説明

オキソプラチン、その塩および誘導体を含む医薬組成物

本発明は、シス‐ジアンモニウムジクロロ‐トランス‐ジヒドロオキソ白金(IV)もしくはその塩および/または誘導体を、カプセル、錠剤、クリーム、軟膏および注入溶液の形で含む医薬品、特に化学療法剤、ならびに前記医薬品の製造に関し;本発明は腫瘍疾患の治療におけるそのような医薬品の使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シス‐ジアンモニウムジクロロ‐トランス‐ジヒドロオキソ白金(IV)、およびそれから分離した、カプセル、錠剤、クリーム、軟膏および注入溶液の形態のための医薬基材を含む医薬キット、ならびにそのような医薬品の製造に関し、更に本発明は腫瘍疾患を治療するための前記の医薬品の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
癌は新規な組織の無制御増殖であり、内在性細胞の変性によって生じる。癌細胞は他の組織へ浸潤し、後者を破壊することができる。癌疾患または腫瘍疾患の主なグループは肉腫、癌腫、白血病、リンパ腫を含む。工業化社会で最も頻発する死亡原因は癌および腫瘍疾患を含む。このため癌疾患の治療法の開発には多大な努力が払われてきた。しかし、こうした治療法の多くは、部分的に成功しているのみである。一方では体内で既に確立された腫瘍を公知の薬剤によって生物体内で対処するのは困難であり、他方では一般に使用されている抗腫瘍剤は多くの望ましくない副作用を示し、特に投与すべき薬剤投薬量を制限させている。
【0003】
癌疾患を治療するための遺伝子治療的手法に加えて、選択される金属または金属化合物、例えば、バナジウム、モリブデン、金、特に白金は長年種々の腫瘍疾患の治療に使用されてきた。一般的な副作用は別として、使用されている多数の上記の化合物、例えば、白金化合物は潜在的に毒性が強く、より特異的にはこれらの化合物は腎毒性がある。更に、シス−白金化合物などの白金化合物は特異的に望ましくない副作用、例えば、重い下痢、強い嘔吐、体毛特に頭部毛髪の消失を示す。さらに骨髄の活性、特に免疫活性が抑制される。
【0004】
これら全ての結果として、患者が体験する生命を脅かす疾患にもかかわらず、患者はこの型の治療を早期に中断し、その病原性状態を治療するために他の治療形態を選択する。
【0005】
全体的な癌療法に見られるように、治療しようとする患者は経口投与剤を受け入れる。例えば、経口化学療法は通常の生活を続けることができ、そのような治療は比較的副作用が少ないために、患者によく受け入れられている。2001年には腫瘍学で使用された薬物適用の約25〜30%は経口製剤であった。これらの経口製剤は種々の疾患関連機序の条件により治療に適している。経口抗腫瘍療法のよく知られている例は、例えば、細胞毒性薬剤、抗血管形成物、細胞周期機序改変剤、シグナル伝達阻害薬、ホルモン抑制剤の投与である。
【0006】
経口化学療法剤が前記良好に受け入れられてきた結果、経口で適用する医薬品を提供するために、従来技術において低毒性と組合わせた優れた抗腫瘍活性を有する多くの試みがなされてきた。このために、モリブデン、バナジウム、金、特に白金成分に基づく、効果的な活性を有し、副作用が少ない医薬品を提供する試みが多数なされてきた。周知の化学療法剤は毒性が強く、従って出荷、運搬および貯蔵中の取扱にはある種の危険が伴う。
【0007】
数種のオキソ白金(シス‐オキソ白金)化合物は、腫瘍作用薬として知られ、例えば緩衝液やNaCl溶液中にシス‐ジアンモニウムジクロロ‐トランス‐ジヒドロオキソ白金(IV)を含むものは実験動物に適用されている。ヒトに使用することができる医薬技術的製剤は、従来技術では全くまたはほとんど開示されていない。公知のように、この医薬技術的製剤は、患者または患畜での効果に影響を及ぼす。従来技術では、生物において、シス‐オキソ白金の有効な活性を可能とすることができる医薬技術的基材の特定組成物についてはデータを提供していない。
【0008】
現在まで、特に毒性作用、特に腎毒作用が低い白金化合物に基づく化学療法的に使用可能な化合物について、経口使用するための医薬品の提供には成功していない。さらに、今までのところ、患者が受け入れ可能であり、例えばクリームや軟膏として、特に皮膚腫瘍疾患を治療するために使用可能な白金を含む医薬品を開発することにはまだ成功していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は上記の欠点を持たない形態の化学療法剤であり、使用されるオキソ白金化合物は低毒性、特に低腎毒性であり、腫瘍の治療において経口剤としてまたはクリームもしくは軟膏としての使用にも良く適しており、前記組み込まれたオキソ白金化合物は医薬技術的製剤に十分定義付けられ、化学療法剤としてオキソ白金の作用を安全かつ効率的なものにすることができる製剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の前記の目的は、シス‐ジアンモニウムジクロロ‐トランス‐ジヒドロオキソ白金(IV)(シス‐オキソ白金、オキソプラチン)、特にその塩、および、それとは物理的に分離している、錠剤、カプセル、コート錠、座薬、軟膏、クリーム、注入液および/または注射液を含む群から選択される医薬品の基材ならびに任意でキット内容物への接触または組み合わせに関する情報を含む本発明のキットにより達成され、次のようにシス‐ジアンモニウムジクロロ‐トランス‐ジヒドロオキソ白金(IV)を前記基材に接触させ、または組み合わせる:
−カプセルがオキソプラチン:二酸化ケイ素:マンニトールまたはステアリン酸マグネシウムを0.1〜10:0.1〜10:0.1〜10の割合で含み;
−錠剤がシス‐オキソプラチン:ラクトース:コーンスターチ:ポリ(O‐カルボキシメチル)澱粉ナトリウム塩:リン酸水素カルシウム×2HO:セルロース粉末:ステアリン酸マグネシウムを10〜500:20〜150:1〜10:1〜10:1〜10:1〜10:0.1〜7の割合で含み;または
−別法として、錠剤がシス‐オキソプラチン:二酸化ケイ素:ステアリン酸マグネシウムを0.1〜10:0.1〜10:0.1〜10の割合で含み;
−クリームがシス‐オキソプラチン:ベンジルアルコール:セチルステアリルアルコール:マクロゴールステアラート1000:パルミチン酸イソプロピル:グリセロール:70%ソルビトール溶液:水を0.2〜8:0.1〜7:1〜10:0.1〜7:0.1〜7:0.2〜8:0.2〜8:20〜60の割合で含み;
−軟膏がシス‐オキソプラチン:プロピレングリコール:マクロゴールステアラート1000:セチルステアリルアルコール:ワセリンを2〜20:5〜40:0.1〜7:1〜10:25〜400の割合で含み;
−ゲルがシス‐オキソプラチン:ヒドロキシエチルセルロース:クロロエアロゾル(chloroaerosol):水酸化ナトリウム:リン酸水素ナトリウム二水和物:水を2〜20:100〜600:5〜40:0.1〜7:20〜60:3,000〜50,000の割合で含み;
−座薬がシス‐オキソプラチン:二酸化ケイ素:硬化脂を0.1〜10:0.1〜10:30〜300の割合で含み;または
−別法として、座薬がシス‐オキソプラチン:ラクトース:コーンスターチ:アジピン酸:炭酸水素ナトリウム:ステアリン酸:ステアリン酸マグネシウム:高度分散性二酸化ケイ素:ポリソルベート80を10〜100:700〜4,000:200〜600:10〜1、000:10〜1,000:1〜100:1〜100:1〜15:0.1〜10の割合で含み;または
−別法として、座薬がシス‐オキソプラチン:ラクトース×1HO:コーンスターチ:アジピン酸:炭酸水素ナトリウム:ステアリン酸:ステアリン酸マグネシウム:二酸化ケイ素:ポリソルベート80を10〜100:1,000〜5,000:300〜1,000:10〜1,000:10〜1,000:1〜100:1〜100:1〜15:0.1〜7の割合で含み;または
−別法として、座薬がシス‐オキソプラチン:ラクトース×1HO:コーンスターチ:アジピン酸:炭酸水素ナトリウム:ステアリン酸:ステアリン酸マグネシウム:二酸化ケイ素:ポリソルベート80を10〜1,000:1,500〜5,000:300〜1,000:10〜1,000:10〜1,000:1〜100:1〜100:1〜15:0.1〜7の割合で含み;
−注射液もしくは注入液がシス‐オキソプラチン:ベンジルアルコール:ポリソルベート80:70%ソルビトール溶液:水を0.2〜8:1〜10:0.1〜7:100〜800:100〜400の割合で含み;または
−別法として、注射液もしくは注入液が、シス‐オキソプラチン:マンニトール:水を0.1〜7:5〜40:1〜10の割合で含む。
【0011】
驚くべきことに、シス‐ジアンモニウムジクロロ‐トランス‐ジヒドロオキソ白金(IV)と、医薬技術的基材、すなわち、錠剤、カプセル、コート錠、座薬、軟膏、クリーム、注入液および/または注射液におけるシス‐ジアンモニウムジクロロ‐トランス‐ジヒドロオキソ白金(IV)を含まないものがキット中で物理的に分離していることによって、キットの構成物が接触、例えば混合によって、製造され、得られる化学療法剤の方が、周知の薬剤と比較して取扱いが簡単、かつ安全であることを実証することができた。
【0012】
患者に使用する前に、シス‐ジアンモニウムジクロロ‐トランス‐ジヒドロオキソ白金(IV)を、錠剤、カプセル、コート錠、座薬、軟膏、クリーム、注入液および/または注射液の基材、すなわち、このシス‐ジアンモニウムジクロロ‐トランス‐ジヒドロオキソ白金(IV)を含まない医薬技術的担体の基材とともに混合し、腫瘍治療用医薬品を得る。
【0013】
有毒なオキソプラチンまたはシス‐オキソ白金を含む従来の薬剤とは対照的に、オキソプラチンまたはシス‐オキソ白金および医薬基材もしくは担体が互いに分離して存在するキットは、取り扱い上安全である。オキソ白金および基材が使用前に、すなわち、保存および出荷中に既に含まれている薬剤は、例えば注入溶液は出荷および貯蔵の全期間中、本発明の例では大型注入溶液の形態で有毒物質を含んでいる。そのような大容量の毒物は少量の濃縮されたオキソプラチン量と比較して取扱いがより困難である。というのは、少量物はアンプル中にまたは安全な小容量の安全容器中に保管できるからである。現在まで、患者に施用する前に混合によって基材中にオキソプラチンを組み込むのでは、安全に取り扱うことができる医薬品を得られないと考えられてきた。というのは、例えば工業的手段を使用せずには十分な混合は不可能なので、混合が不十分であるからである。しかし、診療所や研究施設で入手できる標準的な研究室の装置はこの目的に十分であり、または診療所の調剤室には入手可能な必要な装置が揃っており、または診療所職員もしくは患者による混合中の通常の操作はキットの構成物から化学療法剤を得るという所望の結果を実現するのに十分であるということが判明している。より驚くべきことには、シス‐オキソ白金用担体として錠剤、カプセル、コート錠、座薬、軟膏、クリーム、注入液および/または注射液のために前記の詳細に定義した基材を使用することによって、安全かつ効率的で有効な薬物が生ずる。本発明によって定義された基材をキットの構成物と組み合わせることによって薬物を安全に供給できる。
【0014】
薬物効果を改善し、副作用を低減するために、高濃度で薬物(オキソプラチン)を効果が生じる部位に輸送し、潜在的な副作用部位に大幅に低減した濃度で到達できるようにすることは有利である。本発明に従って、このことは本発明により定義した担体物質にオキソプラチンをカップリングすることによって実現し、それによって体内で好都合に分配することができる。そのような担体は作用部位を認識し、そこでオキソプラチン活性物質を遊離することが有利である。
【0015】
本発明における担体による放出制御のために、より均一な作用を実現し、同時に個々の投与間の間隔を伸長し、または摂取頻度を減少させることができる。投与形態は錠剤、活性物質を含むパッドまたは注射調製物とすることもできる。制御された方式で活性物質を遊離させるためには、上記の各投与形態のそれぞれについて特殊な技術がいる。例えば、錠剤で消化管に最大一日間残留させるために、1日を超えて活性物質の放出時間を延長させることは便利でないばかりか、本発明によって定義した担体では行われない。
【0016】
種々の薬物剤型の製造は活性物質とアジュバントの同時加工を要求する。アジュバントは自身では薬理活性を有してはならず、すなわち、特にいかなる毒物学的な危険も排除しなくてはならない。同時に、アジュバントは最終薬物中に活性物質が確実に安定して残存するようにしなくてはならない。従って、本発明によって定義した担体はアジュバントと活性物質の間に化学反応がないことを確認する。
【0017】
この問題分野および関連する考察に対処する、アンプル形態での注射液の場合の一例は以下の通りである:水中での活性物質の溶解性が優れ、安定性も優れている結果として、純水性アンプル溶液の製造が可能と思われる場合には、腫瘍、すなわち、作用部位に応じて、本発明によって定義した溶液を特異なpH値に調節し、または一定化(緩衝化)して維持する必要があるかどうかを考慮し、検査する必要がある。
【0018】
水溶解性が驚くほど優れているので、シス‐ジアンモニウムジクロロ‐トランス‐ジヒドロオキソ白金(IV)、オキソプラチンまたはシス‐オキソプラチンの塩が好ましく、その理由は、例えば胃癌や眼癌の場合にはその塩を生物体に投与すると、その驚くべき好ましい水溶解性によって驚くべき利点が得られるからである。本発明によって定義した基材中に組み込まれたシス‐ジアンモニウムジクロロ‐トランス‐ジヒドロオキソ白金(IV)および/またはその塩もしくは誘導体を含む医薬品によって効果的な腫瘍治療が可能になる。驚くべきことに、シス‐ジアンモニウムジクロロ‐トランス‐ジヒドロオキソ白金(IV)、シス‐オキソプラチンまたはオキソプラチンならびに本発明によって定義した基材を含む医薬化合物は、例えばシス−白金化合物と比較して低毒性作用であり、特に、これらは腎毒性がほとんどないか、またはまったくないことが判明した。また、シス‐オキソプラチンおよび本発明によって定義した基材を含む医薬品は、比較可能なシス−白金化合物よりも体内半減期が短く、すなわち、肝臓や腎臓のような重要な代謝器官では、本発明による化合物によって生じる緊張はより低い。すなわち、例えば、驚くべきことに、本発明の注射液と共にシス‐オキソ白金を注射20日後、腎臓は前記の化合物をほとんど含まないことを見いだしたが、一方ではシスプラチンによる比較注射では注射後1時間とほぼ同程度の高い腎中白金濃度が得られた。特に好ましい方式では、塩が用いられ、特にカリウム、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、バリウム、亜鉛、マンガン、銀、銅、バナジウムまたはカルシウム塩が使用され、その場合に、アニオンは例えば塩化物、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、炭酸塩などであってもよい。塩を形成することができる他の元素も、例えば、元素周期表の主族I〜Vの全ての元素および亜族I〜VIIIの元素など当業者には公知であり、元素周期表の上記元素の全てはシス‐オキソ白金塩を形成することができる。
【0019】
例えば、その誘導体はアルキルおよび/またはアリール誘導体であってもよく、その場合、その塩のカチオンおよび/またはアニオンの位置はアルキル残基および/またはアリール残基によって型通りに占有される。好ましいアリール残基は、例えば、フェニル、ナフチル、アントリル残基であり、好ましいアルキル残基は例えば、メチル、エチル、プロピル残基である。
【0020】
さらに、キットの構成物を組み合わせることによって得られる本発明の化合物は生体内変換の傾向を示す。すなわち、医薬品、特にシス‐ジアンモニウムジクロロ‐トランス‐ジヒドロオキソ白金(IV)を含む化学療法剤は最初に例えば経口または注射の形態で摂取され、特にシス−白金化合物と比較した場合に、実質的な毒性副作用を示すこともなく、後者は選択した腫瘍に対して効率よく作用する。暫時経過後に、上記の白金(IV)化合物は生物体内での処理によって白金(II)化合物に変換し、後者の化合物も特定の腫瘍に対して特定効果を有し得る。白金(IV)および白金(II)化合物はその抗腫瘍活性において異なる特異性を有し得ることが有利である。
【0021】
特に、本発明によって定義した基材中にシス‐ジアンモニウムジクロロ‐トランス‐ジヒドロオキソ白金(IV)塩を含む化学療法剤は溶解性が非常に良く、従って生体利用能が非常に高い。この理由のために、これらを低濃度で使用することができ、低濃度であっても、対応する塩基と比較して、有効性が高く、かつ副作用が少ない。また前記した溶解性が優れている結果として、この塩は、他の活性物質、ビタミンまたは他の抗腫瘍剤と組み合わせるのに大変適している。特に上記の塩は、一般的な、例えばヒトや動物の胃中の媒体など、酸性媒体で容易に溶解する。対応する塩基とは対照的に、ひとたび胃酸と接触すると、この塩は極めて容易に溶解し、従って胃腫瘍の場合には例えば胃内で直ちに効力を示すことができる。ほとんど付加体を形成しない本発明の化合物は、特に胃腸経路に有利に適切である。しかし、そのような付加体の発生が少ないことは消化管領域に限定されず、腎臓および肝臓中での本発明の化合物の挙動にも関係する。本発明の意味では、付加体は副作用が多い有害産物と理解され、この産物は生物体内での本発明による化合物の分解と再配置から生じるかもしれない。
【0022】
接触は混合、分散、緻密化、圧縮または粉砕によって行うことができる。混合は乾燥、湿性および湿潤混合として、物質の状態および混合する成分の特性に応じて、攪拌、固体混合、圧延(rolling)、混練、乳化、懸濁化、溶解、超音波曝露などによって実施するのが好ましい。原理的には、混合装置(ミキサー)は静的および動的ミキサーに分類することができる。静的ミキサーは流動中に特別に成形した構築体により液体中に発生させた乱流によって作動し、前記の乱流は動的ミキサーでは活発に発生する。例えば、ミキサー型には、インペラー、ターボ、ブレード、トラフ、プラネタリー、摩擦式、スクリュー、ロール、遠心分離、向流、ジェット、ドラム、円錐式、反転式、ロータリー式、冷却式、真空、フロー、重力式、流体式、空気圧式ミキサーがある。より詳細には、緻密化は結合剤を用いずに、または結合剤を添加して達成することができる。本発明の意味では、分散は液体媒体中の充填薬剤中、例えば基材中に存在する凝集体を分割して、より小さな粒子を形成し、同時に分散媒体によって湿潤化することである。分散は媒体の液体成分全体にわたってこの方式で発生した粒子のランダム分配および平均分配も含む。分散の最も重要な部分ステップは以下のように要約することができる:1.分散媒体によるオキソプラチン粒子の湿潤化;2.集塊体の分割;および任意に、3.綿状沈殿化を防止するための安定化。
【0023】
好ましいキットでは、カプセルは、さらに二酸化ケイ素とマンニトールまたは二酸化ケイ素とステアリン酸マグネシウムおよび/または医薬上受容可能な賦形薬、特にシオソーム(siosome)、リポソームおよび/またはナノカプセルを含む。
【0024】
さらに好ましいキットでは、カプセルは、シス‐オキソプラチンと基材の接触後に、50mgの二酸化ケイ素、50mgのマンニトールもしくは50mgのステアリン酸マグネシウムおよび50mgのオキソプラチンを含み、または別法として50mgのシス‐オキソプラチン、39.5mgのラクトースまたは39mg、2.5mgもしくは2mgのコーンスターチ、2.5mgのポリ(O‐カルボキシメチル)澱粉ナトリウム塩、2.5mgのリン酸水素カルシウム×2HO、2.5mgのセルロース粉末および0.5mgのステアリン酸マグネシウムを含み、あるいは別法としてシス‐オキソプラチン、50mgの二酸化ケイ素、および50mgのステアリン酸マグネシウムを含むキットが好ましい。別の好ましいキットでは、クリームは、シス‐オキソプラチンと基材の接触後に、50mgのシス‐オキソプラチン、20mgのベンジルアルコール、100mgのセチルステアリルアルコール、25mgのマクロゴールステアラート1000、20mgのパルミチン酸イソプロピル、40mgのグリセロール、50mgのソルビトールおよび205mgの水を含む。さらに、軟膏は、シス‐オキソプラチンと基材の接触後に、50mgのシス‐オキソプラチン、120mgのプロピレングリコール、5.5mgのマクロゴールステアラート1000、22mgのセチルステアリルアルコール、および851.5mgのワセリンを含む。
【0025】
別の好ましいキットでは、ゲルは、シス‐オキソプラチンと基材の接触後に、0.05gのシス‐オキソプラチン、1.8gのヒドロキシエチルセルロース、0.1gのクロロエアロゾル、0.005gの水酸化ナトリウム、0.17gのリン酸水素ナトリウム二水和物および97.875gの水を含む。
【0026】
さらに別の好ましいキットでは、座薬は、シス‐オキソプラチンと基材の接触後に、0.02gのシス‐オキソプラチン、0.02gの二酸化ケイ素および1.85gの硬化脂を含み、別法として座薬は20mgのシス‐オキソプラチン、1055、40mgのラクトース、170mgのコーンスターチ、63.60mgのアジピン酸、50mgの炭酸水素ナトリウム、5mgのステアリン酸、4.5mgのステアリン酸マグネシウム、3mgの高度分散性二酸化ケイ素、および0.5mgのポリソルベート80を含み、別法として座薬は20mgのシス‐オキソプラチン、1350mgのラクトース×1HO、170mgのコーンスターチ、65mgのアジピン酸、50mgの炭酸水素ナトリウム、5mgのステアリン酸、4.5mgのステアリン酸マグネシウム、3mgの高度分散性二酸化ケイ素および0.5mgのポリソルベート80を含み、あるいは別法として座薬は50mgのシス‐オキソプラチン、1450mgのラクトース×1HO、170mgのコーンスターチ、65mgのアジピン酸、50mgの炭酸水素ナトリウム、5mgのステアリン酸、4.5mgのステアリン酸マグネシウム、3mgの高度分散性二酸化ケイ素および0.5mgのポリソルベート80を含む。
【0027】
さらに別の好ましいキットでは、調製物は、シス‐オキソプラチンと5mg/mlの注射液または注入液である基材の接触後に、5mgのシス‐オキソプラチン、9mgのベンジルアルコール、2mgのポリソルベート80、650mgの70%ソルビトール溶液および500mgの水を含む。
【0028】
前記のキットを使用して製造可能な本発明による医薬品は、直接的にDNAに結合することができる。本発明によるシス−白金化合物は八面体立体配置を有する。従って、本発明が意味するシス‐オキソプラチンは鎖内および鎖間DNA錯体を形成することができる。シスプラチンとは対照的に、シス‐オキソプラチンの特異構造のために、本発明の化合物はDNA鎖と多重結合を形成する。鎖間クロスリンカー錯体および鎖内クロスリンカー錯体のために、本発明の化合物は抗腫瘍治療において有利な特異な細胞分裂停止作用を示す。本発明による化合物のDNA付加体は、白金中心原子の高い電荷を示し、さらにこの中心に結合する2種の追加のリガンドを有する。本発明による白金(IV)錯体の八面体立体配置のために、高度に特異的で、比較的遅いDNA結合が可能であり、例えばシスプラチンとDNAの結合と比較して、これはより効率的であることを示す。別の利点は、シスプラチンとは異なり、匹敵する濃度のシス‐オキソプラチンはトリプシンやキモトリプシンなどのプロテアーゼを阻害しない。シス‐オキソ白金(IV)を含む本発明の医薬品の効能および有効性は薬剤の適用形態にはほとんど依存しない。薬剤は経口的(perorally)、経口的(orally)、経直腸的、皮下、筋肉内、静脈内および腹腔内に投与することができる。周知のシス−白金化合物と比較して、本発明による化合物の治療効果は長時間続くという点でも本発明の化合物は有利であり、さらに本発明の化合物は様々な段階の腫瘍増殖に非常に有効であり、比較可能なシス−白金化合物と比較した場合、シス‐オキソ白金化合物は治療において正の作用がより長く続く。周知の白金を含む医薬品と比較し、溶解性、薬理遺伝学、生体利用能および体内での分解吸収におけるこうした特性によって、本発明による薬剤を用いる腫瘍疾患治療がより効果的なものになる。
【0029】
本発明の好ましい実施態様では、キットの構成物を組み合わせることによって製造される本発明による医薬品は、腫瘍の予防および/または治療で使用する化学療法剤である。本発明が意味する腫瘍の予防は、腫瘍の進展を防止し、または単一腫瘍組織の増殖を阻害し、もしくは増殖を中止させること、腫瘍の転移を防止もしくは低減すること、単一腫瘍細胞が周辺組織に浸潤することを防止もしくは低減すること、および腫瘍進展に関連付けられる血管形成を抑制もしくは阻害することを意味する。従って、この化学療法剤は、例えば軽度の腫瘍が存在するような場合には腫瘍を防止するだけではなく、腫瘍進展の早期終結のための予防にも使用することができる。
【0030】
本発明による薬剤を予防に使用する場合には、薬剤はワクチンとして使用することができる。例えば、担体や溶媒を選択することによる、ワクチンを処方するおよび産生させる種々の方式は当業者には周知である。
【0031】
好ましい方式では、この化学療法剤はカプセル、錠剤、クリーム、軟膏、座薬および/または注入溶液として使用される。化学療法剤は癌細胞や寄生虫、ウイルス、細菌など他の病原体の伝播、増殖を阻害することができる。例えば、肝炎ウイルスによって生じた肝腫瘍は、経口投与した薬剤が、肝炎ウイルスとそれによって誘発された癌細胞に作用するような方式で、本発明の化学療法剤で治療することができる。
【0032】
本発明におけるカプセルまたは錠剤は、特に、患者が経口摂取できるようにした適用または投与される形態を意味する。本発明における錠剤およびカプセルは、コート錠、丸剤、座薬のような経口摂取を可能にする他の医薬品ならびにドロップ、シロップ、混合液体も含む。
【0033】
本発明における座薬は、生物体が例えば経直腸や経膣摂取可能とする全ての投与形態を意味する。
【0034】
錠剤、コート錠、カプセル、丸剤、粉剤および座薬は、本質的に固形薬物形態である。上記の固形薬物形態は互いに合体させることができる。すなわち、例えば錠剤は経口摂取中に舌上で崩壊させて粉体にし、またはその中に組み込んだ溶液、例えばシロップを放出することもできる。実際の活性物質に加えて、本発明による錠剤はさらにアジュバントまたは結合剤を含む。例えば、そのようなアジュバントは澱粉、マンニトール、ラクトース、糖、アルコール、硫酸カルシウムである。結合剤は例えばセルロースやマンニトールであることもできる。
【0035】
本発明の意味による錠剤は、例えばフィルム錠であってもよい。フィルム錠はラッカーでコートした錠剤である。フィルム錠およびコート錠は、溶液形態で何層もコーティングし、続いて乾燥を行う。特に、フィルム錠は本発明による活性物質、すなわちシス‐ジアンモニウムジクロロ‐トランス‐ジヒドロオキソ白金(IV)が、小腸到達後にのみ高濃度で効力を発揮することを目指す場合に使用される。さらに、錠剤はプレスコート錠であってもよい。プレスコート錠は、乾燥形態のコアに圧力を使用して1層または複数の層をコーティングする物を含む。この方法で、単一調製物の中で、すなわち、コアとコート内で相互に相溶性でない活性物質の組合せをプレスコート錠内に収容することが可能である。明らかに、この原理もシス‐オキソプラチンを含むラミネート錠にも当てはまる。ここでは、異なる放出、溶解特性を有する層を順次重ねてプレスする本発明の錠剤に関する。さらに、プレスコート錠は、持効錠および/または持効コート錠の形態で投与することができる。この適用形態を利用して、特に、長時間に渡って生物体内で必要な薬物濃度を維持することができる。フィルム錠およびプレスコート錠の製造は当業者には周知である。本発明の意味による経口摂取を可能にする他の適用形態はカプセル、ペレット、粉末および粉薬撒布(poudrage)剤である。
【0036】
例えば、カプセルはゼラチン外被中に単一用量のシス‐オキソプラチン化合物を含む硬ゼラチンカプセルであることもできる。しかし、液状で、例えば溶液や懸濁液の形態で本発明の活性物質を保持する軟ゼラチンカプセルを使用することも可能である。経口適用は別として、これらを直腸および膣適用にも使用することができる。さらに、活性物質の顆粒ビーズの形態で約300粒のペレットが満たされた硬ゼラチンプラグインカプセルの使用も好ましい。難吸収性または酸不安定な物質または混合物をこの方式でプロドラッグとして有利に投与することができる。有利なことには、周囲の硬ゼラチンカプセルが胃中で溶解するのに続いて、小粒ペレットは腸に運ばれ、それによってシス‐ジアンモニウムジクロロ‐トランス‐ジヒドロオキソ白金(IV)の一定の吸収と一定の濃度が確実になる。当業者に公知の経口剤の適切な製造方法によって、活性物質の放出、その結果として吸収部位および時間プロフィールを制御することができる。シス‐オキソ白金化合物の放出を腸に到達した後にのみ希望する場合には、経口的に使用する化学療法剤は種々のフィルムで、例えば、ワックスフィルムでコートすることができる。例えば、このことは、ある形態の腸癌で有利であるかもしれない。
【0037】
特に、カプセル、錠剤、座薬などの固体薬物形態は別に、非固体薬物形態も好ましいであろう。例えば、これは、軟膏、クリーム、ペーストに関係し、これらは皮膚に外用することができる。特に、このことは特定の活性物質が血流に到達するのを明白に防止するような場合には、すなわちその全身吸収が望ましくない場合には有利である。このことは例えばある形態の皮膚癌で有利であろう。勿論、軟膏を、活性物質が皮下組織に到達できるような方法で、その一部が脈管系にも到達するよう調製することもできる。このことは当業者には公知の吸収軟膏に関係する。例えば、いくつかの黒色腫の治療に必要とされるように、皮膚の上層の下にある作用部位に到達するために、シス‐オキソプラチン活性物質は、有利にその製剤から離れ、皮膚に浸透することができる。より特異的には、局所作用に加えて、全身的効果を意図する場合にはそのような浸透が必要となる。この目的のために、例えば、座薬および硝酸塩パッドなどの経皮治療系を使用することができる。当業者にはそのような系および投与形態の提供方法は公知である。従って、例えば、担体と活性物質間の親油性の差が大きいほど、活性物質が担体から離れる傾向も強くなる。
【0038】
例えば、本発明による軟膏は、パラフィン油、ワセリン、羊毛脂などの親油性基材から構成され、酸化亜鉛、酸化チタニウム、澱粉などの粉末または別の混合粉を約10%含んでよい。本発明の意味による疎水性軟膏では外相が親油性であり、すなわち、これらの軟膏は脂中水のエマルジョンを表す。
【0039】
特に、本発明の意味によるペーストは、少なくとも10%の粉末化成分量を有する脂肪性軟膏である。
【0040】
本発明の意味によるクリームは、親油性相と親水性相からなる調製物である。親水性クリームは、外相は水性相であり、例えば水中の脂を乳化剤として形成したエマルジョンからなる。
【0041】
活性物質に加えて、ゲルはゼラチン、メチルセルロースおよび/またはポリエチレングリコールなどのゲル形成剤を含む。
【0042】
座薬のうちでは、魚雷状の形の投与形態が好ましく、シス‐オキソプラチン活性物質の大部分が中性脂質であるベース塊に均一に分配されている。例えば、座薬は直腸内または膣内へ挿入され、融解または溶解によってその中で活性物質を放出されることを意図している。好ましい方式では、座薬は、例えば膣領域内の腫瘍や大腸癌の場合には、経直腸的または経膣的に局所作用を引き起こし、または物質を吸収するために使用される。特に、患者が他の抗腫瘍剤の副作用のために慢性的な嘔気傾向を示すような場合には、この座薬が好ましく、吸収直後の肝臓通過が回避され、または急速な分解が防止されることになる。直腸から吸収されたシス‐オキソ白金化合物の大半が体循環に直接供給され、それによって肝臓通過を免れることが有利である。膣座薬に加えて、膣球(ovula)も好ましいであろう。
【0043】
本発明の意味では、液体投与形態が注入溶液であることが好ましいが、シロップまたは混合液体も好ましい。例えば、舌腫瘍や上頚部領域腫瘍を治療しようとする場合には、このような溶液を含嗽または洗浄用に提供することができる。特に、本発明のシロップは糖類や甘味のある糖代替物を含んでもよい。
【0044】
本発明による注射液および注入液は、本質的には感染性病原体または懸濁物質を含まない。製造後に注射液もしくは注入液を気密方式で密封し、ガラス製またはプラスチック製容器、これら容器は無色または可能性のある光感受性のために茶褐色にしてもよい、に貯蔵する。特に、生物体内で皮下または筋肉内貯蔵が行われる場合には、油性製剤を使用する。
【0045】
本発明の好ましい実施態様では、本発明によるカプセルは、‐前記のシス‐オキソ白金化合物に加えて‐、二酸化ケイ素とマンニトール、または二酸化ケイ素とステアリン酸マグネシウム、または凍結乾燥して混合したものをカプセル化した、またはシオソーム、リポソームおよび/もしくはナノソームなどの賦形薬上にまたは内に結合させたシス‐オキソプラチン混合物を含む。有利には、上記医薬アジュバントおよび担体を選択することによって、生物体内での吸収後にシス‐オキソプラチン活性物質を急速にまたは穏やかに遊離させるかの選択を行うことが可能である。
【0046】
本発明によるカプセル、特に、活性物質を急速に放出するカプセルはシス‐オキソプラチン:二酸化ケイ素:マンニトールもしくはステアリン酸マグネシウムを0.1〜10:0.1〜10:0.1〜10の割合で含むのが好ましく、0.5〜5:0.5〜5:0.5〜5がより好ましく、0.7〜2:0.7〜2. 0.7〜2が更に一層好ましく、特に1:1:1の割合で含む。従って、例えば、本発明の意味ではカプセルは、50mgの二酸化ケイ素、50mgのマンニトール、50mgのオキソプラチンまたは50mgのステアリン酸マグネシウムを含んでよい。製造過程次第では、そのようなカプセルは活性物質の徐放にも適している。そのような製造過程の選択は当業者には公知である。カプセルがシオソーム、リポソーム、ナノカプセル(nanocapsule)、ナノソーム(nanosome)などの脂質賦形薬を含んでもよいことは明らかである。対応するシオソーム、リポソーム、およびナノソームを選択することによって、シス‐オキソプラチンの急速性または徐放性を調節することができる。当業者に周知であるように、対応する活性物質の遊離および吸収もしくは取込み、分配、分解および排出に作用し、ほとんどの場合において本発明による化学療法剤の薬物動態学および薬動力学の全複合体に作用することが可能である。
【0047】
シス‐オキソプラチンに加えて、本発明の好ましい実施態様内での錠剤はラクトース、コーンスターチ、ポリ(O‐カルボキシメチル)澱粉ナトリウム塩、リン酸水素カルシウム×2HO、セルロース粉末およびステアリン酸マグネシウムまたは二酸化ケイ素とステアリン酸マグネシウムを含む。
【0048】
特有の実施態様では、シス‐オキソプラチン:ラクトース:コーンスターチ:ポリ(O‐カルボキシメチル)澱粉ナトリウム塩:リン酸水素カルシウム×2HO:セルロース粉末:ステアリン酸マグネシウムの割合は10〜500:20〜150:1〜10:1〜10:1〜10:1〜10:0.1〜7であり、20〜200:40〜100:2〜8:2〜8:2〜8:2〜8:0.5〜5が好ましく、50〜150:60〜90:3〜7:3〜7:3〜7:3〜7:0.7〜1がより好ましく、特に100:79:5:5:5:5:1である。
【0049】
従って、有利な錠剤は、例えば、50mgのシス‐オキソプラチン、39.5mgのラクトース、2.5mgのコーンスターチ、2.5mgのポリ(O‐カルボキシメチル)澱粉ナトリウム塩、2.5mgのリン酸水素カルシウム×2HO、2.5mgのセルロース粉末および0.5mgのステアリン酸マグネシウムを含む。好ましい方式では、そのような錠剤は活性物質の急速放出に適している。本発明の意味による別の有利な錠剤は、一錠当たり例えば、39.5mgのラクトースの代わりに39mgのラクトースおよび2.5mgのコーンスターチの代わりに2mgのコーンスターチを使用する。
【0050】
しかし、活性物質を非常に緩慢に遊離する錠剤を使用することも好ましいであろう。そのような錠剤はシス‐オキソプラチン:二酸化ケイ素:ステアリン酸マグネシウムを好ましくは0.1〜10:0.1〜10:0.1〜10の割合で含み、0.5〜5:0.5〜5:0.5〜5がより好ましく、0.7〜2:0.7〜2:0.7〜2が更に一層好ましく、特に1:1:1で含む。従って、活性物質を徐放する錠剤は50mgのシス‐オキソプラチン、50mgの二酸化ケイ素および50mgのステアリン酸マグネシウムを含んでもよい。
【0051】
同様に好ましいのは、シス‐オキソプラチンに加えて、ベンジルアルコール、セチルステアリルアルコール、マクロゴールステアラート1000、パルミチン酸イソプロピル、グリセロール、ソルビトール溶液、好ましくは70%の、より好ましくは非結晶化ソルビトール溶液さらに精製水を含むクリームの使用である。
【0052】
本発明によるクリームの設計の好ましい変形形態では、シス‐オキソプラチン:ベンジルアルコール:セチルステアリルアルコール:マクロゴールステアラート1000:パルミチン酸イソプロピル:グリセロール:70%のソルビトール溶液:水の割合は、0.2〜8:0.1〜7:1〜10:0.1〜7:0.1〜7:0.2〜8:0.2〜8:20〜60であることが好ましく、0.4〜4:0.2〜3:2〜9:0.2〜3:0.2〜3:0.4〜4. 0.4〜4:25〜45がより好ましく、0.7〜3:0.5〜1.5:4〜6:0.5〜1.5:0.5〜1.5:0.7〜3:0.7〜3:30〜40が更に一層好ましく、特に2.5:1:5:1.25:1:2:2.5:2.5:35.25である。従って、本発明による好ましいクリームは、例えば、50mgのシス‐オキソプラチン、20mgのベンジルアルコール、100mgのセチルステアリルアルコール、25mgのマクロゴールステアラート1000、20mgのパルミチン酸イソプロピル、40mgのグリセロール、50mgのソルビトールおよび205mgの精製水から構成される。
【0053】
化学療法剤を軟膏の形で使用する場合には、シス‐オキソプラチンに加えて、白色ワセリン、セチルステアリルアルコール、マクロゴールステアラート1000およびプロピレングリコールを含む軟膏を使用するのが好ましい。
【0054】
本発明の好ましい実施態様では、軟膏は、個々の成分シス‐オキソプラチン:プロピレングリコール:マクロゴールステアラート1000:セチルステアリルアルコール:白色ワセリンを2〜20:5〜40:0.1〜7:1〜10:25〜400の割合で、好ましくは5〜12:10〜30:0.2〜3:2〜9:50〜250の割合で、より好ましくは6〜10:15〜25:0.5〜1.5:3〜6:100〜200の割合で、特に9.1:22:1:4:155の割合で含む。従って、本発明による軟膏は、例えば、50mgのシス‐オキソプラチン、120mgのプロピレングリコール、5.5mgのマクロゴールステアラート1000、22mgのセチルステアリルアルコールおよび851.5mgの白色ワセリンを含んでもよい。
【0055】
ゲルとしては、特に、鋳型ゲルとして局所使用に向けて使用する場合には、そのようなゲルは、ヒドロキシエチルセルロース、クロロエアロゾル、水酸化ナトリウム、リン酸水素ナトリウム二水和物および精製水を含むのが好ましい。
【0056】
本発明の好ましい実施態様では、鋳型ゲルはシス‐オキソプラチン:ヒドロキシエチルセルロース:クロロエアロゾル:水酸化ナトリウム:リン酸水素ナトリウム二水和物:精製水を、2〜20:100〜600:5〜40:0.1〜7:20〜60:3,000〜50,000の割合で、好ましくは4〜18:200〜500:10〜30:0.2〜3:25〜45:5,000〜35,000の割合で、より好ましくは6〜12:300〜400:15〜25:0.5〜1.5:30〜40:10,000〜30,000の割合で、特に10:360:20 1:34:19,569の割合で含む。すなわち、例えば、鋳型ゲルは、0.05gのシス‐オキソプラチン、1.8gのヒドロキシエチルセルロース、0.1gのクロロエアロゾル、0.005gの水酸化ナトリウム、0.17gのリン酸水素ナトリウム二水和物、および97.875gの精製水を含んでもよく、その結果本発明の好ましいゲル100gを得ることができる。
【0057】
本発明の別の実施態様では、座薬型、特に肛門または膣適用に向けた座薬型を使用することが好ましく、その座薬は高度分散性二酸化ケイ素および硬化脂またはラクトース、コーンスターチ、アジピン酸、炭酸水素ナトリウム、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、高度分散性二酸化ケイ素、およびポリソルベート80を含む。
【0058】
本発明の好ましい実施態様では、肛門座薬はシス‐オキソプラチン、高度分散性二酸化ケイ素および硬化脂を、0.1〜10:0.1〜10:30〜300の割合で、好ましくは0.2〜4:0.2〜4:40〜200の割合で、より好ましくは0.5〜2:0.5〜2:60〜150の割合で、特に1:1:92.5の割合で含み、すなわち、そのような適用形は、例えば、0.02gのシス‐オキソプラチン、0.02gの高度分散性二酸化ケイ素および1.85gの硬化脂を含んでもよい。別の好ましい座薬は、シス‐オキソプラチン:ラクトース:コーンスターチ:アジピン酸:炭酸水素ナトリウム:ステアリン酸:ステアリン酸マグネシウム:高度分散性二酸化ケイ素:ポリソルベート80を、10〜100:700〜4,000:200〜600:10〜1,000:10〜1000:1〜100:1〜100:1〜15:0.1〜10の割合で、好ましくは20〜80:1,000〜3,000:250〜450:20〜400:20〜400:2〜40:2〜40:2〜10:0.2〜4の割合で、より好ましくは30〜60:1,500〜2,500:300〜400:50〜200:50〜200:5〜20:5〜20:4〜8:0.5〜2、特に40:2,111:340:127:100:10:9:6:1の割合で含む。従って、好ましい肛門座薬は20mgのシス‐オキソプラチン、1055、40mgのラクトース、170mgのコーンスターチ、63.60mgのアジピン酸、50mgの炭酸水素ナトリウム、5mgのステアリン酸、4.5mgのステアリン酸マグネシウム、3mgの高度分散性二酸化ケイ素、および0.5mgのポリソルベート80を含んでもよい。
【0059】
明らかに、肛門適用での使用とは別に、膣適用形も好ましく、特に好ましい方式では、膣施用形はラクトース×1HO、コーンスターチ、アジピン酸、炭酸水素ナトリウム、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、高度分散性二酸化ケイ素およびポリソルベート80を含む。
【0060】
本発明の好ましい実施態様では、膣座薬はシス‐オキソプラチン:ラクトース×1HO:コーンスターチ:アジピン酸:炭酸水素ナトリウム:ステアリン酸:ステアリン酸マグネシウム:高度分散性二酸化ケイ素:ポリソルベート80を、10〜100:1,000〜5,000:300〜1,000:10〜1,000:10〜1,000:1〜100:1〜100:1〜15:0.1〜7の割合で、好ましくは20〜90:1,500〜3,500:400〜800:20〜400:20〜400:2〜40:2〜40:2〜10:0.2〜3の割合で、より好ましくは30〜60:2,000〜3,000:500〜600:50〜200:50〜200:5〜20:5〜20:4〜8:0.5〜1.5の割合で、特に40:2,700:567:130:100:10:9:6:1の割合で含む。好ましい実施態様では、例えば、そのような膣座薬は20mgのシス‐オキソプラチン、1,350mgのラクトース×1HO、170mgのコーンスターチ、65mgのアジピン酸、50mgの炭酸水素ナトリウム、5mgのステアリン酸、4.5mgのステアリン酸マグネシウム、3mgの高度分散性二酸化ケイ素および0.5mgのポリソルベート80を含んでもよい。
【0061】
別の好ましい膣座薬は、同成分を、好ましくは10〜1,000:1,500〜5,000:300〜1,000:10〜1,000:10〜1,000:1〜100:1〜100:1〜15:0.1〜7の割合で、より好ましくは20〜400:2,000〜4,000:400〜800:20〜400:20〜400:2〜40:2〜40:2〜10:0.2〜3の割合で、更により好ましくは50〜200:2,500〜3,500:500〜600:50〜200:50〜200:5〜20:4〜8:0.5〜1.5の割合で含む、特に100:2,900:567:130:100:10:9:6:1の割合で含む。従って、好ましい実施態様では、そのような座薬は50mgのシス‐オキソプラチン、1,450mgのラクトース×1HO、170mgのコーンスターチ、65mgのアジピン酸、50mgの炭酸水素ナトリウム、5mgのステアリン酸、4.5mgのステアリン酸マグネシウム、3mgの高度分散性二酸化ケイ素、および0.5mgのポリソルベート80を含んでもよい。
【0062】
勿論、本発明の化学療法剤を注射液もしくは注入液の形態で使用することも好ましいであろう。本発明の好ましい実施態様では、シス‐オキソプラチンは別として、注射液はベンジルアルコール、ポリソルベート80、ソルビトール溶液、好ましくは70%の、より好ましくは非結晶化ソルビトール溶液および水またはマンニトールおよび水を含む。
【0063】
本発明の好ましい実施態様では、注射液はシス‐オキソプラチン:ベンジルアルコール:ポリソルベート80:70%ソルビトール溶液:水を、0.2〜8:1〜10:0.1〜7:100〜800:100〜400の割合で、好ましくは0.4〜4:2〜9:0.2〜3:200〜600:150〜350の割合で、より好ましくは0.7〜3:3〜6:0.5〜1.5:250〜400:200〜300の割合で、特に2.5:4.5:1:325:250の割合で含む。従って、5mg/mlの注射液調製物は5mgのシス‐オキソプラチン、9mgのベンジルアルコール、2mgのポリソルベート80、650mgの70%ソルビトール溶液および500mgの水を含んでもよい。
【0064】
別の好ましい注射液は、シス‐オキソプラチン:マンニトール:水を、0.1〜7:5〜40:1〜10の割合で、好ましくは0.2〜3:10〜30:2〜9の割合で、より好ましくは0.5〜1.5:15〜25:3〜6の割合で、特に1:20:4の割合で含む。従って、5mg/mlの注射液調製物は5mgのシス‐オキソプラチン、100mgのマンニトールおよび200mlの注射用水を含んでもよい。
【0065】
本発明は前記のカプセル、錠剤、座薬、軟膏、クリームおよび/または注入溶液の製造にも関する。活性物質の放出、例えば、自発的なもしくは時間シフト方式で、または胃内でもしくは小腸での放出に応じて、上記のような経口固型適用形態は、例えば、特定のワックス層を含んでもよい。当業者は特定のパラメータを選択すること、特定のアジュバントを選択することによって、固体経口型もしくは固体座薬型または軟膏、クリーム、粉剤、または液体注入溶液を得る方法を知っている。個々の適用型の製造法も治療しようとする腫瘍型によって変化する。従って、腸癌または大腸癌を治療するための錠剤やカプセルなどの経口適用型は、製造において胃液耐性層でコートする。他の適用型、例えば、ゲル、粉薬撒布、粉末、錠剤、持続放出錠、プレミックス、乳濁液、煎じ製剤、滴剤、濃縮物、粒剤、シロップ、ペレット、大丸薬、カプセル、エアロゾル、スプレーおよび/または吸入薬も当業者には周知である。これらの調製物は経口、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、経膣、経直腸、経鼻および/または局所的に使用することができる。
【0066】
従って、本発明は化学療法剤すなわち医薬品の製造法に関し、その製造法ではシス‐ジアンモニウムジクロロ‐トランス‐ジヒドロオキソ白金(IV)(シス‐オキソプラチン)、特にその塩を錠剤、カプセル、コート錠、座薬、軟膏、クリーム、注入液および/または注射液を含む群から選択される医薬品の基材に接触させ、シス‐ジアンモニウムジクロロ‐トランス‐ジヒドロオキソ白金(IV)を基材に接触させた後に、
−カプセルが、オキソプラチン:二酸化ケイ素:マンニトールまたはステアリン酸マグネシウムを、0.1〜10:0.1〜10:0.1〜10の割合で含み;
−錠剤が、シス‐オキソプラチン:ラクトース:コーンスターチ:ポリ(O‐カルボキシメチル)澱粉ナトリウム塩:リン酸水素カルシウム×2HO:セルロース粉末:ステアリン酸マグネシウムを10〜500:20〜150:1〜10:1〜10:1〜10:1〜10:0.1〜7の割合で含み;または
−別法として、錠剤がシス‐オキソプラチン:二酸化ケイ素:ステアリン酸マグネシウムを、0.1〜10:0.1〜10:0.1〜10の割合で含み;
−クリームが、シス‐オキソプラチン:ベンジルアルコール:セチルステアリルアルコール:マクロゴールステアラート1000:パルミチン酸イソプロピル:グリセロール:70%ソルビトール溶液:水を、0.2〜8:0.1〜7:1〜10:0.1〜7:0.1〜7:0.2〜8:0.2〜8:20〜60の割合で含み;
−軟膏が、シス‐オキソプラチン:プロピレングリコール:マクロゴールステアラート1000:セチルステアリルアルコール:ワセリンを、2〜20:5〜40:0.1〜7:1〜10:25〜400の割合で含み;
−ゲルが、シス‐オキソプラチン:ヒドロキシエチルセルロース:クロロエアロゾル:水酸化ナトリウム:リン酸水素ナトリウム二水和物:水を、2〜20:100〜600:5〜40:0.1〜7:20〜60:3,000〜50,000の割合で含み;
−座薬が、シス‐オキソプラチン:二酸化ケイ素:硬化脂を、0.1〜10:0.1〜10:30〜300の割合で含み、または
−別法として、座薬がシス‐オキソプラチン:ラクトース:コーンスターチ:アジピン酸:炭酸水素ナトリウム:ステアリン酸:ステアリン酸マグネシウム:高度分散性二酸化ケイ素:ポリソルベート80を10〜100:700〜4,000:200〜600:10〜1,000:10〜1,000:1〜100:1〜100:1〜15:0.1〜10の割合で含み;または
−別法として、座薬がシス‐オキソプラチン:ラクトース×1HO:コーンスターチ:アジピン酸:炭酸水素ナトリウム:ステアリン酸:ステアリン酸マグネシウム:二酸化ケイ素:ポリソルベート80を、10〜100:1,000〜5,000:300〜1,000:10〜1,000:10〜1,000:1〜100:1〜100:1〜15:0.1〜7の割合で含み;または
−別法として、座薬がシス‐オキソプラチン:ラクトース×1HO:コーンスターチ:アジピン酸:炭酸水素ナトリウム:ステアリン酸:ステアリン酸マグネシウム:二酸化ケイ素:ポリソルベート80を、10〜1,000:1,500〜5,000:300〜1,000:10〜1,000:10〜1,000:1〜100:1〜100:1〜15:0.1〜7の割合で含み;
−注射液もしくは注入液が、シス‐オキソプラチン:ベンジルアルコール:ポリソルベート80:70%ソルビトール溶液:水を、0.2〜8:1〜10:0.1〜7:100〜800:100〜400の割合で含み;または
−別法として、注射液もしくは注入液が、シス‐オキソプラチン:マンニトール:水を、0.1〜7:5〜40:1〜10の割合で含む
ような方法で前記の基材が選択される。
【0067】
本発明は腫瘍の治療における本発明による医薬品の使用および腫瘍治療用薬物の製造における本発明の薬剤の使用、特にキットの使用に関する。当初は、キット構成物はキット中で物理的に分離している。化学療法剤を提供するために、基材-キット構成物-をオキソプラチン-別のキット構成物として安全に保管されている-に接触させ、それによって化学療法剤を製造する。調製物は使用直前に、すなわち、患者に適用する数分または数時間前に効果がもたらされるようにすべきである。勿論、使用のはるか前に、例えば、数時間前または一日またはそれ以上前にキット内容物を組み合わせることも可能である。
【0068】
本発明の意味による腫瘍処置は、腫瘍の予防および治療処置を含む。この医薬品は、腫瘍形成後にワクチンとして、または予防的ワクチン接種として使用することができる。ワクチン接種は、適用した後に、生物体内で腫瘍の伝播もしくは形成に対して保護が発生するような方法で実施することが有利である。もちろん、腫瘍の徴候直前または直後に、あるいは複数の適用例を有する治療として、ワクチン接種を実施することも可能である。腫瘍治療は、転移形成後の事実上いかなる時点でも有利であることを当業者は承知しており、その結果、本発明の意味によるワクチン接種は腫瘍形成数週間、数ヵ月、数年または数十年後に適用でもよい。治療剤として本発明による医薬品を使用する場合に、一つの極めて重大な課題は、腫瘍の増殖を阻害しまたは転移するという形での生物体内における腫瘍の伝播を防止し、腫瘍の血管新生を阻害し、腫瘍浸潤、すなわち、単細胞が身体組織中に浸透することを予防または阻害するための量および適用型で生物体に医薬品を接触させることである。例えば、接触は経口的に、注射によって、局所的に、経膣で、経直腸でかつ/または経鼻で実施する。
【0069】
予防の場合に健常者にまたは治療の場合に患者に使用される本発明の化合物の量は、処方し、治療する疾患、それぞれ個々の患者の状態、投与部位、投与手順、主治医によく知られている他の要因を考慮して、従来の医療行為にしたがってその用量が確立される。同様に、投与した本発明の化合物の用量は、内科医または他の当業者によく知られているように、腫瘍の特徴、本発明の化合物の血漿中生体内半減期、処方物内の本発明化合物の濃度、さらに投与経路、投薬の部位および速度、各個体(ヒトおよび動物)の臨床耐性、患者の病理学的状態などに依存する。一般に、一個体当たり約0.1〜1000mgの投薬量および投与が好ましく;特に好ましくは投薬量10〜500mgであり、更に一層200〜400mgが好ましく、特に300mgである。連続的投与の流れの中で様々な投薬量を採用することも可能である。
【0070】
好ましい方式では、本発明の化合物またはその化合物を供給できるようにするキットは、生物体、好ましくはヒトまたは動物での併用療法、特に腫瘍の治療内で使用される。腫瘍処置は、転移、浸潤および/または血管新生の予防、防止、診断、減弱、治療、追跡および/またはアフタケアを含み、前記の追跡は好ましくは抗腫瘍治療の有効性のモニタリングである。特に好ましい方式では、前記の併用療法は化学療法、細胞分裂停止剤による処置、および/または放射線療法を含む。本発明の特に好ましい実施態様では、併用療法はアジュバント、生物学的特異的療法形態であり、特に好ましい方式では前記の療法形態は免疫療法である。さらに、特に好ましい方式では、併用療法は遺伝子療法および/または本発明による化合物を使用する療法を含む。種々の併用療法、特に腫瘍の治療のための併用療法は当業者には周知である。例えば、細胞分裂停止剤による処置、または例えば特定の腫瘍領域への照射は併用療法の範囲内で想定することができ、本発明の化合物を抗癌剤として使用し、この治療を遺伝子療法と組み合わせる。従って、細胞分裂停止剤および/または照射に対する腫瘍細胞の感受性を増加するために、本発明による化合物を使用することが特に好ましいであろう。さらに、本発明による化合物の好ましい使用は、活力、細胞増殖速度の阻害および/またはアポトーシスおよび細胞周期抑止の誘発においてである。
【0071】
好ましい実施態様では、治療または予防対象となる癌疾患または腫瘍は以下の群から選択される:耳鼻咽喉領域の癌もしくは腫瘍疾患、肺、縦隔、消化管、泌尿生殖器系、婦人科系、乳房、内分泌系、皮膚、骨の癌もしくは腫瘍疾患および柔組織肉腫、中皮腫、黒色腫、中枢神経系新生物、乳児期癌または腫瘍疾患、リンパ腫、白血病、腫瘍随伴性症候群、原発不明腫瘍(CUP症候群)に伴う転移、腹膜癌腫症、免疫抑制関連悪性種および/または腫瘍転移。
【0072】
より特異的には、腫瘍は以下の型の癌を含んでよい:乳房腺癌、前立腺癌および大腸癌、気管支で始まった全ての形の肺癌、骨髄癌、黒色腫、肝細胞腫、神経芽細胞腫、乳頭腫、アプドーマ、分離腫、鰓腫、悪性カルチノイド症候群、カルチノイド心疾病、癌(例えば、ウォーカー癌、基底細胞癌、扁平上皮基底癌、ブラウン‐ピアス癌、管癌、エールリッヒ腫瘍、潜在癌(in situ carcinoma)、癌‐2癌(cancer-2carcinoma)、メルケル細胞癌、粘膜癌、非小細胞気管支癌、燕麦細胞癌、乳頭癌、硬癌、細気管支肺胞癌、気管支癌、扁平上皮細胞癌および移行性細胞癌);組織球機能疾病、白血病(例えばB細胞白血病、混合細胞白血病、ナルセル白血病,T細胞白血病、慢性T細胞白血病、HTLV‐II関連白血病、急性リンパ球白血病、慢性リンパ球白血病、肥満細胞白血病および骨髄白血病関連);悪性組織球増殖症、ホジキン疾患、非ホジキンリンパ腫、単生形質細胞腫瘍;細網内皮症、軟骨芽細胞腫、軟骨腫、軟骨肉腫;線維腫;線維肉腫;巨大細胞腫瘍;組織球腫;脂肪腫;脂肪肉腫;白血肉腫;中皮腫;粘液腫;粘液肉腫;骨腫;骨肉腫;ユーイング肉腫;滑膜腫;線維腺腫;アデノリンパ腫;癌肉腫、脊索腫、頭蓋咽頭腫、未分化胚細胞腫、過誤腫;間葉細胞腫;中腎腫、筋肉腫、エナメル上皮腫、セメント質腫;歯牙腫;奇形腫;胸腺腫、絨毛細胞芽腫;腺癌、腺腫;胆管種;胆脂腫;円柱腫;嚢胞腺癌、嚢胞腺腫;顆粒膜細胞腫瘍;ギナドロブラストーマ;汗腺腫;膵島細胞腫瘍;ライディヒ細胞腫瘍;乳頭腫;セルトリ細胞腫瘍、卵胞膜細胞腫瘍、平滑筋腫;平滑筋肉腫;筋芽細胞腫;筋腫;筋肉腫;横紋筋腫;横紋筋肉腫;上衣細胞腫;神経節神経腫、膠腫;髄芽腫、髄膜腫;神経鞘腫;神経芽細胞腫;神経上皮種、神経線維腫、神経腫、傍神経節腫、非クロマフィン傍神経節腫、角化血管腫、好酸球増多を伴う血管リンパ過形成;硬化血管腫;血管腫症;グロムス血管腫;血管内皮腫;血管腫;血管外皮細胞腫、血管肉腫;リンパ管腫、リンパ管筋腫、リンパ管肉腫;松果体腫;嚢胞肉腫葉状肉腫;血管肉腫;リンパ管肉腫;粘液肉腫、卵巣癌;肉腫(例えば、ユーイング肉腫、実験的に、カポジ肉腫および肥満細胞肉腫);新生物(例えば、骨新生物、乳房新生物、消化器系新生物、結腸直腸新生物、肝臓新生物、膵臓新生物、脳下垂体新生物、精巣新生物、眼窩新生物、頭部および頚部新生物、中枢神経系新生物、聴覚器官新生物、骨盤新生物、気道新生物および泌尿生殖器系路新生物);神経繊維腫症、ならびに頚部扁平上皮の細胞異形成。
【0073】
別の好ましい実施態様では、治療または予防対象となる癌疾患または腫瘍は以下の群から選択される:内鼻、副鼻腔、上咽頭、唇、口腔、中咽頭、喉頭、下咽頭、耳、唾液腺および傍神経節腫を含む耳鼻咽喉領域の腫瘍;非小細胞気管支癌、小細胞気管支癌、縦隔腫瘍を含む肺腫瘍;食道腫瘍、胃腫瘍、膵臓腫瘍、肝臓腫瘍、胆のう腫瘍および胆管腫瘍、小腸癌、大腸癌、直腸癌および肛門癌を含む消化管腫瘍;腎臓腫瘍、輸尿管腫瘍、膀胱腫瘍、前立腺腫瘍、尿道腫瘍、陰茎腫瘍および精巣腫瘍を含む泌尿生殖器系腫瘍;頸部腫瘍、膣腫瘍、産卵口腫瘍、子宮癌、悪性栄養膜疾患、卵巣癌、卵管腫瘍(Tuba Faloppii)、腹腔腫瘍、乳房癌を含む婦人科腫瘍;甲状腺腫瘍、副甲状腺腫瘍、副腎皮質腫瘍、内分泌膵臓腫瘍、カルチノイド腫瘍およびカルチノイド症候群、多発性内分泌異常増殖、骨肉腫および柔組織肉腫を含む内分泌器官腫瘍、中皮腫、皮膚腫瘍、皮膚黒色腫および眼内黒色腫を含む黒色腫;中枢神経腫瘍;網膜芽細胞腫、ウィルムス腫瘍、神経繊維腫症、神経芽細胞腫、ユーイング肉腫腫瘍科、横紋筋肉腫を含む乳児期腫瘍;非ホジキンリンパ腫、皮膚性T細胞リンパ腫、中枢神経系原リンパ腫、疾患ホジキンを含むリンパ腫;急性白血病、慢性骨髄性およびリンパ白血病を含む白血病;形質細胞新生物、骨髄異形成症候群、腫瘍随伴性症候群、原発不明腫瘍(CUP症候群)を伴う転移、腹膜癌腫症;カポジ肉腫、AIDS関連リンパ腫、中枢神経系AIDS関連リンパ腫、AIDS関連疾患ホジキン、AIDS関連肛門生殖器腫瘍などのAIDS関連悪性疾患、移植関連悪性種を含む免疫抑制関連悪性種;脳転移、肺転移、肝臓転移、骨転移、胸膜および心臓周囲転移および悪性腹水を含む転移腫瘍。
【0074】
別の好ましい実施態様では、治療または予防対象となる癌疾患または腫瘍は以下を含む群から選択される:乳癌;大腸癌、胃癌、膵臓癌、大腸癌、小腸癌を含む胃腸腫瘍;卵巣癌、子宮頚癌、肺癌、前立腺癌、腎細胞癌および/または肝臓転移。
【0075】
従って、本発明は腫瘍治療法に関し、ここでは本発明の医薬品を生物体に接触させ、好ましくは前記の接触がカプセル、肛門もしくは膣座薬、錠剤、軟膏、クリームまたは注入溶液を使用することにより実施することができる。疾病を治療するための本発明の方法に関しては前記の医薬品の使用または医薬品自体に関する説明に言及することが行われる。
【0076】
周知の化合物または薬剤と、特にシス−白金化合物、本発明によって定義した物質以外の医薬基材を有する化合物とを比較すると、本発明による医薬品は非常に多くの利点を有する。シス−白金化合物と比較して、本発明のシス‐オキソ白金化合物は、広い濃度範囲で使用することができる。さらに、シス‐オキソプラチンの致死用量はシス−白金化合物の致死用量よりも比例的にはるかに多い。特定の型の腫瘍に関してはシス‐オキソプラチンの効力および有効性はシスプラチンのそれよりも高い。
【0077】
従って、例えば、シス−白金化合物に耐性のある種の形態の前立腺癌は、シス‐オキソプラチンで治療すると有利な効果を示すことが実証されている。さらに、シス‐オキソプラチンの腎毒作用はシスプラチンと比較してはるかに低く、シス‐オキソプラチンの抗転移効果はシスプラチンのその効果よりも高い。とりわけ、このことはその空間的構造が異なるために、例えば、シス‐オキソ白金化合物は異なる方式でDNA分子と相互に作用するということにその理由がある。すなわち、例えば、選択したシス−白金化合物のDNA分子への結合が塩素リガンドの内部置換に基づくが、シス‐オキソプラチンのDNA分子への結合は水素結合の形成に基づく。患者であるヒトまたは動物の体内で、シス‐オキソ白金化合物はほとんど不活性挙動を示す。この理由のために、有毒な副作用もなく、シス−白金化合物よりも高濃度でこの化合物を使用することができる。シス‐オキソプラチンを含む医薬品の別の顕著な特徴は事実上あらゆる型の腫瘍に対するその抗腫瘍効果である。特に肝臓および腎臓で、本発明の医薬品はシス−白金化合物に基づく医薬品よりも半減期が短い。本発明の薬剤を経口投与した場合、非常に良好な作用を示すことはより有利である。その理由は、これらの薬剤は体内の全身循環に非常に素早く侵入し、その抗腫瘍活性を顕著に上昇させ、それは例えば腫瘍の大きさの減少となって現れる。さらに、本発明による軟膏、クリームおよびゲルは局所化学療法で非常に優れた成果を有して使用できる。そのような局所化学療法では、本発明の軟膏、クリームまたはゲルまたは粉剤は皮膚表面に直接適用される。このことは腫瘍はまだ形成されていないが、先端角化症など、いくつかの予備形成体が既に顕著になっている場合にも意味をなし得る。そのような使用は出現する可能性のある副作用が生物体全体に作用することがないので、特に有利である。皮膚が本発明の医薬品を蓄積物の形で吸収することができることは有利であり、すなわち、本発明による薬剤の活性物質の皮膚内半減期は約12日である。好ましい方式では、本発明の医薬品を腹腔内化学療法で使用することもできる。特に、この療法によって腹部腫瘍疾患を治療する。そのような化学療法を、例えば、温熱腹腔内化学療法と組み合わせることができる。得られる温熱作用によって腫瘍に対する本発明の医薬品の作用がより敏感になる。特に、腹腔内化学療法は卵巣癌の場合に使用することができる。
【実施例】
【0078】
限定する意図はないが、以下の実施例を引用して本発明をさらに詳細に説明する。
【0079】
1.シス‐ジアンモニウムジクロロジヒドロオキソ白金(IV)およびその塩の使用
種々のヒト細胞系での増殖阻害試験はシスプラチン、シス‐オキソプラチンおよびオキサリプラチンの異なる活性を示す。以下に例示した結果から、シス‐オキソプラチンはオキサリプラチン活性に類似する活性を有するが、カルボプラチンより高い活性を有することが分かる。下表はシスプラチン、オキソプラチン、カルボプラチンおよびオキサリプラチンで得られた結果を示す(特記した値は、μg/mlによるIC50値、すなわち50%の細胞が生存する濃度を示し、nd=定量せず;res=耐性=感性なし、または40μg/mlまでの濃度ではIC50値が定量できないことを示す;IC=阻害濃度)。
【0080】
【表1】

【0081】
【表2】

【0082】
活性は細胞系によって異なる。Na塩は、HT29とSW480で明瞭に効果が高く(約70%)、SK‐OV4、PC3およびSIMで効果が高く(約30%)、CaCo‐2、DU145およびCRO2B細胞で効率が低い。従って、これらの細胞のIC50値は、オキソプラチンでは10.5±6.4μg/mlであり、それに対するそのナトリウム塩では9.5±8μg/mlである。
【0083】
結果から、シスプラチンやシス‐オキソプラチンなどの化学的に高度に類似する白金化合物は、種々のヒト癌細胞への異なる効果を有し、白金化合物塩は、腫瘍に対してはその塩を作製した塩基化合物の挙動とは異なる挙動を示すことが分かる。一般的に、しかも具体的な試験をひろげて、シス‐オキソプラチン塩の、特にシス‐オキソプラチンナトリウム塩のDNA結合能力は、シス‐オキソプラチンと比較したときに、予想外に表れる。例えば、このことは一方でその塩基を用いて、他方でその塩を用いて形成したDNA付加体の異なる構造に原因があるかもしれない。さらに、対応する塩基と比較して、シス‐オキソプラチン塩は異なる過程の生体内変換を受けると考えることができる。これらの予想外の変動は、腫瘍療法で塩基および塩を使用する場合は非常に重要である。例えば、塩基および塩のそのような異なる挙動のさらに重要な課題は、吸収、組織内での特に器官での拡散および分布である。シス‐オキソプラチンナトリウム塩の細胞内取込みおよび毒性は対応する塩基のそれらとは異なり、シス‐オキソプラチン塩の吸収、溶解および薬理遺伝学はその塩基のそれらとは比べものにならない。シス‐オキソプラチン塩のDNAとの相互作用の型、効率、有効性および療法作用強度はシス‐オキソプラチンのそれらとは異なる。とりわけ、このことは二価のカチオン塩の例としてシス‐オキソプラチンカルシウム塩の化学構造に基づいて実証することができる。
【0084】
【化1】

【0085】
この構造で分かるように、カルシウム塩などの塩は対応する塩基の構造とは完全に異なる構造を有する。立体化学的特性におけるそのような変動は、細胞、特に癌細胞においてDNAとの相互作用に関して異なる挙動になって表れる。塩の構造が異なる結果として、低用量で十分な治療効果を実現することができる。さらに、生体内変換によって、体内で白金(IV)錯体が白金(II)錯体に変換され、白金(IV)錯体と白金(II)錯体は異なる腫瘍に対して異なる作用を有する(表1を参照)。
【0086】
2.トランス‐オキソプラチンの細胞障害活性(TRAXO)
トランス‐オキソプラチンを、二段階工程および初期濃度40μg/mlを使用して、細胞系パネルで試験した。IC50値はほとんどの場合で到達しなかったので、最高濃度での細胞生存が示されている。
【0087】
【表3】

【0088】
19種の細胞系での試験が示すように、TRAXOは一種の大腸癌細胞系(SW620)、2種の骨肉腫細胞系(G‐292、HOS)、一種の腎臓癌細胞系(ACHN)、一種の白血病細胞系統(HL60)および一種の胚性肺繊維芽細胞系統(WI‐38)に対してかなりの活性を有する。T‐47DやBxPC3などのシス‐オキソプラチン感受性細胞系はTRAXOに対しては非感受性である。トランス‐オキソプラチン化合物の塩は特定のヒト癌細胞、細胞系および腫瘍に対して異なる治療潜在能力と異なる効果を有しているだろう。
【0089】
シス‐オキソプラチンおよびシス‐オキソプラチンCa塩の効果の比較
【0090】
シス‐オキソプラチンCaおよびシス‐オキソプラチンの効果を10種の細胞系で比較した(表4)。
【0091】
(IC50値はμg/ml;試験はホルマザン試験として実施した)。
【0092】
【表4】

【0093】
全細胞系のシス‐オキソプラチンのIC50(±SEM)平均値は、12.3±3.2であり、シス‐オキソプラチンCaのIC50(±SEM)の値9.1±2.8と比較する。
【0094】
以下の比較はPC3細胞におけるシス‐オキソプラチン対シス‐オキソプラチンNaの用量応答依存性を示す。
【0095】
【表5】

【0096】
これらはPC3、SK‐OV4およびSIMについての典型的な結果である。Na塩は濃度範囲が高いほど活性も高く;濃度が低いほど差も小さい。おそらく、シス‐オキソプラチンNaはオキソプラチンと比較すると多少異なる構造または異なる作用機序を有し、その結果、特定の細胞系ではシス‐オキソプラチンよりも30〜70%高活性であり、または40〜50%低活性である。シス‐オキソプラチンNaの優れた活性は濃度範囲が高いほど(5μg/ml超)現れる模様である。
【0097】
3.本発明の適用による軟膏、注入溶液および錠剤での治療効果
第1の試験系列で、内部腫瘍および外部腫瘍が発生している種々の腫瘍ラットで錠剤、軟膏および注入溶液を試験した。本発明による他の薬物は別の次の試験系列で試験した。シス‐オキソプラチンと基材を組み合わせると、錠剤には50mgのシス‐オキソプラチン、39.5mgのラクトース、2.5mgのコーンスターチ、2.5mgのポリ(O‐カルボキシメチル)澱粉ナトリウム塩、2.5mgのリン酸水素カルシウム×2HO、2.5mgのセルロース粉末および0.5mgのステアリン酸マグネシウムが含まれている。シス‐オキソプラチンを基材に接触させると、軟膏には50mgのシス‐オキソプラチン、120mgのプロピレングリコール、5.5mgのマクロゴールステアラート1000、22mgのセチルステアリルアルコール、および851.5mgのワセリンが含まれた。5mg/mlの溶液の調製物では、注入溶液には5mgのシス‐オキソプラチン、9mgのベンジルアルコール、2mgのポリソルベート80、650mgの70%ソルビトール溶液および500mgの水が含まれた。
【0098】
全ての薬物は適用約30分〜1時間前にシス‐オキソプラチン活性物質を基材に混合することによって得られた。
【0099】
餌混合物の形で錠剤を投与した。注入溶液の注入は一般的な研究室のやり方に従い注入チューブによって実施した。軟膏は変性組織を示す背領域に施用した。
【0100】
重量を測定し、変性組織の外側領域を測定することによって腫瘍有効性を確立した。比較として、オキソプラチンの塩化ナトリウム溶液を含む注入溶液を使用し、オキソプラチンを直接経口投与することによって、および実験動物の背腫瘍領域にオキソプラチン粉剤を包帯によって塗布することによって、腫瘍有効性も試験した。さらに、シス‐オキソプラチン、炭酸水素ナトリウムまたはアルギン酸ナトリウムを含む錠剤を試験した。
【0101】
本発明によって定義した基材を含まない純粋オキソプラチンを投与することによって腫瘍増殖は減少した。しかし、純粋オキソプラチンによって生じた刺激作用が周辺組織に見られ、同様にオキソプラチンは急速に排出された。シス‐オキソプラチン、炭酸水素ナトリウムおよびアルギン酸ナトリウムを含む錠剤により、ラットで浮腫を形成するとことになった。おそらく、胃液中のHClおよび炭酸水素塩による二酸化炭素の形成が、血漿容量が拡張したと思われる。その血漿容量の拡張は血圧を上昇させ、浮腫を形成する原因となる。白金錯体は腎臓に有毒である可能性があるので、浮腫の形成も腎不全を促進する。本発明によって請求される試験薬物にはそのような欠点は見られない。特に、シス‐オキソプラチン塩の使用によって抗腫瘍有効性がさらに改善した。本発明による薬物と比較した場合、比較物質は副作用が強く、または抗腫瘍有効性が低かった。本発明による他の薬物で得られた結果は錠剤、軟膏および注入溶液の結果に匹敵する。明瞭に開示した組成物を使用した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シス‐ジアンモニウムジクロロ‐トランス‐ジヒドロオキソ白金(IV)、特にその塩、それらとは物理的に分離しており、錠剤、カプセル、コート錠、座薬、軟膏、クリーム、注入液および/または注射液を含む群から選択される医薬品の基材、ならびに任意でキット内容物への接触に関する情報を含むキットであって、シス‐ジアンモニウムジクロロ‐トランス‐ジヒドロオキソ白金(IV)を該基材に接触させて、以下の割合で含むように、基材を選択するキット:
−カプセルが、オキソプラチン:二酸化ケイ素:マンニトールまたはステアリン酸マグネシウムを、0.1〜10:0.1〜10:0.1〜10の割合で含み;
−錠剤が、シス‐オキソプラチン:ラクトース:コーンスターチ:ポリ(O‐カルボキシメチル)澱粉ナトリウム塩:リン酸水素カルシウム×2HO:セルロース粉末:ステアリン酸マグネシウムを、10〜500:20〜150:1〜10:1〜10:1〜10:1〜10:0.1〜7の割合で含み;または
−別法として錠剤が、シス‐オキソプラチン:二酸化ケイ素:ステアリン酸マグネシウムを、0.1〜10:0.1〜10:0.1〜10の割合で含み;
−クリームが、シス‐オキソプラチン:ベンジルアルコール:セチルステアリルアルコール:マクロゴールステアラート1000:パルミチン酸イソプロピル:グリセロール:70%ソルビトール溶液:水を、0.2〜8:0.1〜7:1〜10:0.1〜7:0.1〜7:0.2〜8:0.2〜8:20〜60の割合で含み;
−軟膏が、シス‐オキソプラチン:プロピレングリコール:マクロゴールステアラート1000:セチルステアリルアルコール:ワセリンを、2〜20:5〜40:0.1〜7:1〜10:25〜400の割合で含み;
−ゲルが、シス‐オキソプラチン:ヒドロキシエチルセルロース:クロロエアロゾル:水酸化ナトリウム:リン酸水素ナトリウム二水和物:水を、2〜20:100〜600:5〜40:0.1〜7:20〜60:3,000〜50,000の割合で含み;
−座薬が、シス‐オキソプラチン:二酸化ケイ素:硬化脂を、0.1〜10:0.1〜10:30〜300の割合で含み;または
−別法として座薬が、シス‐オキソプラチン:ラクトース:コーンスターチ:アジピン酸:炭酸水素ナトリウム:ステアリン酸:ステアリン酸マグネシウム:高度分散性二酸化ケイ素:ポリソルベート80を、10〜100:700〜4,000:200〜600:10〜1,000:10〜1,000:1〜100:1〜100:1〜15:0.1〜10の割合で含み;または
−別法として座薬が、シス‐オキソプラチン:ラクトース×1HO:コーンスターチ:アジピン酸:炭酸水素ナトリウム:ステアリン酸:ステアリン酸マグネシウム:二酸化ケイ素:ポリソルベート80を10〜100:1,000〜5,000:300〜1,000:10〜1,000:10〜1,000:1〜100:1〜100:1〜15:0.1〜7の割合で含み;または
−別法として座薬が、シス‐オキソプラチン:ラクトース×1HO:コーンスターチ:アジピン酸:炭酸水素ナトリウム:ステアリン酸:ステアリン酸マグネシウム:二酸化ケイ素:ポリソルベート80を、10〜1,000:1,500〜5,000:300〜1,000:10〜1,000:10〜1,000:1〜100:1〜100:1〜15:0.1〜7の割合で含み;
−注射液もしくは注入液が、シス‐オキソプラチン:ベンジルアルコール:ポリソルベート80:70%ソルビトール溶液:水を0.2〜8:1〜10:0.1〜7:100〜800:100〜400の割合で含み;または
−別法として注射液もしくは注入液が、シス‐オキソプラチン:マンニトール:水を0.1〜7:5〜40:1〜10の割合で含む。
【請求項2】
前記のキットが化学療法キットであることを特徴とする、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
好ましくは患者に適用する前に、得られた基材にシス‐ジアンモニウムジクロロ‐トランス‐ジヒドロオキソ白金(IV)を組み込む、腫瘍を治療するための医薬品の製造における請求項1または2に記載のキットの使用。
【請求項4】
請求項1または2に記載のキットの構成物を組み合わせることによって製造することができる医薬品。
【請求項5】
前記のカプセルが、さらに、二酸化ケイ素とマンニトールまたは二酸化ケイ素とステアリン酸マグネシウムおよび/または医薬上受容可能な賦形薬、特にシオソーム、リポソーム、および/またはナノカプセルを含むことを特徴とする、請求項4に記載の医薬品。
【請求項6】
前記のカプセルが、50mgの二酸化ケイ素、50mgのマンニトールもしくは50mgのステアリン酸マグネシウムおよび50mgのオキソプラチンを含み、または、別法として、50mgのシス‐オキソプラチン、39.5mgのラクトース、または39mg、2.5mgもしくは2mgのコーンスターチ、2.5mgのポリ(O‐カルボキシメチル)澱粉ナトリウム塩、2.5mgのリン酸水素カルシウム×2HO、2.5mgのセルロース粉末および0.5mgのステアリン酸マグネシウムを含み、または、別法として、シス‐オキソプラチン、50mgの二酸化ケイ素および50mgのステアリン酸マグネシウムを含むことを特徴とする、前記の請求項のいずれかに記載の医薬品。
【請求項7】
前記のカプセルが50mgの二酸化ケイ素、50mgのマンニトールまたは50mgのステアリン酸マグネシウム、および50mgのオキソプラチンを含み、または、別法として、50mgのシス‐オキソプラチン、39.5mgのラクトースまたは39mg、2.5mgまたは2mgのコーンスターチ、2.5mgのポリ(O‐カルボキシメチル)澱粉ナトリウム塩、2.5mgのリン酸水素カルシウム×2HO、2.5mgのセルロース粉末および0.5mgのステアリン酸マグネシウムを含み、または、別法として、シス‐オキソプラチン、50mgの二酸化ケイ素および50mgのステアリン酸マグネシウム含むことを特徴とする、前記の請求項のいずれかに記載の医薬品。
【請求項8】
前記のクリームが、50mgのシス‐オキソプラチン、20mgのベンジルアルコール、100mgのセチルステアリルアルコール、25mgのマクロゴールステアラート1000、20mgのパルミチン酸イソプロピル、40mgのグリセロール、50mgのソルビトールおよび205mgの水を含むことを特徴とする、前記の請求項のいずれかに記載の医薬品。
【請求項9】
前記の軟膏が、50mgのシス‐オキソプラチン、120mgのプロピレングリコール、5.5mgのマクロゴールステアラート1000、22mgのセチルステアリルアルコール、および851.5mgのワセリンを含むことを特徴とする、前記の請求項のいずれかに記載の医薬品。
【請求項10】
前記のゲルが、0.05gのシス‐オキソプラチン、1.8gのヒドロキシエチルセルロース、0.1gのクロロエアロゾル、0.005gの水酸化ナトリウム、0.17gのリン酸水素ナトリウム二水和物、および97.875gの水を含むことを特徴とする、前記の請求項のいずれかに記載の医薬品。
【請求項11】
前記の座薬が、0.02gのシス‐オキソプラチン、0.02gの二酸化ケイ素および1.85gの硬化脂を含み、別法として、前記の座薬が20mgのシス‐オキソプラチン、1055、40mgのラクトース、170mgのコーンスターチ、63.60mgのアジピン酸、50mgの炭酸水素ナトリウム、5mgのステアリン酸、4.5mgのステアリン酸マグネシウム、3mgの高度分散性二酸化ケイ素および0.5mgのポリソルベート80を含み、別法として、前記の座薬が20mgのシス‐オキソプラチン、1350mgのラクトース×1HO、170mgのコーンスターチ、65mgのアジピン酸、50mgの炭酸水素ナトリウム、5mgのステアリン酸、4.5mgのステアリン酸マグネシウム、3mgの高度分散性二酸化ケイ素および0.5mgのポリソルベート80を含み、または、別法として、前記の座薬が50mgのシス‐オキソプラチン、1450mgのラクトース×1HO、170mgのコーンスターチ、65mgのアジピン酸、50mgの炭酸水素ナトリウム、5mgのステアリン酸、4.5mgのステアリン酸マグネシウム、3mgの高度分散性二酸化ケイ素および0.5mgのポリソルベート80を含むことを特徴とする、前記の請求項のいずれかに記載の医薬品。
【請求項12】
5mg/mlの注射液または注入液調製物が、5mgのシス‐オキソプラチン、9mgのベンジルアルコール、2mgのポリソルベート80、650mgの70%ソルビトール溶液および500mgの水を含むことを特徴とする、前記の請求項のいずれかに記載の医薬品。
【請求項13】
前記の錠剤が、50mgのシス‐オキソプラチン、39.5mgのラクトース、2.5mgのコーンスターチ、2.5mgのポリ(O‐カルボキシメチル)澱粉ナトリウム塩、2.5mgのリン酸水素カルシウム×2HO、2.5mgのセルロース粉および0.5mgのステアリン酸マグネシウムを含み、または、別法として、50mgのシス‐オキソプラチン、50mgの二酸化ケイ素および50mgのステアリン酸マグネシウムを含むことを特徴とする、前記の請求項のいずれかに記載の医薬品。
【請求項14】
癌疾患の予防または治療における請求項4から13のいずれかに記載の医薬品の使用。

【公表番号】特表2007−508331(P2007−508331A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534581(P2006−534581)
【出願日】平成16年10月13日(2004.10.13)
【国際出願番号】PCT/DE2004/002297
【国際公開番号】WO2005/039605
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(506126255)
【Fターム(参考)】