説明

エンコーダ

【課題】 各センサで得られた情報を目的に応じた符号や出力形態に変換すると共に、機器単体で使用する際にも、得られた情報をユーザーが認識できる形で表示し、保存し、解析することのできるエンコーダの提供。
【解決手段】 三軸磁気センサ1a及び三軸加速度センサ1bを備える検出部1と、各センサの情報を処理する情報処理部2と、各センサの情報及び処理結果を表示する表示部4と、各センサの情報及び処理結果を無線で出力する通信部5と、各センサの情報及び処理結果を出力するポート6とを備え、前記情報処理部2は、複数の機能から機能を選択する入力手段2dと、選択された機能に応じて用いられるべきセンサ、導く事象、出力先、出力形態、及び出力データを割り振る手段を具備する制御部2aを備える事を特徴とするエンコーダ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器自体の置かれた環境に関する情報を、種々の機器へ幅広く出力出来るように処理し、更に出力するエンコーダ(符号化装置)に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、種々の分野において事象検出が行われており、自然環境や閉鎖空間における自然環境を示す事象に限らず、人為的に生じる種々の操作、動き、又は姿勢等も事象として検出し活用されている。
【0003】
しかし、従来の手法は、操作を行なう機器とホスト機器とが対となっている場合が多く、その用途が専用的であるものがほとんどであった。なかには、機器等に応じて標準化された規格によって互換性が与えられたものも存在するが、実際に出力されている事象の内容や、検出された情報、更にはその情報に処理を加えた結果など、実際に出力されるデータ自体の内容が、ユーザーによって即座に認識できる性質のものではなく、機器単体として、或いは一種のセンサとして、用途の拡張性に乏しいものであった(例えば下記特許文献参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−042748号公報
【特許文献2】特開2010−252201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、機器の置かれた環境に関する情報を種々のホスト機器へ幅広く出力して利用すべく、各センサで得られた情報を目的に応じた符号(データ符号や制御符号等)や出力形態に変換すると共に、機器単体で使用する際にも、得られた情報をユーザーが認識できる形で表示し、保存し、解析することのできるエンコーダの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為になされた本発明によるエンコーダは、三軸磁気センサ及び三軸加速度センサ、更に必要に応じて温度センサを備える検出部と、各センサの情報を処理する情報処理部と、各センサの情報及び処理結果をデジタルデータとして記録する記憶部と、各センサの情報及び処理結果を表示する表示部と、各センサの情報及び処理結果を無線で出力する通信部と、各センサの情報及び処理結果を出力するポートを備えるものである。
【0007】
当該エンコーダの情報処理部は、制御部、A/D変換部、及び演算部を備え、制御部は、複数の機能から機能を選択する入力手段と、選択された機能に応じて用いられるべきセンサ、導く事象、出力先、出力形態、及び出力データを割り振る手段を備え、A/D変換部は、前記各センサが出力したアナログ情報をデジタルデータからなる検出データに変換する手段を備え、演算部は、検出データに演算を施して実用データ又は算出データに変換する手段を備え、表示部、通信部、及びポートは、制御部の割り振りに応じ、検出データ、実用データ、又は算出データのいずれかを出力する手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によるエンコーダによれば、各センサで得られた情報を目的に応じたデータ符号や制御符号等、所望の出力形態に変換すると共に、エンコーダ単体で、得られた情報をユーザーが認識できる形で表示し、保存し、解析することができるので、例えば携帯者や機械装置の動作など、エンコーダの置かれた環境に関する情報を種々の機器へ幅広く出力し、FA関連、生活支援、家電、又は安全関連の設備機器その他の多様な分野における、操作機器、携帯用計測器(コンパス、温度計、気圧計等)、ロガー(歩数計等)、無線・有線汎用センサモジュール等として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明によるエンコーダのシステム構成の一例を示すブロック図である。
【図2】本発明によるエンコーダのハードウエア構成の一例を示すブロック図である。
【図3】本発明によるエンコーダのモード切替及び割り振り態様の一例を示す説明図である。
【図4】本発明によるエンコーダの方位、姿勢、及び動きと座標との関係を示す説明図である。
【図5】本発明によるエンコーダの外観の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明によるエンコーダの実施の形態を図面に基づき説明する。
図1に示すエンコーダは、三軸磁気センサ1a、三軸加速度センサ1b、及び温度センサ1cを備える検出部1と、各センサ1a,1b,1cの情報を処理する情報処理部2と、各センサ1a,1b,1cの情報及び処理結果をデジタルデータとして記録する記憶部3と、各センサの情報及び処理結果を表示する表示部4と、各センサ1a,1b,1cの情報及び処理結果並びに処理に必要な情報を無線送受信する通信部5と、各センサ1a,1b,1cの情報及び処理結果を制御情報として通信するポート6と、それらに電源を供給するバッテリー7を備えるものである。
【0011】
三軸磁気センサ1aは、地磁気により東西南北の水平方位座標、及び鉛直座標からなる三軸座標系(絶対座標系)における方位をアナログ情報として検出するものであって、三軸加速度センサ1bは、当該センサに加わる加速度であって当該センサの配置面に対する上下左右前後からなる座標系(相対座標系)における相対的な応力変化(動的加速度)、及び気圧等(静的加速度)をアナログ情報で検出するものである。一方、温度センサ1cは、エンコーダが置かれた雰囲気の温度をアナログ情報で検出するものである。
【0012】
前記情報処理部2は、制御部2a、A/D変換部2b、及び演算部2cを備える。
制御部2aは、複数の機能からエンコーダに発揮させる機能(モード)を選択するスイッチとしての機能を備え、選択された機能に応じて用いられるべきセンサ、導く事象(用いる演算)、出力先、出力形態(出力データの形式)を割り振るものであって(例えば図3参照)、相互に独立して、又はいくつかのスイッチを組み合わせて、モードスイッチ(モード選択)、セレクトスイッチ(出力方式選択)、又はトリガースイッチ(出力の開始又は停止等の選択)等となる入力手段2dを具備する。
A/D変換部2bは、前記各センサ1a,1b,1cが出力したアナログ情報を、適宜増幅回路を介してデジタルデータに変換し出力するものである。
演算部2cは、当該デジタルデータ(以下検出データと記す)に演算を施して、各センサ1a,1b,1cが検出した各事象の実態に即した温度、角度、或いは加速度など所定単位系に属する実用的な数値(以下実用データと記す)への変換や、検出データに既知の公式又は適当な数式を適用して得られる数値(算出データ)への変換等からなる目的のデータを出力する。
【0013】
記憶部3は、各センサ1a,1b,1cの検出データ、実用データ、及び算出データ等からなる情報及び処理結果をデジタルデータとして記録すると共に、処理に必要なデータを適宜読み出し得るメモリその他の記録媒体である。
【0014】
表示部4は、上記情報及び処理結果の出力先の一つであって、各センサ1a,1b,1cの情報及び処理結果を、制御部2aで割り振られた出力形態で表示するものである。視覚表示部としてLCDディスプレイ(以下LCDと記す)等が挙げられ、聴覚表示部としてブザーやスピーカが挙げられる。
【0015】
通信部5は、前記検出データ、実用データ、又は算出データを、例えば、Blue Tooth等、所定の規格で送信可能な無線信号に変調してアンテナから送信し、アンテナから受信した無線信号を演算部2cで処理可能な受信データに復調するものである。当該受信データとしては、情報処理部2において、通信相手機器を特定するデータや、演算部2cでの処理に用いるデータが挙げられる。
【0016】
ポート6は、制御部が選択した出力先に応じて、情報処理部から出力した検出データ、実用データ、又は算出データを、出力先の仕様に応じた態様の電気信号に変換するドライバを介して出力すると共に、当該出力先等から必要なデータを入力するものである。
具体的には、RS232CポートやUSBポート等が挙げられる。
【0017】
バッテリー7は、上記要素を駆動する電源であって、例えばリチウムイオン二次電池等が挙げられる。
【実施例】
【0018】
以下、上記エンコーダを用いて実現できる機能の実施例を例示する。
図3で示す例では、モードスイッチで切り替えられる機能として、コンパスモード、歩数計モード、温度計モード、及び動作検出モード、並びに、それらの機能で得られた情報を外部機器へ出力する通信モードが与えられている。
例えば、通信モードにあっても、制御部2aで割り当てられる以外に、各種ポートでの通信や無線通信を選択するモードと、一括通信又は逐次通信を選択するモードが与えられている。
【0019】
コンパスモードは、センサとして三軸磁気センサ1aが選択されると共に、出力先として表示部(例えばLCD)4が選択され、三軸磁気センサ1aの出力を、演算部2cで絶対座標系に変換し、LCDドライバを介して正確な方位を文字(実用データ)又は図形でLCDに表示するものである。
【0020】
歩数計モードは、センサとして三軸加速度センサ1bが選択されると共に、出力先として表示部4と記憶部3が選択され、三軸加速度センサ1bから検出した三軸の検出データを用い、演算部2cにおいて、所定の数式に基いて一歩と評価した算出データの個数をカウントし、更に、そのカウント数を算出データ(実用データ)としてたるLCDドライバへ出力し歩数として表示部4及び記憶部3へ出力するものである。
【0021】
温度計モードは、センサとして温度センサ1cが選択されると共に、出力先として表示部4と記憶部3が選択され、温度センサ1cの出力からなる検出データを、演算部2cで前記実用データに変換し、温度としてLCDドライバを介して表示部4に文字又は図形として表示すると共に、記憶部3に保存ものである。
【0022】
動作検出モードは、センサとして三軸磁気センサ1aと三軸加速度センサ1bが選択されると共に、出力先として所定の出力手段(表示部4、通信部5、若しくはポート6、又は記憶部3等)が予め選択されている。
三軸磁気センサ1aから得た絶対座標系における方位及びその変化、並びにそれに要する時間と、三軸加速度センサ1bから得た相対座標系における動的加速度を検出データとして用い、演算部2cにおいて所定の数式を適用し被検出部位の絶対位置、動き、及び速さからなる算出データ(実用データ)、又は当該算出データに付された動作名に変換し、所定の出力手段へ出力するものである。
当該例では絶対座標系をも参照できることによって、基準座標の設定が不要となる利点もある。
【0023】
尚、歩数計モード、温度計モード、及び動作検出モードでは、以上の出力先に加えて、セレクトスイッチの操作により、PC等の外部機器に向けて、各種ポートを使用した通信や無線通信を以って、一括通信又は逐次通信の形での出力を選択することも可能である。
備えたモードの内容、ユーザー、検出対象(動物や機械等)、その携帯態様、又は設置態様に応じ、当該エンコーダのサイズや形状、又は固定方法を適宜選択することとなる(例えば図5参照)。
【0024】
以上の如く、本発明によるエンコーダは、センサが検出した各事象の実態に即した温度、角度、或いは加速度など所定単位系に属する実用データ又は算出データ(実用データ)への変換を経て出力することにより、数値の意義を一目で認識できることとなる一方、単位が与えられておらず一般的に数値のみではそのものの意義を認識できない検出データ、又はそれに数式を適用した算出データとして出力することを選択することもできる。
この様に、セレクトスイッチによって多様な数値を出力として選択できることは、エンコーダの出力をパラメータとして多様な用途へ応用する際に便宜となる。
【0025】
更に、地磁気や重力の要素に加えて温度の要素を加えることは、エンコーダの置かれた環境や雰囲気等、検出できる事象がより多く選択でき、応用範囲が広がることとなる。
【0026】
制御部2aによる割り振りで与えられる機能の一態様として、ポート(外部入力6a)6からIDコードその他のアナログ情報を得る場合もあり、その際は、当該アナログ情報をA/D変換部2bでデジタルデータに変換し、演算部2cで処理する検出データとして用いることもできる。当該機能の発揮に際して、演算部2cは、当該検出データに既知の公式又は適当な数式を適用して得た数値(算出データ)を用い、通信機器の認証及び情報の授受を目的とした入出力を行う。
【0027】
前記検出部1、情報処理部2、記憶部3、及びポート6は、各々個別の部品から構成しても良いし、ワンチップのマイコンで構成しても良い。
【符号の説明】
【0028】
1 検出部,
1a 三軸磁気センサ,1b 三軸加速度センサ,1c 温度センサ,
2 情報処理部,
2a 制御部,2b A/D変換部,2c 演算部,2d 入力手段,
3 記憶部,4 表示部,5 通信部,
6 ポート,6a 外部入力,
7 バッテリー,

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三軸磁気センサ(1a)及び三軸加速度センサ(1b)を備える検出部(1)と、
各センサの情報を処理する情報処理部(2)と、
各センサの情報及び処理結果をデジタルデータとして記録する記憶部(3)と、
各センサの情報及び処理結果を表示する表示部(4)と、
各センサの情報及び処理結果を無線で出力する通信部(5)と、
各センサの情報及び処理結果を出力するポート(6)を備え
前記情報処理部(2)は、制御部(2a)、A/D変換部(2b)、及び演算部(2c)を備え、
制御部(2a)は、複数の機能から機能を選択する入力手段(2d)と、選択された機能に応じて用いられるべきセンサ、導く事象、出力先、出力形態、及び出力データを割り振る手段を備え、
A/D変換部(2b)は、前記各センサが出力したアナログ情報をデジタルデータからなる検出データに変換する手段を備え、
演算部(2c)は、検出データに演算を施して実用データ又は算出データに変換する手段を備え、
表示部(4)、通信部(5)、及びポート(6)は、制御部の割り振りに応じ、検出データ、実用データ、又は算出データのいずれかを出力する手段を備えることを特徴とするエンコーダ。
【請求項2】
前記検出部に、温度センサ(1c)を備えることを特徴とする前記請求項1に記載のエンコーダ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−129728(P2012−129728A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278304(P2010−278304)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(591020445)立山科学工業株式会社 (71)
【Fターム(参考)】