説明

オイルパン

【課題】 本発明は、内燃機関のオイルパンにおいて、該オイルパンに貯留するオイルの温度を好適に低下させることができる技術を提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明のオイルパン1は、オイル溜まり部10より上方に位置して内燃機関から落下するオイルを受ける受け皿部20と受け皿部20からオイル溜まり部10へ垂下する脚部21とを備えたバッフルプレート2を中空に形成し、その中空部22に冷媒3を封入する。内燃機関からバッフルプレート2に落下したオイルの熱及びオイル溜まり部10に溜まったオイルの熱は、バッフルプレート2の中空部22に封入された冷媒3によってオイルパン1の壁面へ放熱される。その結果、オイル溜まり部10に溜まるオイルの温度が好適に低下する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のオイルパン構造に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関のオイルパンとしては、オイルパンの内底面に複数の突状体を立設した構成(例えば、特許文献1を参照)や、オイルパン内に蓄熱剤を配置した構成(例えば、特許文献2を参照)等が知られている。
【特許文献1】実開平2−61110号公報
【特許文献2】実開平1−88010号公報
【特許文献3】実開平4−107430号公報
【特許文献4】実開平3−71115号公報
【特許文献5】特開2004−150349号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、オイルパンの内底面に複数の突状体を立設した構成では、オイルから突状体へ伝達された熱がオイルパンの底面に速やかに伝わり難いため十分な冷却効果を得ることが困難となる場合がある。また、オイルパン内に蓄熱剤を配置した構成では、蓄熱剤がオイルパンの底部に位置するため、底部近傍に滞留するオイルは冷却されるが、液面付近に滞留するオイルが冷却され難いという問題がある。
【0004】
本発明は、上記したような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、オイルパン内に貯留されるオイルの温度を好適に低下させることができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記した課題を解決するために、オイルパン内のオイル溜まり部より上方に位置して内燃機関から落下するオイルを受ける受け皿部と受け皿部からオイル溜まり部へ垂下する脚部を中空に形成するとともに、前記受け皿部と前記脚部の少なくとも一方をオイルパンの壁面に固定し、前記中空部に冷媒を充填するようにした。
【0006】
このように構成されたオイルパンでは、内燃機関を潤滑した後の高温なオイルが受け皿部に落下し、次いで受け皿部からオイル溜まり部へ滴下或いは脚部を伝ってオイル溜まり部へ移動する。
【0007】
オイルが受け皿部に落下した時及び脚部を伝う時には、該オイルの熱が受け皿部の壁面及び脚部の壁面を介して冷媒に伝達される。冷媒は、内燃機関の振動や車両の振動により受け皿部及び脚部の内部(中空部)を比較的高速で移動するため、オイルから受けた熱を速やかにオイルパン壁面へ伝導(放熱)することができる。
【0008】
従って、本発明のオイルパンによれば、内燃機関から落下したオイルがオイル溜まり部へ到達するまでに該オイルの熱を放熱させることが可能となる。その結果、オイル溜まり部に貯留されるオイルの温度を好適に低下させることができる。
【0009】
更に、内燃機関から落下したオイルがオイル溜まり部へ到達するまでに冷却されるようになると、内燃機関から落下したオイルに気泡が含まれている場合に該オイルがオイル溜まり部へ到達するまでに気泡が消泡し易くなる。その結果、オイル溜まり部に貯まるオイ
ルに含まれる気泡が減少するようになる。
【0010】
尚、内燃機関から落下するオイルの温度が非常に高い場合には、オイルがオイル溜まり部へ到達するまでに所望の温度まで低下しないことが予想されるが、脚部がオイル溜まり部まで垂下しているため、言い換えれば、脚部がオイル溜まり部に貯留されたオイルに浸漬しているため、オイル溜まり部に貯まったオイルの熱が脚部内の冷媒を介して放熱されるようになる。その結果、オイル溜まり部のオイルの温度が過剰に高くなることを抑制することができる。
【0011】
本発明において、受け皿部は、オイルパン内を上下に区画するバッフルプレートを兼用するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のオイルパンによれば、内燃機関を循環した後のオイルがオイル溜まり部へ到達する過程で該オイルの熱を放熱させることができるため、オイル溜まり部に溜まるオイルの温度を効果的に低下させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の具体的な実施形態について図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0014】
先ず、本発明の第1の実施例について図1〜図2に基づいて説明する。図1は内燃機関のオイルパンの構成を示す断面図であり、図2はバッフルプレートの平面図である。オイルパン1のオイル溜まり部10より上方には、バッフルプレート2が配置されている。
【0015】
バッフルプレート2は、オイル溜まり部10より上方に位置してオイルパン1の内部を上下に区画する受け皿部20と、受け皿部20の裏面からオイル溜まり部10に垂下する脚部21とを備えている。
【0016】
受け皿部20と脚部21は一体的に且つ中空に形成されている。受け皿部20と脚部21の中空部は相互に連通して1つの中空部22を形成している。前記中空部22には、冷媒3が封入されている。冷媒3は、例えば、低温域では固化状態となる金属ナトリウムや、Sn−Bi系或いはSn−Bi−Zn系の低融点合金を用い、内燃機関が運転停止状態にある時は重力によって脚部21の中空部22に収まる量が封入される。
【0017】
前記受け皿部20には、複数のオイル落とし穴23と、オイルストレーナ4を貫通させるための孔24が設けられている。
【0018】
このように構成されたオイルパン1では、内燃機関のシリンダブロックやクランクケースから落下したオイルが受け皿部20によって受け止められる。受け皿部20に受け止められたオイルは、オイル落とし穴23からオイル溜まり部10に滴下し、或いは脚部21を伝ってオイル溜まり部10に移動する。
【0019】
オイルが受け皿部20に付着している間(すなわち、受け皿部20に落下した時点からオイル落とし穴23に落ちる時点までの期間)、及びオイルがオイル落とし穴23から脚部21を伝ってオイル溜まり部10へ移動する間には、該オイルの熱が受け皿部20の壁面や脚部21の壁面を介して中空部22内の冷媒3に伝達される。
【0020】
冷媒3は、内燃機関の振動や車両の振動により受け皿部20及び脚部21の中空部22内を比較的高速で移動するため、オイルから受けた熱を速やかにオイルパン1の壁面へ伝
導(放熱)することができる。
【0021】
従って、本実施例のオイルパンによれば、内燃機関から落下したオイルがオイル溜まり部10へ到達する過程において該オイルの熱を速やかに放熱させることが可能となる。その結果、オイル溜まり部10には冷却後のオイルが貯留されるため、オイル溜まり部10に貯留されるオイルはおしなべて低温となる。
【0022】
オイル溜まり部10に貯留するオイルの温度が低くなると、オイルストレーナ4が低温のオイルを吸い上げることになるため、内燃機関には低温のオイルが循環するようになる。依って、内燃機関において油膜切れや油圧不足等が発生し難くなる。
【0023】
更に、内燃機関から落下したオイルがオイル溜まり部10へ到達するまでに冷却されようになると、内燃機関から落下するオイルに気泡が含まれていても該オイルがオイル溜まり部10へ到達するまでに気泡が減少するようになる。このため、オイル溜まり部10に溜まるオイルに多量の気泡が含まれることがなくなる。その結果、多量の気泡を含んだオイルが内燃機関を循環することを防止することもできる。
【0024】
また、内燃機関が高負荷運転された場合のように内燃機関から落下するオイルが多量の熱を含んでいる場合には、オイルがオイル溜まり部10へ到達するまでの期間に該オイルの熱を十分に放熱することができなくなることが予想されるが、バッフルプレート2の脚部21がオイル溜まり部10のオイルに浸漬しているため、オイル溜まり部10に溜まったオイルの熱を脚部21の壁面及び冷媒3を介して放熱することができる。従って、オイルがオイル溜まり部10へ到達するまでの期間内に該オイルの熱を十分に放熱することができない場合であっても、オイル溜まり部10に溜まったオイルの温度を低下させることができる。
【0025】
尚、本実施例のバッフルプレート2は、脚部21がオイル落とし穴23の縁部から垂下するように構成されてもよい。この場合、オイル落とし穴23に入ったオイルが脚部21を伝ってオイル溜まり部10へ移動し易くなるため、オイル落とし穴23から脚部21を伝わらずにオイル溜まり部10へ滴下するオイル量が減少する。
【0026】
オイル落とし穴23からオイル溜まり部10へ滴下するオイル量が減少すると、オイルがオイル溜まり部10のオイル面に滴下した衝撃に起因した気泡の発生を抑制することができる。依って、オイル溜まり部10に溜まったオイルに含まれる気泡を減少させることが可能となる。
【実施例2】
【0027】
次に、本発明の第2の実施例について図3に基づいて説明する。ここでは、前述した第1の実施例と異なる構成について説明し、同様の構成については説明を省略する。
【0028】
図3は、本実施例におけるオイルパン1の構成を示す断面図である。図3において、オイルパン1の底部11には、複数の柱体12が立設されている。柱体12の上端には、径方向へ円板状に肥大した受け皿部13が形成されている。尚、柱体12の高さは、受け皿部13がオイル溜まり部10に溜まったオイルの液面より上方に位置するように設定される。
【0029】
オイルパン1の底部11と柱体12と受け皿部13は中空に形成され、それら中空部が相互に連通して1つの中空部14を形成している。この中空部14には、冷媒3が封入されている。
【0030】
冷媒3は、前述した第1の実施例と同様に、低温域では固化状態となる金属ナトリウムや、Sn−Bi系或いはSn−Bi−Zn系の低融点合金を用い、内燃機関が運転停止状態にある時は重力によって底部11から柱体12の下部にかけての中空部14に収まる量が封入される。
【0031】
このように構成されたオイルパン1では、内燃機関から落下したオイルが受け皿部13によって受け止められる。受け皿部13に受け止められたオイルは、柱体12を伝ってオイル溜まり部10に流入する。
【0032】
オイルが受け皿部13及び柱体12に付着している間(すなわち、受け皿部13に落下した時点からオイル溜まり部10に流入する時点までの期間)には、該オイルの熱が受け皿部13の壁面や柱体12の壁面を介して中空部14内の冷媒3に伝達される。
【0033】
冷媒3は、内燃機関の振動や車両の振動により中空部14内を比較的高速で移動するため、オイルから受けた熱を速やかにオイルパン1の底壁へ伝導(放熱)することができる。更に、オイル溜まり部10に溜まったオイルの熱も柱体12の壁面を介して冷媒3に伝達されるとともに、冷媒3によってオイルパン1の底壁へ速やかに伝導される。
【0034】
従って、本実施例のオイルパンによれば、オイル溜まり部10に溜まるオイルの温度を好適に低下させることが可能となる。
【0035】
尚、本実施例では、オイルパン1の底部11に柱体12を立設する例について述べたが、柱体12の代わりに格子状に構成された仕切り板であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施例1におけるオイルパンの構成を示す断面図である。
【図2】実施例1におけるバッフルプレートの平面図である。
【図3】実施例2におけるオイルパンの構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1・・・・・オイルパン
2・・・・・バッフルプレート
3・・・・・冷媒
4・・・・・オイルストレーナ
10・・・・オイル溜まり部
11・・・・底部
12・・・・柱体(脚部)
13・・・・受け皿部
14・・・・中空部
20・・・・受け皿部
21・・・・脚部
22・・・・中空部
23・・・・オイル落とし穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の下部に取り付けられるオイルパンにおいて、
オイルパン内のオイル溜まり部より上方に位置し前記内燃機関から落下するオイルを受ける受け皿部と前記受け皿部の裏面から前記オイル溜まり部へ垂下する脚部とを備え、
前記受け皿部及び前記脚部が中空に形成され、前記受け皿部と前記脚部の少なくとも一方がオイルパンに固定され、更に前記受け皿部及び前記脚部の中空部に冷媒が充填されることを特徴とするオイルパン。
【請求項2】
請求項1において、前記受け皿部は、前記オイルパン内を上下に区画するバッフルプレートであることを特徴とするオイルパン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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