説明

エーロゾルディスペンサーおよびそれに用いるアダプター

複数回分の用量の加圧されたエーロゾル配合物を分配するため、内側の閉鎖ないし準備位置と、外側の分配位置との間を移動可能な弁棒を備える分配弁を装備した容器と一緒に使用されるアダプター、並びにこのようなアダプターと容器とを備えるディスペンサーであって、前記アダプターは、容器を受容するように構成され、作動機構を備え、前記作動機構は、使用者が押下ないし圧迫力を加えることによってその機構を操作し、その用量が前記押下ないし圧迫力で分配されるように配置され、前記作動機構は、使用者がその機構を解放すると分配弁の弁棒がその内側の閉鎖ないし準備位置に自動的に移動するように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数回分の用量の加圧されたエーロゾル配合物を分配するための、特に患者の呼吸器系に投与する薬剤を定量分配するためのディスペンサー、並びにディスペンサーに使用するアダプターに関する。
【背景技術】
【0002】
エーロゾル製薬、および患者に薬剤を吸入投与するための加圧式医薬用ディスペンサーの使用は、一般的であり、更に重要性が増している。
【0003】
薬剤は、一般に、1種類以上の噴射剤(例えば、クロロフルオロカーボン、更に最近では、噴射剤134a(CF3CH2F)および噴射剤227(CF3CHFCF3)などのハイドロフルオロアルカンを含めた水素含有フルオロカーボンなど)、並びに追加の任意の賦形剤又は構成成分と一緒に配合された後、容器又はバイアル瓶に装填される。容器は、典型的には、閉鎖位置と分配位置との間を移動可能な細長い出口部材又は弁棒を備える分配弁、特に、定量分配弁をフェルールで嵌合されて、分配キャニスターを提供する。分配キャニスターは、典型的にはアダプターと共に使用され、アダプターは、典型的には患者側ポート(例えば、マウスピース、又は鼻に使用するように構成されているポート)を有する。慣用的な押して呼吸する(press−and−breathe)吸入器などの慣用的なディスペンサーでは、アダプターは、典型的には、分配弁の弁棒を受容するように構成されているソケットと、ソケットおよび患者側ポートと開放連通するオリフィスとを有する支持ブロックを備える。
【0004】
慣用的な分配弁では、弁棒は、典型的には、弁棒が容器に対して外向きに延びている状態でその閉鎖位置(「外側の」閉鎖位置)に付勢されており、弁を作動又は噴射させるため、弁棒を分配位置(「内側の」分配位置)に内向きに押し下げると、1回分の用量を分配することができる。例えば、慣用的な押して呼吸する装置では、患者は、容器をアダプターの支持ブロックの方に押し下げ、従って弁棒を内向きに押下げることによって装置を噴射し、それと同時に吸入する。
【0005】
例えば、米国特許第5,772,085号明細書に開示されているシャトル型の定量分配弁の特定の実施形態など、慣用的な押して噴射する方式で動作しない分配弁もある。代わりに、弁棒は、内側の閉鎖ないし準備位置から外側の分配位置に容器に対して移動する。換言すれば、弁棒が容器に対して外向きに移動すると、分配弁は作動又は噴射する。このような弁の動作には、典型的には、使用者が弁棒を準備位置に内向きに押下げた後、解放することが必要であり、弁棒が分配位置に外向きに移動すると、解放行程中、噴射することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
普及していない、解放時の噴射(解放して噴射する操作)は、患者を困惑させる場合があることが認識されている。特に、患者は、慣用的な押して呼吸する型の吸入器(即ち、押して噴射するディスペンサー)を操作すると同時に吸入することを協調させる方法を学ぶ集中訓練を受けることが多く、従って、解放して噴射する操作に基づくディスペンサーの使用に切り替えることは、ほぼ不可能ではなくとも、困難であると思う場合がある。喘息患者などの患者は、使用している医薬ディスペンサー(又は吸入器)の変化に敏感であり、それに気が進まない傾向が多いため、これは特にあてはまる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
驚くべきことに、本願発明者らは、患者が、解放して噴射する型の弁を慣用的な方式で使用できるディスペンサー、並びにアダプターを提供することができた。
【0008】
従って、本発明の一態様では、複数回分の用量の加圧されたエーロゾル配合物を分配するため、内側の閉鎖ないし準備位置と、外側の分配位置との間を移動可能な弁棒を備える分配弁を装備した容器と一緒に使用されるアダプターが提供され、アダプターは、容器を受容するように構成され、作動機構を備え、前記作動機構は、使用者が押下ないし圧迫力を加えることによってその機構を操作し、前記押下ないし圧迫力でその用量が分配されるように配置され、前記作動機構は、使用者がその機構を解放すると分配弁の弁棒がその閉鎖ないし準備位置に自動的に移動するように配置されている。
【0009】
本発明の別の態様では、複数回分の用量の加圧されたエーロゾル配合物を分配するディスペンサーが提供され、前記ディスペンサーは、
加圧されたエーロゾル配合物を収容し、1回分の用量を分配するため、内側の閉鎖ないし準備位置と、外側の分配位置との間を移動可能な弁棒を備える分配弁を装備した容器、および、
容器を受容するように構成され、作動機構を備えるアダプターであって、前記作動機構は、使用者が押下ないし圧迫力を加えることによってその機構を操作し、その用量が前記押下ないし圧迫力で分配されるように配置され、前記作動機構は、使用者がその機構を解放すると分配弁の弁棒がその閉鎖ないし準備位置に自動的に移動するように配置されているアダプター、
を備える。
【0010】
本発明のアダプター又はディスペンサーの使用は、患者が慣用的な押して呼吸する型の吸入器と類似の方式でディスペンサーを操作できるという点で有利である。患者が吸入すると同時に作動機構に押下げる力を加えると、1回分の用量を分配することができる。このような噴射の後、患者は作動機構を解放するだけである。作動機構は、前記解放で分配弁の弁棒がその内側の閉鎖ないし準備位置に自動的に移動する又は戻るように配置されているため、ディスペンサーは、患者が追加の操作をすることなく次の噴射の準備が整うことが有利である。また、本発明のディスペンサーは、患者が解放すると、弁がその内側の閉鎖ないし準備位置に自動的に直ぐにリセットされるため、分配弁の内部の敏感な可能性のある部分が外側環境から望ましく密封され、従って、ディスペンサーの個々の噴射間に空気や水分の進入から保護されるという点でも有利である。
【0011】
好ましい実施形態では、作動機構は、前記押下ないし圧迫力で弁棒がその閉鎖ないし準備位置からその分配位置に引かれるように配置される。このような好ましい実施形態は、弁棒をその外側の分配位置の方に付勢する内部バネの付勢がない分配弁と一緒に使用するのに特に有利である。
【0012】
好適な分配弁には、特に、中立の付勢を有するように配置されている(即ち、弁棒がその閉鎖/準備位置の方と分配位置の方のどちらにも付勢されていない)分配弁、並びに、弁棒がディスペンサーの容器内に収容されている加圧されたエーロゾル配合物によって発生する蒸気圧によって分配位置の方に外向きに付勢されるように配置されている分配弁が挙げられる。
【0013】
一実施形態では、作動機構は、取付けブロックと作動部材とを備え、前記取付けブロックは、容器を保持してアダプターに対する容器の移動を防止するように構成され、前記作動部材は弁棒と接触しており、弁棒がその閉鎖ないし準備位置で静止するように容器の方に付勢されている。好適には、作動部材は、前記押下ないし圧迫力で、作動部材が付勢に逆らって容器から離れ、弁棒がその分配位置に移動できるように配置されてもよい。或いは、そして更に望ましくは、作動部材は、弁棒に連結され、前記押下ないし圧迫力で作動部材が付勢に逆らって容器から離れ、それによって弁棒をその分配位置に引くように配置されてもよい。
【0014】
他の実施形態では、作動機構は、弁棒を保持してアダプターに対する弁棒の移動を防止するように構成されている係止ブロックを備えてもよい。ここで、容器は、望ましくは、弁棒がその閉鎖ないし準備位置で静止するように弁棒の方に付勢され、作動機構は、望ましくは、前記押下ないし圧迫力で作動部材が付勢に逆らって弁棒から容器を離し、それによって、弁棒を容器に対してその分配位置に引くように配置されている作動部材を備える。
【0015】
これらのアダプターおよびディスペンサーは、定量分配弁、更に詳細にはシャトル型の定量分配弁と一緒に使用するのに特に好適である。好ましい実施形態では、分配弁は、チャンバおよび出口通路を更に備え、ここで、弁棒はチャンバ内に延び、閉鎖ないし準備位置と分配位置との間をチャンバに対して移動可能であり、弁棒は外部表面を具備する形状を有し、チャンバは内部表面を具備する内部形状を有し、そのため、移動可能な一定容積の加圧されたエーロゾル配合物をそれらの間で画定することができ、且つ、閉鎖ないし準備位置と分配位置との間を移動する間、弁棒は逐次的に、
(i)エーロゾル配合物が自由に流動してチャンバを出入できるようにし、
(ii)弁棒の外部表面とチャンバの内部表面との間で、加圧されたエーロゾル配合物のための閉鎖した一定容積を画定し、および、
(iii)一定容積が出口通路と連通し、それによって一定容積の加圧されたエーロゾル配合物を分配できるまで、閉鎖した一定容積の容積を減少させることなく、閉鎖した一定容積と共にチャンバ内を移動する。
【0016】
本発明の他の実施形態は、従属の特許請求の範囲に定義されている。
【0017】
以下の図面を参照して、以下に、本発明、その実施形態および他の利点を説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、本明細書に記載される本発明の特定のおよび好ましい態様の全ての組合せを包含することを理解されたい。
【0019】
本発明の様々な態様をよりよく理解するため、弁棒が外向きに移動すると作動又は噴射し、本発明で使用するのに特に好適な1つの例示的な分配弁を最初に説明する。
【0020】
図1aおよび図1bは、例示的なシャトル型の定量分配弁を表す。図1aおよび図1bを参照すると、弁は、典型的には、エーロゾル容器又はバイアル瓶(図示せず)の首に係合し、気密シールを促進する環状シール又はガスケット(4)を有する本体(2)を備える。本体(2)は、エーロゾル容器の首の周りにかしめられる任意の好適な手段(例えば、慣用的な外側ケーシング又はフェルール(5))によって、エーロゾル容器又はバイアル瓶に固定されてもよい。図1bで最もよく分かるように、本体(2)は、例えば、加圧されたエーロゾル配合物を分配するための出口通路(10)を有するチャンバ(6)を画定する。弁棒(12)は、チャンバ(6)を通って延び、閉鎖ないし準備位置(図1aに示される)と分配位置(図1bに示される)との間を移動可能である。弁棒(12)は、望ましくは、弁棒とチャンバ(6)の内壁との間に気密シールを提供する内側シール(16)および外側シール(18)が嵌合される。チャンバ(6)、弁棒(12)の外部寸法、およびシール(16および18)の位置は、チャンバ内(6)でシール(16および18)間に所定の容積が画定されるように配置される。これは、分配位置にある弁を示す、図1bを参照することによって最もよく理解される。図1aで分かるように、その閉鎖ないし準備位置では、弁棒(12)の周りのシール(16および18)間の空間は、エーロゾル配合物を収容する貯蔵器内に延びている。弁棒(12)がその分配位置に下向きに移動する時、シール(18)がチャンバを下に移動し、エーロゾル配合物はチャンバ(6)内に自由に入ることができる。弁棒が更に移動すると、シール(16)はチャンバ(6)に入り、それによって、シール(16および18)とチャンバ(6)の内壁との間に一定容積のエーロゾル配合物が閉じ込められる。弁棒がその分配位置に到達するとき、シール(18)は、出口通路(10)を通過し、それによって一定容積と出口通路(10)との直接連通が可能になり、それによって、一定容積の配合物を分配することができる。図示される弁では、ディスペンサーの容器内に収容されている加圧されたエーロゾル配合物によって発生する蒸気圧によって弁棒がその分配位置の方に外向きに付勢されるように、弁が配置される、特にシール(16および18)の断面積が配置される。シール(16および18)間における弁棒(12)の周りのエーロゾル配合物の(図1aに矢印で表されるような)自由流動を妨げないリブ(20)で弁棒の位置合わせを確実にしてもよい。
【0021】
図1aおよび図1bは、本発明で使用するのに好適な1つの例示的な分配弁を示し、内側の閉鎖ないし準備位置と外側の分配位置との間を移動可能な弁棒を有する他の分配弁、特に、他の定量分配弁も使用するのに好適である。細長い出口部材又は弁棒が外向きに移動すると作動又は噴射する分配弁の他の例は、米国特許第5,772,985号明細書に記載されており、その内容は参照により本明細書に組込まれる。細長い出口部材又は弁棒が移動すると作動又は噴射する分配弁の他の例は、米国特許第2,980,301号明細書、同3,176,887号明細書、同3,176,889号明細書、同3,591,059号明細書、および同4,506,803号明細書に記載されている。
【0022】
図2は、アダプター(30)の好ましい実施形態を組込んでいる吸入器の形態のディスペンサー(100)の好ましい実施形態の垂直断面図を概略的に示す。アダプターは、内側の閉鎖ないし準備位置と外側の分配位置との間を移動可能な弁棒(12)を備える分配弁(全体を15で示す)を装備したエーロゾル容器(25)を受容するように構成されている細長い又は円筒状の部分(32)を備える。分配弁は、典型的には、弁棒がフェルールを越えて延びている状態で、フェルール(5)によって容器上に嵌合される。アダプターは、また、典型的には、マウスピース部分(33)を備える。容器(25)を、特にフェルール(5)の位置で支持および保持して容器の移動を防止する取付けブロック(34)が提供される。取付けブロック(34)は、望ましくは、分配弁の外側通路(図示せず)がマウスピース部分(33)の軸に沿って位置合わせされるように配置される。アダプターはレバーの形態で提供される作動部材(35)を具備し、これは、ピボット(36)に取付けられ、使用者側の端部(37)を有し、アダプターから、特にアダプターの細長い又は円筒状の部分(32)から外部に延びている。作動部材(35)は、作動部材とアダプターの内部表面との間に取付けられる円錐形の圧縮バネ(39)の作用によって容器(25)の方に上向きに付勢される。弁棒(12)の外端部は、作動部材(35)に当って静止し、この部材は容器の方に上向きに付勢されるため、弁棒は通常、その閉鎖ないし準備位置で静止する。
【0023】
操作の際、患者は、作動部材(35)の使用者側端部(37)を下向きに押圧し、それと同時にマウスピース部分(33)を通して吸入する。このようにする際、患者は、作動部材(35)をバネ(39)の作用に逆らって下向きに回動させ、それによって弁棒(12)はその分配位置に外向きに移動できる。
【0024】
望ましくは、分配弁は、弁棒がディスペンサーの容器内に収容されている加圧されたエーロゾル配合物によって発生する蒸気圧によってその分配位置の方に外向きに付勢されるように配置される。従って、弁棒は、内部蒸気圧の影響でその分配位置に外向きに移動する。或いは、分配弁は、その分配位置の方に弁棒を付勢する弁棒の内端部に位置決めされる内部バネの付勢(図示せず)を具備してもよい。この場合、弁棒は、内部バネの付勢の影響でその分配位置に外向きに移動する。
【0025】
1回分の用量の薬剤を吸入した後、患者が作動部材(35)を解放するだけで、バネ(39)により作動部材はその静止位置に、従って、弁棒(12)はその閉鎖ないし準備位置に戻ることができる。このリセット作用は、患者が作動部材(35)を解放するとすぐ自動的に起こり、それによって実質上の計量チャンバとしての分配弁の内部部分が空気又は大気中の水分に曝され得る時間が最小限になる。内部バネの付勢を備える分配弁を具備する実施形態では、アダプターのバネは、その外側の分配位置からその閉鎖ないし準備位置に弁棒が戻ることに対応するバネの伸びの範囲で、内部バネによって加えられる圧縮力よりも、好適に更に大きい圧縮力を加えるように選択されることが認識されよう。
【0026】
図3は、アダプター(30)の別の好ましい実施形態を組込んでいる吸入器の形態のディスペンサー(100)の別の好ましい実施形態の垂直断面図を概略的に示す。図2に表されるディスペンサーと同様に、アダプターは、内側の閉鎖ないし準備位置と外側の分配位置との間を移動可能な弁棒(12)を備える分配弁(全体を15で示す)を装備したエーロゾル容器(25)を受容するように構成されている細長い又は円筒状の部分(32)を備える。アダプターは、また、マウスピース部分(33)、並びに、容器を、特にフェルール(5)の位置で支持および保持して容器の移動を防止する取付けブロック(34)を備える。アダプターは、スライダーの形態の作動部材(35)を具備する。作動部材(35)は、その断面が本質的にC字形であり、細長い又は円筒状の部分(32)と容器(25)との間の間隙内に配置され、使用者側の端部(37)が細長い又は円筒状の部分(32)の開放端から外向きに延び、もう一方の端部、内端部(38)は弁棒を把持する。作動部材の使用者側の端部(37)は、好ましくは、容器の閉鎖端(26)上で延びている凹状の窪みの形態で提供される。作動部材が、容器の方に上向きに付勢され、弁棒(12)が通常、閉鎖ないし準備位置で静止するように、円錐形の圧縮バネ(39)が作動部材(35)の内端部とアダプターの内部表面との間に取付けられる。
【0027】
操作の際、患者は、典型的には使用者側の端部の凹状の窪みに指を入れることによって、作動部材(35)の使用者側端部(37)を押し下げ、それと同時にマウスピース部分(33)を通して吸入する。このようにする際、患者は、作動部材(35)をバネ(39)の作用に逆らって下向きに移動させ、それによって弁棒(12)をその分配位置に引く。
【0028】
使用者が押下ないし圧迫力を加えると、弁棒がその分配位置に引かれるような作動機構(以下、「正の引出し作用」と称される)の配置は、分配弁内で内部バネの付勢を必要とすることなく、弁棒(12)を移動させるのに十分な力を提供することが保証されるという点で有利である。従って、医薬エーロゾル配合物中にバネを浸すことに関して起こり得る問題を回避することができる。起こり得るこのような問題には、例えば、バネの大きくて曲がっている表面領域上への薬剤の沈着、薬品とバネとの化学的相互作用、エーロゾル配合物が自由流動してチャンバを出入りすることに対する妨害などが挙げられる。正の引出し作用を具備するこの実施形態および他の(例えば、後述の)実施形態は、中立の付勢を有する分配弁、又は容器内に収容されている加圧されたエーロゾル配合物によって発生する蒸気圧によってのみ弁棒がその分配位置の方に付勢される分配弁と一緒に使用されるのに特に望ましい。
【0029】
1回分の用量の薬剤を吸入した後、患者が作動部材(35)を解放するだけで、バネ(39)により作動部材はその静止位置に、従って、弁棒(12)はその閉鎖ないし準備位置に戻ることができる。
【0030】
図4は、図3に示されるディスペンサー(100)の好ましい実施形態の変形の垂直断面図を概略的に示す。このディスペンサーは、バネ(39)がアダプター(30)上のポスト(40)によって取り付けられているねじりバネの形態であること以外、概ね図3に表されるディスペンサーに類似している。作動部材(35)の使用者側の端部(37)は、アダプター(30)の細長い又は円筒状の部分(32)の上縁部に当って機能する移動止め(41)を更に備える。この止め(41)は、望ましくは、可能な最大の棒移動を制限し、およびそれを画定する。作動部材(35)のもう一方の端部、内端部(38)は、弁棒(12)上に固定配置されている。操作の原理は、図3に示されるディスペンサーと共に記載されているものと類似である。
【0031】
図5は、アダプター(30)の追加の好ましい実施形態を組込んでいる吸入器の形態のディスペンサー(100)の追加の好ましい実施形態の垂直断面図を概略的に示す。このディスペンサーは、作動部材(35)が異なる形状を有すること以外、図3に表されるディスペンサーに類似している。特に、作動部材の使用者側の端部(37)は、望ましくは指ボタンの形態であり、アダプターの側壁、特にその細長い又は円筒状の部分(32)から外向きに延びている。更に、延長部(31)もまた、望ましくは指ボタンの形態であり、作動部材(35)の使用者側の端部(37)と協調して使用できるように、アダプターの外部表面の対応する位置に提供される。患者は、作動機構の使用者側の端部(37)と延長部(31)を一緒に圧迫することによって作動機構を操作する。操作の原理は、図3に示されるディスペンサーと共に記載されているものと類似である。
【0032】
図6は、アダプター(30)の別の好ましい実施形態を組込んでいる吸入器の形態のディスペンサー(100)の別の好ましい実施形態の垂直断面図を概略的に示す。図2〜図5に表される他の実施形態と同様に、アダプター(30)は、内側の閉鎖ないし準備位置と外側の分配位置との間を移動可能な弁棒(12)を備える分配弁(全体を15で示す)を典型的にはフェルール(5)で装備したエーロゾル容器(25)を受容するように構成されている細長い又は円筒状の部分(32)を備える。この実施形態では、アダプターは、弁棒(12)の外端部を保持してアダプターに対する弁棒の移動を防止する係止ブロック(44)を備える。係止ブロック(44)は、望ましくは、分配弁の出口オリフィス(図示せず)がマウスピース部分(33)の軸に沿って位置合わせされるように配置される。アダプターの細長い又は円筒状の部分(32)は、容器(25)の閉鎖した端部(26)上にエンドキャップを具備する。空気が流れるように、オリフィス(28)は、図示されるようにエンドキャップ(27)に、又は或いは、係止ブロック付近のアダプターに提供されてもよい。容器が弁棒の方に下向きにに付勢され、弁棒が通常、その内側の閉鎖ないし準備位置で静止するように、円錐形の圧縮バネ(39)は、エンドキャップ(27)の内部表面と容器の閉鎖した端部(26)の外側表面のと間で案内ポスト(29)に取付けられる。アダプターは、断面が本質的にU字形である作動部材(35)を備える。作動部材のベース部分(47)がアダプターの外部表面に隣接して位置し、側壁又はサイドフィンガー(side fingers)(46)がアダプターの内部に延びるように、作動部材が取り付けられる。側壁又はサイドフィンガー(side fingers)の上縁部(48)は、容器(25)の下側、特にフェルール(5)のショルダー(55)の下側に隣接している。ベース部分(47)は作動部材の使用者側部分の役割をし、望ましくは、凹状の窪み又は親指ボタンの形態である。アダプタ本体の適切なスロット(49)を通して側壁又はサイドフィンガー(46)を挿入することが容易であるように、側壁又はサイドフィンガー(46)は可撓性であってよい。側壁又はサイドフィンガー(46)は、患者がアダプター本体から作動部材(35)を取外すこと又は脱離させることを防止するため、突起(図示せず)を備えてもよい。
【0033】
操作の際、患者は、作動部材(35)のベース部分(47)をアダプター本体の方に押圧し、それと同時にマウスピース部分(33)を通して吸入する。このようにする際、患者は、作動部材(35)がバネ(39)の作用に逆らって容器(25)を上向きに押すようにし、それによって弁棒(12)を(相対的な移動で)その分配位置に引く。1回分の用量の薬剤を吸入した後、患者が作動部材(35)のベース部分(47)を解放するだけで、バネ(39)によって容器(25)はその静止位置に、従って、弁棒(12)はその内側の閉鎖ないし準備位置に自動的に戻ることができる。
【0034】
本発明の特に好ましい実施形態の本開示は、説明をするためだけのものであり、本発明は、その変更、変形、および改善に及ぶことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1a】内側の閉鎖ないし準備位置から外側の分配位置に移動可能な弁棒を備える、弁を通る垂直断面図である。
【図1b】内側の閉鎖ないし準備位置から外側の分配位置に移動可能な弁棒を備える、弁を通る垂直断面図である。
【図2】本発明のディスペンサーの好ましい実施形態の概略垂直断面図である。
【図3】本発明のディスペンサーの別の好ましい実施形態の概略垂直断面図である。
【図4】本発明のディスペンサーの追加の好ましい実施形態の概略垂直断面図である。
【図5】本発明のディスペンサーの別の好ましい実施形態の概略垂直断面図である。
【図6】本発明のディスペンサーの更に別の好ましい実施形態の概略垂直断面図である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数回分の用量の加圧エーロゾル配合物を分配するための、内側の閉鎖ないし準備位置と外側の分配位置との間を移動可能な弁棒を備える分配弁を装備した容器と一緒に使用されるアダプターであって、
前記容器を受容するように構成されるとともに、作動機構を備え、該作動機構は、使用者が押下ないし圧迫力を加えることにより該作動機構を操作して、該押下ないし圧迫力によって前記用量を分配するように構成され、該作動機構は、使用者が該作動機構を解放したときに、前記分配弁の前記弁棒がその閉鎖ないし準備位置に自動的に移動するように構成されている、アダプター。
【請求項2】
前記作動機構は、前記押下ないし圧迫力により、前記弁棒がその閉鎖ないし準備位置からその分配位置へと引き寄せられるように構成されている、請求項1に記載のアダプター。
【請求項3】
前記作動機構は、取付けブロックと作動部材とを備え、該取付けブロックは、前記容器を保持して、前記アダプターに対する該容器の移動を防止するように構成され、前記作動部材は、前記弁棒に接触して、前記容器に接近する方向へ付勢され、該弁棒をその閉鎖ないし準備位置で静止させるように構成されている、請求項1又は2に記載のアダプター。
【請求項4】
複数回分の用量の加圧エーロゾル配合物を使用者に分配するためのディスペンサーであって、
加圧エーロゾル配合物を収容するとともに、1回分の用量を分配するために内側の閉鎖ないし準備位置と外側の分配位置との間を移動可能な弁棒を備える分配弁を装備した容器と、
前記容器を受容するように構成されるとともに、作動機構を備え、該作動機構が、使用者が押下ないし圧迫力を加えることにより該作動機構を操作して、該押下ないし圧迫力によって前記用量を分配するように構成され、該作動機構は、使用者が該作動機構を解放したときに、前記分配弁の前記弁棒がその閉鎖ないし準備位置に自動的に移動するように構成されているアダプターと、
を具備するディスペンサー。
【請求項5】
前記作動機構は、前記押下ないし圧迫力により、前記弁棒がその閉鎖ないし準備位置からその分配位置へと引き寄せられるように構成されている、請求項4に記載のディスペンサー。
【請求項6】
前記作動機構は、取付けブロックと作動部材とを備え、該取付けブロックは、前記容器を保持して、前記アダプターに対する該容器の移動を防止するように構成され、前記作動部材は、前記弁棒に接触して、前記容器に接近する方向へ付勢され、該弁棒をその閉鎖ないし準備位置で静止させる、請求項4又は5に記載のディスペンサー。
【請求項7】
前記作動部材は、前記押下ないし圧迫力により、該作動部材が前記付勢に抗して前記容器から離れる方向へ移動するとともに、前記弁棒をその分配位置に移動させることができるように構成されている、請求項4に従属する請求項6に記載のディスペンサー。
【請求項8】
前記作動部材が前記弁棒に連結され、前記作動部材は、前記押下ないし圧迫力により該作動部材が前記付勢に抗して前記容器から離れる方向へ移動するとともに、前記弁棒をその分配位置に引き寄せることができるように配置されている、請求項5に従属する請求項6に記載のディスペンサー。
【請求項9】
前記作動機構は、前記弁棒を保持して、前記アダプターに対する該弁棒の移動を防止するように構成されている係止ブロックを備え、前記容器は、前記弁棒がその閉鎖ないし準備位置で静止するように前記弁棒に接近する方向へ付勢され、前記作動機構は、作動部材を更に備え、該作動部材は、前記押下ないし圧迫力により、該作動部材が前記付勢に抗して前記容器を前記弁棒から離れる方向へ移動して、それにより前記弁棒を前記容器に対してその分配位置に引き寄せるように構成されている、請求項5に記載のディスペンサー。
【請求項10】
前記分配弁は、前記加圧エーロゾル配合物によって発生する蒸気圧によって、前記弁棒がその分配位置に向けて付勢されるように構成されている、請求項4〜9のいずれか1項に記載のディスペンサー。
【請求項11】
前記分配弁が中立付勢を有する、請求項4、5、6、8および9のいずれか1項に記載のディスペンサー。
【請求項12】
前記分配弁は、前記弁棒の内端に位置決めされて該弁棒をその分配位置に向けて付勢する内部バネ付勢を備える、請求項7に記載のディスペンサー。
【請求項13】
前記分配弁が定量分配弁である、請求項4〜12のいずれか1項に記載のディスペンサー。
【請求項14】
前記分配弁がチャンバと出口通路とを更に備え、前記弁棒が、該チャンバ内に延びて、前記閉鎖ないし準備位置と前記分配位置との間を該チャンバに対して移動可能であり、前記弁棒は、外部表面を具備する形状を有し、前記チャンバは、内部表面を具備する内部形状を有し、それにより、移動可能な一定容積の加圧エーロゾル配合物をそれらの間に画定できるとともに、前記閉鎖ないし準備位置と前記分配位置との間を移動する間、前記弁棒が逐次的に、
(i)エーロゾル配合物を自由流動させて前記チャンバを出入できるようにし、
(ii)前記弁棒の前記外部表面と前記チャンバの前記内部表面との間で、加圧エーロゾル配合物のための閉鎖した一定容積を画定し、
(iii)前記閉鎖した一定容積が前記出口通路と連通して、該一定容積の加圧エーロゾル配合物を分配できるようになるまで、該閉鎖した一定容積の容積を減少させることなく、該閉鎖した一定容積と共に前記チャンバ内を移動する、
請求項13に記載のディスペンサー。
【請求項15】
前記加圧エーロゾル配合物が薬剤を含む、請求項4〜14のいずれか1項に記載のディスペンサー。
【請求項16】
前記加圧エーロゾル配合物が噴射剤を含む、請求項4〜15のいずれか1項に記載のディスペンサー。
【請求項17】
前記噴射剤がハイドロフルオロアルカンである、請求項16に記載のディスペンサー。
【請求項18】
前記噴射剤がHFA134a、HFA227およびこれらの混合物から選択される、請求項17に記載のディスペンサー。
【請求項19】
前記ディスペンサーが吸入器の形態を有する、請求項4〜18のいずれか1項に記載のディスペンサー。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−512937(P2006−512937A)
【公表日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−536030(P2004−536030)
【出願日】平成15年8月13日(2003.8.13)
【国際出願番号】PCT/US2003/025502
【国際公開番号】WO2004/024221
【国際公開日】平成16年3月25日(2004.3.25)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】