説明

エレベータ

【課題】乗りかごの運行範囲を切り替え可能なエレベータにおいて、乗客が迷うことなくかご操作盤を操作できるようにして利便性を高める。
【解決手段】本発明の実施の形態のエレベータにおいては、乗りかご内に設けられた表示手段(かご内操作盤)に、乗りかごが着床可能な階床に対応する行先階指定部分のみが表示される。これにより、例えば「ホーム階」と「改札階」との間で昇降するように運行範囲が切り替えられると、表示手段には「地上階」に対応する行先階指定部分が表示されない。さらに「ホーム階」から乗りかごに乗り込んだ乗客に対しては「ホーム階」に対応する行先階指定部分を表示しないこともできる。これにより、乗りかごに乗り込んだ乗客は、運行範囲に関わりなく、迷うことなく表示手段の行先階指定部分を操作することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態はエレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、鉄道の駅には多数のエレベータが設置され、乗降客の上下方向の移動を容易なものとしている。
【0003】
ところで、例えば電車の線路が高架上に設けられている駅のなかには、電車が発着する「ホーム階」および改札口のある「改札階」に加え「地上(地下)階」が設けられたものがある。
このとき、このような駅に設置されるエレベータは、通常は「改札階」と「ホーム階」との間で昇降して乗降客の移動を補助するが、所定の切替操作がなされた場合には「地上(地下)階」と「改札階」および「ホーム階」との間でそれぞれ昇降し、「改札階」および「ホーム階」にある売店や自動販売機等への商品の搬入を行えるようになっている(例えば、下記特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−130855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、「地上階(地下階)」と「改札階」および「ホーム階」との間で昇降するエレベータの乗りかごの内部には、図8に示したようなかご内操作盤1が設けられる。
このかご内操作盤1は、「ホーム階」「改札階」「地上階(地下階)」にそれぞれ対応する3つの行先階押しボタン2a,2b,2cと、乗りかごの現在位置を示す3つの表示灯3a,3b,3cを有している。
また、このかご内操作盤1の下部には、エレベータの運行範囲を切り替えるための運行範囲切替手段スイッチ4が設けられている。
【0006】
これにより、例えば「ホーム階」から乗りかごに乗り込んだ乗客の目前には3つの行先階押しボタン2a,2b,2cが存在するため、どのボタンを操作して良いのか迷うことがある。
また、鉄道の乗降客が利用できる階床は「ホーム階」と「改札階」であるため、仮に「地上階(地下階)」に対応する行先階押しボタン2cを押してもエレベータは反応せず、乗客は混乱してしまう。
【0007】
そこで本発明の目的は、乗りかごの運行範囲を切り替え可能なエレベータにおいて、乗客が迷うことなくかご操作盤を操作できるようにして、その利便性を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施の形態は、
乗りかごの運行範囲を切り替え可能なエレベータであって、
前記乗りかごの運行範囲を切り替えるための運行範囲切替手段と、
前記乗りかごに乗り込んだ乗客が行先階を指定するべく操作する行先階指定部分を表示する、乗りかご内に設けられた表示手段と、
前記運行範囲切替手段における切替状況に応じて、前記乗りかごが着床可能な階床に対応する前記行先階指定部分のみを前記表示手段に表示させる表示制御手段と、
前記運行範囲切替手段における切替状況および乗客による前記行先階指定部分の操作に応じて乗りかごの運行を制御する運行制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
すなわち、本発明の実施の形態のエレベータにおいては、乗りかご内に設けられ表示手段には、乗りかごが着床可能な階床に対応する行先階指定部分のみが表示される。
これにより、例えば「ホーム階」と「改札階」との間で昇降するように運行範囲が切り替えられると、表示手段には「地上階」に対応する行先階指定部分が表示されない。さらに「ホーム階」から乗りかごに乗り込んだ乗客に対しては、「ホーム階」に対応する行先階指定部分を表示しないこともできる。
これにより、乗りかごに乗り込んだ乗客は、運行範囲に関わりなく、迷うことなく表示手段の行先階指定部分を操作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】一実施形態のエレベータの全体構成を模式的に示す図。
【図2】図1に示したかご内操作盤の一実施形態を示す図。
【図3】図1に示したかご内操作盤の第1変形例を示す図。
【図4】図1に示したかご内操作盤の一実施形態を示す図。
【図5】図1に示したかご内操作盤の第2変形例を示す図。
【図6】運行範囲切替機構を示す図。
【図7】運行範囲表示手段を示す図。
【図8】従来のかご内操作盤を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図1乃至図6を参照し、本発明のエレベータの一実施形態について詳細に説明する。
【0012】
まず最初に図1を参照して本実施形態のエレベータの全体構造について説明すると、このエレベータにおいては、駆動シーブ11および反らせシーブ12に巻装されたメインロープ13によって、乗りかご14および釣合錘15が釣瓶状に懸架されている。
そして、このエレベータは運行制御手段20によってその運行が制御され、ホーム階16、改札階17および地上階18との間で昇降するようになっている。
【0013】
また、乗りかご14の内部には、かご内操作盤(表示手段)21と、運行範囲を切り替えるための運行範囲切替スイッチ(運行範囲切替手段)22が設けられている。
【0014】
かご内操作盤21は、液晶パネルとタッチパネルとを組み合わせたもので、図2〜図5に示したように様々な図形や文字を表示することができる。
また、液晶パネルに重ね合わされている透明なタッチパネルは、乗りかご内の乗客が指先で触れると、運行制御手段20に対し操作信号を送出するようになっている。
【0015】
運行範囲切替スイッチ22は、図6に示したように、鍵を差し込んでスイッチ部分22aを回動させることにより、エレベータの運行範囲を切り替えるようになっている。
運行範囲は、ホーム階16と改札階17との間(運行範囲A:通常運転)、改札階17と地上階18との間(運行範囲B:特殊運転)あるいはホーム階16と地上階18との間(運行範囲C:特殊運転)の、3つの範囲で切り替えることができる。
なお、運行範囲切替スイッチ22を切り替えると、どの運行範囲が選択されたかを示す信号が運行制御手段20に送出される。
【0016】
かご内操作盤21および運行範囲切替スイッチ22は、表示制御手段30にも接続されている。
この表示制御手段30は、かご内操作盤21の液晶パネルにどのような文字および図形(表示パターン)を表示させるかを制御するものであり、表示パターン制御部31、表示パターン選択部32および表示パターン記憶部33を有している。
【0017】
表示パターン記憶部33は、運行範囲切替スイッチ22の操作によって選択される各運行範囲に対応して液晶表示パネルに表示させるパターン(文字および図形)をROMに記憶している。
表示パターン選択部32は、運行範囲切替スイッチ22の操作によって選択された運行範囲に対応するパターンを、表示パターン記憶部33から取り出して表示パターン制御部31に送出する。
表示パターン制御部31は、選択された運行範囲に対応するパターンをかご内操作盤21の液晶表示パネルに表示させる。
【0018】
図2は、ホーム階16と改札階17との間で乗りかご14を昇降させる通常運転の場合に液晶パネルに表示される表示パターンを示している。
具体的に説明すると、図2(a)には、ホーム階16から乗りかご14に乗り込んだ乗客に対して表示されるパターンが図示されており、ホーム階16に対応する現在位置表示部分23aは表示されているが、改札階17に対応する現在位置表示部分23bは消えている。
また、ホーム階16に対応する行先階指定部分24a、および改札階17に対応する行先階指定部分24bの両方が表示されている。
これにより、乗りかご14に乗り込んだ乗客は、乗りかご14が、現在、ホーム階に停止していることが容易に判る。
【0019】
また、ここで注目されるべきことは、このかご内操作盤21においては、図8に示した従来のかご内操作盤1とは異なり、地上階18に対応する現在位置表示部分および行先階指定部分が存在しないことである。
これにより、ホーム階16から乗りかご14に乗り込んだ乗客は、乗りかご14の行先階として迷うことなく改札階17を指定することができる。
【0020】
さらに図2(b)に注目すると、このかご内操作盤21には、ホーム階16に対応する行先階指定部分24aが表示されていない。
これにより、ホーム階16から乗りかご14に乗り込んだ乗客の目には、行先階として指定できるのは改札階17のみであることが、明瞭に映し出される。
【0021】
次に、図3に示されているかご内操作盤21の第1変形例を参照すると、もはや「改札」や「ホーム」といった文字は表示されておらず、改札階17に対応する行先階指定部分24aには下向きの矢印しか表示されていない。
これにより、ホーム階16から乗りかご14に乗り込んだ乗客の目には、乗りかご14を降下させる方向しか選択できないことが明瞭に映し出される。
したがって、ホーム階16から乗り込んだ乗客は、どの行先階を選択すれば良いのか迷うことがない。
【0022】
なお、改札階17に対応する行先階指定部分24bは、図3(b)に示したように、改札階17に対応する現在位置表示部分23bと上下方向に並べることなく、液晶表示パネルの中央部分に拡大して表示させることもできる。
これにより、ホーム階16から乗り込んだ乗客は、どの行先階を選択すれば良いのか全く迷うことがない。
【0023】
次に、図4および図5を参照し、地上階とホーム階との間で乗りかご14を昇降させる特殊運転(運行範囲C)の場合に、かご内操作盤21に表示させるパターンについて説明する。
【0024】
図4(a)には、地上階18から乗りかご14に乗り込んだ作業員に対して表示されるパターンが図示されており、改札階17およびホーム階16に対応する現在位置表示部分23b,23aは消えているが、地上階18に対応する現在位置表示部分23cは表示されている。
また、地上階18、改札階17およびホーム階16にそれぞれ対応するすべての行先階指定部分24c、24b、24aが表示されている。
【0025】
ここで再び注目されるべきことは、このかご内操作盤21においては、図2および図3に示したパターンとは異なり、地上階18に対応する現在位置表示部分23cおよび行先階指定部分24cが表示されていることである。
これにより、地上階18から乗りかご14に乗り込んだ作業員の目には、乗りかご14が現在地上階18に着床しており、行先階として指定できるのは改札階17およびホーム階16であることが明瞭に映し出される。
【0026】
さらに図4(b)に注目すると、このかご内操作盤21には、地上階18に対応する行先階指定部分24cが表示されていない。
これにより、地上階18から乗りかご14に乗り込んだ作業員の目には、行先階として指定できるのは改札階17およびホーム階16であることが、より一層明瞭に映し出される。
【0027】
次に、図5(a)に示されているかご内操作盤21の第2変形例を参照すると、地上階18に対応する行先階指定部分24cは表示されていない。
これにより、地上階18から乗りかご14に乗り込んだ作業員の目には、行先階として改札階17およびホーム階16だけを選択できることがより明瞭に映し出される。
全く同様に、図5(b)に示したように、改札階17から乗りかご14に乗り込んだ作業員の目には、行先階として地上18およびホーム階16を選択できることがより明瞭に映し出される。
したがって、特殊運転中に乗りかご14に乗り込んだ作業員は、どの行先階を選択すれば良いか迷うことがない。
【0028】
次に図7を参照すると、エレベータの運行範囲を表示する運行範囲表示パネル25が図示されている。
この運行範囲表示パネル25は、エレベータが、図7(a)に示したように改札階とホーム階との間で運行されていること、あるいは図7(b)に示したように地上階とホーム階との間で運行されていることを表示する。
これにより、例えば図3に示したように、かご内操作盤21に下向きの矢印しか表示されない場合であっても、乗りかご14がどこに向かうのか直ぐに理解することができる。
【0029】
すなわち、本実施の形態のエレベータにおいては、運行範囲が切り替えられると、乗りかごが着床可能な行先階を指定する行先階指定部分のみがかご内操作盤(表示手段)に表示される。
これにより、指定できない行先階指定部分も合わせて表示されるかご内操作盤とは異なり、乗客は迷うことなく行先階指定部分を操作することができる。
【0030】
以上、本発明のエレベータの一実施形態について詳しく説明したが、本発明は上述した実施形態によって限定されるものではなく、種々の変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、図7の運行範囲表示パネル25が示す運行範囲情報は、かご内操作盤21に一体に表示させることができる。
【符号の説明】
【0031】
1 従来のかご内操作盤
14 乗りかご
16 ホーム階
17 改札階
18 地上階
20 運行制御手段
21 かご内操作盤
22 運行範囲切替スイッチ(運行範囲切替手段)
23 現在位置表示部分
24 行先階指定部分
25 運行範囲表示パネル
30 表示制御手段
31 表示パターン制御部
32 表示パターン選択部
33 表示パターン記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかごの運行範囲を切り替え可能なエレベータであって、
前記乗りかごの運行範囲を切り替えるための運行範囲切替手段と、
前記乗りかごに乗り込んだ乗客が行先階を指定するべく操作する行先階指定部分を表示する、前記乗りかご内に設けられた表示手段と、
前記運行範囲切替手段における切替状況に応じて、前記乗りかごが着床可能な階床に対応する前記行先階指定部分のみを前記表示手段に表示させる表示制御手段と、
前記運行範囲切替手段における切替状況および乗客による前記行先階指定部分の操作に応じて乗りかごの運行を制御する運行制御手段と、
を備えることを特徴とするエレベータ。
【請求項2】
前記表示手段は、前記乗りかごの運行範囲を表示する運行範囲表示部分をさらに有し、
前記表示制御手段は、前記運行範囲切替手段における切替状況に応じて、前記乗りかごの運行範囲を前記運行範囲表示部分に表示させることを特徴とする請求項1に記載したエレベータ。
【請求項3】
前記表示制御手段は、
前記運行範囲切替手段における切替状況に応じて前記行先階指定部分および前記運行範囲表示部分にそれぞれ表示する表示パターンを記憶した表示パターン記憶部と、
前記運行範囲切替手段における切替状況に応じて前記表示パターン記憶部に記憶されている前記表示パターンを選択する表示パターン選択部と、
選択された前記表示パターンを前記表示手段に表示させるパターン表示部と、
を有していることを特徴とする請求項2に記載したエレベータ。
【請求項4】
前記表示手段は、前記行先階指定部分および前記運行範囲表示部分を表示する液晶パネルと、前記乗りかごに乗り込んだ乗客が操作するタッチパネルとを含んでいることを特徴とする請求項2に記載したエレベータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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