説明

エンボスキャリア

【課題】接触して並べることが難しいワークを、所定位置から取り出すことができ、経費が節減できて設備もコンパクト、しかも廃材の出ない、エンボスキャリアを提供する。
【解決手段】周知の可撓性素材を用いた、所定深さのワーク形状の凹部に成形されているワーク受入用ポケット11を有する。ワーク受入用ポケット11には、キャリア横幅双方向に外壁を突出させて突部13を設ける。
端部折返部12は、ポケット11を形成する内周縁部に接する幅で折り返し形成され、キャリアのベース部に溶着、あるいは接着手段によって固着一体化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組付け等の加工を行う際、接触して並べることが難しいワークを供給するエンボスキャリアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、組付け加工に用いられる、接触して並べることが難しいワークの供給装置としては、図4に示すように、トレイチェンジャー1上のトレイマガジン2に複数のワークWを2次元的に配列し、トレイマガジン2単位でロボット近傍にワークWを配置しつつ、それぞれのワークWの位置までロボット3が縦横上下に移動して取り出すものが採用されてきた。
しかしながら、このような方式では、トレイチェンジャー1とロボット3を用いてワークWを搭載したトレイマガジン2からワークWを供給し、排出を行うため、設備のコンパクト化は困難であった。
【0003】
それを解決するものとして、特許文献1が開示するように、エンボステープおよびカバーテープによって電子部品を封止したものから電子部品を供給する装置がある。この装置であれば、ワークの取出し位置を特定して、その取出し位置からのみ電子部品を取り出すということが可能となり、設備が比較的コンパクトになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−33163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示された装置では、エンボステープに搭載した電子部品を供給するためには、カバーテープを外すという工程が必要となり、製造コストが増大してしまうという問題があった。
このため本発明では、設備をコンパクトにしつつ、製造コストを極力抑えることが可能なエンボスキャリアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、少なくとも一次元状にワークを配列担持してなる可撓性のエンボスキャリア(10)であって、一次元状に配列形成したワークを担持するワーク受入用ポケット(11)と、ワーク受入用ポケット(11)に向かって、長手側両側縁部を適宜幅で折り返した端部折返部(12)とを備えたことを特徴とする。
【0007】
これにより、可撓性のエンボスキャリア(10)の長手方向の反りに対して強度を高めることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明では、ワーク受入用ポケット(11)には、キャリア横幅方向に突設して、エンボスキャリア同士を、整列し積上げる際に、端部折返部(12)に当接する突部(13)とを備えたことを特徴とする。
【0009】
これにより、エンボスキャリア(10)同士を整列し積上げ回収する際、端部折返部(12)と突部(13)とが当たって、ポケット同士の脱落が起こることはない。
【0010】
請求項3に記載の発明では、突部(13)は、キャリア横幅方向端部まで延在していることを特徴とする。
【0011】
これにより、エンボスキャリア(10)同士を、例えば多数積載収容可能なキャリアケース内で、端部折返部(12)と突部(13)底、突部(13)外側壁とキャリーケース(101)内壁面とが当たって、傾くことなく保持することができる。
【0012】
さらに請求項4に記載の発明では、端部折返部(12)はキャリアのベース部に固着したものであることを特徴とする。
【0013】
これにより、エンボスキャリア(10)を、一層、強度的に安定させ、長手方向の反りに対して強度を高めることができる。
【0014】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、短冊形状のエンボスキャリアに、長手方向両縁部を内側に折り返して形成した端部折返部と、エンボスキャリアの幅方向に突部とを設けたことで、多数、エンボスキャリアを積載した際に、端部折返部と突部底面が重なり合い、ポケット同士の脱落を防止することができ、キャリーケース内での傾きを抑制することができる。
さらに、キャリーケース内で積層されたエンボスキャリアの最下段のエンボスキャリアのみを、スライドして取出す際の引っ掛かりをなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るエンボスキャリアの一実施形態を示す、模式的な斜視説明図である。
【図2】図1に示すエンボスキャリアを用いて、ワークを供給するためのワーク供給装置の一例を示す、概略斜視説明図である。
【図3】図2に示すワーク供給装置において、可搬型キャリーケース内に積載収容した、エンボスキャリアの積載状態を示す、断面説明図である。
【図4】従来のトレイマガジンによる部品供給の一例を示す、模式的な斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に、本発明にかかるエンボスキャリア10の一例を模式的に示す。
このエンボスキャリア10は、一次元状にワークを配列担持してなる可撓性の短冊状部材であって、一次元状に配列形成したワーク受入用ポケット11と、ワーク受入用ポケット11に向かって、長手側両側縁部を適宜幅で折り返した端部折返部12とを有し、後述するキャリーケースに積載されたエンボスキャリアを取出すと共に搬送してワークを取出し、ワーク取出し後に、エンボスキャリアを整列し積上げ回収するようにしている。
【0018】
エンボスキャリア10は、周知の可撓性素材を用いており、ワーク受入用ポケット11は、所定深さでワーク形状をした凹部に成形されている。
また、ワーク受入用ポケット11には、キャリア横幅双方向に外壁を突出させて突部13を設けている。この場合、ポケット11外側底面、および突部13外側底面に至るまで、連続した平坦面としている。もしくは、積重ねた際に端部折返部12と突部13の接触する部位を凸形に成形されていてもよい。
【0019】
端部折返部12は、ポケット11を形成する内周縁部に接する幅で折り返し形成されている。この場合、端部折返部12は、キャリアのベース部に溶着、あるいは接着手段によって固着して一体化している。
【0020】
そしてエンボスキャリア10には、長手側両側縁部の近傍に沿って、直動押込み手段(図示省略)により押し込むためのピッチ送り穴10hが設けられている。
【0021】
以上のような構成のエンボスキャリア10を用いてワークを搬送して取出すために、例えば図2に示すような、ワーク供給装置100を用いることができる。
すなわちワーク供給装置100は、エンボスキャリア10を、整列状態で、且つ積載収容する、可搬型キャリーケース101を備えている。
【0022】
可搬型キャリーケース101は、多数のエンボスキャリア10を整列状態で、積上げ、積載収容する容積を有する。
かかる可搬型キャリーケース101の底部寄りの側壁には、積載したエンボスキャリア10をエンボスキャリア取出手段(図示省略)により、最下段から長手方向に取り出すための開口部101aを設けている。なお、エンボスキャリア取出手段は、押し出し手段を有し、キャリーケース101の底部の開口部101aに向けて、キャリーケース101の背後開口部(図示省略)から装入して、押し出し手段を開口部101aに向けて移動させることで、積載されたエンボスキャリア10のうち、最下段のエンボスキャリア10を開口部101aから長手方向に取り出すようにしている(図2参照)。
【0023】
また、ワーク供給装置100には、エンボスキャリア取出手段により可搬型キャリーケース101から取出されたエンボスキャリア10を、エンボスキャリア10に担持されるワークを、所定の位置で取り出す取出し位置まで、ワーク受入用ポケット11の間に設けられたピッチ送り穴10hを利用して送り込むエンボスキャリア送出手段を設けることができる。なお、ワーク取出し手段として例えば二次元動作取出し機構により、一定の定まった取出し位置で、ピックアップする構成とすることができる。
【0024】
そして、エンボスキャリア10に担持されるワークを取出した後は、再度エンボスキャリア10にワークを搭載するべく、適宜な回収ケース(図示省略)に、順次、積重ね回収されるようになっている。
【0025】
以上のようなワーク供給装置100を用いて、エンボスキャリア10からワークを取出すワークの供給手順を説明する。
先ず、短冊型エンボスキャリア10のポケット11に、ワークを詰めた状態で、可搬型キャリーケース101の中に、積重ねた状態で部品供給したい設備にセットする(図1参照)。この際、各エンボスキャリア10は、エンボスキャリア10同士を整列し積上げ回収する際、端部折返部12と突部13とが当たって、ポケット同士の脱落が起こることはない。従って、エンボスキャリア10は、キャリアケース101内で、端部折返部12と突部13の底、突部13の外側壁とキャリーケース101内壁面とが当たって、傾くことなく保持することができる(図3参照)。この場合、個々のエンボスキャリア10は、端部折返部12を設けたことにより、複数、積み重ねても強度的には問題ない。
【0026】
また、セットされた可搬型キャリーケース101の最下段にあるエンボスキャリア10は、開口部101aからエンボスキャリア10の長手方向に取り出すことができる。この場合、エンボスキャリア取出手段の押し出し手段を、キャリーケース101の底部の開口部101aに向けて操作し、積載されたエンボスキャリア10のうち、最下段のエンボスキャリア10を開口部101aから長手方向に取り出すことができる。なお、最下段のエンボスキャリア10を開口部101aから長手方向に取り出す際、端部折返部12は、キャリアベース側に一体的に固着しているので引っ掛かることもなく、積重ねられた状態でも、長手方向にエンボスキャリア10をずらして取り出すことができ、最上部に、順次、ワークを担持した新しいエンボスキャリア10を補充することができる。
【0027】
そして、エンボスキャリア10が可搬型キャリーケース101の開口部101aから取り出された後は、ワーク受入用ポケット11の間に設けられたピッチ送り穴10hを利用して、エンボスキャリア送出手段により、エンボスキャリア10を、ワーク取出し位置まで送り込むことができる。
ワーク取出し位置において、エンボスキャリア10のワーク受入用ポケット11から、ワークが、二次元動作取出し機構により取出され、再度エンボスキャリア10にワークを搭載するべく、適宜な回収ケース(図示省略)に、順次、積重ね回収することができる。
かかる場合も、エンボスキャリア10の、端部折返部12と突部13の底、突部13の外側壁とキャリーケース101内壁面とが当たって傾くことなく、各エンボスキャリア10を積み重ねることができる。
【0028】
そして、エンボスキャリア10は、回収ケースに順次、積重ねられ、再度、空のエンボスキャリア10にワークを詰めて、次のワーク供給に供することができる。
【0029】
このように、上述のようなエンボスキャリア10によれば、これまでのようなトレイ供給に比べ、整列供給することで、接触して並べることが難しいワークを、所定位置から取り出すことができ、経費が節減できて設備もコンパクト、しかも特許文献1で開示しているエンボステープと比較しても、廃材の出ないという、格別なエンボスキャリアを提供することができる。
【符号の説明】
【0030】
10 エンボスキャリア
10h ピッチ送り穴
11 ワーク受入用ポケット
12 端部折返部
13 突部
100 ワーク供給装置
101 可搬型キャリーケース
101a 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一次元状にワークを配列担持してなる可撓性のエンボスキャリア(10)であって、
一次元状に配列形成した前記ワークを担持するワーク受入用ポケット(11)と、
前記ワーク受入用ポケット(11)に向かって、長手側両側縁部を適宜幅で折り返した端部折返部(12)と、
を備えたことを特徴とするエンボスキャリア。
【請求項2】
前記ワーク受入用ポケット(11)には、
キャリア横幅方向に突設して、エンボスキャリア同士を、整列し積上げる際に、前記端部折返部(12)に当接する突部(13)と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載のエンボスキャリア。
【請求項3】
前記突部(13)は、キャリア横幅方向端部まで延在していることを特徴とする請求項2記載のエンボスキャリア。
【請求項4】
前記端部折返部(12)はキャリアのベース部に固着したものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のエンボスキャリア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−215246(P2010−215246A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−61699(P2009−61699)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(592219684)株式会社イー・ピー・アイ (21)
【Fターム(参考)】