説明

エンジンの運転操作装置

【課題】簡素な構造によって作業者が操作する操作部の操作量とスロットル開度との相関の設定自由度を高めたエンジンの運転操作装置を提供する。
【解決手段】作業者が操作する操作部から離間して配置されるエンジンのスロットル操作を行うエンジンの運転操作装置1を、操作部の操作に応じて基部に対して回動可能とされたリンク部材30と、基部に固定されリンク部材の回転中心B1からの距離が回転中心回りの角度位置に応じて連続的に変化するカム部40と、リンク部材に連結されるとともに、カム部に沿って移動するカムフォロワ部52と、カムフォロワ部とエンジンのスロットル操作部70とを連結するスロットル駆動部材60とを備える構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作部から離間して配置されたエンジンのスロットル操作を行うエンジンの運転操作装置に関し、特に簡素な構造によって作業者が操作する操作部の操作量とスロットル開度との相関の設定自由度を高めたものに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばエンジン駆動の草刈機などにおいては、運転時に作業者が操作するレバー等の操作部がエンジン本体から離れて配置される場合がある。
このような場合に、作業者が手元でエンジンのオンオフ、スロットル操作、チョーク操作などを、単一の操作部材によって遠隔操作可能なよう運転操作装置を構成することが求められる。
【0003】
このようなエンジンの運転操作装置に関する従来技術として、例えば特許文献1には、1本の遠隔操作用ケーブルを用いてエンジンのスロットル及びチョーク操作を行うとともに、高速側のスロットル開度をストッパによって規制した内燃機関の操縦装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭61−125648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した従来技術においては、最高回転をストッパで規制しているとはいえ、チョーク作動時には燃料の増量によって回転数がさらに上昇してしまう。
このような意図しない回転数の上昇を防止するためには、チョーク作動時にスロットルを閉じる機構の追加が必要となる。
これに対して、例えばリンク機構等を用いてチョーク作動時にスロットルを閉じる構成とすることも考えられるが、この場合、構造が複雑となって部品点数が増加し、製品のサイズ、重量、コストも増加してしまう。
本発明の課題は、簡素な構造によって作業者が操作する操作部の操作量とスロットル開度との相関の設定自由度を高めたエンジンの運転操作装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のような解決手段により、上述した課題を解決する。
請求項1に係る発明は、作業者が操作する操作部から離間して配置されるエンジンのスロットル操作を行うエンジンの運転操作装置であって、前記操作部の操作に応じて基部に対して回動可能とされたリンク部材と、前記基部に固定され前記リンク部材の回転中心からの距離が前記回転中心回りの角度位置に応じて連続的に変化するカム部と、前記リンク部材に連結されるとともに、前記カム部に沿って移動するカムフォロワ部と、前記カムフォロワ部と前記エンジンのスロットル操作部とを連結するスロットル駆動部材とを備えることを特徴とするエンジンの運転操作装置である。
これによれば、1軸回りに各部材を回動させるシンプルな構造とすることができ、またカム部の形状設定によって操作部の操作量とスロットル開度との相関を自由に設定することが可能となる。
例えば、操作部がチョーク操作を行う位置にあるときに、スロットルをチョークオフ時に対して閉じ気味にして、チョーキングによる燃料増加で回転が上昇することを防止できる。
また、操作量に対するスロットル開度の変化率の設定自由度も高くなり、いわゆる早開き、遅開き等の特性のチューニングも容易となる。
【0007】
請求項2に係る発明は、前記リンク部材が所定のチョーク位置にあるときに前記リンク部材と連動して前記エンジンのチョーク機構を作動させるチョーク駆動部材を有し、前記カム部は、前記リンク部材が前記チョーク位置にあるときに、前記スロットル駆動部材がスロットル開度を所定のチョーク時スロットル開度とするよう設定されたカム形状を有することを特徴とする請求項1に記載のエンジンの運転操作装置である。
これによれば、チョーキングによって燃料が増加した場合に所望の回転が得られるようにスロットル開度を設定することによって、エンジンの回転が過度に高くなることを防止できる。
【0008】
請求項3に係る発明は、前記カム部は、前記基部に対して前記回転中心回りの角度位置を変更可能とされ、前記スロットル駆動部材が最もスロットルを開く状態で前記カム部と前記リンク部材との相対位置を固定する固定手段を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエンジンの運転操作装置である。
これによれば、固定手段を用いてカム部とリンク部材とを一時的に一体としてずらすことによって、エンジンの最高回転を容易に調節することができる。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、本発明によれば、簡素な構造によって作業者が操作する操作部の操作量とスロットル開度との相関の設定自由度を高めたエンジンの運転操作装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明を適用した運転操作装置の実施例の外観斜視図であって、一方の側面側から見た図である。
【図2】図1の運転操作装置の外観斜視図であって、図1よりも上方から見た図である。
【図3】図1の運転操作装置の外観斜視図であって、図1とは反対側の側面側から見た図である。
【図4】図1の運転操作装置の外観斜視図であって、チョークロッド側から見た図である。
【図5】図1の運転操作装置におけるチョークオン時の各部材の位置関係を示す図である。
【図6】図1の運転操作装置におけるチョークオフ時の各部材の位置関係を示す図である。
【図7】図1の運転操作装置におけるハイ(高速)時の各部材の位置関係を示す図である。
【図8】図1の運転操作装置におけるアイドル(低速)時の各部材の位置関係を示す図である。
【図9】図1の運転操作装置におけるストップ時の各部材の位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、簡素な構造によって作業者が操作する操作部の操作量とスロットル開度との相関の設定自由度を高めたエンジンの運転操作装置を提供する課題を、操作ワイヤによって駆動されるカム機構を介してスロットル操作を行うとともに、チョーク時にスロットル開度を低下させるようカムプロファイルを設定することによって解決した。
【実施例】
【0012】
以下、本発明を適用した運転操作装置の実施例について説明する。
実施例の運転操作装置は、例えばクランク軸が上下方向に配置されたいわゆるV軸の汎用エンジンを動力源とした草刈機に設けられるものであるが、適用対象となるエンジンやこのエンジンで駆動される装置の種類はこれに限らず、特に限定されない。
運転操作装置は、作業者がエンジンから離間して設けられた単一のレバーを操作することによって、スロットルの開閉、チョークのオンオフ、エンジンの停止操作を行なえるよう構成されている。
図1乃至図4は、実施例の運転操作装置の外観斜視図である。
図5乃至図9は、実施例の運転操作装置における各部材の位置関係を示す図であって、それぞれチョークオン状態、チョークオフ状態、ハイ(高速)状態、アイドル(低速)状態、ストップ状態を示している。
【0013】
運転操作装置1は、ブラケット10、操作ワイヤ20、リンクレバー30、カム40、ガバナスプリングピン50、ガバナスプリング60、ガバナレバー70、チョークレバー80、ストップスイッチ90等を備えて構成されている(操作ワイヤ20、ガバナレバー70は図1〜図4には図示しない。図5〜図9参照。また、図7乃至9ではチョークレバー80の図示を省略し、図5乃至7ではストップスイッチ90の図示を省略している。)。
【0014】
ブラケット10は、上述した各構成部品が直接又は間接に取り付けられる基部となる部材である。
ブラケット10は、例えば金属製のプレートによって形成され、そのほぼ中央部には、ボルトB1が挿入される図示しない開口が形成されている。
ボルトB1は、リンクレバー30、カム40、チョークレバー80が、ブラケット10に対して同心に回動する中心軸となる。
ボルトB1は、ナットN1と協働し、リンクレバー30、カム40、チョークレバー80をブラケット10に対して回動可能となるように取り付ける。
この開口の周囲には、レバー開口11、カム固定ネジ開口12、回転セットピン開口13、ストップスイッチ開口14等が形成されている。
【0015】
レバー開口11は、リンクレバー30の後述するガバナスプリングピン係止部32が挿入される開口である。レバー開口11は、リンクレバー30の回動じにガバナスプリングピン係止部32とブラケット10との干渉が生じないサイズに形成されている。
カム固定ネジ開口12は、カム40を固定するカム固定ネジS1が挿入される開口であって、カム40のボルトB1回りの角度を調整した場合でもカム40を固定可能なよう、ボルトB1と同心の円弧状の長穴として形成されている。カム固定ネジ開口12の周方向における両端部は、カム40の調整可能範囲を規制している。
回転セットピン開口13は、カム40の位置調整時に、リンクレバー30とカム40とのボルトB1回りにおける相対角度位置を、ハイ(高速)状態に固定する回転セットピンが通される開口である。
回転セットピン開口13は、ボルトB1と同心の円弧状の長穴として形成されている。
ストップスイッチ開口14は、エンジンの点火系をアースしてエンジンを停止させるストップスイッチ90が取り付けられる部分である。
【0016】
また、ブラケット10には、クランプ15、リターンスプリングフック16が設けられている。
クランプ15は、操作ワイヤ20のアウタワイヤ21の端部が固定される部分である。
リターンスプリングフック16は、チョークレバー80の後述するリターンスプリング84の一方の端部が係止される部分である。
【0017】
操作ワイヤ20は、作業者がエンジンの操作を行う図示しない操作レバーの動きをリンクレバー30に伝達するものである。
操作ワイヤ20は、チューブ状のアウタワイヤ21の内部に、インナワイヤ22を挿入して構成されたプッシュプルワイヤである。
アウタワイヤ21のリンクレバー30側の端部は、ブラケット10のクランプ15に固定されている。
インナワイヤ22のリンクレバー30側の端部は、リンクレバー30の後述するワイヤ接続部31に連結されている。
インナワイヤ22は、操作レバーの動きに応じて、アウタワイヤ21から繰り出され、又は、引き込まれる。
【0018】
リンクレバー30は、インナワイヤ22によって駆動され、ボルトB1の中心軸回りにブラケット10に対して回動可能とされた部材である。
リンクレバー30は、ワイヤ接続部31、ガバナスプリングピン係止部32、回転セットピン開口33、ストップスイッチ接触突起34、チョークレバー連動部35等を備えて構成されている。
【0019】
ワイヤ接続部31は、操作ワイヤ20のインナワイヤ22の端部が接続される部分である。
リンクレバー30は、ワイヤ接続部31をインナワイヤ22に押し引きされることによって、ボルトB1回りに回動する。
ガバナスプリングピン係止部32は、ガバナスプリングピン50の後述する回転軸部51が挿入され係止される部分である。
ガバナスプリングピン係止部32は、リンクレバー30の端部を屈曲させることによって、回転軸部51をその中心軸方向(ブラケット10、リンクレバー30の本体部の厚さ方向)において離れた2点で支持するようになっている。
回転セットピン開口33は、カム40の位置調整時に用いられる回転セットピンが挿入される開口である。
ストップスイッチ接触突起34は、リンクレバー30が回動してエンジンを停止するストップ位置に到達したときに、ストップスイッチ90の端子部と接触する部分である。
チョークレバー連動部35は、チョークレバー80を押圧して回動させ、チョークを作動させる部分である。
【0020】
カム40は、ボルトB1の中心軸を基準としたときに、リンクレバー30のガバナスプリングピン係止部32よりも内径側(ボルトB1に近い側)に配置されたカム山面部を備えている。
カム山面部は、ボルトB1の中心軸回りにおける角度位置に応じて、この中心軸からの距離が連続的に変化するように構成され、ガバナスプリングピン50の後述するカムフォロワ部52を案内する。
また、カム40は、エンジンの最高回転調節時に、ボルトB1回りにブラケット10に対して回転方向に位置の調節が可能となっている。
カム40は、ブラケット10への固定に用いられるカム固定ネジS1が挿入される固定ネジ開口41、及び、回転セットピンが挿入される回転セットピン開口42が設けられている。
【0021】
ガバナスプリングピン50は、リンクレバー30に対して揺動可能に接続されるとともに、カム40のカム山部に案内されるカムフォロワ部52を有し、さらに、このカムフォロワ部52に連結されたガバナスプリング60を牽引するものである。
ガバナスプリングピン50は、回転軸部51、カムフォロワ部52、連結部53等を備えて構成されている。これらの各部は、例えば、丸棒材を曲げ加工することによって一体に形成されている。
【0022】
回転軸部51は、リンクレバー30のガバナスプリングピン係止部32に挿入され係止されて、回動可能に支持される部分である。
回転軸部51は、ボルトB1と平行に配置されている。
カムフォロワ部52は、回転軸部51と所定の間隔を隔てて平行に配置された部分である。
カムフォロワ部52の外周面は、リンクレバー30のブラケット10に対するボルトB1回りの回転に応じて、カム40のカム山面に沿って案内される。
このとき、カムフォロワ部52のボルトB1からの距離の変化に応じて、ガバナスプリングピン50は回転軸部51回りにリンクレバー30のガバナスプリングピン係止部32に対して揺動する。
カムフォロワ部52の一方の端部(連結部53とは反対側の端部)には、ガバナスプリング60の端部を係止するために鉤状に折り曲げられたフック部52aが形成されている。
連結部53は、回転軸部51とカムフォロワ部52とを連結するためにこれらの端部間にわたして設けられた部分である。
【0023】
ガバナスプリング60は、ガバナスプリングピン50のカムフォロワ部52(フック部52a)とガバナレバー70との間にわたして設けられた引張コイルバネである。
ガバナスプリング60は、牽引されることによって、エンジンのスロットルが開かれる方向にガバナレバー70を付勢し、駆動するスロットル駆動部材である。
【0024】
ガバナレバー70は、図示しないエンジンのガバナ機構、及び、ガバナスプリング60が連結されるとともに、エンジンのスロットルを駆動する部材である。
図5乃至図9に示すように、ガバナレバー70は、回転軸71回りに回動可能とされるとともに、ガバナスプリング60の端部が係止されるガバナスプリング係止部72が設けられている。
【0025】
チョークレバー80は、エンジンのチョーク機構を作動させる部材であって、ボルトB1回りにブラケット10に対して回動可能となっている。
チョークレバー80は、作動突起81、レバー本体82、チョークロッド83、リターンスプリング84等を有して構成されている。
作動突起81は、リンクレバー30がチョークオフ位置からチョークオン位置に回動する際に、リンクレバー30のチョークレバー連動部35によって押圧され、チョークレバー80をリンクレバー30と同じ方向に回動させる部分である。
レバー本体82は、ボルトB1に対して外径側に張り出して形成されたアーム状の部分である。
チョークロッド83は、レバー本体82の先端部に設けられた開口に一方の端部が係止されるとともに、レバー本体82の動きを図示しないエンジンのチョーク機構に伝達してこれを作動させる伝達軸である。
リターンスプリング84は、レバー本体82の中間部、及び、ブラケット10のリターンスプリングフック16に両端部がそれぞれ係止された引張コイルバネである。
リターンスプリング84は、作動突起81がリンクレバー30のチョークレバー連動部35によって押されていないときに、チョークレバー80をチョークオフ方向へ回動させるものである。
【0026】
ストップスイッチ90は、リンクレバー30のストップスイッチ接触突起34と当接することによって、エンジン点火系を電気的にアースし、エンジンを停止させるものである。
【0027】
次に、上述した運転操作装置1の動作について説明する。
以下、図5乃至図9に示すチョークオン状態、チョークオフ状態、ハイ(高速)状態、アイドル(低速)状態、ストップ状態について順次説明する。
これらの各状態間の移行は、操作ワイヤ20のインナワイヤ22を繰り出して、リンクレバー30を図5乃至図9における反時計方向に順次回動させることによって行なわれる。
【0028】
<チョークオン状態>
図5に示すチョークオン状態は、エンジンの冷間始動時などに用いられる状態であって、エンジンのチョーキングを行なうとともに、スロットルは全開位置よりも所定量だけ閉じることで、チョーキングによる燃料増量でエンジンの回転数が過度に上昇することを防止している。
このようなスロットルの閉じ動作は、カム40のカム面部に、谷状に凹んだチョーク作動時強制回転低下位置40aを形成することによって実現できる。
また、リンクレバー30のチョークレバー連動部35は、チョークレバー80の作動突起81を押してチョークレバー80を回動させて、チョークロッド83を介してエンジンのチョーク機構にチョーキングを行なわせる。
このチョークオン状態においては、クランプ15からリンクレバー30のワイヤ接続部31までのインナワイヤ22の繰り出し長さは例えば43.4mmであり、ガバナスプリングピン50のカムフォロワ部52からガバナレバー70のガバナスプリング係止部72までのガバナスプリング60のセット長さは例えば80.1mmとなっている。
【0029】
<チョークオフ状態>
図6に示すチョークオフ状態は、チョークオン状態の終了時などに用いられる状態であって、エンジンのチョーキングは終了し、スロットルはチョークオン状態に対して開かれた(高速側の)状態となっている。
このようなスロットルの開きは、カムフォロワ部52がカム40のチョーク作動時強制回転低下位置40aから出てカム山を登ることによって行なわれる。
また、リンクレバー30のチョークレバー連動部35は、チョークレバー80の作動突起81と当接はしているが、実質的に押圧はしておらず、チョークレバー80はリターンスプリング84の付勢力によって実質的にチョークオフ位置まで回動している。
このチョークオフ状態においては、インナワイヤ22の繰り出し長さは例えば48.5mmであり、ガバナスプリング60のセット長さは例えば85.2mmとなっている。
【0030】
<ハイ(高速)状態>
図7に示すハイ状態は、草刈機等のエンジン駆動機器の高負荷運転時などに用いられる状態であって、エンジンのチョーキングは行なわず、スロットルはエンジンを最高回転とする位置まで開かれた状態となっている。
このとき、カムフォロワ部52は、チョークオフ状態よりもさらにカム山を登った状態となっており、カム山の表面がボルトB1の中心軸から最も離間する頂部(カム山最大位置)に当接している。
このハイ状態においては、インナワイヤ22の繰り出し長さは例えば53.8mmであり、ガバナスプリング60のセット長さは例えば86.3mmとなっている。
【0031】
<アイドル(低速)状態>
図8に示すアイドル状態は、エンジン駆動機器の待機時などに用いられる状態であって、エンジンのチョーキングは行なわず、スロットルはエンジンを最低回転(アイドリング回転)とする位置まで閉じられた状態となっている。
このとき、カムフォロワ部52は、ハイ状態に対してカム山の頂部から降りた状態となっている。
このアイドル状態においては、インナワイヤ22の繰り出し長さは例えば76.9mmであり、ガバナスプリング60のセット長さは例えば自由長である71.3mmとなっている。
この運転操作装置1においては、ハイ状態とアイドル状態との間で、リンクレバー30を回動させることによって、エンジンの回転数を無段階に調節可能となっている。
【0032】
<ストップ状態>
図9に示すストップ状態は、エンジンの停止時に用いられる状態であって、スロットル開度はアイドル状態と実質的に同じとなっている。
また、リンクレバー30のストップスイッチ接触突起34は、ストップスイッチ90の端子部と当接することによって、エンジンの点火を中止してエンジンを停止させる。
このストップ状態においては、インナワイヤ22の繰り出し長さは例えば79.4mmであり、ガバナスプリング60のセット長さはその自由長を下回って例えば67.9mmとなり、ガバナスプリング60は弛緩している。
【0033】
また、運転操作装置1は、例えば領収運転時等に、カム40のボルトB1回りの角度位置をずらすことによって、エンジンの最高回転を任意に調節することが可能となっている。
カム40の調整は、図7に示すハイ状態において行なわれる。
このとき、リンクレバー30の回転セットピン開口33とカム40の回転セットピン開口42とは、ボルトB1の軸方向に重なった位置に配置される。
先ず、回転セットピン開口33,42に図示しない回転セットピンを挿入してこれらのボルトB1回りの相対回転を規制する。
次に、カム固定ネジS1を緩めてリンクレバー30及びカム40をともにブラケット10に対して相対回転させる。
これによってガバナスプリング60のセット長さが変化し、エンジンの回転数が変化する。そして、エンジンの回転数が所望の最高回転数となる位置で、カム固定ネジS1を再び締結してカム40をブラケット10に対して固定する。
そして、回転セットピンを抜き取って最高回転の調節は終了する。
この調節をした後は、リンクレバー30の位置に関わらず、エンジンの回転数はこの最高回転以下に設定される。
【0034】
以上説明した本実施例によれば、操作ワイヤ20によってカム40のカム山面部に沿って駆動されるカムフォロワ部52がスロットル操作部材であるガバナスプリング60を牽引する構成としたことによって、各部材が1軸回りに回動する簡単な構造によってインナワイヤ22の繰り出し量とスロットル開度(エンジン回転)との相関の設定自由度を向上することができる。
これによって、操作部の操作量に対するスロットル開度、エンジン回転の変化率を比較的自由に設定することが可能となる。例えば、スロットルのいわゆる早開き、遅開きといった特性のチューニングが容易となり、操作性を向上できる。
また、チョーク時におけるスロットル開度を、燃料の増加に関わらず回転上昇を抑制するように閉じ気味に設定することが可能となるため、チョーキングによる燃料の増加によってエンジンの回転数が過度に上昇することを防止できる。
【0035】
(変形例)
本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
(1)運転操作装置を構成する各部材の構造、形状、配置等は上述した実施例に限定されず、適宜変更することが可能である。
例えば、実施例のカム形状は一例であって、設計目的に応じて適宜変更可能である。
また、カムフォロワ部の磨耗等が問題となる場合には、カムフォロワをコロ状の転動体を有するローラフォロワとしてもよい。
また、各種ワイヤ、ロッド、ボルト等の機械要素は、実質的に同様の機能を有する他の機械要素に適宜変更可能である。
(2)運転操作装置が適用される対象となる装置は、例えば草刈機、刈払機等のほか、操作部がエンジン本体から離間して設けられる如何なる装置や、車両等であってもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 運転操作装置 10 ブラケット
11 レバー開口 12 カム固定ネジ開口
13 回転セットピン開口 14 ストップスイッチ開口
15 クランプ 16 リターンスプリングフック
20 操作ワイヤ 21 アウタワイヤ
22 インナワイヤ 30 リンクレバー
31 ワイヤ接続部 32 ガバナスプリングピン係止部
33 回転セットピン開口 34 ストップスイッチ接触突起
35 チョークレバー連動部 40 カム
40a チョーク作動時強制回転低下位置 41 固定ネジ開口
42 回転セットピン開口 50 ガバナスプリングピン
51 回転軸部 52 カムフォロワ部
52a フック部 53 連結部
60 ガバナスプリング 70 ガバナレバー
71 回転軸 72 ガバナスプリング係止部
80 チョークレバー 81 作動突起
82 レバー本体 83 チョークロッド
84 リターンスプリング 90 ストップスイッチ
B1 ボルト N1 ナット
S1 カム固定ネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者が操作する操作部から離間して配置されるエンジンのスロットル操作を行うエンジンの運転操作装置であって、
前記操作部の操作に応じて基部に対して回動可能とされたリンク部材と、
前記基部に固定され前記リンク部材の回転中心からの距離が前記回転中心回りの角度位置に応じて連続的に変化するカム部と、
前記リンク部材に連結されるとともに、前記カム部に沿って移動するカムフォロワ部と、
前記カムフォロワ部と前記エンジンのスロットル操作部とを連結するスロットル駆動部材と
を備えることを特徴とするエンジンの運転操作装置。
【請求項2】
前記リンク部材が所定のチョーク位置にあるときに前記リンク部材と連動して前記エンジンのチョーク機構を作動させるチョーク駆動部材を有し、
前記カム部は、前記リンク部材が前記チョーク位置にあるときに、前記スロットル駆動部材がスロットル開度を所定のチョーク時スロットル開度とするよう設定されたカム形状を有すること
を特徴とする請求項1に記載のエンジンの運転操作装置。
【請求項3】
前記カム部は、前記基部に対して前記回転中心回りの角度位置を変更可能とされ、
前記スロットル駆動部材が最もスロットルを開く状態で前記カム部と前記リンク部材との相対位置を固定する固定手段を有すること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエンジンの運転操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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