説明

エンジニアリングプラスチック用プライマー組成物

【課題】エンジニアリングプラスチック等に対する接着性に優れるエンジニアリングプラスチック用プライマー組成物の提供。
【解決手段】フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸およびセバシン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種のジカルボン酸を用いて製造され、数平均分子量が15,000以下であるポリエステルポリオール(A)と、ポリイソシアネート(B)とを有するエンジニアリングプラスチック用プライマー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジニアリングプラスチック用プライマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジニアリングプラスチック、スーパーエンジニアリングプラスチック(以下これらを本願明細書において「エンジニアリングプラスチック等」という。)は、強度、強靭性、耐熱性を有する高機能樹脂であり、自動車部品や機械部品、電子・電気部品など幅広い分野で使用されている。
しかしながら、エンジニアリングプラスチック等に従来のプライマー組成物を使用しても十分な接着性が得られないという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明は、エンジニアリングプラスチック等との接着性に優れるプライマー組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸およびセバシン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種のジカルボン酸を用いて製造され、数平均分子量が15,000以下であるポリエステルポリオール(A)と、ポリイソシアネート(B)とを有する組成物が、エンジニアリングプラスチック等との接着性に優れることを見出し、本発明を完成させた。
【0005】
即ち、本発明は、下記(1)〜(4)を提供する。
(1) フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸およびセバシン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種のジカルボン酸を用いて製造され、数平均分子量が15,000以下であるポリエステルポリオール(A)と、ポリイソシアネート(B)とを有するエンジニアリングプラスチック用プライマー組成物。
(2) 前記ポリエステルポリオール(A)が、エチレングリコールおよび1,3−ネオペンチルグリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種のジオールを用いて製造されるものである上記(1)に記載のエンジニアリングプラスチック用プライマー組成物。
(3) 前記ポリエステルポリオール(A)が、10mgKOH/g以上の水酸基価を有する上記(1)または(2)のエンジニアリングプラスチック用プライマー組成物。
(4) 前記ポリエステルポリオール(A)が、10℃以上のガラス転移温度を有する上記(1)〜(3)のいずれかに記載のエンジニアリングプラスチック用プライマー組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明の組成物は、エンジニアリングプラスチックまたはスーパーエンジニアリングプラスチックとの接着性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明のエンジニアリングプラスチック用プライマー組成物は、
フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸およびセバシン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種のジカルボン酸を用いて製造され、数平均分子量が15,000以下であるポリエステルポリオール(A)と、ポリイソシアネート(B)とを有する組成物である。
以下本発明のエンジニアリングプラスチック用プライマー組成物を「本発明の組成物」ということがある。
【0008】
ポリエステルポリオール(A)について以下に説明する。
本発明の組成物が有するポリエステルポリオール(A)は、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸およびセバシン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種のジカルボン酸を用いて製造され、ポリエステルポリオール(A)の数平均分子量は15,000以下である。
【0009】
本発明において、本発明の組成物に使用されるポリエステルポリオール(A)の数平均分子量は、エンジニアリングプラスチック等に対する接着性に優れるという観点から、15,000以下である。
また、ポリエステルポリオール(A)の数平均分子量は、エンジニアリングプラスチック等に対する接着性により優れるという観点から、500〜15,000であるのが好ましく、1,800〜15,000であるのがより好ましい。
なお、本発明において数平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算値である。
【0010】
ポリエステルポリオール(A)を製造する際に使用されるジカルボン酸は、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸およびセバシン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
ジカルボン酸の組合せは、エンジニアリングプラスチック等に対する接着性により優れるという観点から、フタル酸とテレフタル酸との組合せ、イソフタル酸とテレフタル酸との組合せ、イソフタル酸とフタル酸とセバシン酸との組合せが好ましい。
ジカルボン酸は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0011】
ポリエステルポリオール(A)を製造する際に使用されるポリオールは特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、(1,3−または1,4−)ブタンジオール、ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールのようなジオール;グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパン(TMP)、1,2,5−ヘキサントリオールのようなトリオール;ペンタエリスリトールのような4価以上のポリオール;ソルビトールのような糖類が挙げられる。
【0012】
なかでも、エンジニアリングプラスチック等に対する接着性により優れるという観点から、ジオールであるのが好ましく、エチレングリコールおよび1,3−ネオペンチルグリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種のジオールであるのがより好ましい。
ポリオールはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0013】
ポリエステルポリオール(A)を製造する際に使用されるジカルボン酸とジオールとの組合せは、エンジニアリングプラスチック等に対する接着性により優れるという観点から、イソフタル酸、テレフタル酸およびセバシン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種とネオペンチルグリコールおよび/またはエチレングリコールとの組合せが好ましく、イソフタル酸とネオペンチルグリコールとの組合せ、イソフタル酸とセバシン酸とネオペンチルグリコールとの組合せ、イソフタル酸とテレフタル酸とエチレングリコールとの組合せがより好ましい。
【0014】
ポリエステルポリオール(A)は、エンジニアリングプラスチック等に対する接着性により優れるという観点から、10mgKOH/g以上の水酸基価を有するのが好ましく、10〜100mgKOH/gの水酸基価を有するのがより好ましい。
なお、本発明において、水酸基価は、JIS K 0070:1992に準じて測定された。
【0015】
ポリエステルポリオール(A)は、エンジニアリングプラスチック等に対する接着性に優れるという観点から、10℃以上のガラス転移温度を有するのが好ましく、10〜50℃のガラス転移温度を有するのがより好ましい。
なお本願明細書において、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分の条件下において熱量計測定装置(TGA)を行って得られた値をポリエステルポリオール(A)のガラス転移温度とした。
【0016】
ポリエステルポリオール(A)はその製造について特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
また、ポリエステルポリオール(A)として市販品を使用することができる。
ポリエステルポリオール(A)の市販品としては、例えば、GK680(固形分40%、Mn6,000、水酸基価21mgKOH/g、ガラス転移温度10℃、東洋紡績社製)、GK890(固形分40%、Mn11,000、水酸基価13mgKOH/g、ガラス転移温度17℃、東洋紡績社製)、UE3320(固形分40%、Mn1,800、水酸基価60mgKOH/g、ガラス転移温度40℃、ユニチカ社製)、GK810(固形分40%、Mn6,000、水酸基価19mgKOH/g、ガラス転移温度6℃、東洋紡績社製)、UE9200(固形分40%、Mn15,000、水酸基価6mgKOH/g、ガラス転移温度65℃、ユニチカ社製)が挙げられる。
【0017】
ポリエステルポリオール(A)は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0018】
ポリイソシアネート(B)について以下に説明する。
本発明の組成物が有するポリイソシアネート(B)は、イソシアネート基を2個以上有する化合物であれば特に制限されない。
例えば、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4′−MDI)、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4′−MDI)、1,4−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)等の芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルナンジイソシアナートメチル(NBDI)、H6XDI(水添XDI)、H12MDI(水添MDI)、H6TDI(水添TDI)等の脂環族炭化水素基を有するジイソシアネート等が挙げられる。
【0019】
また、ポリイソシアネート(B)としては、例えば、イソシアヌレート型ポリイソシアネート、アダクト型ポリイソシアネート、ウレタンプレポリマーが挙げられる。
【0020】
ポリイソシアネート(B)としてのイソシアヌレート型ポリイソシアネートは、下記式(1)で表される化合物である。
【0021】
【化1】

【0022】
式中、R1は、分子内にイソシアネート基を2個有するジイソシアネート化合物からイソシアネート基を除いた残基を表す。また、複数のR1は、同一であっても異なっていてもよい。
【0023】
イソシアヌレート型ポリイソシアネートを製造する際に使用されるジイソシアネート化合物は、分子内にイソシアネート基を2個有する化合物であれば特に限定されず、例えば、上述したポリイソシアネートが挙げられる。
中でも、TDI、HDI、IPDI、TMXDI、XDIであるのが、組成物の硬化性が良好となり、接着性により優れるという観点から好ましい。
【0024】
イソシアヌレート型ポリイソシアネートとしては、例えば、IPDIイソシアヌレート3量体、HDIイソシアヌレート3量体、TDIイソシアヌレート3量体、TMXDIイソシアヌレート3量体、HDIとTDIとの混合イソシアヌレート3量体、XDIイソシアヌレート3量体が挙げられる。
【0025】
イソシアヌレート型ポリイソシアネートの市販品として、例えば、HDIイソシアヌレート3量体(タケネートD−170N、三井武田ケミカルズ社製)、HDIイソシアヌレート3量体(スミジュール N3300、住化バイエルウレタン社製)、IPDIイソシアヌレート3量体(T1890、デグッサ社製)、HDIとTDIとの混合イソシアヌレート3量体(デスモジュールL、住化バイエルウレタン社製)、HDIとTDIとの混合イソシアヌレート3量体(デスモジュールHL、住化バイエルウレタン社製)が挙げられる。
【0026】
本発明においては、イソシアヌレート型ポリイソシアネートの粘度は3,000〜10,000mPa・s(cP)であるのが好ましく、4,000〜8,000mPa・s(cP)であるのがより好ましい。粘度の範囲がこのような範囲である場合、組成物の成膜性に優れる。
【0027】
ポリイソシアネート(B)としてのアダクト型ポリイソシアネートは、分子内にイソシアネート基およびウレタン結合をそれぞれ3個以上有する化合物である。
本発明においては、アダクト型ポリイソシアネートを含有する場合、エンジニアリングプラスチック等、中でも難接着性のエンジニアリングプラスチック等を含有するプラスチック成形品の表面と、金属蒸着膜や塗膜との接着性に優れたものとなる。これは、アダクト型ポリイソシアネートが分子内に3個以上のイソシアネート基のみならず3個以上のウレタン結合をも有するため、組成物の硬化後の架橋密度が上がり、強固な三次元網目構造が形成されるためであると考えられる。
【0028】
アダクト型ポリイソシアネートとしては、例えば、以下に例示する低分子多価アルコール類とジイソシアネート化合物との付加体が挙げられる。
【0029】
アダクト型ポリイソシアネートを製造する際に使用されるジイソシアネート化合物は、分子内にイソシアネート基を2個有する化合物であれば特に限定されず、例えば、上述したポリイソシアネートが挙げられる。
なかでも、TDI、HDI、IPDI、TMXDI、XDIであるのが、組成物の硬化性が良好となり、接着性により優れるという観点から好ましい。
【0030】
低分子多価アルコール類としては、例えば、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール、プロピレングリコール(PG)、ジプロピレングリコール、(1,3−または1,4−)ブタンジオール、ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールのようなジオール;グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパン(TMP)、1,2,5−ヘキサントリオールのようなトリオール;ペンタエリスリトールのような4価以上のポリオール;ソルビトールのような糖類が挙げられる。
なかでも、TMPが、組成物の硬化性が良好となり、接着性により優れ、塗膜の硬度にも優れるという観点から好ましい。
【0031】
アダクト型ポリイソシアネートとしては、例えば、IPDIアダクト体、HDIアダクト体、TDIアダクト体、TMXDIアダクト体、HDIとTDIとの混合アダクト体、XDIアダクト体が挙げられる。
具体的なアダクト型ポリイソシアネートとしては、例えば、下記式(2)で表されるTMPアダクト体が挙げられる。
【0032】
【化2】

【0033】
式中、R2は、分子内にイソシアネート基を2個有するジイソシアネート化合物からイソシアネート基を除いた残基を表す。また、複数のR2は、同一であっても異なっていてもよい。
【0034】
式(2)で表されるTMPアダクト体としては、例えば、TMPとIPDIとから合成されるIPDI・TMPアダクト体、TMPとTMXDIとから合成されるTMXDI・TMPアダクト体、TMPとHDIとから合成されるHDI・TMPアダクト体、TMPとTDIとから合成されるTDI・TMPアダクト体、TMPとXDIとから合成されるXDI・TMPアダクト体等が挙げられる。
【0035】
アダクト型ポリイソシアネートの市販品として、例えば、IPDI・TMPアダクト体(D140N、三井化学ポリウレタン社製)、TMXDI・TMPアダクト体(サイセン3174、日本サイテックインダストリーズ社製)、HDI・TMPアダクト体(D160N、三井化学ポリウレタン社製)、TDI・TMPアダクト体(スミジュールL75、バイエル社製)、XDI・TMPアダクト体(タケネートD−120N、三井化学ポリウレタン社製)が挙げられる。
【0036】
アダクト型ポリイソシアネートは、全てのヒドロキシ基がイソシアネート基と付加していなくてもよい。また、アダクト型ポリイソシアネートは未反応原料を含んでいてもよい。
また、アダクト型ポリイソシアネートとして、例えば、ポリアミン(例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレントリアミン等)とジイソシアネート化合物との付加体を使用することができる。
【0037】
ポリイソシアネート(B)としてのウレタンプレポリマーは特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
具体的には、例えば、ポリオールとポリイソシアネートとを、ヒドロキシ基に対してイソシアネート基が過剰となるように反応させることにより得られるものが挙げられる。
ウレタンプレポリマーを製造する際に使用されるポリイソシアネートはイソシアネート基を2個以上有する化合物であれば特に制限されない。例えば、上記と同義のものが挙げられる。
ウレタンプレポリマーを製造する際に使用されるポリイソシアネートはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0038】
ウレタンプレポリマーを製造する際に使用されるポリオールはヒドロキシ基を2個以上有するものであれば特に限定されない。例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、その他のポリオール、これらの混合ポリオールが挙げられる。
【0039】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパン、1,2,5−ヘキサントリオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール及びペンタエリスリトールからなる群から選ばれる少なくとも1種に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド及びポリオキシテトラメチレンオキサイドからなる群から選ばれる少なくとも1種を付加させて得られるポリオールが挙げられる。
【0040】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパン及びその他の低分子ポリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種と、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、ダイマー酸、その他の脂肪族カルボン酸及びオリゴマー酸からなる群から選ばれる少なくとも1種との縮合重合体;プロピオンラクトン、バレロラクトンの開環重合体が挙げられる。
【0041】
その他のポリオールとしては、例えば、ポリマーポリオール、ポリカーボネートポリオール;ポリブタジエンポリオール;水素添加されたポリブタジエンポリオール;アクリルポリオール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオールのような低分子量のポリオールが挙げられる。
ポリオール化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0042】
ウレタンプレポリマーとしては、例えば、XDI、HDI、MDI、IPDIおよびTDIからなる群から選ばれる少なくとも1種とポリエーテルポリオールとから得られるものであるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
ポリイソシアネート(B)は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0043】
ポリイソシアネート(B)は、エンジニアリングプラスチック等に対する接着性により優れるという観点から、ポリエステルポリオール(A)が有するヒドロキシ基に対して、ポリイソシアネート(B)が有するイソシアネート基が0.6〜1.2当量となる量で使用するのが好ましく、0.8〜1.0当量となる量で使用するのがより好ましい。
【0044】
本発明の組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、例えば、充填剤、老化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、接着性付与剤、分散剤、酸化防止剤、消泡剤、レベリング剤、艶消し剤、光安定剤(例えば、ヒンダードアミン系化合物等)、染料、顔料、溶剤のような添加剤を含有することができる。
【0045】
充填剤としては、例えば、ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレーのようなクレー;ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカのようなシリカ;けいそう土;酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウムのような金属酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛のような金属炭酸塩;カーボンブラック;これらを、脂肪酸、樹脂酸、脂肪酸エステル処理物、脂肪酸エステルウレタン化合物によって表面処理したものが挙げられる。
【0046】
老化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)が挙げられる。
帯電防止剤としては、例えば、第四級アンモニウム塩;ポリグリコール、エチレンオキサイド誘導体等の親水性化合物が挙げられる。
【0047】
難燃剤としては、例えば、クロロアルキルホスフェート、ジメチル・メチルホスホネート、臭素・リン化合物、アンモニウムポリホスフェート、ネオペンチルブロマイド−ポリエーテル、臭素化ポリエーテルが挙げられる。
接着性付与剤としては、例えば、テルペン樹脂、フェノール樹脂、テルペン−フェノール樹脂、ロジン樹脂、キシレン樹脂、エポキシ樹脂が挙げられる。
【0048】
レベリング剤としては、例えば、シリコーン系レベリング剤、アクリル系レベリング剤、ビニル系レベリング剤、フッ素系レベリング剤等が挙げられる。
【0049】
溶剤としては、例えば、トルエン、キシレンのような芳香族化合物;ブタノールのようなアルコール;プロピレングリコールモノメチルエーテルのようなエーテル;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシプロピル、プロピオン酸エトキシエチルのようなエステル;アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、メチルエチルケトンのようなケトンが挙げられる。
【0050】
本発明の組成物の固形分濃度は、組成物全体中、5〜20質量%であるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0051】
本発明の組成物は、その製造について特に限定されない。例えば、反応容器にポリエステルポリオール(A)とポリイソシアネート(B)と必要に応じて使用することができる添加剤とを入れ、減圧下で混合ミキサー等のかくはん機を用いて十分に混練する方法が挙げられる。
【0052】
また、本発明の組成物は、2液型組成物として製造するのが貯蔵安定性に優れるという観点から好ましい。本発明の組成物を2液型として製造する場合、第1液をポリエステルポリオール(A)とし、第2液をポリイソシアネート(B)として、それぞれを別々の容器に入れて製造することができる。必要に応じて、第1液、第2液に添加剤を加えることができる。
本発明の組成物を2液型として製造した場合、使用時に第1液と第2液とを例えば混合ミキサー等のかくはん機を用いて十分に混合することによって使用することができる。
【0053】
本発明の組成物は、エンジニアリングプラスチック、スーパーエンジニアリングプラスチック用のプライマー組成物として使用することができる。また、本発明の組成物を例えば、プラスチック表面保護剤、接着剤等として使用することができる。
【0054】
本発明の組成物は基材として例えばプラスチック、ガラス、ゴム、金属に適用することができる。
プラスチックは特に制限されず、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれにも使用することができる。
なかでもエンジニアリングプラスチックやスーパーエンジニアリングプラスチックに対して本発明の組成物を使用する場合、本発明の組成物はエンジニアリングプラスチック等に対して優れた接着性を発揮する。
【0055】
本発明の組成物を適用させることができる、エンジニアリングプラスチック、スーパーエンジニアリングプラスチックは特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
本発明の組成物を適用することができる具体的なエンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートのような熱可塑性ポリエステル、超高分子量ポリエチレンが挙げられる。
本発明の組成物を適用することができる具体的なスーパーエンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリマー(例えば、エチレンテレフタレートとp−ヒドロキシ安息香酸との重縮合体、フェノールとフタル酸とp−ヒドロキシ安息香酸との重縮合体、2,6−ヒドロキシナフトエ酸とp−ヒドロキシ安息香酸との重縮合体)、非晶ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、熱可塑性ポリイミド、フッ素樹脂が挙げられる。
【0056】
本発明の組成物を塗布する方法は、特に限定されず、例えば、はけ塗り、流し塗り、浸漬塗り、スプレー塗り、スピンコート等の公知の塗布方法を採用できる。
【0057】
本発明の組成物の塗布量としては、硬化後の塗膜の膜厚が0.05〜10μmとなるようにするのが好ましい。硬化して得られた塗膜の膜厚が0.05μm以上である場合、特に基材であるエンジニアリングプラスチック等の表面劣化の防止効果に優れ、10μm以下である場合、基材との密着性により優れ、クラックの発生を防ぐことができる。
【0058】
本発明の組成物の硬化方法としては、例えば、熱による硬化方法が挙げられる。
本発明の組成物を熱で硬化させる場合、80〜120℃の条件下で本発明の組成物を加熱することができる。
本発明の組成物をエンジニアリングプラスチック等に塗布し硬化させることによって、本発明の組成物の硬化物とエンジニアリングプラスチック等との積層体を得ることができる。
加熱は本発明の組成物の上に例えば金属層を設ける前に、または金属層を設けた後に行うことができる。
加熱後本発明の組成物はプライマー層となる。
【0059】
本発明において、本発明の組成物の上にさらに、例えば、金属層、塗膜を形成することができる。
本発明の組成物の上に金属層を形成する方法は、特に限定されない。例えば、金属蒸着または金属を含有する塗料の塗布を行い金属層を形成させる方法が挙げられる。
金属蒸着において使用される金属は、特に限定されず、例えば、スズ、アルミニウム、ニッケル、銅、インジウム等が挙げられる。
金属層の形成に用いる塗料は金属を含有するものであれば特に限定されず、例えば従来公知の塗料を使用できる。
【0060】
本発明の組成物とエンジニアリングプラスチック等との積層体について以下添付の図面を用いて説明する。
図1は、本発明の組成物とエンジニアリングプラスチック等との積層体の一例の断面を模式的に示す断面図である。
図1において、積層体100は、本発明の組成物102とエンジニアリングプラスチック等104とを有する。
加熱後本発明の組成物102はプライマー層102となる。
【0061】
図2は、本発明の組成物とエンジニアリングプラスチック等と金属層との積層体の一例の断面を模式的に示す断面図である。
図2において、積層体200は、本発明の組成物202とエンジニアリングプラスチック等204と金属層206とを有する。
加熱後本発明の組成物202はプライマー層202となる。
積層体の製造はプライマー組成物として本発明の組成物を使用するほかは特に制限されず、例えば上記と同様のものが挙げられる。
【実施例】
【0062】
以下実施例を示して本発明をより詳細に説明する。ただし本発明は実施例に限定されない。
1.プライマー組成物の製造
下記第1表に示す各成分を第1表に示す組成(質量部)でかくはん機を用いて混合し、プライマー組成物を得た。
なお、ポリエステルポリオール(A1)〜(A7)は、溶剤を含有した状態の量として記載した。
また、ポリイソシアネート(B1)〜(B5)は、ポリエステルポリオール(A)が有するヒドロキシ基に対して、ポリイソシアネート(B)が有するイソシアネート基が1.0当量となる量として記載した。
【0063】
2.評価
得られたプライマー組成物の接着性を以下の方法により評価した。結果を下記第1表に示す。
【0064】
接着性の評価は、碁盤目テープはく離試験によって行った。
具体的には、まず、基材(液晶ポリマー、商品名:スミカスーパーLCP E5204L、住友化学社製)を水平となるように置き、基材の表面に得られたプライマー組成物を膜厚0.1μmとなるようにスプレーで塗布した。塗布後、基材をオーブンに入れ80℃の条件下で30分間加熱してプライマー組成物を硬化させ、試験体を得た。
次に、得られた試験体の塗膜上に、カッターナイフで塗膜を貫通して基材の面に達する切り目を入れて1mm間隔の基盤目100個(縦10列×横10列)を作り、基盤目上にセロハン粘着テープ(幅18mm)を完全に付着させ、直ちにテープを瞬間的に引き離して碁盤目テープ剥離試験を行った。
テープを剥がした後、基材の上に完全に剥がれないで残ったプライマー層の基盤目の数を数え、これを初期の碁盤目テープ剥離試験の結果とした。
また、上記と同様にして各試験体を4つ準備し、4つの試験体を85℃、85%RHの条件下にそれぞれ24時間、48時間、96時間、120時間置き、各時間の経過後、上記と同様にして碁盤目テープ剥離試験を行い、上記と同様にして評価した。
基材の上に残ったプライマー層の基盤目の数が90個以上である場合実用可能であるとした。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【0067】
【表3】

【0068】
【表4】

【0069】
第1表に示す各成分は、下記のとおりである。
・ポリエステルポリオール(A1):GK680(固形分40%、数平均分子量Mn6,000、水酸基価21mgKOH/g、ガラス転移温度10℃)、東洋紡績社製
・ポリエステルポリオール(A2):GK890(固形分40%、数平均分子量Mn11,000、水酸基価13mgKOH/g、ガラス転移温度17℃)、東洋紡績社製
・ポリエステルポリオール(A3):UE3320(固形分40%、数平均分子量Mn1,800、水酸基価60mgKOH/g、ガラス転移温度40℃)、ユニチカ社製
・ポリエステルポリオール(A4):GK810(固形分40%、数平均分子量Mn6,000、水酸基価19mgKOH/g、ガラス転移温度6℃)、東洋紡績社製
・ポリエステルポリオール(A5):UE9200(固形分40%、数平均分子量Mn15,000、水酸基価6mgKOH/g、ガラス転移温度65℃)、ユニチカ社製
・ポリエステルポリオール(A6):GK640(固形分40%、数平均分子量Mn18,000、水酸基価5mgKOH/g、ガラス転移温度79℃)、東洋紡績社製
・ポリエステルポリオール(A7):GK880(固形分40%、数平均分子量Mn18,000、水酸基価5mgKOH/g、ガラス転移温度84℃)、東洋紡績社製
・ポリイソシアネート(B1):XDI−TMPアダクト体(タケネートD−120N、三井化学ポリウレタン社製)
・ポリイソシアネート(B2):ヘキサメチレンジイソシアネート(旭化成社製)
・ポリイソシアネート(B3):ジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン社製)
・ポリイソシアネート(B4):イソフォロンジイソシアネート(三井化学ポリウレタン社製)
・ポリイソシアネート(B5):トリレンジイソシアネート(三井武田ケミカル社製)
【0070】
本願発明者は、実施例、比較例において使用されたポリエステルポリオール(A1)〜(A7)について1H−NMR測定による分析を行った。1H−NMR測定において溶媒としてCDClを使用した。
1H−NMR測定による分析結果は次のとおりである。なお、各化学シフトの単位はppmである。
ポリエステルポリオール(A1):8.7(s)、8.2(s)、7.7(s)、7.5(s)、4.3−4.1(m)、4.0(s)、3.8(m)、2.3(s)、1.6(s)、1.5−0.9(m)
以上の結果からポリエステルポリオール(A1)には、ジカルボン酸としてイソフタル酸、フタル酸およびセバシン酸が使用され、ポリオールとしてネオペンチルグリコールが使用されている。
【0071】
ポリエステルポリオール(A2):8.7(s)、8.2(s)、7.5(s)、4.4−4.1(m)、4.1−3.8(m)、2.3(s)、1.6(s)、1.2−0.9(m)
以上の結果からポリエステルポリオール(A2)には、ジカルボン酸としてイソフタル酸およびセバシン酸が使用され、ポリオールとしてネオペンチルグリコールが使用されている。
【0072】
ポリエステルポリオール(A3):8.7(s)、8.2(s)、8.1(s)、7.5(s)、4.8(s)、4.3(s)、1.2(s)、1.1(s)
以上の結果からポリエステルポリオール(A3)には、ジカルボン酸としてイソフタル酸およびテレフタル酸が使用され、ポリオールとしてエチレングリコールが使用されている。
【0073】
ポリエステルポリオール(A4):8.7(s)、8.2(s)、8.1(s)、7.5(s)、4.3(s)、1.2−0.9(m)
以上の結果からポリエステルポリオール(A4)には、ジカルボン酸としてイソフタル酸およびテレフタル酸が使用され、ポリオールとしてネオペンチルグリコールが使用されている。
【0074】
ポリエステルポリオール(A5):8.7(s)、8.2(s)、8.1(s)、7.5(s)、4.8(s)、4.3(s)
以上の結果からポリエステルポリオール(A5)には、ジカルボン酸としてイソフタル酸が使用され、ポリオールとしてエチレングリコールおよびネオペンチルグリコールが使用されている。
【0075】
ポリエステルポリオール(A6):8.7(s)、8.2(s)、8.1(s)、7.5(s)、5.5(s)、4.8(s)、4.5(s)、1.5(s)
以上の結果からポリエステルポリオール(A6)には、ジカルボン酸としてイソフタル酸およびテレフタル酸が使用され、ポリオールとしてエチレングリコールおよび1,3−プロピレングリコールが使用されている。
【0076】
ポリエステルポリオール(A7):8.2(s)、5.5(s)、4.8(s)、4.5(s)、1.5(s)
以上の結果からポリエステルポリオール(A7)には、ジカルボン酸としてテレフタル酸が使用され、ポリオールとしてエチレングリコールおよび1,3−プロピレングリコールが使用されている。
【0077】
第1表に示す結果から明らかなように、数平均分子量が15,000を超えるポリエステルポリオールを使用する比較例1〜10は、エンジニアリングプラスチック等に対する接着性が初期の段階で既に劣った。
一方、実施例1〜29は、エンジニアリングプラスチック等に対する接着性に優れた。
また、実施例1〜29は、初期接着性だけでなく、高温、高湿度の条件下に長時間置かれた後もエンジニアリングプラスチック等に対して優れた接着性を示した。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】図1は、本発明の組成物とエンジニアリングプラスチック等との積層体の一例の断面を模式的に示す断面図である。
【図2】図2は、本発明の組成物とエンジニアリングプラスチック等と金属層との積層体の一例の断面を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0079】
100、200 積層体
102、202 本発明の組成物(プライマー層)
104、204 エンジニアリングプラスチック等
206 金属層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸およびセバシン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種のジカルボン酸を用いて製造され、数平均分子量が15,000以下であるポリエステルポリオール(A)と、ポリイソシアネート(B)とを有するエンジニアリングプラスチック用プライマー組成物。
【請求項2】
前記ポリエステルポリオール(A)が、エチレングリコールおよび1,3−ネオペンチルグリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種のジオールを用いて製造されるものである請求項1に記載のエンジニアリングプラスチック用プライマー組成物。
【請求項3】
前記ポリエステルポリオール(A)が、10mgKOH/g以上の水酸基価を有する請求項1または2のエンジニアリングプラスチック用プライマー組成物。
【請求項4】
前記ポリエステルポリオール(A)が、10℃以上のガラス転移温度を有する請求項1〜3のいずれかに記載のエンジニアリングプラスチック用プライマー組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−179710(P2009−179710A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−19620(P2008−19620)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】