説明

エーリキア・シャフェンシス(EhrlichiaChaffeensis)(VLPT)の検出のための方法および組成物

本発明はエーリキア・シャフェンシス(Ehrlichia Chaffeensis)検出のための方法および組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は米国特許出願第60/974,196号(2007年9月21日出願)の利益を主張するものであり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
エーリキアは偏性細胞内病原体であり、哺乳動物宿主において循環リンパ球に感染する。エーリキア・カニス(Ehrlichia canis)およびエーリキア・シャフェンシスはイヌおよびヒトに感染する同じ亜属のメンバーであり、それぞれイヌ単核球性エーリキア症(CME)およびヒト単核球性エーリキア症(HME)を引き起こす。イヌ疾患は発熱、リンパ節腫脹、体重減少、および汎血球減少を特徴とする。ヒトでは、疾患は発熱、頭痛、筋肉痛(mylagia)、および白血球減少を特徴とする。早期発見および治療が、イヌおよびヒト・エーリキア症のいずれの治療にも重要である。
【0003】
間接免疫蛍光アッセイ(IFA)および酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)は、これらの疾患の診断を補助するものとして高頻度で使用される。これらのアッセイは、患者の血液、血漿、または血清由来の抗エーリキア抗体の、感染細胞、細胞ライセート、または精製エーリキアタンパク質への結合を測定または検出する。しかしながら、抗エーリキア・シャフェンシス抗体またはそのフラグメントを検出するための多くのアッセイは、感度および特異性がこれらの試験に使用される エーリキア抗原の不純性に直接関係するため、有用性が非常に限定されている。更にエーリキア・カニスをワクチン接種した動物は、エーリキア・シャフェンシスの試験の際に免疫学的交差反応により陽性結果を示しうる。より正確なアッセイを構築するために、高純度かつ特異的な試薬が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のある態様では、以下を含有する精製ポリペプチドを提供する:SEQ ID NO:3(ポリペプチドは約50個未満の連続する天然型エーリキア・シャフェンシス・アミノ酸から成る);SEQ ID NO:2(ポリペプチドは約50個未満の連続する天然型エーリキア・シャフェンシス・アミノ酸から成る);SEQ ID NO:1(ポリペプチドは約50個未満の連続する天然型エーリキア・シャフェンシス・アミノ酸から成る)。精製ポリペプチドはSEQ ID NO:3、SEQ ID NO:2、またはSEQ ID NO:1から成ってもよい。本発明はまた、本発明の精製ポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチドも提供する。
【0005】
本発明の精製ポリペプチドは指示薬、アミノ酸スペーサー、アミノ酸リンカー、シグナル配列、輸送停止配列、膜貫通ドメイン、タンパク質精製リガンド、異種ポリペプチド、1つもしくはそれ以上の、SEQ ID NO:1、2、3、4、5、6を含有する更なるポリペプチド、またはそれらの組み合わせに結合していてもよい。本発明の精製ポリペプチドはポリペプチドのアミノ末端もしくはカルボキシ末端、または両末端に1つまたはそれ以上のCアミノ酸残基を含んでもよい。
【0006】
本発明の別の態様では、試験サンプル中のエーリキア・シャフェンシス・ポリペプチドに特異的に結合する抗体の検出法を提供する。方法は、ポリペプチド/抗体複合体の形成が可能な条件下で、SEQ ID NO:1、2、3、5、または6を含有する精製ポリペプチドを試験サンプルと接触させること(精製ポリペプチドは約50個未満の連続する天然型エーリキア・シャフェンシス・アミノ酸から成る);およびポリペプチド/抗体複合体を検出することを含む。ポリペプチド/抗体複合体が検出されればエーリキア・シャフェンシスに特異的な抗体が試験サンプル中に存在することを示し、ポリペプチド/抗体複合体が検出されなければエーリキア・シャフェンシスに特異的な抗体が試験サンプル中に存在しないことを示す。複合体を指示薬と接触させた後に検出工程を実施してもよい。本発明のある態様では、精製ポリペプチドはSEQ ID NO:1-3、5、または6であり、この方法によってエーリキア・カニス・ポリペプチドに特異的に結合する抗体は検出されない。試験サンプル中の抗体の量を測定してもよい。精製ポリペプチドを基材に結合させてもよい。精製ポリペプチドは指示薬、アミノ酸スペーサー、アミノ酸リンカー、シグナル配列、輸送停止配列、膜貫通ドメイン、タンパク質精製リガンド、異種タンパク質、1つもしくはそれ以上の、SEQ ID NO:1、2、3、4、5、もしくは6を含有する更なるポリペプチド、またはそれらの組み合わせに結合していてもよい。
【0007】
本発明の更に別の態様では、被験体におけるエーリキア・シャフェンシス感染の検出法を提供する。方法は、被験体から生体サンプルを得ること;ポリペプチド/抗体複合体の形成が可能な条件下でSEQ ID NO:1、2、3、5、または6を含有する精製ポリペプチドを生体サンプルと接触させること(精製ポリペプチドは約50個未満の連続する天然型エーリキア・シャフェンシス・アミノ酸から成る);およびポリペプチド/抗体複合体を検出することを含む。ポリペプチド/抗体複合体が検出されれば被験体がエーリキア・シャフェンシスに感染していることを示し、ポリペプチド/抗体複合体が検出されなければ被験体がエーリキア・シャフェンシスに感染していないことを示す。本発明のある態様では、精製ポリペプチドはSEQ ID NO:1、2、3、5、または6であり、方法によって被験体におけるエーリキア・カニス感染は検出されない。
【0008】
本発明の別の態様では、SEQ ID NO:1、2、3、5、または6から成るポリペプチドに特異的に結合する抗体を提供する。抗体はモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗原結合性抗体フラグメント、または1本鎖抗体であってもよい。
【0009】
本発明の更に別の態様では、サンプル中のエーリキア・シャフェンシス・ポリペプチドの検出法を提供する。方法は、ポリペプチド/抗体複合体の形成が可能な条件下でSEQ ID NO:1、2、3、5、または6から成るポリペプチドに特異的に結合する抗体をサンプルと接触させること;およびポリペプチド/抗体複合体を検出することを含む。ポリペプチド/抗体複合体が検出されればエーリキア・シャフェンシス・ポリペプチドがサンプル中に存在することを示し、ポリペプチド/抗体複合体が検出されなければエーリキア・シャフェンシス・ポリペプチドがサンプル中に存在しないことを示す。本発明のある態様では、精製ポリペプチドはSEQ ID NO:1、2、3、5、または6としてもよく、方法によって、サンプル中のエーリキアポリペプチドは検出されない。抗体はモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗原結合性抗体フラグメント、または1本鎖抗体であってもよい。抗体を基材に結合させてもよい。
【0010】
従って、本発明はエーリキア・シャフェンシスを検出するための組成物および方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1A】図1Aは、実験的にエーリキア・シャフェンシスに感染させたイヌの血清アッセイ結果を示す。VLPT-1(SEQ ID NO:5)(図中“ペプチド”と示す)およびVLPT-R(112位のXがPであるSEQ ID NO: 4)(図中“r-タンパク質”と示す)はいずれも、感染後7日目までにエーリキア・シャフェンシス抗体を検出できた。
【図1B】図1Bは、実験的にエーリキア・シャフェンシスに感染させたイヌの血清アッセイ結果を示す。VLPT-1(SEQ ID NO:5)(図中“ペプチド”と示す)およびVLPT-R(112位のXがPであるSEQ ID NO: 4)(図中“r-タンパク質”と示す)はいずれも、感染後7日目までにエーリキア・シャフェンシス抗体を検出できた。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の詳細な説明
エーリキア・シャフェンシス・ポリペプチド
本明細書で使用する単数形“a”、“an”、および“the”は特に明記しない限り、複数形の記載対象を含む。
【0013】
ポリペプチドはアミド結合で共有結合した2つまたはそれ以上のアミノ酸のポリマーである。ポリペプチドを翻訳後修飾してもよい。精製ポリペプチドは細胞物質、他のタイプのポリペプチド、化学的前駆体、ポリペプチドの合成に使用する化学物質、またはそれらの組み合わせを実質的に含有しないポリペプチド標品である。細胞物質、培養液、化学的前駆体、ポリペプチドの合成に使用する化学物質などを実質的に含有しないポリペプチド標品は、他のポリペプチド、培養液、化学的前駆体、および/または合成に使用する他の化学物質を約30%、20%、10%、5%、1%、またはそれ未満で含有する。従って、精製ポリペプチドは約70%、80%、90%、95%、99%、またはそれ以上の純度である。精製ポリペプチドは未精製または半精製細胞抽出物または純度が70%未満であるポリペプチドの混合物を含有しない。
【0014】
“ポリペプチド(複数)”とは1つまたはそれ以上の、あるタイプのポリペプチド(1セットのポリペプチド)をいう。また、“ポリペプチド(複数)”は2つまたはそれ以上の異なるタイプのポリペプチドの混合物(ポリペプチド混合物)も示す。“ポリペプチド(複数)”または“ポリペプチド(単数)”という用語はそれぞれ“1つまたはそれ以上のポリペプチド”も意味する。
【0015】
本発明のある態様では、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5またはSEQ ID NO:6で示す精製エーリキア・シャフェンシス・ポリペプチドを提供する。
【0016】
【化1】

すべての配列について、Xは任意のアミノ酸を示す。本発明のある態様では、SEQ ID NO:1の1位のXはDまたはNであり、6位のXはGまたはEであり、7位のXはPまたはSであり、8位のXはFまたはSであり、9位のXはSまたはFであり、13位のXはFまたはPであり、14位のXはDまたはGであり、22位のXはLまたはFであり、24位のXはSまたはDであり、26位のXはLまたはAであり、27位のXはQまたはKであり、28位のXはQまたはNであり、29位のXはSまたはVであり、30位のXはSまたはVであり、31位のXはNまたはYである。SEQ ID NO:2および3について、7位のXはPまたはSとしうる。SEQ ID NO:1-3はそれぞれN末端C残基を有してもよい。あるいはまた、N末端C残基は存在しなくてもよい。ポリペプチドVLPT-1はアミノ末端C残基を有するSEQ ID NO:2である(つまり、CDSDLHGPFSVELFDPSKEEVQLESDLQQSSN;SEQ ID NO:5)。ポリペプチドVLPT-2はアミノ末端C残基を有するSEQ ID NO:3である(つまり、CNSDLHESSFVELPGPSKEEVQFEDDAKNVVY;SEQ ID NO:6)。
【0017】
本発明の別の態様は、以下に示すSEQ ID NO:4を含む精製ポリペプチド含む。
【0018】
【化2】

112位のXはPまたはSとしうる。
【0019】
本発明のある態様では、SEQ ID NO:1-6を含有する精製ポリペプチドを提供し、ここでポリペプチドは約175、150、125、100、90、80、70、60、50、40、35、34、33、32、または31(または約31から約175の間の任意の範囲の)連続する天然型エーリキア・シャフェンシス・アミノ酸から成る。本発明のある態様では、精製ポリペプチドは約31、32、33、34、35、40、50、60、70、80、90、100、125、150、または175(または約31から約175の間の任意の範囲の)連続する天然型エーリキア・シャフェンシス・アミノ酸から成る(すなわち、精製ポリペプチドは天然型エーリキア・シャフェンシスVLPTポリペプチド全体を包含しない)。天然型エーリキア・シャフェンシス・アミノ酸はエーリキア・シャフェンシス菌体によって自然に生成される任意のポリペプチドである。すなわち、精製ポリペプチドはSEQ ID NO:1-6のポリペプチドを含有するが、約175、150、125、100、90、80、70、60、50、40、または35未満の連続する天然型エーリキア・シャフェンシス・アミノ酸から成る。
【0020】
ポリペプチドSEQ ID NO:1-3および5-6が完全長エーリキア・シャフェンシス・ポリペプチドVPLTより小さいという事実は重要であり、これはポリペプチドが小さいほど完全長ポリペプチドアッセイに比較して特異度および/または感度が高くなりうるからである。更に、これらのより小さいポリペプチドはより安価に製造でき、また、完全長ポリペプチドに比較してより高い純度で得られうる。
【0021】
本発明のある態様では、約175、150、125、100、90、80、70、60、50、40、または35未満の連続する天然型エーリキア・シャフェンシス・アミノ酸であり、約10、20、25、または30より多い連続するSEQ ID NO:1-6のアミノ酸である精製ポリペプチドを提供する。
【0022】
本発明のある態様では、少なくとも約10、20、25、30、35、40、50、またはそれ以上の連続するSEQ ID NO:1-6のアミノ酸を含有する精製ポリペプチドを提供する。従って、本発明のポリペプチドは、例えば約35から約40;約35から約50;約35から約100;または約35から約150アミノ酸長であってもよい。本発明のある態様では、ポリペプチドはSEQ ID NO:4のアミノ酸残基約120からアミノ酸残基約177;SEQ ID NO: 4のアミノ酸残基約130からアミノ酸残基約170;またはSEQ ID NO: 4のアミノ酸残基約135から約168を含有する。
【0023】
変異型ポリペプチドはSEQ ID NO:1-6に示すポリペプチド配列と少なくとも約80%、または約81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、もしくは99%の同一性を有し、かかる変異形ポリペプチドも本発明のポリペプチドである。例えばSEQ ID NO:1-3の変異型ポリペプチドは、SEQ ID NO:1-3と少なくとも約97%(約1個のアミノ酸変化)、94%(約2個のアミノ酸変化)、90%(約3個のアミノ酸変化)、87%(約4個のアミノ酸変化)、84%(約5個のアミノ酸変化)、または81%(約6個のアミノ酸変化)の同一性を有する。SEQ ID NO:5-6の変異型ポリペプチドはSEQ ID NO:5-6と少なくとも約97%(約1個のアミノ酸変化)、94%(約2個のアミノ酸変化)、91%(約3個のアミノ酸変化)、88%(約4個のアミノ酸変化)、84%(約5個のアミノ酸変化)、または81%(約6個のアミノ酸変化)の同一性を有する。変異型ポリペプチドは1つまたはそれ以上の保存的アミノ酸変異または他のマイナーな改変を有し、生物学的活性は保持している、すなわち生体機能は等価である。生物学的活性が等価であれば、相当する野生型ポリペプチドと比較した場合、実質的に同等の機能を有する。本発明のある態様では、ポリペプチドは約1、2、3、4、5、10、20、30、40、50、またはそれ未満の保存的アミノ酸置換を有する。
【0024】
配列同一性%は当該分野で認識される意味を有し、2つのポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列間の同一性を測定する多くの方法がある。例えば以下参照:Lesk編、Computational Molecular Biology、Oxford University Press、New York,(1988);Smith編、Biocomputing: Informatics And Genome Projects、Academic Press、New York,(1993);GriffinおよびGriffin編、Computer Analysis Of Sequence Data、Part I、Humana Press、New Jersey,(1994);von Heinje、 Sequence Analysis In Molecular Biology、Academic Press,(1987);および、GribskovおよびDevereux編、Sequence Analysis Primer、M Stockton Press、New York,(1991)。ポリヌクレオチドまたはポリペプチドのアラインメントを行う(aligning)方法はコンピュータ・プログラムに体系化されており、それらには以下がある:GCGプログラムパッケージ(Devereuxら、Nuc. Acids Res. 12:387(1984))、BLASTP、BLASTN、FASTA(Atschulら、J. Molec. Biol. 215:403(1990))、およびBestfitプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package、Version 8 for Unix、Genetics Computer Group、University Research Park、575 Science Drive、Madison、WI 53711)(SmithおよびWaterman(Adv. App. Math.、2:482-489(1981))の局所的相同性アルゴリズムを使用)。例えばFASTAアルゴリズムを使用するコンピュータ・プログラムALIGNを、ギャップオープンペナルティー=-12、ギャップ伸長ペナルティー=-2のアフィンギャップ検索を用いて使用してもよい。
【0025】
任意の配列アラインメント・プログラムを用いて特定の配列が参照配列と例えば約95%の同一性を有するか否かを測定する場合、参照ポリヌクレオチドの全長にわたって同一性%が算出され、同一性のギャップが参照ポリヌクレオチドのヌクレオチド総数の5%までとなるようにパラメータを設定する。
【0026】
変異型ポリペプチドの同定は一般に、本発明のポリペプチド配列の一つを改変し、改変されたポリペプチドの特性が生物学的に同等であるか否かを評価することによって行うことができる。変異体は、アッセイ(例えば免疫組織化学アッセイ、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫酵素アッセイ、またはウェスタンブロットアッセイ)で本発明のポリペプチドと実質的に同様に反応すれば、例えば元のポリペプチドの90-110%の活性を有すれば、生物学的に同等である。ある態様ではアッセイは競合アッセイであり、生物学的に同等のポリペプチドは、本発明のポリペプチドの、対応する反応性抗原または抗体への結合を約80、95、99、または100%低下させる。対応する野生型ポリペプチドに特異的に結合する抗体は、変異型ポリペプチドにも特異的に結合する。
【0027】
保存的置換は、あるアミノ酸が類似の特性を有する別のアミノ酸で置換され、ペプチド化学分野の当業者によってポリペプチドの二次構造およびヒドロパシー特性が実質的に変更されないと予測されるものである。一般に、以下の群のアミノ酸は保存的変化を示す:(1)ala、pro、gly、glu、asp、gln、asn、ser、thr;(2)cys、ser、tyr、thr;(3)val、ile、leu、met、ala、phe;(4)lys、arg、his;および(5)phe、tyr、trp、his。
【0028】
本発明のポリペプチドは翻訳と同時に、または翻訳後にタンパク質を輸送させるシグナル(またはリーダー)配列を更に含んでもよい。ポリペプチドは、ポリペプチドの合成、精製、もしくは同定を容易にするリンカーまたは他の配列(例えばpoly-His)、または固相支持体へのポリペプチドの結合を促進するためのリンカーまたは他の配列を含有してもよい。例えばポリペプチドを免疫グロブリンのFc領域またはウシ血清アルブミンにコンジュゲートさせてもよい。
【0029】
ポリペプチドは、ポリペプチドが天然では通常結合していないアミノ酸配列、すなわち異種アミノ酸配列に共有結合または非共有結合していてもよい。異種アミノ酸配列は非エーリキア・シャフェンシス菌体、合成配列、または本発明のポリペプチドのカルボキシもしくはアミノ末端に通常位置しないエーリキア・シャフェンシス配列に由来してもよい。更に、ポリペプチドはアミノ酸以外の化合物または分子(例えば指示薬)に共有結合または非共有結合していてもよい。ポリペプチドはアミノ酸スペーサー、アミノ酸リンカー、シグナル配列、輸送停止配列、膜貫通ドメイン、タンパク質精製リガンド、またはそれらの組み合わせに共有結合または非共有結合していてもよい。また、ポリペプチドは以下に結合していてもよい:免疫応答を亢進する部分(すなわち官能基であり、ポリペプチドまたは他の化合物であってもよい)(例えばIL-2のようなサイトカイン)、精製を容易にする部分(例えば6-ヒスチジン・タグ、trpE、グルタチオン、マルトース結合タンパク質のようなアフィニティー・タグ)、ポリペプチドの安定性を向上する部分(例えばポリエチレングリコール;アミノ末端保護基(例えばアセチル、プロピル、スクシニル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニル、またはt-ブチルオキシカルボニル);カルボキシル末端保護基(例えばアミド、メチルアミド、およびエチルアミド))。本発明のある態様では、タンパク質精製リガンドは(例えば本発明のポリペプチドのアミノ末端もしくはカルボキシ末端、または両端にある)1つまたはそれ以上のCアミノ酸残基であってもよい。アミノ酸スペーサーは天然では本発明のポリペプチドに結合していないアミノ酸配列である。アミノ酸スペーサーは約1、5、10、20、100、または1,000個のアミノ酸を含んでもよい。
【0030】
必要により、本発明のポリペプチドは融合タンパク質の一部であって、他のアミノ酸配列(例えばアミノ酸リンカー、アミノ酸スペーサー、シグナル配列、TMR輸送停止配列、膜貫通ドメイン)、およびタンパク質精製に有用なリガンド(例えばグルタチオン-S-トランスフェラーゼ、ヒスチジン・タグ、およびブドウ球菌プロテインA)を含んでもよい。1つより多い本発明のポリペプチドが本発明の融合タンパク質に含まれてもよい。本発明のポリペプチドは、非エーリキア・シャフェンシス・タンパク質または非エーリキア・シャフェンシスVLPTタンパク質に機能的に結合して融合タンパク質を形成してもよい。本発明の融合タンパク質は1つまたはそれ以上の本発明のエーリキア・シャフェンシス・ポリペプチド、そのフラグメント、またはそれらの組み合わせを含有してもよい。融合タンパク質は天然には存在しない。“機能的に結合した”とは、本発明のポリペプチドおよび他のポリペプチドが本発明のポリペプチドのN末端またはC末端のいずれかに互いにインフレームで融合していることを意味する。
【0031】
本発明のポリペプチドは多量体型であってもよい。すなわち、ポリペプチドは本発明のエーリキア・シャフェンシス・ポリペプチドの1つまたはそれ以上のコピーまたはそれらの組み合わせを含有してもよい。多量体ポリペプチドは多重抗原ペプチド(MAP)であってもよい。例えばTam、J. Immunol. Methods、196:17-32(1996)参照。
【0032】
本発明のポリペプチドはエーリキア・シャフェンシスに特異的な抗体によって認識される抗原を含有してもよい。抗原は1つまたはそれ以上のエピトープ(すなわち抗原決定基)を含有してもよい。エピトープは直鎖状(linear)エピトープ、配列(seqential)エピトープ、またはコンフォメーショナル(conformational)エピトープであってもよい。本発明のポリペプチド内のエピトープはいくつかの方法で同定できる。例えば米国特許第4,554,101号;JamesonおよびWolf、CABIOS 4:181-186(1988)参照。例えば本発明のポリペプチドを単離またはスクリーニングしてもよい。合わせると全ポリペプチド配列を網羅するような一連の短鎖ペプチドをタンパク質切断によって調製してもよい。例えば30量体ポリペプチド・フラグメント(またはより小さいフラグメント)から開始して、各フラグメントをELISAで認識されるエピトープの存在について試験してもよい。例えばELISAアッセイにおいて、エーリキア・シャフェンシス・ポリペプチド(例えば30量体ポリペプチド・フラグメント)を固相支持体(例えばプラスチック製マルチウェルプレートのウェル)に結合させる。抗体集団を標識し、固相支持体に添加し、非特異的吸着が阻害されるような条件下で未標識の抗原に結合させ、未結合の抗体および他のタンパク質を洗浄除去する。抗体結合の検出を、例えば無色の基質が有色の反応産物に変化するような反応で検出する。次いで、同定した30量体からサイズを漸減し重複させたフラグメントを試験し、目的のエピトープをマッピングする。
【0033】
本発明のポリペプチドを組換え技術によって生成してもよい。当該分野で公知の方法を用いて本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを組換え発現ベクターに導入し、好適な発現ホスト細胞系で発現させてもよい。種々の細菌、酵母、植物、哺乳動物、および昆虫発現系が当該分野で使用できるが、それらの発現系のいずれを使用してもよい。必要により、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを無細胞翻訳系で翻訳してもよい。またポリペプチドは化学的に合成するか、またはエーリキア・シャフェンシス細胞から得てもよい。
【0034】
本発明の免疫原性ポリペプチドはSEQ ID NO:1-6に示すアミノ酸配列またはそのフラグメントを含んでもよい。免疫原性ポリペプチドがSEQ ID NO:1-6を有するポリペプチドのエピトープを認識する抗体または他の免疫応答(例えば免疫系のT細胞応答)を惹起してもよい。本発明の免疫原性ポリペプチドはSEQ ID NO:1-6に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドのフラグメントであってもよい。本発明の免疫原性ポリペプチド・フラグメントは約6、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100、150、170(または6から170の間の任意の範囲)またはそれ以上のアミノ酸長であってもよい。本発明の免疫原性ポリペプチド・フラグメントは約170、150、100、90、80、70、60、50、40、30、20、15、10、6、またはそれ未満(または170から6の間の任意の範囲)のアミノ酸長であってもよい。
【0035】
エーリキア・シャフェンシス・ポリヌクレオチド
本発明のポリヌクレオチドは微生物の全ゲノムを含有するわけではなく、1本鎖または2本鎖核酸であってもよい。ポリヌクレオチドはRNA、DNA、cDNA、ゲノムDNA、化学的に合成したRNAもしくはDNA、またはそれらの組み合わせであってもよい。ポリヌクレオチドを精製して他の成分(例えばタンパク質、脂質、および他のポリヌクレオチド)を含有しないようにしてもよい。例えばポリヌクレオチドは50%、75%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の純度であってもよい。例えばcDNAまたはゲノムライブラリー内の、数百から数百万個の他の核酸分子中に存在する核酸分子、またはゲノムDNAの制限酵素消化物を含有するゲル切片は、単離されたポリヌクレオチドと見なされない。
【0036】
本発明のポリヌクレオチドは上記の本発明のポリペプチドをコードする。本発明のある態様では、VLPTポリヌクレオチドはSEQ ID NO:1-6に示すポリペプチドまたはそのフラグメントをコードする。
【0037】
本発明のポリヌクレオチドは、約530、500、400、360、300、250、200、150、100、または90未満(または90から530の間の任意の範囲)の連続する天然型エーリキア・シャフェンシス・ポリヌクレオチド から成ってもよい。本発明のポリヌクレオチドは約90、100、150、200、250、300、400、500、530より多い(または90から530の間の任意の範囲)、またはそれ以上の連続する天然型エーリキア・シャフェンシス・ポリヌクレオチドから成ってもよい。精製ポリヌクレオチドは、更なる異種ヌクレオチド(すなわちエーリキア・シャフェンシス由来ではないヌクレオチド)および更なるエーリキア・シャフェンシス・アミノ酸(天然ではエーリキア・シャフェンシスVLPTポリヌクレオチドに隣接していないものに限る)を含有してもよい。本発明のポリヌクレオチドは他のヌクレオチド配列(例えばリンカーをコードする配列、シグナル配列、TMR輸送停止配列、膜貫通ドメイン)またはタンパク質精製に有用なリガンド(例えばグルタチオン-S-トランスフェラーゼ、ヒスチジン・タグ、およびブドウ球菌プロテインA)を含んでもよい。本発明のある態様では、少なくとも約6、10、15、20、25、30、40、50、75、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1,000、またはそれ以上の連続する、SEQ ID NO:1-6をコードするヌクレオチドを含有する精製ポリヌクレオチドを提供する。
【0038】
本発明のポリヌクレオチドは単離してもよい。単離されたポリヌクレオチドは、天然中で結合している5’および3’隣接ゲノム配列の一方または両方と直接隣接していない天然型ポリヌクレオチドである。単離されたポリヌクレオチドは、例えば任意の長さの組換えDNA分子であってもよいが、ただし、天然に存在するゲノム中でそれら組換えDNA分子に直接隣接してみられる核酸配列は除去されているか、または存在しない。単離されたポリヌクレオチドには非天然型核酸分子も含まれる。
【0039】
本発明のポリヌクレオチドは免疫原性ポリペプチドをコードするフラグメントを含有してもよい。本発明のポリヌクレオチドは完全長ポリペプチド、ポリペプチド・フラグメント、および変異または融合ポリペプチドをコードしてもよい。
【0040】
本発明のポリペプチドをコードする縮重ヌクレオチド配列、並びに本発明のポリヌクレオチド配列と少なくとも約80、または約90、96、98、もしくは99%の同一性を有する相同ヌクレオチド配列、およびそれらの相補体も本発明のポリヌクレオチドである。配列同一性%は“ポリペプチド”の項に記載するように算出する。縮重ヌクレオチド配列は、本発明のポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチドであるが、遺伝子コードの縮重によって野生型ポリヌクレオチド配列と核酸配列が異なる。生物学的に機能的なエーリキア・シャフェンシス・ポリペプチドをコードするエーリキア・シャフェンシス・ポリヌクレオチドの相補的DNA(cDNA)分子、種相同体、および変異体もエーリキア・シャフェンシス・ポリヌクレオチドである。
【0041】
本発明のポリヌクレオチドは、例えば生体サンプル(例えば感染個体由来の血液、血清、唾液、または組織)中に存在する核酸配列から単離してもよい。ポリヌクレオチドは、例えば自動合成装置を用いて実験室で合成してもよい。PCRのような増幅法を用いてポリペプチドをコードするゲノムDNAまたはcDNAのいずれかからポリヌクレオチドを増幅することもできる。
【0042】
本発明のポリヌクレオチドは天然型ポリペプチドのコーディング配列を含有するか、または天然には存在しない改変型配列をコードしてもよい。必要により、発現調節要素、例えば複製起点、プロモーター、エンハンサー、または他の調節要素でホスト細胞中で本発明のポリヌクレオチドの発現を惹起するものを含む発現ベクターにポリヌクレオチドをクローニングしてもよい。発現ベクターは、例えばプラスミド(例えばpBR322、pUC、またはColE1)またはアデノウィルスベクター(例えば2型または5型アデノウィルスベクター)であってもよい。必要により他のベクターを用いてもよく、それらには、限定されるわけではないが以下がある:シンドビスウィルス、シミアンウィルス40、アルファウィルス・ベクター、ポックスウィルス・ベクター、そしてサイトメガロウィルスおよびレトロウィルス・ベクター(例えばマウス肉腫ウィルス、マウス乳癌ウィルス、モロニー・マウス白血病ウィルス、およびラウス肉腫ウィルス)。ミニクロモソーム(例えばMCおよびMC1)、バクテリオファージ、ファージミド、酵母人工染色体、細菌人工染色体、ウィルス粒子、ウィルス様粒子、コスミド(λファージのcos部位を挿入したプラスミド)、およびレプリコン(細胞中で、それ自身の制御下で複製することができる遺伝子要素)を用いてもよい。
【0043】
発現制御配列に機能的に結合したポリヌクレオチドの調製およびホスト細胞中でのそれらの発現の方法は当該分野で周知である。例えば米国特許第4,366,246号参照。本発明のポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドの転写および/または翻訳を惹起する1つまたはそれ以上の発現制御要素に隣接している、または近傍に位置している場合、機能的に結合している。
【0044】
本発明のポリヌクレオチドを、例えばプローブまたはプライマー(例えばPCRプライマー)として用い、試験サンプル(例えば生体サンプル)中のエーリキア・シャフェンシス・ポリヌクレオチドの存在を検出してもよい。プローブは、例えばハイブリダイゼーションを通して、一般的には配列特異的に、標的核酸と相互作用する能力を有する分子である。プライマーは酵素的操作をサポートし、標的核酸とハイブリダイズして酵素的操作を誘導するプローブのサブセットである。プライマーは、当該分野で使用できるヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体もしくは類似体で酵素的操作に干渉しないものを任意に組み合わせたものから調製してもよい。
【0045】
プローブまたはプライマーは約10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100、またはそれ以上の連続する、SEQ ID NO:1-6に示すポリペプチドをコードするヌクレオチドであってもよい。
【0046】
核酸のハイブリダイゼーションは当該分野で公知であり、本明細書にも記載している。一般的に、プローブは当該分野で使用できるヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体もしくは類似体を任意に組み合わせたものから調製してもよい。それらのプローブおよびプライマーがエーリキア・シャフェンシス・ポリヌクレオチド配列に特異的にハイブリダイズする能力により、所定の試験サンプル中の相補的配列の存在を検出するためにそれらを用いることができる。本発明のポリヌクレオチドプローブおよびプライマーは試験サンプル、例えば生体サンプル(例えば唾液、喀痰、血液、血漿、血清、尿、糞便、脳脊髄液、羊水、創傷浸出液、または組織)中の相補的配列にハイブリダイズする。サンプル由来のポリヌクレオチドを、例えばゲル電気泳動もしくは他のサイズ分離法に供するか、またはサイズ分離をせずに固定化することができる。ポリヌクレオチド・プローブまたはプライマーを標識してもよい。好適な標識、並びにプローブおよびプライマーを標識する方法は当該分野で公知であり、例えばニック翻訳またはキナーゼによって導入される放射性標識、ビオチン標識、蛍光標識、化学発光標識、生物発光標識、金属キレート標識、および酵素標識がある。サンプル由来のポリヌクレオチドを好適なストリージェンシーのハイブリダイゼーション条件下でプローブまたはプライマーと接触させる。
【0047】
適用により、種々のハイブリダイゼーション条件を使用して、標的配列へのプローブまたはプライマーの選択性の度合いを変化させることができる。高度の選択性を必要とする適用では、相対的に高いストリンジェンシー条件、例えば低塩濃度および/または高温条件(例えば約0.02Mから約0.15Mの塩濃度で、約50℃から約70℃の温度)を用いてもよい。より低い選択性が必要とされる適用では、より低いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件を用いることができる(例えば、約0.14Mから約0.9Mの塩濃度で、約20℃から約55℃の温度)。プローブまたはプライマーおよび試験サンプル由来の相補的ポリヌクレオチドを含むハイブリダイズした複合体の存在は、サンプル中のエーリキア・シャフェンシス・ポリヌクレオチドの存在を示す。
【0048】
抗体
本発明の抗体は、本発明のエーリキア・シャフェンシス・ポリペプチド、本発明の変異型ポリペプチド、またはそれらのフラグメントに特異的に結合する抗体分子である。本発明の抗体はエーリキア・シャフェンシス・ポリペプチドに特異的であってもよく、例えばSEQ ID NO:1-6の1つまたはそれ以上に特異的な抗体であってもよい。本発明の別の態様では、抗体はエーリキア・シャフェンシス・ポリペプチドに特異的であり、エーリキア・カニス・ポリペプチドに特異的ではない(例えばSEQ ID NO:1-6に特異的な抗体)。当業者は、本明細書に記載するアッセイを用いて抗体がエーリキア・シャフェンシス・ポリペプチドに特異的であるか否かを容易に判定できる。本発明の抗体はポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、1本鎖抗体(scFv)、または抗体の抗原結合フラグメントであってもよい。抗体の抗原結合フラグメントは抗原結合部位を含むインタクトな抗体の一部またはインタクトな抗体の可変領域であり、この部分はインタクトな抗体のFc領域の定常重鎖ドメインを含まない。抗原結合性抗体フラグメントの例としてFab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、およびFvフラグメントがある。
【0049】
本発明の抗体は任意のクラスの抗体(例えばIgG、IgM、IgA、IgD、およびIgE)であってもよい。抗体またはそのフラグメントは本発明のポリペプチドのエピトープに結合する。抗体は好適な実験動物においてin vivoで調製してもよいし、組換えDNA法を用いてin vitroで調製してもよい。抗体の調製およびキャラクタライズ法は当該分野で公知である。例えばDean, Methods Mol. Biol. 80:23-37 (1998);Dean, Methods Mol. Biol. 32:361-79 (1994);Baileg, Methods Mol. Biol. 32:381-88 (1994);Gullick, Methods Mol. Biol. 32:389-99 (1994);Drenckhahnら, Methods Cell. Biol. 37:7-56 (1993);Morrison, Ann. Rev. Immunol. 10:239-65 (1992);Wrightら, Crit. Rev. Immunol. 12:125-68 (1992)参照。例えばポリクローナル抗体は本発明のポリペプチドを動物(例えばヒトまたは他の霊長類、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ヤギ、ブタ、イヌ、ウシ、ヒツジ、ロバ、またはウマ)に投与して産生させてもよい。免疫化動物由来の血清を回収し、(例えば硫酸アンモニウムで沈殿させた後、クロマトグラフィー(例えばアフィニティークロマトグラフィー)を行って)抗体を血漿から精製する。ポリクローナル抗体の調製および処理法は当該分野で公知である。
【0050】
“特異的に結合する”または“に特異的である”とは、第1の抗原(例えばエーリキア・シャフェンシス・ポリペプチド)が他の非特異的分子に対するよりも高いアフィニティーで本発明の抗体を認識および結合することを意味する。また、“特異的に結合する”または“に特異的である”とは、第1の抗体(例えばSEQ ID NO:1-6に対して産生した抗体)が他の非特異的分子に対するよりも高いアフィニティーでSEQ ID NO:1-6を認識および結合することを意味する。非特異的分子は第1の抗原と共通のエピトープを共有しない抗原である。本発明の好ましい態様では、非特異的分子はエーリキア種から誘導されたものではなく、特に、エーリキア・シャフェンシスまたはエーリキア・カニスから誘導されたものではない。“エーリキア種”とはエーリキア属の全ての種を示す。例えば、第1の抗原(例えばポリペプチド)に対して産生させた抗体が、その抗原に非特異的抗原に対するよりも高い効率で結合すれば、この抗体は第1の抗原に特異的に結合するとみなされる。ある態様では、抗体またはその抗原結合部分がSEQ ID NO:1-6のポリペプチドまたはそのフラグメントにKa=約107 l/molまたはそれ以上の親和性で結合する場合、これは特異的結合である。例えば酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、またはウェスタンブロットアッセイにより、当該分野で公知の方法を用いて特異的結合を試験してもよい。
【0051】
本発明の抗体には以下のような抗体およびその抗原結合フラグメントがある:(a)SEQ ID NO:1-6もしくはその抗原結合フラグメントへの結合をめぐって参照抗体と競合する;(b)参照抗体と同じSEQ ID NO:1-6もしくはその抗原結合フラグメントのエピトープに結合する;(c)SEQ ID NO:1-6もしくはその抗原結合フラグメントに参照抗体と実質的に同じKdで結合する;および/または(d)SEQ ID NO:1-6もしくはそのフラグメントに参照抗体と実質的に同じオフレート(off rate)で結合する(ここで、参照抗体は、SEQ ID NO:1-6のポリペプチドまたはその抗原結合フラグメントにKa=約107 l/molまたはそれ以上の親和性で特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントである)。
【0052】
更に、本発明のポリペプチド上に存在するエピトープに対するモノクローナル抗体を容易に調製してもよい。例えば本発明のポリペプチドで免疫化した哺乳動物(例えばマウス)由来の正常B細胞を、例えばHAT-感受性マウス骨髄腫細胞と融合させ、ハイブリドーマを生成してもよい。エーリキア特異的抗体を産生するハイブリドーマをRIAまたはELISAを用いて同定し、半流動寒天でのクローニングまたは限界希釈によって単離してもよい。エーリキア特異的抗体を産生するクローンを更なるスクリーニングによって単離する。モノクローナル抗体の特異性に関するスクリーニングを標準的な方法で、例えば本発明のポリペプチドをマイクロタイタープレートに結合させ、ELISAアッセイでモノクローナル抗体の結合を測定することによって行ってもよい。モノクローナル抗体の調製および加工法は当該分野で公知である。例えばKohlerおよびMilstein,Nature,256:495(1975)参照。モノクローナル抗体の特定のアイソタイプの調製は、最初の融合体からの選択によって直接行ってもよいし、あるいは、同胞選択法を用いてクラススイッチ変異体を単離することによって異なるアイソタイプのモノクローナル抗体を分泌する親ハイブリドーマから二次的に行ってもよい。例えばSteplewskiら, P.N.A.S. U.S.A. 82:8653 1985;Spriaら, J. Immunolog. Meth.74:307, 1984参照。本発明のモノクローナル抗体は組換えモノクローナル抗体であってもよい。例えば米国特許第4,474,893号;米国特許第4,816,567号参照。本発明の抗体は化学的に構築してもよい。例えば米国特許第4,676,980号参照。
【0053】
本発明の抗体はキメラ(例えば米国特許第5,482,856号参照)、ヒト化(例えばJonesら,Nature 321:522(1986);Reichmannら,Nature 332:323(1988);Presta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593(1992)参照)、イヌ化、イヌ、またはヒト抗体であってもよい。ヒト抗体は、例えば直接的不死化、ファージディスプレイ、トランスジェニックマウス、またはトリメラ(Trimera)法によって調製してもよい(例えばReisenerら,Trends Biotechnol.16:242-246(1998)参照)。
【0054】
エーリキア・シャフェンシスに特異的に結合する抗体は、サンプル(例えば動物由来の血清、血液、血漿、細胞、組織、尿、糞便、または唾液サンプル)中のエーリキア・シャフェンシス抗原の存在を検出するのに特に有用である。免疫アッセイは1つまたはいくつかの抗体を使用してもよい。免疫アッセイは、例えば1つのエピトープに特異的なモノクローナル抗体(単数)、1つのポリペプチドのエピトープ(複数)に特異的なモノクローナル抗体(複数)を組み合わせたもの、種々のポリペプチド(複数)のエピトープ(複数)に特異的なモノクローナル抗体(複数)、同一の抗原(単数)に特異的なポリクローナル抗体(複数)、種々の抗原(複数)に特異的なポリクローナル抗体(複数)、またはモノクローナルおよびポリクローナル抗体(複数)を組み合わせたものを使用してもよい。免疫アッセイのプロトコルは、例えば競合、直接反応、または(例えば標識された抗体を使用する)サンドイッチ型アッセイに基づいてもよい。本発明の抗体を当該分野で公知の任意のタイプの標識で標識してもよく、それらには例えば蛍光、化学発光、放射能、酵素、コロイド金属、放射性同位体、および生物発光標識がある。本発明のある態様では、本発明の抗体はエーリキア・シャフェンシス抗原に特異的に結合し、エーリキア・カニス抗原には特異的に結合しない。
【0055】
本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントを支持体に結合させ、エーリキア・シャフェンシス抗原の存在の検出に使用してもよい。支持体は例えばガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然および変性セルロース、ポリアクリルアミド、アガロース、およびマグネタイト(magletite)がある。
【0056】
更に、本発明の抗体を用いて免疫親和性カラムでエーリキア・シャフェンシスの菌体または抗原を単離してもよい。抗体を(例えば吸着または共有結合によって)その免疫選択活性を保持させるようにして固相支持体に固定してもよい。必要により、抗体の抗原結合部位をアクセス可能な状態に保持するようにスペーサー基を含有させてもよい。次いで、固定化された抗体を使用してサンプル、例えば生体サンプル(例えば唾液、血清、喀痰、血液、尿、糞便、脳脊髄液、羊水、創傷浸出液、または組織)由来のエーリキア・シャフェンシス菌体またはエーリキア・シャフェンシス抗原を結合させてもよい。結合したエーリキア菌体またはエーリキア抗原を、例えばpH変化によって、カラム充填剤から回収する。
【0057】
本発明の抗体を免疫局在性試験に使用し、種々の細胞事象または生理学的条件の際の本発明のポリペプチドの存在および分布を分析してもよい。抗体を用いて、受動免疫に関与する分子を同定し、また、非タンパク質抗原の生合成に関与する分子を同定することもできる。それらの分子の同定はワクチンの開発に有用であり得る。本発明の抗体(例えばモノクローナル抗体および1本鎖抗体)を使用して、エーリキア・シャフェンシスに起因する疾病の改善経過をモニタリングしてもよい。動物由来の試験サンプル中のエーリキア・シャフェンシスに特異的な抗体の増加または減少を測定することによって、疾患の改善を目的とする特定の治療計画が有効であるか否かを判定できる。抗体の検出および/または定量は、例えば直接結合アッセイ、例えばRIA、ELISA、またはウェスタンブロット・アッセイを用いて行ってもよい。
【0058】
検出法
本発明の方法を用いて試験サンプル、例えば生体サンプル、環境サンプル、または実験用サンプル中のエーリキア・シャフェンシス抗原、またはエーリキア・シャフェンシス・ポリヌクレオチドに特異的な抗体またはその抗原結合性抗体フラグメントを検出してもよい。試験サンプルはエーリキア種ポリヌクレオチド、エーリキア・シャフェンシス・ポリヌクレオチド、エーリキア・カニス・ポリヌクレオチド、エーリキア種ポリペプチド、エーリキア・シャフェンシス・ポリペプチド、エーリキア・カニス・ポリペプチド、エーリキア種特異的抗体、エーリキア・シャフェンシス特異的抗体、および/またはエーリキア・カニス特異的抗体、無関係のポリヌクレオチドおよびポリペプチド、それらの組み合わせ、または上記以外のものを含有する可能性があってもよい。生体サンプルには、例えば哺乳動物(例えばウマ、ネコ、イヌ、またはヒト)由来の血清、血液、細胞、血漿、唾液、尿、糞便、または組織がある。試験サンプルは未処理のままか、沈殿、分画、分離、希釈、濃縮、または精製を行ってもよい。
【0059】
ある態様では、本発明の方法はポリペプチド/抗体複合体、すなわち免疫複合体の形成が可能な条件下で1つまたはそれ以上の本発明のポリペプチドを試験サンプルと接触させることを含む。すなわち、本発明のポリペプチドはサンプル中に存在するエーリキア・シャフェンシス抗原に特異的な抗体と特異的に結合する。本発明のある態様では、1つまたはそれ以上の本発明のポリペプチドがエーリキア・シャフェンシス抗原に特異的でありエーリキア・カニス抗原に特異的に結合しない抗体に特異的に結合する。当業者は抗体/ポリペプチド複合体結合を検出するのに使用されるアッセイおよび条件に精通している。サンプル中でのポリペプチドおよび抗体間の複合体形成を検出する。抗体/ポリペプチド複合体が形成されればサンプル中にエーリキア・シャフェンシス・ポリペプチドが存在することを示す。ポリペプチド/抗体複合体が検出されなければ、サンプル中にエーリキア・シャフェンシス・ポリペプチドが存在しないことを示す。
【0060】
例えばエーリキア・シャフェンシスに感染している疑いのあるヒトまたは動物由来の試験サンプルを得ることによって、本発明の抗体をエーリキア・シャフェンシス感染の診断法に使用することができる。抗体-抗原複合体(すなわち免疫複合体)の形成が可能な条件下で試験サンプルを本発明の抗体と接触させる。抗原/抗体複合体の形成を可能とし、それに好適な条件は当業者に公知である。抗体-抗原複合体の量を当該分野で公知の方法によって測定してもよい。レベルが陰性コントロール・サンプル中で生成されるものより高ければエーリキア・シャフェンシスに感染していることを示す。陰性コントロール・サンプルとは、エーリキア・シャフェンシスおよび/もしくはエーリキア・カニス・ポリペプチドまたはエーリキア・シャフェンシスおよび/もしくはエーリキア・カニスに特異的な抗体のいずれも含有しないサンプルである。本発明のある態様では、陰性コントロールはエーリキア種ポリペプチドまたはエーリキア種に特異的な抗体を含有しない。本発明のある態様では、抗体はエーリキア・シャフェンシス抗原に特異的であり、エーリキア・カニス抗原に特異的でない。あるいはまた、本発明のポリペプチドを試験サンプルと接触させてもよい。陽性試験サンプル中のエーリキア・シャフェンシスに特異的な抗体は好適な条件下で抗原-抗体複合体を形成する。当該分野で公知の方法によって抗体-抗原複合体の量を測定してもよい。
【0061】
本発明のある態様では、被験体におけるエーリキア・シャフェンシス感染を検出できる。生体サンプルを被験体から得る。精製されたSEQ ID NO:1-6含有ポリペプチドまたは本発明の他のポリペプチドの1つまたはそれ以上を、ポリペプチド/抗体複合体が形成される条件下で生体サンプルと接触させる。ポリペプチド/抗体複合体を検出する。ポリペプチド/抗体複合体が検出されれば、その哺乳動物がエーリキア・シャフェンシスに感染していることを示す。ポリペプチド/抗体複合体が検出されなければ、その哺乳動物がエーリキア・シャフェンシスに感染していないことを示す。
【0062】
本発明のある態様では、エーリキア・シャフェンシス感染は、被験体のエーリキア・シャフェンシス感染後約5日目、6日目、7日目、8日目、9日目、10日目、11日目、12日目、13日目、14日目、15日目、16日目、17日目、18日目、19日目、20日目、21日目、またはそれ以降までに被験体において検出されうる。本発明のある態様では、エーリキア・シャフェンシス感染は、被験体のエーリキア・シャフェンシス感染後約21日目、20日目、19日目、18日目、17日目、16日目、15日目、14日目、13日目、12日目、11日目、10日目、9日目、8日目、7日目、6日目、5日目、またはそれ以前までに被験体において検出されうる。
【0063】
本発明のある態様では、抗体に結合した指示薬(例えば酵素コンジュゲート)が検出可能な反応を触媒すると、ポリペプチド/抗体複合体が検出される。必要により、ポリペプチド/抗体/指示薬複合体の形成が可能な条件下で、シグナル生成化合物を含む指示薬をポリペプチド/抗体複合体に適用してもよい。ポリペプチド/抗体/指示薬複合体を検出する。必要により、ポリペプチドまたは抗体を指示薬で標識した後、ポリペプチド/抗体複合体を形成させる。方法は必要により陽性または陰性コントロールを含んでもよい。
【0064】
本発明のある態様では、本発明の1つまたはそれ以上の抗体を固相または基材に結合させる。本発明のポリペプチドを含むタンパク質を含有する可能性のある試験サンプルを基材に添加する。本発明のポリペプチドに特異的に結合する1つまたはそれ以上の抗体を添加する。抗体は固相上に使用する抗体と同一であってもよいし、または異なる供与源もしくは種由来のものであってもよく、指示薬(例えば酵素コンジュゲート)に結合させてもよい。各添加工程の前に洗浄工程を実施してもよい。発色団または酵素基質を添加し、呈色させる。呈色反応を停止させ、例えば分光光度計を用いて、呈色を定量する。
【0065】
本発明の別の態様では、1つまたはそれ以上の本発明の抗体を固相または基材に結合させる。本発明のポリペプチドを含むタンパク質を含有する可能性のある試験サンプルを基材に添加する。本発明のポリペプチドに特異的に結合する第2の抗種抗体を添加する。これら第2の抗体は固相抗体と異なる種由来である。第2の抗体と特異的に結合し、固相抗体とは特異的結合をしない第3の抗種抗体を添加する。第3の抗体は指示薬(例えば酵素コンジュゲート)を含んでもよい。各添加工程の前に洗浄工程を実施してもよい。発色団または酵素基質を添加し、呈色させる。呈色反応を停止させ、例えば分光光度計を用いて、呈色を定量する。
【0066】
本発明のアッセイには、それらに限定されるわけではないが競合、直接反応、またはサンドイッチ型アッセイに基づくものがあり、それらには、限定されるわけではないが酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ウェスタンブロット、IFA、ラジオイムノアッセイ(RIA)、血球凝集(HA)、蛍光偏光免疫アッセイ(FPIA)、およびマイクロタイタープレート・アッセイ(1個またはそれ以上のマイクロタイタープレート・ウェル中で行うアッセイ)がある。本発明のあるアッセイは可逆流クロマトグラフィー結合アッセイ、例えばSNAP(登録商標)アッセイを含む。例えば米国特許第5,726,010号参照。
【0067】
アッセイは固相もしくは基材を使用するか、または免疫沈降もしくは固相を使用しない他の任意の方法で実施してもよい。固相または基材を使用する場合、1つまたはそれ以上の本発明のポリペプチドを以下のような固相支持体または基材に直接または間接的に結合させてもよい:マイクロタイター・ウェル、磁気ビーズ、非磁気ビーズ、カラム、充填剤、膜、合成もしくは天然ファイバー(例えばガラスもしくはセルロースを主成分とする物質、または例えばポリエチレン、ポリプロピレン、もしくはポリエステル等の熱可塑性ポリマー)から成る繊維状マット、粒子状物質(例えばガラスまたは種々の熱可塑性ポリマー)から成る焼結構造、またはニトロセルロース、ナイロン、ポリスルホンなど(性質上、一般に合成である)から成るキャスト膜フィルム。本発明のある態様では、基材は焼結した微細ポリエチレン粒子であり、これは一般に多孔性ポリエチレンとして知られている(例えばChromex社(ニューメキシコ州アルバカーキ)製、10-15ミクロン多孔性ポリエチレン)。これらの基材物質は全て、好適な形状(例えばフィルム、シート、またはプレート)で使用することができ、あるいは好適な不活性キャリアー(例えば紙、ガラス、プラスチックフィルム、または繊維)上にコーティングするか、またはそれに結合もしくはラミネートさせてもよい。ペプチドを固相上に固定化するための好適な方法にはイオン性相互作用、疎水性相互作用、共有結合性相互作用などがある。
【0068】
あるアッセイ形式では、1つまたはそれ以上のポリペプチドを固相または基材上にコーティングしてもよい。抗エーリキア・シャフェンシス抗体またはその抗原結合フラグメントを含有する疑いのある試験サンプルを、エーリキア・シャフェンシスに特異的な抗体または抗体フラグメントにコンジュゲートしたシグナル生成化合物を含む指示薬と共に、試験サンプルの抗体が固相ポリペプチドへ結合するか、またはエーリキア・シャフェンシス特異的抗体にコンジュゲートした指示薬が固相ポリペプチドへ結合するかのいずれかによって抗原/抗体複合体が形成されるのに十分な時間および条件下でインキュベートする。抗エーリキア・シャフェンシス抗体にコンジュゲートした指示薬の固相への結合の低下を定量的に測定してもよい。例えばエーリキア・シャフェンシスが陰性であることを確認した試験サンプルから生成されるシグナルと比較して測定可能なシグナルの低下が観察されれば、これは試験サンプル中に抗エーリキア・シャフェンシス抗体が存在することを示す。このタイプのアッセイでは、試験サンプル中の抗エーリキア・シャフェンシス抗体を定量化できる。
【0069】
別のタイプのアッセイ形式では、1つまたはそれ以上の本発明のポリペプチドを支持体または基材上に固定化する。本発明のポリペプチドを指示薬にコンジュゲートさせ、試験サンプルに添加する。この混合物を支持体または基材に適用する。エーリキア・シャフェンシスに特異的な抗体が試験サンプル中に存在すれば、それらは指示薬にコンジュゲートした1つまたはそれ以上のポリペプチド、および支持体上に固定化された1つまたはそれ以上のポリペプチドに結合する。その後、このポリペプチド/抗体/指示薬複合体を検出することができる。このタイプのアッセイでは、試験サンプル中の抗エーリキア・シャフェンシス抗体を定量化できる。
【0070】
別のタイプのアッセイ形式では、1つまたはそれ以上の本発明のポリペプチドを支持体または基材上にコーティングする。試験サンプルを支持体または基材に適用し、インキュベートする。洗浄溶液で固相支持体を洗浄し、サンプル由来の未結合成分を除去する。エーリキア・シャフェンシスに特異的な抗体が試験サンプル中に存在すれば、それらは固相上にコーティングされたポリペプチドに結合する。このポリペプチド/抗体複合体を、指示薬にコンジュゲートした第2の種特異的抗体を用いて検出できる。その後、ポリペプチド/抗体/抗種抗体指示薬複合体を検出することができる。このタイプのアッセイでは、試験サンプル中の抗エーリキア・シャフェンシス抗体を定量化できる。
【0071】
ポリペプチド/抗体複合体またはポリペプチド/抗体/指示薬複合体の形成は、例えば放射測定、比色測定、蛍光測定、サイズ分離、または沈殿法によって検出できる。必要により、ポリペプチド/抗体複合体を、シグナル生成化合物を含む指示薬に結合した二次抗体を添加することによって検出する。ポリペプチド/抗体複合体に結合するシグナル生成化合物(標識)を含む指示薬を上記の方法で検出できるが、それらには発色剤、触媒(例えば酵素コンジュゲート)、蛍光化合物(例えばフルオレセインおよびローダミン)、化学発光化合物(例えばジオキセタン、アクリジニウム、フェナントリジニウム、ルテニウム、およびルミノール)、放射性元素、直接目視できる標識、並びにコファクター、阻害剤、磁気粒子などがある。酵素コンジュゲートの例としてアルカリホスファターゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、βガラクトシダーゼなどがある。特定の標識を選択することが重要な訳ではないが、それ自体によって、または1つもしくはそれ以上の更なる物質とコンジュゲートしてシグナルを生成する能力を有するものである。
【0072】
複合体の形成は試験サンプル中の抗エーリキア・シャフェンシス抗体の存在を示す。従って、本発明の方法を使用して動物におけるエーリキア・シャフェンシス感染を診断できる。
【0073】
本発明の方法では、試験サンプル中の抗エーリキア・シャフェンシス抗体の量についての情報も得られる。多くの指示薬(例えば酵素コンジュゲート)で、存在する抗体の量は生成されるシグナルに比例する。試験サンプルのタイプによって、好適なバッファーで希釈する、濃縮する、またはいずれの操作も行わずに固相と接触させることができる。例えば通常、抗体の存在および/または量を測定するために、予め希釈した血清もしくは血漿サンプル、または濃縮標本(例えば尿)を試験するのが好ましい。
【0074】
本発明は更に、サンプル中の抗エーリキア・シャフェンシス抗体もしくは抗原結合性抗体フラグメント、またはエーリキア・シャフェンシス・ポリペプチドを検出するアッセイキット(例えば製品)を含む。キットは1つまたはそれ以上の本発明のポリペプチド、およびサンプル中の抗エーリキア・シャフェンシス抗体または抗体フラグメントへのポリペプチドの結合を測定する方法を含む。また、キットまたは製品は1つまたはそれ以上の本発明の抗体または抗体フラグメント、およびサンプル中のエーリキア・シャフェンシス・ポリペプチドへの抗体または抗体フラグメントの結合を測定する方法を含んでもよい。キットは、1つまたはそれ以上の本発明のポリペプチドまたは抗体を含有する装置、および(例えば哺乳動物におけるエーリキア・シャフェンシス感染の同定のための)1つまたはそれ以上のポリペプチドまたは抗体の使用説明書を含んでもよい。またキットは、キットの1つまたはそれ以上のポリペプチドまたは抗体をエーリキア・シャフェンシス感染の同定に使用できることを示すラベルを含む包装材料を含んでもよい。当業者に公知の他の成分(例えばバッファー、コントロールなど)をそれらの試験キットに含ませてもよい。本発明のポリペプチド、抗体、アッセイ、およびキットは、例えば患者の個々のエーリキア・シャフェンシス感染症例の診断、並びにエーリキア・シャフェンシス蔓延の疫学的研究に有用である。
【0075】
本発明のポリペプチドおよびアッセイを他のポリペプチドまたはアッセイと併用し、エーリキア・シャフェンシスの存在を他の生物体と共に検出してもよい。例えば本発明のポリペプチドおよびアッセイを、イヌ糸状虫および/またはボレリア・バーグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)および/またはエーリキア・カニス(Ehrlichia canis)および/またはアナプラズマ・プラティス(Anaplasma platys)および/またはアナプラズマ・ファゴサイトフィルム(Anaplasma phagocytophilum)を検出する試薬と併用してもよい。
【0076】
本発明のポリヌクレオチドを使用してサンプル中のエーリキア・シャフェンシス・ポリヌクレオチドの存在を検出できる。ポリヌクレオチドを用い、単純なハイブリダイゼーション反応によってサンプル中のエーリキア・シャフェンシス・ポリヌクレオチドを検出することができ、また、これを例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(例えばリアルタイムPCR反応)に使用することもできる。本発明の方法および組成物を使用してエーリキア・シャフェンシスの存在を他のエーリキア種(例えばエーリキア・カニス)と識別して検出することもできる。
【0077】
PCRアッセイは当該分野で公知であり、例えば米国特許第4,683,195号;米国特許第4,683,202号;米国特許第4,965,188号がある。一般にポリヌクレオチド・プライマーを変性させた標的核酸にアニールさせる。ポリメラーゼによるデオキシヌクレオシド3リン酸の重合化によってプライマー伸長産物が生成される。その後PCRは、テンプレート核酸の変性、プライマーのアニーリング、および熱安定性ポリメラーゼの作用によるアニールしたプライマーの伸長の反復サイクルを行う。この工程により、試験サンプル中の標的エーリキア・シャフェンシス核酸の指数関数的増幅が起こり、サンプル中に非常に低濃度で存在する標的ポリヌクレオチドの検出が可能となる。
【0078】
リアルタイムPCRアッセイはシグナル(例えば蛍光レポーターシグナル)の検出に基づく。このシグナルは反応においてPCR産物の量と正比例して増加する。リアルタイムPCRは進行中の増幅反応の展開をモニタリングすることを可能とする増幅法である。Quantitation of DNA/RNA Using Real-Time PCR Detection, Perkin Elmer Applied Biosystems(1999);PCR Protocols(Academic Press New York, 1989)参照。各サイクルで蛍光発光の量を測定することにより、指数関数的増幅期にあるPCR反応をモニタリングできる(ここで、PCR産物量の最初の有意な増加は、標的テンプレートの初期量と相関関係を有する)。開始時の核酸標的コピー数が多いほど、より早期に蛍光の有意な増加が観察される。
【0079】
本発明のある態様では、試験サンプル中のエーリキア・シャフェンシス・ポリヌクレオチドを検出および/または定量する方法を提供する。ポリメラーゼ連鎖反応に好適な条件下でセンスプライマーおよびアンチセンスプライマーを試験サンプルに添加してもよい。試験サンプル中にエーリキア・シャフェンシス・ポリヌクレオチドが存在すれば、プライマーがエーリキア・シャフェンシス・ポリヌクレオチドとハイブリダイズして増幅産物が生成される。増幅産物を検出し、エーリキア・シャフェンシス・ポリヌクレオチドの存在および/またはその量を測定する。ポリメラーゼ連鎖反応に好適な条件下でエーリキア・シャフェンシス・ポリヌクレオチド配列とハイブリダイズするポリヌクレオチド・プローブを用いて、増幅産物を検出できる。プローブからの検出シグナルを測定し、該検出シグナルを定量標準からの第2のプローブ検出シグナルと比較することによって、増幅産物を定量してもよい。定量標準を、試験サンプルと並行して抽出してもよい。
【0080】
エーリキア・シャフェンシスに起因する疾患の治療、寛解、または予防のための方法
本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、および抗体を使用して、エーリキア・シャフェンシスに起因する疾患を治療、寛解、または予防することができる。
【0081】
例えば、抗体(例えば本発明のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント)を動物(例えばヒトまたはイヌ)に投与してもよい。本発明のある態様では、抗体またはその抗原結合フラグメントを医薬的に許容されるキャリアーを含む医薬組成物として動物に投与する。医薬組成物は治療的有効量の抗体またはその抗原結合フラグメントを含む。治療的有効量は、被験体におけるエーリキア・シャフェンシス感染の症状の寛解またはエーリキア・シャフェンシス菌体量の低減に有効な量である。
【0082】
本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドが免疫原性組成物中に含有され、これを用いてホストにおける免疫応答を惹起してもよい。免疫原性組成物または免疫原は動物において免疫応答を誘導する能力を有する。本発明の免疫原性ポリペプチドまたはポリヌクレオチド組成物は、動物の免疫系を感作し、結果として免疫応答を惹起してエーリキア・シャフェンシス感染の影響を寛解または予防するのに特に有用である。動物モデルでの免疫応答の誘導は、例えば最適な投与量または投与経路を決定するのに有用であり得る。免疫応答の誘導を用いて、エーリキア・シャフェンシスを原因とする疾患または感染の治療、予防、または寛解を行ってもよい。免疫応答には液性免疫応答もしくは細胞性免疫応答、またはそれらを組み合わせたものがある。免疫応答は、例えばデフェンシンの生成を促進することによる、ホストの応答の促進を含んでもよい。
【0083】
本発明のある態様では、本発明のポリペプチドおよびポリペプチドのカルボキシル末端またはアミノ末端に共有結合する1つまたはそれ以上の更なる領域または部分を含む免疫原を提供する。各領域または部分によって、例えば免疫応答を増強し、免疫原の精製を促進し、またはポリペプチドの安定性を向上させることができる。
【0084】
動物によるエーリキア・シャフェンシスに対する抗体価の産生は感染からの防御および感染のクリアランスに重要であり得る。ポリペプチドまたはポリヌクレオチド運搬後の抗体価の検出および/または定量を用いて、抗体価の誘発に特に有効なエピトープを同定できる。エーリキア・シャフェンシスに対する強力な抗体反応に関与するエピトープの同定は、種々の長さのエーリキア・シャフェンシス・ポリペプチドに対して抗体を産生させることによって同定できる。次いで、特定のポリペプチド・エピトープによって産生される抗体を例えばELISAアッセイを用いて試験し、いずれのポリペプチドが強力な応答を惹起するのに最も有効なエピトープを含有するかを確認できる。その後、それらのエピトープまたはエピトープをコードするポリヌクレオチドを含むポリペプチドまたは融合タンパク質を構築し、それを用いて強力な抗体反応を惹起してもよい。
【0085】
本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、または抗体を哺乳動物(例えばマウス、ウサギ、モルモット、マカク、ヒヒ、チンパンジー、ヒト、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、イヌ、ネコ)、またはニワトリもしくはアヒルのような動物に投与し、in vivoで抗体を産生させてもよい。ポリヌクレオチドの注射は構築および改変を容易にするために実用面で有益である。更に、ポリヌクレオチドの注射により、ホストにおいてポリペプチドが合成される。従って、ポリペプチドが天然の翻訳後修飾、構造、およびコンフォメーションでホスト免疫系に提示される。ポリヌクレオチドを“裸の(naked)DNA”として被験体に運搬してもよい。
【0086】
ポリヌクレオチド、ポリペプチド、または抗体の投与は当該分野で公知の方法のいずれによって行ってもよく、それらには筋肉内、静脈内、肺内、筋肉内、皮内、腹腔内、もしくは皮下注射、エアロゾル、鼻腔内、輸液ポンプ、座薬、粘膜、局所、および経口、例えば生体弾道銃(“遺伝子銃”)を用いた注射がある。ポリヌクレオチド、ポリペプチド、または抗体は経口投与のためのタンパク質キャリアーを伴ってもよい。投与法を組み合わせて免疫応答を惹起してもよい。抗体は約0.5mgから約200mgの1日用量で投与してもよい。本発明のある態様では、抗体を約20から約100mgの1日用量で投与する。
【0087】
治療に使用するための医薬的に許容されるキャリアーおよび希釈剤、並びに獣医学的に許容されるキャリアーおよび希釈剤は当該分野で公知であり、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing社(A.R. Gennaro編(1985))に記載されている。キャリアーはそれ自体ではホストに有害な抗体の産生を誘導しないものでなければならない。それらのキャリアーには、限定されるわけではないが以下がある:大型で代謝が遅い高分子、例えばタンパク質、多糖(ラテックス機能性SEPHAROSE(登録商標)、アガロース、セルロース、セルロースビーズなど)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、アミノ酸ポリマー(例えばポリグルタミン酸、ポリリジンなど)、アミノ酸コポリマー、ペプトイド、リピトイド(lipitoid)、および不活性非病原性ウィルス粒子または細菌細胞。リポソーム、ハイドロゲル、シクロデキストリン、生分解性ナノカプセル、および生体接着物質を本発明の組成物のキャリアーとして使用してもよい。
【0088】
例えば以下のような医薬的に許容される塩を本発明の組成物に使用してもよい:無機塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、または硫酸塩、並びに有機酸塩、例えば酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、または安息香酸塩。特に有用なタンパク質基質は血清アルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン、免疫グロブリン分子、サイログロブリン、オボアルブミン、破傷風トキソイド、および当業者に公知の他のタンパク質である。本発明の組成物は液体または賦形剤、例えば水、生理食塩水、リン酸緩衝食塩水、リンガー液、ハンクス液、グルコース、グリセロール、デキストロース、マロデキストリン、エタノールなど(単独または組み合わせで)、並びに湿潤剤、乳化剤、浸透圧調整剤、界面活性剤、またはpH緩衝剤等の物質を含有してもよい。更なる活性剤、例えば殺菌剤を使用してもよい。
【0089】
必要により、リンパ球への免疫原性提示を向上させる共刺激分子、例えばB7-1もしくはB7-2、またはサイトカイン、例えばMIP1α、GM-CSF、IL-2、およびIL-12を本発明の組成物に含有させてもよい。必要により、アジュバントを組成物に含有させてもよい。アジュバントは特異的免疫応答を非特異的に増強させるのに使用できる物質である。一般に、アジュバントおよび本発明のポリペプチドを混合した後に免疫系に提示するか、または別々に、しかし動物の同じ部位に提示する。アジュバントには、例えば油性アジュバント(例えばフロイント完全および不完全アジュバント)、無機塩(例えばAlk(SO4)2、AlNa(SO4)2、AlNH4(SO4)、シリカ、アラム、Al(OH)3、およびCa3(PO4)2)、ポリヌクレオチド(すなわちポリICおよびポリAU酸)、およびある種の天然物質(例えば結核菌(Mycobacterium tuberculosis)由来のワックスD、並びにコリネバクテリウム・パルバム(Corynebacterium parvum)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、およびブルセラ属のメンバーに見られる物質)がある。使用できるアジュバントには、それらに限定されるわけではないが以下がある:MF59-0、水酸化アルミニウム、N-アセチル-ムラミル-L-スレオニル-D-イソグルタミン(thr-MDP)、N-アセチル-ノル-ムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン(CGP 11637、別名ノル-MDP)、N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミニル-L-アラニン-2-(1’-2’-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ヒドロキシホスホリルオキシ)-エチルアミン(CGP 19835A、別名MTP-PE)、およびRIBI(細菌から抽出された3つの成分、モノホスホリル脂質A、トレハロースジミコレート、および細胞壁骨格(MPL+TDM+CWS)を2%スクアレン/TWEEN(登録商標)80(ポリソルベート)エマルジョンに混合したものを含有する)。
【0090】
本発明の組成物を調剤して摂取可能な錠剤、バッカル錠、トローチ、カプセル、エリキシル剤、懸濁液、シロップ、ウェーハ、注射液、マウスウォッシュ、歯磨剤(dentrifices)等にしてもよい。それらの組成物および製剤中の1つまたはそれ以上の本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、または抗体のパーセンテージは重量比0.1%から60%まで様々である。
【0091】
ポリペプチド、ポリヌクレオチド、または抗体の投与により動物における免疫応答が惹起され、これは少なくとも1週間、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年間、またはそれ以上持続する。必要により、動物における免疫応答を保持するために、初回注射の1ヶ月後、3ヶ月後、6ヶ月後、1年後、またはそれ以降に1回またはそれ以上の、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、または抗体のブースター注射を行ってもよい。必要により、共刺激分子またはアジュバントを組成物の前、後、またはそれと共に投与してもよい。
【0092】
ポリペプチド、ポリヌクレオチド、抗体、またはそれらの組み合わせを含む本発明の組成物を、使用する特定の組成物に適合する方法で、(例えばELISAによって)検出される免疫応答を惹起するのに有効な量で投与する。ポリヌクレオチドを哺乳動物(例えばヒヒ、チンパンジー、イヌ、またはヒト)に、1ng/kg、10ng/kg、100ng/kg、1000ng/kg、0.001mg/kg、0.1mg/kg、または0.5mg/kgの用量で筋肉内注射してもよい。ポリペプチドまたは抗体を0.01、0.05、0.5、0.75、1.0、1.5、2.0、2.5、5、または10mg/kgの用量で哺乳動物に筋肉内注射してもよい。
【0093】
ポリペプチド、ポリヌクレオチド、もしくは抗体、またはそれらの組み合わせをエーリキア・シャフェンシスに感染していない動物に投与するか、またはエーリキア・シャフェンシスに感染した動物に投与してもよい。免疫学的有効量または治療的有効量とは、個体への該量の投与(一回投与、または連続投与の一部として)がエーリキア・シャフェンシス感染の治療、寛解、または予防に有効であることを意味する。組成物中のポリヌクレオチド、ポリペプチド、または抗体の特定の用量は多くの因子に依存し、それらの因子には、限定されるわけではないが組成物を投与する哺乳動物の種、年齢、性別、併用薬剤、全身症状、および組成物の投与様式がある。本発明の組成物の有効量は慣例的な実験法を用いるだけで容易に決定できる。
【0094】
本明細書に引用する全ての特許、特許出願、および他の科学または技術文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本発明について本明細書に適宜、例証的に記載するが、これを任意の要素(単数または複数)、制限(単数または複数)を欠いた状態で実施してもよい(それらについては本明細書に具体的に開示していない)。従って、例えば本明細書に記載するそれぞれの例で、“を含む”、“本質的に…から成る”、および“から成る”という用語は、それぞれ他の2つの用語のいずれかと置換してもよく、それでもなお、その慣例的な意味を保持する。使用した用語および表現は制限ではなく説明のための用語として使用するものであって、それらの用語および表現の使用において、表示および記載する特長の同等物またはその一部のいずれをも除外する意図はなく、認識されるように、種々の改変が本発明の特許請求の範囲内で可能である。従って、本発明について態様、必要に応じた特徴によって具体的に開示したが、当業者は本明細書に開示するコンセプトの改変および変更を実施してもよく、それらの改変および変更は記述および添付の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲内であると見なされることは理解されるべきである。
【0095】
更に、本発明の特徴または観点をマーカッシュ群または他の選択肢群で記載する場合、当業者に認識されるように、本発明はそれによってマーカッシュ群または他の群の個々のメンバーまたはメンバーのサブグループでも記述される。
【実施例】
【0096】
実施例1 直接ELISAアッセイプレートおよびプロトコル
SEQ ID NO:5およびSEQ ID NO:6に示すポリペプチドをBSAにコンジュゲートさせ、このコンジュゲートをIMMULON(登録商標)4プレート上にコーティングした。コーティング・バッファーは0.05M 炭酸ナトリウム(pH9.6)とした。100μL/ウェルの希釈したポリペプチドをプレート上にピペッティングした。プレートにカバーをして2℃-8℃で一晩インキュベートした。ポリペプチド溶液をプレートから吸引し、プレートをHW PetChek(登録商標)洗浄バッファー(IDEXX Laboratories社、メイン州ウェストブルック)で4回洗浄した。300μL/ウェルの1% BSA含有0.1M Tris(pH7.6)をプレートに添加した。プレートにカバーをし、室温で6時間インキュベートした。BSAを吸引し、300μL/ウェルの2.5%ショ糖含有0.1M Tris(pH7.6)をプレートに添加した。プレートにカバーをし、2℃-8℃で一晩インキュベートした。ショ糖をプレートから吸引し、プレートをタッピングして過剰の液体を除去した。プレートを真空槽で4時間乾燥した。プレートは乾燥剤と共に2重にしたビニール袋に入れ、2℃-8℃で保存した。
【0097】
SEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:2に示すポリペプチドをHRPOにコンジュゲートさせた。希釈したポリペプチド:HRPOを各ウェルに添加し(100μL/ウェル)、コントロールおよび血清サンプル(未希釈)を添加した(50μL/ウェル)。エーリキア・シャフェンシスの陽性コントロールを陰性コントロールと共に使用した。プレートを軽くタッピングし、室温で1時間インキュベートした。プレートをHW PetChek(登録商標)洗浄バッファーで6回洗浄した。100μL/ウェルのTMB基質をウェルに添加し、プレートを10分間インキュベートした。50μL/ウェルのストップ溶液をウェルに添加した。プレートをA650で測定した。ネガティブ・カットオフは2x陰性コントロールO.D.値とした。
【0098】
実施例2 間接ELISAアッセイプレートおよびプロトコル
SEQ ID NO:4、5、および6に示すポリペプチドをImmulon(登録商標)1プレートにコーティングした。コーティング・バッファーは0.05M 炭酸ナトリウム(pH9.6)とした。100μL/ウェルの希釈したペプチドをプレートに添加し、プレートにカバーをして室温(RT)で一晩インキュベートした。ポリペプチドを吸引し、プレートをHW PetChek(登録商標)洗浄バッファーで2回洗浄した。200μL/ウェルの2% TWEEN(登録商標)(ポリソルベート)20/2.5%ショ糖含有0.1M Tris(pH7.6)をウェルに添加し、プレートにカバーをして室温で2時間インキュベートした。ブロッキング溶液を吸引し、プレートをタッピングして過剰の液体を除去した。プレートを2x27g乾燥剤/6プレートと共にマイラー製の袋に入れ、室温で一晩乾燥させた。プレートは2℃-8℃で保存した。
【0099】
希釈したコントロールおよび血清サンプルをウェルにピペッティングした(100μL/ウェル)。エーリキア・シャフェンシスの陽性コントロールを陰性コントロールと共に使用した。プレートを室温で30分間インキュベートした。プレートをHW PetChek(登録商標)洗浄バッファーで5回洗浄した。100μL/ウェルの希釈したウサギ抗イヌ:HRPOをウェルに添加し、室温で30分間インキュベートした。プレートをHW PetChek(登録商標)洗浄バッファーで5回洗浄した。50μL/ウェルのTMB基質をプレートに添加し、10分間インキュベートした。50μL/ウェルのストップ溶液を添加した。プレートをA650で測定した。ネガティブ・カットオフは2x陰性コントロールO.D.値とした。
【0100】
間接(α種)および直接(Ag:Ag)アッセイフォーマットについての最終最適プレート条件を、表1に示す。
【0101】
【表1】

【0102】
実施例3 VLPTポリペプチド・アッセイ
VLPT-1(SEQ ID NO:5)およびVLPT-2(SEQ ID NO:6)を使用して上記の間接アッセイを行い、エーリキア・シャフェンシスに感染したイヌおよび感染していないイヌにおけるエーリキア・シャフェンシス感染を検出した。表2中の陽性サンプル(“(+)”により指摘される)は、エーリキア・シャフェンシスに陽性であるが、エーリキア・カニスに陰性であるフィールドサンプルである。サンプル希釈は1:100で、ウサギ抗イヌ抗体希釈は1:2000であった。結果を表2に示す。VLPT-1およびVLPT-2は、陽性コントロール中のエーリキア・シャフェンシスを正確に検出し、陰性サンプルおよび陰性コントロールについては陽性の結果を与えなかった。VLPT-1は7つの陽性サンプルのうちの6つにおいて陽性の結果をもたらした。VLPT-2は7つの陽性サンプルのうちの5つにおいて陽性の結果をもたらした。
【0103】
【表2】

【0104】
VLPT-1(SEQ ID NO:5)およびVLPT-2(SEQ ID NO:6)を使用して上記の直接アッセイを行い、エーリキア・シャフェンシスに感染したイヌおよび感染していないイヌにおけるエーリキア・シャフェンシス感染を検出した。表3中の陽性サンプル(“(+)”により指摘される)は、エーリキア・シャフェンシスに陽性であるが、エーリキア・カニスに陰性であるフィールドサンプルである。プレートは0.5および1.0μg/mlでコートし、ポリペプチド:HRPOは0.5および1.0μg/mlで試験された。結果を表3に示す。VLPT-1およびVLPT-2は、陽性コントロール中のエーリキア・シャフェンシスを正確に検出し、陰性サンプルおよび陰性コントロールについては陽性の結果を与えなかった。VLPT-1およびVLPT-2のどちらも、6つの陽性サンプルのうちの6つにおいて陽性の結果をもたらした。
【0105】
【表3】

【0106】
VLPT-1(SEQ ID NO:5)を使用して上記の直接アッセイを行い、エーリキア・カニスを接種したイヌ・サンプルのアッセイを行った。このアッセイを行い、VLPT-1によってエーリキア・カニスを接種したイヌで陽性結果が得られるか否かを確認した。試験サンプルは2回目の追加免疫後にイヌから採取した。プレートを1.0μg/mLでコーティングし、ポリペプチド:HRPOを0.5μg/mLの濃度で使用した。SNAP(登録商標)4Dx(登録商標)アッセイを用いて、接種したイヌにおいて抗エーリキア・カニス抗体応答を誘導した。このアッセイではイヌ糸状虫抗原、エーリキア・カニス抗体、ボレリア・バーグドルフェリ抗体、およびアナプラズマ・ファゴサイトフィルム抗体がスクリーニングされる。結果を表4に示す。SNAP(登録商標)4Dx(登録商標)試験においてエーリキア・カニス抗体の結果が陽性であれば、接種後に抗体応答が誘導されたことを示している。直接アッセイにおいて、エーリキア・カニスを接種したイヌ由来のサンプルで試験した場合、VLPT-1では陽性結果が得られない。従って、VLPT-1(SEQ ID NO:5)はエーリキア・シャフェンシス感染に特異的であり、エーリキア・カニスをワクチン接種されたイヌ由来の血清とは反応しない。
【0107】
【表4】

【0108】
VLPT-1(SEQ ID NO:5)およびVLPT-R(SEQ ID NO:4、112位のXはP)を使用して上記の間接アッセイを行い、実験的にエーリキア・カニスに感染させたイヌ由来のサンプルを試験した。このアッセイを行い、VLPT-1およびVLPT-Rによって、エーリキア・カニスに感染したイヌ由来のサンプルで陽性結果が得られるか否かを確認した。プレートを0.15μg/mL(VLPT-R)および1μg/mL(VLPT-1)でコーティングした。サンプルの希釈率はVLPT-Rで1:100、VLPT-1で1:50とした。ウサギ抗イヌ:HRPOコンジュゲートは1:1000希釈とした。結果を表5に示す。
【0109】
【表5】

【0110】
一般に、VLPT-1(SEQ ID NO:5)およびVLPT-R(SEQ ID NO:4、112位のXはP)は、エーリキア・カニスに感染したイヌ由来サンプルでは陽性結果を示さない。しかしながら、VLPT-RおよびVLPT-1のどちらも、広範な時点において顕著に上昇したレベルを示す単一のサンプルを有する。しかしながら、これらの陽性シグナルは陽性コントロールに比べて弱く、シグナルは、エーリキア・カニスと真の交差反応をすると予測されるような、接種後の時間とともに増大しなかった。従ってVLPT-1(SEQ ID NO:5)およびVLPT-R(SEQ ID NO:4、112位のXはP)はエーリキア・シャフェンシスに特異的であってエーリキア・カニスには特異的でない。
【0111】
VLPT-1(SEQ ID NO:5)およびVLPT-R(SEQ ID NO:4、112位のXはP)を間接アッセイに使用して、実験的にエーリキア・シャフェンシスに感染させたイヌ由来の試験血清を感染後数回にわたる時点で試験した。プレートを0.15μg/mL(VLPT-R)および1μg/mL(VLPT-1)でコーティングした。サンプルの希釈率はVLPT-Rで1:100、VLPT-1で1:50とした。ウサギ抗イヌ:HRPOは1:1000希釈とした。結果を表6および図1Aおよび1Bに示す。VLPT-RおよびVLPT-1のどちらも、少なくとも感染後7日目までにエーリキア・シャフェンシス抗体を検出できた。
【0112】
【表6】

【0113】
VLPT-1を間接アッセイに使用して、エーリキア・カニスは発見されたがエーリキア・シャフェンシスはないアリゾナの区域におけるイヌ由来の、陽性および陰性と知られているフィールド血清サンプルを試験した。プレートを1μg/mLでコーティングし、ペプチド:HRPOを0.5μg/mLの濃度で使用した。結果を表7に示す。VLPT-1は、エーリキア・カニス陽性サンプルまたはエーリキア・カニス陰性サンプルで陽性結果を示さなかった。従って、VLPT-1はエーリキア・シャフェンシス抗体に特異的で、エーリキア・カニス抗体に特異的ではない。
【0114】
【表7】

【0115】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
精製ポリペプチドであり、以下:
(a)SEQ ID NO:3(ポリペプチドは約50個未満の連続する天然型エーリキア・シャフェンシス(Ehrlichia chaffeensis)アミノ酸から成る);
(b)SEQ ID NO:2(ポリペプチドは約50個未満の連続する天然型エーリキア・シャフェンシス・アミノ酸から成る);
(c)SEQ ID NO:1(ポリペプチドは約50個未満の連続する天然型エーリキア・シャフェンシス・アミノ酸から成る);
を含む上記ポリペプチド。
【請求項2】
請求項1記載の精製ポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項3】
ポリペプチドがSEQ ID NO:3、SEQ ID NO:2、またはSEQ ID NO:1から成る、請求項1記載の精製ポリペプチド。
【請求項4】
精製ポリペプチドが、指示薬、アミノ酸スペーサー、シグナル配列、輸送停止配列、膜貫通ドメイン、タンパク質精製リガンド、異種ポリペプチド、1つもしくはそれ以上の、SEQ ID NO:1、2、3、4、5、6を含有する更なるポリペプチド、またはそれらの組み合わせに結合している、請求項1記載の精製ポリペプチド。
【請求項5】
精製ポリペプチドが、ポリペプチドのアミノ末端もしくはカルボキシ末端、または両端に1つまたはそれ以上のCアミノ酸残基を含有する、請求項1記載の精製ポリペプチド。
【請求項6】
試験サンプル中のエーリキア・シャフェンシス・ポリペプチドに特異的に結合する抗体を検出する方法であり、以下:
(a)ポリペプチド/抗体複合体の形成が可能な条件下で、SEQ ID NO:1、2、3、5、または6を含有する精製ポリペプチドを試験サンプルと接触させること(ここで精製ポリペプチドは約50個未満の連続する天然型エーリキア・シャフェンシス・アミノ酸から成る);
(b)ポリペプチド/抗体複合体を検出すること
を含み、ここでポリペプチド/抗体複合体が検出されればエーリキア・シャフェンシスに特異的な抗体が試験サンプル中に存在することを示し、ポリペプチド/抗体複合体が検出されなければエーリキア・シャフェンシスに特異的な抗体が試験サンプル中に存在しないことを示す、上記方法。
【請求項7】
工程(b)を行う前に工程(a)の複合体を指示薬と接触させることを更に含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
精製ポリペプチドがSEQ ID NO:2、またはSEQ ID NO:5を含有し、エーリキア・カニス(Ehrlichia canis)ポリペプチドに特異的に結合する抗体が検出されない、請求項6記載の方法。
【請求項9】
試験サンプル中の抗体の量を測定する、請求項6記載の方法。
【請求項10】
精製ポリペプチドが基材に結合している、請求項6記載の方法。
【請求項11】
精製ポリペプチドが、指示薬、アミノ酸スペーサー、シグナル配列、輸送停止配列、膜貫通ドメイン、タンパク質精製リガンド、異種タンパク質、1つもしくはそれ以上の、SEQ ID NO:1、2、3、4、5もしくは6を含有する更なるポリペプチド、またはそれらの組み合わせに結合している、請求項6記載の方法。
【請求項12】
被験体におけるエーリキア・シャフェンシス感染を検出する方法であり、以下:
(a)被験体から生体サンプルを得ること;
(b)ポリペプチド/抗体複合体の形成が可能な条件下でSEQ ID NO:1、2、3、5、または6を含有する精製ポリペプチドを生体サンプルと接触させること(ここで精製ポリペプチドは約50個未満の連続する天然型エーリキア・シャフェンシス・アミノ酸から成る);
(c)ポリペプチド/抗体複合体を検出すること;
を含み、ポリペプチド/抗体複合体の検出が被験体のエーリキア・シャフェンシス感染を示す、上記方法。
【請求項13】
精製ポリペプチドがSEQ ID NO:2、またはSEQ ID NO:5であり、被験体におけるエーリキア・カニス感染が検出されない、請求項12記載の方法。
【請求項14】
SEQ ID NO:1、2、3、5、または6から成るポリペプチドに特異的に結合する抗体。
【請求項15】
抗体がモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗原結合性抗体フラグメント、または1本鎖抗体である、請求項14記載の抗体。
【請求項16】
サンプル中のエーリキア・シャフェンシス・ポリペプチドを検出する方法であり、以下:
(a)ポリペプチド/抗体複合体の形成が可能な条件下で、SEQ ID NO:1、2、3、5、または6から成るポリペプチドに特異的に結合する抗体をサンプルと接触させること;
(b)ポリペプチド/抗体複合体を検出すること;
を含み、ポリペプチド/抗体複合体の検出がサンプル中のエーリキア・シャフェンシス・ポリペプチドの存在を示す、上記方法。
【請求項17】
ポリペプチドがSEQ ID NO:2、またはSEQ ID NO:5であり、サンプル中のエーリキア・カニス・ポリペプチドが検出されない、請求項16記載の方法。
【請求項18】
抗体がモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗原結合性抗体フラグメント、または1本鎖抗体である、請求項16記載の方法。
【請求項19】
抗体が基材に結合している、請求項16記載の方法。


【図1A】
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【図1B】
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【公表番号】特表2011−501653(P2011−501653A)
【公表日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−526013(P2010−526013)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【国際出願番号】PCT/US2008/077079
【国際公開番号】WO2009/039414
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.UNIX
【出願人】(300004500)アイデックス ラボラトリーズ インコーポレイテッド (30)
【Fターム(参考)】