説明

エンジニアリング装置

【課題】 再利用する汎用部品オブジェクトの情報を、利用先の汎用部品オブジェクトに自動的に反映させることができるエンジニアリング装置を実現する。
【解決手段】 機能部品を組み合わせた汎用部品を生成するドローイングビルダと、生成された汎用部品をデータベースに登録すると共に、登録された汎用部品を前記ドローイングビルダに引用して汎用部品オブジェクトとして利用する汎用部品管理手段と、を有するエンジニアリング装置において、
前記ドローイングビルダ内で動作実績の確認された前記汎用部品オブジェクトを参照して前記集合部品管理手段に登録する、再利用手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能部品を組み合わせた汎用部品を生成するドローイングビルダと、生成された汎用部品を汎用部品データベースに登録すると共に、登録された汎用部品を前記ドローイングビルダに引用して汎用部品オブジェクトとして利用する汎用部品管理手段と、を有するエンジニアリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図3は、分散型制御システムに接続された従来のエンジニアリング装置の構成例を示す機能ブロック図である。
【0003】
分散型制御システムの操作監視装置1は、制御バス2に接続されている。制御装置31,32,…3nは、制御バス2に接続されて操作監視装置1と通信する。これら制御装置は、上位装置よりダウンロードされる制御アプリケーションを保持するアプリケーションデータベース41,42,…4nを備えている。
【0004】
各制御装置は、制御装置31を代表として示せば、フィールドバス5を介してプラント6の機器61,62,…6nと通信し、制御アプリケーションを実行してこれら機器の制御を実行する。
【0005】
エンジニアリング装置7は、制御バス2に接続され、操作監視装置1と共に制御装置31,32,…3nの上位装置として機能する。エンジニアリング装置7の基本機能は、制御装置31,32,…3nで実行される制御アプリケーションプログラムを生成して各制御装置にダウンロードする機能及び操作監視装置1で稼動するGUIプログラムを生成して操作監視装置1にダウンロードする機能である。
【0006】
以下、制御アプリケーションプログラムの生成と各制御装置へのダウンロードに関する機能を説明する。制御アプリケーションプログラム生成のための編集機能を持つドローイングビルダ71は、制御装置31,32,…3nに1:1に対応して複数のドローイングビルダDR−1,DR−2,…DR−nで構成されている。
【0007】
以下、ドローイングビルダ71の機能につき、DR−1を代表として説明する。エンジニアリング装置7では、制御の処理単位を、機能部品生成手段72により機能部品として予め生成し、機能部品ライブラリ73に登録して保持している。
【0008】

ドローイングビルダ71は、この機能部品ライブラリ73を参照して複数の機能部品を組み合わせ、所定の制御機能(例:PID演算処理機能)を持つ汎用部品に編集し、汎用部品管理手段74に渡して汎用部品データベース75に登録する。
【0009】
汎用部品データベース75に登録された汎用部品は、汎用部品管理手段74を介してドローイングビルダ71に引用され、他の汎用部品作成のための元データとして利用される。
【0010】
汎用部品データベース75に登録された引用元となった汎用部品を、ORG−1で示す。この汎用部品ORG−1がドローイングビルダDR−1に引用されて作成された複数の汎用部品を、汎用部品オブジェクトOBJ−1,OBJ−2,…OBJ−Nで示す。
【0011】
これら汎用部品オブジェクトが、制御装置31のデータベース41にダウンロードされる制御アプリケーションプログラムとなる。他のドローイングビルダDR−2,…DR−n上の汎用部品オブジェクトと制御装置32,…3nのアプリケーションデータベース42,…4nの関係も同様である。
【0012】
ドローイングビルダDR−1,DR−2,…DR−nでの編集内容は、エンジニアリングデータベース76に保持されると共に、バックアップデータベース77によりバックアップされている前回更新時のデータが参照され、その差分データがダウンロード処理手段78を介して制御装置31,32,…3nのアプリケーションデータベース42,…4nにダウンロードされる。
【0013】
あるドローイングビルダ上において、すでにダウンロード先の制御装置で稼動する制御ループで動作実績のある汎用部品オブジェクトを、他のドローイングビルダで再利用したい要求がある。
【0014】
このような再利用要求に対する従来の手法は、コピー手段79を用いて、再利用したい汎用部品オブジェクト、例えばドローイングビルダDR−1の汎用部品オブジェクトOBJ-1をコピーし、これを再利用先のドローイングビルダDR−nに貼り付ける手法が一般である。図4は、従来のコピー手法による汎用部品オブジェクトの従来の再利用形態を示すイメージ図である。
【0015】
特許文献1には、複数の機能ブロックで構成される制御のまとまりを定義した制御ドローイングを用いた制御ドローイング装置が記載されている。
【0016】
【特許文献1】特開平11−202908号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従来技術による一括更新では、次のような問題がある。
(1)コピーした汎用部品オブジェクトによる制御ループでは、エンジニアリング後に他の機能ブロックと同様に動作テストを行なう必要がある。即ち、コピー手法による再利用ではテスト工数の削減には貢献できない。
【0018】
(2)コピー元である汎用部品オブジェクトを変更した場合には、再利用しているコピー先の汎用部品オブジェクト全てを作り直す必要がある。即ち、コピー手法ではエンジニアリング工数の削減には貢献できない。
【0019】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、再利用する汎用部品オブジェクトの情報を、利用先の汎用部品オブジェクトに自動的に反映させることができるエンジニアリング装置の実現を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
このような課題を達成するために、本発明は次の通りの構成になっている。
(1)機能部品を組み合わせた汎用部品を生成するドローイングビルダと、生成された汎用部品をデータベースに登録すると共に、登録された汎用部品を前記ドローイングビルダに引用して汎用部品オブジェクトとして利用する汎用部品管理手段と、を有するエンジニアリング装置において、
前記ドローイングビルダ内で動作実績の確認された汎用部品オブジェクトを参照して前記集合部品管理手段に登録する、再利用手段を備えることを特徴とするエンジニアリング装置。
【0021】
(2)前記再利用手段は、画面表示されたドローイングビルダ上の再利用対象の汎用部品オブジェクトを、画面表示された前記集合部品管理手段にドラッグ・アンド・ドロップすることで登録する、ユーザインターフェースを備えることを特徴とする(1)に記載のエンジニアリング装置。
【0022】
(3)前記集合部品管理手段は、前記再利用手段により登録された前記汎用部品オブジェクトを、そのオブジェクトを再利用する先のドローイングビルダに貼り付けることを特徴とする(1)または(2)に記載のエンジニアリング装置。
【0023】
(4)前記ドローイングビルダは、分散型制御システムの制御装置に対応して設けられ、ドローイングビルダ上の汎用部品オブジェクトが前記制御装置で実行されるアプリケーションプログラムとして前記制御装置のデータベースにダウンロードされることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載のエンジニアリング装置。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したことから明らかなように、本発明によれば次のような効果がある。
(1)動作実績のある汎用部品オブジェクトを汎用部品として登録し、これを利用先のドローイングビルダに引用することで、この汎用部品オブジェクトをダウンロードした制御ループでは、エンジニアリング後に動作テストを行なう必要がない。これにより、テスト工数の削減に貢献することができる。
【0025】
(2)引用元である汎用部品を変更した場合には、再利用している汎用部品オブジェクト全てにその変更が反映されるので、個々に汎用部品オブジェクトを作り直す必要がない。これにより、エンジニアリング工数の削減に貢献することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を図面により詳細に説明する。図1は、分散型制御システムに接続された本発明の実施形態を示す機能ブロック図である。図3で説明した従来のエンジニアリング装置と同一要素には同一符号を付し、説明を省略する。
【0027】
本発明の特徴部は、太線のブロックで示した再利用手段100である。この再利用手段は、ドローイングビルダ71上にある動作実績が確認されている汎用部品オブジェクトを参照し、汎用部品管理手段74にこれを登録する。
【0028】
図2は、再利用手段100による、動作実績のある汎用部品オブジェクトの参照と登録の画面操作のイメージ図である。再利用手段100は画面表示されず、画面表示されたドローイングビルダDR−1上の再利用対象の汎用部品オブジェクトOBJ-1を、集合部品管理手段74の表示画面74aにドラッグ・アンド・ドロップすることで登録が完了するユーザインターフェースを備えている。
【0029】
集合部品管理手段表示画面74aの左ペインには、登録されている汎用部品の一覧が階層的に表示されている。再利用手段100を介して登録したい汎用部品のフォルダ、例えば網掛け表示せれたPID Loopを選択して右側ペインにそのフォルダを開き、この領域にドローイングビルダDR−1の汎用部品オブジェクトOBJ-1をドラッグ・アンド・ドロップする。
【0030】
集合部品管理手段74は、再利用手段100により登録された汎用部品オブジェクトOBJ-1を、そのオブジェクトを再利用する先のドローイングビルダに貼り付ける。
【0031】
以上説明した実施形態では、エンジニアリング装置7の基本機能として、制御装置31,32,…3nで実行される制御アプリケーションプログラムを生成して各制御装置にダウンロードする機能を説明したが、操作監視装置1で稼動するGUIプログラムを生成して操作監視装置1にダウンロードする機能に対しても本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】分散型制御システムに接続された本発明のエンジニアリング装置の実施形態を示す機能ブロック図である。
【図2】再利用手段による、動作実績のある汎用部品オブジェクトの参照と登録の画面操作のイメージ図である。
【図3】分散型制御システムに接続された従来のエンジニアリング装置の構成例を示す機能ブロック図である。
【図4】汎用部品オブジェクトの従来のコピー手法による再利用形態を示すイメージ図である。
【符号の説明】
【0033】
1 操作監視装置
2 制御バス
31,32,…3n 制御装置
41,42,…4n アプリケーションデータベース
5 フィールドバス
6 プラント
61,62,…6n 機器
7 エンジニアリング装置
71 ドローイングビルダ
72 機能部品生成手段
73 機能部品ライブラリ
74 汎用部品管理手段
75 汎用部品データベース
76 エンジニアリングデータベース
77 バックアップデータベース
78 ダウンロード処理手段
100 再利用手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能部品を組み合わせた汎用部品を生成するドローイングビルダと、生成された汎用部品をデータベースに登録すると共に、登録された汎用部品を前記ドローイングビルダに引用して汎用部品オブジェクトとして利用する汎用部品管理手段と、を有するエンジニアリング装置において、
前記ドローイングビルダ内で動作実績の確認された汎用部品オブジェクトを参照して前記集合部品管理手段に登録する、再利用手段を備えることを特徴とするエンジニアリング装置。
【請求項2】
前記再利用手段は、画面表示されたドローイングビルダ上の再利用対象の汎用部品オブジェクトを、画面表示された前記集合部品管理手段にドラッグ・アンド・ドロップすることで登録する、ユーザインターフェースを備えることを特徴とする請求項1に記載のエンジニアリング装置。
【請求項3】
前記集合部品管理手段は、前記再利用手段により登録された前記汎用部品オブジェクトを、そのオブジェクトを再利用する先のドローイングビルダに貼り付けることを特徴とする請求項1または2に記載のエンジニアリング装置。
【請求項4】
前記ドローイングビルダは、分散型制御システムの制御装置に対応して設けられ、ドローイングビルダ上の汎用部品オブジェクトが前記制御装置で実行されるアプリケーションプログラムとして前記制御装置のデータベースにダウンロードされることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のエンジニアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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