説明

エレベータ装置

【課題】セキュリティレベルの低下を抑えつつ、簡易な方法で、居住者の階床間移動の自由度を高めることのできるエレベータ装置の提供。
【解決手段】乗りかご1内に設置される認証手段(3)、建屋の居住者情報を記憶する記憶部4a、認証手段(3)から送られる認証情報と記憶部4aに記憶される居住者情報とを比較する比較部4b、比較部4bにより認証手段操作者が真正な者と判断されたことに応じて対応する居住階床の行き先階呼び登録を行う制御手段(5)を備えたエレベータ装置において、認証手段(3)による第1の認証操作から第1の所定時間以内に、同一認証手段操作者により第2の認証操作が行われたことに応じ、制御手段(5)が、第1の認証操作に応じて登録された居住階床の行き先階呼び登録を無効とするとともに、第2の認証操作から第2の所定時間内、居住階床以外の階床の行き先階呼び登録を可能とするようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定階床の行き先階呼び登録を許可する認証手段を備えたエレベータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のものとして、エレベータの乗りかご内にカードリーダ等の認証手段を設置し、利用者が真正な者と認証された場合、当該利用者が行き先階呼び登録可能な階床を選択表示するとともに、その登録を許可することで、建屋のセキュリティレベルを高めたエレベータ装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、このようなセキュリティ装置が、例えば、共同住宅に適用された場合、居住者がエレベータを利用して移動できる階床は建屋の出入口階床および居住階床のみとなり、不便が生じる。そこで、従来、セキュリティレベルの低下を抑えつつ、居住者が居住階床以外の階床へ移動できるようにしたものとして、乗りかご内に設置されるカメラと、カメラから出力される撮像情報を記憶する記憶部とを備えた画像認証装置を設けるとともに、あらかじめ居住者の画像情報、および自動呼び登録を取り消し、他の階床の行き先階呼び登録を許可するためのキャンセルポーズ画像情報を含んでなる居住者情報を登録し、居住者が乗りかごに乗り込んだ際に、居住者の画像情報を読み取り、対応する居住階床を特定して行き先階呼びを自動登録したり、キャンセルポーズを認証させることで、自動登録される行き先階呼びを取り消し、かつ他階床への行き先階呼び登録を可能としたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−60084(段落番号0012〜0019、図1)
【特許文献2】特開2005−89095(段落番号0039〜0051、図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記した従来のものでは、乗りかご内に設置されるカメラ、および撮像情報を記憶する記憶部を有する画像認証装置を備える必要があることから、コストが嵩むという問題がある。また、居住階床以外の階床の行き先階呼び登録を行う場合、カメラにある程度正対しなければならず、乗りかご内が混雑している場合、認証動作を行うことが困難となるという問題や、他の利用者が乗りかご内にいる場合、キャンセルポーズをとること自体気後れするという問題がある。さらに、キャンセルポーズを他人に盗み見され悪用される可能性がある。
【0006】
本発明は、前述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、セキュリティレベルの低下を抑えつつ、簡易な方法で、居住者の階床間移動の自由度を高めることのできるエレベータ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は、乗りかご内に設置される認証手段と、建屋の居住者情報を記憶する記憶部と、前記認証手段から送られる認証情報と前記記憶部に記憶される居住者情報とを比較する比較部と、この比較部により認証手段操作者が真正な者と判断されたことに応じて対応する居住階床の行き先階呼び登録を行う制御手段とを備えたエレベータ装置において、前記認証手段による第1の認証操作から第1の所定時間以内に、同一認証手段操作者により第2の認証操作が行われたことに応じ、前記制御手段が、前記第1の認証操作に応じて登録された居住階床の行き先階呼び登録を無効とするとともに、前記第2の認証操作から第2の所定時間内、居住階床以外の階床の行き先階呼び登録を可能とすることを特徴としている。
【0008】
このように構成した本発明では、乗りかごに乗り込んだ居住者が、一旦認証手段により認証操作を行った後、所定時間以内に再び認証手段により認証操作を行うと、制御手段は、最初の認証操作により登録された当該居住階床の行き先階呼びを無効とするとともに、所定時間内、居住階床以外の階床の行き先呼び登録を可能とする。これによって、セキュリティレベルの低下を抑えつつ、簡易な方法で、居住者の階床間移動の自由度を高めることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、セキュリティレベルの低下を抑えつつ、簡易な方法で、居住者の階床間移動の自由度を高めることができる。すなわち、従来のような特別な装置を要さないことから、低コストで目的を実現することができる。また、居住階床の行き先階呼び登録の無効、および居住階床以外の階床の行き先階呼び登録許可は、所定時間内における認証手段の再操作という簡易な方法で行われることから、乗りかご内の利用状況の影響を受けることが少ないとともに、利用者も気兼ねなく操作を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係るエレベータ装置の一実施例を示す概略構成ブロック図である。
【図2】本実施例におけるエレベータ装置の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るエレベータ装置の実施例を図に基づき説明する。
【0012】
本実施例のエレベータ装置は、図1に示すように、建屋、例えば、共同住宅に形成される昇降路を昇降する乗りかご1と、この乗りかご1内に設置され、行き先階呼び登録を行うための行き先階釦2aを有するかご内運転盤2と、乗りかご1内に設置される認証手段、例えば、共同住宅の居住者が携帯する図示しない認証カードの登録情報を読み取るカードリーダ3と、共同住宅の居住者情報を記憶する記憶部4a、およびカードリーダ3から送られる認証情報と記憶部4aに記憶される居住者情報とを比較する比較部4bとを備えた認証制御装置4と、エレベータの運転を統括制御するエレベータ制御装置5とを備えている。
【0013】
そして、前述したエレベータ制御装置5は、カードリーダ3による認証操作が行われた際、比較部4bにより認証手段操作者が真正な者と判断されたことに応じて対応する居住階床の行き先階呼び登録を行う行き先階呼び登録部5aと、カードリーダ3による第1の認証操作から第1の所定時間以内に、同一認証手段操作者により第2の認証操作が行われたことに応じ、第1の認証操作に応じて登録された居住階床の行き先階呼び登録を無効とするキャンセル部5bと、第2の認証操作から第2の所定時間内、居住階床以外の階床の行き先階呼び登録を可能とする他階床行き先階呼び登録部5cと、前述した第1および第2の所定時間をカウントするタイマ5dとを備えている。なお、前述した制御手段は、例えば、エレベータ制御装置からなっている。
【0014】
本実施例にあっては、図2に示すように、手順S1として、共同住宅の出入口階床である1階から乗りかご1に乗り込んだ居住者が、携帯している認証カードをカードリーダ3にかざすと、カードリーダ3は認証カードの登録情報を読み取り、この認証情報を比較部4bに送る。比較部4bは認証情報と記憶部4aに記憶される居住者情報とを比較し、比較結果をエレベータ制御装置5に送る。エレベータ制御装置5の行き先階呼び登録部5aは、手順S2として、比較部4bにより認証手段操作者が真正な者と判断されると、すなわち、認証カードに登録された情報と特定の居住者情報が一致すると、この居住者情報に含まれる居住階床情報に基づき特定の居住階床を行き先階として行き先階呼び登録を行うとともに、タイマ5bは、手順S3として、当該認証確認から第1の所定時間のカウントを開始する。次いで、手順S4に示すように、同一の居住者が、前述した認証操作を行った後、第1の所定時間以内に再びカードリーダ3に認証カードをかざし認証操作を行うと、前述と同等の手順にて情報の照合が行われた後、キャンセル部5bは、手順S5として、最初の認証操作により登録された当該居住階床の行き先階呼びを無効とし、タイマ5dは、手順S6として、第2の所定時間のカウントを開始し、他階床行き先階呼び登録部5cは、手順S7として、タイマ5dによりカウントされる第2の所定時間内、居住階床以外の階床の行き先階呼び登録を許可する。そして、手順S8に示すように、第2の所定時間内に同一居住者が居住階床以外の行き先階釦を操作すると、他階床行き先階呼び登録部5cは、手順S9として、この階床の行き先階呼び登録を行う。
【0015】
本実施例によれば、セキュリティレベルの低下を抑えつつ、簡易な方法で、居住者の階床間移動の自由度を高めることができる。すなわち、従来のような特別な装置を要さないことから、低コストで目的を実現することができる。また、居住階床の行き先階呼び登録の無効、および居住階床以外の階床の行き先階呼び登録許可は、所定時間内におけるカードリーダ3の再操作という簡易な方法で行われることから、乗りかご1内の利用状況の影響を受けることが少ないとともに、利用者も気兼ねなく操作を行うことができる。
【0016】
なお、前述した本実施例では、出入口階床から乗りかご1に乗り込んだ場合について説明したが、居住者が居住階床から乗りかご1に乗り込み、出入口階床以外の階床までエレベータを利用するときも、同様に所定時間内における認証手段の再操作を行うことで、所望階床の行き先階呼び登録を行うようにすることができる。すなわち、居住階床から乗りかご1に乗り込んだ場合は、基本的に出入口階床が自動的に行き先階呼び登録され、これを解除して他の階床に行く場合は、認証手段の再操作を要するようにすることで、セキュリティレベルの低下を抑えつつ、居住者の階床間移動の自由度を高めることができる。また、本実施例では、認証手段としてカードリーダ3を用いたが、本発明はこれに限るものではない。
【符号の説明】
【0017】
1 乗りかご
2 かご内運転盤
2a 行き先階釦
3 カードリーダ(認証手段)
4 認証制御装置
4a 記憶部4a
4b 比較部
5 エレベータ制御装置(制御手段)
5a 行き先階呼び登録部
5b キャンセル部
5c 他階床行き先階呼び登録部
5d タイマ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかご内に設置される認証手段と、建屋の居住者情報を記憶する記憶部と、前記認証手段から送られる認証情報と前記記憶部に記憶される居住者情報とを比較する比較部と、この比較部により認証手段操作者が真正な者と判断されたことに応じて対応する居住階床の行き先階呼び登録を行う制御手段とを備えたエレベータ装置において、
前記認証手段による第1の認証操作から第1の所定時間以内に、同一認証手段操作者により第2の認証操作が行われたことに応じ、前記制御手段が、前記第1の認証操作に応じて登録された居住階床の行き先階呼び登録を無効とするとともに、前記第2の認証操作から第2の所定時間内、居住階床以外の階床の行き先階呼び登録を可能とすることを特徴とするエレベータ装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−241061(P2011−241061A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−115614(P2010−115614)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000232944)日立水戸エンジニアリング株式会社 (227)
【Fターム(参考)】