説明

エレベータ用巻上機の制動装置

【課題】巻上機を大型化することなくブレーキドラムの外周側に複数のアームを設けたエレベータ用巻上機の制動装置を得る。
【解決手段】エレベータ用巻上機の制動装置は、回転可能なブレーキドラムと、ブレーキドラムの外周面に摩擦材を押付けたり、引離したりする駆動部と、駆動部が設けられた複数のアームと、アームの一端部が回動可能に取付けられるとともに、ブレーキドラムの外周側に設けられた第1の取付部と、アームの他端部が締結、解放可能に取付けられるとともに、ブレーキドラムの外周側に設けられた第2の取付部と、を備え、少なくとも1つの第1の取付部には、2つのアームの一端部が同一回転軸心の回りに回動可能に取り付けられたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレベータ用巻上機の制動装置に係り、特にブレーキドラムの外周側に複数の摩擦材を備えたエレベータ用巻上機の制動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレベータ用巻上機の制動装置では、ハウジングに軸を立設し、乗りかごを懸架した綱車とブレーキドラムが一体に回転可能となるように軸に設けている。また、ハウジングにはブレーキドラムの外周面に対向するようにアームを設けている。そして、アームの中間部には摩擦材を設けており、この摩擦材をブレーキドラムに押付けたり、引離したりしてブレーキドラムを制動、解放している。
【0003】
アームの一端部はハウジングに設けた第1の取付部に回動可能に取付けられ、他端部はハウジングに設けた第2の取付部にボルトで締結している。
保守時には第2の取付部のボルトを外してアームを回動し、摩擦材の清掃、交換などを行う。
(例えば、特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第11/004543号(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、必要とされる制動能力を得るために、例えば4本のアームをハウジングに設けなければならないことがある。そして、各アームにはそれぞれ第1の取付部と第2の取付部が必要になる。つまり4本のアームにそれぞれ2箇所づつ、合計8箇所の取付部を設けるスペースがハウジングに必要となるため、巻上機が大型化するという課題があった。
【0006】
本発明は、かかる問題を解決するためになされたもので、巻上機を大型化することなくブレーキドラムの外周側に複数のアームを設けたエレベータ用巻上機の制動装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るエレベータ用巻上機の制動装置は、回転可能なブレーキドラムと、ブレーキドラムの外周面に摩擦材を押付けたり、引離したりする駆動部と、駆動部が設けられた複数の回動部材と、回動部材の一端部が回動可能に取付けられるとともに、ブレーキドラムの外周側に設けられた第1の取付部と、回動部材の他端部が締結、解放可能に取付けられるとともに、ブレーキドラムの外周側に設けられた第2の取付部と、を備え、少なくとも1つの第1の取付部には、2つの回動部材の一端部が同一回転軸心の回りに回動可能に取り付けられている。
【0008】
本発明によれば、ブレーキドラムの外周側に設けた第1の取付部には回動部材の一端部を回動可能に取付け、第2の取付部には回動部材の他端部を締結、解放可能に取付けている。このとき、2つの回動部材が同一回転軸心の回りに回動可能になるように、それぞれの一端部を1つの第1の取付部に取付け、また、2つの回動部材のそれぞれの他端部はそれぞれ別の第2の取付部に取付けている。これにより、第1の取付部の数は回動部材の数の半分で済み、第1の取付部を設けるためにブレーキドラムの外周側に必要となるスペースも半分になる。よって、巻上機を大型化することなくブレーキドラムの外周側に複数の回動部材を設けることができる。
【0009】
本発明に係るエレベータ用巻上機の制動装置は、一端部は孔を有し、第1の取付部はねじ孔を有し、2つの回動部材の一端部の孔に挿通されるとともに1つの第1の取付部のねじ孔に螺合されたボルトを備えていることが好ましい。
【0010】
本発明によれば、2つの回動部材のそれぞれの一端部の孔に挿通するとともに、1つの第1の取付部のねじ孔に螺合したボルトにより、2つの回動部材のそれぞれの一端部を1つの第1の取付部に固定する。また、2つの回動部材のそれぞれの他端部をそれぞれ別の第2の取付部に締結する。そして、この状態で駆動部が摩擦材をブレーキドラムの外周面に押付けたり、引離したりする。また、第1の取付部のボルトを少し緩めるとともに、回動部材の他端部の締結を解放すると、回動部材は第1の取付部のボルトを支点として回動可能となる。
【0011】
したがって、1本のボルトにより2つの回動部材を1つの第1の取付部に取付けることができる。また、第1の取付部に2つの回動部材を固定したり、回動可能にしたりする作業は、1本のボルトを締めたり緩めたりすればよいので簡易にできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、巻上機を大型化することなくブレーキドラムの外周側に複数のアームを設けたエレベータ用巻上機の制動装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態を示すエレベータ用巻上機の制動装置の全体図である。
【図2】図1のエレベータ用巻上機の制動装置の回動部材を回動した図である。
【図3】図1のエレベータ用巻上機の制動装置の矢視Aを示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1.
本発明の一実施の形態を図1〜3により説明する。図1は本発明の一実施の形態を示すエレベータ用巻上機の制動装置の全体図で、回動部材が固定された状態を示している。図2は図1のエレベータ用巻上機の制動装置の回動部材を回動した状態を示している。図3は図1のエレベータ用巻上機の制動装置の矢視Aを示す部分断面図である。
【0015】
図1〜3において、巻上機1の本体であるハウジング5の中央部に突出するように軸7が設けられている。軸7にはエレベータ乗りかご(図示せず)が懸架された綱車(図示せず)と一体に回転可能にブレーキドラム11が設けられている。巻上機1の制動装置2は、軸7の軸心方向に見て左右対称に構成されている。
【0016】
ブレーキドラム11側から見たハウジング5外周部の左右に突出するように、第1の取付部として2箇所の取付部5a,5aが設けられ、取付部5a,5aそれぞれの下方には第2の取付部として2箇所の取付部5b,5bが設けられている。更に、ハウジング5外周部の上部に突出するように、第2の取付部として2箇所の取付部5c,5cが設けられている。
【0017】
このようにブレーキドラム11側から見たハウジング5外周部には、左右対称にそれぞれ上側から取付部5c、取付部5a、取付部5bが設けられている。そして、取付部5cと取付部5aに渡って断面四角形で棒状の回動部材としてのアーム13がブレーキドラム11の外周面11aに対向するように取付けられており、また、取付部5aと取付部5bに渡って断面四角形で棒状の回動部材としてのアーム16が外周面11aに対向するように取付けられている。
【0018】
アーム13の一端部13aの軸7軸心方向厚さは、他の部分の厚さと比べて階段状に一段薄く形成されている。アーム16の一端部16aも軸7軸心方向厚さは、他の部分の厚さと比べて階段状に一段薄く形成されている。そして、階段状に薄くなっている一端部13aと一端部16aとが互い違いに組合さるように重ね合わされて取付部5aに取付けられている。
【0019】
アーム13とアーム16が取付けられている取付部5aには軸7と平行にねじ孔5dが設けられている。そして、一端部13aと一端部16aのそれぞれに設けられた孔13cと孔16cに挿入された1本のボルト20がねじ孔5dに締め込まれている。このように、2本のアーム13とアーム16は、1本のボルト20により1つの取付部5aに取付けられている。また、アーム13の他端部13bはボルト22により取付部5cに取付けられ、アーム16の他端部16bはボルト23により取付部5bに取付けられている。
【0020】
アーム13の中間部には外周面11aに対向するように駆動部14が設けられており、駆動部14に設けらた摩擦材15は、駆動部14により外周面11aに押付けられたり、引離されたりする。また、アーム16の中間部にも同様に外周面11aに対向するように駆動部17が設けられており、駆動部17に設けらた摩擦材18は、駆動部17により外周面11aに押付けられたり、引離されたりする。摩擦材15及び摩擦材18が外周面11aに押付けられたり、引離されたりすることによりブレーキドラム11は制動されたり、解放されたりする。
【0021】
例えば制動装置2の保守時には、ボルト22とボルト23を取外し、ボルト20を少し緩めて、回転軸心としてのボルト20の軸心の回りにアーム13とアーム16をブレーキドラム11から離す向きに回動すると、駆動部14,17、摩擦材15,18の保守が行えるようになる。保守終了後は、アーム13とアーム16をブレーキドラム11の方へ回動して、他端部13bを取付部5cにボルト22により取付け、他端部16bを取付部5bにボルト23により取付け、ボルト20を締めて一端部13aと一端部16aを取付部5aに固定する。これにより制動装置2は稼動可能となる。
【0022】
このように構成されたエレベータ用巻上機1の制動装置2によれば、アーム13とアーム16は、他の部分に比べて軸7軸心方向に階段状に一段厚さが薄く形成されたそれぞれの一端部13aと一端部16aを互い違いに組合せるように重ね合わせたうえで、1本のボルト20により1つの取付部5aに取付ける。そして、アーム13の他端部13bはボルト22により取付部5cに取付け、アーム16の他端部16bはボルト23により取付部5bに取付ける。
【0023】
このため、ブレーキドラム11の外周側にアーム13とアーム16を設けるときに、2つのアーム13とアーム16に対して、取付部5aは1箇所設けるだけで済み、ハウジング5の外周部に取付部5aを設けるために必要となるスペースも1箇所分で済む。よって、ハウジング5の外周部にアーム13とアーム16それぞれの一端部13aと一端部16aを取付ける専用の取付部を設けるスペースが無い場合でも、ハウジング5、つまり巻上機1を大型化して取付部を設けるスペースを確保しなくても、ブレーキドラム11の外周側にアーム13とアーム16を設けることができる。
【0024】
また、1本のボルト20で2つのアーム13とアーム16を1つの取付部5aに取付けることができる。また、取付部5aに2つのアーム13とアーム16を固定したり、回動可能にしたりする作業は、1本のボルト20を締めたり緩めたりすればよいので簡易にできる。
【0025】
なお、本実施の形態では、巻上機1の制動装置2は、軸7の軸心方向に見て左右対称に構成され、アームが左右対称に4つ設けられた場合で説明したが、左右非対称にアームが設けられていても、同様の効果が得られる。また、アームの数が奇数の場合でも、1本のアームを除く、残りの偶数本のアームの取付部については、本実施の形態と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0026】
1 巻上機、 2 制動装置、 5a,5b,5c 取付部、 5d ねじ孔、
11 ブレーキドラム、 11a 外周面、 13,16 アーム、
13a,16a 一端部、 13b,16b 他端部、 13c,16c 孔、
14,17 駆動部、 15,18 摩擦材、 20,22,23 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能なブレーキドラムと、
前記ブレーキドラムの外周面に摩擦材を押付けたり、引離したりする駆動部と、
前記駆動部が設けられた複数の回動部材と、
前記回動部材の一端部が回動可能に取付けられるとともに、前記ブレーキドラムの外周側に設けられた第1の取付部と、
前記回動部材の他端部が締結、解放可能に取付けられるとともに、前記ブレーキドラムの外周側に設けられた第2の取付部と、を備え、
少なくとも1つの前記第1の取付部には、2つの前記回動部材の一端部が同一回転軸心の回りに回動可能に取り付けられていることを特徴とするエレベータ用巻上機の制動装置。
【請求項2】
前記一端部は孔を有し、
前記第1の取付部はねじ孔を有し、
2つの前記回動部材の前記一端部の孔に挿通されるとともに1つの前記第1の取付部のねじ孔に螺合されたボルト
を備えていることを特徴とする請求項1に記載のエレベータ用巻上機の制動装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−112431(P2013−112431A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257555(P2011−257555)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】