オイルシール
【課題】回転体の回転速度の上昇に伴うオイル漏れを防止できるオイルシールを提供する。
【解決手段】オイルシール1Aは、クランクケース100に装着されるアウター部材2と、クランク軸101に一体回転可能に装着されるインナー部材3と、アウター部材2とインナー部材3とで形成される隙間G1に配置され、かつクランク軸の回転停止時にアウター部材2と接触して隙間G1が所定の密着力にて塞がれた状態でインナー部材3に設けられるとともに、クランク軸の回転速度の上昇に伴ってアウター部材2から離れる方向に変位可能な可動リップ4と、可動リップ4の変位に伴う密着力の低下が補われるように、クランクケース100の温度変化に応じて体積が膨張する高熱膨張部材7と、を備えている。
【解決手段】オイルシール1Aは、クランクケース100に装着されるアウター部材2と、クランク軸101に一体回転可能に装着されるインナー部材3と、アウター部材2とインナー部材3とで形成される隙間G1に配置され、かつクランク軸の回転停止時にアウター部材2と接触して隙間G1が所定の密着力にて塞がれた状態でインナー部材3に設けられるとともに、クランク軸の回転速度の上昇に伴ってアウター部材2から離れる方向に変位可能な可動リップ4と、可動リップ4の変位に伴う密着力の低下が補われるように、クランクケース100の温度変化に応じて体積が膨張する高熱膨張部材7と、を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静止体とその静止体に回転自在に取付けられた回転体との間に設けられるオイルシールに関する。
【背景技術】
【0002】
オイル等の流体の漏洩を防止するオイルシールとして、回転体と静止体との間に設けられた所定の隙間に移動可能な浮動リングを設けるとともに、回転体の回転停止時に静止体と接触して所定の隙間を塞ぐリップシールを備えたものがある(特許文献1)。その他、本発明に関連する先行技術文献として、特許文献2〜5が存在する。
【0003】
【特許文献1】特開2004−132524号公報
【特許文献2】実開平6−14630号公報
【特許文献3】特開2005−147356号公報
【特許文献4】特開平8−105550号公報
【特許文献5】実開平2−93570号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のオイルシールでは、回転体の回転速度の上昇に伴いリップシールが遠心力によって静止体から離れる方向に変位して、静止体とリップシールとが接触状態から非接触状態に変化する。これにより、静止体とリップシールとの間の摩擦抵抗が減少する。しかしながら、回転体の回転速度の上昇に伴って、リップシールを静止体に押し付ける力(密着力)が低下するので、特に高速回転時にオイル漏れを誘発するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、回転体の回転速度の上昇に伴うオイル漏れを防止できるオイルシールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のオイルシールは、回転体と、前記回転体が回転自在に取付けられ、かつ前記回転体の回転速度の上昇に伴って内部の温度が上昇する静止体との間に設けられるオイルシールであって、前記静止体に装着されるアウター部材と、前記回転体に一体回転可能に装着されるとともに、前記アウター部材との間に所定の隙間が形成されるようにして前記アウター部材と組み合わされるインナー部材と、前記所定の隙間に配置され、かつ前記回転体の回転停止時に前記アウター部材と接触して前記所定の隙間が所定の密着力にて塞がれた状態で前記インナー部材に設けられるとともに、前記回転体の回転速度の上昇に伴って前記アウター部材から離れる方向に変位可能な可動部材と、前記可動部材の変位に伴う前記所定の密着力の低下が補われるように、前記静止体の内部の温度変化に応じて性状を変化させる感温シール手段とを備えることにより、上述した課題を解決する(請求項1)。
【0007】
インナー部材及び可動部材は回転体が回転すると回転体とともにそれぞれ回転するので、可動部材には径方向外側向きの遠心力が作用する。その遠心力により可動部材は回転体の回転速度の上昇に伴ってアウター部材から離れる方向に変位可能に構成されている。そのため、回転体の回転速度が上昇すると、可動部材に作用する遠心力が大きくなり可動部材をアウター部材に押し付ける密着力が低下する。このオイルシールによれば、感温シール手段の性状が回転体の回転速度の上昇に伴う静止体の温度変化に応じて変化することにより、回転体の回転速度の上昇に伴う密着力の低下が補われる。そのため、回転速度の上昇に伴う密着力の低下を抑えるために、回転体の回転停止時における密着力を必要以上に高めておかなくてもよい。従って、回転体の低回転速度時における摩擦抵抗を低減しつつ、回転速度の上昇に伴うオイル漏れを効果的に防止できるようになる。なお本発明において、密着力の低下が補われるとは、密着力の低下が感温シール手段によって完全に補われる場合、つまり密着力が低下しない場合と同等になる場合及び完全ではないが密着力の低下が部分的に補われる場合のいずれをも含む概念である。
【0008】
感温シール手段は温度変化によって性状が変化するものであればどのような構成でもよい。例えば、前記感温シール手段として、前記静止体の内部の温度変化に応じて性状を変化させることにより前記所定の隙間を塞ぐことが可能な閉塞部材が設けられていてもよいし(請求項2)、前記静止体の内部の温度変化に応じて性状を変化させることにより前記可動部材の変位を制限可能な変位制限手段が設けられていてもよい(請求項7)。
【0009】
感温シール手段として、閉塞部材が設けられた場合には、可動部材の動作特性に影響を与えずに閉塞部材によって密着力の低下を補うことができる。つまり、可動部材の機能を十分に生かした状態で密着力の低下を閉塞部材で補うことができる。閉塞部材は種々の態様で実現できる。例えば、前記閉塞部材として、前記所定の隙間に配置され、かつ前記アウター部材及び前記インナー部材の少なくとも一方の構成材料よりも高い熱膨張率を有した高熱膨張部材が設けられていてもよい(請求項3)。この場合、高熱膨張部材の熱変形により所定の隙間を塞ぐことができるので、回転速度の上昇に伴う密着力の低下を補うことができる。
【0010】
また、前記閉塞部材として、前記可動部材と前記アウター部材との間に介在するように配置され、かつ前記アウター部材及び前記インナー部材の少なくとも一方の構成材料よりも高い熱膨張率を有した高熱膨張部材が設けられていてもよい(請求項4)。この場合、静止体の内部の温度上昇に伴って高熱膨張部材の体積が増加し、それにより熱膨張部材の径方向の寸法が増加する。高熱膨張部材の径方向の寸法が増加することにより可動部材が径方向外側に押し返されて密着力の低下が抑制される。つまり、回転体の回転速度の上昇に伴う密着力の低下が高熱膨張部材の熱変形によって補われる。
【0011】
更に、前記閉塞部材として、前記所定の隙間に配置されるように、前記アウター部材又は前記インナー部材のいずれか一方に設けられ、かつ前記所定の隙間を横切る方向に変形可能なバイメタル部材が設けられていてもよい(請求項5)。この場合には、静止体の内部温度の上昇に伴ってバイメタル部材が所定の隙間を横切るように変形して、所定の隙間を塞ぐことができる。バイメタル部材はアウター部材又はインナー部材のどちらに設けてもよい。もっとも、回転体側に熱源を有するために、その熱源の温度上昇から所定時間経過するまでの間、回転体側の温度が高く回転体から離れるに従って温度が低くなる温度勾配が静止体の内部に形成されるような場合には、バイメタル部材をインナー部材に設けるとよい。この場合には回転体側の温度変化をいち早く察知することができるので、バイメタル部材の応答性が向上する。
【0012】
このような感温シール手段は、前記静止体の内圧を受けて前記所定の隙間を塞ぐ方向に前記閉塞部材を付勢する受圧部を有していてもよい(請求項6)。この場合、閉塞部材は静止体の内圧を受けた受圧部によって所定の隙間を塞ぐ方向に付勢されるので、閉塞部材によるシール効果が向上する。
【0013】
一方、感温シール手段として、変位制限手段が設けられた場合には、静止体の内部の温度上昇に応じて可動部材の変位が制限されるので、その変位に伴う密着力の低下を補うことができる。変位制限手段は、可動部材の自由な変位を制限できるものであればどのような構成でもよい。例えば、前記変位制限手段として、前記可動部材を前記アウター部材に接近する方向へ付勢する付勢部材が設けられていてもよい(請求項8)。この場合、付勢部材によって可動部材がアウター部材に接近する方向へ付勢されるので、可動部材がアウター部材から離れる方向への変位が制限される。これにより回転速度の上昇に伴う密着力の低下を補うことが可能となる。
【0014】
また、前記変位制限手段として、前記インナー部材に前記可動部材を支持し、かつ前記静止体の内部の温度上昇に伴って弾性率が増大する熱可塑性支持部が設けられていてもよい(請求項9)。この場合、温度上昇に伴って熱可塑性支持部の弾性率は増加する。つまり、温度上昇に伴って熱可塑性支持部が硬化するので、熱可塑性支持部にて支持される可動部材の変位が制限される。
【0015】
更に、前記変位制限手段として、前記静止体の内部の温度上昇に伴って前記可動部材が前記アウター部材に押し当てられてその変位が阻止されるように膨張する高熱膨張部が設けられ、前記インナー部材は前記可動部材が設けられた位置に前記高熱膨張部を有していてもよい(請求項10)。この場合、インナー部材が持つ高熱膨張部は、静止体の内部の温度上昇に伴って可動部材をアウター部材に押し当てる。これにより、可動部材の変位が制限されて密着力の低下を補うことができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、感温シール手段の性状が回転体の回転速度の上昇に伴う静止体の温度変化に応じて変化することにより、回転体の回転速度の上昇に伴う密着力の低下が補われるため、回転体の回転停止時における密着力を必要以上に高めておかなくてもよい。従って、回転体の低回転速度時における摩擦抵抗を低減しつつ、回転速度の上昇に伴うオイル漏れを効果的に防止できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(第1の形態)
図1は本発明の第1の形態に係るオイルシールが組み付けられた内燃機関の要部を示した斜視図であり、図2はその要部の断面模式図である。なお、図2において、本発明に係るオイルシールは軸線CLに関して軸対称であるので片側の断面のみ図示することとする。また、特に断らない限り他の断面図についても片側の断面のみ図示する。図1及び図2に示すように、クランク軸101は軸線CL回りに回転自在な状態でクランクケース100に取付けられている。オイルシール1Aは、静止体としてのクランクケース100と回転体としてのクランク軸101との間に設けられる。即ちオイルシール1Aはクランクケース100とクランク軸101との間に形成される環状の隙間に装着される。オイルシール1Aはクランクケース100の外側である大気側ASとクランクケース100の内側である密封側OSとを区画することにより、密封側OSから大気側ASへのオイルやブローバイガス等の流体の漏洩を防止するとともに、大気側ASから密封側OSへの埃等の異物の侵入を防止する。図2に示すように、オイルシール1Aはクランク軸101と同軸的に設けられた環状のアウター部材2及び環状のインナー部材3をそれぞれ有している。アウター部材2はオイルシールリテーナ103を介在させてクランクケース100に装着され、インナー部材3はクランク軸101に一体回転可能に装着されている。アウター部材2とインナー部材3とは、両者の間に隙間Gが形成されるように互いに離されて組み合わされている。
【0018】
アウター部材2は、オイルシールリテーナ103に固定され、かつ軸線CL方向に延びる外側円筒部21と、外側円筒部21の大気側ASの端部から径方向内側に延びる内向きフランジ部22とを有している。内向きフランジ部22は、外側円筒部21に対して略直角に径方向内側に向かって立ち上がる直立壁部22aと、軸線CL方向に延びて外側円筒部21と略平行な側壁部22bと、密封側OSに向かって傾いて直立壁部22aと側壁部22bとを接続する傾斜壁部22cとを有している。一方、インナー部材3は、クランク軸101に固定されかつ軸線CL方向に延びる内側円筒部31と、内側円筒部31の密封側OSの端部から径方向外側に延びる外向きフランジ部32とを有している。外向きフランジ部32はアウター部材2の内向きフランジ部22と対向するように配置される。即ち、外向きフランジ部32は、内側円筒部31に対して略直角に径方向外側に向かって立ち上がる直立壁部32aと、直立壁部32aに続いて軸線CL方向に延びて内向きフランジ部22の側壁部22bと略平行な側壁部32bと、側壁部32bに続いて大気側ASに向かって傾くように延びて内向きフランジ部22の傾斜壁部22cと略平行な傾斜壁部32cとを備えている。
【0019】
アウター部材2とインナー部材3とで形成される隙間Gのうち、内向きフランジ部22の側壁部22bと外向きフランジ部32の側壁部32bとの間に形成される隙間G1には、可動部材としての環状の可動リップ4が配置されている。可動リップ4はインナー部材3と一体回転できるように直立壁部32aに密封側OSの一端が接合されている。可動リップ4は直立壁部32aに取付けられた取付け部4aと、取付け部4aから大気側ASに向かって延びる中間部4bと、中間部4bに続く先端部4cとを有している。取付け部4aはバネ材等の高靱性の金属材料にて弾性変形可能に構成されている。中間部4b及び先端部4cはゴム等の弾性体で構成されていて、取付け部4aに一体的に接合されている。先端部4cには、可動リップ4を径方向内側へ付勢する環状のガータースプリング6が取付けられている。クランク軸101の回転停止時において、可動リップ4はガータースプリング6の弾性力によって閉塞部材としての高熱膨張部材7を介してアウター部材2と接触状態に保持されている。高熱膨張部材7は、可動リップ4とアウター部材2との間に介在するようにしてアウター部材2に設けられている。高熱膨張部材7は、例えばマンガン等の金属材料や樹脂材料等のアウター部材2よりも高い熱膨張率を有した材料で構成されている。
【0020】
図2に示すように、アウター部材2とインナー部材3とで形成される隙間Gのうち、内向きフランジ部22の傾斜壁22cと外向きフランジ部32の傾斜壁32cとの間で形成される隙間G2には、浮動リング8が配置されている。浮動リング8はクランク軸101の回転中にアウター部材2及びインナー部材3のそれぞれと非接触の状態で隙間G2内を移動できる。つまり浮動リング8は、隙間G2内に存在するオイルを浮動リング8とアウター部材2との間及び浮動リング8とインナー部材3との間にそれぞれ介在させた状態で、インナー部材3の周速度よりも遅い速度でインナー部材3と同心的に回転するようになっている。浮動リング8の厚さ寸法は、浮動リング8、アウター部材2及びインナー部材3の三者の間でラビリンスシールが形成されるように隙間G2の大きさを考慮して設定される。
【0021】
図3は、クランク軸101の回転速度と、可動リップ4をアウター部材2に押し付ける力(密着力)との関係を示した説明図である。図3の破線は高熱膨張部材7を備えていない比較例の密着力を示している。オイルシール1Aによれば、クランク軸101が回転するとインナー部材3がクランク軸101と一体回転するので、可動リップ4には径方向外側に向かう遠心力が作用する。クランク軸101の回転速度の上昇に伴ってその遠心力が大きくなるので、図3に示すように、クランク軸101の回転速度の上昇に伴って密着力が徐々に減少する。この特性には、オイルシール1Aと比較例との間で相違はない。更に、回転速度が上昇して遠心力が限界を超えて大きくなると、比較例の場合には密着力がゼロつまり可動リップ4がアウター部材2から完全に離れる。
【0022】
これに対し、オイルシール1Aは、クランク軸101の回転速度が上昇すると、その上昇に伴ってクランクケース100内の温度も上昇して高熱膨張部材7の体積が増加する。高熱膨張部材7の体積が増加すると、図2の破線に示すように、高熱膨張部材7の径方向の寸法が増加して可動リップ4が径方向外側に押し返される。これにより密着力が徐々に増加してクランク軸101の回転速度の上昇に伴う密着力の低下が抑制される。つまり、高熱膨張部材7の体積(性状)の変化によって密着力の低下が補われるようになる。
【0023】
このような可動リップ4の特性は、可動リップ4に設けられたガータースプリング6の外径やバネ定数、可動リップ4の取付け部4aの材料や寸法等の諸要素や、高熱膨張部材7の構成材料、径方向の寸法等の諸要素の設定に依存する。従って、これらの諸要素を適宜に設定することにより可動リップ4の動作特性を調整できる。例えば、図3に示した形態のように、可動リップ4にて隙間G1がクランク軸101の回転速度に拘わらず常時塞がれるようにするには、クランク軸101の回転速度の上昇に伴う可動リップ4の変位量よりも温度上昇に伴う高熱膨張部材7の径方向の寸法の変化量が大きくなるように、それらの諸要素を設定すればよい。こうすることにより、クランク軸101の回転速度に拘わらず可動リップ4が高熱膨張部材7によって常時押し返されて、隙間G1が塞がれた状態に維持される。また、内燃機関の通常の運転領域で浮動リング8によるシール機能が十分に発揮される場合においては、可動リップ4がアウター部材2から完全に離れる中速回転領域が存在するように上述した諸要素を設定してもよい。この場合には、クランク軸101の回転速度が中速回転領域を超えて更に上昇した高速回転時において、感温シール機構としての高膨張部材7にて隙間G1が塞がれるように高熱膨張部材7の諸要素を設定する。これにより、オイルシール1Aをクランク軸101の高速回転時のシール性確保のみを狙った構成とすることもできる。
【0024】
以上のオイルシール1Aによれば、クランク軸101の回転速度の上昇に伴う密着力の低下が高熱膨張部材7の性状変化により補われる。つまり、高熱膨張部材7は本発明の感温シール手段として機能する。オイルシール1Aは、クランク軸101の回転停止時の密着力を必要以上に大きくする必要がないので、クランク軸101の低速回転時の摩擦抵抗を低減でき、燃費向上に寄与できる。また、上述したように、オイルシール1Aを高速回転時のシール性確保のみを狙った構成とした場合には、そのオイルシール1Aはクランク軸101の停止時以外の回転領域における摩擦抵抗を低減する可動リップ4の特性を生かしつつ、高速回転時のオイル漏れを防止する手段として有効に機能する。
【0025】
(第2の形態)
次に、本発明の第2の形態を図4を参照して説明する。この形態は閉塞部材としての高熱膨張部材の取付け位置のみが第1の形態と相違するもので、他の構成は第1の形態と同一である。以下の説明では、第1の形態と同一構成には同一の符号を付して説明を省略する。図4に示すように、この形態のオイルシール1Bは、高熱膨張部材207が可動リップ4の先端部4cに設けられている。これにより、高熱膨張部材207は、第1の形態と同様の効果を発揮できる。即ち、クランクケース100内の温度が上昇すると、高熱膨張部材207の体積が増加して図4の破線に示すように高熱膨張部材207の径方向の寸法が増加する。これにより、可動リップ4は径方向外側に押し返される。そのため、クランクケース100内の温度上昇に伴って密着力が徐々に増加するので、クランク軸101の回転速度の上昇に伴う密着力の低下が抑制される。
【0026】
(第3の形態)
次に、本発明の第3の形態を図5を参照して説明する。この形態は、閉塞部材としての高熱膨張部材の構成に特徴を有している。上記形態と同一の構成については図5において同一の符号を付して説明を省略する。図5に示したオイルシール1Cは、高熱膨張部材307がアウター部材2とインナー部材3との間に介在するように配置されている。図示の形態では、高熱膨張部材307が、アウター部材2とインナー部材3とで形成される隙間Gのうち、内向きフランジ部22の側壁部22bと内側円筒部31とで形成される隙間G3に配置されるようにしてインナー部材3に設けられている。高熱膨張部材307の構成材料は上記形態と同様でよい。高熱膨張部材307は軸線CL方向に延びており、軸線CL方向の寸法は側壁部22bに相当する長さに設定されている。以上の構成により、クランクケース100内の温度が上昇すると、高熱膨張部材307の体積が増加して図5の破線に示すように高熱膨張部材307の径方向の寸法が増加する。これにより隙間G3が高熱膨張部材307にて塞がれて、可動リップ4の変位に伴う密着力の低下を補うことができる。
【0027】
高熱膨張部材307にて隙間G3が塞がれるようになる温度は、高熱膨張部材307の構成材料、径方向の寸法等の諸要素を適宜に設定することにより調整可能である。そのような調整によって、可動リップ4がアウター部材3から離れる前に高熱膨張部材307にて隙間G3が塞がれるようにすることもできるし、可動リップ4がアウター部材3から離れた後に高熱膨張部材307にて隙間G3が塞がれるようにすることもできる。また、この形態では、高熱膨張部材307の軸線CL方向の寸法を特段の制約なく増減させることができるので、その寸法を増減させることにより高熱膨張部材307とアウター部材2との接触面積を容易に調整できる。つまり、高熱膨張部材307によるシール効果の調整が容易になる。
【0028】
高熱膨張部材307の形状は適宜に設定できる。例えば、図5の一点鎖線で示すように、アウター部材3の端部を横切るように形成された受圧部307aを高熱膨張部材307に設けてもよい。これにより、クランクケース100の内圧(密封側OSの圧力)が大気圧よりも高い場合には、受圧部307aがその内圧を受けて高熱膨張部材307が隙間G3を塞ぐ方向に付勢されるので、高熱膨張部材307とアウター部材2との密着力を向上できるようになる。
【0029】
(第4の形態)
次に、本発明の第4の形態を図6を参照して説明する。この形態は閉塞部材としての高熱膨張部材の構成に特徴を有している。上記形態と同一の構成については図6において同一の符号を付して説明を省略する。図6に示したオイルシール1Dは、隙間G3を横切り、かつ径方向に延びるようにしてアウター部材2とインナー部材3との間に配置されるとともに、径方向の一端がアウター部材2に固定され、かつ径方向の他端が開放された高熱膨張部材407を有している。また、オイルシール1Dのインナー部材3には、高熱膨張部材407が熱により伸長した場合に高熱膨張部材407を受入れて高熱膨張部材407を拘束する凹部3aが形成されている。この形態のオイルシール1Dによれば、クランクケース100の内部の温度上昇に伴って高熱膨張部材407の体積が増加して伸長する。その際に高熱膨張部材407が凹部3aに挿入されることで、高熱膨張部材407が拘束される。これによって、例えば、高熱膨張部材407にて隙間G3が塞がれている間にクランクケース100の内圧が変動するような場合であっても、高熱膨張部材407が凹部3aにて拘束されるので、隙間G3を確実に塞ぐことが可能になる。
【0030】
(第5の形態)
次に、本発明の第5の形態を図7を参照して説明する。この形態は閉塞部材としての高熱膨張部材の向きが第4の形態と相違している。上記と同一の構成については、図7に同一の符号を付して説明を省略する。この形態のオイルシール1Eは、隙間G3を横切り、かつ軸線CL方向に延びるようにしてアウター部材2とインナー部材3との間に配置されるとともに、大気側ASの一端がアウター部材2に固定され、かつ密封側OSの他端が開放された高熱膨張部材507を有している。なお、この形態のアウター部材2の側壁部22bは、高熱膨張部材507の伸長量や強度等の諸要因を考慮して上記の形態よりもインナー部材3側に延長されている。オイルシール1Eによれば、クランクケース100の内部の温度上昇に伴って高熱膨張部材507の体積が増加して伸長する。それによって、高熱膨張部材507の先端がインナー部材3に接触し隙間G3を塞ぐことができる。
【0031】
この形態の場合においても、図6の形態と同様にインナー部材3に凹部を形成してもよい。また、インナー部材2の側壁部22bの少なくとも一部を高熱膨張部材507と同一の材料で構成し、側壁部22b自身を高熱膨張部材として機能させてもよい。これによって、上記と同等の効果を発揮でき、なおかつ部品点数の削減に寄与できる。
【0032】
(第6の形態)
次に、本発明の第6の形態を図8を参照して説明する。この形態は閉塞部材の構成が上記と相違し、オイルシール1Fは閉塞部材としてのバイメタル部材10を有している。上記の形態と共通する構成については、図8に同一の符号を付して説明を省略する。バイメタル部材10は、異種の金属材料が組み合わされてなる環状部材であり、設定温度を超えることにより直線状から湾曲状にその形状を変化させる。設定圧力以下になった場合には、元の形状に復帰する。つまり湾曲状から直線状に形状が変化する。図8に示すように、バイメタル部材10は大気側ASが端部がアウター部材2の側壁部22bに固定され、密封側OSの端部が開放されるようにして隙間G3に配置されている。クランクケース100の内部の温度が上昇して設定温度を超えた場合には、図8の破線で示すようにバイメタル部材10は隙間G3を横切る方向で、かつ径方向内側に変形して、その先端がインナー部材3に接触し、それにより隙間G3が塞がれる。
【0033】
バイメタル部材10がインナー部材3に接触した際に、その外周面11が密封側OSを向く。クランクケース100の内圧が大気圧よりも高い場合には、その内圧がバイメタル部材10の外周面11に作用するので、その圧力を受けたバイメタル部材10は隙間G3を塞ぐ方向に付勢される。そのため、クランクケース100の内圧を利用してバイメタル部材10をインナー部材3に押し当てることができるので、バイメタル部材10によるシール効果が向上する。このように、バイメタル部材10の外周面11は本発明の受圧部として機能する。
【0034】
バイメタル部材10は、周方向に連続した環状部材であるので、インナー部材3との接触力がインナー部材3の周方向に関して変化し難い。即ち、インナー部材3の周方向に関する接触力の変動を抑えることができる。従って、オイルシール1Fによれば、バイメタル部材10によるシール効果の周方向に関する均一性が向上する。
【0035】
図9は、クランク軸101の回転速度とオイルの漏れ量との関係を説明する説明図である。図9の実線はオイルシール1Fを、破線はバイメタル部材10を省略した比較例をそれぞれ示している。図中A点はバイメタル部材10とインナー部材3との接触が開始する回転速度を、B点は可動リップ4がアウター部材2から離れ始める回転速度をそれぞれ示している。この図から明らかなように、比較例の場合にはB点を超えると可動リップ4がアウター部材2から離れ始め、回転速度が速くなるほど可動リップ4とアウター部材2との間隔が拡大する。そのため比較例の場合には回転速度の上昇に伴って漏れ量が徐々に増加する。これに対し、オイルシール1Fの場合には、可動リップ4がアウター部材2から離れ始める前、つまりA点においてバイメタル部材10がインナー部材と接触して隙間G3が塞がれる。そのため、回転速度がB点を超えて可動リップ4がアウター部材から離れた場合でも、オイル漏れは殆ど発生しない。従って、回転速度の上昇に伴う可動リップ4とアウター部材3との密着力の低下がバイメタル部材10にて補われる。オイルシール1Fによれば、バイメタル部材10の設定温度を適宜に調整することにより、図9に示すように可動リップ4とバイメタル部材10との両者によってシールされるA点からB点まで領域ARを設けることができる。そのため、可動リップ4による摩擦抵抗の低減を図りつつシール効果の確実性を向上させることも可能である。
【0036】
なお、クランク軸101の回転速度とクランクケース100の内部の温度との関係は内燃機関の形態に応じてそれぞれ異なるが、一般的には、回転速度が高い場合は低い場合よりもクランクケース100の内部の温度は高くなる傾向がある。従って、オイルシール1Fを適用する内燃機関についてその関係を予め調査しておき、その結果を考慮してバイメタル部材10の設定温度を調整することにより、バイメタル部材10によって隙間G3が塞がれる回転速度(図9のA点)を所望の回転速度に設定することができる。
【0037】
(第7の形態)
次に、本発明の第7の形態を図10を参照して説明する。この形態のオイルシール1Gは図8の形態と同様のバイメタル部材210を有している。但し、バイメタル部材210の向きが図8の形態と反対向きで、かつバイメタル部材210がインナー部材3に取付けられている。それ以外は上記の形態と同一であるので、図10に同一の構成に同一の符号を付してその説明を省略する。図10に示したバイメタル部材210は、大気側ASが端部がインナー部材3の内側円筒部31に固定され、密封側OSの端部が開放されるようにして隙間G3に配置されている。クランクケース100の内部の温度が上昇してバイメタル部材210の設定温度を超えた場合には、図10の破線で示すようにバイメタル部材10は隙間G3を横切る方向で、かつ径方向外側に変形して、その先端がアウター部材2に接触し、それにより隙間G3が塞がれる。よって、この形態も第6の形態と同様の効果を奏する。また、バイメタル部材210がアウター部材2に接触した際に、バイメタル部材210の内周面211が密封側OSを向く。このため、第6の形態と同様にバイメタル部材210の内周面211が本発明の受圧部として機能する。
【0038】
また、一般にクランクケース100には、内燃機関のクランク軸101が熱源として存在するので、クランク軸101の温度上昇から所定時間経過するまでの間に、クランク軸101側の温度が高くクランク軸101から離れるに従って温度が低くなる温度勾配が形成される。オイルシール1Gは、バイメタル部材210がインナー部材3に設けられているので、内燃機関側の温度変化をいち早く察知することができる。従って、オイルシール1Gによれば、図8に示した第6の形態と比べてバイメタル部材210の応答性を向上させることができる。
【0039】
(第8の形態)
次に、本発明の第8の形態を図11及び図12を参照して説明する。この形態は、本発明に係る感温シール手段の一態様である変位制限手段の構成に特徴を有している。この形態と上述した形態との間で共通する構成については、これらの図に同一の符号を付して説明を省略する。これらの図に示すように、オイルシール1Hは、可動リップ4の外周側とインナー部材3との間に配置されて、可動リップ4とインナー部材3とを連結する連結部材12が設けられている。連結部材12はコイルスプリング等の弾性部材として設けられ、しかも形状記憶合金や形状記憶樹脂等の形状記憶材料で構成されている。そのため、クランクケース100の内部の温度が上昇して連結部材12の設定温度に達すると、連結部材12の全長が延びる。これにより、可動リップ4はアウター部材2に押し付けられるように連結部材12にて付勢される。つまり、連結部材12は可動リップ4をアウター部材2に接近する方向へ付勢する付勢手段として機能する。これにより、クランク軸101の回転速度の上昇に伴う可動リップ4の変位が連結部材12にて制限されるので、その変位に伴う密着力の低下を補うことができる。このような連結部材12は、図12に示すように可動リップ4の周方向に沿って複数個設けられている。これらの連結部材12の間隔は等間隔でも不等間隔でも構わない。
【0040】
図11及び図12では、連結部材12の圧縮反力により可動リップ4を付勢する形態が示されているが、図13に示したように、連結部材12の引張力により可動リップ4を付勢するものでもよい。図13の連結部材12は、設定温度を超えた場合に全長が縮むように構成されている。これにより、図12及び図13と同等の効果を発揮できる。
【0041】
(第9の形態)
次に、本発明の第9の形態を図14を参照して説明する。この形態は、本発明に係る感温シール手段の一態様である変位制限手段の構成に特徴を有している。変位制限手段の実施形態として、上述の形態と異なる可動部材が設けられている。この形態と上述した形態との間で共通する構成については、図14に同一の符号を付して説明を省略する。オイルシール1Iは、インナー部材3に設けられた可動リップ904を有している。可動リップ904は、これをインナー部材3に支持する熱可塑性支持部904aを有している。可動リップ904は、この熱可塑性支持部904aを有することを除き、上述した可動リップ4と同一機能を持っている。熱可塑性支持部904aは、クランクケース100の内部の温度上昇に伴って弾性率が増大するように構成されている。つまり、温度上昇に伴い熱可塑性支持部904aが硬化して弾性変形し難い状態に変化する。これにより、クランク軸101の回転速度の上昇に伴う可動リップ904の変位が熱可塑性支持部904aの弾性率の増大によって制限されることになるので、可動リップ904の変位に伴う密着力の低下を補うことが可能となる。こうして、熱可塑性支持部904aが本発明の変位制限手段として機能する。
【0042】
(第10の形態)
次に、本発明の第10の形態を図15を参照して説明する。この形態は、本発明に係る感温シール手段の一態様である変位制限手段の構成に特徴を有している。変位制限手段の実施形態として、上述の形態と異なるインナー部材が設けられている。この形態と上述した形態との間で共通する構成については、図14に同一の符号を付して説明を省略する。オイルシール1Jは、高熱膨張部103aを有したインナー部材103を備えている。インナー部材103は、可動リップ4が設けれた位置に高熱膨張部103aを有している。高熱膨張部103aは、例えばマンガン等の金属材料や樹脂材料等のインナー部材103の他の部分よりも高い熱膨張率を有した材料で構成されている。クランクケース100の内部の温度が上昇すると、高熱膨張部103aの体積が増加して図15の破線の位置まで変形する。そのため、図15の破線で示すように可動リップ4が図15の上方に変位し、その変位によって可動リップ4がアウター部材2に押し当てられる。可動リップ4がアウター部材2に押し当てられることで、クランク軸101の回転速度の上昇に伴う可動リップ4の変位、即ちアウター部材2から離れる方向への変位が阻止される。これにより、その変位に伴う密着力の低下が補われるようになる。こうして、高熱膨張部103aが変位制限手段として機能する。
【0043】
本発明は、上記各形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の形態にて実施することができる。例えば、本発明のオイルシールの適用対象は、内燃機関の他、回転体の回転速度の上昇に伴って内部の温度が上昇する静止体を有するもの、例えば各種ポンプに適用することもできる。本発明のオイルシールをポンプに適用する場合には、本発明のオイルシールを静止体としてのポンプハウジングと、ポンプハウジングに回転自在に取付けられるポンプ軸との間に設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1の形態に係るオイルシールを内燃機関に適用した要部を示す斜視図。
【図2】図1のオイルシールの要部を示した断面模式図。
【図3】クランク軸の回転速度と、可動リップをアウター部材に押し付ける力(密着力)との関係を示した説明図。
【図4】本発明の第2の形態に係るオイルシールを内燃機関に適用した要部を示す断面模式図。
【図5】本発明の第3の形態に係るオイルシールを内燃機関に適用した要部を示す断面模式図。
【図6】本発明の第4の形態に係るオイルシールを内燃機関に適用した要部を示す断面模式図。
【図7】本発明の第5の形態に係るオイルシールを内燃機関に適用した要部を示す断面模式図。
【図8】本発明の第6の形態に係るオイルシールを内燃機関に適用した要部を示す断面模式図。
【図9】クランク軸の回転速度とオイルの漏れ量との関係を説明する説明図。
【図10】本発明の第7の形態に係るオイルシールを内燃機関に適用した要部を示す断面模式図。
【図11】本発明の第8の形態に係るオイルシールを内燃機関に適用した要部を示す断面模式図。
【図12】図11のオイルシールに係る連結部材付近を軸線方向から示した断面模式図。
【図13】第8の変形例を示した説明図。
【図14】本発明の第9の形態に係るオイルシールを内燃機関に適用した要部を示す断面模式図。
【図15】本発明の第10の形態に係るオイルシールを内燃機関に適用した要部を示す断面模式図。
【符号の説明】
【0045】
1A〜1J オイルシール
2 アウター部材
3、103 インナー部材
4、904 可動リップ(可動部材)
7、207、307、407、507 高熱膨張部材(閉塞部材、感温シール手段)
10、210 バイメタル部材(閉塞部材、感温シール手段)
11 外周面(受圧部)
12 連結部材(付勢部材、変位制限手段、感温シール手段)
103a 高熱膨張部(変位制限手段、感温シール手段)
211 内周面
307a 受圧部
904a 熱可塑性支持部(変位制限手段、感温シール手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、静止体とその静止体に回転自在に取付けられた回転体との間に設けられるオイルシールに関する。
【背景技術】
【0002】
オイル等の流体の漏洩を防止するオイルシールとして、回転体と静止体との間に設けられた所定の隙間に移動可能な浮動リングを設けるとともに、回転体の回転停止時に静止体と接触して所定の隙間を塞ぐリップシールを備えたものがある(特許文献1)。その他、本発明に関連する先行技術文献として、特許文献2〜5が存在する。
【0003】
【特許文献1】特開2004−132524号公報
【特許文献2】実開平6−14630号公報
【特許文献3】特開2005−147356号公報
【特許文献4】特開平8−105550号公報
【特許文献5】実開平2−93570号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のオイルシールでは、回転体の回転速度の上昇に伴いリップシールが遠心力によって静止体から離れる方向に変位して、静止体とリップシールとが接触状態から非接触状態に変化する。これにより、静止体とリップシールとの間の摩擦抵抗が減少する。しかしながら、回転体の回転速度の上昇に伴って、リップシールを静止体に押し付ける力(密着力)が低下するので、特に高速回転時にオイル漏れを誘発するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、回転体の回転速度の上昇に伴うオイル漏れを防止できるオイルシールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のオイルシールは、回転体と、前記回転体が回転自在に取付けられ、かつ前記回転体の回転速度の上昇に伴って内部の温度が上昇する静止体との間に設けられるオイルシールであって、前記静止体に装着されるアウター部材と、前記回転体に一体回転可能に装着されるとともに、前記アウター部材との間に所定の隙間が形成されるようにして前記アウター部材と組み合わされるインナー部材と、前記所定の隙間に配置され、かつ前記回転体の回転停止時に前記アウター部材と接触して前記所定の隙間が所定の密着力にて塞がれた状態で前記インナー部材に設けられるとともに、前記回転体の回転速度の上昇に伴って前記アウター部材から離れる方向に変位可能な可動部材と、前記可動部材の変位に伴う前記所定の密着力の低下が補われるように、前記静止体の内部の温度変化に応じて性状を変化させる感温シール手段とを備えることにより、上述した課題を解決する(請求項1)。
【0007】
インナー部材及び可動部材は回転体が回転すると回転体とともにそれぞれ回転するので、可動部材には径方向外側向きの遠心力が作用する。その遠心力により可動部材は回転体の回転速度の上昇に伴ってアウター部材から離れる方向に変位可能に構成されている。そのため、回転体の回転速度が上昇すると、可動部材に作用する遠心力が大きくなり可動部材をアウター部材に押し付ける密着力が低下する。このオイルシールによれば、感温シール手段の性状が回転体の回転速度の上昇に伴う静止体の温度変化に応じて変化することにより、回転体の回転速度の上昇に伴う密着力の低下が補われる。そのため、回転速度の上昇に伴う密着力の低下を抑えるために、回転体の回転停止時における密着力を必要以上に高めておかなくてもよい。従って、回転体の低回転速度時における摩擦抵抗を低減しつつ、回転速度の上昇に伴うオイル漏れを効果的に防止できるようになる。なお本発明において、密着力の低下が補われるとは、密着力の低下が感温シール手段によって完全に補われる場合、つまり密着力が低下しない場合と同等になる場合及び完全ではないが密着力の低下が部分的に補われる場合のいずれをも含む概念である。
【0008】
感温シール手段は温度変化によって性状が変化するものであればどのような構成でもよい。例えば、前記感温シール手段として、前記静止体の内部の温度変化に応じて性状を変化させることにより前記所定の隙間を塞ぐことが可能な閉塞部材が設けられていてもよいし(請求項2)、前記静止体の内部の温度変化に応じて性状を変化させることにより前記可動部材の変位を制限可能な変位制限手段が設けられていてもよい(請求項7)。
【0009】
感温シール手段として、閉塞部材が設けられた場合には、可動部材の動作特性に影響を与えずに閉塞部材によって密着力の低下を補うことができる。つまり、可動部材の機能を十分に生かした状態で密着力の低下を閉塞部材で補うことができる。閉塞部材は種々の態様で実現できる。例えば、前記閉塞部材として、前記所定の隙間に配置され、かつ前記アウター部材及び前記インナー部材の少なくとも一方の構成材料よりも高い熱膨張率を有した高熱膨張部材が設けられていてもよい(請求項3)。この場合、高熱膨張部材の熱変形により所定の隙間を塞ぐことができるので、回転速度の上昇に伴う密着力の低下を補うことができる。
【0010】
また、前記閉塞部材として、前記可動部材と前記アウター部材との間に介在するように配置され、かつ前記アウター部材及び前記インナー部材の少なくとも一方の構成材料よりも高い熱膨張率を有した高熱膨張部材が設けられていてもよい(請求項4)。この場合、静止体の内部の温度上昇に伴って高熱膨張部材の体積が増加し、それにより熱膨張部材の径方向の寸法が増加する。高熱膨張部材の径方向の寸法が増加することにより可動部材が径方向外側に押し返されて密着力の低下が抑制される。つまり、回転体の回転速度の上昇に伴う密着力の低下が高熱膨張部材の熱変形によって補われる。
【0011】
更に、前記閉塞部材として、前記所定の隙間に配置されるように、前記アウター部材又は前記インナー部材のいずれか一方に設けられ、かつ前記所定の隙間を横切る方向に変形可能なバイメタル部材が設けられていてもよい(請求項5)。この場合には、静止体の内部温度の上昇に伴ってバイメタル部材が所定の隙間を横切るように変形して、所定の隙間を塞ぐことができる。バイメタル部材はアウター部材又はインナー部材のどちらに設けてもよい。もっとも、回転体側に熱源を有するために、その熱源の温度上昇から所定時間経過するまでの間、回転体側の温度が高く回転体から離れるに従って温度が低くなる温度勾配が静止体の内部に形成されるような場合には、バイメタル部材をインナー部材に設けるとよい。この場合には回転体側の温度変化をいち早く察知することができるので、バイメタル部材の応答性が向上する。
【0012】
このような感温シール手段は、前記静止体の内圧を受けて前記所定の隙間を塞ぐ方向に前記閉塞部材を付勢する受圧部を有していてもよい(請求項6)。この場合、閉塞部材は静止体の内圧を受けた受圧部によって所定の隙間を塞ぐ方向に付勢されるので、閉塞部材によるシール効果が向上する。
【0013】
一方、感温シール手段として、変位制限手段が設けられた場合には、静止体の内部の温度上昇に応じて可動部材の変位が制限されるので、その変位に伴う密着力の低下を補うことができる。変位制限手段は、可動部材の自由な変位を制限できるものであればどのような構成でもよい。例えば、前記変位制限手段として、前記可動部材を前記アウター部材に接近する方向へ付勢する付勢部材が設けられていてもよい(請求項8)。この場合、付勢部材によって可動部材がアウター部材に接近する方向へ付勢されるので、可動部材がアウター部材から離れる方向への変位が制限される。これにより回転速度の上昇に伴う密着力の低下を補うことが可能となる。
【0014】
また、前記変位制限手段として、前記インナー部材に前記可動部材を支持し、かつ前記静止体の内部の温度上昇に伴って弾性率が増大する熱可塑性支持部が設けられていてもよい(請求項9)。この場合、温度上昇に伴って熱可塑性支持部の弾性率は増加する。つまり、温度上昇に伴って熱可塑性支持部が硬化するので、熱可塑性支持部にて支持される可動部材の変位が制限される。
【0015】
更に、前記変位制限手段として、前記静止体の内部の温度上昇に伴って前記可動部材が前記アウター部材に押し当てられてその変位が阻止されるように膨張する高熱膨張部が設けられ、前記インナー部材は前記可動部材が設けられた位置に前記高熱膨張部を有していてもよい(請求項10)。この場合、インナー部材が持つ高熱膨張部は、静止体の内部の温度上昇に伴って可動部材をアウター部材に押し当てる。これにより、可動部材の変位が制限されて密着力の低下を補うことができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、感温シール手段の性状が回転体の回転速度の上昇に伴う静止体の温度変化に応じて変化することにより、回転体の回転速度の上昇に伴う密着力の低下が補われるため、回転体の回転停止時における密着力を必要以上に高めておかなくてもよい。従って、回転体の低回転速度時における摩擦抵抗を低減しつつ、回転速度の上昇に伴うオイル漏れを効果的に防止できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(第1の形態)
図1は本発明の第1の形態に係るオイルシールが組み付けられた内燃機関の要部を示した斜視図であり、図2はその要部の断面模式図である。なお、図2において、本発明に係るオイルシールは軸線CLに関して軸対称であるので片側の断面のみ図示することとする。また、特に断らない限り他の断面図についても片側の断面のみ図示する。図1及び図2に示すように、クランク軸101は軸線CL回りに回転自在な状態でクランクケース100に取付けられている。オイルシール1Aは、静止体としてのクランクケース100と回転体としてのクランク軸101との間に設けられる。即ちオイルシール1Aはクランクケース100とクランク軸101との間に形成される環状の隙間に装着される。オイルシール1Aはクランクケース100の外側である大気側ASとクランクケース100の内側である密封側OSとを区画することにより、密封側OSから大気側ASへのオイルやブローバイガス等の流体の漏洩を防止するとともに、大気側ASから密封側OSへの埃等の異物の侵入を防止する。図2に示すように、オイルシール1Aはクランク軸101と同軸的に設けられた環状のアウター部材2及び環状のインナー部材3をそれぞれ有している。アウター部材2はオイルシールリテーナ103を介在させてクランクケース100に装着され、インナー部材3はクランク軸101に一体回転可能に装着されている。アウター部材2とインナー部材3とは、両者の間に隙間Gが形成されるように互いに離されて組み合わされている。
【0018】
アウター部材2は、オイルシールリテーナ103に固定され、かつ軸線CL方向に延びる外側円筒部21と、外側円筒部21の大気側ASの端部から径方向内側に延びる内向きフランジ部22とを有している。内向きフランジ部22は、外側円筒部21に対して略直角に径方向内側に向かって立ち上がる直立壁部22aと、軸線CL方向に延びて外側円筒部21と略平行な側壁部22bと、密封側OSに向かって傾いて直立壁部22aと側壁部22bとを接続する傾斜壁部22cとを有している。一方、インナー部材3は、クランク軸101に固定されかつ軸線CL方向に延びる内側円筒部31と、内側円筒部31の密封側OSの端部から径方向外側に延びる外向きフランジ部32とを有している。外向きフランジ部32はアウター部材2の内向きフランジ部22と対向するように配置される。即ち、外向きフランジ部32は、内側円筒部31に対して略直角に径方向外側に向かって立ち上がる直立壁部32aと、直立壁部32aに続いて軸線CL方向に延びて内向きフランジ部22の側壁部22bと略平行な側壁部32bと、側壁部32bに続いて大気側ASに向かって傾くように延びて内向きフランジ部22の傾斜壁部22cと略平行な傾斜壁部32cとを備えている。
【0019】
アウター部材2とインナー部材3とで形成される隙間Gのうち、内向きフランジ部22の側壁部22bと外向きフランジ部32の側壁部32bとの間に形成される隙間G1には、可動部材としての環状の可動リップ4が配置されている。可動リップ4はインナー部材3と一体回転できるように直立壁部32aに密封側OSの一端が接合されている。可動リップ4は直立壁部32aに取付けられた取付け部4aと、取付け部4aから大気側ASに向かって延びる中間部4bと、中間部4bに続く先端部4cとを有している。取付け部4aはバネ材等の高靱性の金属材料にて弾性変形可能に構成されている。中間部4b及び先端部4cはゴム等の弾性体で構成されていて、取付け部4aに一体的に接合されている。先端部4cには、可動リップ4を径方向内側へ付勢する環状のガータースプリング6が取付けられている。クランク軸101の回転停止時において、可動リップ4はガータースプリング6の弾性力によって閉塞部材としての高熱膨張部材7を介してアウター部材2と接触状態に保持されている。高熱膨張部材7は、可動リップ4とアウター部材2との間に介在するようにしてアウター部材2に設けられている。高熱膨張部材7は、例えばマンガン等の金属材料や樹脂材料等のアウター部材2よりも高い熱膨張率を有した材料で構成されている。
【0020】
図2に示すように、アウター部材2とインナー部材3とで形成される隙間Gのうち、内向きフランジ部22の傾斜壁22cと外向きフランジ部32の傾斜壁32cとの間で形成される隙間G2には、浮動リング8が配置されている。浮動リング8はクランク軸101の回転中にアウター部材2及びインナー部材3のそれぞれと非接触の状態で隙間G2内を移動できる。つまり浮動リング8は、隙間G2内に存在するオイルを浮動リング8とアウター部材2との間及び浮動リング8とインナー部材3との間にそれぞれ介在させた状態で、インナー部材3の周速度よりも遅い速度でインナー部材3と同心的に回転するようになっている。浮動リング8の厚さ寸法は、浮動リング8、アウター部材2及びインナー部材3の三者の間でラビリンスシールが形成されるように隙間G2の大きさを考慮して設定される。
【0021】
図3は、クランク軸101の回転速度と、可動リップ4をアウター部材2に押し付ける力(密着力)との関係を示した説明図である。図3の破線は高熱膨張部材7を備えていない比較例の密着力を示している。オイルシール1Aによれば、クランク軸101が回転するとインナー部材3がクランク軸101と一体回転するので、可動リップ4には径方向外側に向かう遠心力が作用する。クランク軸101の回転速度の上昇に伴ってその遠心力が大きくなるので、図3に示すように、クランク軸101の回転速度の上昇に伴って密着力が徐々に減少する。この特性には、オイルシール1Aと比較例との間で相違はない。更に、回転速度が上昇して遠心力が限界を超えて大きくなると、比較例の場合には密着力がゼロつまり可動リップ4がアウター部材2から完全に離れる。
【0022】
これに対し、オイルシール1Aは、クランク軸101の回転速度が上昇すると、その上昇に伴ってクランクケース100内の温度も上昇して高熱膨張部材7の体積が増加する。高熱膨張部材7の体積が増加すると、図2の破線に示すように、高熱膨張部材7の径方向の寸法が増加して可動リップ4が径方向外側に押し返される。これにより密着力が徐々に増加してクランク軸101の回転速度の上昇に伴う密着力の低下が抑制される。つまり、高熱膨張部材7の体積(性状)の変化によって密着力の低下が補われるようになる。
【0023】
このような可動リップ4の特性は、可動リップ4に設けられたガータースプリング6の外径やバネ定数、可動リップ4の取付け部4aの材料や寸法等の諸要素や、高熱膨張部材7の構成材料、径方向の寸法等の諸要素の設定に依存する。従って、これらの諸要素を適宜に設定することにより可動リップ4の動作特性を調整できる。例えば、図3に示した形態のように、可動リップ4にて隙間G1がクランク軸101の回転速度に拘わらず常時塞がれるようにするには、クランク軸101の回転速度の上昇に伴う可動リップ4の変位量よりも温度上昇に伴う高熱膨張部材7の径方向の寸法の変化量が大きくなるように、それらの諸要素を設定すればよい。こうすることにより、クランク軸101の回転速度に拘わらず可動リップ4が高熱膨張部材7によって常時押し返されて、隙間G1が塞がれた状態に維持される。また、内燃機関の通常の運転領域で浮動リング8によるシール機能が十分に発揮される場合においては、可動リップ4がアウター部材2から完全に離れる中速回転領域が存在するように上述した諸要素を設定してもよい。この場合には、クランク軸101の回転速度が中速回転領域を超えて更に上昇した高速回転時において、感温シール機構としての高膨張部材7にて隙間G1が塞がれるように高熱膨張部材7の諸要素を設定する。これにより、オイルシール1Aをクランク軸101の高速回転時のシール性確保のみを狙った構成とすることもできる。
【0024】
以上のオイルシール1Aによれば、クランク軸101の回転速度の上昇に伴う密着力の低下が高熱膨張部材7の性状変化により補われる。つまり、高熱膨張部材7は本発明の感温シール手段として機能する。オイルシール1Aは、クランク軸101の回転停止時の密着力を必要以上に大きくする必要がないので、クランク軸101の低速回転時の摩擦抵抗を低減でき、燃費向上に寄与できる。また、上述したように、オイルシール1Aを高速回転時のシール性確保のみを狙った構成とした場合には、そのオイルシール1Aはクランク軸101の停止時以外の回転領域における摩擦抵抗を低減する可動リップ4の特性を生かしつつ、高速回転時のオイル漏れを防止する手段として有効に機能する。
【0025】
(第2の形態)
次に、本発明の第2の形態を図4を参照して説明する。この形態は閉塞部材としての高熱膨張部材の取付け位置のみが第1の形態と相違するもので、他の構成は第1の形態と同一である。以下の説明では、第1の形態と同一構成には同一の符号を付して説明を省略する。図4に示すように、この形態のオイルシール1Bは、高熱膨張部材207が可動リップ4の先端部4cに設けられている。これにより、高熱膨張部材207は、第1の形態と同様の効果を発揮できる。即ち、クランクケース100内の温度が上昇すると、高熱膨張部材207の体積が増加して図4の破線に示すように高熱膨張部材207の径方向の寸法が増加する。これにより、可動リップ4は径方向外側に押し返される。そのため、クランクケース100内の温度上昇に伴って密着力が徐々に増加するので、クランク軸101の回転速度の上昇に伴う密着力の低下が抑制される。
【0026】
(第3の形態)
次に、本発明の第3の形態を図5を参照して説明する。この形態は、閉塞部材としての高熱膨張部材の構成に特徴を有している。上記形態と同一の構成については図5において同一の符号を付して説明を省略する。図5に示したオイルシール1Cは、高熱膨張部材307がアウター部材2とインナー部材3との間に介在するように配置されている。図示の形態では、高熱膨張部材307が、アウター部材2とインナー部材3とで形成される隙間Gのうち、内向きフランジ部22の側壁部22bと内側円筒部31とで形成される隙間G3に配置されるようにしてインナー部材3に設けられている。高熱膨張部材307の構成材料は上記形態と同様でよい。高熱膨張部材307は軸線CL方向に延びており、軸線CL方向の寸法は側壁部22bに相当する長さに設定されている。以上の構成により、クランクケース100内の温度が上昇すると、高熱膨張部材307の体積が増加して図5の破線に示すように高熱膨張部材307の径方向の寸法が増加する。これにより隙間G3が高熱膨張部材307にて塞がれて、可動リップ4の変位に伴う密着力の低下を補うことができる。
【0027】
高熱膨張部材307にて隙間G3が塞がれるようになる温度は、高熱膨張部材307の構成材料、径方向の寸法等の諸要素を適宜に設定することにより調整可能である。そのような調整によって、可動リップ4がアウター部材3から離れる前に高熱膨張部材307にて隙間G3が塞がれるようにすることもできるし、可動リップ4がアウター部材3から離れた後に高熱膨張部材307にて隙間G3が塞がれるようにすることもできる。また、この形態では、高熱膨張部材307の軸線CL方向の寸法を特段の制約なく増減させることができるので、その寸法を増減させることにより高熱膨張部材307とアウター部材2との接触面積を容易に調整できる。つまり、高熱膨張部材307によるシール効果の調整が容易になる。
【0028】
高熱膨張部材307の形状は適宜に設定できる。例えば、図5の一点鎖線で示すように、アウター部材3の端部を横切るように形成された受圧部307aを高熱膨張部材307に設けてもよい。これにより、クランクケース100の内圧(密封側OSの圧力)が大気圧よりも高い場合には、受圧部307aがその内圧を受けて高熱膨張部材307が隙間G3を塞ぐ方向に付勢されるので、高熱膨張部材307とアウター部材2との密着力を向上できるようになる。
【0029】
(第4の形態)
次に、本発明の第4の形態を図6を参照して説明する。この形態は閉塞部材としての高熱膨張部材の構成に特徴を有している。上記形態と同一の構成については図6において同一の符号を付して説明を省略する。図6に示したオイルシール1Dは、隙間G3を横切り、かつ径方向に延びるようにしてアウター部材2とインナー部材3との間に配置されるとともに、径方向の一端がアウター部材2に固定され、かつ径方向の他端が開放された高熱膨張部材407を有している。また、オイルシール1Dのインナー部材3には、高熱膨張部材407が熱により伸長した場合に高熱膨張部材407を受入れて高熱膨張部材407を拘束する凹部3aが形成されている。この形態のオイルシール1Dによれば、クランクケース100の内部の温度上昇に伴って高熱膨張部材407の体積が増加して伸長する。その際に高熱膨張部材407が凹部3aに挿入されることで、高熱膨張部材407が拘束される。これによって、例えば、高熱膨張部材407にて隙間G3が塞がれている間にクランクケース100の内圧が変動するような場合であっても、高熱膨張部材407が凹部3aにて拘束されるので、隙間G3を確実に塞ぐことが可能になる。
【0030】
(第5の形態)
次に、本発明の第5の形態を図7を参照して説明する。この形態は閉塞部材としての高熱膨張部材の向きが第4の形態と相違している。上記と同一の構成については、図7に同一の符号を付して説明を省略する。この形態のオイルシール1Eは、隙間G3を横切り、かつ軸線CL方向に延びるようにしてアウター部材2とインナー部材3との間に配置されるとともに、大気側ASの一端がアウター部材2に固定され、かつ密封側OSの他端が開放された高熱膨張部材507を有している。なお、この形態のアウター部材2の側壁部22bは、高熱膨張部材507の伸長量や強度等の諸要因を考慮して上記の形態よりもインナー部材3側に延長されている。オイルシール1Eによれば、クランクケース100の内部の温度上昇に伴って高熱膨張部材507の体積が増加して伸長する。それによって、高熱膨張部材507の先端がインナー部材3に接触し隙間G3を塞ぐことができる。
【0031】
この形態の場合においても、図6の形態と同様にインナー部材3に凹部を形成してもよい。また、インナー部材2の側壁部22bの少なくとも一部を高熱膨張部材507と同一の材料で構成し、側壁部22b自身を高熱膨張部材として機能させてもよい。これによって、上記と同等の効果を発揮でき、なおかつ部品点数の削減に寄与できる。
【0032】
(第6の形態)
次に、本発明の第6の形態を図8を参照して説明する。この形態は閉塞部材の構成が上記と相違し、オイルシール1Fは閉塞部材としてのバイメタル部材10を有している。上記の形態と共通する構成については、図8に同一の符号を付して説明を省略する。バイメタル部材10は、異種の金属材料が組み合わされてなる環状部材であり、設定温度を超えることにより直線状から湾曲状にその形状を変化させる。設定圧力以下になった場合には、元の形状に復帰する。つまり湾曲状から直線状に形状が変化する。図8に示すように、バイメタル部材10は大気側ASが端部がアウター部材2の側壁部22bに固定され、密封側OSの端部が開放されるようにして隙間G3に配置されている。クランクケース100の内部の温度が上昇して設定温度を超えた場合には、図8の破線で示すようにバイメタル部材10は隙間G3を横切る方向で、かつ径方向内側に変形して、その先端がインナー部材3に接触し、それにより隙間G3が塞がれる。
【0033】
バイメタル部材10がインナー部材3に接触した際に、その外周面11が密封側OSを向く。クランクケース100の内圧が大気圧よりも高い場合には、その内圧がバイメタル部材10の外周面11に作用するので、その圧力を受けたバイメタル部材10は隙間G3を塞ぐ方向に付勢される。そのため、クランクケース100の内圧を利用してバイメタル部材10をインナー部材3に押し当てることができるので、バイメタル部材10によるシール効果が向上する。このように、バイメタル部材10の外周面11は本発明の受圧部として機能する。
【0034】
バイメタル部材10は、周方向に連続した環状部材であるので、インナー部材3との接触力がインナー部材3の周方向に関して変化し難い。即ち、インナー部材3の周方向に関する接触力の変動を抑えることができる。従って、オイルシール1Fによれば、バイメタル部材10によるシール効果の周方向に関する均一性が向上する。
【0035】
図9は、クランク軸101の回転速度とオイルの漏れ量との関係を説明する説明図である。図9の実線はオイルシール1Fを、破線はバイメタル部材10を省略した比較例をそれぞれ示している。図中A点はバイメタル部材10とインナー部材3との接触が開始する回転速度を、B点は可動リップ4がアウター部材2から離れ始める回転速度をそれぞれ示している。この図から明らかなように、比較例の場合にはB点を超えると可動リップ4がアウター部材2から離れ始め、回転速度が速くなるほど可動リップ4とアウター部材2との間隔が拡大する。そのため比較例の場合には回転速度の上昇に伴って漏れ量が徐々に増加する。これに対し、オイルシール1Fの場合には、可動リップ4がアウター部材2から離れ始める前、つまりA点においてバイメタル部材10がインナー部材と接触して隙間G3が塞がれる。そのため、回転速度がB点を超えて可動リップ4がアウター部材から離れた場合でも、オイル漏れは殆ど発生しない。従って、回転速度の上昇に伴う可動リップ4とアウター部材3との密着力の低下がバイメタル部材10にて補われる。オイルシール1Fによれば、バイメタル部材10の設定温度を適宜に調整することにより、図9に示すように可動リップ4とバイメタル部材10との両者によってシールされるA点からB点まで領域ARを設けることができる。そのため、可動リップ4による摩擦抵抗の低減を図りつつシール効果の確実性を向上させることも可能である。
【0036】
なお、クランク軸101の回転速度とクランクケース100の内部の温度との関係は内燃機関の形態に応じてそれぞれ異なるが、一般的には、回転速度が高い場合は低い場合よりもクランクケース100の内部の温度は高くなる傾向がある。従って、オイルシール1Fを適用する内燃機関についてその関係を予め調査しておき、その結果を考慮してバイメタル部材10の設定温度を調整することにより、バイメタル部材10によって隙間G3が塞がれる回転速度(図9のA点)を所望の回転速度に設定することができる。
【0037】
(第7の形態)
次に、本発明の第7の形態を図10を参照して説明する。この形態のオイルシール1Gは図8の形態と同様のバイメタル部材210を有している。但し、バイメタル部材210の向きが図8の形態と反対向きで、かつバイメタル部材210がインナー部材3に取付けられている。それ以外は上記の形態と同一であるので、図10に同一の構成に同一の符号を付してその説明を省略する。図10に示したバイメタル部材210は、大気側ASが端部がインナー部材3の内側円筒部31に固定され、密封側OSの端部が開放されるようにして隙間G3に配置されている。クランクケース100の内部の温度が上昇してバイメタル部材210の設定温度を超えた場合には、図10の破線で示すようにバイメタル部材10は隙間G3を横切る方向で、かつ径方向外側に変形して、その先端がアウター部材2に接触し、それにより隙間G3が塞がれる。よって、この形態も第6の形態と同様の効果を奏する。また、バイメタル部材210がアウター部材2に接触した際に、バイメタル部材210の内周面211が密封側OSを向く。このため、第6の形態と同様にバイメタル部材210の内周面211が本発明の受圧部として機能する。
【0038】
また、一般にクランクケース100には、内燃機関のクランク軸101が熱源として存在するので、クランク軸101の温度上昇から所定時間経過するまでの間に、クランク軸101側の温度が高くクランク軸101から離れるに従って温度が低くなる温度勾配が形成される。オイルシール1Gは、バイメタル部材210がインナー部材3に設けられているので、内燃機関側の温度変化をいち早く察知することができる。従って、オイルシール1Gによれば、図8に示した第6の形態と比べてバイメタル部材210の応答性を向上させることができる。
【0039】
(第8の形態)
次に、本発明の第8の形態を図11及び図12を参照して説明する。この形態は、本発明に係る感温シール手段の一態様である変位制限手段の構成に特徴を有している。この形態と上述した形態との間で共通する構成については、これらの図に同一の符号を付して説明を省略する。これらの図に示すように、オイルシール1Hは、可動リップ4の外周側とインナー部材3との間に配置されて、可動リップ4とインナー部材3とを連結する連結部材12が設けられている。連結部材12はコイルスプリング等の弾性部材として設けられ、しかも形状記憶合金や形状記憶樹脂等の形状記憶材料で構成されている。そのため、クランクケース100の内部の温度が上昇して連結部材12の設定温度に達すると、連結部材12の全長が延びる。これにより、可動リップ4はアウター部材2に押し付けられるように連結部材12にて付勢される。つまり、連結部材12は可動リップ4をアウター部材2に接近する方向へ付勢する付勢手段として機能する。これにより、クランク軸101の回転速度の上昇に伴う可動リップ4の変位が連結部材12にて制限されるので、その変位に伴う密着力の低下を補うことができる。このような連結部材12は、図12に示すように可動リップ4の周方向に沿って複数個設けられている。これらの連結部材12の間隔は等間隔でも不等間隔でも構わない。
【0040】
図11及び図12では、連結部材12の圧縮反力により可動リップ4を付勢する形態が示されているが、図13に示したように、連結部材12の引張力により可動リップ4を付勢するものでもよい。図13の連結部材12は、設定温度を超えた場合に全長が縮むように構成されている。これにより、図12及び図13と同等の効果を発揮できる。
【0041】
(第9の形態)
次に、本発明の第9の形態を図14を参照して説明する。この形態は、本発明に係る感温シール手段の一態様である変位制限手段の構成に特徴を有している。変位制限手段の実施形態として、上述の形態と異なる可動部材が設けられている。この形態と上述した形態との間で共通する構成については、図14に同一の符号を付して説明を省略する。オイルシール1Iは、インナー部材3に設けられた可動リップ904を有している。可動リップ904は、これをインナー部材3に支持する熱可塑性支持部904aを有している。可動リップ904は、この熱可塑性支持部904aを有することを除き、上述した可動リップ4と同一機能を持っている。熱可塑性支持部904aは、クランクケース100の内部の温度上昇に伴って弾性率が増大するように構成されている。つまり、温度上昇に伴い熱可塑性支持部904aが硬化して弾性変形し難い状態に変化する。これにより、クランク軸101の回転速度の上昇に伴う可動リップ904の変位が熱可塑性支持部904aの弾性率の増大によって制限されることになるので、可動リップ904の変位に伴う密着力の低下を補うことが可能となる。こうして、熱可塑性支持部904aが本発明の変位制限手段として機能する。
【0042】
(第10の形態)
次に、本発明の第10の形態を図15を参照して説明する。この形態は、本発明に係る感温シール手段の一態様である変位制限手段の構成に特徴を有している。変位制限手段の実施形態として、上述の形態と異なるインナー部材が設けられている。この形態と上述した形態との間で共通する構成については、図14に同一の符号を付して説明を省略する。オイルシール1Jは、高熱膨張部103aを有したインナー部材103を備えている。インナー部材103は、可動リップ4が設けれた位置に高熱膨張部103aを有している。高熱膨張部103aは、例えばマンガン等の金属材料や樹脂材料等のインナー部材103の他の部分よりも高い熱膨張率を有した材料で構成されている。クランクケース100の内部の温度が上昇すると、高熱膨張部103aの体積が増加して図15の破線の位置まで変形する。そのため、図15の破線で示すように可動リップ4が図15の上方に変位し、その変位によって可動リップ4がアウター部材2に押し当てられる。可動リップ4がアウター部材2に押し当てられることで、クランク軸101の回転速度の上昇に伴う可動リップ4の変位、即ちアウター部材2から離れる方向への変位が阻止される。これにより、その変位に伴う密着力の低下が補われるようになる。こうして、高熱膨張部103aが変位制限手段として機能する。
【0043】
本発明は、上記各形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の形態にて実施することができる。例えば、本発明のオイルシールの適用対象は、内燃機関の他、回転体の回転速度の上昇に伴って内部の温度が上昇する静止体を有するもの、例えば各種ポンプに適用することもできる。本発明のオイルシールをポンプに適用する場合には、本発明のオイルシールを静止体としてのポンプハウジングと、ポンプハウジングに回転自在に取付けられるポンプ軸との間に設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1の形態に係るオイルシールを内燃機関に適用した要部を示す斜視図。
【図2】図1のオイルシールの要部を示した断面模式図。
【図3】クランク軸の回転速度と、可動リップをアウター部材に押し付ける力(密着力)との関係を示した説明図。
【図4】本発明の第2の形態に係るオイルシールを内燃機関に適用した要部を示す断面模式図。
【図5】本発明の第3の形態に係るオイルシールを内燃機関に適用した要部を示す断面模式図。
【図6】本発明の第4の形態に係るオイルシールを内燃機関に適用した要部を示す断面模式図。
【図7】本発明の第5の形態に係るオイルシールを内燃機関に適用した要部を示す断面模式図。
【図8】本発明の第6の形態に係るオイルシールを内燃機関に適用した要部を示す断面模式図。
【図9】クランク軸の回転速度とオイルの漏れ量との関係を説明する説明図。
【図10】本発明の第7の形態に係るオイルシールを内燃機関に適用した要部を示す断面模式図。
【図11】本発明の第8の形態に係るオイルシールを内燃機関に適用した要部を示す断面模式図。
【図12】図11のオイルシールに係る連結部材付近を軸線方向から示した断面模式図。
【図13】第8の変形例を示した説明図。
【図14】本発明の第9の形態に係るオイルシールを内燃機関に適用した要部を示す断面模式図。
【図15】本発明の第10の形態に係るオイルシールを内燃機関に適用した要部を示す断面模式図。
【符号の説明】
【0045】
1A〜1J オイルシール
2 アウター部材
3、103 インナー部材
4、904 可動リップ(可動部材)
7、207、307、407、507 高熱膨張部材(閉塞部材、感温シール手段)
10、210 バイメタル部材(閉塞部材、感温シール手段)
11 外周面(受圧部)
12 連結部材(付勢部材、変位制限手段、感温シール手段)
103a 高熱膨張部(変位制限手段、感温シール手段)
211 内周面
307a 受圧部
904a 熱可塑性支持部(変位制限手段、感温シール手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体と、前記回転体が回転自在に取付けられ、かつ前記回転体の回転速度の上昇に伴って内部の温度が上昇する静止体との間に設けられるオイルシールであって、
前記静止体に装着されるアウター部材と、前記回転体に一体回転可能に装着されるとともに、前記アウター部材との間に所定の隙間が形成されるようにして前記アウター部材と組み合わされるインナー部材と、前記所定の隙間に配置され、かつ前記回転体の回転停止時に前記アウター部材と接触して前記所定の隙間が所定の密着力にて塞がれた状態で前記インナー部材に設けられるとともに、前記回転体の回転速度の上昇に伴って前記アウター部材から離れる方向に変位可能な可動部材と、前記可動部材の変位に伴う前記所定の密着力の低下が補われるように、前記静止体の内部の温度変化に応じて性状を変化させる感温シール手段と、を備えることを特徴とするオイルシール。
【請求項2】
前記感温シール手段として、前記静止体の内部の温度変化に応じて性状を変化させることにより前記所定の隙間を塞ぐことが可能な閉塞部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のオイルシール。
【請求項3】
前記閉塞部材として、前記所定の隙間に配置され、かつ前記アウター部材及び前記インナー部材の少なくとも一方の構成材料よりも高い熱膨張率を有した高熱膨張部材が設けられていることを特徴とする請求項2に記載のオイルシール。
【請求項4】
前記閉塞部材として、前記可動部材と前記アウター部材との間に介在するように配置され、かつ前記アウター部材及び前記インナー部材の少なくとも一方の構成材料よりも高い熱膨張率を有した高熱膨張部材が設けられていることを特徴とする請求項2に記載のオイルシール。
【請求項5】
前記閉塞部材として、前記所定の隙間に配置されるように、前記アウター部材又は前記インナー部材のいずれか一方に設けられ、かつ前記所定の隙間を横切る方向に変形可能なバイメタル部材が設けられていることを特徴とする請求項2に記載のオイルシール。
【請求項6】
前記感温シール手段は、前記静止体の内圧を受けて前記所定の隙間を塞ぐ方向に前記閉塞部材を付勢する受圧部を有していることを特徴とする請求項2に記載のオイルシール。
【請求項7】
前記感温シール手段として、前記静止体の内部の温度変化に応じて性状を変化させることにより前記可動部材の変位を制限可能な変位制限手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のオイルシール。
【請求項8】
前記変位制限手段として、前記可動部材を前記アウター部材に接近する方向へ付勢する付勢部材が設けられていることを特徴とする請求項7に記載のオイルシール。
【請求項9】
前記変位制限手段として、前記インナー部材に前記可動部材を支持し、かつ前記静止体の内部の温度上昇に伴って弾性率が増大する熱可塑性支持部が設けられていることを特徴とする請求項7に記載のオイルシール。
【請求項10】
前記変位制限手段として、前記静止体の内部の温度上昇に伴って前記可動部材が前記アウター部材に押し当てられてその変位が阻止されるように膨張する高熱膨張部が設けられ、前記インナー部材は前記可動部材が設けられた位置に前記高熱膨張部を有していることを特徴とする請求項7に記載のオイルシール。
【請求項1】
回転体と、前記回転体が回転自在に取付けられ、かつ前記回転体の回転速度の上昇に伴って内部の温度が上昇する静止体との間に設けられるオイルシールであって、
前記静止体に装着されるアウター部材と、前記回転体に一体回転可能に装着されるとともに、前記アウター部材との間に所定の隙間が形成されるようにして前記アウター部材と組み合わされるインナー部材と、前記所定の隙間に配置され、かつ前記回転体の回転停止時に前記アウター部材と接触して前記所定の隙間が所定の密着力にて塞がれた状態で前記インナー部材に設けられるとともに、前記回転体の回転速度の上昇に伴って前記アウター部材から離れる方向に変位可能な可動部材と、前記可動部材の変位に伴う前記所定の密着力の低下が補われるように、前記静止体の内部の温度変化に応じて性状を変化させる感温シール手段と、を備えることを特徴とするオイルシール。
【請求項2】
前記感温シール手段として、前記静止体の内部の温度変化に応じて性状を変化させることにより前記所定の隙間を塞ぐことが可能な閉塞部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のオイルシール。
【請求項3】
前記閉塞部材として、前記所定の隙間に配置され、かつ前記アウター部材及び前記インナー部材の少なくとも一方の構成材料よりも高い熱膨張率を有した高熱膨張部材が設けられていることを特徴とする請求項2に記載のオイルシール。
【請求項4】
前記閉塞部材として、前記可動部材と前記アウター部材との間に介在するように配置され、かつ前記アウター部材及び前記インナー部材の少なくとも一方の構成材料よりも高い熱膨張率を有した高熱膨張部材が設けられていることを特徴とする請求項2に記載のオイルシール。
【請求項5】
前記閉塞部材として、前記所定の隙間に配置されるように、前記アウター部材又は前記インナー部材のいずれか一方に設けられ、かつ前記所定の隙間を横切る方向に変形可能なバイメタル部材が設けられていることを特徴とする請求項2に記載のオイルシール。
【請求項6】
前記感温シール手段は、前記静止体の内圧を受けて前記所定の隙間を塞ぐ方向に前記閉塞部材を付勢する受圧部を有していることを特徴とする請求項2に記載のオイルシール。
【請求項7】
前記感温シール手段として、前記静止体の内部の温度変化に応じて性状を変化させることにより前記可動部材の変位を制限可能な変位制限手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のオイルシール。
【請求項8】
前記変位制限手段として、前記可動部材を前記アウター部材に接近する方向へ付勢する付勢部材が設けられていることを特徴とする請求項7に記載のオイルシール。
【請求項9】
前記変位制限手段として、前記インナー部材に前記可動部材を支持し、かつ前記静止体の内部の温度上昇に伴って弾性率が増大する熱可塑性支持部が設けられていることを特徴とする請求項7に記載のオイルシール。
【請求項10】
前記変位制限手段として、前記静止体の内部の温度上昇に伴って前記可動部材が前記アウター部材に押し当てられてその変位が阻止されるように膨張する高熱膨張部が設けられ、前記インナー部材は前記可動部材が設けられた位置に前記高熱膨張部を有していることを特徴とする請求項7に記載のオイルシール。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−239943(P2007−239943A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−65993(P2006−65993)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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