説明

エントランスパッキン

【課題】従来よりも止水性能を向上したエントランスパッキンを提供する。
【解決手段】発進立坑1の坑壁2に設けられた発進坑口3の周縁部に取り付けられるエントランスパッキン7の表面の平均粗さRaを5〜1500μmにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエントランスパッキンに関し、更に詳しくは、従来よりも止水性能を向上したエントランスパッキンに関する。
【背景技術】
【0002】
シールド工法や推進工法においては、発進立坑の坑壁に設けられた発進坑口の周縁部に止水装置を取り付けて、その発進坑口に嵌入する掘進機や推進管の外周面との隙間から地下水や土砂が発進立坑内に流出するのを防ぐ必要がある(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
通常、この止水装置として、環状のゴム板からなるエントランスパッキンが用いられている。このエントランスパッキンの内径は、掘進機や推進管の外径よりも小さくなっており、掘進機や推進管の外周面によって押し拡げられた内周縁部の弾性反発力により止水を行うようになっている。なお、エントランスパッキンは、発進立坑に対応する到達立坑の到達坑口にも取り付けられる。
【0004】
しかしながら、坑口の深度や地盤の状態などによっては、エントランスパッキンに加わる土圧によりエントランスパッキンが外側へ押し出されるように変形してしまうことがあり、止水が不十分になるおそれがある。そのため、従来よりも止水性能を向上したエントランスパッキンが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−264676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、従来よりも止水性能を向上したエントランスパッキンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成する本発明のエントランスパッキンは、立坑の坑壁に設けられた坑口の周縁部に取り付けられ、前記坑口に嵌入する掘進手段と該坑口との間をシールして止水する環状のゴム板からなるエントランスパッキンにおいて、前記掘進手段の外表面に当接する前記エントランスパッキンの表面部分の平均粗さRaを5〜1500μmにしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のエントランスパッキンによれば、掘進手段の外表面に当接するエントランスパッキンの表面部分の平均粗さRaを5〜1500μmにしたので、エントランスパッキンと掘進手段の外周面との間の摩擦係数が増加する。そのため、エントランスパッキンを外側へ押し出すように変形させる土圧が大きくなっても、その土圧に対抗して変形を抑えることができるので、従来よりも止水性能を向上することができる。
【0009】
平均粗さRaが5〜1500μmとなるエントランスパッキンの表面部分は、エントランスパッキンの変形抑制及び止水性能の向上の観点から、布目模様から構成することが望ましい。そのような布目模様は、ゴム板を加硫する際に繊度が400〜1500dtex、撚り本数が1〜20本及び密度が10〜100本/5cmである帆布をゴム板の表面に配置した状態にし、かつ加硫後に帆布をゴム板の表面から引き剥がす方法により容易に形成することができる。
【0010】
また、平均粗さRaが5〜1500μmとなるエントランスパッキンの表面部分においては、ゴム板の半径方向に沿って平均粗さRaが増加又は減少するようにすることが望ましい。そのようにすることで、施工現場の地盤の状態によりエントランスパッキンに加わる土圧の分布が変化するような場合でも、エントランスパッキンの変形具合を最適にして止水性能を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態からなるエントランスパッキンを用いた施工現場の例を示す側方からの一部断面図である。
【図2】本発明の実施形態からなるエントランスパッキンであって、(a)は平面図を、(b)は(a)に示すY−Y部の断面図を、それぞれ示す。
【図3】図1におけるX部の拡大図である。
【図4】本発明の実施形態からなるエントランスパッキンを用いた施工現場の他の例を示す側方からの一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態からなるエントランスパッキンを用いた施工現場を示す。
【0014】
これは、推進工法を用いて発進立坑1から到達立坑(図示せず)へ向けて水道管等を埋設する施工現場の一例である。発進立坑1の坑壁2に設けられた発進坑口3には、掘進機4と推進管5とを連結してなる掘進手段6が嵌入し、先端の掘進機4で地中を掘削しつつ、後方の推進管5を油圧ジャッキ(図示せず)で圧入するようになっている。発進坑口3の周縁部には、エントランスパッキン7が坑壁2の一部をなすように押え板8を介してボルト9で取り付けられている。
【0015】
エントランスパッキン7は、図2に示すように、円環状のゴム板から構成されている。ゴム板の厚さは、例えば5〜50mm程度であり、ゴム板を形成するゴム組成物としては天然ゴムや天然ゴムとスチレン・ブタジエンゴムとのブレンドゴムなどのゴム組成物が好適に用いられるが、それに限るものではなく、クロロプレンゴム、ニトリル・ブタジエンゴム等のジエン系ゴムや、EPDM等のオレフィン系ゴム及びそのブレンドゴムなどのゴム組成物などを目的に応じて用いることができる。
【0016】
エントランスパッキン7の内径rは、掘進手段6の外径Rよりも小さくなっている。そのため、図3に示すように、エントランスパッキン7の内周縁部7aは、掘進手段6の外周面10により進行方向へ向けて押し拡げられるように変形し、その弾性反発力で外周面10に表面部分11で当接することで、発進坑口3との間の隙間をシールして止水を行うようになっている。なお、エントランスパッキン7には、外側へ押し出すように変形させる土圧Fが常に加わっている。
【0017】
本発明は、この土圧Fに対向するために、エントランスパッキン7が推進手段6の外表面10に当接する表面部分11の平均粗さRaを5〜1500μmにするものである。なお、製造を容易にする観点から、エントランスパッキン7の外表面10の全部を平均粗さRaが5〜1500μmになるようにしてもよい。
【0018】
このようにすることで、エントランスパッキン7と掘進手段6の外周面10との間の摩擦係数が増加する。そのため、土圧Fが大きくなっても対抗してエントランスパッキン7の変形を抑えることができるので、従来よりも止水性能を向上することができる。
【0019】
平均粗さRaが5μm未満であると、本発明の効果が小さくなって、止水性能が従来と同程度になってしまう。つまり、エントランスパッキン7が土圧Fに抗しきれず外側へ変形してしまうことがあり、掘進手段6の外周面10とエントランスパッキン7との隙間から、地下水や土砂が発進立坑1内へ流出し、止水が不十分となるおそれがある。また、平均粗さRaが1500μm超であると、エントランスパッキン7の表面の凹凸が大きくなるため、その表面の凹凸の間より地下水や土砂が発進立坑1内へ流出し、止水が不十分となるおそれがある。
【0020】
平均粗さRaが5〜1500μmとなるエントランスパッキン7の表面部分11は布目模様から構成することが望ましい。布目模様とは布目を転写した模様であり、一様に均一な凹凸ではなく、大きさに多少のばらつきのある凹凸を有している。触感としては、やや毛羽だった感じを与える模様である。この独特の凹凸具合がゴム板の表面に形成されることで、摩擦係数が増加するだけでなく、エントランスパッキンの変形抑制及び止水効果の向上が期待できる。
【0021】
この布目模様は、繊度が400〜1500dtex、撚り本数が1〜20本及び密度が10〜100本/5cmである帆布をゴム板の表面に配置(密着)した状態にしてゴム板を加硫し、かつ加硫後にその帆布を表面から引き剥がす方法により容易に形成することができる。
【0022】
また、平均粗さRaが5〜1500μmとなるエントランスパッキン7の表面部分11においては、基本的には平均粗さRaが一様になるようにするが、ゴム板の半径方向に沿って平均粗さRaが増加又は減少するようにしてもよい。後者のようにすることで、施工現場の地盤の状態によりエントランスパッキン7に加わる土圧Fの分布が変化するような場合でも、エントランスパッキン7の変形具合を最適にして止水性能を維持することができる。
【0023】
なお、図4に示すように、エントランスパッキン7は到達立坑12の坑壁13に形成される到達坑口14の周縁部にも取り付けてもよい。この場合には、エントランスパッキン7は、地中を掘削してきた掘進手段6の外周面10により到達立坑11側へ向けて押し拡げられるように変形し、その弾性反発力で外周面10に当接することで、到達坑口14との間の隙間をシールして止水を行うようになっている。
【0024】
このときエントランスパッキン7は、土圧Fにより掘進手段6の進行方向へ押し出されるように変形するが、エントランスパッキン7の表面の平均粗さRaを5〜1500μmにすることで、土圧Fが大きくなっても対抗してエントランスパッキン7の変形を抑えることができるので、従来よりも止水性能を向上することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 発進立坑
2、13 坑壁
3 発進坑口
4 掘進機
5 推進管
6 掘進手段
7 エントランスパッキン
8 押え板
9 ボルト
10 外周面
11 当接する表面部分
12 到達立坑
14 到達坑口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立坑の坑壁に設けられた坑口の周縁部に取り付けられ、前記坑口に嵌入する掘進手段と該坑口との間をシールして止水する環状のゴム板からなるエントランスパッキンにおいて、
前記掘進手段の外表面に当接する前記エントランスパッキンの表面部分の平均粗さRaを5〜1500μmにしたことを特徴とするエントランスパッキン。
【請求項2】
前記平均粗さRaが5〜1500μmであるエントランスパッキンの表面部分が布目模様からなる請求項1に記載のエントランスパッキン。
【請求項3】
前記布目模様が、前記環状のゴム板を加硫する際に繊度が400〜1500dtex、撚り本数が1〜20本及び密度が10〜100本/5cmである帆布を前記ゴム板の表面に配置した状態にし、かつ加硫後に前記帆布を該ゴム板の表面から引き剥がすことにより形成されたものである請求項2に記載のエントランスパッキン。
【請求項4】
前記平均粗さRaが5〜1500μmであるエントランスパッキンの表面部分において、前記ゴム板の半径方向に沿って平均粗さRaが増加又は減少するようにした請求項1〜3のいずれかに記載のエントランスパッキン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−122223(P2012−122223A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272611(P2010−272611)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】