説明

エンジン用スロットルボディ及びスロットルボディを備えた気化器

【課題】過剰なコストアップを招くことなく、スロットルバルブのアイシングを確実に防止又は解除できるようにする。
【解決手段】本体1を貫通して設けた吸気通路2にスロットルバルブ軸30で支持されたスロットルバルブ3が開閉可能に配設されているエンジン用スロットルボディ2Aにおいて、そのスロットルバルブ軸30を挿設する軸孔20が本体1外周面所定位置から反対側の外周面まで貫通して設けられ、軸孔20の先端側部分にプラグ状の電気ヒータ31が外側から挿設されてその発熱部が挿設されたスロットルバルブ軸30の先端側に近接しており、電気ヒータ31に通電することでスロットルバルブ軸30を先端側から昇温させて熱伝導でスロットルバルブ3周縁側まで昇温させて、スロットルバルブ3が氷で固着することによるアイシングを防止又は解除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン用スロットルボディに関し、殊に、スロットルバルブのアイシング解除機能を備えたエンジン用スロットルボディ及びスロットルボディを備えた気化器に関する。
【背景技術】
【0002】
低温下でエンジンの始動を行う場合、スロットルバルブ(吸気絞り弁)部分に空気中の水分が氷結することがある。これは、アイシングと呼ばれる現象であるが、スロットルバルブが氷で固着することによりスロットルが作動不能になるトラブルも多い。
【0003】
この問題に対し、特開2001−303982号公報には、スロットルボディのスロットルバルブ近傍位置に温水通路を配設し、これにエンジン冷却水を通しながら昇温させてスロットルバルブを固着した氷を溶かすことにより、スロットルバルブのアイシングを防止又は解除するエンジン用スロットルボディが記載されている。
【0004】
また、特開2002−206434号公報や特開2009−36110号公報には、スロットルボディのスロットルバルブ近傍位置に電気ヒータを配設して、スロットルバルブが固着するような低温時に通電することにより、アイシングを防止又は解除するものも記載されている。このようにしてアイシング解除機能をスロットルボディに付与することにより、低温時におけるスロットルの作動を確保することが可能になる。
【0005】
しかし、上述したエンジン冷却水の熱を利用するものでは、水冷エンジンの場合しか実施できないことから適用対象が限定される。また、適用可能な場合にも、冷却水をスロットルボディ側に導入する冷却水配管が必要になることに加え、スロットルボディ側に温水通路を設ける必要が生じて、大きなコストアップが避けられない。
【0006】
一方、電気ヒータを付設するものでは、電気ヒータの付設方法としてスロットルバルブを保持しているスロットルボディとエンジン吸気管との間、又はスロットルボディに直接付設することが考えられる。前者の場合は電気ヒータが別ユニットとして必要になることに加え、気化器又はスロットルボディを間接的に昇温させる構成のため、スロットルバルブ近傍の昇温が不充分となりやすく、且つ、電気ヒータ付設の有無により気化器又はスロットルボディの設置位置が移動するため専用の配置設計が必要になってしまう。
【0007】
後者の場合は、氷結部分の良好な昇温を可能にするためにスロットルバルブ付近に電気ヒータの付設構造があることが条件となることから、スロットルボディを新たに設計することが必要になる。そのため、いずれの場合も汎用性に欠けてコストの高騰を招きやすいという難点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−303982号公報
【特許文献2】特開2002−206434号公報
【特許文献3】特開2009−36110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような問題を解決しようとするものであり、過剰なコストアップを招
くことなく、スロットルバルブのアイシングを確実に防止又は解除できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明は、本体を貫通して設けた吸気通路にスロットルバルブ軸で支持されたスロットルバルブが開閉可能に配設されているエンジン用スロットルボディにおいて、そのスロットルバルブ軸を挿設する軸孔が本体外周面所定位置から反対側の外周面まで貫通して設けられ、この軸孔の先端側部分にプラグ状の電気ヒータが外側から挿設されてその発熱部が挿設されたスロットルバルブ軸の先端側に近接しており、この電気ヒータに通電することでスロットルバルブ軸を先端側から昇温させて熱伝導でスロットルバルブ周縁側まで昇温させ、スロットルバルブが氷で固着することによるアイシングを防止又は解除する、ことを特徴とするものとした。
【0011】
このように、スロットルバルブ軸を挿通した軸孔に電気ヒータを外側から挿設し、スロットルバルブ軸を介してスロットルバルブまで昇温させる構成としたことにより、簡易な構成で確実にアイシングを防止又は解除可能なものとなり、気化器を含む既存のスロットルボディにおいて、電気ヒータを挿設する軸孔が外部まで充分な径で貫通したものはそのまま使用し、それ以外は外側から所定の孔径にて穿設して軸孔を貫通させるだけで適用可能な状態になるため、新たな設計を要することなく最小限の追加コストでアイシング解除機能を付与することができる。
【0012】
また、このエンジン用スロットルボディにおいて、その電気ヒータは発熱部が先端側に設けられてこの先端側がスロットルバルブ軸先端側に当接する配置となっていることを特徴としたものとすれば、スロットルバルブ軸が効率的に昇温してスロットルバルブの昇温が良好なものとなる。
【0013】
尚、本発明は、個別のエンジン用スロットルボディ及びスロットルボディを付設した気化器についても同様に適用することができるものである。
【発明の効果】
【0014】
スロットルバルブ軸を挿設する軸孔に電気ヒータを外側から挿設し、スロットルバルブ軸先端側からの熱伝導によりスロットルバルブを昇温させるものとした本発明によると、過剰なコストアップを招くことなくスロットルバルブのアイシングを確実に防止又は解除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明における実施の形態のエンジン用スロットルボディを備えた気化器の縦断面図である。
【図2】図1の気化器において電気ヒータを挿設しない仕様の場合を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。尚、本実施をするための形態では、スロットルボディは、単独でなくスロットルバルブが気化器に一体的に付設されている場合を示したが、スロットルボディ単独の場合も同様にして実施することができる。
【0017】
図1は本実施の形態であるエンジン用のスロットルボディ2Aを備えた気化器の縦断面図を示している。この気化器は、吸気通路10が本体1を上下に貫通して設けられており、この吸気通路10にスロットルバルブ軸30で支持されたスロットルバルブ30が開閉
可能に配設されて図示しない燃料吐出孔からエンジンに燃料を供給するものである。
【0018】
そのスロットルバルブ軸30は、図において本体1の下側部分で吸気通路10の中心を直角方向に通過し一方の外周面から反対側の外周面まで貫通して設けた軸孔20に挿通されて、その外周面を軸孔20の内周面に摺接しながらその中心軸線周りに回動可能に設けられて、外部に露出したレバーを操作することでスロットルバルブ3を開閉するようになっており、以上の構成は従来例にも共通した周知のものである。
【0019】
上述したように、従来例において低温時にスロットルバルブ3のアイシングを防止又は解除を行う手段として、水冷エンジン以外の場合でも適用可能なものとして、電気ヒータをスロットルボディのスロットルバルブ付近に付設しこれを昇温させることが実施されているが、この場合、電気ヒータを付設するための構造部分を備えたスロットルボディとして新たに設計する必要があり、既存のスロットルボディをそのまま流用することができずにコスト高となっていた。
【0020】
そこで、本発明においては、スロットルバルブ軸30を挿通配置した軸孔20の先端側部分にプラグ状の電気ヒータ31を外側から螺入・挿設し、その外部側に露出した通電端子31aを介して通電することにより、電気ヒータ31の発熱部が発熱してスロットルバルブ軸30を先端側から昇温させ、熱伝導により氷結箇所であるスロットルバルブ3周縁側まで昇温させるようになっている点を特徴としている。
【0021】
本実施の形態では、スロットルバルブ軸30はスロットルボディ2Aを貫通した軸孔20先端側部分の途中(周壁厚さ方向の中間)までの長さしかなく、その先端面から本体1外周面の開口部まで円柱状の空間が形成されているとともに内周面にネジ山が設けられており、この部分に外周面の一部がネジ状とされて全体としてプラグ状に形成された電気ヒータ31を螺入して固定したものとなっている。
【0022】
また、電気ヒータ31の発熱部は先端側に設けられてその先端面がスロットルバルブ軸30の先端面に当接しており、発熱部による熱がスロットルバルブ軸30にダイレクトに伝導しやすくなっている。そのため、電気ヒータ31による熱エネルギーが効率的にスロットルバルブ3まで到達し、最小限の電力でアイシングの防止又は解除が達成される。
【0023】
このように、スロットルバルブ軸30を挿通する軸孔20先端側にプラグ状の電気ヒータ31を挿設するだけでよいことから、本発明は既存のスロットルボディを殆どそのまま用いて実施できるため、アイシング解除機能を付設するためのコストアップは最小限で済む。
【0024】
尚、軸孔20の先端側が外周面まで貫通していないものや貫通していても充分な径を有していないものにおいては、電気ヒータ31を挿設可能な径で孔を穿設する必要があるところ、これは比較的簡単な作業であり、そのためのコストアップは僅かである。
【0025】
図2は、上述した気化器において、電気ヒータ31を付設しない仕様のスロットルボディ2Bとした場合を示すものであり、電気ヒータ31の代わりに盲プラグ32を軸孔20先端側部分に外側から挿設して開口部を塞いだ構成となっている。このようにすることで、同一の気化器において電気ヒータ31の有無の設定が容易になり、極めて汎用性に優れたものとなる。
【0026】
以上、述べたように、本発明により過剰なコストアップを招くことなく、スロットルバルブのアイシングを確実に防止又は解除できるようになった。
【符号の説明】
【0027】
1 本体、2A スロットルボディ、3 スロットルバルブ、10 吸気通路、20 軸孔、30 スロットルバルブ軸、31 電気ヒータ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体を貫通して設けた吸気通路にスロットルバルブ軸で支持されたスロットルバルブが開閉可能に配設されているエンジン用スロットルボディにおいて、前記スロットルバルブ軸を挿設する軸孔が前記本体外周面所定位置から反対側の外周面まで貫通して設けられ、前記軸孔の先端側部分にプラグ状の電気ヒータが外側から挿設されてその発熱部が挿設された前記スロットルバルブ軸の先端側に近接しており、前記電気ヒータに通電することで前記スロットルバルブ軸を先端側から昇温させて熱伝導で前記スロットルバルブ周縁側まで昇温させ、前記スロットルバルブが氷で固着することによるアイシングを防止又は解除することを特徴としたエンジン用スロットルボディ。
【請求項2】
前記電気ヒータは、前記発熱部が先端側に設けられて該先端側が前記スロットルバルブ軸先端側に当接する配置となっている、ことを特徴とする請求項1に記載したエンジン用スロットルボディ。
【請求項3】
前記請求項1または2に記載のエンジン用スロットルボディを備えた気化器。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−196206(P2011−196206A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61957(P2010−61957)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000153122)株式会社ニッキ (296)
【Fターム(参考)】