説明

エンジンおよびエンジン発電機システム

【課題】クールダウン効果のより大きいエンジンのオーバーヒート不具合防止構成を提示する。
【解決手段】冷却水温度41、潤滑油温度26、給気温度45または燃料温度50の少なくともいずれか一つの要素が設定値以上であることを検知したときに出力を制御する運転制御装置を有する。そして、冷却水温度、潤滑油温度、給気温度または燃料温度の少なくともいずれか一つの要素が各々の設定値以上であることを所定時間継続して検知した場合、出力を所定値以下に制限し、前記設定値以上であることを検知した要素の温度が出力制限状態で設定値以下であることを検知した場合、段階的に制限前の出力に復帰させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンおよびエンジン発電機システムに係り、具体的には、コージェネレーション装置に採用されるエンジンのオーバーヒート防止構成に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、エンジン発電機において、冷却水温度に応じて出力電力を制限することでオーバーヒートの防止を図る構成が公知である(例えば、特許文献1参照)。かかる特許文献1に記載の構成は、2区分の冷却水温度範囲(103度以上104度未満、104度以上105度未満)が設定されており、各冷却水温度範囲毎に、高温度になるに従い段階的に制限電力値が減少するように、9kW、8kWの制限電力値が設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−76566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1は、冷却水温度に応じて段階的に制限値を低減する構成である。この結果、冷却水温度が高くなるに従って制限電力設定値が小さくなるため、エンジンの出力を抑えてクールダウンを行う効果が小さいという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、クールダウン効果のより大きいエンジンのオーバーヒート不具合防止構成を提示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、冷却水温度、潤滑油温度、給気温度または燃料温度の少なくともいずれか一つの要素が設定値以上であることを検知したときに出力を制御する運転制御装置を有するエンジンにおいて、冷却水温度、潤滑油温度、給気温度または燃料温度の少なくともいずれか一つの要素が各々の設定値以上であることを所定時間継続して検知した場合、出力を所定値以下に制限し、前記設定値以上であることを検知した要素の温度が出力制限状態で設定値以下であることを検知した場合、段階的に制限前の出力に復帰させることにある。
【0007】
前記本発明は、従来のように冷却水温度により段階的に出力を制限するのではなく、エンジン負荷に起因する冷却水温度、潤滑油温度、給気温度または燃料温度の少なくともいずれか一つの要素が設定値以上であることを検知したときに、一律に出力を所定値に制限するので、クールダウン効果が大きくなる。また、出力を段階的に復帰させるため、出力急増によるオーバーヒートの不具合の発生を防止できる。
【0008】
また、本発明は、前記エンジンで発電機を駆動するエンジン発電機を、複数台並列運転するエンジン発電システムにおいて、温度監視要素として発電機固定子温度を追加し、エンジン発電機を解列する場合、出力制限状態のエンジン発電機を優先的に解列することにある。
【0009】
前記本発明は、オーバーヒートが発生し掛けたエンジン発電機を優先的に休止でき、オーバーヒートによるエンジン停止を未然に防止できる。
【0010】
また、本発明は、エンジン発電機システムにおいて、エンジン出力の制限値を、契約電力に対する受電電力の余裕分に基づいて算出するか、または、手動によって設定することにある。
【0011】
前記本発明は、エンジン出力を制御する場合でも、契約電力を超過しない範囲において出力を制限することができる。また、手動の場合は、稼動現場に応じた任意の出力制限を行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、冷却水温度、潤滑油温度、給気温度または燃料温度の少なくともいずれか一つの要素が各々の設定値以上である場合に、一律にエンジン出力を所定値に制限するので、クールダウン効果を大きくできる。また、出力を段階的に復帰するため、出力急増によるオーバーヒートの不具合の発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態を示すエンジン発電機の概略図である。
【図2】同エンジン発電機の制御を示す概略図である。
【図3】同エンジン発電機システムの概略図である。
【図4】(a)は同エンジン発電機における検知温度と運転時間との関係を示す図、(b)は同エンジン発電機における発電機出力と運転時間との関係を示す図である。
【図5】同エンジン発電機の動作を示すフロー図である。
【図6】同エンジン発電機の各部の温度監視要素の設定温度を示す図である。
【図7】同エンジン発電機の動作を示すフロー図である。
【図8】同エンジン発電機の制御を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1〜図6は、本発明をコージェネレーション装置に採用されるエンジン発電機システムに採用した一実施形態を示す。
【0015】
エンジン発電機システムは、図3に示すように複数基のエンジン発電機Xが並列に系統連係されて配置されている。エンジン発電機Xは、エンジン1と、エンジン1により駆動される発電機56とを備えている。また、エンジン発電機Xは、遮断器59を介して商用電源(図示省略)と接続されるとともに、負荷装置57に接続されている。なお、遮断器59とは、エンジン発電機Xと負荷側の電力系統とを接続したり、遮断したりするものである。
【0016】
エンジン1は、図1に示すように、都市ガス(天然ガス)を動力源とするガスエンジンで、潤滑油系統2と冷却水系統3とを備えている。
【0017】
先ず、潤滑油系統2について説明する。エンジン1には、潤滑油が貯留されているオイルパン5と、エンジン1内の各部にオイルパン5内の潤滑油を供給して各部を潤滑するための潤滑経路20が設けられている。
【0018】
潤滑経路20上流端には、ストレーナ21がオイルパン5内の潤滑油に浸漬するように設けられている。潤滑経路20の途中には、ストレーナ21を介して潤滑油を汲み上げる潤滑油ポンプ22が設けられている。潤滑油ポンプ22で汲み上げられた潤滑油は、潤滑油クーラ25で冷却された後に、エンジン1内部に入って、各部を冷却し且つ潤滑する。各部を潤滑した潤滑油は、オイルパン5に戻るようになっている、
潤滑経路20における潤滑油ポンプ22と潤滑油クーラ25との間には、潤滑経路20を流れる潤滑油の温度を検知する潤滑油温度センサ26が設けられている。この潤滑油温度センサ26は、潤滑油ポンプ22から吐出されてから潤滑油クーラ25で冷却される以前の潤滑油温度を検知している。
【0019】
オイルパン5から汲み上げられてエンジン1の各部に供給される以前の潤滑油の温度は、エンジン1の温度が反映されているため、エンジン1の負荷状態を測る要素の一つとなり、潤滑油温度センサ26が、かかる潤滑油の温度を検知することにより、エンジン1の負荷状態を検出することができる。
【0020】
次に、冷却水系統3について説明する。冷却水系統3は2系統が独立に設けられている。一方の冷却水系統30は、エンジン1の各部(例えば、図示省略のシリンダブロックやシリンダヘッド)を冷却する冷却水系統である。他方の冷却水系統31は、過給機33で圧縮された空気を冷却するための給気冷却器(インタークーラ)34に接続される冷却水系統である。
【0021】
一方の冷却水系統30は、放熱器(第1ラジエータ)で放熱された冷却水が、ポンプ36により流れる冷却水経路37を備えている。この冷却水経路37は分岐されており、一方の経路38がエンジン1内に設けられたジャケット(図示省略)等に連通されている。一方の経路38を流れる冷却水は、エンジン各部を冷却した後に、図示省略の戻し経路を流れて第1ラジエータに戻るようになっている。
【0022】
他方の経路39は潤滑油クーラ25に接続されており、他方の経路39を流れる冷却水は、潤滑油クーラ25において潤滑経路20を流れる潤滑油を冷却する。潤滑油クーラ25には戻し経路40が接続されており、冷却水はこの戻し経路40を流れて第1ラジエータに戻るようになっている。
【0023】
戻し経路40には、冷却水温度センサとしてクーリングウォータサーミスタ41が設けられている。この冷却水温度センサ41は、潤滑油クーラ25において潤滑油を冷却した後で且つ第1ラジエータで放熱する以前の冷却水温度を検知している。かかる部分の冷却水は、実際にエンジン1のジャケットを通ってきているので、エンジン負荷(エンジンの温まり具合)が直接的に反映されている。従って、潤滑油を冷却した後で且つ第1ラジエータで放熱する以前の冷却水温度は、エンジン1の負荷状態を検出する要素の一つとなり、潤滑油温度センサ26が、かかる冷却水温度を検知することにより、エンジン1の負荷状態を検出することができる。
【0024】
他方の冷却水系統31は、放熱器(第2ラジエータ)と給気冷却器34と間を冷却水が循環移動して、過給機33で圧縮された空気を冷却する。給気冷却器34には、給気温度センサ45が接続されている。エンジン1の負荷が増えてくると、燃料の噴射量が必然的に増加するため、排ガスの温度は上昇する。また、タービン44の回転速度が上がって、タービン44で吸い込まれる空気量が増加する。空気量が増加すると、温度が密度に比例するので、空気温度が上がってくる。
【0025】
従って、排ガスの温度と燃料の噴射具合から、エンジンの負荷の状態が把握できる。このため、給気冷却器34での給気温度は、エンジン1の負荷状態を検出する要素の一つとなり、給気温度センサ45が給気温度を検知することにより、エンジン1の負荷状態を検出することができる。
【0026】
都市ガスを動力源とするエンジン1には、過給機33により高圧の空気がエンジン1に供給されるため、高圧の燃料をエンジン1に圧送する必要がある。そこで、燃料ガスコンプレッサ51が設けられている。その燃料ガスコンプレッサ51の出口経路52に、燃料温度センサとしてのフューエルサーミスタ50を設けて、燃料ガス温度を検知している。
【0027】
また、燃料ガス消費量が増加する場合、燃料ガスコンプレッサ51の回転が増加するとともに燃料ガスの温度も高くなる。従って、燃料ガスの温度は、エンジン1の負荷状態を検出する一つの要素となり、燃料温度センサ50が燃料ガスの温度を検知することにより、エンジン1の負荷状態を検出することができる。
【0028】
前記潤滑油温度センサ26、冷却水温度センサ41、給気温度センサ45および燃料温度センサ50は、図2に示すように、制御部としてのコントローラ55に接続されており、前記各温度センサ26、41、45、50の信号がコントローラ55に送信されるようになっている。コントローラ55は、各温度センサ26、41.45、50の信号に基づいてエンジン1を制御し、定格電力で運転しているエンジン発電機Xの出力(以下、出力という。)を所定値以下に下げる負荷抑制制御(レートダウン)を行う。なお、各温度センサ26、41、45、50およびコントローラ55により、運転制御装置58が構成されている。
【0029】
次に、上記構成からなるエンジン発電機システムの動作について、図5に示すエンジン発電機のフロー図を参照しながら説明する。かかるエンジン発電機システムの動作説明において、図3、図4および図6も適宜参照する。なお、図4(a)はエンジン発電機Xにおける検知温度と運転時間との関係を示し、同図(b)はエンジン発電機Xにおける出力と運転時間との関係を示し、図6は各温度監視要素の設定温度を示す。
【0030】
先ず、各エンジン発電機Xの遮断器59を接続して、電力供給を開始する(S1)。通常の発電時において、出力は定格の100パーセントに達している。
【0031】
そして、エンジン発電機Xの定格電力を下げる負荷抑制が必要か否かの判定を行う(S2)。かかる負荷抑制判定に際しては、冷却水温度、潤滑油温度、給気温度または燃料温度を温度監視要素とし、その何れか一つでも温度上昇判定値R以上に達したか否を判定して行う。
【0032】
具体的には、潤滑油温度センサ26、冷却水温度センサ41、給気温度センサ45および燃料温度センサ50が検知した信号が、コントローラ55に送信される。コントローラ55には、潤滑油温度、冷却水温度、給気温度および燃料温度の設定値が、それぞれ予め記憶されている。それぞれの具体的な設定値を図6に示す。同図において、軽故障とは、各温度センサがそれぞれの低温側温度の第1設定値を検出した際に、コントローラ55がエンジン1の出力を制限する故障をいう。そして、低温側温度の第1設定値が温度上昇判定値Rとなる。
【0033】
重故障とは、各温度センサ26、41、45、50がそれぞれの高温側温度の第2設定値を検知した際に、コントローラ55がエンジン1を停止させる故障をいう。
【0034】
図4(a)および(b)に示すように、運転時間の経過とともに、各温度センサ26、41、45、50の検知温度Hが次第に上昇して、時間T1の位置において温度上昇判定値Rに到達する。なお、図4(a)は、各温度センサ26、41、45、50の内、最初に温度上昇判定値Rに到達した温度センサ26、41、45、50の検知温度変化を示す。
【0035】
検知温度Hが温度上昇判定値Rに到達すると、コントローラ55は負荷抑制が必要(冷却水温度、潤滑油温度、給気温度または燃料温度の何れか一つでも設定値以上)と判断する(S2:YES)。この判定結果に基づいて、コントローラ55がエンジン1を制御して、出力を定格の所定パーセントのAkW(例えば、定格の50パーセント)まで低下させる(S3およびS4)。
【0036】
検知温度Hは、その後温度上昇判定値Rよりも上昇するが、負荷抑制により次第に低下して所定時間経過後に再び温度上昇判定値Rに到達する(図4(a)の時間T2の位置)。検知温度Hが再び温度上昇判定値Rに到達すると、コントローラ55はAkWの状態で出力を一定制御する(S5)。最新の出力到達時よりE分(例えば5分)経過したか否かを判断する(S6)。初回の判断は、検知温度Hが再び温度上昇判定値Rに到達してからE分経過した場合(S6:YES)に、CkW(例えば10パーセント)出力を上げる(S7および図4(b)の時間T3の位置)。
【0037】
さらに、エンジン発電機Xが定格出力に復帰したか否かを判断する(S8)。CkW(10パーセント)出力を上げてからE分(5分)経過していない場合には、S9に戻る。最新の出力到達よりE分(5分)経過した場合(S6:YES)には、さらにCkW出力を上げる(S7および図4(b)の時間T4の位置)。
【0038】
さらに、出力が定格に戻っていなければ(S8:NO)、またS9に戻る。このように、出力が定格に戻るまで、E分間同じ出力で運転した後に、CkW出力を戻して(図4(b)の時間T5の位置)、さらにE分間同じ出力で運転した後に、CkW出力を戻して(図4(b)の時間T6の位置)、ステップS6〜S9を繰り返して、段階的に出力を戻す(図4(b)の時間T7の位置)。
【0039】
そして、出力が定格に復帰した場合(S8:YES)には、負荷抑制制御を中止して通常運転に復帰する(S10)。
【0040】
仮に、出力を戻している途中において、検知温度Hが、温度上昇判定値R以上に上昇してしまった場合には、再び負荷抑制が必要と判断されてステップS6に戻る。
【0041】
また、運転状況によっては、負荷抑制制御を解除したい場合がある。このような場合には、負荷抑制制御を手動で解除できる。コントローラ55は、負荷抑制解除信号を監視している(S11)。そして、解除釦を押した場合に負荷抑制制御を終了し通常運転に復帰する(S12)。なお、手動モードに切り替えたとき、もしくは、コントローラ55がエンジン発電機Xの停止信号を受信したときも、負荷抑制制御の解除信号とする。
【0042】
前記のように、軽故障と判断されて出力が低下したエンジン発電機Xは、他のエンジン発電機Xから解列が可能となっている。従って、エンジン発電機Xを複数基自動運転中に、ある1基が負荷抑制制御中となった場合、制御中のエンジン発電機Xを系統から解列させて、出力を回復させる。このように、軽故障によりオーバーヒートが発生しかけたエンジン発電機Xを優先的に休止でき、エンジン1の高温状態継続による重故障停止を回避するとともに、その解列されたエンジン発電機Xのエンジン1のオーバーヒートを防止できる許容範囲内では電力供給を優先することができる。
【0043】
本発明は、前記実施の形態に限定されるものではない。図7は、本発明の他の実施形態に係るエンジン発電機のフロー図を示す。図7に示す他の本実施の形態は、エンジン1の高温状態継続による重故障停止を回避するとともに、契約電力を超過しない範囲で負荷抑制制御を実施可能とするものである。
【0044】
スーパーや病院等の施設においては、使用電力をエンジン発電機Xで発電するとともに、このエンジン発電機Xで発電する電力の不足分の電力を電力会社から購入している。従って、施設は購入予定電力に余裕分の電力を加えた電力を契約電力として、電力会社と契約している。そして、施設が実際に電力会社から供給を受ける電力(購入電力)が、契約電力を超える場合には、施設に月々基本料金および使用料金以外に罰金が請求されることとなる。
【0045】
例えば、1200kWの電力を必要とする施設が、定格が500kWのエンジン発電機Xを2基使用する際には、2基のエンジン発電機Xで1000kWの電力を発電することができる。そこで、電力会社から少なくとも不足分の200kW(受電電力)を購入すればよいことになる。そこで、余裕分の電力(100kW)も考慮して電力会社の契約電力を300kWと設定する。従って、施設が300kWを越えて購入電力を使用すると、電力会社から罰金が請求されることとなる。
【0046】
このような施設において、前記実施形態のように、仮に、軽故障と判断されたエンジン発電機Xを、定格出力の50パーセントまで出力低下させると、500kW(定格出力)が出力低下により250kWにダウンする。その結果、エンジン発電機システム全体の発電能力は、750kW(500kW+250kW)となるため、電力会社から不足分の450kWの電力を購入する必要がある。この結果、購入電力(450kW)は、契約電力(300kW)を超えてしまうため、購入電力が契約電力を超過しない範囲で負荷抑制制御を実施する。
【0047】
具体的には、前記コントローラ55に契約電力として300kWを記憶させる。通常時の受電電力は200kWなので、契約電力(300kW)−受電電力(200kW)=100kWまで余裕がある。そこで、負荷抑制する電力は、定格出力の50パーセントではなくて、(100kW/500kW)×100=20パーセントである。
【0048】
そこで、本実施の形態のコントローラ55は、定格出力の20パーセントが契約電力を超過しない範囲(負荷抑制可能パーセント)であると自動で判断し、契約電力を超過しない範囲内で出力を下げるように制御する。このように、本実施の形態は、出力の制限値を契約電力に対する受電電力の余裕分に基づいて算出するようにしている。
【0049】
次に、上記負荷抑制を行うエンジン発電機システムの動作について、図7に示すエンジン発電機のフロー図を参照しながら説明する。なお、図5に示すエンジン発電機のフロー図と同じステップ処理には、同一符号を付し、それぞれの具体的な説明は省略する。
【0050】
先ず、ステップS1およびS2において、エンジン発電機Xの定格電力を下げる負荷抑制制御が必要と判断されると、負荷抑制可能パーセント(Gパーセント)まで出力を低下させる(S4A)。Gパーセントとは、前記定格の20パーセントに相当し、コントローラ55が演算した値である。
【0051】
負荷抑制可能パーセントの演算に使用される受電電力の値は、計測時によって誤差が生じる可能性がある。そこで、以下の式により、加重平均処理したものが採用されている。すなわち、受電電力の値は、(p×N+P)÷(N+1)の式により求められる。なお、pは前回の加重平均受電電力、Pは最新の受電電力計測値、Nは受電電力加重平均回数である。Nを適宜設定することにより、加重平均処理した受電電力の値が求められる。
【0052】
Gパーセント低下の出力を一定制御した(S5A)後に、E分経過した場合(S6A)には、CkW出力を上げる(S7)。
【0053】
出力が定格に戻っていなければ(S8:NO)、またステップS9に戻る。このように、出力が定格に戻るまで、ステップS6〜S9を繰り返して、段階的に出力を戻す。
【0054】
そして、エンジン発電機出力が定格に復帰した場合(S8:YES)には、負荷抑制を中止して通常運転に復帰する(S10)。
【0055】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではない。前記温度監視要素としては、冷却水温度、潤滑油温度、給気温度または燃料温度に限定されるものではない。例えば、図3(仮想線で示す)および図8に示すように、発電機56に温度センサ60を設けることも可能である。発電機56は、図示省略の磁石からなる回転子と、鉄心からなる固定子とから構成されている。この固定子には、サーミスタ等の発電機固定子温度センサ60が設けられている。発電機固定子温度センサ60は、発電機56の発電時に電流が流れるため、その発熱を検知することができる。
【0056】
発電機固定子温度センサ60は、図6に示すように、軽故障時の温度(第1設定値)と、重故障時の温度(第2設定値)とを検知する。発電機固定子温度は、エンジン1の負荷状態を検出する要素の一つとなり、発電機固定子温度センサ60が、かかる発電機固定子温度を検知することにより、エンジン1の負荷状態を検出することができる。
【0057】
そして、前記エンジン負荷に起因する温度監視要素として、冷却水温度、潤滑油温度、給気温度、燃料温度または発電機固定子温度の少なくともいずれか一つが設定値以上であることを検知したときに、コントローラ55がエンジン発電機Xの出力を制御する。
【0058】
また、コントローラ55は、冷却水温度、潤滑油温度、給気温度、燃料温度または発電機固定子温度の全てを温度監視要素とする場合や、任意のものを適宜選択して温度監視要素とすることも可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 エンジン
2 潤滑油系統
3 冷却水系統
26 潤滑油温度センサ
41 冷却水温度センサ
45 給気温度センサ
50 フューエルサーミスタ(燃料温度センサ)
55 制御部(コントローラ)
58 運転制御装置
60 発電機固定子温度センサ
X エンジン発電機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却水温度、潤滑油温度、給気温度または燃料温度の少なくともいずれか一つの要素が設定値以上であることを検知したときに出力を制御する運転制御装置を有するエンジンにおいて、
冷却水温度、潤滑油温度、給気温度または燃料温度の少なくともいずれか一つの要素が各々の設定値以上であることを所定時間継続して検知した場合、出力を所定値以下に制限し、前記設定値以上であることを検知した要素の温度が出力制限状態で設定値以下であることを検知した場合、段階的に制限前の出力に復帰させることを特徴とするエンジン。
【請求項2】
前記請求項1記載のエンジンで発電機を駆動するエンジン発電機を、複数台並列運転するエンジン発電システムにおいて、温度監視要素として発電機固定子温度を追加し、エンジン発電機を解列する場合、出力制限状態のエンジン発電機を優先的に解列することを特徴とするエンジン発電機システム。
【請求項3】
前記請求項2記載のエンジン発電機システムにおいて、エンジン出力の制限値を、契約電力に対する受電電力の余裕分に基づいて算出するか、または、手動によって設定することを特徴とするエンジン発電機システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−163149(P2011−163149A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−24150(P2010−24150)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】