説明

オイルシール圧入治具

【課題】オイルシールの表裏逆転を確実に検知して、誤装着を確実に防止することができるオイルシール圧入治具を提供すること。
【解決手段】ホルダ部2と押圧シャフト部3と規制ピン部4とロック機構部5とを有する。外周押圧面35は、その内径がオイルシール8の内周側溝壁822の外径よりも大きく、中央押圧面45は、その外径がオイルシール8の外周側溝壁822の内径よりも小さくい。ロック機構部5は、押圧シャフト部3が後退位置に位置していると共に規制ピン部4がフラット位置に位置している際には、押圧シャフト部3とホルダ部2との相対移動を可能とさせるフリー状態とし、押圧シャフト部3が後退位置に位置していると共に規制ピン部4が突出位置に位置している際には、押圧シャフト部3とホルダ部2との相対移動を制限する制限状態とするよう構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルシールを装着穴に圧入する際に用いるオイルシール圧入治具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車用の自動変速機などの各種の機械装置においては、内部の油が外部に漏れることを防止するために、リング状のオイルシールが多数用いられている。
リング状のオイルシールは、ゴム等により構成されており、その内部にはその形状を維持するための心材が埋設されている場合が多い。また、オイルシールの形状としては様々なものが存在するが、単なるリング形状ではなく、その表側面と裏側面の形状が異なっている。本願において対象とするオイルシールは、全体形状がリング状を呈しており、その軸方向の表側面が平坦面であり、裏側面にはリング状の溝が形成され、その溝を挟む内外の溝壁(リップ部)を有しているものである。さらに裏側面は、外周側溝壁よりも内周側溝壁の方が軸方向寸法が小さいという形状を有している。
【0003】
このようなオイルシールを、表裏を逆転して装着穴に圧入・組み付けをした場合には、本来のオイルシール機能を発揮することができず、大きな問題を引き起こす可能性がある。そのため、オイルシールを圧入する際に用いる圧入治具には、オイルシールの表裏逆転した装着を未然に防止するための誤装着防止機能を具備させることが重要である。
従来より、種々のオイルシール圧入装置が提案されているが(例えば、特許文献1、2等参照)、簡易な構成で上記誤装着防止機能を具備するものは未だ開発されていない。
【0004】
【特許文献1】特開2005−205558号公報
【特許文献2】特開2005−034944号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、オイルシールの表裏逆転を確実に検知して、誤装着を確実に防止することができるオイルシール圧入治具を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、全体形状がリング状を呈し、その軸方向の表側面が平坦面であり、裏側面にはリング状の溝が形成されていると共にその外周側溝壁よりも内周側溝壁の方が軸方向寸法が小さいオイルシールを、該オイルシールを装着すべき部品に設けられた円形の装着穴に圧入する際に用いるオイルシール圧入治具であって、
上記オイルシールを外周側から保持するための円筒状のホルダ部と、
該ホルダ部の内部において軸方向に摺動可能に配設された押圧シャフト部と、
該押圧シャフト部の内部において軸方向に摺動可能に配設された規制ピン部と、
上記ホルダ部と上記押圧シャフト部との係合状態を変更するためのロック機構部とを有し、
上記押圧シャフト部の先端にはリング状の外周押圧面が形成され、その内部に上記規制ピン部の先端よりなる中央押圧面が形成されており、
上記外周押圧面は、その内径が上記オイルシールの上記内周側溝壁の外径よりも大きく、その外径が上記オイルシールの表側面の外径と同じ又はそれ以下である形状を呈しており、
上記中央押圧面は、その外径が上記オイルシールの上記外周側溝壁の内径よりも小さく、さらに、その外径が上記オイルシールの表側面の内径よりも大きい形状を呈しており、
上記押圧シャフト部は、上記外周押圧面が上記ホルダ部の先端面と面一となる前進位置と、上記外周押圧面が上記ホルダ部の上記先端面から上記オイルシールの厚み寸法に相当する分だけ内方に後退した後退位置との間で、上記ホルダ部に対して相対移動可能に配設されており、
上記規制ピン部は、上記中央押圧面が上記外周押圧面と面一となるフラット位置と、上記中央押圧面が上記外周押圧面から突出した突出位置との間で、上記押圧シャフト部に対して相対移動可能に配設されており、かつ、上記規制ピン部は、上記突出位置に位置する方向に弾性部材によって付勢されており、
上記ロック機構部は、上記押圧シャフト部が上記後退位置に位置していると共に上記規制ピン部が上記フラット位置に位置している際には、上記押圧シャフト部と上記ホルダ部との相対移動を可能とさせるフリー状態とし、上記押圧シャフト部が上記後退位置に位置していると共に上記規制ピン部が上記突出位置に位置している際には、上記押圧シャフト部と上記ホルダ部との相対移動を制限する制限状態とするよう構成されていることを特徴とするオイルシール圧入治具にある(請求項1)。
【0007】
本発明のオイルシール圧入治具は、上記のごとく、互いに上記のごとく相対移動可能設けられた上記ホルダ部、押圧シャフト部、及び規制ピン部を有し、さらに、上記ロック機構部を有している。これにより、上記オイルシールを表裏逆転して装着することを確実に防止することができる。
【0008】
すなわち、上記オイルシールを圧入する際には、まず、上記ホルダ部内における上記押圧シャフト部を、上記後退位置に待機させて、上記ホルダ部内にオイルシールを挿入して保持させるためのスペースを確保する。
このとき、上記押圧シャフト部内の上記規制ピン部は、上記弾性部材による付勢力によって、その中央押圧面を上記押圧シャフト部の外周押圧面から突出させた突出位置に位置する状態となる。
【0009】
このような初期状態において、上記ホルダ部内にオイルシールを挿入保持させた場合に、オイルシールの向きが正常な状態、つまり、表側面の平坦面を上記押圧シャフト部の先端面側に対面させた場合には、その平坦面が上記規制ピン部の上記中央押圧面に当接し、オイルシールの挿入に伴って、上記弾性部材による付勢力に抗して規制ピン部が後退し、上記フラット位置に位置する状態となる。
【0010】
この場合、上記押圧シャフト部が上記後退位置に位置していると共に上記規制ピン部が上記フラット位置に位置している状態となるので、上記ロック機構部の機能によって、上記押圧シャフト部と上記ホルダ部との相対移動が可能となるフリー状態が実現する。そのため、上記ホルダ部の先端面を、オイルシールを装着すべき部品の上記装着穴の周囲に当接させた状態で、上記押圧シャフト部を前進させて上記前進位置まで相対移動させることにより、押圧シャフト部に押されてオイルシールがホルダ部から装着穴内へと移動する。そして、オイルシールは、平坦面である表側面を外方に向けて正常に装着穴内に装着される。
【0011】
一方、上記初期状態において、上記ホルダ部内に挿入保持させたオイルシールの向きが異常である場合、つまり、溝がある裏側面を上記押圧シャフト部の先端面側に対面させた場合には、次のように圧入作業が不能となる。すなわち、オイルシールの裏側面においては、上記外周側溝壁よりも内周側溝壁の方が軸方向寸法が小さい。そして、上記押圧シャフト部の外周押圧面は上記内周側溝壁の外径よりも大きく、一方、上記規制ピン部の上記中央押圧面の外径は上記オイルシールの上記外周側溝壁の内径よりも小さい。そのため、ホルダ部内にオイルシールが挿入される際に、その裏側面の外周側溝壁は、中央押圧面に接触することなく外周押圧面まで達し、一方、内周側溝壁は外周側溝壁よりも寸法が小さいので、中央押圧面を外周押圧面の位置まで押し進めることができない。
【0012】
そして、この場合は、上記押圧シャフト部が上記後退位置に位置していると共に上記規制ピン部が上記突出位置に位置している状態となるので、上記ロック機構部の機能によって、上記押圧シャフト部と上記ホルダ部との相対移動を制限する制限状態が実現する。そのため、上記ホルダ部の先端面を、オイルシールを装着すべき部品の上記装着穴の周囲に当接させた状態で、上記押圧シャフト部を前進させようとしても、上記後退位置から上記前進位置への相対移動が制限されているので、オイルシールを押圧シャフト部によって押し出すことができない。そのため、オイルシールの表裏逆転状態での装着穴への圧入作業そのものが阻止され、確実に誤装着が防止される。
【0013】
このように、本発明のオイルシール圧入治具を用いれば、確実に、オイルシールの誤装着を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のオイルシール圧入治具は、上記オイルシール圧入治具は、上記押圧シャフト部を摺動可能に支持する軸支持部から延設されたハンドル部を有し、該ハンドル部には、上記装着穴を設けた上記部品に対して上記オイルシールを圧入する圧入方向と対向する方向から上記部品に当接する当接部が設けられていることが好ましい(請求項2)。
上記ハンドル部が無くても、作業者が上記ホルダ部を把持してその先端面を上記部品の装着穴の周囲に当接させてから作業を開始することも可能ではある。しかし、上記ハンドル部を設けた場合には、作業者が上記ハンドル部を把持した状態で上記当接部を上記部品に当接させることによって確実な位置決めをした状態で上記圧入入作業を行うことができるので、より安定した作業を行うことができる。
【0015】
また、上記部品の上記装着穴を設けた面の反対側面には、上記装着穴と同軸上に該装着穴よりも小径の貫通穴が形成されており、上記当接部は該貫通穴に圧入方向と反対側から挿入可能な形状を有していることが好ましい(請求項3)。この場合には、より確実な位置決めが可能である。
【0016】
また、上記軸支持部には、該軸支持部に対して上記押圧シャフト部を相対的に進退させるための操作レバー部が配設されていることが好ましい(請求項4)。
この場合には、上記ハンドル部を作業者が持ってオイルシール圧入治具を所定の位置に位置決めしてセットした後、上記操作レバー部を操作するだけで押圧シャフト部の前進操作を進めることができ、作業性を向上させることができる。
【0017】
また、上記操作レバー部は、トグルにより構成されていることが好ましい(請求項5)。
いわゆるトグルは、てこの原理を利用して操作力を増長させて上記押圧シャフト部の前進操作力に変換することができる。そのため、このトグルを利用した上記操作レバー部を設けることによって、圧入作業の作業性をさらに向上させることができる。
【0018】
また、上記ロック機構部は、様々な構造のものを採用することができるが、例えば次のように構成することが好ましい。
すなわち、上記ホルダ部と上記押圧シャフト部と上記規制ピン部とは、筒状の上記ホルダ部の内側に筒状の上記押圧シャフト部が存在し、さらにその内側に上記規制ピン部が存在する三重管部を有しており、
該三重管部における上記押圧シャフト部には径方向内外に貫通する内外連通穴が形成されており、
該内外連通穴には、上記規制ピン部が上記フラット位置に位置している際には上記押圧シャフト部の外周面よりも内方に没入可能であると共に、上記規制ピン部が上記突出位置に位置している際には上記押圧シャフト部の外周面よりも外方に突出するロック部材が配設されており、
上記ホルダ部の内周面には、上記押圧シャフト部が上記後退位置に位置する際に上記内外連通穴から突出した上記ロック部材の進入を可能とするホルダ溝部が形成されており、
該ホルダ溝部は、進入した上記ロック部材と軸方向において当接して上記押圧シャフト部の上記後退位置から上記前進位置への相対移動を制限する先端当接壁部が形成されていることが好ましい(請求項6)。
【0019】
この場合には、上記三重管部における上記押圧シャフト部に設けた上記内外連通穴と上記ロック部材の存在によって、上記ホルダ部と押圧シャフト部との相対移動の許可と禁止の状態を、上記規制ピン部の相対位置によって制御することができるので、上記ロック機構部を比較的簡単な構成で実現することができる。
【0020】
また、この場合、上記規制ピン部の外周面には、該規制ピン部が上記フラット位置に位置する際に上記内外連通穴から上記押圧シャフト部の内周面より内部に突出するロック部材の進入を可能とすると共に、上記規制ピン部が上記突出位置に位置する際には上記ロック部材の進入を不能とするよう設けられたピン溝部が形成されており、
上記ロック部材は、上記内外連通穴内を径方向に移動可能なように配設されており、
上記ロック部材の径方向寸法は、上記内外連通穴の深さ寸法よりも大きく、上記内外連通穴の深さ寸法に上記ホルダ溝部の深さ寸法を加えた寸法よりも小さく、かつ、上記内外連通穴の深さ寸法に上記ピン溝部の深さ寸法を加えた寸法よりも小さいことが好ましい(請求項7)。
この場合には、上記ロック部材の径方向の位置によってロック機構部の機能を容易に実現することができる。
【0021】
また、上記ロック部材は、外形が略真円球の硬球部材であることが好ましい(請求項8)。
略真円球の硬球部材は、それ自体がいずれの方向へ向いてもその機能を果たすことができ、非常にスムーズな動作を実現することができる。なお、この硬球部材は、スムーズな移動が確保できれば、略円柱状、略円盤状、あるいはその他の形状に変えてもよい。
【0022】
また、上記ロック部材は、上記内外連通穴内における回動支点を中心に回動可能に配設されたカム部材よりなり、
該カム部材は、その内周側に設けたカム操作突起部を上記規制ピン部の外周面に設けたカム係合溝に係合させてあり、上記規制ピン部の相対移動に伴って回動して上記押圧シャフト部の外周面からカム当接部の出没が制御可能に構成されており、
上記規制ピン部が上記突出位置に位置する際に上記カム当接部が上記押圧シャフト部の外周面から突出すると共に、上記規制ピン部が上記フラット位置に位置する際には上記カム当接部が上記押圧シャフト部の外周面から上記内外連通穴の内部に没入するよう構成されていることも好ましい(請求項9)。
この場合にも、上記ロック機構部の機能を確実に発揮させることができる。
【0023】
また、上記規制ピン部には、径方向外方に延設されて上記ホルダ部の外方に突出する復帰レバー部が接続されており、上記押圧シャフト部及び上記ホルダ部には、上記復帰レバー部と干渉しないように貫通穴が設けられていることが好ましい(請求項10)。
この場合には、正常な圧入作業が終了した後に、押圧シャフト部が上記前進位置に位置したままになった際に、その内部の上記規制ピン部を介して上記後退位置まで押し戻すことができ、上述した初期状態を容易に復帰させることができる。
【実施例】
【0024】
(実施例1)
本発明の実施例に係るオイルシール圧入治具につき、図1〜図8を用いて説明する。
本例のオイルシール圧入治具1は、図1、図3に示すごとく、全体形状が中央に中空部80を設けたリング状を呈し、その軸方向の表側面81が平坦面であり、裏側面82にはリング状の溝820が形成されていると共にその外周側溝壁821よりも内周側溝壁822の方が軸方向寸法が小さいオイルシール8を、該オイルシール8を装着すべき部品9(図4、図6)に設けられた円形の装着穴90に圧入する際に用いるオイルシール圧入治具である。なお、本例の上記部品9は、自動車用自動変速機のケース部品である。
【0025】
上記オイルシール圧入治具1は、図2、図3に示すごとく、オイルシール8を外周側から保持するための円筒状のホルダ部2と、ホルダ部2の内部において軸方向に摺動可能に配設された押圧シャフト部3と、押圧シャフト部3の内部において軸方向に摺動可能に配設された規制ピン部4と、ホルダ部2と押圧シャフト部3との係合状態を変更するためのロック機構部5とを有している。
【0026】
上記押圧シャフト部3の先端にはリング状の外周押圧面35が形成され、その内部に上記規制ピン部4の先端よりなる中央押圧面45が形成されている。
上記外周押圧面35は、その内径がオイルシール8の裏側面82の内周側溝壁822の外径よりも大きく、その外径がオイルシール8の表側面81の外径と同じ又はそれ以下である形状を呈している。上記中央押圧面45は、その外径がオイルシール8の外周側溝壁821の内径よりも小さく、さらに、その外径がオイルシール8の表側面81の内径よりも大きい形状を呈している。
【0027】
上記押圧シャフト部3は、外周押圧面35がホルダ部2の先端面25と面一となる前進位置P31(図6)と、外周押圧面35がホルダ部2の先端面25からオイルシール8の厚み寸法に相当する分だけ内方に後退した後退位置P32(図2、図3)との間で、上記ホルダ部2に対して相対移動可能に配設されている。
【0028】
上記規制ピン部4は、中央押圧面45が外周押圧面35と面一となるフラット位置P41(図3)と、中央押圧面45が外周押圧面35から突出した突出位置P42との間で、押圧シャフト部3に対して相対移動可能に配設されており、かつ、規制ピン部4は、突出位置P42(図2)に位置する方向に弾性部材151によって付勢されている。
【0029】
上記ロック機構部5は、押圧シャフト部3が後退位置P32に位置していると共に規制ピン部4がフラット位置P41に位置している際には、押圧シャフト部3とホルダ部2との相対移動を可能とさせるフリー状態とし、押圧シャフト部3が後退位置P32に位置していると共に規制ピン部4が突出位置P42に位置している際には、押圧シャフト部3とホルダ部2との相対移動を制限する制限状態とするよう構成されている。
以下、さらに詳しく説明する。
【0030】
図2に示すごとく、押圧シャフト部3は、先端側の筒状部31と、連結部32を介してその後端側に延設された延長ロッド部33とを有している。この延長ロッド部33は、後述する軸支持部61を貫通して後述するトグルにより構成された操作レバー部7に連結されている。
【0031】
押圧シャフト部3の筒状部31は、その基端側の雌ネジ部319を上記連結部32に設けられた雄ネジ部321に螺着することにより固定されている。また、筒状部31の内部には、上記規制ピン部4を摺動可能に収容するピン収容穴310を有している。ピン収容穴310の基端側に上記規制ピン部4の基端側大径部49を収容可能な基端大径穴部318と、ピン収容穴310の先端側において若干大径化して弾性部材151としての第1スプリングを収容する第1バネ収容穴部316と、さらに大径化して上記規制ピン部4の中央押圧面45の外周部を収容可能な先端大径穴部315とを連ねて構成されている。
また、上記筒状部31の外形状は、上記外周押圧面35を設けた先端部近傍のみが大径化し、その後端側は一定の外径寸法を有している。
【0032】
また、同図に示すごとく、上記押圧シャフト部3に外挿された上記ホルダ部2は、上記押圧シャフト部3の筒状部31を収容するシャフト収容穴210を有している。シャフト収容穴210の先端側は、上記筒状部31の外周押圧面35の外径およびオイルシール8の外径に対応した内径寸法に設けられた保持穴部211となっており、それよりも後端寄りは筒状部31の外径に合わせて若干小径化されている。また、シャフト収容穴210の後端には、第2スプリング152を収容する第2バネ収容穴216が設けられている。
【0033】
そして、本例のホルダ部2は、第2スプリング152によって、押圧シャフト部3の先端側に向かって相対的に付勢されている。そのため、自然状態においては、ホルダ部2の先端面25が、押圧シャフト部3の外周押圧面35より前方に突出した状態、つまり上記押圧シャフト部3の後退位置の状態となるよう構成されている。また、この後端位置において、ホルダ部2の先端面25と押圧シャフト部3の外周押圧面35との軸方向距離が、オイルシール8の厚みに相当する寸法となるように、保持穴部211の軸方向寸法が調整されている。
【0034】
また、同図に示すごとく、上記規制ピン部4は、押圧シャフト部3の筒状部31のピン収容穴310に当接する一般部417と、後端側において基端大径穴部318に収容された基端側大径部49と、先端側において大径化して先端大径穴部315に収容される中央押圧面形成部450とを有している。本例の中央押圧面形成部450は、規制ピン部4の上記一般部417と別体として作製されたものを止め具46を用いて一体化させてある。
【0035】
また、規制ピン部4は、上述したごとく、第1バネ収容穴316に配設された第1スプリング151によって、押圧シャフト部3の先端側に向かって相対的に付勢されている。そのため、自然状態においては、規制ピン部4の中央押圧面45が、押圧シャフト部3の外周押圧面35より前方に突出した状態、つまり上記規制ピン部4の上記突出位置P42の状態となるよう構成されている。また、この突出位置P42において、中央押圧面45と押圧シャフト部3の外周押圧面35との軸方向距離が、オイルシール8の上記外周側溝壁821と内周側溝壁822の軸方向寸法差に相当する寸法となるように、上記基端大径穴部318の軸方向寸法が調整されている。
【0036】
また、ロック機構部5は、以下に示すロック部材51を有する構成となっている。
同図に示すごとく、まず、ホルダ部2と押圧シャフト部3と規制ピン部4とは、筒状のホルダ部2の内側に筒状の押圧シャフト部3である筒状部31が存在し、さらにその内側に規制ピン部4が存在する三重管部を有している。
三重管部における押圧シャフト部3には径方向内外に貫通する内外連通穴530が形成されている。そして、内外連通穴530には、規制ピン部4がフラット位置P41(図3)に位置している際には押圧シャフト部3の外周面よりも内方に没入可能であると共に、規制ピン部4が突出位置P42に位置している際には押圧シャフト部3の外周面よりも外方に突出するロック部材51が配設されている。
【0037】
一方、ホルダ部2の内周面には、押圧シャフト部3が上記後退位置P32に位置する際に内外連通穴530に対面してロック部材51の進入を可能とするホルダ溝部520が形成されている。また、ホルダ溝部520は、押圧シャフト部3の外周面から外方に突出したロック部材51と軸方向において当接して押圧シャフト部3を後退位置P32から前進位置P31(図6)への相対移動を制限する先端当接壁部521が形成されている。
【0038】
また、規制ピン部4の外周面には、規制ピン部4がフラット位置P41(図3)に位置する際に内外連通穴530に対面してロック部材51の進入を可能とすると共に、規制ピン部4が突出位置P32に位置する際にはロック部材51の進入を不能とするよう設けられたピン溝部540が形成されている。そして、ロック部材51は、内外連通穴530内を径方向に移動可能なように配設されており、ロック部材51の径方向寸法(外径)は、内外連通穴530の深さ寸法よりも大きく、内外連通穴530の深さ寸法にホルダ溝部520の深さ寸法を加えた寸法よりも小さく、かつ、内外連通穴530の深さ寸法にピン溝部540の深さ寸法を加えた寸法よりも小さい。そして、本例では、ロック部材51は、外形が略真円球の硬球部材とした。
【0039】
また、同図に示すごとく、オイルシール圧入治具1は、押圧シャフト部3を摺動可能に支持する軸支持部61から延設されたハンドル部62を有している。ハンドル部62は、軸支持部61から押圧シャフト部3の軸方向と直交する径方向に伸ばされた基端連結部621と、該基端連結部621の先端から軸方向に延びるハンドル本体620と、その先端側において略直角に曲げられて上記押圧シャフト部3の軸線位置まで延びる先端連結部623と、その先端において押圧シャフト部3の軸線と同軸上に設けられた円形状の当接部624とを有している。
【0040】
当接部624は、装着穴90を設けた部品9(図4)に対してオイルシール8を圧入する圧入方向と対向する方向から部品9に当接する部位である。本例では、図4に示すごとく、上記部品9の装着穴90を設けた面の反対側面には、装着穴90と同軸上に装着穴90よりも小径の貫通穴94が形成されており、上記当接部624はこの貫通穴94に圧入方向と反対側から挿入可能な形状を有している。
【0041】
また、図2に示すごとく、軸支持部61には、軸支持部61に対して押圧シャフト部3を相対的に進退させるための操作レバー部7が配設されている。この操作レバー部7は、同図に示すごとく、トグルにより構成されている。具体的には、操作レバー部7は、軸支持部61の第1支持点711に一端側を回動可能に固定したリンク部72と、押圧シャフト部3の延長ロッド部33の後端に設けられた第2支持点712に一端側を回動可能に固定した略L字状のレバー本体部73とにより構成されている。
【0042】
レバー本体部73はそのL字状の屈曲部位に設けられた位置にある第3支持点713において上記リンク部72の他端側と回動可能に連結されている。そして、リンク部72における第1支持点711と第3支持点713との距離L1と、レバー本体部73における第2子時点712と第3支持点713との距離L2と、レバー本体部73における第2支持点712と異なる方の端部から第3支持点713までの距離L3とは、L2<L1<L3の関係に調整されている。
【0043】
そして、図2に示すごとく、押圧シャフト部3を最大限後退させた初期状態においては、操作レバー部7は、上記第1支持点711、第3支持点713、第2支持点712をその順で略一直線に並べた状態となるように構成されている。また、図6に示すごとく、レバー本体部73を操作して押圧シャフト部3を最大限前進させた圧入完了状態においては、第1支持点711の後方に第2支持点712が存在し、さらにその後方側に第3支持点713が存在する状態となるよう構成されている。
【0044】
また、図2に示すごとく、規制ピン部4には、径方向外方に延設されてホルダ部2の外方に突出する復帰レバー部79が接続されており、押圧シャフト部3及びホルダ部2には、復帰レバー部79と干渉しないように貫通穴792、793が設けられている。
【0045】
次に、上記構成のオイルシール圧入治具1を用いて、部品9の装着穴90にオイルシール8を圧入する作業について説明する。
図2に示すごとく、上記操作レバー部7を操作して、押圧シャフト部3を最大限後退させた初期状態を実現する。この状態においては、前述したごとく、ホルダ部2の先端面25から押圧シャフト部3の外周押圧面35がオイルシール8の厚み分だけ相対的に後退し、一方、規制ピン部4の中央押圧面45がオイルシール8の外周側溝壁821と内周側溝壁822の軸方向寸法差分だけ外周押圧面35よりも相対的に前進した状態となっている。
【0046】
また、初期状態におけるロック機構部5の状態は、押圧シャフト部3が後退位置P32に位置していると共に規制ピン部4が突出位置P42に位置しているので、押圧シャフト部3とホルダ部2との相対移動を制限する制限状態となっている。具体的には、内外連通穴530内のロック部材51が、規制ピン部4のピン溝部540内に進入することなく、ホルダ部2のホルダ溝部520内に進入しており、このロック部材51が干渉して押圧シャフト部3がホルダ部2に対して相対的に前進することができない状態となっている。
【0047】
次に、図3に示すごとく、この初期状態のオイルシール圧入治具1のホルダ部2にオイルシール8を挿入保持させる。
まず、オイルシール8の向きが正常な状態、つまり、表側面の平坦面81を押圧シャフト部3の先端面側に対面させた場合には、その平坦面81が規制ピン部4の中央押圧面45に当接し、オイルシール8の挿入に伴って、上記第1スプリング151による付勢力に抗して後退し、フラット位置P41に位置する状態となる。
【0048】
これにより、図3、図4、図6に示すごとく、押圧シャフト部3が後退位置P32に位置していると共に規制ピン部4がフラット位置P41に位置している状態となるので、上記ロック機構部5の機能によって、押圧シャフト部3とホルダ部2との相対移動を可能とさせるフリー状態が実現する。すなわち、押圧シャフト部3が後退位置P32に位置していると共に規制ピン部4がフラット位置P41に位置している状態の場合には、内外連通穴530内のロック部材51が、規制ピン部4のピン溝部540に対面する状態となり、その内部に進入可能となる。そのため、この状態で押圧シャフト部3をホルダ部2に対して相対的に前進させた場合には、ホルダ溝部520内に進入していたロック部材51が後退して規制ピン部4のピン溝部540に進入することができ、ロック部材51とホルダ部2のホルダ溝部520の先端当接壁部521との干渉が無くなり、上記フリー状態が得られる。
【0049】
次に、図4に示すごとく、オイルシール圧入治具1を移動させ、当接部624を部品9の装着穴90を設けた面の反対側面から貫通穴94に挿入することにより、オイルシール圧入治具1の位置合わせが完了する。この作業は、作業者が上記ハンドル部62を把持して行うことによって比較的容易に行うことができる。
【0050】
次に、同図に示すごとく、上記操作レバー部7を操作して、押圧シャフト部3を前進させる。
ホルダ部2の先端面25が部品9の装着穴90の周囲に当接するまでは、押圧シャフト部3とホルダ部2との相対位置は変化しない。
【0051】
次に、図6に示すごとく、ホルダ部2の先端面25が部品9の装着穴90の周囲に当接した後、さらに押圧シャフト部3を前進させると、ホルダ部2に対して相対的に押圧シャフト部3が前進し、上記後退位置P32(図4)から前進位置P31へと相対的に移動する。この相対移動に伴って、押圧シャフト部3に押されてオイルシール8がホルダ部2から装着穴90内へ移動する。そして、オイルシールは、平坦面81である表側面を外方に向けて正常に装着穴90内に装着される。その後、操作レバー7を操作して押圧シャフト部3を後退させ、部品9から分離して作業が完了する。
【0052】
一方、図7に示すごとく、上記初期状態において、ホルダ部2内に挿入保持させたオイルシール8の向きが異常である場合、つまり、溝820がある裏側面82を押圧シャフト部3の先端面側に対面させた場合には、圧入作業が不能となる。
すなわち、オイルシール8の裏側面82においては、外周側溝壁821よりも内周側溝壁822の方が軸方向寸法が小さい。そして、押圧シャフト部3の外周押圧面35は、その内径がオイルシール8の内周側溝壁822の外径よりも大き形状を呈しており、一方、規制ピン部4の中央押圧面45は、その外径がオイルシール8の外周側溝壁821の内径よりも小さい。そのため、ホルダ部2内にオイルシール8が挿入される際に、その裏側面82の外周側溝壁821は、中央押圧面45に接触することなく外周押圧面35まで達する。また、内周側溝壁822は外周側溝壁821よりも軸方向寸法が小さいので、中央押圧面45を外周押圧面35の位置まで押し進めることができない。
【0053】
そのため、オイルシール8のホルダ部2への挿入方向が表裏逆転して異常な場合には、押圧シャフト部3が後退位置P32に位置していると共に規制ピン部4が突出位置P42に位置している状態のまま維持されるので、上記ロック機構部5の機能によって、押圧シャフト部3とホルダ部2との相対移動を制限する制限状態が維持される。それ故、図8に示すごとく、上記と同様にホルダ部2の先端面25を、オイルシール8を装着すべき部品9の装着穴90の周囲に当接させた状態で、さらに押圧シャフト部3を前進させようとしても、後退位置P32から前進位置P31への相対移動がロック機構部5によって制限されているので、オイルシール8を押圧シャフト部3によってホルダ部2から外へ押し出すことができない。その結果、オイルシール8の表裏逆転状態での装着穴90への圧入作業そのものが阻止され、確実に誤装着が防止される。
【0054】
このように、本例のオイルシール圧入治具1を用いれば、特に複雑な検知装置を別途設ける必要もなく、確実に、オイルシール8の誤装着を防止することができる。
【0055】
(実施例2)
本例は、実施例1におけるロック機構部の構成を変更した例である。
すなわち、図9、図10に示すごとく、本例のロック機構部502を構成するロック部材512として、真円球ではなく、略円柱状のものを用いた。その他は実施例1と同様である。
この場合にも、図9に示すごとく、正常にオイルシール8をホルダ部2にセットした場合には、押圧シャフト部3が後退位置P32に位置していると共に規制ピン部4がフラット位置P41に位置している状態となるので、内外連通穴530内のロック部材512が、規制ピン部4のピン溝部540に対面する状態となり、その内部に進入可能となる。そのため、この状態で押圧シャフト部3をホルダ部2に対して相対的に前進させた場合には、ホルダ溝部520内に進入していたロック部材512が後退して規制ピン部4のピン溝部540に進入することができ、ロック部材512とホルダ部2のホルダ溝部520の先端当接壁部521との干渉が無くなり、フリー状態が得られる。
【0056】
また、図10に示すごとく、オイルシール8のホルダ部2への挿入方向が表裏逆転して異常な場合には、押圧シャフト部3が後退位置P32に位置していると共に規制ピン部4が突出位置P42に位置している状態のまま維持されるので、ロック部材512とホルダ溝部520の先端当接壁部521とが干渉する状態が維持され、押圧シャフト部3とホルダ部2との相対移動を制限する制限状態が維持される。それ故、上記と同様に、オイルシール8の表裏逆転状態での装着穴90への圧入作業そのものが阻止され、確実に誤装着が防止される。
その他は実施例1と同様の作用効果が得られる。
【0057】
(実施例3)
本例も、実施例1におけるロック機構部の構成を変更した例である。
すなわち、図11、図12に示すごとく、本例のロック機構部503は、ロック部材として、内外連通穴530内における回動支点539を中心に回動可能に配設されたカム部材513を採用した。
【0058】
カム部材513は、その内周側に設けたカム操作突起部514を規制ピン部4の外周面に設けたカム係合溝545に係合させてあり、規制ピン部4の相対移動に伴って回動して押圧シャフト部3の外周面からカム当接部515の出没が制御可能に構成されている。そして、規制ピン部4が突出位置P42に位置する際にカム当接部515が押圧シャフト部3の外周面から突出すると共に、規制ピン部4がフラット位置P41に位置する際にはカム当接部515が押圧シャフト部3の外周面から内外連通穴530の内部に没入するよう構成されている。
【0059】
そのため、図11に示すごとく、正常にオイルシール8をホルダ部2にセットした場合には、押圧シャフト部3が後退位置P32に位置していると共に規制ピン部4がフラット位置P41に位置している状態となるので、内外連通穴530内のカム部材513のカム当接部515が、内外連通穴530内に収容された状態となり、上記フリー状態が得られる。
【0060】
また、図12に示すごとく、オイルシール8のホルダ部2への挿入方向が表裏逆転して異常な場合には、押圧シャフト部3が後退位置P32に位置していると共に規制ピン部4が突出位置P42に位置している状態のまま維持されるので、カム部材513のカム当接部515とホルダ溝部520の先端当接壁部521とが干渉する状態が維持され、押圧シャフト部3とホルダ部2との相対移動を制限する制限状態が維持される。それ故、上記と同様に、オイルシール8の表裏逆転状態での装着穴90への圧入作業そのものが阻止され、確実に誤装着が防止される。
その他は実施例1と同様の作用効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】実施例1における、オイルシールの形状を示す、(a)表側から見た説明図、(b)裏側から見た説明図、(c)A−A線矢視断面図。
【図2】実施例1における、オイルシール圧入治具の初期状態を示す説明図。
【図3】実施例1における、オイルシール圧入治具に正常にオイルシールをセットした状態を示す説明図。
【図4】実施例1における、オイルシール圧入治具に正常にオイルシールをセットした状態のまま装着穴に対面させた状態を示す説明図。
【図5】図4のB−B線矢視断面図。
【図6】実施例1における、オイルシール圧入治具を用いて正常にオイルシールの圧入が完了した示す説明図。
【図7】実施例1における、オイルシール圧入治具に表裏逆転してオイルシールをセットした状態を示す説明図。
【図8】実施例1における、オイルシール圧入治具に表裏逆転してオイルシールをセットした状態のまま装着穴に対面させた状態を示す説明図。
【図9】実施例2における、オイルシール圧入治具に正常にオイルシールをセットした状態を示す説明図。
【図10】実施例2における、オイルシール圧入治具に表裏逆転してオイルシールをセットした状態を示す説明図。
【図11】実施例3における、オイルシール圧入治具に正常にオイルシールをセットした状態を示す説明図。
【図12】実施例3における、オイルシール圧入治具に表裏逆転してオイルシールをセットした状態を示す説明図。
【符号の説明】
【0062】
1 オイルシール圧入治具
2 ホルダ部
3 押圧シャフト部
35 外周押圧面
4 規制ピン部
45 中央押圧面
5 ロック機構部
51、512、513 ロック部材
520 ホルダ溝部
521 先端当接壁部
530 内外連通穴
540 ピン溝部
62 ハンドル部
7 操作レバー部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体形状がリング状を呈し、その軸方向の表側面が平坦面であり、裏側面にはリング状の溝が形成されていると共にその外周側溝壁よりも内周側溝壁の方が軸方向寸法が小さいオイルシールを、該オイルシールを装着すべき部品に設けられた円形の装着穴に圧入する際に用いるオイルシール圧入治具であって、
上記オイルシールを外周側から保持するための円筒状のホルダ部と、
該ホルダ部の内部において軸方向に摺動可能に配設された押圧シャフト部と、
該押圧シャフト部の内部において軸方向に摺動可能に配設された規制ピン部と、
上記ホルダ部と上記押圧シャフト部との係合状態を変更するためのロック機構部とを有し、
上記押圧シャフト部の先端にはリング状の外周押圧面が形成され、その内部に上記規制ピン部の先端よりなる中央押圧面が形成されており、
上記外周押圧面は、その内径が上記オイルシールの上記内周側溝壁の外径よりも大きく、その外径が上記オイルシールの表側面の外径と同じ又はそれ以下である形状を呈しており、
上記中央押圧面は、その外径が上記オイルシールの上記外周側溝壁の内径よりも小さく、さらに、その外径が上記オイルシールの表側面の内径よりも大きい形状を呈しており、
上記押圧シャフト部は、上記外周押圧面が上記ホルダ部の先端面と面一となる前進位置と、上記外周押圧面が上記ホルダ部の上記先端面から上記オイルシールの厚み寸法に相当する分だけ内方に後退した後退位置との間で、上記ホルダ部に対して相対移動可能に配設されており、
上記規制ピン部は、上記中央押圧面が上記外周押圧面と面一となるフラット位置と、上記中央押圧面が上記外周押圧面から突出した突出位置との間で、上記押圧シャフト部に対して相対移動可能に配設されており、かつ、上記規制ピン部は、上記突出位置に位置する方向に弾性部材によって付勢されており、
上記ロック機構部は、上記押圧シャフト部が上記後退位置に位置していると共に上記規制ピン部が上記フラット位置に位置している際には、上記押圧シャフト部と上記ホルダ部との相対移動を可能とさせるフリー状態とし、上記押圧シャフト部が上記後退位置に位置していると共に上記規制ピン部が上記突出位置に位置している際には、上記押圧シャフト部と上記ホルダ部との相対移動を制限する制限状態とするよう構成されていることを特徴とするオイルシール圧入治具。
【請求項2】
請求項1において、上記オイルシール圧入治具は、上記押圧シャフト部を摺動可能に支持する軸支持部から延設されたハンドル部を有し、該ハンドル部には、上記装着穴を設けた上記部品に対して上記オイルシールを圧入する圧入方向と対向する方向から上記部品に当接する当接部が設けられていることを特徴とするオイルシール圧入治具。
【請求項3】
請求項2において、上記部品の上記装着穴を設けた面の反対側面には、上記装着穴と同軸上に該装着穴よりも小径の貫通穴が形成されており、上記当接部は該貫通穴に圧入方向と反対側から挿入可能な形状を有していることを特徴とするオイルシール圧入治具。
【請求項4】
請求項2又は3において、上記軸支持部には、該軸支持部に対して上記押圧シャフト部を相対的に進退させるための操作レバー部が配設されていることを特徴とするオイルシール圧入治具。
【請求項5】
請求項4において、上記操作レバー部は、トグルにより構成されていることを特徴とするオイルシール圧入治具。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項において、上記ホルダ部と上記押圧シャフト部と上記規制ピン部とは、筒状の上記ホルダ部の内側に筒状の上記押圧シャフト部が存在し、さらにその内側に上記規制ピン部が存在する三重管部を有しており、
該三重管部における上記押圧シャフト部には径方向内外に貫通する内外連通穴が形成されており、
該内外連通穴には、上記規制ピン部が上記フラット位置に位置している際には上記押圧シャフト部の外周面よりも内方に没入可能であると共に、上記規制ピン部が上記突出位置に位置している際には上記押圧シャフト部の外周面よりも外方に突出するロック部材が配設されており、
上記ホルダ部の内周面には、上記押圧シャフト部が上記後退位置に位置する際に上記内外連通穴から突出した上記ロック部材の進入を可能とするホルダ溝部が形成されており、
該ホルダ溝部は、進入した上記ロック部材と軸方向において当接して上記押圧シャフト部の上記後退位置から上記前進位置への相対移動を制限する先端当接壁部が形成されていることを特徴とするオイルシール圧入治具。
【請求項7】
請求項6において、上記規制ピン部の外周面には、該規制ピン部が上記フラット位置に位置する際に上記内外連通穴から上記押圧シャフト部の内周面より内部に突出するロック部材の進入を可能とすると共に、上記規制ピン部が上記突出位置に位置する際には上記ロック部材の進入を不能とするよう設けられたピン溝部が形成されており、
上記ロック部材は、上記内外連通穴内を径方向に移動可能なように配設されており、
上記ロック部材の径方向寸法は、上記内外連通穴の深さ寸法よりも大きく、上記内外連通穴の深さ寸法に上記ホルダ溝部の深さ寸法を加えた寸法よりも小さく、かつ、上記内外連通穴の深さ寸法に上記ピン溝部の深さ寸法を加えた寸法よりも小さいことを特徴とするオイルシール圧入治具。
【請求項8】
請求項7において、上記ロック部材は、外形が略真円球の硬球部材であることを特徴とするオイルシール圧入治具。
【請求項9】
請求項6において、上記ロック部材は、上記内外連通穴内における回動支点を中心に回動可能に配設されたカム部材よりなり、
該カム部材は、その内周側に設けたカム操作突起部を上記規制ピン部の外周面に設けたカム係合溝に係合させてあり、上記規制ピン部の相対移動に伴って回動して上記押圧シャフト部の外周面からカム当接部の出没が制御可能に構成されており、
上記規制ピン部が上記突出位置に位置する際に上記カム当接部が上記押圧シャフト部の外周面から突出すると共に、上記規制ピン部が上記フラット位置に位置する際には上記カム当接部が上記押圧シャフト部の外周面から上記内外連通穴の内部に没入するよう構成されていることを特徴とするオイルシール圧入治具。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項において、上記規制ピン部には、径方向外方に延設されて上記ホルダ部の外方に突出する復帰レバー部が接続されており、上記押圧シャフト部及び上記ホルダ部には、上記復帰レバー部と干渉しないように貫通穴が設けられていることを特徴とするオイルシール圧入治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−272857(P2008−272857A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−117940(P2007−117940)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】