説明

エンジンの吸気装置

【課題】 燃焼室への吸気充填量を、一層高めることができるエンジンの吸気装置を提供する。
【解決手段】 2つの分岐吸気ポート11A(11B)の吸気通路断面を、その各断面積を同一に維持しつつ、その各下流端開口50A(50B)から上流に向かうに従って、互いに近づくように拡張変形して、各分岐吸気ポート11B(11A)に、その隣り合う分岐吸気ポート側内面において、その各下流端開口50A(50B)に向かうに従ってその両下流端開口50A(50B)の並設方向(X方向)外側に向けて傾斜する傾斜面51A(51B)を形成する。そして、その傾斜面51A(51B)により吸気AGを案内し、両分岐吸気ポート11A、11Bから燃焼室4に流入する吸気AGG同士が、X方向内方側において衝突しないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの吸気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの吸気装置においては、できるだけ吸気抵抗を下げて吸気充填量を上げることによりエンジン出力を十分に確保することが好ましい。特許文献1には、吸気ポート幅を、吸気バルブシャフトの上流側から下流側に向けて徐々に広げることにより吸気流速を下げて、吸気バルブシャフトにおいて、吸気の剥離を抑制したものが提案されている。このものによれば、後流(wake)自体の発生を抑制して圧力抵抗を減らすことができ、これにより、吸気抵抗の増大を抑制できることになる。
【0003】
また、特許文献2には、吸気通路に吸気の流れを偏向させるための制御弁を設けたエンジンの吸気装置が提案されており、そのエンジン吸気装置においては、吸気抵抗を下げるべく、吸気バルブガイド周辺の吸気通路断面形状を改善したものが提案されている。
【0004】
ところで、上記のようなエンジンの吸気装置においては、制御弁の弁体として、一般に、弁軸を基準としてその径方向一方側外方部分のみが完全な状態として形成され、弁軸を基準として径方向他方側外方部分は、全部又は一部が切り欠かれた状態に形成されているものが用いられている(特許文献2中の図面参照)。そして、低速運転時等の所定運転時には、燃焼室内においてタンブル流を生成すべく、制御弁が閉じられて、その弁軸の径方向他方側においてのみ吸気が通過され、高速運転時においては、制御弁が全開状態とされ、燃焼室には、低速運転時等の所定運転時の場合よりも多くの吸気が充填される。
【特許文献1】特開2004−308441号公報
【特許文献1】特開2003−3071724号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記エンジンの吸気装置を含め多くの吸気装置においては、エンジンの高速運転時に、できるだけ吸気充填量を上げる必要があるにもかかわらず、各吸気ポートから燃焼室内に取り込まれる吸気に、隣り合う吸気ポートの並設方向内方側に向かうものがあり、その両吸気ポートからの吸気同士がぶつかり合うことになっている。このため、このことが吸気抵抗を高め、燃焼室への吸気充填量を高めることの障害となっている。
【0006】
本発明は以上のような事情に鑑みてなされたもので、その技術的課題は、燃焼室への吸気充填量を、一層高めることができるエンジンの吸気装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記技術的課題を達成するために本発明(請求項1に係る発明)においては、
1つの共通吸気ポートが、その下流側において分岐部を中心として2つの分岐吸気ポ−トに分けられ、該2つの分岐吸気ポ−トの下流端開口が、並設された状態をもって、1つの気筒に開口しているエンジンの吸気装置において、
前記各分岐吸気ポートの断面のうち、該分岐吸気ポートの延び方向に対して直交する方向に横断する吸気通路断面が、その各吸気通路断面積を同一に維持しつつ、該各分岐吸気ポートの下流端開口から上流に向かうに従って、互いに近づくように拡張変形されている構成としてある。この請求項1の好ましい態様としては、請求項2〜6の記載の通りとなる。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載された発明によれば、各分岐吸気ポートの吸気通路断面が、該各分岐吸気ポートの下流端開口から上流に向かうに従って、互いに近づくように拡張変形されていることから、各分岐吸気ポートは、隣り合う分岐吸気ポート側内面において、その各下流端開口に向かうに従って両分岐吸気ポートにおける下流端開口の並設方向外側に向けて傾斜する傾斜面を形成することになり、その傾斜面を案内面として吸気が案内される。この傾斜面に沿う方向に流れる吸気は、その方向に運動量ベクトルを有することになり、そのうち、両分岐吸気ポートにおける下流端開口の並設方向外方側に向けてのベクトル成分が、他の吸気に対して作用する。これにより、燃焼室内において、多くの吸気が両分岐吸気ポートにおける下流端開口の並設方向内方側に向けて流れないようにすることができ、両分岐吸気ポートからの吸気同士がぶつかり合うことを抑えることができる。このため、吸気抵抗を低減でき、燃焼室への吸気充填量を、一層高めることができる。
また、傾斜面に沿う方向に流れる吸気の運動量ベクトルのうちの上記一部成分が、他の吸気に対して、両分岐吸気ポートにおける下流端開口の並設方向外方側に作用することから、燃焼室内において、吸気の多くを、燃焼室壁面に向けて流して、その燃焼室壁面と衝突させることができ、燃焼室でのタンブル流の生成を抑制できることになる。このため、特に、高速運転時において、燃焼速度を低下させて、異常燃焼が発生することを抑制できる。
【0009】
請求項2に記載された発明によれば、両分岐吸気ポートが、吸気通路断面の拡張変形を続けた状態で、共通吸気ポートに連なっていることから、吸気は、共通吸気ポートから各分岐吸気ポートにスムーズにそれぞれ入り込み、その後は、各分岐吸気ポートにおける傾斜面の案内作用を該各分岐吸気ポートの延び方向全体に亘って受けることになり、その間、傾斜面に沿う方向に流れる吸気の運動量ベクトルのうちの前述の一部成分が、他の吸気に対して、両分岐吸気ポートにおける下流端開口の並設方向外方側に向けて作用する。このため、各分岐吸気ポートを最大限有効に利用して、前述の請求項1と同様の作用効果を的確に得ることができる。
【0010】
請求項3に記載された発明によれば、各分岐吸気ポートの吸気通路断面が、該各分岐吸気ポートの下流端開口から上流に向かうに従って、少なくとも該両分岐吸気ポートの並設方向内方側において、該各分岐吸気ポートにおける通路上下幅も拡張変形するように設定されていることから、各分岐吸気ポートの下流端開口において、曲率が高められて最終的に一般的な円形状になり、両分岐吸気ポートの並設方向内方側において、該各分岐吸気ポートにおける通路上下幅が狭まるとしても、その上流側において、各分岐吸気ポートの通路上下幅をできるだけ確保して、傾斜面の面積を増大させることができる。これにより、傾斜面に沿う方向に流れる吸気に基づき、他の吸気を、燃焼室において、両分岐吸気ポートにおける下流端開口の並設方向外方側に向けて流すことを高めることができ、前述の請求項1と同様の作用効果を、一層的確に得ることができる。
【0011】
請求項4に記載された発明によれば、各分岐吸気ポートにおける通路上下幅方向上側面が、該各分岐吸気ポートにおける通路横幅方向略全体に亘って、該通路上下幅方向に対して略垂直となる平坦面を形成しており、共通吸気ポートに、吸気を該共通吸気ポートの通路上下幅方向上側に偏向させる制御弁が設けられていることから、制御弁(閉弁)により偏向された吸気流れは、各分岐吸気ポートの平坦面(通路上下幅方向上側面)に案内されて、燃焼室内に流れ込むことになる。このため、制御弁の閉弁時において、高タンブル比化を図ることができる。
【0012】
請求項5に記載された発明によれば、各分岐吸気ポートにおける下流端開口の下流側に、該下流端開口よりも大きい開口を有する吸気弁用バルブシートが設けられ、各分岐吸気ポートにおける下流端開口が、該下流端開口の上下幅方向上側にずらされていることから、該下流端開口の上下幅方向下側(気筒の径方向外側)であって該下流端開口の下流側において、バルブシートの開口に基づき、吸気通路が急激に拡開されることになり、吸気はその拡開された方向にも流れる。このため、吸気の一部の流れを燃焼室内壁側に向けて衝突させることができ、これによっても、タンブル流の生成を抑制できる。
【0013】
請求項6に記載された発明によれば、各分岐吸気ポートにおける吸気通路断面の吸気通路断面積が同一に維持されていることから、各分岐吸気ポート内を流れる吸気流量をこれまでよりも減らさないようにすることができると共に、専有スペースをこれまでと同じにして、周囲の部材に影響を与えることをなくすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、火花点火式エンジンに本発明を適用した場合を示し、1はシリンダブロック、2はシリンダヘッド1上面に固定されたシリンダヘッド、3はシリンダブロック1に形成された気筒1a内に摺動自在に嵌挿されたピストンであり、これら1〜3によって燃焼室4が画成されている。
【0015】
前記シリンダヘッド2には、図1に示すように、各気筒1a毎に吸気ポート11と排気ポート13とが形成されている。吸気ポート11は、本実施形態においては、シリンダヘッド2に一体形成された隔壁5によって分岐された2つの分岐吸気ポ−ト11A,11Bと、その2つの分岐吸気ポ−ト11A,11Bに分岐する分岐点となる分岐部5a(隔壁5により構成)よりも上流側においてそれらが合流した共通吸気ポート11Cとを備えている。2つの分岐吸気ポート11A,11Bは、互いに並列に気筒1a内つまり燃焼室4内に開口されており、その各分岐吸気ポート11A(11B)の下流端開口50A(50B)側には、吸気弁14が個々に設けられて(一方の吸気弁は図示略)、その各吸気弁14により各吸気ポート11A(11B)が個々独立して開閉されることになっている。
【0016】
この場合、各吸気弁14は、その弁軸14aがバルブガイド21によりそれぞれガイドされており、その各バルブガイド21の一部は、若干、分岐吸気ポート11A(11B)内に突出されている。また、各吸気弁14が離着座する弁座が符号16で示されており、その弁座16部分が、実質的に吸気ポートの気筒1a内への開口端つまりスロート部となり、かつ弁座16の内径によって決定される開口面積が、吸気ポート11におけるスロート部の開口断面積となる。別の態様として、共通吸気ポ−ト10の軸線(の延長線)と弁軸13aとの交点を通る断面を最小通過断面、すなわちスロート部としてもよい。
【0017】
前記共通吸気ポート11Cは、図1に示すように、その下流端が前記2つの分岐吸気ポート11A(11B)に合流するように連なり、その上流端は、シリンダヘット2の吸気マニホルド取付面2aから外部に開口されている。
【0018】
前記排気ポート13も、図1に示すように、本実施形態においては2つ設けられており、その2つの排気ポ−ト13(一方の排気ポ−トは図示略)は、吸気ポートの場合と同様、互いに並列に気筒1a内に開口されている。この各排気ポート13には、燃焼室側開口端において、排気弁15が個々に設けられており(一方の排気弁は図示略)、その各排気弁15により各排気ポート13が個々独立して開閉されることになっている。この排気ポート13を含む排気系に関しては、これ以上の説明は省略する。
【0019】
前記シリンダヘッド2の取付面2aには、吸気マニホルド18が固定されている。この吸気マニホルド18は、複数の独立通路18aを有しており(一つのみ図示)、その各上流端が吸気集合部としてのサージタンク(図示略)に接続され、その各下流端は、前記各吸気ポート11のうちの一つの共通吸気ポ−ト11Cが連なっている。これにより、この吸気マニホルド18の独立通路18a、共通吸気ポ−ト11C及び分岐吸気ポート11A(11B)が、一つの吸気通路を構成することになっている。
【0020】
前記吸気マニホルド18の各独立通路18aには、図1,図2に示すように、前記取付面2aよりも上流側において、制御弁40がそれぞれ設けられている。この制御弁40は、低速運転域等の所定運転域において、燃焼室4内でタンブル流を生成すべく、吸気の偏向流を生成させるものであり、その主要構成要素として、弁軸41と、該弁軸41を基準として該弁軸41から径方向外方に張り出す弁体42と、が備えられている。弁軸41は、独立通路18aの上下方向略中央部において該独立通路18aを略水平状態を維持しつつ横切っており、その弁軸41の直径は、弁体42の厚みよりも長くなっている。弁体42は、弁軸41を基準としてその径方向一方側外方部分のみが完全な状態として形成され、弁軸41を基準として径方向他方側外方部分は、一部が切り欠かれた状態に形成されている。そして、低速運転時等の所定運転時には、燃焼室4内においてタンブル流を生成すべく、制御弁40を閉じることによりその弁軸41の径方向他方側においてのみ吸気が通過され(図2参照)、高速運転時においては、できるだけ多くの吸気を燃焼室4内に充填すべく、制御弁40の弁体42は、その板面が吸気の流れに沿う姿勢をとることになっている(図1参照)。
【0021】
前記吸気マニホルド18の下流側端部上部には、燃料噴射弁19が取付けられている。燃料噴射弁19は、4噴孔式とされて、各分岐吸気ポ−ト11A、11Bに分かれて噴射を行うようにされているが、各分岐吸気ポ−ト11A、11B毎に燃料噴射弁を設けることもできる。
【0022】
この場合、共通吸気ポ−ト11Cの取付面2a側の開口断面積は、吸気マニホルド18の開口断面積よりも若干大きくされており、共通吸気ポ−ト11Cの上面内壁には、逃がし凹部20が形成されている。この逃がし凹部20は、燃料噴射弁19から噴射された噴霧との干渉防止のためであり、共通吸気ポ−ト11C部分において、分岐吸気ポ−ト11A、11Bに対応して2つ形成されているが、分岐吸気ポ−ト11A、11Bには形成されていない。燃料噴射弁19からの噴霧指向方向中心線は、図1矢印Yで示すように、吸気弁14の中心よりも下側(分岐吸気ポ−ト11の下面内壁側寄り)とされている。
【0023】
次に、図3〜図8に基づき、前記各分岐吸気ポート11A(11B)及び分岐部5a近傍の共通吸気ポート11Cの吸気通路断面、すなわち、分岐吸気ポート11A(11B)或いは共通吸気ポート11Cの延び方向に対して直交する方向に横断する断面について説明する。図3〜図8において、実線形状が本件内容を示し、破線形状が従来の既存の構成を示している。また、符号52A(52B)は、バルブガイド21を案内するためのバルブガイド壁を示す。
【0024】
本実施形態においては、対称軸線Tを基準として、両分岐吸気ポート11A、11Bが対称に配置されている。この両分岐吸気ポート11A、11Bは、図6に示すように、分岐吸気ポート11A(11B)の下流端開口50A(50B)から上流に向かうに従って、互いに近づくように拡張変形されており、その拡張変形した状態は、共通吸気ポート11Cにまで連なっている。図3における断面D,C,Bは、下流端開口50A(50B)側から上流側に向かった分岐吸気ポート11A(11B)の通路吸気断面を示し、断面Aは、断面Bよりも上流側の共通吸気ポート11Cの吸気通路断面を示しているが、断面Dでは両分岐吸気ポート11A、11Bの間隔がDs、断面Cでは両分岐吸気ポート11A、11Bの間隔がCs、断面Bでは両分岐吸気ポート11A、11Bの間隔がBsとなっており、これら間隔Ds,Cs,Bsは、Bs<Cs<Dsの関係を有している。
【0025】
換言すれば、図9に基づき、各分岐吸気ポート11A(11B)の軸心(ポート中心線)11AL(11BL)によっても説明できる。既存の各分岐吸気ポート(破線のもの)の軸心11AL’(11BL’)が、吸気弁14の弁軸14aの軸心の延長線上に存在するのに対して(図4も参照)、本実施形態においては、両分岐吸気ポート11A(11B)の軸心11AL、11BLが、下流端開口50A(50B)から上流に向かうに従って、両分岐吸気ポート11A(11B)における下流端開口50A(50B)の並設方向(以下、X方向と称す)において互いに近づくように延びている。
【0026】
これにより、図7に示すように、各分岐吸気ポート11A(11B)は、隣り合う分岐吸気ポート11B(11A)側内面において、その各下流端開口50A(50B)に向かうに従ってX方向外側に向けて傾斜する傾斜面51A(51B)を形成することになる。
【0027】
この結果、傾斜面51A(51B)を案内面として吸気AGが案内され、この傾斜面51A(51B)に沿う方向に流れる吸気AGは、X方向外側に向けての分力を他の吸気に対して作用させ、燃焼室4内において、多くの吸気がX方向内方側に向けて流れないようにする。これにより、図8に示すように、両分岐吸気ポート11A、11Bの下流端開口50A、50Bからの吸気AGG同士がX方向内方側でぶつかり合うことを抑えて、吸気抵抗を低減できることになり、燃焼室4への吸気充填量を、一層高めることができることになる。
【0028】
またこのとき、傾斜面51A(51B)に沿う方向に流れる吸気が、そのX方向外側に向けての分力を他の吸気に対して作用させることに基づき、図8に示すように、吸気AGGの多くを、燃焼室4壁面に向けて流して、その燃焼室4壁面に衝突させることになり、燃焼室4でのタンブル流の生成を抑制できることになる。これにより、特に高速運転時において、燃焼速度を低下させて、異常燃焼が発生することを抑制できることになる。
【0029】
本実施形態においては、各分岐吸気ポート11A(11B)の吸気通路断面が、上流側に向かうに従って互いに近づくように拡張変形されているだけでなく、図6に示すように、少なくともX方向内方側において、各分岐吸気ポート11A(11B)における通路上下幅(図6中、上下方向長さ)が上流側に向かうに従って次第に拡張変形されている。具体的には、断面Dでは通路上下幅がDh、断面Cでは通路上下幅がCh、断面Bでは通路上下幅がBhとなっており、これら間隔Dh,Ch,Bhは、Dh<Ch<Bhの関係を有している。これにより、傾斜面51A(51B)に関し、図7の紙面垂直方向における長さが、下流端開口50A(50B)から上流側に向かうに従って長くなり、傾斜面51A(51B)の面積ができるだけ確保されることになっている。この結果、傾斜面51A(51B)に沿う方向に流れる吸気に基づき、他の吸気を、燃焼室4において、X方向外方側に向けて流すことを高めることができることになる。
【0030】
本実施形態においては、各分岐吸気ポート11A(11B)における吸気通路断面の断面積(吸気通路断面積)が、従来と同じ断面積をもって、全体に亘って同一に維持されている。各分岐吸気ポート11A(11B)内を流れる吸気流量を減らさないようにすると共に、専有スペースをこれまでと同じにして、周囲の部材に影響を与えないようにするためである。
このため、本実施形態においては、図6、図7に示すように、従来の通路断面を示す円形の破線形状が、黒塗り矢印で示す方向に拡張変形されて、本実施形態に係る吸気通路断面が形成されている。この場合、各分岐吸気ポート11A(11B)における通路上下幅方向(図6中、上下方向)上側面53A(53B)が、該各分岐吸気ポート11A(11B)における通路横幅方向(図6中、左右方向)略全体に亘って、通路上下幅方向に対して略垂直となる平坦面を形成している。これにより、図2に示すように、制御弁42が閉じられて、吸気が共通吸気ポート11Cの通路上下幅方向上側に偏向させて流されたときには、吸気は、各分岐吸気ポート11A(11B)において、平坦な上側面53A(53B)案内されて燃焼室4内に導入されることになり、燃焼室4において、高タンブル比化を図ることができることになる。
【0031】
また、本実施形態においては、図10に示すように、弁座(バルブシート)16の開口径d2が各分岐吸気ポート11A(11B)における下流端開口50A(50B)の開口径d1よりも小さくなっていて、各分岐吸気ポート11A(11B)における下流端開口50A(50B)の軸心11AL(11BL)が、便座6の軸心16Lに対して該下流端開口50A(50B)の上下幅方向上側(図10中、左斜め上側)にずらされている。これにより、弁座16の開口に基づき、下流端開口50A(50B)の下流側が急激に拡開されることになり、吸気AGGはその拡開された方向(燃焼室4内壁側)にも流れ、その吸気AGGは、燃焼室4内壁に衝突する。このため、このことによっても、タンブル流の生成を抑制できることになる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施形態を示す側面断面図。
【図2】制御弁に基づいて生成される吸気の偏向流を説明する説明図。
【図3】実施形態に係る吸気ポートの形状を側面から説明する説明図。
【図4】図3に係る吸気ポートを平面的に説明する説明図。
【図5】図3に係る吸気ポートを右側から見た状態を示す図。
【図6】図3における各断面を説明図。
【図7】図3の断面Fを示す図。
【図8】図3の断面Eを示す図。
【図9】実施形態に係る分岐吸気ポートの軸心の関係を示す図。
【図10】吸気弁用弁座開口と分岐吸気ポートにおける下流端開口との関係を示す説明図。
【符号の説明】
【0033】
1:シリンダブロック
1a:気筒
2:シリンダヘッド
2a:吸気マニホルド取付面(吸気ポ−トの上流端)
5:隔壁
5a:分岐部
10:吸気通路
11:吸気ポ−ト
11A:分岐吸気ポ−ト
11B:分岐吸気ポ−ト
11C:共通吸気ポ−ト
40:制御弁
50A:分岐吸気ポ−トの下流端開口
50B:分岐吸気ポ−トの下流端開口
51A:分岐吸気ポ−トの傾斜面
51B:分岐吸気ポ−トの傾斜面
53A:分岐吸気ポ−トの上側面
53B:分岐吸気ポ−トの上側面




【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの共通吸気ポートが、その下流側において分岐部を中心として2つの分岐吸気ポ−トに分けられ、該2つの分岐吸気ポ−トの下流端開口が、並設された状態をもって、1つの気筒に開口しているエンジンの吸気装置において、
前記各分岐吸気ポートの断面のうち、該分岐吸気ポートの延び方向に対して直交する方向に横断する吸気通路断面が、該各分岐吸気ポートの下流端開口から上流に向かうに従って、互いに近づくように拡張変形されている、
ことを特徴とするエンジンの吸気装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記両分岐吸気ポートが、前記吸気通路断面の拡張変形を続けた状態で、前記共通吸気ポートに連なっている、
ことを特徴とするエンジンの吸気装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記各分岐吸気ポートの吸気通路断面が、該各分岐吸気ポートの下流端開口から上流に向かうに従って、少なくとも該両分岐吸気ポートの並設方向内方側において、該各分岐吸気ポートにおける通路上下幅も拡張変形するように設定されている、
ことを特徴とするエンジンの吸気装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記各分岐吸気ポートにおける通路上下幅方向上側面が、該各分岐吸気ポートにおける通路横幅方向略全体に亘って、該通路上下幅方向に対して略垂直となる平坦面を形成しており、
前記共通吸気ポートに、吸気を該共通吸気ポートの通路上下幅方向上側に偏向させる制御弁が設けられている、
ことを特徴とするエンジンの吸気装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記各分岐吸気ポートにおける下流端開口の下流側に、該下流端開口よりも大きい開口を有する吸気弁用バルブシートが設けられ、
前記各分岐吸気ポートにおける下流端開口が、該下流端開口の上下幅方向上側にずらされている、
ことを特徴とするエンジンの吸気装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかにおいて、
前記各分岐吸気ポートにおける吸気通路断面の吸気通路断面積が、同一に維持されている、
ことを特徴とするエンジンの吸気装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−329170(P2006−329170A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−157983(P2005−157983)
【出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】