説明

エンブレム用シートおよびその製造方法

【課題】立体感および耐久性に優れたエンブレムを容易に形成でき、かつ白銀色に加えて任意の着色金属光沢を有するエンブレムを形成できるエンブレム用シートとその製造方法を提供すること。
【解決手段】下地層としての軟質樹脂基材シート(1)の一方の面に、表示層としての金属光沢層(2)と、表皮層としての透明弾性樹脂層(3)とが順次積層され、上記金属光沢層(2)が、金属箔含有塗料から形成されていることを特徴とするエンブレム用シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両、衣料品、バッグ、靴、帽子、スポーツ用品、家電などの電気機器、携帯電話などの通信機器などの種々の物品に光輝性立体表示部材(エンブレム、マーク、キーパットなど)を付与するためのエンブレム用シートおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両、衣料品、バッグ、靴、帽子、スポーツ用品、家電などの電気機器、携帯電話などの通信機器などの種々の物品に光輝性立体表示部材として各種エンブレムが付与されている。従来の光輝性エンブレム用シートとしては、軟質塩化ビニル樹脂や軟質ポリウレタン樹脂などの軟質樹脂からなる下地シートの表面にアルミニウム蒸着を施し、その表面にアルミニウムの保護層としての透明樹脂フィルムを積層した材料が広く使用されている。
【0003】
上記従来のエンブレム用シートは、各種文字や図形形状を有する熱抜型により、立体成形とともに所望の形状に裁断され、粘着剤やヒートシール剤によって所望の物品の所望位置に貼着使用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のエンブレム用シートを用いて立体的なエンブレムを形成する場合には、熱抜型で裁断する際、文字や図形の端部や縁部において、アルミニウム蒸着層にクラックが発生するという課題がある。これは、アルミニウム蒸着層は展延性がないこと、およびアルミニウムは、その性質上、腰のない、柔らかい、展延性に優れた軟質ポリウレタン樹脂などの軟質樹脂シートやフィルムに蒸着することが困難であることによる。
【0005】
また、従来のアルミニウム蒸着層を有するエンブレム用シートの場合には、その表面に保護層を設けたとしても、該保護層にピンホールなどが生じたり、経年により保護層が劣化すると、アルミニウム蒸着層が酸化劣化し、光輝性を失うという問題がある。さらにエンブレムとしては銀色のみならず、各種の色相を有する金属光沢が要求されているが、従来の方法ではアルミニウム蒸着層を任意の金属光沢色相に着色することは困難であった。
【0006】
従って本発明の目的は、立体感および耐久性に優れたエンブレムを容易に形成でき、かつ白銀色に加えて任意の着色金属光沢を有するエンブレムを形成できるエンブレム用シートとその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、下地層としての軟質樹脂基材シート1の一方の面に、表示層としての金属光沢層2と、表皮層としての透明弾性樹脂層3とが順次積層され、上記金属光沢層2が、金属箔含有塗料から形成されていることを特徴とするエンブレム用シートを提供する。
【0008】
上記本発明のエンブレム用シートにおいては、金属光沢層2と、透明弾性樹脂層3との間に透明着色層4が設けられていること;および金属光沢層2が、レーザー回折・散乱法により測定した平均粒径が50μm以下である鱗片状の金属箔(A)とバインダーとなる硬化性樹脂組成物(B)を必須成分として含有する塗料から形成されていることが好ましい。
【0009】
また、本発明は、透明弾性樹脂シート3の一方の面に、鱗片状の金属箔(A)とバインダーとなる硬化性樹脂組成物(B)を必須成分として含有する塗料から金属光沢層2を形成し、該金属光沢層2の面に下地層としての軟質樹脂基材シート1を積層することを特徴とするエンブレム用シートの製造方法を提供する。
【0010】
上記本発明の製造方法においては、鱗片状の金属箔(A)が、レーザー回折・散乱法により測定した平均粒径が50μm以下である鱗片状のアルミニウム箔であること;および透明弾性樹脂シート3として、一方の面に透明着色層4を有するものを使用することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
上記本発明によれば、立体感および耐久性に優れたエンブレムを容易に形成でき、かつ白銀色に加えて任意の着色金属光沢を有するエンブレムを形成できるエンブレム用シートとその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に発明を実施するための最良の形態を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。本発明のエンブレム用シートは、図1にその断面を示すように、下地層としての軟質樹脂基材シート1の一方の面に、表示層としての金属光沢層2と、表皮層としての透明弾性樹脂層3とが順次積層され、上記金属光沢層2が、金属箔含有塗料から形成されていることを特徴としている。
【0013】
上記軟質樹脂基材シートとしては従来公知のエンブレム用シートに使用されている軟質樹脂基材シートであればいずれのものでもよい。例えば、軟質塩化ビニル樹脂、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、熱可塑性ポリエステルエラストマー、熱可塑性オレフィン系エラストマー、熱可塑性スチレン系エラストマー、熱可塑性ポリアミド系エラストマー、熱可塑性シリコーン系エラストマー、それらの発泡体などが挙げられる。その厚みは通常0.1〜5mm程度である。
【0014】
上記金属光沢層は、金属箔含有塗料から形成されたものである。金属箔含有塗料としては、金属光沢を有する塗膜を形成できるものであれば、いずれのものでもよく、特に限定されない。好ましい金属箔含有塗料はとしては、レーザー回折・散乱法により測定した平均粒径が50μm以下である鱗片状の金属箔(A)とバインダーとなる硬化性樹脂組成物(B)を必須成分として含有し、金属箔(A)と樹脂組成物(B)との含有質量比率が、A:B=1:0.01〜1:10の範囲であり、かつ上記樹脂組成物(B)の乾燥温度における初期粘度が100Pa・s以下である塗料によって金属光沢層を形成することが好ましい。
【0015】
上記塗料における鱗片状の金属箔は、配向により研磨金属様の金属光沢を有するものであればよく、その材質については特に制限はないが、アルミニウム、金、銀、銅、クロム、マグネシウム、亜鉛、鉄、ニッケルなどの金属および合金を薄く箔状にしたものが例示される。また、これら金属箔の粒径は、工業用塗料としてスプレーなどにより塗布されることを考慮すれば、レーザー回折・散乱法により測定した平均粒径は50μm以下であることが好ましい。より好ましい平均粒径は5〜50μmである。
【0016】
平均粒径が5μm未満では金属箔外周部、すなわち、金属箔の端面の割合が増えるために、これらの端面に起因する光散乱の増加により、該塗料から形成される塗膜の金属光沢が低下するので好ましくない場合がある。一方、平均粒径が50μmを超えると、塗料をスプレーなどで塗布する場合の塗工性が悪くなったり、また、金属箔の折れ曲がりやカールなどの変形が増え、上記塗料から形成される塗膜の金属光沢が低下するので好ましくない。なお、本発明における「平均粒径」とは、金属箔の厚みではなく、金属箔の長径の平均を意味する。
【0017】
また、コストおよび原料の入手のし易さから、上記塗料における鱗片状の金属箔としては、アルミニウムを主体とした金属粉を溶剤とともにボールミルなどを用いて展延および粉砕することにより得られるアルミニウムペースト顔料およびこのアルミニウムペースト顔料から溶剤を除去したアルミニウムフレークが好ましい。このような鱗片状の金属箔として、例えば、東洋アルミニウム株式会社製アルミニウムペースト(商品名;「0620MS」、レーザー回折・散乱法により測定した平均粒径14μm)、同社製アルミニウムフレーク(商品名;「P1100」、レーザー回折・散乱法により測定した平均粒径26μm)、旭化成株式会社製アルミニウムペースト(商品名;「GX−201A」、レーザー回折・散乱法により測定した平均粒径10μm)などが例示され、これらを市場から入手して本発明で使用できる。
【0018】
また、前記塗料における鱗片状の金属箔としてさらに好ましくは、アルミニウムを主体とした金属蒸着膜を粉砕して得られる蒸着金属箔である。蒸着金属箔は、先に述べた展延および粉砕して得られる金属箔に比べ表面平滑性に優れるために輝度が高く、また、厚さが薄いため、単位質量当りの使用量が少なくできるので経済的でもある。このような鱗片状の金属箔としては、チバスペシャルティケミカル社製のアルミニウムペースト(商品名;「Methasheen 41-0010 Dark Chrome effect」、レーザー回折・散乱法により測定した平均粒径10〜15μm)、同社製アルミニウムペースト(商品名;「Methasheen 71-0010 Silver effect」、レーザー回折・散乱法により測定した平均粒径10〜15μm)、同社製アルミニウムペースト(商品名;「Methasheen 91-0010 White Silver effect」、レーザー回折・散乱法により測定した平均粒径10〜15μm)などが例示される。
【0019】
前記塗料におけるバインダーとなる樹脂組成物は、硬化性樹脂組成物であり、塗布後3次元架橋構造となるため、形成される塗膜の耐熱性および耐溶剤性に優れる。前記塗料におけるバインダーは、その乾燥温度(硬化温度)における初期粘度が100Pa・s以下であることが必要である。すなわち、例えば、前記塗料を室温で硬化させる場合には、室温における未硬化時のバインダーの粘度が100Pa・s以下であればよく、また、例えば、前記塗料を100℃で加熱硬化させる場合にはその温度における未硬化時のバインダーの粘度が100Pa・s以下であればよい。
【0020】
このような特性を有するバインダーからなる前記塗料は、溶剤で希釈して基材に塗布した場合であっても、乾燥時溶剤が揮発した後も流動性を有するため、溶剤揮発時に発生する塗料の対流や沸騰などにより引き起こされた金属箔の配向乱れを緩和し再配向することができるため、より高い金属光沢が得られる。より好ましい初期粘度は1mPa・s〜100Pa・sである。初期粘度が100Pa・sを超えると、塗布された塗料の溶剤揮発時における塗料の対流や沸騰などにより引き起こされた金属箔の配向乱れの緩和時間がかかり、実質的には金属箔が再配列されないままバインダーが架橋および硬化するため、前記塗料で形成された塗膜の金属光沢が得がたい場合がある。
【0021】
前記塗料の金属箔およびバインダーの配合比については目的とする光沢度や塗膜厚などにより決定すればよく特に制限はないが、好ましくは金属箔(A)およびバインダーとなる樹脂組成物(B)の含有質量比率が、A:B=1:0.01〜1:10の範囲であることが好ましい。バインダーの含有比率が0.01未満であると、含有する金属箔が層間剥離を起こしやすく、また、バインダーの含有比率が10を超えると、バインダーの硬化時に塗料の対流による金属箔の配向乱れを生じやすい。
【0022】
前記塗料のバインダーとなる硬化性樹脂組成物の架橋反応機構については、その目的が塗膜からの金属箔の脱離およびその配向乱れを抑制するためであることから、特に制限されるものではなく、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、変性アクリル樹脂などに例示される樹脂を基材とした架橋反応および紫外線や可視光線などのエネルギー線を利用した架橋反応などの既知の多くの架橋反応を利用できる。さらに、塗料としての作業性および、物性面から塗料のバインダーである樹脂組成物の硬化機構の全てまたは一部が、下記一般式(1)で表わされるシラノール基またはアルコキシシリル基の縮合反応に基づく架橋反応が好適である。
一般式(1) −Si−OR
式中Rは水素原子または一価の炭化水素基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などである。
【0023】
本架橋反応の具体例としては、メタクリル酸メチルとγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの共重合体の金属アルコキシド、ケトキシムシラン、アルコキシシランなどによる架橋、アクリル基含有モノマー、アクリル基含有オリゴマー、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、および光開始剤からなる組成物の紫外線およびシラノール基の縮合反応併用による架橋、メチルシリケートなどのケイ酸エステル類の分子内および分子間架橋などが例示されるが、これらに限定されるものではない。さらに、これらのシラノール基やアルコキシシリル基は金属表面とも良好に反応するため、含有する金属箔の塗膜からの脱離、浸水や酸化による腐食および変色を防止し、塗膜の耐久性を向上させることができる。また、金属箔の分散性の向上にも効果的に作用するという利点も有する。
【0024】
前記塗料は、塗工手段に応じ、アルコール類、ケトン類、グリコール類、炭化水素類、エステル類などの有機系希釈溶剤により適宜希釈した組成物として使用することができる。また、水溶性バインダーを使用した水溶性塗料として使用することもできる。このような塗料における固形分濃度は約0.2〜20質量%であることが好ましい。また、当該範囲よりも高固形分濃度の塗料を作製しておき、使用時において塗布方法に対応して希釈剤により適当な濃度に希釈して使用することができる。また、前記塗料は透明弾性樹脂シートに直接塗布してよいが、密着性の向上を目的として適当なプライマーを使用して透明弾性樹脂シート表面にプライマー層を形成し、その上に塗布することもできる。
【0025】
前記塗料には、また、該塗料の特性を損なわない範囲において他の添加剤を適量配合してよい。他の添加剤の具体例としては、ガラス、石英、水酸化アルミニウム、アルミナ、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、水酸化マグネシウムなどの無機充填剤、アクリル樹脂粉、エポキシ樹脂粉、ポリエステル樹脂粉などの有機充填剤、カーボンブラック、ベンガラ、フタロシアニンブルー、クロムイエロー、二酸化チタンなどの顔料や染料に代表される着色剤、着色マイカ、着色金属粉、着色フィルムの粉砕品、ホログラム加工したフィルムの粉砕品などの意匠材、界面活性剤、カップリング剤、可塑剤、分散剤などが例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
前記金属光沢層は、透明弾性樹脂シートの一方の表面に、前記塗料をスプレー塗布することによって形成される。金属光沢層の厚みは、約1〜10μmであり、形成される塗膜における金属箔の単位面積あたりの含有量は、約0.1〜0.5g/m2であることが好ましい。金属箔の単位面積あたりの含有量が、約0.1g/m2未満であると、下地の隠蔽性、および金属光輝性が不足する場合がある。一方、金属箔の単位面積あたりの含有量が、約0.5g/m2を超えると、金属光沢顔料が高価であることから不経済である。
【0027】
このようにして形成された金属光沢層は、各種色相の前記の顔料などで着色されていたり、文字、パターン、絵柄などが形成されていてもよいし、さらには金属光沢層は、レーザー光線などによって領域の一部の金属が除去されて絵柄化またはパターン化されていてもよい。以上の金属光沢層は、透明弾性樹脂シートのいずれの面から観察しても優れた金属光沢を呈しているが、透明弾性樹脂シートの非塗布面(透明弾性樹脂シート側)から観察する方が、著しく優れた金属光沢を呈する。すなわち、形成された塗膜は、透明弾性樹脂シートに接している部分において金属光沢顔料がシートに対して平行かつ均一に配向していることによる。
【0028】
上記で使用する透明弾性樹脂シートは、その一方の面に形成した金属光沢層の金属光沢を、非塗布面から観察することから、着色または未着色の透明または半透明であることが必要である。また、該透明弾性樹脂シートは本発明のエンブレム用シートにおいて最外層となることから、耐光性、耐水性などに優れている必要があり、前記と同様な弾性エラストマーからなるシートが使用できるが、好ましいものはポリウレタン樹脂シートおよびアイオノマー樹脂シートである。特に好ましいものは、無黄変または難黄変のポリイソシアネートと耐加水分解性(耐水性)に優れたエステル系またはエーテル系ポリオールから得られる耐候性、耐加水分解性に優れた熱可塑性ポリウレタンから形成することが好ましい。この透明弾性樹脂シートの厚みは約50〜1,000μmであることが好ましい。厚みが50μm未満であると金属光沢層の保護層としては不安であり、また、本発明のエンブレム用シートを用いてエンブレムを成形する際、エンブレムの端部が延伸されることから、延伸性が不足する場合がある。一方、厚みが1,000μmを超えると不経済である。なお、これらのシートは、透明または半透明であって、下地の金属光沢が観察される限り、着色されたり、文字、記号、絵柄等が形成されていてもよい。
【0029】
本発明のエンブレム用シートは、以上の金属光沢層を有する透明弾性樹脂シートの金属光沢層面に、前記の軟質樹脂基材シートの一方の面を積層することによって得られる。この積層に際しては、接着剤を使用せずに両者を熱融着させてもよいし、各種接着剤を使用してもよい。好ましい接着剤は溶剤を含まない感熱接着剤や2液硬化型のウレタン系やエポキシ系の接着剤である。以上の如くして得られる本発明のエンブレム用シートを、その透明弾性樹脂層側から観察すると非常に優れた金属光沢、例えば、白銀色が観察される。
【0030】
本発明の好ましい実施形態では、前記金属光沢層と前記透明弾性樹脂層との間に透明着色層4を設けることができる。前記のように前記金属箔含有塗料中に着色剤を添加して、着色金属層とすることもできるが、前記金属光沢層(無着色)と前記透明弾性樹脂層との間に透明着色層を設けることによって、本発明のエンブレム用シートを透明弾性樹脂層側から観察した場合、任意の色相の優れた着色金属光沢が観察される。例えば、着色層が黄色である場合、優れた黄金色が観察される。上記透明着色層は、顔料を微分散したカラークリヤー塗料を透明弾性樹脂シートの一方の面(金属光沢層を設ける面)に塗布することによって形成することができる。また、カラークリヤー塗料は混合することによって、任意の色相が現出でき、また、異なる色相のカラークリヤー塗料を2〜3層重ねて塗工することによっても深みのある任意の色相を現出することができる。
【0031】
以上の着色層全体の厚みは任意であるが、一般的には約5〜100μmの厚みであることが好ましく、厚みが5μm未満では着色力が不足し、厚みの均一性を保持することが困難である。また、厚みが100μmを超えると層の透明性が低下し、下地の金属光沢の現出性が低下する。
【0032】
以上の如くして得られる本発明のエンブレム用シートは、図1に示すように、その下地層1の露出している面に、エンブレムを所望の基材7に貼着させるための粘着剤層5や感熱接着剤層を設けることができる。さらに粘着剤層5の表面には離型紙6などを貼着させることが好ましい。
【0033】
次に本発明のエンブレム用シートの使用方法を説明する。図2は、図1に示すエンブレム用シートを、熱抜型により凸文字状に裁断した平面図を示している。図3は、図2のX−Y線矢視断面図であり、図4は、図3の点線円部の拡大図である。図1に示すエンブレム用シートを裁断台上に置き、図2に示す「N」字の外形に相当する切断刃と内部が凹状に窪んでいる熱抜型で加工することにより、図2に示す形状のエンブレム部材が切り出される。この部材の離型紙6を剥離し、粘着剤層5を露出させ、該粘着剤層5により所望の物品7の表面に上記切り抜き部材を圧着させることで、図5に示すようなエンブレムを所望の物品7の表面に貼着することができる。
【0034】
上記において、熱抜型で裁断する時、エンブレム用シートは全体が可塑化され、これが冷却されると、図4に示すように、周囲が金属光沢層2および透明弾性樹脂層3で被覆されている切り抜きエンブレム部材が得られる。この時、金属光沢層中の金属箔は、バインダーによって被覆されていることから、ある程度は可塑化され、端部が延伸されても金属光沢層にクラックが生じることがない。従ってエンブレム文字全体において金属光沢が均一に保持されている。
【0035】
また、本発明のエンブレム用シートから形成されるエンブレムにおいては、最表層が無黄変かつ耐水性の透明弾性樹脂層で覆われているので、直射日光に長時間曝されても変色することがない。さらに表面にピンホールや傷が発生しても、金属光沢層中の金属箔は、バインダー樹脂によって完全に被覆されていることから、金属箔の劣化、すなわち変色が生じることはない。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明によれば、立体感および耐久性に優れたエンブレムを容易に形成でき、かつ白銀色に加えて任意の着色金属光沢を有するエンブレムを形成できるエンブレム用シートとその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明のエンブレム用シートの断面を説明する図。
【図2】本発明のエンブレム用シートから得られるエンブレムを説明する図。
【図3】図2のX−Y線矢視断面図。
【図4】図3の一部拡大図。
【図5】所望の物品表面にエンブレムを貼着した状態を説明する図。
【符号の説明】
【0038】
1:軟質樹脂基材シート
2:金属光沢層
3:透明弾性樹脂層
4:透明着色層
5:粘着剤層
6:離型紙
7:物品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地層としての軟質樹脂基材シート(1)の一方の面に、表示層としての金属光沢層(2)と、表皮層としての透明弾性樹脂層(3)とが順次積層され、上記金属光沢層(2)が、金属箔含有塗料から形成されていることを特徴とするエンブレム用シート。
【請求項2】
金属光沢層(2)と、透明弾性樹脂層(3)との間に透明着色層(4)が設けられている請求項1に記載のエンブレム用シート。
【請求項3】
金属光沢層(2)が、レーザー回折・散乱法により測定した平均粒径が50μm以下である鱗片状の金属箔(A)とバインダーとなる硬化性樹脂組成物(B)を必須成分として含有する塗料から形成されている請求項1に記載のエンブレム用シート。
【請求項4】
透明弾性樹脂シート(3)の一方の面に、鱗片状の金属箔(A)とバインダーとなる硬化性樹脂組成物(B)を必須成分として含有する塗料から金属光沢層(2)を形成し、該金属光沢層(2)の面に下地層としての軟質樹脂基材シート(1)を積層することを特徴とするエンブレム用シートの製造方法。
【請求項5】
鱗片状の金属箔(A)が、レーザー回折・散乱法により測定した平均粒径が50μm以下である鱗片状のアルミニウム箔である請求項4に記載のエンブレム用シートの製造方法。
【請求項6】
透明弾性樹脂シート(3)として、一方の面に透明着色層(4)を有するものを使用する請求項4に記載のエンブレム用シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−302666(P2008−302666A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−154173(P2007−154173)
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(505153188)株式会社システム・トート (8)
【Fターム(参考)】