転停止指令を無効化する手段を有する非常用エレベータ制御システムが知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−154988号公報
【特許文献2】特開2009−62127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に開示されるシステムでも、保守員が到着しない段階で防災センタの係員が手動によりエレベータを動かすことは可能であるが、多様な非常状態に必ずしも柔軟に対応できないという問題があった。
【0008】
そこで本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、いろいろな非常状態での運転中に救出作業中の消防員等がエレベータのかご内に閉じ込められることを確実に防止できるエレベータ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1によれば、エレベータを通常運転モードから非常呼び戻し運転モードに切り替える非常呼び出しスイッチ、通常運転モードから一次消防運転モードに切り替える一次消防スイッチおよび一次消防運転モードから二次消防運転モードに切り替える二次消防スイッチを有するスイッチ群と、前記スイッチ群の情報からエレベータの運転モードを切り替えてエレベータ制御を行うエレベータ制御部と、前記エレベータ制御部とは独立し、戸開走行またはエレベータ制御異常を監視して前記エレベータ制御部をコントロールする戸開走行防止部と、前記スイッチ群の情報から運転モードを検出し、前記戸開走行防止部に運転モードを伝える運転モード検出手段と、を有することを特徴とするエレベータ制御装置を提供する。
【0010】
また、請求項3によれば、エレベータを通常運転モードから非常呼び戻し運転モードに切り替える非常呼び出しスイッチ、通常運転モードから一次消防運転モードに切り替える一次消防スイッチおよび一次消防運転モードから二次消防運転モードに切り替える二次消防スイッチを有するスイッチ群と、前記スイッチ群の情報からエレベータの運転モードを切り替えてエレベータ制御を行うエレベータ制御部と、前記エレベータ制御部とは独立し、戸開走行またはエレベータ制御異常を監視して前記エレベータ制御部をコントロールする戸開走行防止部と、前記スイッチ群の情報から運転モードを検出し、前記戸開走行防止部に運転モードを伝える運転モード検出手段と、前記戸開走行防止部が検出したエレベータ制御異常状態を記憶する異常状態記憶手段を有することを特徴とするエレベータ制御装置を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によるエレベータ制御装置によれば、いろいろな非常状態での運転中に救出作業中の消防員等がエレベータのかご内に閉じ込められることを確実に防止できるエレベータ制御装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るエレベータ制御装置のブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るエレベータ制御装置のフローチャートである。
【図3】本発明の第2の実施形態に係るエレベータ制御装置のブロック図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るエレベータ制御装置のフローチャートである。
【図5】本発明の第3の実施形態に係るエレベータ制御装置のブロック図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係るエレベータ制御装置のフローチャートである。
【図7】本発明の第4の実施形態に係るエレベータ制御装置のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係るエレベータ制御装置のブロック図である。本発明のこの実施形態のエレベータ制御装置は、エレベータの運転制御を行うエレベータ制御部11と、エレベータ制御部11とは独立してエレベータの戸開走行を始めとするエレベータ制御の異常を監視する戸開走行防止部12とからなり、更に非常時に使用される非常呼び出しSW(スイッチ)13と消防時に使用される一次消防SW14および二次消防SW15の操作情報を検出してエレベータの運転モードを検出する運転モード検出部16から構成される。
【0015】
非常呼び戻し運転モードでは、すべての呼びをキャンセルし、避難階又はその直上階若しくは直下階の呼び戻し階へ直行させる。一次消防運転モードでは乗場呼びが無効になり、他階で呼ばれても応じることなく目的階まで直行させる一種の専用運転となる。二次消防運転モードでは乗場の戸閉走行防止回路が無効となり、乗りかご又は乗場の扉が閉まらない状態であっても走行可能になる。
【0016】
非常呼び出しSW13は、例えば防災センタなどにある監視盤17やエレベータホール18に設置され、このスイッチ13を操作することによって非常時であることをエレベータ制御部11と運転モード検出部16に伝えることができる。
【0017】
一次消防SW14と二次消防SW15はエレベータの乗りかご19に設置され、これらのスイッチを操作することによって消防時であることをエレベータ制御部11と運転モード検出部16に伝えることができる。
【0018】
通常のエレベータ装置では、非常呼び出しSW13、一次消防SW14、および二次消防SW15のどれかが操作された場合、エレベータ制御部11がエレベータ運転モードを非常運転モードと認識する。しかし、本実施形態では、運転モード検出部16にもこれらのスイッチからの情報が伝送され、しかもその運転モードは戸開走行防止部12に伝達される構成になっている。
【0019】
図2は本発明の第1の実施形態に係るエレベータ制御装置のフローチャートである。
【0020】
この図は戸開走行防止部12の非常時の制御フローを示しており、非常時のエレベータの制御動作を説明する。
【0021】
例えば火災や地震などの災害が発生した場合に、非常呼び出しSW13、一次消防SW14、および二次消防SW15のいずれかのSWが操作される(S201/Yes)。これにより運転モード検出部16は、非常運転モードであると検知する(S202)。このときステップS203では、戸開走行防止部12でエレベータの制御異常を検出した場合、すなわちS203でYesのとき、エレベータ制御部11のエレベータ駆動回路を遮断することを行わない(S204)。
【0022】
よって乗りかごは走行を続けることが可能である。エレベータの制御異常を検出しなければ、すなわちステップS203でNoのとき、ステップS201に戻り、非常呼び出しSW13、一次消防SW14、および二次消防SW15のいずれかの操作スイッチの操作がないかの検出を行う。
【0023】
非常呼び出しSW13、一次消防SW14、および二次消防SW15のいずれかの操作スイッチがオンがされていなければ、すなわちステップS201でNoのとき、エレベータ運転モードを通常運転モードと認識する(S205)。
【0024】
このとき、ステップS206で戸開走行防止部12が異常を検出した場合すなわちステップS206でYesの場合、戸開走行防止部12はエレベータ制御部11のエレベータ駆動回路を遮断(S207)して、エレベータを停止する(S208)。ステップS206において戸開走行防止部12で異常を検出しない場合、すなわちステップS206においてNoのとき、ステップS201に戻り、非常呼び出しSW13、一次消防SW14、および二次消防SW15のいずれかの操作スイッチがオンの状態となっていないかの検出を行う。
【0025】
このように構成されたエレベータ制御装置によれば、運転モード検出部は、非常呼び出しSW、一次消防SW、二次消防SWのいずれかのSWがONとされた場合にエレベータが通常運転モードから非常運転モードになったことを検知し、戸開走行防止部に運転モード情報を伝達する。これにより、戸開走行防止部がエレベータの戸開走行またはエレベータの制御異常を検出した場合においても、運転モード検出部がエレベータの非常運転モードを検出中であれば、エレベータ駆動回路を遮断しないことができる。したがって、救出作業中の消防員等がエレベータの乗りかご内に閉じ込められた場合や、救出階に到着した後のエレベータ使用が不可能な状態を防止できるという効果を有する。
【0026】
<第2の実施形態>
図3は、本発明の第2の実施形態に係るエレベータ制御装置のブロック図である。本実施形態においては、第1の実施形態の構成に加え、非常運転時にエレベータ制御異常が発生した場合、その異常状態を記憶する異常状態記憶部を有する。これにより、異常状態が検出された後電源が切れても、それらの異常状態を示す信号は異常状態記憶部に記憶されているのでどのような異常状態であったかを検出できる。
【0027】
このエレベータ制御装置は、エレベータの運転制御を行うエレベータ制御部11と、このエレベータ制御部11とは独立してエレベータの戸開走行を始めとするエレベータ制御の異常を監視する戸開走行防止部12と、非常時に使用される非常呼び出しSW(スイッチ)13と消防時に使用される一次消防SW14および二次消防SW15の操作情報を検出してエレベータの運転モードを検出する運転モード検出部16と、戸開走行防止部12が検出するエレベータの戸開走行を始めとするエレベータ制御異常を記憶する異常状態記憶部31から構成される。
【0028】
非常呼び出しSW13は、防災センタなどにある監視盤17やエレベータホール18に設置され、これらのスイッチをONにすることによって非常時信号をエレベータ制御部11と運転モード検出部16に伝送することができる。
【0029】
一次消防SW14と二次消防SW15はエレベータの乗りかご19に設置され、これらのスイッチをONすることによって消防信号を伝送し、消防時であることをエレベータ制御部11と運転モード検出部16に伝送することができる。
【0030】
通常のエレベータ装置では、非常呼び出しSW13、一次消防SW14、および二次消防SW15のどれかがONとされた場合、エレベータ制御部11がエレベータ運転モードを非常運転モードと認識する。これに対して本実施形態では、運転モード検出部16にもこれらのSW情報が接続され、しかもその運転モードは戸開走行防止部12に伝達される構成になっている。
【0031】
図4は、本発明の第2の実施形態に係るエレベータ制御装置の動作例を示すフローチャートである。この図は戸開走行防止部12の非常時の制御フローを示しており、非常時のエレベータ装置の制御動作を説明する。
【0032】
火災や地震などの災害が発生した場合には、非常呼び出しSW13、一次消防SW14、および二次消防SW15のいずれかがONとされる、すなわちステップS301でYesとなる。これにより運転モード検出部16は、非常運転モードであると検出する(S302)。このとき、ステップS303で示すように戸開走行防止部12でエレベータの制御異常を検出した場合、すなわちステップS303でYesの場合には、エレベータ制御部11のエレベータ駆動回路の遮断を行わない(S304)。よってエレベータ装置の乗りかごは走行を続けることが可能である。
【0033】
更に次のステップS305では、異常状態記憶部31により、エレベータの制御異常状態を記憶する。エレベータ装置の制御の異常を検出しない場合、すなわちステップS303において、Noの場合には、ステップS301に戻り、非常呼び出しSW13、一次消防SW14、および二次消防SW15のいずれかの操作スイッチのONとされていないか検出する。
【0034】
非常呼び出しSW13、一次消防SW14、および二次消防SW15のいずれかの操作スイッチがONとされていなければ、すなわちステップS301においてNoのとき、エレベータ運転モードを通常運転モードと認識する(S306)。この際、先の異常状態記憶部31の異常状態履歴を参照し、先に異常状態があったことを記憶している場合、すなわちステップS307でYesのときには、戸開走行防止部12は、エレベータ制御部11に対しエレベータ駆動回路の遮断を行う(S309)。そしてエレベータの乗りかごが停止する(S310)。
【0035】
一方、ステップS307で異常状態の履歴がない場合、すなわちステップS307においてNoの場合には、更に現在、戸開走行防止部12で異常が検出されているかを判断して、異常が検出されている場合、すなわちステップS308でYesの場合には、戸開走行防止部12は、エレベータ制御部11に対しエレベータ駆動回路の遮断を行う(S309)。そしてエレベータの乗りかごが停止する(S310)。
【0036】
ステップS308でNoの場合、すなわち戸開走行防止部12が異常を検出しない場合には、ステップS301に戻り、非常呼び出しSW13、一次消防SW14、および二次消防SW15のいずれかのスイッチがONされていないか検出する。
【0037】
この第2の実施形態によれば、非常運転モード時にエレベータ制御異常が発生した場合、その異常状態を記憶するようにしているので、電源が遮断され、復帰した場合にも異常状態があったことを検出することが可能である利点がある。
【0038】
<第3の実施形態>
図5は本発明の第3の実施形態に係るエレベータ制御装置のブロック図である。本実施形態と上記第2の実施形態の差異は、地震計を有し、非常運転モードの検出項目に地震の振動検知の追加を行っている点である。
【0039】
この実施形態のエレベータ制御装置は、エレベータの運転制御を行うエレベータ制御部11と、エレベータ制御部11とは独立してエレベータの戸開走行を始めとするエレベータ制御の異常を監視する戸開走行防止部12と、非常時に使用される非常呼び出しSW(スイッチ)13と消防時に使用される一次消防SW14および二次消防SW15の操作情報と、地震計51による地震発生を検出してエレベータの運転モードを検出する運転モード検出部16と、戸開走行防止部12が検出するエレベータの戸開走行をはじめとするエレベータ制御異常を記憶する異常状態記憶部31から構成される。
【0040】
非常呼び出しSW13は、防災センタなどにある監視盤17やエレベータホール18に設置され、これを操作することによって非常時であることをエレベータ制御部11と運転モード検出部16に伝えることができる。
【0041】
一次消防SW14と二次消防SW15はエレベータの乗りかご19に設置され、これらを操作することによって消防時であることをエレベータ制御部11と運転モード検出部16に伝えることができる。
【0042】
地震計51は、エレベータの昇降路52内、例えばピットあるいは機械室が好適である。これにより地震計51がある一定以上の振動を検知した場合に、地震の発生をエレベータ制御部11と運転モード検出部16に伝えることができる。地震管制運転モードでは乗りかごは最寄階まで移動して停止し、扉を開き乗客を避難させる。
【0043】
図6は本発明の第3の実施形態に係るエレベータ制御装置のフローチャートである。この図は地震発生時の戸開走行防止部12の制御フローを示しており、地震発生時のエレベータの制御動作を説明する。
【0044】
地震計51が一定以上の振動を検知した場合、すなわちステップS601においてYesである場合、エレベータ制御部11ではエレベータ運転モードを地震管制運転モードとする。同時に運転モード検出部16にも地震計51の信号が入力されているので、運転モード検出部16は地震管制運転モードであることを認識する(S602)。
【0045】
地震管制運転モードで運転中に戸開走行防止部12が戸開走行などのエレベータ制御異常を検出した場合、すなわちステップS603においてYesの場合、エレベータ制御部11のエレベータ駆動回路を遮断せず(S604)、走行を継続させるとともに、異常状態検出部31では、検出した異常状態を記憶する(S605)。
【0046】
一方、ステップS603で、エレベータの制御異常を検出しない場合、すなわちこのステップでNoの場合、ステップS601に戻り、地震計51による地震発生の検知を行う。また、地震の揺れが収まった場合は地震計51の情報はリセットされ(S601/No)、運転モード検出部16では、地震管制運転モードから通常運転モードに切り替わったことが検出される(S606)。このとき、先の異常状態記憶部31の異常状態履歴を参照し、異常状態の履歴を記憶している場合、すなわちステップS607においてYesの場合には、戸開走行防止部12はエレベータ制御部11に対しエレベータ駆動回路の遮断を行う(S609)。そしてエレベータの乗りかごが停止する(S610)。
【0047】
一方、ステップS607で異常状態の履歴がない場合、すなわちNoの場合には、更に現在、戸開走行防止部12でエレベータの制御異常が検出されているかを判断する。異常が検出されている場合、すなわちステップS608においてYesの場合には、戸開走行防止部12は、エレベータ制御部11に対しエレベータ駆動回路の遮断を行う(S609)。そしてエレベータの乗りかごが停止する(S610)。
【0048】
一方、ステップS608で戸開走行防止部12が異常を検出しない場合、すなわちNoの場合には、ステップS601に戻って地震計51による地震発生の検知を行う。
【0049】
上記実施形態では運転モード検出部で地震の発生を検出でき、地震によってエレベータの制御異常が発生してもエレベータ駆動回路を遮断することなく走行を継続することが可能となる。従って最寄階走行中の乗客をかご内に閉じ込めてしまうことを防止できる。また、地震時に発生したエレベータの制御異常状態を記憶しているので、地震の時に停電が生じて、その後通常運転に戻っても制御が異常なままエレベータが走行することを防止することが可能である。
【0050】
<第4の実施形態>
図7は本発明の第4の実施形態に係るエレベータ制御装置のフローチャートである。本実施形態ではエレベータ制御装置の構成は第3の実施形態と同じであるが、非常時SWと組み合わせた制御動作を説明する。
【0051】
震度計51が一定以上の振動を検知した場合、すなわちステップS701においてYesの場合、または地震は検出されていない場合、すなわちステップS701でNoの場合、非常呼び出しSW13、一次消防SW14、および二次消防SW15のいずれかがONとされた場合(ステップS704でYesの場合)、運転モード検出部16がそれぞれ地震管制運転モード(S702)または非常運転モード(S705)を検出して戸開走行防止部12に運転モードを伝達する。
【0052】
戸開走行防止部12が地震管制運転モードまたは非常運転モード情報を受け取った場合には、エレベータの乗りかごの戸開走行などのエレベータ制御異常の監視を中止し、エレベータ走行を可能状態にする(S703)。
【0053】
非常呼び出しSW13、一次消防SW14、および二次消防SW15のいずれかがOFF、すなわちステップS704でNoとなった場合には、通常運転モードとなる(S706)。運転モード検出部16でエレベータの運転モードが切り替わったことを検出した場合、すなわちステップS707でYesの場合には、戸開走行防止部12はエレベータ制御部11の自己診断を行い、自己の正常性をチェックする。(S708)。ステップS707でNoの場合には、エレベータ制御部11の自己診断を行わないで、次のステップS709に移る。
【0054】
ここでの自己診断とは、最初から異常状態が全くなくなっているか確認することである。自己診断のチェックによってエレベータ制御部の異常が検出、すなわちステップS709においてYesとなった場合には、エレベータ駆動回路を遮断して(S710)、エレベータの乗りかごの走行を禁止する(S711)。ステップS709で異常が検出されない場合、すなわちNoの場合にはステップS701に戻る。
【0055】
上記実施形態では、運転モード検出部が非常運転又は地震管制運転モードを検出中には戸開走行防止部による監視を一時中断するが、通常運転に切り替わった際には、エレベータ制御部の自己診断を行うことでエレベータ制御装置の正常性をチェックする。従って、エレベータが異常なまま走行することを防止することができる。
【0056】
以上、本発明によるエレベータ装置によれば、地震の際の非難中や、火災などで消防員等が救出作業などを行う場合に、エレベータのかごが停止するのを防止することが可能である。
【0057】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく種々変形して実施可能であり、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせても良い。本発明の技術思想を用いる限りこれらの変形例も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
11…エレベータ制御部、
12…戸開走行防止部、
13…非常呼び出しスイッチ、
14…一次消防スイッチ、
15…二次消防スイッチ、
16…運転モード検出部、
17…監視盤、
18…ホール、
19…乗りかご、
31…異常状態記憶部、
51…地震計、
52…昇降路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータを通常運転モードから非常呼び戻し運転モードに切り替える非常呼び出しスイッチ、通常運転モードから一次消防運転モードに切り替える一次消防スイッチおよび一次消防運転モードから二次消防運転モードに切り替える二次消防スイッチを有するスイッチ群と、
前記スイッチ群の情報からエレベータの運転モードを切り替えてエレベータ制御を行うエレベータ制御部と、
前記エレベータ制御部とは独立し、戸開走行またはエレベータ制御異常を監視して前記エレベータ制御部をコントロールする戸開走行防止部と、
前記スイッチ群の情報から運転モードを検出し、前記戸開走行防止部に運転モードを伝える運転モード検出手段と、を有することを特徴とするエレベータ制御装置。
【請求項2】
前記運転モード検出手段がエレベータの非常運転モードを検出中に、前記戸開走行防止部がエレベータの戸開走行またはエレベータの制御異常を検出した場合、前記戸開走行防止部は、前記エレベータ制御部のエレベータ駆動回路の遮断を行わないことを特徴とする請求項1記載のエレベータ制御装置。
【請求項3】
エレベータを通常運転モードから非常呼び戻し運転モードに切り替える非常呼び出しスイッチ、通常運転モードから一次消防運転モードに切り替える一次消防スイッチおよび一次消防運転モードから二次消防運転モードに切り替える二次消防スイッチを有するスイッチ群と、
前記スイッチ群の情報からエレベータの運転モードを切り替えてエレベータ制御を行うエレベータ制御部と、
前記エレベータ制御部とは独立し、戸開走行またはエレベータ制御異常を監視して前記エレベータ制御部をコントロールする戸開走行防止部と、
前記スイッチ群の情報から運転モードを検出し、前記戸開走行防止部に運転モードを伝える運転モード検出手段と、
前記戸開走行防止部が検出したエレベータ制御異常状態を記憶する異常状態記憶手段を有することを特徴とするエレベータ制御装置。
【請求項4】
前記運転モード検出手段においてエレベータの運転モードが非常運転モードから通常運転モードに切り替わったことを検知した場合に、前記異常状態記憶手段がエレベータ異常を記憶している場合には、前記戸開走行防止部がエレベータ駆動回路の遮断を行うことを特徴とする請求項3記載のエレベータ制御装置。
【請求項5】
前記スイッチ群に、地震の発生を感知する地震計により地震管制運転モードに切り替えるためのスイッチを、更に有することを特徴とする請求項1または3記載のエレベータ制御装置
【請求項6】
前記地震計により一定以上の振動を検知した場合に、前記運転モード検出手段はエレベータが通常運転モードから地震管制運転モードとなったことを検知するとともに、前記戸開走行防止部に運転モード情報を伝達し、前記運転モード検出手段がエレベータの地震管制運転モード情報を検出中に、前記戸開走行防止部がエレベータの戸開走行またはエレベータの制御異常を検出した場合においてはエレベータ駆動回路の遮断を行わず、前記運転モード検出手段が地震管制運転モードから通常運転モードに切り替わったことを検知した場合に前記異常状態記憶手段がエレベータ異常状態を記憶している場合は、前記戸開走行防止部はエレベータ駆動回路の遮断を行うことを特徴とする請求項5記載のエレベータ制御装置。
【請求項7】
前記運転モード検出手段が非常運転モードまたは地震管制運転モードを検知中の場合は、前記戸開走行防止部の監視を一次中断し、前記運転モード検出手段が通常運転モードに切り替わったことを検知した場合には、前記戸開走行防止部がエレベータ制御部の自己診断を行う機能を有することを特徴とする請求項5記載のエレベータ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−46494(P2011−46494A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−196907(P2009−196907)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】