説明

エレベータ用電波中継装置及びエレベータ用電波中継装置の設置方法

【課題】設置作業を容易に行うことができ、利便性を向上させることができるエレベータ用電波中継装置及びエレベータ用電波中継装置の設置方法の提供。
【解決手段】昇降路20内を昇降する乗かご15と、この乗かご15が着床する乗場に設けられた出入口21と、この出入口21に開閉可能に設けられた乗場ドア5とを備えたエレベータに適用され、昇降路20の内部と外部との間の通信を中継する通信手段を備え、この通信手段は、昇降路20の内部に設けられ、昇降路20の内部から電波を受信すると共に、昇降路20の内部へ電波を送信する内部電波送受信手段4と、昇降路20の外部に設けられ、昇降路20の外部から電波を受信すると共に、昇降路20の外部へ電波を送信する外部電波送受信手段2と、乗場ドア5が閉扉した際に乗場ドア5に挟持されるように寸法が設定され、各電波送受信手段2,4を接続するケーブル14とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇降路の内部と外部との間の通信を中継する通信手段を備えたエレベータ用電波中継装置及びエレベータ用電波中継装置の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータの利用者が乗かごの内部において携帯電話、PHS等の携帯端末を用い、乗かごの外部の携帯電話、PHS、及び一般家庭用固定電話機等の外部電話機へ電話をかけようとした場合、乗かご自体が鉄製で構成されていることから携帯端末からの電波が鉄板により遮られ、携帯端末のうちほとんどが電波の届かない通話圏外になるか、あるいは通話圏外にならなくても非常に電波が弱くなり、携帯端末の無線通信回線を確立し難い状態となる。
【0003】
そこで、乗かごの内部において携帯端末の無線通信回線を確立するために、建物外部の公衆回線網に接続された基地局との間で電波の送受信が可能な場所に取付けられた外部アンテナと、この外部アンテナからテールコードを介して接続された乗かご内に取付けられたかご内アンテナとを備え、乗かご内の携帯端末と建物外部の電話機との間で通話可能にした携帯端末使用可能なエレベータが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、他の従来技術の1つとして、2つのアンテナ、同軸ケーブル及びコネクタ等からなり、2つのアンテナのうち少なくとも1つをアンテナボックス内に設けることにより、電波を遮蔽する床、壁、間仕切等の建屋内電波遮蔽物の両側の通信を可能にする建屋内無電源電波中継器も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−213032号公報
【特許文献2】特開平11−313022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した特許文献1に開示された従来技術の携帯端末使用可能なエレベータでは、乗かご内にかご内アンテナを設置する他に、かご内アンテナに一端が接続されるテールコードを新たに設けたり、さらにテールコードの他端が接続される中継箱を設置する必要があり、これらのテールコード及び中継箱の設置作業に時間と手間がかかることが問題となっている。また、特許文献2に開示された従来技術の建屋内無電源電波中継器では、建屋内電波遮蔽物、例えば昇降路の内部と外部にそれぞれ設置される2つのアンテナを同軸ケーブル及びコネクタ等で接続するために、昇降路に同軸ケーブルを通す貫通孔を設ける必要があり、各アンテナ及び同軸ケーブルの接続作業が煩雑となっている。
【0007】
なお、エレベータに設置された上述の建屋内無電源電波中継器の使用中にアンテナの設置場所の電波状態が悪くなった場合には、アンテナの設置位置を変更することに伴い、同軸ケーブルを延設したり、あるいは昇降路に新たに貫通孔を設ける作業が必要になる。この場合、当該作業が作業者の負担になるだけでなく、当該作業を行うために既設のエレベータの運転を停止することになるので、昇降路の内部と外部との間の通信接続が完了するまでの間、エレベータを使用することができず、エレベータの利便性が低下する虞がある。
【0008】
本発明は、このような従来技術の実情からなされたもので、その目的は、設置作業を容易に行うことができ、利便性を向上させることができるエレベータ用電波中継装置及びエレベータ用電波中継装置の設置方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明のエレベータ用電波中継装置は、昇降路と、この昇降路内を昇降する乗かごと、この乗かごが着床する乗場に設けられた出入口と、この出入口に開閉可能に設けられ、前記昇降路の内部と外部を区画する乗場ドアとを備えたエレベータに適用され、前記昇降路の内部と外部との間の通信を中継する通信手段を備えたエレベータ用電波中継装置において、前記通信手段は、前記昇降路の内部に設けられ、前記昇降路の内部から電波を受信すると共に、前記昇降路の内部へ電波を送信する内部電波送受信手段と、前記昇降路の外部に設けられ、前記昇降路の外部から電波を受信すると共に、前記昇降路の外部へ電波を送信する外部電波送受信手段と、前記乗場ドアが閉扉した際に前記乗場ドアに挟持されるように寸法が設定され、前記内部電波送受信手段と前記外部電波送受信手段とを接続するケーブルとを有することを特徴としている。
【0010】
このように構成した本発明は、昇降路の内部に内部電波送受信手段を設けると共に、昇降路の外部に外部電波送受信手段を設け、これらの内部電波送受信手段と外部電波送受信手段とを接続するケーブルの寸法を、乗場ドアが閉扉した際に当該ケーブルが乗場ドアに挟持されるように設定しているので、各電波送受信手段に接続されたケーブルを閉扉した乗場ドアで挟み込むように設けることにより、昇降路にケーブルを通す貫通孔を設けなくてもケーブルを乗場ドアで固定した状態で昇降路の内部と外部との間に挿通させることができ、設置作業にかかる時間と手間を省くことができる。
【0011】
また、各電波送受信手段及びケーブルをエレベータに設置した後であっても、乗場ドアを開くことによって挟持されていたケーブルを開放することにより、各電波送受信手段の電波状態を確認しながら各電波送受信手段の設置場所を自由に変更したり、あるいはケーブルの状態を確認できるので、電波送受信手段の電波状態の調整作業やケーブルの交換作業等のメンテナンス作業における作業性を高めることができる。これにより、メンテナンス作業においてエレベータの運転を停止する時間を短く抑えることができ、作業者及び乗客に対する高い利便性を確保することができる。このように、設置作業を容易に行うことができ、利便性を向上させることができる。
【0012】
また、本発明に係るエレベータ用電波中継装置は、前記発明において、前記通信手段は、前記乗場ドアの両側に前記内部電波送受信手段と前記外部電波送受信手段を取付ける取付手段を有し、前記内部電波送受信手段は、前記乗場ドアと前記乗かごとの間の間隔よりも小さい大きさに設定されたことを特徴としている。
【0013】
このように構成した本発明は、乗かごが昇降路内を昇降しても、乗かごが取付手段によって乗場ドアの内側に取付けられた内部電波送受信手段と衝突したり、あるいは接触することを防止できるので、内部電波送受信手段や乗かごが破損することを抑えることができる。これにより、内部電波送受信手段や乗かごを良好な状態で長期に渡って使用することができる。また、昇降中の乗かごが内部電波送受信手段に接触して大きく揺れることを防止できるので、乗かごに乗車している乗客に対して不安を感じさせず、快適な乗かごの運行を実現することができる。これにより、エレベータに対する高い信頼性を確保することができる。
【0014】
また、本発明に係るエレベータ用電波中継装置は、前記発明において、前記取付手段は、前記内部電波送受信手段に設けられた第1の磁石と、前記外部電波送受信手段に設けられ、前記乗場ドアを挟んで前記第1の磁石と対向する位置に配置された第2の磁石とから成ることを特徴としている。
【0015】
このように構成した本発明は、昇降路の内部の内部電波送受信手段と外部の外部電波送受信手段を乗場ドアを挟んで対向させた状態で乗場ドアの内側と外側にそれぞれ接触させることにより、第1の磁石と第2の磁石の磁力によって各電波送受信手段を乗場ドアの両側に固着できるので、各電波送受信手段の取付作業を容易に行うことができ、作業時間を大幅に短縮することができる。また、内部電波送受信手段と外部電波送受信手段を乗場ドアの両側から容易に取外すこともできるので、各電波送受信手段の設置場所を変更するのに手間がかからず、各電波送受信手段の電波状態を調整するのに都合が良い。従って、各電波送受信手段の設置作業及び電波の調整作業における作業能率を向上させることができる。さらに、内部電波送受信手段と外部電波送受信手段を乗場ドアに取付ける取付手段として第1の磁石と第2の磁石を適用することにより、乗場ドアを損傷させることなく各電波送受信手段を乗場ドアに固定することができる。
【0016】
また、本発明に係るエレベータ用電波中継装置は、前記発明において、前記取付手段は、前記乗場ドアに設けられた雌螺子と、前記内部電波送受信手段と前記外部電波送受信手段とを一体に繋ぐ固定具と、この固定具に穿設された貫通孔と、この貫通孔に挿通され、前記雌螺子に螺合する雄螺子が形成された螺子とから成ることを特徴としている。
【0017】
このように構成した本発明は、固定具によって一体に連結された内部電波送受信手段と外部電波送受信手段とを乗場ドアの内側と外側にそれぞれ接触させた状態で保持し、螺子を固定具の貫通孔に通して螺子の雄螺子を乗場ドアの雌螺子に螺合させることにより、固定具と螺子だけで各電波送受信手段を乗場ドアの両側に強固に取付けることができ、安定した固定状態を実現することができる。これにより、取付手段に要する製作コストを安価に抑えることができるので、経済性に優れている。
【0018】
また、本発明に係るエレベータ用電波中継装置の設置方法は、昇降路と、この昇降路内を昇降する乗かごと、この乗かごが着床する乗場に設けられた出入口と、この出入口に開閉可能に設けられ、前記昇降路の内部と外部を区画する乗場ドアとを備えたエレベータに適用され、前記昇降路の内部と外部との間の通信を中継する通信手段を備え、この通信手段は、前記昇降路の内部に設けられ、前記昇降路の内部から電波を受信すると共に、前記昇降路の内部へ電波を送信する内部電波送受信手段と、前記昇降路の外部に設けられ、前記昇降路の外部から電波を受信すると共に、前記昇降路の外部へ電波を送信する外部電波送受信手段と、前記乗場ドアが閉扉した際に前記乗場ドアに挟持されるように寸法が設定され、前記内部電波送受信手段と前記外部電波送受信手段とを接続するケーブルとを有するエレベータ用電波中継装置を設置するエレベータ用電波中継装置の設置方法において、前記内部電波送受信手段を前記昇降路の内部に配置すると共に、前記外部電波送受信手段を前記昇降路の外部に配置する配置工程と、前記内部電波送受信手段及び前記外部電波送受信手段が配置された後に、前記ケーブルを前記出入口に通すと共に、前記ケーブルを前記内部電波送受信手段及び前記外部電波送受信手段に接続する接続工程と、前記内部電波送受信手段及び前記外部電波送受信手段が接続された後に、前記乗場ドアを閉じて前記ケーブルを挟持させる挟持工程とを備えたことを特徴としている。
【0019】
このように構成した本発明は、配置工程において内部電波送受信手段を昇降路の内部に配置すると共に、外部電波送受信手段を前記昇降路の外部に配置した後に、接続工程においてケーブルを乗場の出入口に通し、ケーブルを内部電波送受信手段及び外部電波送受信手段に接続することにより、昇降路に貫通孔を設けなくてもケーブルを乗場の出入口から昇降路の内部と外部との間に挿通させることができ、設置作業を行う作業者の負担を軽減することができる。そして、内部電波送受信手段及び外部電波送受信手段が接続された後に乗場ドアを閉じてケーブルを挟持させることにより、ケーブルを安定的に保持することができる。このように、設置作業を容易に行うことができ、利便性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のエレベータ用電波中継装置及びエレベータ用電波中継装置の設置方法は、昇降路の内部に内部電波送受信手段を設けると共に、昇降路の外部に外部電波送受信手段を設け、乗場ドアが閉扉した際に乗場ドアに挟持されるように寸法が設定されたケーブルを乗場の出入口に通して内部電波送受信手段と外部電波送受信手段に接続し、その後乗場ドアを閉扉することにより、昇降路にケーブルを通す貫通孔を設けなくても乗場ドアの戸閉力によってケーブルを安定的に保持できるので、設置作業にかかる時間と手間を省くことができ、設置作業を簡便に行うことができる。このように、設置作業を容易に行うことができ、利便性を向上させることができるので、従来よりも設置作業において優れた作業性を実現することができ、設置作業にかかる作業者の労力を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係るエレベータ用電波中継装置の第1実施形態が適用されるエレベータの構成を説明する図である。
【図2】本発明に係るエレベータ用電波中継装置の第1実施形態の構成を示す図である。
【図3】本発明に係るエレベータ用電波中継装置の第2実施形態の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るエレベータ用電波中継装置及びエレベータ用電波中継装置の設置方法を実施するための形態を図に基づいて説明する。
【0023】
[第1実施形態]
本発明に係るエレベータ用電波中継装置の第1実施形態は、例えば図1に示すように建物に設置されたエレベータに適用される。このエレベータは、昇降路20と、この昇降路20内を昇降する乗かご15と、この乗かご15が着床する乗場に設けられた図2に示す出入口21と、この出入口21に開閉可能に設けられ、昇降路20の内部と外部を区画する乗場ドア5とを備えている。なお、本発明の第1実施形態では、当該建物から離れた位置に基地局1が設置されている。
【0024】
本発明の第1実施形態は、昇降路20の内部と外部との間の通信を中継する通信手段を備えている。この通信手段は、図1、図2に示すように昇降路20の内部に設けられ、昇降路20の内部から電波を受信すると共に、昇降路20の内部へ電波を送信する内部電波送受信手段4と、昇降路20の外部に設けられ、昇降路20の外部から電波を受信すると共に、昇降路20の外部へ電波を送信する外部電波送受信手段2と、乗場ドア5が閉扉した際に乗場ドア5に挟持されるように寸法が設定され、内部電波送受信手段4と外部電波送受信手段2とを接続するケーブル14とを有している。なお、これらの内部電波送受信手段4及び外部電波送受信手段2は、図示しないバッテリ等の電源によって電力が供給されて動作するようになっている。
【0025】
具体的には、内部電波送受信手段4は、例えば上述したバッテリ等の電源に接続され、昇降路20の内部で作業者等が携帯する通信機器3の電波を受信すると共に、この通信機器3へ電波を送信する内部アンテナ12と、この内部アンテナ12に一体に取付けられ、内部アンテナ12が受信した電波に応じた信号に変換する内部無線通信部13bとを含んでいる。また、外部電波送受信手段2は、例えば上述したバッテリ等の電源に接続され、基地局1から送信された電波を受信すると共に、基地局1へ電波を送信する外部アンテナ11と、この外部アンテナ11に一体に取付けられ、外部アンテナ11が受信した電波に応じた信号に変換する外部無線通信部13aとを含んでいる。そして、これらの内部無線通信部13b及び外部無線通信部13aにケーブル14が接続されている。
【0026】
なお、内部アンテナ12は、例えば下面12aが乗場ドア5に対向するように配置された円錐台の形状に設定され、内部無線通信部13bは、例えば内部アンテナ12の下面12aの直径と同じ大きさの直径を有する円柱の形状に設定されており、内部アンテナ12の下面12aに対して内部無線通信部13bの円形状の端面13b1,13b2のうち端面13b1が合わさって一体となっている。
【0027】
一方、外部アンテナ11は、例えば内部アンテナ12と同様に下面11aが乗場ドア5に対向するように配置された円錐台の形状に設定され、外部無線通信部13aは、例えば外部アンテナ11の下面11aの直径と同じ大きさの直径を有する円柱の形状に設定されており、外部アンテナ11の下面11aに対して外部無線通信部13aの円形状の端面13a1,13a2のうち端面13a1が合わさって一体となっている。
【0028】
また、本発明の第1実施形態では、通信手段は、乗場ドア5の両側に内部電波送受信手段4と外部電波送受信手段2を取付ける後述の取付手段を有し、内部電波送受信手段4は、乗場ドア5と乗かご15との間の間隔よりも小さい大きさに設定されている。そして、前述した取付手段は、例えば内部電波送受信手段4に設けられた第1の磁石16bと、外部電波送受信手段2に設けられ、乗場ドア5を挟んで第1の磁石16bと対向する位置に配置された第2の磁石16aとから成っている。
【0029】
なお、磁石16bは、内部無線通信部13bの端面13b2の直径と同じ大きさの直径を有する円柱の形状に設定されており、内部無線通信部13bの端面13b2に対して磁石16bの円形状の端面16b1,16b2のうち端面16b1が合わさって一体となっている。一方、磁石16aは、外部無線通信部13aの端面13a2の直径と同じ大きさの直径を有する円柱の形状に設定されており、外部無線通信部13aの端面13a2に対して磁石16aの円形状の端面16a1,16a2のうち端面16a1が合わさって一体となっている。そして、磁石16a,16bの端面16a2,16b2は、磁力で互いに引き合って乗場ドア5の両側に接触している。
【0030】
ここで、乗場ドア5は、例えば昇降路20の外部、すなわち乗場から見て左側に配置された左側ドア5Aと、乗場から見て右側に配置された右側ドア5Bと、左側ドア5Aのうち右側ドア5Bに対向する端面5aに設けられた図示しないフックと、右側ドア5bのうち左側ドア5Aに対向する端面5bに設けられ、左側ドア5Aのフックと係合する図示しないフック受けとを有して両開きになっており、左側ドア5A及び右側ドア5Bが閉扉した際に左側ドア5Aのフックが右側ドア5Bのフック受けに係合して施錠するようになっている。
【0031】
そして、左側ドア5A及び右側ドア5Bが閉扉して施錠がされても左側ドア5Aの端面5aと右側ドア5Bの端面5bとの間には若干の隙間があるので、この隙間に合わせてケーブル14の直径が設定されており、左側ドア5A及び右側ドア5Bが閉扉した際にケーブル14がこれらの左側ドア5Aの端面5aと右側ドア5Bの端面5bに挟持されるようになっている。なお、上述した内部電波送受信手段4及び外部電波送受信手段2は、乗場ドア5のうち右側ドア5Bに取付けられている。
【0032】
このように構成した第1実施形態に係るエレベータ用電波中継装置にあっては例えば以下のようにしてエレベータに設置される。
【0033】
本発明の第1実施形態に係るエレベータ用電波中継装置の設置方法の第1実施形態は、内部電波送受信手段4を昇降路20の内部に配置すると共に、外部電波送受信手段2を昇降路20の外部に配置する配置工程と、内部電波送受信手段4及び外部電波送受信手段2が配置された後に、ケーブル14を乗場の出入口21に通すと共に、ケーブル14を内部電波送受信手段4及び外部電波送受信手段2に接続する接続工程と、内部電波送受信手段4及び外部電波送受信手段2が接続された後に、乗場ドア5を閉じてケーブル14を挟持させる挟持工程とを備えている。
【0034】
具体的には、配置工程において一体に形成された内部アンテナ12、内部無線通信部13b、及び磁石16bを昇降路20の内部に配置すると共に、一体に形成された外部アンテナ11、外部無線通信部13a、及び磁石16aを昇降路20の外部に配置し、磁石16aの端面16a2と磁石16bの端面16b2とを、右側ドア5Bを挟んで対向させるように右側ドア5Bの両側に取付ける。
【0035】
次に、接続工程においてケーブル14を乗場の出入口21のうち左側ドア5Aの端面5aと右側ドア5Bの端面5bとの間に通し、ケーブル14の一端を内部無線通信部13bに接続すると共に、他端を外部無線通信部13aに接続する。そして、挟持工程において左側ドア5A及び右側ドア5Bを閉じて各端面5a,5bにケーブル14を挟持させる。
【0036】
これにより、例えば図1に示すようにメンテナンス作業において乗かご15の天井裏に上がった作業者が携帯する通信機器3が電波を発すると、内部電波送受信手段4の内部アンテナ12が通信機器3の電波を受信し、内部無線通信部13bによって受信した電波に応じた信号に変換される。その後、通信機器3の電波に相当する信号がケーブル14を介して外部無線通信部13aに伝送され、外部無線通信部13aによって伝送された信号に応じた電波に変換される。そして、外部アンテナ11が当該電波を送信することにより、基地局1と昇降路20の内部とが通信可能になるので、作業者が通信機器3でエレベータが設置された建物外に位置するサービス拠点等と連絡をとることができる。
【0037】
このように構成した本発明のエレベータ用電波中継装置の第1実施形態及びエレベータ用電波中継装置の設置方法の第1実施形態によれば、内部アンテナ12、内部無線通信部13b、及び磁石16bを右側ドア5Bの内側に取付けると共に、外部アンテナ11、外部無線通信部13a、及び磁石16aを右側ドア5Bの外側に取付け、ケーブル14を乗場の出入口21に通して各無線通信部13a,13bに接続して左側ドア5Aと右側ドア5Bを閉扉することにより、昇降路20のうち乗場ドア5にケーブル14を通す貫通孔を設けなくてもケーブル14を各ドア5A,5Bの端面5a,5bで固定した状態で昇降路20の内部と外部との間に挿通させることができ、設置作業にかかる時間と手間を省くことができる。
【0038】
また、各アンテナ11,12、各無線通信部13a,13b、及びケーブル14をエレベータに設置した後であっても、左側ドア5A及び右側ドア5Bを開くことによって挟持されていたケーブル14を開放することにより、各アンテナ11,12の電波状態を確認しながら各アンテナ11,12の設置場所を自由に変更したり、あるいはケーブル14の状態を確認できるので、各アンテナ11,12の電波状態の調整作業やケーブル14の交換作業等のメンテナンス作業における作業性を高めることができる。これにより、メンテナンス作業においてエレベータの運転を停止する時間を短く抑えることができ、作業者及び乗客に対する高い利便性を確保することができる。このように、設置作業を容易に行うことができ、利便性を向上させることができるので、設置作業において優れた作業性を実現することができ、設置作業にかかる作業者の労力を軽減することができる。そして、作業者は、通信機器3によって昇降路20の外部のサービス拠点等と通信してメンテナンス作業を行うことができるので、昇降路20の内部から外部へ出る必要がなくなり、メンテナンス作業の高い効率性を確保することができる。
【0039】
また、本発明のエレベータ用電波中継装置の第1実施形態は、右側ドア5Bの内側に取付けられた内部電波送受信手段4が右側ドア5Bと乗かご15との間の間隔よりも小さい大きさに設定されているので、乗かご15が昇降路20内を昇降しても、乗かご15が内部アンテナ12と衝突したり、あるいは接触することを防止でき、内部アンテナ12や乗かご15が破損することを抑えることができる。これにより、内部アンテナ12や乗かご15を良好な状態で長期に渡って使用することができる。また、昇降中の乗かご15が内部アンテナ12に接触して大きく揺れることを防止できるので、乗かご15に乗車している乗客に対して不安を感じさせず、快適な乗かご15の運行を実現することができる。これにより、エレベータに対する高い信頼性を確保することができる。
【0040】
また、本発明のエレベータ用電波中継装置の第1実施形態は、内部アンテナ12、内部無線通信部13b、及び磁石16bが一体となって形成され、外部アンテナ11、外部無線通信部13a、及び磁石16aが一体となって形成されているので、昇降路20の内部に配置された磁石16bの端面16b2と外部に配置された磁石16aの端面16a2を、右側ドア5Bを挟んで対向させた状態で右側ドア5Bの内側と外側にそれぞれ接触させることにより、各磁石16a,16bの磁力によって各電波送受信手段2,4を右側ドア5Bの両側に固着することができる。これにより、各電波送受信手段2,4の取付作業を容易に行うことができ、作業時間を大幅に短縮することができる。
【0041】
また、内部電波送受信手段4と外部電波送受信手段2を右側ドア5Bの両側から容易に取外すこともできるので、各アンテナ11,12の設置場所を変更するのに手間がかからず、各アンテナ11,12の電波状態を調整するのに都合が良い。従って、各アンテナ11,12の設置作業及び電波の調整作業における作業能率を向上させることができる。さらに、内部電波送受信手段4と外部電波送受信手段2を右側ドア5Bに取付ける取付手段として磁石16a,16bを適用することにより、右側ドア5Bを損傷させることなく各電波送受信手段2,4を右側ドア5Bに固定することができる。また、円錐台の内部アンテナ12の下面12aと円錐台の外部アンテナ11の下面11aを右側ドア5Bを挟んで対向させるように配置することができるので、各アンテナ11,12の設置スペースを低減することができる。
【0042】
また、本発明のエレベータ用電波中継装置の第1実施形態は、上述したようにケーブル14が左側ドア5Aの端面5a及び右側ドア5Bの端面5bに挟まれることにより、左側ドア5A及び右側ドア5Bが閉扉している状態でケーブル14を取外し難くなる。特に、施錠された左側ドア5A及び右側ドア5Bを開錠して開扉するためには専用の特殊治具を要するので、ケーブル14を各ドア5A,5Bで強固に固定することができ、内部電波送受信手段4、外部電波送受信手段2、及びケーブル14の盗難を防止することができる。
【0043】
[第2実施形態]
図3は本発明に係るエレベータ用電波中継装置の第2実施形態の構成を示す図である。
【0044】
本発明に係るエレベータ用電波中継装置の第2実施形態が前述したエレベータ用電波中継装置の第1実施形態と異なるのは、第1実施形態では、取付手段は、図2に示すように内部電波送受信手段4に設けられた磁石16bと、外部電波送受信手段2に設けられた磁石16aとから成るのに対して、第2実施形態では、取付手段は、例えば図3に示すように右側ドア5Bの内側の表面に設けられた図示しない雌螺子と、内部電波送受信手段4と外部電波送受信手段2とを一体に繋ぐ固定具18と、この固定具18に穿設された図示しない貫通孔と、この貫通孔に挿通され、雌螺子に螺合する図示しない雄螺子が形成された螺子19とから成ることである。なお、固定具18は、例えば金具、薄い鉄箱、あるいは鉄枠等によってコ字型の形状に形成されており、固定具18の開口が右側ドア5Bの厚さよりも大きく設定されている。その他の構成はエレベータ用電波中継装置の第1実施形態と同様である。
【0045】
このように構成した第2実施形態に係るエレベータ用電波中継装置にあっては例えば以下のようにしてエレベータに設置される。
【0046】
本発明の第2実施形態に係るエレベータ用電波中継装置の設置方法の第2実施形態は、例えば配置工程において一体に形成された内部アンテナ12及び内部無線通信部13bを昇降路20の内部に配置すると共に、一体に形成された外部アンテナ11及び外部無線通信部13aを昇降路20の外部に配置し、外部無線通信部13aの端面13a2と内部無線通信部13bの端面13b2とが右側ドア5Bを挟んで対向するように右側ドア5Bの両側に取付ける。そして、コ字型の固定具18の開口に右側ドア5Bの端面5bが挿入されるように、固定具18の一端を内部無線通信部13bに溶接等で固定すると共に、他端を外部無線通信部13aに溶接等で固定し、螺子19を固定具18の貫通孔に通して螺子19の雄螺子を右側ドア5Bの雌螺子に螺合する。
【0047】
次に、接続工程においてケーブルを乗場の出入口21のうち左側ドア5Aの端面5aと右側ドア5Bの端面5bとの間に通し、ケーブルの一端を内部無線通信部13bに接続すると共に、他端を外部無線通信部13aに接続する。そして、挟持工程において左側ドア5A及び右側ドア5Bを閉じて各端面5a,5bにケーブルを挟持させる。なお、本発明のエレベータ用電波中継装置の設置方法の第2実施形態では、ケーブルは固定具18の下方に配置されており、図3において図示されていない。
【0048】
このように構成した本発明のエレベータ用電波中継装置の第2実施形態及びエレベータ用電波中継装置の設置方法の第2実施形態によれば、上述したように配置工程において固定具18で内部無線通信部13bと外部無線通信部13aとを右側ドア5Bの内側と外側にそれぞれ接触させた状態で保持し、螺子19を固定具18の貫通孔に通して螺子19の雄螺子を右側ドア5Bの雌螺子に螺合させることにより、固定具18と螺子19だけで各電波送受信手段2,4を右側ドア5Bの両側に強固に取付けることができ、安定した固定状態を実現することができる。これにより、内部電波送受信手段4及び外部電波送受信手段2を取付ける取付手段に要する製作コストを安価に抑えることができるので、経済性に優れている。また、螺子19の雄螺子が螺合する雌螺子は、右側ドア5Bの内側の表面に形成されており、右側ドア5Bの外側の表面に設けられていないので、乗場から見た乗場ドア5における意匠性を高く保つことができる。
【0049】
なお、上述したエレベータ用電波中継装置の各第1、第2実施形態は、乗場ドア5が左側ドア5A及び右側ドア5Bを有する両開きになっている場合について説明したが、乗場ドアは、片開きのドアになっていても良い。また、本発明のエレベータ用電波中継装置の各第1、第2実施形態は、内部電波送受信手段4及び外部電波送受信手段2が右側ドア5Bに取付けられた場合について説明したが、この場合に限らず、内部電波送受信手段4及び外部電波送受信手段2は左側ドア5Aに取付けられても良い。
【0050】
さらに、本発明のエレベータ用電波中継装置の各第1、第2実施形態は、内部電波送受信手段4が内部アンテナ12と内部無線通信部13bから成り、外部電波送受信手段2が外部アンテナ11と外部無線通信部13aから成る場合について説明したが、この場合に限らず、内部電波送受信手段4は、例えば昇降路20の内部で作業者等が携帯する通信機器3の電波を受信すると共に、この通信機器3へ電波を送信する内部アンテナから成り、外部電波送受信手段2は、例えば基地局1から送信された電波を受信すると共に、基地局1へ電波を送信する外部アンテナから成り、無線通信部を介さずにケーブルを直接これらの各アンテナに接続することにより、一方のアンテナが電波を受信することによって誘導される信号をケーブルを介して他方のアンテナに伝送して電波を送信するようにしても良い。
【0051】
また、本発明のエレベータ用電波中継装置の各第1、第2実施形態は、バッテリ等の電源によって内部電波送受信手段4及び外部電波送受信手段2に電力が供給された場合について説明したが、この場合に限らず、バッテリ等の電源を備える代わりに内部電波送受信手段4及び外部電波送受信手段2は、受信した電波によって誘導される電力によって動作するようにしても良い。
【符号の説明】
【0052】
1 基地局
2 外部電波送受信手段
3 通信機器
4 内部電波送受信手段
5 乗場ドア
5A 左側ドア
5B 右側ドア
5a,5b 端面
11 外部アンテナ
11a 下面
12 内部アンテナ
12a 下面
13a 外部無線通信部
13b 内部無線通信部
13a1,13a2,13b1,13b2,16a1,16a2,16b1,16b2 端面
14 ケーブル
15 乗かご
16a,16b 磁石
18 固定具
19 螺子
20 昇降路
21 出入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路と、この昇降路内を昇降する乗かごと、この乗かごが着床する乗場に設けられた出入口と、この出入口に開閉可能に設けられ、前記昇降路の内部と外部を区画する乗場ドアとを備えたエレベータに適用され、前記昇降路の内部と外部との間の通信を中継する通信手段を備えたエレベータ用電波中継装置において、
前記通信手段は、
前記昇降路の内部に設けられ、前記昇降路の内部から電波を受信すると共に、前記昇降路の内部へ電波を送信する内部電波送受信手段と、
前記昇降路の外部に設けられ、前記昇降路の外部から電波を受信すると共に、前記昇降路の外部へ電波を送信する外部電波送受信手段と、
前記乗場ドアが閉扉した際に前記乗場ドアに挟持されるように寸法が設定され、前記内部電波送受信手段と前記外部電波送受信手段とを接続するケーブルとを有することを特徴とするエレベータ用電波中継装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエレベータ用電波中継装置において、
前記通信手段は、前記乗場ドアの両側に前記内部電波送受信手段と前記外部電波送受信手段を取付ける取付手段を有し、
前記内部電波送受信手段は、前記乗場ドアと前記乗かごとの間の間隔よりも小さい大きさに設定されたことを特徴とするエレベータ用電波中継装置。
【請求項3】
請求項2に記載のエレベータ用電波中継装置において、
前記取付手段は、
前記内部電波送受信手段に設けられた第1の磁石と、
前記外部電波送受信手段に設けられ、前記乗場ドアを挟んで前記第1の磁石と対向する位置に配置された第2の磁石とから成ることを特徴とするエレベータ用電波中継装置。
【請求項4】
請求項2に記載のエレベータ用電波中継装置において、
前記取付手段は、
前記乗場ドアに設けられた雌螺子と、
前記内部電波送受信手段と前記外部電波送受信手段とを一体に繋ぐ固定具と、
この固定具に穿設された貫通孔と、
この貫通孔に挿通され、前記雌螺子に螺合する雄螺子が形成された螺子とから成ることを特徴とするエレベータ用電波中継装置。
【請求項5】
昇降路と、この昇降路内を昇降する乗かごと、この乗かごが着床する乗場に設けられた出入口と、この出入口に開閉可能に設けられ、前記昇降路の内部と外部を区画する乗場ドアとを備えたエレベータに適用され、前記昇降路の内部と外部との間の通信を中継する通信手段を備え、この通信手段は、前記昇降路の内部に設けられ、前記昇降路の内部から電波を受信すると共に、前記昇降路の内部へ電波を送信する内部電波送受信手段と、前記昇降路の外部に設けられ、前記昇降路の外部から電波を受信すると共に、前記昇降路の外部へ電波を送信する外部電波送受信手段と、前記乗場ドアが閉扉した際に前記乗場ドアに挟持されるように寸法が設定され、前記内部電波送受信手段と前記外部電波送受信手段とを接続するケーブルとを有するエレベータ用電波中継装置を設置するエレベータ用電波中継装置の設置方法において、
前記内部電波送受信手段を前記昇降路の内部に配置すると共に、前記外部電波送受信手段を前記昇降路の外部に配置する配置工程と、
前記内部電波送受信手段及び前記外部電波送受信手段が配置された後に、前記ケーブルを前記出入口に通すと共に、前記ケーブルを前記内部電波送受信手段及び前記外部電波送受信手段に接続する接続工程と、
前記内部電波送受信手段及び前記外部電波送受信手段が接続された後に、前記乗場ドアを閉じて前記ケーブルを挟持させる挟持工程とを備えたことを特徴とするエレベータ用電波中継装置の設置方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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