説明

オイルフィルタ

【課題】エレメントの目詰まりを運転者に報知して当該エレメントの交換を早期に促すことができるとともに、製造コスト及びメンテナンスのためのコストを抑制することができるオイルフィルタを提供する。
【解決手段】円筒状部材1と、オイルを濾過するためのエレメント2と、エレメント2及び円筒状部材1を収容するケース3と、円筒状部材1内に導入されたオイルを導出する導出口8と、エレメント2を介さずにオイルを円筒状部材1内に導入するための導入孔15aと、導入孔15aを閉塞状態とするとともにオイルの圧力が所定値に達すると当該導入孔15aを開放してオイルを円筒状部材1内に導入させるリリーフバルブ11とを具備したオイルフィルタにおいて、オイルが導入孔15aを通過して円筒状部材1内に導入する際にリリーフバルブ11で生じる自励振動を増大させる板状部材17を具備したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等、特にガソリン車の内燃機関用オイルを濾過してオイル中に含まれる異物を除去し得るオイルフィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガソリン車に用いられているカートリッジ式のオイルフィルタは、従来、パンチングメタルを円筒状に形成してなる円筒状部材と、該円筒状部材の側面を覆う如く設けられ、オイルを濾過するためのエレメントとから主に成るエレメント組付体を有して構成されていた(例えば、特許文献1によって開示されたものが挙げられる)。このうち、エレメントは、プリーツ折りした所定の濾紙を円環状に丸めて円筒状部材側面を覆って構成されていた。
【0003】
そして、上記構成のオイルフィルタのエレメント組付体は、カップ状のケース内に収容されるとともに、当該ケース内に導入されたオイルをエレメントを介して円筒状部材内部に至らせることにより、そのオイルを濾過するようになっていた。然るに、円筒状部材には、エレメントの目詰まり時にエレメントを通過させることなく直接オイルを円筒状部材内部に至らせるためのリリーフバルブが形成されている。
【特許文献1】特開平11−276814号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のオイルフィルタにおいては、エレメントの目詰まり時にリリーフバルブが作用し、当該エレメントを通過させることなく直接オイルを円筒状部材内部に至らせた状態となった際、運転者はそれに気付かず、オイル中の異物をエレメントにて除去し得ない状態が長期に亘ってしまう虞があるという問題があった。リリーフバルブが作用したことを検知するためのセンサ等を配設し、それにより運転者にエレメントの目詰まりを報知することも考えられるが、その場合、センサが必要とされて製造コスト及びメンテナンスのためのコストが嵩んでしまうという不具合がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、エレメントの目詰まりを運転者に報知して当該エレメントの交換を早期に促すことができるとともに、製造コスト及びメンテナンスのためのコストを抑制することができるオイルフィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、側面にオイルを通過させるための複数の通過孔が形成された円筒状部材と、該円筒状部材の側面を覆う如く形成され、オイルを濾過するためのエレメントと、前記エレメントが組み付けられた円筒状部材を収容するケースと、前記円筒状部材の一方の端面側に形成され、当該円筒状部材内に導入されたオイルを導出する導出口と、前記円筒状部材の他方の端面側に形成され、前記エレメントを介さずにオイルを前記円筒状部材内に導入するための導入孔と、前記円筒状部材の他方の端面側に形成され、前記導入孔を閉塞状態とするとともにオイルの圧力が所定値に達すると当該導入孔を開放してオイルを前記円筒状部材内に導入させるリリーフバルブとを具備したオイルフィルタにおいて、オイルが前記導入孔を通過して前記円筒状部材内に導入する際に前記リリーフバルブで生じる自励振動を増大させる自励振動増大手段を具備したことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のオイルフィルタにおいて、前記リリーフバルブは、前記導入孔を開閉し得る弁体と、該弁体を閉塞方向に向かって付勢するコイルスプリングとを有して成り、前記自励振動増大手段は、当該弁体に形成された板状部材から成ることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項2記載のオイルフィルタにおいて、前記コイルスプリングは、前記弁体との当接端側がそれと反対側より密のピッチとされた不等ピッチバネから成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、自励振動増大手段により、オイルが導入孔を通過して円筒状部材内に導入する際にリリーフバルブで生じる自励振動を増大させるので、その増大された自励振動で生じる音により、エレメントの目詰まりを運転者に報知して当該エレメントの交換を早期に促すことができるとともに、別個センサ等を設置するものに比べ、製造コスト及びメンテナンスのためのコストを抑制することができる。
【0010】
請求項2の発明によれば、自励振動増大手段は、リリーフバルブを構成する弁体に形成された板状部材から成るので、極めて簡易な構成にてリリーフバルブで生じる自励振動を増大させることができ、製造コストをより抑制することができる。
【0011】
請求項3の発明によれば、コイルスプリングは、弁体との当接端側がそれと反対側より密のピッチとされた不等ピッチバネから成るので、リリーフバルブで生じる自励振動をより増大させることができ、エレメントの目詰まりをより確実に運転者に報知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係るオイルフィルタは、自動車等、特にガソリン車の内燃機関用オイルを濾過してオイル中に含まれる異物を除去し得るものであり、図1に示すように、円筒状部材1と、エレメント2と、ケース3と、リリーフバルブ11とから主に構成されている。
【0013】
円筒状部材1は、側面にオイルを通過させるための複数の通過孔1aが形成されたもので、例えばパンチングメタルをロール状に形成したものから成る。側面に形成される通過孔1aは、適宜の配列及び個数とすることができ、網目状のものをロール状に形成したものを円筒状部材としてもよい。この円筒状部材1の側面には、エレメント2が形成されている。
【0014】
かかるエレメント2は、円筒状部材1の側面を覆う如く形成されてオイルを濾過するためのものであり、より具体的には、図5に示すように、プリーツ折りした所定の濾紙を円環状に丸めて円筒状部材1の側面を覆って構成されるものである。かかるエレメント2は円筒状部材1の側面に配設された状態で、その上下端に上板材16及び下板材15が取り付けられるようになっている(図6参照)。そして、上板材16及び下板材15が取り付けられた状態でエレメントアッシーAが構成される。
【0015】
ケース3は、エレメント2が組み付けられた円筒状部材1(即ちエレメントアッシーA)を収容するためのもので、車両に取り付けられた開口部3aを有するカップ状のものから成る。而して、ケース3にエレメントアッシーAを収容することにより、オイルフィルタを構成することとなる。ケース3内に収容されたエレメントアッシーAは、その下面(下板材15)がスプリング4にて上方に押圧される一方、上面(上板材16)がフィルタ取付プレート6に当接した状態とされ、上下から挟持されて固定される。
【0016】
上板材16は、図6に示すように、その中央に開口16aが形成されているとともに、その開口16a縁部においてゴム等の弾性部材から成る環状体5が嵌着されており、かかる環状体5には、その周縁にオイルの逆流を防止するための逆止弁5aが一体的に形成されている。そして、ケース3の開口部3aには、フィルタ取付プレート6が設けられており、このフィルタ取付プレート6には、円周方向に等間隔でオイル入口7が複数形成されている。また、フィルタ取付プレート6の外周部6aの上面には、円環状のガスケット保持プレート9が密着状態で固定されており、このガスケット保持プレート9には、ゴム等の弾性部材から成るリング状のガスケット10が嵌装されている。
【0017】
そして、例えばオイルポンプ等にて流入され、オイル入口7を通過したオイルは、逆止弁5aを介してケース3内に至り、エレメント2を通過しつつ通過孔1aを通って円筒状部材1内部に至った後、フィルタ取付プレート6に形成された導出口8から導出されるようになっている。この導出口8は、円筒状部材1の一方の端面側に形成され(即ち、開口16aと連通した位置に形成され)、当該円筒状部材1内に導入されたオイルを例えばエンジン側へ導出するためのものである。上記の如く、本オイルフィルタに流入したオイルは、エレメント2を通過する過程で混入している異物等が除去された後導出され、再びエンジン等へ供給されるようになっている。
【0018】
一方、下板材15には、その中央に導入孔15aが形成されている。かかる導入孔15aは、円筒状部材1の他方の端面側(即ち下板材15)に形成され、エレメント2を介さずにオイルを円筒状部材1内に導入するための孔である。この導入孔15aは、エレメント2にてオイルを通過させ得る状態のときは、リリーフバルブ11により閉塞状態とされている。
【0019】
リリーフバルブ11は、通常状態で導入孔15aを閉塞状態とするとともに、エレメント2が目詰まりを生じてオイルの通過が良好に行われず当該オイルの圧力が所定値に達すると当該導入孔15aを開放してオイルを円筒状部材1内に導入させるものであり、図2、3に示すように、導入孔15aを開閉し得る弁体12と、該弁体12を閉塞方向に向かって付勢するコイルスプリング13とを有して成る。
【0020】
即ち、下板材15の内側における導入孔15aと対応した位置には、切欠部14aを有した支持部材14がリベットRにて固定されており、その支持部材14内で弁体12及びコイルスプリング13が収容されることにより、当該弁体12が導入孔15a側に向かって付勢された状態で組み付けられているのである。尚、コイルスプリング13は、その一端が弁体12の裏面12a(図4参照)と当接するとともに、他端が支持部材14内部(頂部)に当接して配設されている。
【0021】
而して、コイルスプリング13の付勢力により、通常状態では弁体12が導入孔15aの縁部に当接して閉塞している一方、オイルの圧力が上昇して所定値(当該付勢力と同等)に達すると、コイルスプリング13の付勢力に抗して弁体12が移動し、導入孔15aが開放されるようになっている。これにより、エレメント2が目詰まりを生じてオイルの通過が良好に行われなくなっても、リリーフバルブ11にて導入孔15aを開放させ、オイルの流れ量(循環量)を確保することができる。
【0022】
ここで、本実施形態においては、弁体12が移動することによりオイルが導入孔15aを通過して円筒状部材1内に導入する際にリリーフバルブ11で生じる自励振動を増大させる自励振動増大手段が設けられている。この自励振動とは、主に弁体12とコイルスプリング13とがオイルの流れにより互いに微小変位し、擦れ合うことにより生じるもので、従来のものでも僅かに生じているものであったが、本実施形態の如く運転者が聞こえる程度のものではなかった。
【0023】
本実施形態においては、当該自励振動を増大させて運転者に把握させ得るようにしたものであり、自励振動増大手段は当該弁体12に形成された板状部材17から成る。この板状部材17は、図4に示すように、板状の金属製部材の基端側を折り曲げ形成して面17aを形成し、その面17aを弁体12の裏面12aにスポット溶接等で固定させたものから成る。
【0024】
然るに、板状部材17を弁体12から一体的に突出形成させることにより、当該弁体12の固有振動数を任意に調整し、コイルスプリング13が擦れ合う際に生じる振動を共振させ、増大させ得るようになっている。弁体12の固有振動数を任意変更させるため、板状部材17の寸法(長手方向の寸法、及び厚み等)が設定されているのであり、当該板状部材17等の材質により設定されるべき寸法は種々変更するのが好ましい。
【0025】
これにより、当該自励振動に基づく音が大きくなって運転者が確実に聞くことができるようになり、エレメント2が目詰まりを生じているためリリーフバルブ11が作動していることを把握させることができる。即ち、増大された自励振動で生じる音により、エレメント2の目詰まりを運転者に報知して当該エレメント2の交換を早期に促すことができるとともに、別個センサ等を設置するものに比べ、製造コスト及びメンテナンスのためのコストを抑制することができるのである。
【0026】
更に、本実施形態に係る自励振動増大手段は、リリーフバルブ11を構成する弁体12に形成された板状部材17から成るので、極めて簡易な構成にてリリーフバルブ11で生じる自励振動を増大させることができ、製造コストをより抑制することができる。尚、板状部材17の形状は、本実施形態の如く矩形(方形)のものに限定されず、他の形状であってもよい。
【0027】
また更に、本実施形態に係るコイルスプリング13は、弁体12との当接端側(図2における下方側)がそれと反対側(同図における上方側)より密のピッチとされた不等ピッチバネから成る。これにより、弁体12側の重量を増してリリーフバルブ11で生じる自励振動をより増大させることができ、エレメント2の目詰まりをより確実に運転者に報知することができる。
【0028】
以上、本実施形態に係るオイルフィルタについて説明したが、本発明はこれに限定されず、例えばオイルが導入孔15aを通過して円筒状部材1内に導入する際にリリーフバルブ11で生じる自励振動を増大させる自励振動増大手段を具備していれば、他の構成のものであってもよい。また、適用されるエレメント2の形状や材質、ケース3の形態(ケースの外形、逆止弁5aの形状及びリリーフバルブ11の形態等)は適宜のものとすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
オイルが導入孔を通過して円筒状部材内に導入する際にリリーフバルブで生じる自励振動を増大させる自励振動増大手段を具備したオイルフィルタであれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態に係るオイルフィルタを示す断面図(一部側面図)
【図2】同オイルフィルタにおけるリリーフバルブを構成する弁体及びコイルスプリングを示す分解斜視図
【図3】同オイルフィルタにおけるリリーフバルブを構成する弁体及びコイルスプリングを組み付けた状態を示す斜視図
【図4】同オイルフィルタにおける板状部材が形成された弁体を示す断面図
【図5】同オイルフィルタにおける円筒状部材にエレメントが取り付けられる状態を示す斜視図
【図6】同オイルフィルタにおけるエレメントアッシーを示す斜視図
【符号の説明】
【0031】
1 円筒状部材
2 エレメント
3 ケース
4 スプリング
5 環状体
6 フィルタ取付プレート
7 オイル入口
8 導出口
9 ガスケット保持プレート
10 ガスケット
11 リリーフバルブ
12 弁体
13 コイルスプリング
14 支持部材
15 下板材
15a 導入孔
16 上板材
17 板状部材(自励振動増大手段)
A エレメントアッシー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面にオイルを通過させるための複数の通過孔が形成された円筒状部材と、
該円筒状部材の側面を覆う如く形成され、オイルを濾過するためのエレメントと、
前記エレメントが組み付けられた円筒状部材を収容するケースと、
前記円筒状部材の一方の端面側に形成され、当該円筒状部材内に導入されたオイルを導出する導出口と、
前記円筒状部材の他方の端面側に形成され、前記エレメントを介さずにオイルを前記円筒状部材内に導入するための導入孔と、
前記円筒状部材の他方の端面側に形成され、前記導入孔を閉塞状態とするとともにオイルの圧力が所定値に達すると当該導入孔を開放してオイルを前記円筒状部材内に導入させるリリーフバルブと、
を具備したオイルフィルタにおいて、
オイルが前記導入孔を通過して前記円筒状部材内に導入する際に前記リリーフバルブで生じる自励振動を増大させる自励振動増大手段を具備したことを特徴とするオイルフィルタ。
【請求項2】
前記リリーフバルブは、前記導入孔を開閉し得る弁体と、該弁体を閉塞方向に向かって付勢するコイルスプリングとを有して成り、前記自励振動増大手段は、当該弁体に形成された板状部材から成ることを特徴とする請求項1記載のオイルフィルタ。
【請求項3】
前記コイルスプリングは、前記弁体との当接端側がそれと反対側より密のピッチとされた不等ピッチバネから成ることを特徴とする請求項2記載のオイルフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−219975(P2009−219975A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−65520(P2008−65520)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(000102348)エイケン工業株式会社 (14)
【Fターム(参考)】