説明

エンジンの制御装置

【課題】エンジンに対する要求を好適に実現する。
【解決手段】エンジン制御システム705は、変換部800と、決定部804と、選択部806と、制御部810とを備える。変換部800は、複数の制御システムA〜制御システムDからエンジンに対して要求される要求値のうち、パワーと異なる種類の要求値をパワーに変換する。決定部804は、エンジンの運転状態を表わす複数のパラメータのうち、制御の対象となるパラメータを複数の制御システムA〜制御システムD毎に決定する。選択部806は、複数の制御システムA〜制御システムDのパワーの要求値の中から、制御システムA〜制御システムDに応じて定められる優先順位に従って、パワーの要求値を選択する。制御部810は、優先順位に応じて選択されたパワーの要求値を実現するように、エンジンを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの制御装置に関し、特に、車両に搭載された複数の制御システムからの要求値に応じてエンジンを制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、自動変速機およびクルーズコントロールなどの制御システムが複数搭載されている。エンジンは、各制御システムから出力される要求値に応じて制御される。たとえば、アクセル開度に応じた駆動力を実現するために、エンジンはトルクの要求値を実現するように制御される。また、変速ショックなどを低減するために、自動変速機の変速中において、エンジンは点火時期の遅角量の要求値を実現するように制御される。さらに、車速を一定に保つために、エンジンはスロットル開度の要求値を実現するように制御される。エンジンの制御システムは、他の制御システムから要求された要求値を調停し、調停された結果選択された要求値に応じてエンジンを制御する。
【0003】
しかしながら、各制御システムから要求される要求値の種類が統一されていないと、要求値を正しく調停することができない。たとえば、スロットル開度と点火時期とは次元が異なるため、どちらの要求値を優先して実現すべきかを判断することができない。そこで、各制御システムからの要求値をトルクに統一する技術が提案されている。
【0004】
特開2004−52769号公報(特許文献1)は、発生源の数およびトルク要求のタイプとは無関係にトルク要求の調整を行なう制御ユニットを開示する。各トルク要求に優先順位が割り当てられ、目標トルクの形成においてトルク要求が優先順位の順序で考慮される。
【特許文献1】特開2004−52769号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、車両の走行状態を制御する際、トルクよりもエンジン回転数の精度が重要な場合がある。したがって、全ての制御システムの要求値をトルクの要求値に変換すると、エンジン回転数に対する要求が満たされない場合があり得る。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、エンジンに対する要求をより好適に実現することができるエンジンの制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明に係るエンジンの制御装置は、複数の制御システムから要求される要求値に応じて制御されるエンジンの制御装置である。この制御装置は、複数の制御システムからエンジンに対して要求される要求値のうち、パワーと異なる種類の要求値をパワーに変換するための手段と、エンジンの運転状態を表わす複数のパラメータのうち、制御の対象となるパラメータを複数の制御システム毎に決定するための決定手段と、複数の制御システムのパワーの要求値の中から、制御システムおよび制御の対象となるパラメータのうちの少なくともいずれか一方に応じて定められる優先順位に従ってパワーの要求値を選択するための選択手段と、選択されたパワーの要求値に応じてエンジンを制御するための手段とを備える。
【0008】
この構成によると、複数の制御システムからエンジンに対して要求される要求値のうち、パワーと異なる種類の要求値は、トルクと回転数の積であるパワー[W]に変換される。また、エンジンの運転状態を表わす複数のパラメータのうち、制御の対象となるパラメータが、複数の制御システム毎に決定される。複数の制御システムのパワーの要求値の中から、制御システムおよび制御の対象となるパラメータのうちの少なくともいずれか一方に応じて定められる優先順位に従ってパワーの要求値が選択される。選択されたパワーの要求値に応じてエンジンが制御される。これにより、たとえば、トルクを重視する場合にはトルクを優先的に制御して、エンジン回転数を重視する場合にはエンジン回転数を優先的に制御して、調停の結果選択されたパワーを実現することができる。トルクおよびエンジン回転数に対する厳格な要求はなく、パワーが一致していればよい場合には、実際のパワーがパワーの要求値に一致するようにエンジンを制御することができる。そのため、エンジンに対する要求をより好適に実現することができるエンジンの制御装置を提供することができる。
【0009】
第2の発明に係るエンジンの制御装置においては、第1の発明の構成に加え、複数のパラメータは、出力軸回転数、トルクおよびパワーである。
【0010】
この構成によると、出力軸回転数、トルクおよびパワーのうち、制御の対象となるパラメータが複数の制御システム毎に決定される。これにより、トルクを重視する場合にはトルクを優先的に制御して、エンジン回転数を重視する場合にはエンジン回転数を優先的に制御して、調停の結果選択されたパワーを実現することができる。トルクおよびエンジン回転数に対する厳格な要求はなく、パワーが一致していればよい場合には、実際のパワーがパワーの要求値に一致するようにエンジンを制御することができる。これにより、制御システムからの種々の要求に好適に対応することができる。
【0011】
第3の発明に係るエンジンの制御装置は、第2の発明の構成に加え、優先順位に応じて選択されるパワーの要求値が切換わる際、切換わる前のパワーの要求値から切換わった後のパワーの要求値まで予め定められた変化率で変化するようにパワーの要求値を設定するための手段をさらに備える。制御手段は、優先順位に応じて選択されるパワーの要求値が切換わる際、予め定められた変化率で変化するパワーの要求値に応じてエンジンを制御するための手段を含む。
【0012】
この構成によると、優先順位に応じて選択されるパワーの要求値が切換わる際、予め定められた変化率で変化するパワーの要求値に応じてエンジンが制御される。これにより、実現すべきパワーの要求値が切換わる際、エンジンのパワーが徐変するように制御することができる。
【0013】
第4の発明に係るエンジンの制御装置においては、第1〜3のいずれかの発明の構成に加え、エンジンには、作動量に応じてエンジンのパワーを調整する調整機器が複数設けられる。制御手段は、制御の対象となるパラメータに応じて調整機器を少なくとも一つ選択するための手段と、パワーの要求値に応じて、選択された調整機器の作動量を制御するための手段を含む。
【0014】
この構成によると、作動量に応じてエンジンのパワーを調整する調整機器が、制御の対象となるパラメータに応じて選択される。パワーの要求値に応じて、選択された調整機器の作動量が制御される。これにより、優先的に制御すべきパラメータを制御するのに適した調整機器を用いることができる。
【0015】
第5の発明に係るエンジンの制御装置においては、第4の発明の構成に加え、複数の調整機器は、スロットルバルブ、点火プラグおよびインジェクタである。
【0016】
この構成によると、優先的に制御すべきパラメータを制御するのに適した調整機器を、スロットルバルブ、点火プラグおよびインジェクタの中から選択し、用いることができる。これにより、スロットル開度、点火時期および燃料噴射量の少なくともいずれか一つを制御して、制御システムからの種々の要求に好適に対応することができる。
【0017】
第6の発明に係るエンジンの制御装置においては、第4または5の発明の構成に加え、決定手段は、優先順位に応じて選択される制御システムが切換わる際、制御の対象となるパラメータをパワーに決定するための手段を含む。
【0018】
この構成によると、優先順位に応じて選択されるパワーの要求値が切換わる際、制御の対象となるパラメータがパワーに統一される。これにより、パワーの要求値を実現するために作動量が制御される調整機器を、選択されるパワーの要求値が切換わる前後で同じにすることができる。そのため、選択される制御システムが切換わる前後でパワーの変化特性が急変しないようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0020】
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る制御装置を搭載した車両について説明する。この車両は、FR(Front engine Rear drive)車両である。なお、FR以外の車両であってもよい。
【0021】
車両は、エンジン100と、オートマチックトランスミッション200と、トルクコンバータ300と、プロペラシャフト400と、デファレンシャルギヤ500と、後輪600とを備える。なお、エンジン100の代わりにもしくは加えて、動力源にモータを用いるようにしてもよい。
【0022】
エンジン100は、インジェクタ102から噴射された燃料と空気との混合気に点火プラグ104で着火して、シリンダの燃焼室内で燃焼させる内燃機関である。燃焼によりシリンダ内のピストンが押し下げられて、クランクシャフトが回転させられる。エンジン100に吸入される空気量は、スロットルバルブ106により調整される。スロットルバルブ106は、モータにより作動する電子スロットルバルブである。
【0023】
エンジン100のパワーは、インジェクタ102からの燃料噴射量(燃料噴射を停止するフューエルカットF/Cを実行するか否か)、点火プラグ104による点火時期SAおよびスロットル開度TAにより制御される。
【0024】
本実施の形態において、パワーとはトルクとエンジン回転数との積として算出される物理量である。パワーの単位は「W(ワット)」である。トルクの単位は「N・m(ニュートン・メートル)」である。エンジン回転数の単位は「rpm」である。なお、パワーの代わりに馬力[hp]を用いても良い。
【0025】
オートマチックトランスミッション200は、トルクコンバータ300を介してエンジン100に連結される。オートマチックトランスミッション200は、所望のギヤ段を形成することにより、エンジン回転数(エンジン100の出力軸回転数)を所望の回転数に変速する。
【0026】
オートマチックトランスミッション200から出力されたトルクは、プロペラシャフト400およびデファレンシャルギヤ500を介して、左右の後輪600に伝達される。オートマチックトランスミッション200は、プラネタリギヤユニットを有する。なお、CVT(Continuously Variable Transmission)を用いるようにしてもよい。
【0027】
車両には、制御システムA701〜制御システムD704およびエンジン制御システム705が実装されている。制御システムA701〜制御システムD704は、例えば、オートマチックトランスミッション200、クルーズコントロール、VSC(Vehicle Stability Control)、TRC(TRaction Control)などの制御システムである。
【0028】
クルーズコントロールは、車速を一定に維持する制御である。VSCは、前後輪が横滑りしそうな状態をセンサが検出して場合において、各輪のブレーキ油圧および車両の目標駆動力などを自動的に設定し、車両の安定性を確保する制御である。TRCは、滑りやすい路面での発進時および加速時に、駆動輪の空転をセンサが感知すると、各輪のブレーキ油圧および車両の目標駆動力などを自動的に設定し、最適な駆動力を確保する制御である。
【0029】
本実施の形態において、制御システムA701は、エンジン制御システム705に対してトルクの要求値を出力する。すなわち、制御システムA701は、エンジン100に対してトルクを要求する。
【0030】
制御システムB702は、エンジン制御システム705に対してスロットル開度TAの要求値を出力する。すなわち、制御システムB702は、エンジン100に対してスロットル開度TAを要求する。
【0031】
制御システムC703は、エンジン制御システム705に対して点火プラグ104の点火時期SAの要求値を出力する。すなわち、制御システムC703は、エンジン100に対して点火時期SAを要求する。
【0032】
制御システムD704は、エンジン制御システム705に対してパワーの要求値を出力する。すなわち、制御システムD704は、エンジン100に対してパワーを要求する。なお、制御システムの数、種類および要求値の種類はこれらに限らない。
【0033】
エンジン制御システム705は、制御システムA701〜制御システムD704から要求される要求値に応じて、エンジン100のパワーを制御する。本実施の形態において、エンジン制御システム705は、制御システムA701〜制御システムD704から要求される要求値を調停し、調停した結果選択される要求値を実現するようにエンジン100のパワーを制御する。
【0034】
制御システムA701〜制御システムD704およびエンジン制御システム705は、たとえばECU(Electronic Control Unit)として実装される。
【0035】
図2を参照して、エンジン制御システム705の機能について説明する。なお、以下に説明する機能は、ソフトウェアにより実現するようにしてもよく、ハードウェアにより実現するようにしてもよい。
【0036】
エンジン制御システム705は、変換部800と、排除部802と、決定部804と、選択部806と、設定部808と、制御部810とを備える。
【0037】
変換部800は、複数の制御システムA701〜制御システムD704からエンジン100に対して要求される要求値のうち、パワーと異なる種類の要求値をパワーに変換する。たとえば、予め定められたマップに従って、パワーと異なる種類の要求値がパワーに変換される。なお、各要求値には、出力元である制御システムを識別するデータが付与される。
【0038】
排除部802は、予め定められた無効値と同じ値を示すパワーの要求値を排除する。本実施の形態においては、エンジン100に対して要求する要求値が無い場合、各制御システムA701〜制御システムD704は、要求値を無効値と同じ値に設定する。
【0039】
決定部804は、エンジン100の運転状態を表わす複数のパラメータのうち、制御の対象となるパラメータを複数の制御システムA701〜制御システムD704毎に決定する。たとえば、予め定められたマップに従って、制御の対象となるパラメータが決定される。
【0040】
制御の対象となるパラメータとは、各制御システムの要求値を実現するために優先的に制御されるパラメータを意味する。本実施の形態において、エンジン100の運転状態を表わすパラメータには、エンジン回転数(エンジン100の出力軸回転数)、トルクおよびパワーが用いられる。
【0041】
図3に、制御システムA701〜制御システムC703のパワーの要求値を実現する際に制御の対象となるパラメータを示す。制御システムA701の要求値に対して、パワーが制御の対象のパラメータとして決定される。制御システムB702の要求値に対して、トルクおよびパワーが制御の対象のパラメータとして決定される。制御システムC703の要求値に対して、エンジン回転数が制御の対象のパラメータとして決定される。
【0042】
なお、パラメータはこれらに限らない。また、制御の対象となるパラメータを指定するデータを、制御システムA701〜制御システムD704からの各要求値に付与するようにしてもよい。
【0043】
決定部804は、さらに、後述する優先順位に応じて選択されるパワーの要求値が切換わる際、制御の対象となるパラメータを全てパワーに決定する。
【0044】
選択部806は、複数の制御システムA701〜制御システムD704のパワーの要求値の中から、制御システムA701〜制御システムD704に応じて定められる優先順位に従って、パワーの要求値を選択(調停)する。たとえば、優先順位が最も高い制御システムのパワーの要求値が選択される。なお、優先順位が高い制御システムのパワーの要求値から順番に選択するようにしてもよい。
【0045】
図4に、制御システムA701〜制御システムD704の優先順位の一例を示す。なお、優先順位は図4に示すものに限らない。制御システムA701〜制御システムD704の組合せに応じて優先順位を定めるようにしてもよい。その他、制御システムA701〜制御システムD704の代わりにもしくは加えて、制御の対象となるパラメータに応じて優先順位を定めるようにしてもよい。
【0046】
設定部808は、優先順位に応じて選択されるパワーの要求値が切換わる際、切換わる前のパワーの要求値から切換わった後のパワーの要求値まで予め定められた変化率で変化するようにパワーの要求値を設定する。
【0047】
制御部810は、優先順位に応じて選択されたパワーの要求値を実現するように、エンジン100を制御する。また、制御部810は、優先順位に応じて選択されるパワーの要求値が切換わる際、予め定められた変化率で変化するパワーの要求値に応じてエンジン100を制御する。
【0048】
エンジン100を制御する際、制御の対象となるパラメータに応じて、インジェクタ102、点火プラグ104およびスロットルバルブ106の中から少なくとも一つのアクチュエータが選択される。さらに、パワーの要求値を実現し得る作動量、すなわち燃料噴射量(フューエルカットF/Cを実行するか否か)、点火時期SAおよびスロットル開度TAが設定される。たとえば、予め定められたマップに従って作動量が設定される。設定された作動量を実現するように、インジェクタ102、点火プラグ104およびスロットルバルブ106のうちの少なくとも一つが制御される。
【0049】
図5に示すように、たとえば、制御システムB702のパワーの要求値を実現する場合には、スロットル開度TAが20[%]になるようにスロットルバルブ106が制御されるとともに、フューエルカットF/Cが停止される。制御システムC703のパワーの要求値を実現する場合には、スロットル開度TAが90[%]になるように制御されるとともに、点火時期SAがATDC(After Top Dead of Center)10度から20度まで遅角され、かつフューエルカットF/Cが停止される。なお、図5に示すスロットル開度TA、点火時期SAおよびフューエルカットF/Cの実行状態は一例であって、これらに限定されない。
【0050】
以上のような構造に基づく、本実施の形態におけるエンジン制御システム705の動作について説明する。
【0051】
制御システムA701〜制御システムD704からの要求値のうち、パワーと異なる種類の要求値はパワーに変換される。パワーの要求値は、変換されずに用いられる。無効値と同じ値を示すパワーの要求値は排除される。
【0052】
パワーの要求値を実現するための制御の対象となるパラメータが、エンジン回転数、トルクおよびパワーの中から選択される。
【0053】
複数のパワーの要求値を調停し、実現すべきパワーの要求値を選択するために、複数の制御システムA701〜制御システムD704のパワーの要求値の中から、制御システムA701〜制御システムD704に応じて定められる優先順位に従って、実現すべきパワーの要求値が選択される。
【0054】
優先順位に応じて選択されたパワーの要求値を実現するように、エンジン100が制御される。本実施の形態においては、インジェクタ102、点火プラグ104およびスロットルバルブ106のうちの少なくとも一つのアクチュエータが制御の対象となるパラメータに応じて選択され、パワーの要求値を実現するように制御される。
【0055】
これにより、トルクを重視する場合にはトルクを優先的に制御して、エンジン回転数を重視する場合にはエンジン回転数を優先的に制御して、調停の結果選択されたパワーを実現することができる。トルクおよびエンジン回転数に対する厳格な要求がない場合には、エンジン100の実際のパワーが選択されたパワーと一致するようにエンジン100を制御することができる。そのため、エンジン100に対する種々の要求を好適に実現することができる。
【0056】
また、インジェクタ102、点火プラグ104およびスロットルバルブ106のうち、優先的に制御すべきパラメータを制御するのに適したアクチュエータを用いることができる。これにより、たとえば、エンジン回転数を速やかに低減することが要求される場合には、点火時期を遅角してエンジン回転数を速やかに低減することができる。そのため、エンジン100に対する種々の要求をさらに好適に実現することができる。
【0057】
優先順位に応じて選択されるパワーの要求値が切換わる際には、制御の対象となるパラメータが全てパワーに決定される。これにより、制御の対象となるパラメータをパワーに統一することができる。そのため、パワーの要求値を実現するために作動量が制御されるアクチュエータを、選択されるパワーの要求値が切換わる前後で同じにすることができる。そのため、パワーの変化特性が急変しないようにすることができる。
【0058】
さらに、優先順位に応じて選択されるパワーの要求値が切換わる際、予め定められた変化率で変化するパワーの要求値を実現するようにエンジン100が制御される。これにより、エンジン100のパワーが徐変するように制御することができる。そのため、パワーの段差を小さくすることができる。
【0059】
以上のように、本実施の形態に係る制御装置によれば、制御システムA〜制御システムDからの要求値のうち、パワーと異なる種類の要求値はパワーに変換される。パワーの要求値を実現するための制御の対象となるパラメータが、エンジン回転数、トルクおよびパワーの中から選択される。複数の制御システムA〜制御システムDのパワーの要求値の中から、制御システムA〜制御システムDに応じて定められる優先順位に従って、実現すべきパワーの要求値が選択される。優先順位に応じて選択されたパワーの要求値を実現するように、エンジンが制御される。これにより、トルクを重視する場合にはトルクを優先的に制御して、エンジン回転数を重視する場合にはエンジン回転数を優先的に制御して、調停の結果選択されたパワーを実現することができる。トルクおよびエンジン回転数に対する厳格な要求はなく、パワーが一致していればよい場合には、実際のパワーがパワーの要求値に一致するようにエンジンを制御することができる。そのため、エンジンに対する種々の要求を好適に実現することができる。
【0060】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】車両を示す概略構成図である。
【図2】ECUの機能ブロック図である。
【図3】制御の対象のパラメータを示す図である。
【図4】制御システムに応じて定められた優先順位を示す図である。
【図5】スロットル開度TA、点火時期SAおよびフューエルカットF/Cを実行するか否かを示す図である。
【符号の説明】
【0062】
100 エンジン、102 インジェクタ、104 点火プラグ、106 スロットルバルブ、200 オートマチックトランスミッション、300 トルクコンバータ、400 プロペラシャフト、500 デファレンシャルギヤ、600 後輪、701 制御システムA、702 制御システムB、703 制御システムC、704 制御システムD、705 エンジン制御システム、800 変換部、802 排除部、804 決定部、806 選択部、808 設定部、810 制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の制御システムから要求される要求値に応じて制御されるエンジンの制御装置であって、
前記複数の制御システムから前記エンジンに対して要求される要求値のうち、パワーと異なる種類の要求値をパワーに変換するための手段と、
前記エンジンの運転状態を表わす複数のパラメータのうち、制御の対象となるパラメータを前記複数の制御システム毎に決定するための決定手段と、
前記複数の制御システムのパワーの要求値の中から、前記制御システムおよび前記制御の対象となるパラメータのうちの少なくともいずれか一方に応じて定められる優先順位に従ってパワーの要求値を選択するための選択手段と、
前記選択されたパワーの要求値に応じて前記エンジンを制御するための手段とを備える、エンジンの制御装置。
【請求項2】
前記複数のパラメータは、出力軸回転数、トルクおよびパワーである、請求項1に記載のエンジンの制御装置。
【請求項3】
前記優先順位に応じて選択されるパワーの要求値が切換わる際、切換わる前のパワーの要求値から切換わった後のパワーの要求値まで予め定められた変化率で変化するようにパワーの要求値を設定するための手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記優先順位に応じて選択されるパワーの要求値が切換わる際、前記予め定められた変化率で変化するパワーの要求値に応じて前記エンジンを制御するための手段を含む、請求項2に記載のエンジンの制御装置。
【請求項4】
前記エンジンには、作動量に応じて前記エンジンのパワーを調整する調整機器が複数設けられ、
前記制御手段は、
前記制御の対象となるパラメータに応じて前記調整機器を少なくとも一つ選択するための手段と、
パワーの要求値に応じて、前記選択された調整機器の作動量を制御するための手段を含む、請求項1〜3のいずれかに記載のエンジンの制御装置。
【請求項5】
前記複数の調整機器は、スロットルバルブ、点火プラグおよびインジェクタである、請求項4に記載のエンジンの制御装置。
【請求項6】
前記決定手段は、前記優先順位に応じて選択されるパワーの要求値が切換わる際、制御の対象となるパラメータをパワーに決定するための手段を含む、請求項4または5に記載のエンジンの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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